(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態による撮像装置について図面を参照して説明する。本実施形態は、撮像に用いる光線源がX線源であり、撮像対象物が半導体積層チップ、液晶パネル等であり、半導体の非破壊検査を行う場合の例について説明する。
【0012】
<撮像装置1における撮像の概略の説明>
まず、撮像装置1における撮像の概略について説明する。
図1は、この発明の一実施形態による、撮像装置1が撮像画像を撮像する概念を示す概念図である。
撮像装置1は、撮像部分に、照射部10、符号化マスク11−1、移動台13−1、検出器14を含んで構成される。撮像対象物12は、移動台13−1上に固定され、移動台13−1の移動に伴い、
図1のx軸方向に進行する。すなわち、撮像対象物12は、検出器14に対して、相対的に移動する。照射部10は、符号化マスク11−1を通して、撮像対象物12の移動方向に垂直な面に対しX線を照射する。検出器14は、符号化マスク11−1を通して、撮像対象物12を透過した、X線量を検出して撮像データを生成する。
検出器14は、撮像対象物12が
図1のx軸方向に移動する度に、上記撮像データを生成する。
【0013】
<撮像装置1の各処理ブロックの説明>
次に、上述した、撮像装置1の各処理ブロックについて詳細に説明する。
図2は、撮像装置1の撮像処理、画像合成処理、制御処理の各構成を示すブロック図である。
撮像装置1は、上述した、照射部10、符号化マスク11−1、移動台13−1、検出器14に加えて、符号化マスク駆動部11−2、移動台駆動部13−2、位置検出部13−3、を含んで構成され、さらに、撮像制御部15、画像処理部16、制御部30、を含んで構成される。
撮像制御部15は、照射制御部20、符号化マスク制御部21、移動台制御部23、検出器制御部24、を含んで構成され、撮像部分の制御を行う。
画像処理部16は、記憶部31、画像合成部32、画像復号部33、画像保持部34を含んで構成され、撮像した画像データの処理を行う。
【0014】
照射部10は、照射制御部20から照射角度(
図1のθ)、照射するX線エネルギー等の、X線照射に関する制御情報を取得し、照射部10内部に有するX線照射部分より所望のX線を照射する。照射部10が照射するX線の照射面は、撮像対象物12の移動方向に対し垂直な面(
図1のyz平面)である。
また、照射部10は、照射制御部20から取得した撮像倍率に関する制御情報を用いて、照射部10の駆動部を駆動し、照射部10のX線照射部分を
図1のz軸方向に駆動する。
照射部10が照射するX線は、半導体検査等で用いられる場合、例えば、照射角度θが120度程度、照射エネルギーが数keVから100keVである。
照射部10は、一般に、ターゲット基材(電子が衝突するとX線を放射する材質)、ゾーンプレート(X線を平行化あるいは収束化させる部材)を有しており、X線を照射する場合、単にタングステン等のターゲット基材に電子を衝突させて発生したX線を、そのまま利用するのではなく、ゾーンプレートを用いて、X線の広がり角度や、X線の照射分布を調整する。
【0015】
符号化マスク11−1は、X線の通過する箇所(マスクのない領域)と、X線の通過しない箇所(マスクのある領域)と、を含んで構成され、照射部10と撮像対象物12の間、照射部10のX線照射部分の直下に挿入される。符号化マスク11−1には、例えば、均一冗長アレイコードや修正均一冗長アレイコードを、周期的に繰返した符号化パターンを用いる。符号化パターンについては後で説明する。
符号化マスク駆動部11−2は、撮像倍率等の設定に伴い、符号化マスク制御部21から供給される、符号化マスク11−1の設置位置に関する制御情報を取得し、符号化マスク11−1を
図1のz軸方向に駆動する。
また、符号化マスク駆動部11−2は、符号化マスク制御部21から供給される、符号化マスク11−1の有無等に関する制御情報を取得し、符号化マスク11−1を
図1のx軸方向に駆動する。符号化マスク11−1を、照射部10と撮像対象物12の間のX線照射領域から一時的に退避させることで、検出器14や照射部10のキャリブレーションを行うことができる。
【0016】
符号化マスク11−1は、シリコン基板上の金めっき処理をすることで形成される。そうすることで、シリコンに金をめっきしたパターンの部分は、X線が透過せず、シリコンのみのパターンの部分は、X線が通過することとなる。金めっき処理を施したパターンの部分が、X線を遮断し通過しないようにするために、高アスペクト比(マスクサイズに対するマスク厚みの比率)について、10以上が要求されるが、LIGAプロセス(LIthographie Galvanoformung Abformung、X線を用いたフォトリソグラフィと電解めっきと形成による微細加工)等のめっき処理によって製作できる。
【0017】
撮像対象物12は、空気による吸着、静電吸着、又は治具により、移動台13−1上に固定される。
【0018】
移動台駆動部13−2は、移動台制御部23から、撮像対象物12の撮像位置の調整等に関する制御情報を取得し、移動台駆動部13−2を駆動し、移動台13−1上に固定した、撮像対象物12を
図1のy軸方向、または
図1のz軸方向に動かし、撮像対象物12の撮像位置を調整する。
【0019】
移動台駆動部13−2は、移動台制御部23から進行方向、進行速度等の制御情報を取得し、移動台駆動部13−2を駆動し、移動台13−1上に固定した、撮像対象物12を
図1のx軸方向に進行させる。撮像対象物12の進行速度は、例えば、撮像対象物12が、検出器14の検出面の1画素に相当する距離を進行する間に、検出器14が1回検出するような、検出器14が単位時間に検出する回数(フレームレート)等から算出される、速度である。
移動台駆動部13−2は、例えばベルトコンベアを含んで構成される。
【0020】
移動台13−1の位置検出部13−3は、移動台13−1上に固定した、撮像対象物12が
図1のx軸方向に進行するのに伴い、撮像対象物12の位置情報を取得し、移動台制御部23に出力する。撮像対象物12の位置情報は、検出器14の検出タイミング及び、画像合成部32の画像合成処理に、用いられる。
位置検出部13−3は、例えば、リニアエンコーダを含んで構成される。
【0021】
検出器14は、検出器制御部24より検出タイミング信号を取得し、符号化マスク11−1を介して、撮像対象物12を透過し、検出器14に到達した、X線の線量を検出し、電気信号に変換して撮像データを生成する。この撮像データは、符号化マスク11−1の符号化パターンにより符号化された符号化画像である。
検出器14は、X線の線量を電気信号に変換する検出センサを含んで構成される。検出器14の検出センサは、例えばフラットパネルセンサやイメージインテンシファイア等がある。検出器14は、符号化画像を、画像保持部34に出力する。
【0022】
撮像制御部15は、照射制御部20、符号化マスク制御部21、移動台制御部23、検出器制御部24、を含んで構成され、これまでに述べたように、撮像に必要な、照射部10における位置や、X線の照射タイミング、符号化マスク11−1の位置、移動台13−1の初期位置と、撮像対象物12の進行、検出器14のX線検出タイミング等一連の制御を行う。
【0023】
画像処理部16は、画像保持部34、画像復号部33、画像合成部32、記憶部31、を含んで構成され、画像保持部34による符号化画像の保持、画像復号部33による符号化画像の復号、画像合成部32による復号画像の合成、及び、記憶部31による合成画像の記憶、等の処理を含む一連の画像処理を行う。
【0024】
画像保持部34は、検出器14から符号化画像を取得し、内部の記憶部に取得した符号化画像を書き込んで記憶する。また、画像保持部34は、上記記憶部に記憶した符号化画像を、画像復号部33に出力する。
【0025】
画像復号部33は、画像保持部34から符号化画像を取得し、取得した符号化画像を、符号化パターンに対応する復号パターンとコンボリュージョン(畳み込み積分)することで復号画像を生成する。復号パターン及び復号方法については後で説明する。また、画像復号部33は、復号した画像データを、画像合成部32に、出力する。
【0026】
画像合成部32は、位置検出部13−3から、移動台制御部23を介して、撮像対象物12の位置情報を取得し、画像復号部33から複数枚の復号画像を取得し、上記位置情報を用いて、上記複数枚の復号画像を合成する。復号画像合成については後で説明する。
【0027】
上述のように、画像合成部32が複数枚の復号画像の画素値を積算して、合成画像を生成することで、合成されていない画像と比べて明るく鮮明な合成画像を生成できる。画像復号部33は、合成画像を、記憶部31に書き込んで記憶させる。
【0028】
制御部30は、撮像制御部15を通じた撮像処理の制御、及び、画像処理部16を通じた画像処理の制御を行う。
また、制御部30は、例えば、外部入力端末を含んで構成され、倍率、分解能等の情報を外部から入力される外部信号により取得する。
制御部30は、上記外部から入力された倍率等の情報に基づいて、撮像制御部15に対して撮像のための制御情報を出力する。
【0029】
<符号化パターンについて>
符号化マスク11−1で用いる符号化パターンについて説明する。符号化パターンは、均一冗長アレイ(Uniformly Redundant Array、URA)、修正均一冗長アレイ(Modified URA)で定義されるコードパターンを用いる。
図3は均一冗長アレイコードAの一例を表す行列である。均一冗長アレイコードAの「1」の部分がX線の通過する箇所であり、「0」の部分がX線の通過しない箇所である。
【0030】
均一冗長アレイコードAは、以下で定義される。
A(i,j)=0(ただし、i=0)
A(i,j)=1(ただし、i≠0)
A(i,j)=1(ただし、Cr(i)Cs(j)=1)
A(i,j)=0(ただし、上記以外の場合)
【0031】
ここで、rおよびsは、差が2となる素数である。
また、Cr(i)は、以下で定義される。
Cr(i)=1(ただし、1≦x<rである、整数xに対して、i=Mod(r)x^2)
Cr(i)=0(ただし、上記以外の場合)
【0032】
ここで、Mod(N)Kは、整数Kを整数Nで割ったときの剰余(Modulo)を示している。x^2はxの階乗を示している。
r=7、s=5であるとき、均一冗長アレイコードAは
図3の縦7列横5列のコードとなり、符号化マスク11−1は、均一冗長アレイコードAを周期的に繰返した符号化パターンを用いる。
【0033】
<復号パターン及び復号方法について>
復号方法について説明する。復号は、復号パターンGを符号化画像Pとコンボリュージョン(畳み込み積分)することで、復号画像Oを得る。
【0035】
復号パターンGは、符号化パターンに用いた、均一冗長アレイコードAに対応する復号パターンである。
復号パターンGは、均一冗長アレイコードAに基づき、以下で求められる。
G(i,j)=+1(ただし、A(i,j)=1)
G(i,j)=−1(ただし、A(i,j)=0)
【0036】
<復号画像合成について>
復号画像合成について説明する。
図4は、検出器14が、撮像対象物12が進行する度に撮像する状態を示すイメージ図である。撮像箇所12−1は、撮像対象物12の中の黒点で示された撮像される位置を示している。また、撮像画像座標14−1は、検出器14の検出センサが検出した撮像画像座標であり、撮像画像座標14−1の中に、撮像箇所12−1が撮像されている場合のイメージを示している。
【0037】
図4(a)は、時刻tにおける、撮像対象物12の撮像処理を示している。位置(i,j)は、I軸とJ軸とが構成する2次元座標である、撮像画像座標14−1上における、撮像箇所12−1が撮像される画素の座標値を示している。
図4(b)は、時刻t+Δtにおける、撮像対象物12の撮像処理を示している。位置(i−1,j)は、I軸とJ軸とが構成する2次元座標である、撮像画像座標14−1上における、撮像箇所12−1が撮像される画素の座標値を示している。
時刻tから、時刻t+Δtまでの間に、撮像対象物12は、例えば、検出器14の検出センサ一画素分の距離を、x軸方向に進行している。
このため、撮像箇所12−1は、撮像画像座標14−1上を、撮像対象物12の進行方向(x軸方向)に、1画素分(ここでは、1画素分の長さを撮像画像座標の、1座標とする)進行し、I軸のマイナス方向に進行する。
ここで、x軸方向と、I軸方向の正負が逆となるのは、x軸が、撮像対象物12の進行方向を示しているのに対して、I軸が、撮像対象物12の撮像方向を示すためである。
【0038】
図5は、撮像画像を合成する処理を説明する概念図である。
図5(a)は、検出器14が撮像した、撮像画像座標14−1を、撮像順に時系列に並べた状態のイメージを示している。撮像画像座標14−1の各々は、撮像箇所12−1が撮像される座標値が、1画素ずつ、I軸のマイナス方向にずれている。
図5(b)は、撮像画像座標14−1の各々を撮像した時系列の順に一画素ずつずらしながら、重ねあわた状態のイメージを示している。
図5(b)は、図のわかり易さのため、重ねあわせた画像が、J軸方向にずれているが、重ねあわせた状態を明確にするためであり、実際には、J軸方向にはずれていない。
図5(c)は、撮像画像座標14−1を撮像した時系列の順に一画素ずつずらしながら重ねることによって、合成された画像14−10が生成される。合成された画像14−10上に、撮像画像座標14−1の各々における、撮像箇所12−1の画素が重って合成された、合成撮像箇所12−10が示されている。
【0039】
図2に戻り、画像合成部32は、
図5に示したように、時刻tにおける、復号画像OAと時刻t+Δtにおける、復号画像OBの合成画像OCを算出する。
OC(i,j,t)=OA(i,j,t)+OB(i−1,j,t+Δt)
【0040】
ここで、時刻t+Δtにおける、復号画像OBのI軸座標が、1座標少なくなるのは、時刻Δt間に、撮像対象物12が
図4のx軸方向に、1座標進行したために、相対的に、
図4のI軸方向に、1座標減少したためである。
【0041】
画像合成部32は、時刻tにおける復号画像から、時刻Δtごとに撮像した、N枚の復号画像をすべて合成して、合成画像を算出する。
【0043】
ここで、O
N(i,j,t)は、位置(i,j)における、N枚の復号画像を用いた合成画像の画像データである。O
k(i,j,t)は、位置(i,j)における、時刻tの復号画像である。
【0044】
<撮像から画像取得までの動作の説明>
続いて、
図7を用いて、撮像から画像取得までの処理について説明する。
図7は撮像装置1が、撮像対象物12を撮像し、撮像対象物12の合成画像を得るまでの処理を示すフローチャートである。
【0045】
まず、制御部30は、外部から入力された又は内部にある、撮像対象物12の撮像倍率、撮像分解能に関する情報から、照射するX線のエネルギー、照射角度、撮像対象物12を進行させる速度、撮像する移動距離、撮像回数等の所望の撮像をするための設定をする。
照射部10は、制御部30、照射制御部20を介して照射するX線のエネルギー、照射角度等の情報を取得し、これらの情報に対応させた位置から所望のX線を照射する準備をする(ステップS10)。
移動台駆動部13−2は、制御部30から取得した、移動台13−1の移動速度等の情報を用い所望の速度で、移動台13−1を移動し、撮像対象物12を進行させる準備をする(ステップS10)。
撮像対象物12は、移動台13−1上に吸着又は治具により、移動台13−1に固定する(ステップS10)。
【0046】
次に、符号化マスク11−1は、照射部10と、撮像対象物12の間に挿入される(ステップS11)。
そして、移動台制御部23は、移動台駆動部13−2を駆動させて、撮像対象物12を、所望の速度で進行させる(ステップS12)。
このとき、移動台制御部23は、位置検出部13−3が取得した、撮像対象物12の位置情報を、検出器制御部24に出力する。検出器制御部24は、撮像対象物12が検出器14で検出される位置まで進行したか、上記位置情報を用いて判断する(ステップS13)。
検出器制御部24は、撮像対象物12が、検出器14で検出される位置まで進行したら、撮像対象物12の撮像を開始するトリガ信号を出力し(ステップS13 Yes)、検出器制御部内部に記憶している撮像回数を初期化する(ステップS14)。
検出器14は、検出器制御部24よりトリガ信号を取得したら、符号化マスク11−1を介して、撮像対象物12を透過したX線強度を検出し、電気信号に変換し、符号化画像を取得する(ステップS15)。
検出器制御部24は、位置検出部13−3から移動台制御部23を介して取得した、撮像対象物12の位置情報から、撮像対象物12が検出器14で検出される位置まで進行していないと判断した場合(ステップS13 No)、ステップS12に戻る。
【0047】
検出器14は、取得した符号化画像を、画像保持部34に出力する(ステップS16)。
検出器制御部24は、検出器14が符号化画像を取得したら、検出器制御部24の内部に記憶している撮像回数をインクリメントし、移動台駆動部13−2は、検出器14が符号化画像を取得したら、移動台13−1を移動させ、撮像対象物12を、所定の距離だけ進行させる(ステップS17)。この、撮像と撮像の間に、撮像対象物12が進行した距離が、後述する、合成画像を生成する際の情報として用いられる。
画像保持部34は、検出器14の符号化画像取得回数が、所望の回数(ここでは、N回)に達したか判断する(ステップS18)。
検出器14の符号化画像取得回数が、N回に達したら(ステップS18 Yes)、画像保持部34は、保持した符号化画像を、画像復号部33に出力し、画像復号部33は、符号化画像を復号する(ステップS19)。
画像保持部34は、検出器14から符号化画像を取得した回数が、所望の回数に達していなければ(ステップS16 No)、ステップS15に戻り、所望の回数に達するまで、検出器14から符号化画像を取得する。
【0048】
画像復号部33は、復号画像を、画像合成部32に出力し、画像合成部32は、復号画像から、合成画像を生成する(ステップS20)。
【0049】
<復号画像合成時の方向ずれ補正について>
復号画像合成時の方向ずれ補正について説明する。復号画像合成時の方向ずれは、移動台13−1の移動方向と、検出器14のI軸方向が必ずしも並行ではない、ずれた状態で撮像されることから生じる。このずれを補正することで、より鮮明な合成画像を生成できる。
【0050】
図6(a)は、撮像対象物12が移動台13−1の移動方向(x軸方向)と、検出器14のI軸方向が並行しておらず、ずれた状態で撮像される状態のイメージ図を示している。
図6(a)で、撮像画像座標14−1は、わかり易さのため、検出器14がxz平面上で傾いて設置されているように見えるが、実際には、検出器14は、移動台13−1と並行する面(xy平面)上で、x軸とI軸が並行する関係になく、傾いた状態で設置されている場合を示している。
【0051】
図6(b)は、
図6(a)の、撮像画像座標14−1を拡大した図である。
図6(b)14−3は、撮像対象物12の中の撮像箇所(
図6(a)12−1)が、撮像画像座標14−1上の座標位置を移動する状態を示している。
図6(c)は、
図6(b)の撮像対象物12の中の、撮像箇所12−1(
図6(b)14−3)の付近を拡大した図である。撮像箇所12−1が、撮像画像座標上の、位置(i,j)、(i−1,j)、(i,j−1)、(i−1,j−1)で囲まれる領域の中に移動している。角度αは、0からπ/2までの値をとる、x軸方向とI軸方向の方向ずれ量である。
【0052】
x軸方向とI軸方向の方向ずれが角度αである場合、撮像対象物12がx軸方向に、N移動したとき、撮像画像座標は、I軸方向に(−N*cosα)、J軸方向に(−N*sinα)移動する。これより、画像合成部32は、以下のとおりに、方向ずれを補正して、合成画像OCCを算出する。
【0053】
OCC(i,j,t)=OA(i,j,t)+OB(i−cosα,j−sinα,t+Δt)
【0054】
ここで、OAとOBは、それぞれ、時刻tと、時刻t+Δtにおける、復号画像である。
【0055】
画像合成部32は、時刻tにおける復号画像から、時刻Δtごとに撮像した、N枚の復号画像をすべて合成して、合成画像ONを算出する。
【0057】
ここで、O
N(i,j,t)は、位置(i,j)における、N枚の復号画像を用いた合成画像の画像データである。O
k(i,j,t)は、位置(i,j)における、時刻tの復号画像である。αは移動台13−1が進行する、x軸方向と、撮像画像座標14−1のI軸方向の方向ずれ量である。
【0058】
画像合成部32は、さらに、(i−cosα)や(j−sinα)は必ずしも整数になるとは限らないため、合成画像にあたっては周辺の画素補間を行う。
【0059】
図6(C)で、位置(i−cosα,j−sinα)は、撮像画像座標上の、位置(i,j)、(i−1,j)、(i,j‐1)、(i−1,j−1)で囲まれる領域の中に位置している場合、位置(i*cosα,j*(1−sinα))における、復号画像O(i−cosα,j−sinα)を、例えば、以下のように補間して算出する。
【0061】
ここで、O(i,j)、O(i−1,j)、O(i,j−1)、O(i−1,j−1)は、それぞれ撮像画像上の、位置(i,j)、(i−1,j)、(i,j−1)、(i−1,j−1)における復号画像である。αはx軸方向とI軸方向の方向ずれ量である。また、w1からw4は、補間する際の重み(ウェイト)量であり、例えば、w1=1、w2=1/√{(1−cosα)^2+(sinα)^2}、w3=1/√{(cosα)^2+(1−sinα)^2}、w4=1/√{(1−cosα)^2+(1−sinα)^2}、で算出される。
【0062】
ここで、方向ずれ量は、予め方向ずれ量を検出して求める一定量として扱っている。
方向ずれ量の検出は、例えば、制御部30が、撮像対象物12を固定する前に、移動台13−1を所望の速度で駆動し、移動台13−1上に定めた定点が、検出器14の判定センサ上の座標上をどう移動しているかに関する情報を取得することで、検出できる。
【0063】
このとき、画像合成部32は、移動台制御部23から、移動台13−1の移動方向(
図6(b)x軸方向)と検出器14の撮像座標方向(
図6(b)I軸方向)の方向ずれ量を取得し、方向ずれに量を用いて、復号した画像の重ね合わせ方向を補正する。
ここで、画像合成部32は、各復号画像の画素値を加算しようとするときに、座標位置が整数値とならない場合には、その座標位置の画素値を、その座標を囲む周辺の画素データを補間して算出する。
【0064】
以上述べた実施形態は全て本発明の実施形態を例示的に示すものであって限定的に示すものではなく、本発明は他の種々の変形態様および変更態様で実施することができる。
【0065】
例えば、移動台13−1の移動方向(
図6(b)x軸方向)と、検出器14の撮像座標方向(
図6(b)I軸方向)の方向ずれ量は一の撮像対象物の撮像に対して一定値としているが、複数の撮像対象物の撮像に対して一定値としてもよいし、方向ずれ量を時間に依存する関数としてもよい。
移動台13−1は、一定速度で移動してもよいし、移動台13−1は、一定距離移動する度に停止し、移動台13−1が停止した状態で、検出器14が検出するようにしてもよい。
また、画像合成部32は、複数の画像データを合成する際に、重み付け加算を行ってもよい。画像データを分割して、それぞれの領域に対して、重み(ウェイト)を重畳して加算してもよく、例えば、照射部10の直下に位置する部分は大きなウェイトで加算し、照射部10から離れた部分は小さなウェイトで加算することもできる。
また、画像復号部33は、符号化画像を、画像保持部34から複数枚まとめて取得して復号してもよいし、符号化画像を画像保持部34から一枚ずつ取得して復号してもよい。
【0066】
上述の実施形態において、符号化マスク11−1を用いて撮像した後に復号し、さらに復号画像を重ね合わせて合成することで、合成画像が明瞭となる。高分解能の撮像画像を得ようとする場合であっても、撮像回数を増やすことなく鮮明な撮像画像を容易に取得できる。
【0067】
上述した実施形態における画像合成処理をコンピュータで実現するようにしてもよい。その場合、この機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。
なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。
【0068】
さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでもよい。
【0069】
また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよく、FPGA(Field Programmable Gate Array)等のプログラマブルロジックデバイスを用いて実現されるものであってもよい。
【0070】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。