特許第6738685号(P6738685)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6738685弁の作業用治具、弁の分解方法および組立方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6738685
(24)【登録日】2020年7月22日
(45)【発行日】2020年8月12日
(54)【発明の名称】弁の作業用治具、弁の分解方法および組立方法
(51)【国際特許分類】
   F16K 43/00 20060101AFI20200730BHJP
   E03B 7/07 20060101ALI20200730BHJP
【FI】
   F16K43/00
   E03B7/07 A
【請求項の数】11
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2016-162317(P2016-162317)
(22)【出願日】2016年8月23日
(65)【公開番号】特開2018-31394(P2018-31394A)
(43)【公開日】2018年3月1日
【審査請求日】2019年6月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001298
【氏名又は名称】特許業務法人森本国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】根路銘 良介
(72)【発明者】
【氏名】塚原 尚起
【審査官】 谿花 正由輝
(56)【参考文献】
【文献】 実開平02−043187(JP,U)
【文献】 米国特許第05863034(US,A)
【文献】 米国特許第04239196(US,A)
【文献】 特開平07−071205(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 43/00
E03B 7/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配管に接続可能な接続部を有し、弁棒の軸心方向に沿って部品を着脱することにより分解又は組立可能な弁の作業用治具であって、
ベース体に、弁を支持する支持部材が設けられ、
支持部材は、弁の着脱が可能な着脱位置と、弁の分解又は組立作業が可能な作業位置とに回動自在であり、
支持部材を着脱位置に固定する固定部材がベース体に着脱自在に設けられ、
固定部材がベース体に取り付けられた状態で、支持部材が着脱位置に固定され、
固定部材がベース体から取り外された状態で、支持部材が着脱位置と作業位置とに回動自在になることを特徴とする弁の作業用治具。
【請求項2】
支持部材は、着脱位置において上向きに横倒して、弁棒を横方向にした横置き姿勢の弁を下方から支持し、作業位置において起立して、弁棒を上下方向にした縦置き姿勢の弁を支持することを特徴とする請求項1記載の弁の作業用治具。
【請求項3】
支持部材を作業位置に位置決めする位置決め装置が備えられていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の弁の作業用治具。
【請求項4】
支持部材は、着脱位置と、起立した第1および第2作業位置とに回動自在であり、第1作業位置において、弁棒を上下方向にした縦置き姿勢の弁を支持し、第2作業位置において、第1作業位置での弁棒の上下方向を逆転した縦置き姿勢の弁を支持することを特徴とする請求項2又は請求項3記載の弁の作業用治具。
【請求項5】
支持部材は、支軸を介して、着脱位置と第1および第2作業位置とに回動自在にベース体に設けられ、着脱位置において支軸の上方に位置し、第1作業位置において支軸の一側方に位置し、第2作業位置において、支軸を中心として一側方とは反対側の他側方に位置することを特徴とする請求項4記載の弁の作業用治具。
【請求項6】
支持部材は弁における配管に接続可能な接続部と連結可能な連結手段を有していることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の弁の作業用治具。
【請求項7】
ベース体は、高さ変更部材によって、高さを変えることができることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の弁の作業用治具。
【請求項8】
上記請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の作業用治具を用いた弁の分解方法であって、
支持部材を着脱位置に回動し、
弁を、横置き姿勢で支持部材上に下して、支持部材に連結し、
支持部材を着脱位置から作業位置に回動して、弁を横置き姿勢から縦置き姿勢にし、
弁を構成している部品を、上部のものから順次、鉛直方向に取り外すことを特徴とする弁の分解方法。
【請求項9】
上記請求項8に記載の分解方法によって弁を分解した後、分解手順とは逆の手順で弁を組立てることを特徴とする弁の組立方法。
【請求項10】
配管に接続可能な接続部を有するとともに第1および第2弁体を内蔵し、弁棒の軸心方向に沿って部品を着脱することにより分解又は組立可能な弁を支持する支持部材がベース体に設けられ、
支持部材は、弁の着脱が可能な着脱位置と、弁の分解又は組立作業が可能な第1および第2作業位置とに回動自在であり、着脱位置において上向きに横倒して、弁棒を横方向にした横置き姿勢の弁を下方から支持し、第1作業位置において起立して、弁棒を上下方向にした縦置き姿勢の弁を支持し、第2作業位置において起立して、第1作業位置での弁棒の上下方向を逆転した縦置き姿勢の弁を支持する作業用治具を用いた弁の分解方法であって、
支持部材を着脱位置に回動し、
弁を、横置き姿勢で支持部材上に下して、支持部材に連結し、
支持部材を着脱位置から第1作業位置に回動して、弁を横置き姿勢から縦置き姿勢にし、
弁を構成している部品を、上部のものから順次、鉛直方向に取り外し、
第1弁体を鉛直方向に取り外した後、
支持部材を第1作業位置から第2作業位置に回動して、弁を上下が逆転した縦置き姿勢にし、
弁を構成している部品を、上部のものから順次、鉛直方向に取り外し、
第2弁体と弁棒を鉛直方向に取り外して弁箱から取り出すことを特徴とする弁の分解方法。
【請求項11】
上記請求項10に記載の分解方法によって弁を分解した後、分解手順とは逆の手順で弁を組立てることを特徴とする弁の組立方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば緊急弁等の弁の分解又は組立を行う際に使用する作業用治具、および、作業用治具を用いた弁の分解および組立方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、図21に示すように、地中に埋設された耐震貯水槽1には緊急弁2が備えられている。緊急弁2には流入管3の一端部と流出管4の一端部とがそれぞれ接続され、流入管3の他端部は水道管の上流側本管5に接続され、流出管4の他端部は下流側本管6に接続されている。また、上流側本管5と下流側本管6とは接続管7を介して連通している。
【0003】
流入管3には流入側仕切弁8が設けられ、流出管4には流出側仕切弁9が設けられ、接続管7にはメンテナンス用仕切弁10が設けられている。尚、流入側仕切弁8と流出側仕切弁9とは常時全開され、メンテナンス用仕切弁10は常時全閉されている。
【0004】
緊急弁2は、弁箱12内に、弁棒13と2枚の弁体14,15とを備えるとともに、流入および流出およびバイパスの3つの通路を構成したものである。図21に示すように、平常時においては、弁棒13の移動によって両弁体14,15が第1切換位置に切り換えられ、流入および流出通路が全開するとともに、バイパス通路が全閉する。これにより、上流側本管5内の水は流入管3から緊急弁2の流入通路を通って貯水槽1内に流れ込み、貯水槽1内の水が緊急弁2の流出通路を通って流出管4に流出し、流出管4から下流側本管6に流れる。これにより、平常時において、貯水槽1は水道管路の一部として通水状態に保たれている。
【0005】
また、水圧が低下する等の異常発生時においては、図22に示すように、弁棒13の移動によって両弁体14,15が第1切換位置から第2切換位置に切り換えられ、流入および流出通路が遮断されるとともに、バイパス通路が開放される。これにより、異常発生時において、上流側本管5内の水は、流入管3から緊急弁2のバイパス通路を通って流出管4に流れるため、貯水槽1内に流入することなく、流出管4から下流側本管6に流れる。これにより、上流側本管5内の水が汚水の場合、汚水が上流側本管5から貯水槽1内に流入するのを防止することができる。また、貯水槽1内からの水の流出を防ぎ、緊急時に水を確保することが可能となる。
【0006】
尚、上記のような緊急弁2は例えば下記特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−5315
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記緊急弁2のメンテナンスを行う場合、メンテナンス用仕切弁10を全開するとともに、流入側仕切弁8と流出側仕切弁9とを全閉する。これにより、上流側本管5内の水は、接続管7を通って下流側本管6に流れるため、流入管3から緊急弁2には流れない。
【0009】
この状態で、緊急弁2を貯水槽1と流入管3と流出管4とから取り外し、クレーンとワイヤー等を用いて緊急弁2を据付現場の地上に吊り上げ、トラック等に積み込み、トラック等で据付現場から分解・組立用治具を保有する専門工場まで運搬した後、専門工場にて緊急弁2の分解および組立を行って、メンテナンスをしていた。
【0010】
メンテナンス後は、トラックで緊急弁2を専門工場から据付現場に運搬し、クレーンとワイヤー等を用いて緊急弁2をトラックから吊り上げて据付現場に下し、緊急弁2を貯水槽1と流入管3と流出管4とに取り付けた。
【0011】
しかしながら上記の従来形式では、分解・組立用治具の無い据付現場で緊急弁2を分解してメンテナンスを行うことは困難であり、このため、緊急弁2を据付現場から専門工場に運搬し、専門工場にてメンテナンスを行っていた。このように、緊急弁2を据付現場と専門工場との間で運搬する必要があるため、緊急弁2のメンテナンスに要する期間が長くなり、これによって耐震貯水槽1の本来の機能が長期間にわたり停止してしまうといった問題がある。
【0012】
本発明は、弁のメンテナンスを短期間で行うことができる弁の作業用治具、弁の分解方法および組立方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本第1発明は、配管に接続可能な接続部を有し、弁棒の軸心方向に沿って部品を着脱することにより分解又は組立可能な弁の作業用治具であって、
ベース体に、弁を支持する支持部材が設けられ、
支持部材は、弁の着脱が可能な着脱位置と、弁の分解又は組立作業が可能な作業位置とに回動自在であり、
支持部材を着脱位置に固定する固定部材がベース体に着脱自在に設けられ、
固定部材がベース体に取り付けられた状態で、支持部材が着脱位置に固定され、
固定部材がベース体から取り外された状態で、支持部材が着脱位置と作業位置とに回動自在になるものである。
【0014】
これによると、弁の据付現場に作業用治具を設置し、支持部材を着脱位置に回動し、固定部材をベース体に取り付けて、支持部材を着脱位置に固定する。この状態で、弁を、吊り上げて、支持部材上に下し、支持部材に連結する。この際、支持部材は固定部材によって着脱位置に固定されているので、弁の重量が支持部材に作用しても、支持部材が不用意に着脱位置から回動するのを防止することができる。
その後、固定部材をベース体から取り外し、支持部材を着脱位置から作業位置に回動し、この状態で、弁の部品を、上部のものから順次、鉛直方向に取り外し、弁を分解する。
【0015】
このようにして取り外した部品を、点検し、補修又は交換等した後、上記分解手順とは逆の手順で弁を組立てる。弁を組立てた後、支持部材を作業位置から着脱位置に回動し、この状態で、弁を、支持部材から取り外して吊り上げ、据付現場に下して据え付ける。
【0016】
これにより、作業用治具を用いて、据付現場で弁のメンテナンスを行うことができるので、メンテナンスのために弁を据付現場と専門工場との間で運搬する必要はなく、弁のメンテナンスを短期間で行うことができ、例えば弁が据え付けられる耐震貯水槽の機能停止期間を最小限にとどめることができる。
【0017】
本第2発明における弁の作業用治具は、支持部材は、着脱位置において上向きに横倒して、弁棒を横方向にした横置き姿勢の弁を下方から支持し、作業位置において起立して、弁棒を上下方向にした縦置き姿勢の弁を支持するものである。
【0018】
これによると、支持部材を着脱位置に回動し、この状態で、弁を、吊り上げて、横置き姿勢で支持部材上に下し、支持部材に連結する。その後、支持部材を着脱位置から作業位置に回動して、弁を横置き姿勢から縦置き姿勢に変換する。この状態で、弁の部品を、上部のものから順次、鉛直方向に取り外し、弁を分解する。
【0019】
本第3発明における弁の作業用治具は、支持部材を作業位置に位置決めする位置決め装置が備えられているものである。
【0020】
これによると、位置決め装置によって、支持部材を正確に着脱位置から作業位置まで回動することができ、作業位置において支持部材で支持された弁の弁棒を、傾斜させずに、正確に上下方向(鉛直方向)に向けることができる。これにより、支持部材を作業位置まで回動した後、弁の部品を、上部のものから順次、鉛直方向に取り外し、離脱させることができる。このため、弁の分解が専門工場と同程度の精度で行える。
【0021】
本第4発明における弁の作業用治具は、支持部材は、着脱位置と、起立した第1および第2作業位置とに回動自在であり、第1作業位置において、弁棒を上下方向にした縦置き姿勢の弁を支持し、第2作業位置において、第1作業位置での弁棒の上下方向を逆転した縦置き姿勢の弁を支持するものである。
【0022】
これによると、第1および第2弁体を内蔵した弁の据付現場に作業用治具を設置し、支持部材を着脱位置に回動し、この状態で、弁を、吊り上げて、横置き姿勢で支持部材上に下し、支持部材に連結する。その後、支持部材を着脱位置から第1作業位置に回動して、弁を横置き姿勢から縦置き姿勢に変換する。この状態で、弁の部品を、上部のものから順次、鉛直方向に取り外し、弁を分解していく。
【0023】
第1弁体を鉛直方向に取り外した後、支持部材を第1作業位置から第2作業位置に回動して、弁を上下が逆転した縦置き姿勢に変換する。この状態で、弁の部品を、上部のものから順次、鉛直方向に取り外し、弁を分解していく。第2弁体と弁棒を弁箱から鉛直方向に取り外した後、取り外した各部品を、点検し、補修又は交換等し、その後、上記分解手順とは逆の手順で弁を組立てる。弁を組立てた後、支持部材を着脱位置に回動し、この状態で、弁を、支持部材から取り外して吊り上げ、据付現場に下して据え付ける。
【0024】
本第5発明における弁の作業用治具は、支持部材は、支軸を介して、着脱位置と第1および第2作業位置とに回動自在にベース体に設けられ、着脱位置において支軸の上方に位置し、第1作業位置において支軸の一側方に位置し、第2作業位置において、支軸を中心として一側方とは反対側の他側方に位置するものである。
【0025】
本第6発明における弁の作業用治具は、支持部材は弁の接続部と連結可能な連結手段を有しているものである。
【0026】
これによると、支持部材を着脱位置に回動した状態で、弁を支持部材上に下し、弁の接続部を連結手段で支持部材に連結することにより、弁が支持部材に取り付けられて支持部材で支持される。これにより、弁を配管に接続するための接続部を利用して、弁を作業用治具の支持部材に連結することができる。
【0027】
本第7発明における弁の作業用治具は、ベース体は、高さ変更部材によって、高さを変えることができるものである。
【0028】
これによると、弁のサイズが大型になると、これに応じて高さ変更部材をベース体に取り付け、ベース体の高さを増加することにより、支持部材の高さが増すため、支持部材を作業位置に回動して、弁を縦置き姿勢に変換した際、弁の下端が地面に干渉するのを防止することができる。
【0031】
本第発明は、上記第1発明から第発明のいずれか1項に記載の作業用治具を用いた弁の分解方法であって、
支持部材を着脱位置に回動し、
弁を、横置き姿勢で支持部材上に下して、支持部材に連結し、
支持部材を着脱位置から作業位置に回動して、弁を横置き姿勢から縦置き姿勢にし、
弁を構成している部品を、上部のものから順次、鉛直方向に取り外すものである。
【0032】
これによると、弁の据付現場に作業用治具を設置し、この作業用治具を用いて弁を分解することができるため、据付現場で弁のメンテナンスを行うことができ、メンテナンスのために弁を据付現場と専門工場との間で運搬する必要は無い。これにより、弁のメンテナンスを短期間で行うことができ、例えば弁が据え付けられる耐震貯水槽の機能停止期間を最小限にとどめることができる。
【0033】
本第発明は、上記第発明に記載の分解方法によって弁を分解した後、分解手順とは逆の手順で弁を組立てるものである。
【0034】
これによると、弁の据付現場に作業用治具を設置し、この作業用治具を用いて弁の分解および組立を行うことができるため、据付現場で弁のメンテナンスを行うことができる。
【0035】
本第10発明は、配管に接続可能な接続部を有するとともに第1および第2弁体を内蔵し、弁棒の軸心方向に沿って部品を着脱することにより分解又は組立可能な弁を支持する支持部材がベース体に設けられ、
支持部材は、弁の着脱が可能な着脱位置と、弁の分解又は組立作業が可能な第1および第2作業位置とに回動自在であり、着脱位置において上向きに横倒して、弁棒を横方向にした横置き姿勢の弁を下方から支持し、第1作業位置において起立して、弁棒を上下方向にした縦置き姿勢の弁を支持し、第2作業位置において起立して、第1作業位置での弁棒の上下方向を逆転した縦置き姿勢の弁を支持する作業用治具を用いた弁の分解方法であって、
支持部材を着脱位置に回動し、
弁を、横置き姿勢で支持部材上に下して、支持部材に連結し、
支持部材を着脱位置から第1作業位置に回動して、弁を横置き姿勢から縦置き姿勢にし、
弁を構成している部品を、上部のものから順次、鉛直方向に取り外し、
第1弁体を鉛直方向に取り外した後、
支持部材を第1作業位置から第2作業位置に回動して、弁を上下が逆転した縦置き姿勢にし、
弁を構成している部品を、上部のものから順次、鉛直方向に取り外し、
第2弁体と弁棒を鉛直方向に取り外して弁箱から取り出すものである。
【0036】
本第11発明は、上記第10発明に記載の分解方法によって弁を分解した後、分解手順とは逆の手順で弁を組立てるものである。
【発明の効果】
【0037】
以上のように本発明によると、作業用治具を用いて、据付現場で弁のメンテナンスを行うことができるので、メンテナンスのために弁を据付現場と専門工場との間で運搬する必要はなく、弁のメンテナンスを短期間で行うことができる。これにより、例えば弁が据え付けられる耐震貯水槽の機能停止期間を最小限にとどめることができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】本発明の第1の実施の形態における弁の作業用治具の正面図であり、支持部材を第1作業位置に切り換えた状態を示す。
図2】同、作業用治具を用いてメンテナンスされる弁の断面図である。
図3】同、作業用治具の縦断面図であり、支持部材を着脱位置に切り換えた状態を示す。
図4】同、作業用治具の横断面図であり、支持部材を第1作業位置に切り換えた状態を示す。
図5】同、作業用治具の正面図であり、支持部材を第2作業位置に切り換えた状態を示す。
図6】同、作業用治具の減速機の断面図である。
図7】同、作業用治具の支軸周辺の構成を示す拡大図であり、支持部材を固定ボルトで着脱位置に固定した状態を示す。
図8】同、作業用治具の支持部材の一部切欠き正面図である。
図9図8におけるX−X矢視図である。
図10】同、作業用治具の支持部材の断面図である。
図11】同、作業用治具の溝ナットの斜視図である。
図12】同、作業用治具の溝ナットの断面図である。
図13】同、作業用治具の溝ナットと弁のフランジとの連結部分の構成を示す断面図である。
図14】同、作業用治具を用いて弁を分解するときの手順を示す図である。
図15】同、作業用治具を用いて弁を分解するときの手順を示す図である。
図16】同、作業用治具を用いて弁を分解するときの手順を示す図である。
図17】同、作業用治具の支持部材を着脱位置に切り換えた状態で、支持部材と弁のフランジとの連結部分の構成を示す一部切欠き正面図である。
図18】本発明の第2の実施の形態における作業用治具の正面図である。
図19】同、作業用治具に備えられるスペーサの斜視図である。
図20】本発明の第3の実施の形態における仕切弁を支持した作業用治具の正面図である。
図21】弁が据え付けられた貯水槽と管路の斜視図であり、平常時における水の流れを示している。
図22】弁が据え付けられた貯水槽と管路の斜視図であり、異常発生時における水の流れを示している。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明における実施の形態を、図面を参照して説明する。尚、先述した従来技術と同じものについては、同一の符号を付記して、詳細な説明を省略する。
【0040】
(第1の実施の形態)
第1の実施の形態では、図1に示すように、Aは、耐震貯水槽1に備えられた緊急弁2(弁の一例)のメンテナンスを行う際に用いられる作業用治具である。
【0041】
図2示すように、緊急弁2は、弁箱12、弁棒13、第1および第2弁体14,15、第1および第2弁箱弁座20,21、ピストン22、第1および第2シリンダーケース23,24、シリンダーカバー25、ばねケース26、開度計27、ばね28、指針29、ボルトカバー30、開度計カバー31等の部品を有しており、弁棒13の軸心方向に沿って各部品を着脱することにより分解および組立が可能である。
【0042】
また、弁箱12は、流入管3(配管の一例)に着脱自在に接続される流入側フランジ33(接続部の一例)と、流出管4(配管の一例)に着脱自在に接続される流出側フランジ34(接続部の一例)と、貯水槽1に着脱自在に接続される第1および第2フランジ35,36(図3参照)とを有している。流入側フランジ33と流出側フランジ34には、それぞれ、複数のボルト孔37が形成されている。
【0043】
作業用治具Aは、ベース体45と、ベース体45の上部に回動自在に設けられた支軸46と、支軸46に設けられた支持部材47とを有している。支持部材47は、緊急弁2の着脱が可能な着脱位置Bと、緊急弁2の分解又は組立作業が可能な第1および第2作業位置C,Dとに回動自在である。すなわち、支持部材47は、支軸46と一体に軸心周りに回動して、図3図7に示すように着脱位置Bにおいて、上向きに横倒して、弁棒13を水平方向(横方向)にした横置き姿勢の緊急弁2を下方から支持し、図1に示すように第1作業位置Cにおいて、縦に起立して、弁棒13を鉛直方向(上下方向)にした縦置き姿勢の緊急弁2を支持し、図5に示すように第2作業位置Dにおいて、縦に起立して、第1作業位置Cでの弁棒13の上下方向を180°逆転した縦置き姿勢の緊急弁2を支持する。
【0044】
尚、第1作業位置Cを0°とすると、時計周りで、着脱位置Bが90°、第2作業位置Dが180°の位置関係に設定されており、支持部材47は、図3に示すように着脱位置Bにおいて支軸46の上方に位置し、図1に示すように第1作業位置Cにおいて支軸46の一側方に位置し、図5に示すように第2作業位置Dにおいて、支軸46を中心として一側方とは反対側の他側方に位置する。
【0045】
図1図3図4に示すように、ベース体45は、下端に設けられた二本(一対)の脚49と、両脚49上に設けられたベース板50と、ベース板50上に設けられた台座51と、台座51上に立設された第1支柱部材52と、第1支柱部材52の上端部に設けられた第2支柱部材53と、第2支柱部材53の上端部に設けられた取付板54と、取付板54上に取り付けられた一対のピロー形ユニット55(軸受装置)とを有している。
【0046】
尚、ベース板50と台座51とは、複数のボルト93およびナット94を介して、着脱自在に連結されている。また、第1支柱部材52と第2支柱部材53とは、複数のボルト95およびナット96を介して、着脱自在に連結されている。また、支軸46は、両ピロー形ユニット55によって、軸心周りに回動自在に支持されている。
【0047】
支軸46の一端部には、支軸46を回動させるためのハンドル57(操作部材の一例)が回転自在に備えられている。ハンドル57と支軸46の端部との間には、ハンドル57の回転速度を減らして支軸46に伝える減速機58が介在されている。減速機58は取付フレーム59に取り付けられ、取付フレーム59は第2支柱部材53に設けられている。
【0048】
図6に示すように、減速機58は、ケーシング61と、差動歯車式の減速機構62と、入力軸63と、出力部材64とを有している。入力軸63にハンドル57が取り付けられ、支軸46の一端部が出力部材64に接続されている。減速機構62は、互いに内接して歯合する外歯歯車65と内歯歯車66とを有している。内歯歯車66はケーシング61の内周面に形成された固定歯車である。
【0049】
入力軸63は偏芯カム部63aを有し、この偏芯カム部63aは、外歯歯車65の中心部に形成された嵌入孔に嵌入されており、外歯歯車65を径方向へ押圧して内歯歯車66に歯合させる。出力部材64は、ケーシング61内に回転自在に保持され、複数のギヤピン67を介して、回転方向において外歯歯車65に係合しており、減速機構62を介して入力軸63に連動する。
【0050】
図7図8に示すように、支持部材47は、支持台70と、支持台70に設けられた連結体71とを有している。連結体71には貫通孔72が形成され、支軸46が貫通孔72に挿通されている。尚、連結体71と支軸46とは、楔機能を有する連結部材73によって、一体に回動するように連結されている。
【0051】
図8図9に示すように、支持台70の長手方向における中央部から一端部までの領域を第1領域75とし、中央部から他端部までの領域を第2領域76とすると、支持台70は、第1領域75において、緊急弁2の流出側フランジ34(又は流入側フランジ33)と連結可能な第1〜第7の連結孔77a〜77g(連結手段の一例)を有している。これら第1〜第7の連結孔77a〜77gは、複数のサイズの緊急弁2の流出側フランジ34(又は流入側フランジ33)に対応できるように、複数備えられている。尚、第1〜第4の連結孔77a〜77dには雌ねじが形成されていない貫通孔であり、第5〜第7の連結孔77e〜77gには雌ねじが形成されている貫通孔である。
【0052】
また、図8図10に示すように、支持台70は、第2領域76において、連結溝79と、緊急弁2の流入側フランジ33(又は流出側フランジ34)に連結可能な2個(複数個の一例)の溝ナット80a,80b(連結手段の一例)とを有している。連結溝79は支持台70の長手方向に長いT形状の溝である。両溝ナット80a,80bは、T形状のナットであり、連結溝79内に嵌め込まれている。
【0053】
図11図13に示すように、各溝ナット80a,80bにはそれぞれ、サイズの異なった2つ(複数)のねじ孔81,82が形成されている。溝ナット80a,80bは連結溝79内を長手方向に移動自在であり、溝ナット80a,80bを移動することによって、複数のサイズの緊急弁2の流入側フランジ33(又は流出側フランジ34)に対応できるように、両溝ナット80a,80b間の間隔を拡縮することができる。尚、図8図9に示すように、支持台70の他端部には、溝ナット80a,80bの連結溝79からの脱落を阻止するための脱落阻止板84が取り付けられている。
【0054】
図1図3図5に示すように、台座51には、支持部材47を第1作業位置Cに位置決めする第1位置決め装置86と、支持部材47を第2作業位置Dに位置決めする第2位置決め装置87とが設けられている。第1位置決め装置86は、台座51に立設されたチャンネル状のフレーム88と、フレーム88の上端部に設けられたボルト等のねじ部材89とを有している。支持部材47の支持台70の一端部は、回動方向において、ねじ部材89の上端部に当接離間自在である。ねじ部材89を回すことにより、支持台70の一端部がねじ部材89の上端部に当接する当接位置Eの高さを変えることができる。尚、第2位置決め装置87は第1位置決め装置86と同様の構造を有している。
【0055】
図3図7に示すように、支持部材47を着脱位置Bに固定する2本(複数本)の固定ボルト91(固定部材の一例)がベース体45の取付板54に着脱自在に設けられる。すなわち、両固定ボルト91を取付板54に形成されたねじ孔92に螺合し、両固定ボルト91の上端部を下方から支持部材47の連結体71に当接させることにより、支持部材47が着脱位置Bに固定される。
【0056】
上記作業用治具Aを用いて、以下のように緊急弁2を分解および組立ててメンテナンスを行うことができる。
【0057】
先ず、緊急弁2を以下のような方法で分解する。
【0058】
貯水槽1の据付現場(埋設現場)の地面に作業用治具Aを設置し、支持部材47を着脱位置Bに回動し、図3図7に示すように、両固定ボルト91をねじ孔92に螺合して取付板54に取り付け、両固定ボルト91で支持部材47を着脱位置Bに固定しておく。
【0059】
そして、図21に示すように、メンテナンス用仕切弁10を全開するとともに、流入側仕切弁8と流出側仕切弁9とを全閉する。その後、緊急弁2を、貯水槽1と流入管3と流出管4とから取り外し、トラック等に装備されたクレーンなどを用いて地上に吊り上げ、図14のステップ−1に示すように流入側および流出側フランジ33,34を下向きにした横置き姿勢で支持部材47上に下す。
【0060】
その後、図17に示すように、緊急弁2の流出側フランジ34のサイズに応じて、第1〜第7の連結孔77a〜77gの中から2つの連結孔(例えば第3の連結孔77cと第7の連結孔77g)を選択し、ボルト101を流出側フランジ34のいずれか1つのボルト孔37と第3の連結孔77cとに挿通して、ナット102に螺合するとともに、ボルト103を流出側フランジ34の別の1つのボルト孔37と第7の連結孔77gとに螺合する。これにより、緊急弁2の流出側フランジ34が支持部材47に連結される。
【0061】
また、緊急弁2の流入側フランジ33のサイズに応じて、両溝ナット80a,80bを連結溝79の長手方向に移動させ、両溝ナット80a,80bのねじ孔81の位置を流入側フランジ33のいずれかのボルト孔37の位置に対応させる。その後、ボルト105を流入側フランジ33のいずれか1つのボルト孔37に挿通して一方の溝ナット80aのねじ孔81に螺合するとともに、ボルト106を流入側フランジ33の別の1つのボルト孔37に挿通して他方の溝ナット80bのねじ孔81に螺合する。これにより、緊急弁2の流入側フランジ33が支持部材47に連結され、図14のステップ−1に示すように、緊急弁2が横置き姿勢で支持部材47に取り付けられて支持部材47で支持される。
【0062】
この際、図3図7に示すように、支持部材47は固定ボルト91によって着脱位置Bに固定されているので、緊急弁2の重量が支持部材47に作用しても、支持部材47が不用意に着脱位置Bから回動するのを防止することができる。
【0063】
その後、図3図7の仮想線で示すように、両固定ボルト91を取付板54から取り外し、ハンドル57を一方向に回して、図14のステップ−2に示すように、支持部材47を着脱位置Bから第1作業位置Cまで回動させることにより、緊急弁2が横置き姿勢から縦置き姿勢に変換される。この際、図1に示すように、支持部材47の支持台70の一端部が第1位置決め装置86のねじ部材89に上方から当接するが、ねじ部材89を回して当接位置Eの高さを調節することにより、支持部材47を正確に着脱位置Bから第1作業位置Cまで回動することができ、第1作業位置Cにおいて支持部材47で支持された緊急弁2の弁棒13を、傾斜させずに、正確に上下方向(鉛直方向)に向けることができる。
【0064】
これにより、図1に示すように、支持部材47を第1作業位置Cまで回動した後、緊急弁2の部品を、上部のものから順次、鉛直方向に取り外し、クレーン等を用いて、弁棒13に沿って円滑に真上に吊り上げ、弁棒13から離脱させることができる。このため、緊急弁2のほぼ半分の分解が専門工場と同程度の精度で行える。
【0065】
具体的な分解手順としては、例えば、図14のステップ−2,3に示すように、支持部材47を第1作業位置Cまで回動した後、先ず、緊急弁2の上部に位置するボルトカバー30を取り外し、次に、ステップ−3,4に示すようにシリンダーカバー25を取り外し、さらに、ステップ−4,5に示すようにピストン22および第1シリンダーケース23を取り外し、図14のステップ−5および図15のステップ−6に示すように第1弁箱弁座20を取り外し、その後、図15のステップ−6,7に示すように第1弁体14を取り外して弁棒13に沿って吊り上げて離脱させる。このような各部品と共に、適宜、ワッシャー、Oリング、パッキン等も取り外す。
【0066】
その後、ハンドル57を他方向に回して、ステップ−8に示すように支持部材47を第1作業位置Cから第2作業位置Dまで回動させることにより、緊急弁2は上下が逆転した縦置き姿勢に変換される。この際、図5に示すように、支持部材47の支持台70の他端部が第2位置決め装置87のねじ部材89に上方から当接するが、ねじ部材89を回して当接位置Eの高さを調節することにより、支持部材47を正確に第1作業位置Cから第2作業位置Dまで回動することができ、第2作業位置Dにおいて支持部材47で支持された緊急弁2の弁棒13を、傾斜させずに、正確に上下方向(鉛直方向)に向けることができる。
【0067】
これにより、支持部材47を第2作業位置Dまで回動した後、緊急弁2の部品を、上部のものから順次、鉛直方向に取り外し、クレーン等を用いて、弁棒13に沿って円滑に真上に吊り上げ、弁棒13から離脱させることができる。このため、緊急弁2の残り半分の分解が専門工場と同程度の精度で行える。
【0068】
具体的な分解手順としては、例えば、図15のステップ−8,9に示すように、支持部材47を第2作業位置Dまで回動した後、先ず、上部に位置する開度計カバー31を取り外し、さらに、ステップ−9,10に示すように開度計27を取り外し、ステップ−10,11に示すように指針29を取り外し、ステップ−11,12に示すようにばねケース26を取り外し、ステップ−12,13に示すようにばね28を取り外し、ステップ−13,14に示すように第2シリンダーケース24を取り外し、ステップ−14,15に示すように弁棒13および第2弁体15を取り外して弁箱12から吊り上げ、その後、第2弁箱弁座21を取り外すことにより、支持部材47には弁箱12が残る。このような各部品と共に、適宜、Oリング、パッキン、シート等も取り外す。
【0069】
このようにして取り外した各部品を、点検し、補修又は交換等した後、上記分解手順とは逆の手順で緊急弁2を組立てる。組立後、図14のステップ−1で示すように、緊急弁2を支持している支持部材47を第1作業位置Cから着脱位置Bに回動し、図7に示すように、両固定ボルト91を取付板54に取り付け、両固定ボルト91で支持部材47を着脱位置Bに固定する。
【0070】
その後、図17の仮想線で示すように、ナット102を外して、ボルト101を第3の連結孔77cと緊急弁2の流出側フランジ34のボルト孔37とから脱抜するとともに、ボルト103を第7の連結孔77gと流出側フランジ34のボルト孔37とから離脱させる。これにより、緊急弁2の流出側フランジ34が支持部材47から分離する。
【0071】
さらに、両ボルト105,106を、溝ナット80a,80bのねじ孔81から離脱して、緊急弁2の流入側フランジ33のボルト孔37から脱抜させる。これにより、緊急弁2の流入側フランジ33が支持部材47から分離する。このようにして、緊急弁2を、支持部材47から取り外した後、クレーン等を用いて吊り上げ、据付現場に下して、図21に示すように、貯水槽1と流入管3と流出管4とに据え付ける。
【0072】
これにより、作業用治具Aを用いて、据付現場で緊急弁2のメンテナンスを行うことができるので、メンテナンスのために緊急弁2を据付現場と専門工場との間で運搬する必要はなく、緊急弁2のメンテナンスを短期間で行うことができ、耐震貯水槽1の機能停止期間を最小限にとどめることができる。
【0073】
また、ハンドル57を回すことにより、支持部材47を回動させることができ、この際、ハンドル57の回転速度が減速機58で減速されて支軸46に伝えられ、支軸46と共に支持部材47が回動して着脱位置Bと第1作業位置Cと第2作業位置Dとに切り換えられる。
また、緊急弁2を流入および流出管3,4に接続するための流入側および流出側フランジ33,34を利用して、緊急弁2を作業用治具Aの支持部材47に連結することができる。
【0074】
さらに、図17に示すように、ボルト101,103およびナット102を用いて緊急弁2の流出側フランジ34を支持部材47に連結する際、流出側フランジ34のサイズに応じて、第1〜第7の連結孔77a〜77g(図8図9参照)の中から、第3の連結孔77cと第7の連結孔77gとの組合せを選択したが、この組合せ以外に、第1の連結孔77aと第5の連結孔77eとの組合せ、第2の連結孔77bと第5の連結孔77eとの組合せ、第3の連結孔77cと第6の連結孔77fとの組合せおよび第4の連結孔77dと第6の連結孔77fとの組合せのいずれかの組合せを選択し、選択した連結孔を用いて緊急弁2の流出側フランジ34を支持部材47に連結することにより、サイズの異なった複数種類の流出側フランジ34に対応することができる。
【0075】
また、図17に示すように、ボルト105,106および溝ナット80a,80bを用いて緊急弁2の流入側フランジ33を支持部材47に連結する際、流入側フランジ33のサイズに応じて、溝ナット80a,80bを連結溝79の長手方向に移動させ、溝ナット80a,80bのねじ孔81の位置を流入側フランジ33のいずれかのボルト孔37の位置に合わせることができるため、サイズの異なった複数種類の流入側フランジ33に対応することができる。これにより、サイズの異なった複数種類(本実施の形態では5種類のサイズ)の緊急弁2を1台の共通の作業用治具Aを用いて分解および組立てることができる。
【0076】
また、上記第1の実施の形態では、ボルト105,106を、溝ナット80a,80bの各ねじ孔81に螺合しているが、緊急弁2のサイズに応じて、ねじ孔82に螺合してもよい。
【0077】
尚、緊急弁2のサイズとしては、例えば口径が100〜300であり、全長L(図2参照)が約1200〜2100mm、重量が約300〜1100kgの範囲等にある。
【0078】
また、作業用治具Aをトラック等で運搬する場合、作業用治具Aをそのまま荷台に載せてもよく、或いは、図1に示すように、作業用治具Aのボルト95およびナット96を外して、作業用治具Aを、第1支柱部材52と第2支柱部材53との連結部分から二分割して、運搬してもよい。
【0079】
(第2の実施の形態)
第2の実施の形態では、図18に示すように、作業用治具Aのベース体45は、スペーサ120(高さ変更部材の一例)の着脱によって、脚49から支軸46までの高さHを変えることができる。すなわち、図1で示したナット94をボルト93から取り外して、ベース板50と台座51とを分離し、図18に示すように、スペーサ120をベース板50と台座51との間に設けている。
【0080】
図19に示すように、スペーサ120は、上下一対の板部材121,122と、両板部材121,122間に設けられた円筒状の胴体123とを有している。下部の板部材121は複数のボルト93およびナット94によってベース板50に着脱自在に連結され、上部の板部材122は複数のボルト124およびナット125によって台座51に着脱自在に連結されている。
【0081】
以下、上記構成における作用を説明する。
【0082】
緊急弁2のサイズが大型になると、これに応じてスペーサ120を取り付けることにより、脚49から支軸46までの高さHが増加するため、支持部材47の高さが増し、支持部材47を第1作業位置C(図18参照)又は第2作業位置Dに回動して、緊急弁2を縦置き姿勢に変換した際、緊急弁2の下端が地面又はベース体45の脚49に干渉するのを防止することができる。
【0083】
また、高さhの異なった複数のスペーサ120を用意しておくことで、ベース体45の脚49から支軸46までの高さHを緊急弁2のサイズに応じて多段階に変更することができる。
【0084】
上記各実施の形態では、弁の一例として緊急弁2を挙げたが、このような緊急弁2に限定されるものではなく、例えば図20に示すように、仕切弁130等であってもよい。この場合、支持部材47を第1作業位置C(或いは第2作業位置D)に位置させて、支持部材47に支持された仕切弁130を分解および組立てればよい。また、緊急弁2のサイズは実施の形態に記載された数値に限定されるものではない。
【0085】
上記各実施の形態では、操作部材の一例としてハンドル57を挙げたが、ハンドル57の代わりにレバー等を用いてもよい。
【0086】
上記各実施の形態では、差動歯車式の減速機構62を内蔵した減速機58を設けているが、差動歯車式に限定されるものではなく、例えば、主軸を交換することで、他の形式(ウォームギア式等)の減速機構を採用してもよい。
【符号の説明】
【0087】
2 緊急弁
3 流入管(配管)
4 流出管(配管)
13 弁棒
14,15 第1および第2弁体
33 流入側フランジ(接続部)
34 流出側フランジ(接続部)
45 ベース体
46 支軸
47 支持部材
57 ハンドル(操作部材)
58 減速機
77a〜77g 連結孔(連結手段)
80a,80b 溝ナット(連結手段)
86,87 第1および第2位置決め装置
91 固定ボルト(固定部材)
120 スペーサ(高さ変更部材)
A 作業用治具
B 着脱位置
C 第1作業位置
D 第2作業位置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22