特許第6738689号(P6738689)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日立造船株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6738689-電子線滅菌設備 図000002
  • 特許6738689-電子線滅菌設備 図000003
  • 特許6738689-電子線滅菌設備 図000004
  • 特許6738689-電子線滅菌設備 図000005
  • 特許6738689-電子線滅菌設備 図000006
  • 特許6738689-電子線滅菌設備 図000007
  • 特許6738689-電子線滅菌設備 図000008
  • 特許6738689-電子線滅菌設備 図000009
  • 特許6738689-電子線滅菌設備 図000010
  • 特許6738689-電子線滅菌設備 図000011
  • 特許6738689-電子線滅菌設備 図000012
  • 特許6738689-電子線滅菌設備 図000013
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6738689
(24)【登録日】2020年7月22日
(45)【発行日】2020年8月12日
(54)【発明の名称】電子線滅菌設備
(51)【国際特許分類】
   B65B 55/08 20060101AFI20200730BHJP
   B65B 55/04 20060101ALI20200730BHJP
   A61L 2/08 20060101ALI20200730BHJP
【FI】
   B65B55/08 B
   B65B55/04 C
   B65B55/04 M
   A61L2/08 108
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-165234(P2016-165234)
(22)【出願日】2016年8月26日
(65)【公開番号】特開2018-30627(P2018-30627A)
(43)【公開日】2018年3月1日
【審査請求日】2019年4月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005119
【氏名又は名称】日立造船株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001298
【氏名又は名称】特許業務法人森本国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】横林 孝康
【審査官】 二ッ谷 裕子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−121852(JP,A)
【文献】 特開2014−129139(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/062006(WO,A1)
【文献】 特開平10−218133(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/058205(WO,A1)
【文献】 特表2011−514292(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65B 53/00 − 55/24
A61L 2/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を有する滅菌対象物の搬送装置と、この搬送装置に搬送されている滅菌対象物の外面に電子線を照射して滅菌する外面電子線照射装置とが設けられた電子線滅菌設備であって、
上記搬送装置が、上記外面電子線照射装置により上記滅菌対象物の外面に電子線が照射されている際に、当該滅菌対象物の開口部を内から保持する内保持具を有し、
上記内保持具から上記滅菌対象物が受け渡される際に、当該滅菌対象物の内部における菌が上記開口部から拡散しないようにする菌拡散防止手段を設け
上記外面電子線照射装置の下流側において搬送装置に搬送されている滅菌対象物の内面に電子線を照射して滅菌する内面電子線照射装置が設けられ、
上記搬送装置が、上記内面電子線照射装置により上記滅菌対象物の内面に電子線が照射されている際に、当該滅菌対象物を外から保持する外保持具を有し、
上記菌拡散防止手段が、上記内保持具から上記滅菌対象物が上記外保持具まで受け渡される際に、当該滅菌対象物の内部における菌が上記開口部から拡散しないようにするものであることを特徴とする電子線滅菌設備。
【請求項2】
菌拡散防止手段が、内保持具から上記滅菌対象物が上記外保持具まで受け渡される際に、当該滅菌対象物の開口部にも電子線を照射するように構成された上記内面電子線照射装置であることを特徴とする請求項に記載の電子線滅菌設備。
【請求項3】
開口部を有する滅菌対象物の搬送装置と、この搬送装置に搬送されている滅菌対象物の外面に電子線を照射して滅菌する外面電子線照射装置とが設けられた電子線滅菌設備であって、
上記搬送装置が、上記外面電子線照射装置により上記滅菌対象物の外面に電子線が照射されている際に、当該滅菌対象物の開口部を内から保持する内保持具を有し、
上記内保持具から上記滅菌対象物が受け渡される際に、当該滅菌対象物の内部における菌が上記開口部から拡散しないようにする菌拡散防止手段を設け、
上記菌拡散防止手段が、外面電子線照射装置により外面に電子線が照射された後で上記内保持具から上記滅菌対象物が受け渡される際に、滅菌対象物の開口部に電子線を照射して滅菌する開口部電子線照射装置であることを特徴とする電子線滅菌設備。
【請求項4】
菌拡散防止手段が、内保持具にも電子線を照射して滅菌するように構成されたことを特徴とする請求項2または3に記載の電子線滅菌設備。
【請求項5】
開口部を有する滅菌対象物の搬送装置と、この搬送装置に搬送されている滅菌対象物の外面に電子線を照射して滅菌する外面電子線照射装置とが設けられた電子線滅菌設備であって、
上記搬送装置が、上記外面電子線照射装置により上記滅菌対象物の外面に電子線が照射されている際に、当該滅菌対象物の開口部を内から保持する内保持具を有し、
上記内保持具から上記滅菌対象物が受け渡される際に、当該滅菌対象物の内部における菌が上記開口部から拡散しないようにする菌拡散防止手段を設け、
上記菌拡散防止手段が、外面電子線照射装置により外面に電子線が照射された後で上記内保持具から上記滅菌対象物が受け渡される際に、滅菌対象物の開口部から気体を吸引する吸引機であることを特徴とする電子線滅菌設備。
【請求項6】
内保持具が、滅菌対象物の開口部を封止しながら内から保持する内封保持具であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の電子線滅菌設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子線滅菌設備に関するものである。
【背景技術】
【0002】
飲食品用または医療用の容器を取り扱う企業は、その容器の滅菌が不十分ゆえに食中毒または医療の事故を引き起こすと、社会からの信用が大きく失墜することになる。このため、これらの容器などには、安全性が重要視される先進諸国で、確実な滅菌が必要である。
【0003】
現在では、容器を確実に滅菌するための設備として、容器に電子線を照射するものが採用されている。このような設備には、容器の外面および内面を確実に滅菌するために、容器の外面に電子線を照射する外面電子線照射装置と、容器の内面に電子線を照射する内面電子線照射装置とが設けられる。また、上記設備には、滅菌されていない容器の供給側から、上記外面電子線照射装置および内面電子線照射装置を介して、滅菌された容器の排出側に搬送する、搬送装置も設けられる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−35330号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の容器は、上流側の外面電子線照射装置により容器の外面が滅菌された後、下流側の内面電子線照射装置により容器の内面が滅菌されるまでに、容器の内部にある菌が容器の開口部から飛散して当該容器の外面に付着するおそれがある。このため、容器の外面が菌の付着により汚染されれば、当該容器の滅菌が不十分な結果となってしまう。また、容器の外面を確実に滅菌するために、内面電子線照射装置の下流側にさらなる外面電子線照射装置を設ければ、設備が全体として大掛かりになってしまう。
そこで、本発明は、簡素な構成で容器(開口部を有する滅菌対象物)の外面を確実に滅菌し得る電子線滅菌設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、第1の発明に係る電子線滅菌設備は、開口部を有する滅菌対象物の搬送装置と、この搬送装置に搬送されている滅菌対象物の外面に電子線を照射して滅菌する外面電子線照射装置とが設けられた電子線滅菌設備であって、
上記搬送装置が、上記外面電子線照射装置により上記滅菌対象物の外面に電子線が照射されている際に、当該滅菌対象物の開口部を内から保持する内保持具を有し、
上記内保持具から上記滅菌対象物が受け渡される際に、当該滅菌対象物の内部における菌が上記開口部から拡散しないようにする菌拡散防止手段を設け
上記外面電子線照射装置の下流側において搬送装置に搬送されている滅菌対象物の内面に電子線を照射して滅菌する内面電子線照射装置が設けられ、
上記搬送装置が、上記内面電子線照射装置により上記滅菌対象物の内面に電子線が照射されている際に、当該滅菌対象物を外から保持する外保持具を有し、
上記菌拡散防止手段が、上記内保持具から上記滅菌対象物が上記外保持具まで受け渡される際に、当該滅菌対象物の内部における菌が上記開口部から拡散しないようにするものである。
【0007】
また、第2の発明に係る電子線滅菌設備は、第1の発明に係る電子線滅菌設備における菌拡散防止手段が、内保持具から上記滅菌対象物が上記外保持具まで受け渡される際に、当該滅菌対象物の開口部にも電子線を照射するように構成された上記内面電子線照射装置であるものである。
【0008】
さらに、第3の発明に係る電子線滅菌設備は、開口部を有する滅菌対象物の搬送装置と、この搬送装置に搬送されている滅菌対象物の外面に電子線を照射して滅菌する外面電子線照射装置とが設けられた電子線滅菌設備であって、
上記搬送装置が、上記外面電子線照射装置により上記滅菌対象物の外面に電子線が照射されている際に、当該滅菌対象物の開口部を内から保持する内保持具を有し、
上記内保持具から上記滅菌対象物が受け渡される際に、当該滅菌対象物の内部における菌が上記開口部から拡散しないようにする菌拡散防止手段を設け、
上記菌拡散防止手段が、外面電子線照射装置により外面に電子線が照射された後で上記内保持具から上記滅菌対象物が受け渡される際に、滅菌対象物の開口部に電子線を照射して滅菌する開口部電子線照射装置であるものである。
【0009】
加えて、第4の発明に係る電子線滅菌設備は、第2または第3の発明に係る電子線滅菌設備における菌拡散防止手段が、内保持具にも電子線を照射して滅菌するように構成されたものである。
【0010】
また、第5の発明に係る電子線滅菌設備は、開口部を有する滅菌対象物の搬送装置と、この搬送装置に搬送されている滅菌対象物の外面に電子線を照射して滅菌する外面電子線照射装置とが設けられた電子線滅菌設備であって、
上記搬送装置が、上記外面電子線照射装置により上記滅菌対象物の外面に電子線が照射されている際に、当該滅菌対象物の開口部を内から保持する内保持具を有し、
上記内保持具から上記滅菌対象物が受け渡される際に、当該滅菌対象物の内部における菌が上記開口部から拡散しないようにする菌拡散防止手段を設け、
上記菌拡散防止手段が、外面電子線照射装置により外面に電子線が照射された後で上記内保持具から上記滅菌対象物が受け渡される際に、滅菌対象物の開口部から気体を吸引する吸引機であるものである。
【0011】
また、第6の発明に係る電子線滅菌設備は、第1乃至第5のいずれかの発明に係る電子線滅菌設備における内保持具が、滅菌対象物の開口部を封止しながら内から保持する内封保持具であるものである。
【発明の効果】
【0013】
上記電子線滅菌設備によると、上記滅菌対象物の内部からの菌が滅菌された外面を汚染することはないので、簡素な構成で滅菌対象物の外面を確実に滅菌することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施の形態に係る電子線滅菌設備を示す概略構成図である。
図2】本発明の実施例1に係る電子線滅菌設備の平面図である。
図3図2の符号Bの位置における上流側から下流側を見た側面図である。
図4図2の符号Bから符号Cまでの位置における上流側から下流側を見た側面図である。
図5図2の符号Bから符号Cまでの位置における上流側から下流側を見た図4よりも下流側の側面図である。
図6図2の符号Cの位置における上流側から下流側を見た側面図である。
図7図2の符号Cから符号Dまでの位置における上流側から下流側を見た側面図である。
図8】本発明の実施例2に係る電子線滅菌設備における図5に相当する図である。
図9】同電子線滅菌設備における図6に相当する図である。
図10】同電子線滅菌設備における図7に相当する図である。
図11】本発明の実施例3に係る電子線滅菌設備における図6に相当する図である。
図12】同電子線滅菌設備における図7に相当する図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態に係る電子線滅菌設備について図1に基づき説明する。
【0016】
この電子線滅菌設備は、図1に示すように、開口部7を有する滅菌対象物6の搬送装置2と、この搬送装置2に搬送されている滅菌対象物6の外面に電子線を照射して滅菌する外面電子線照射装置3とが設けられる。上記開口部7が形成された滅菌対象物6は、例えば、ペットボトルなどの容器、またはプリフォーム体などである。なお、プリフォーム体とは、ブロー成形によりペットボトルに成形される前の原料体であって試験管形状のものである。以下では、簡単のために、上記開口部7が形成された滅菌対象物6をペットボトル6として説明する。
【0017】
上記搬送装置2は、上記外面電子線照射装置3により上記ペットボトル6の外面に電子線が照射されている際に、当該ペットボトル6の開口部7を封止しながら内から保持する内封保持具21(内保持具の一例である)を有する。
【0018】
また、上記電子線滅菌設備1は、上記内封保持具21から上記ペットボトル6が受け渡される際に、当該ペットボトル6の内部における菌が上記開口部7から拡散しないようにする手段、つまり菌拡散防止手段5が設けられる。上記内封保持具21から上記ペットボトル6が受け渡される先は、特に限定されるものではないが、例えば、図1に示すものだと、他の搬送装置4である。上記菌拡散防止手段5は、菌が上記開口部7から拡散しないようにする手段であれば、特に限定されるものではない。この菌拡散防止手段5は、図1には具体的に示さないが、例えば、ペットボトル6の開口部7に電子線を照射して滅菌する他の電子線照射装置、または、ペットボトル6の開口部7から内部の気体を菌ごと吸引する吸引機などである。
次に、上記電子線滅菌設備1の作用について説明する。
【0019】
ペットボトル6の開口部7が搬送装置2の内封保持具21により内から封止されながら保持されつつ、当該ペットボトル6が搬送装置2により搬送される。この搬送されているペットボトル6の外面に外面電子線照射装置3から電子線が照射されて滅菌される。外面が滅菌されたペットボトル6は、搬送装置2により搬送されている間、開口部7が内封保持具21により封止されている。このため、この間は、ペットボトル6の内部における菌が開口部7から拡散して外面を汚染することはない。その後、内封保持具21からペットボトル6が例えば他の搬送装置4に受け渡される際には、内封保持具21による上記封止が解かれることになる。しかし、菌拡散防止手段5により、ペットボトル6の内部における菌が開口部7から拡散しないので、内部からの菌が滅菌された外面を汚染することはない。
【0020】
このように、上記電子線滅菌設備1によると、ペットボトル6の内部からの菌が滅菌された外面を汚染することはないので、簡素な構成でペットボトル6の外面を確実に滅菌することができる。
以下、上記実施の形態をより具体的に示した実施例1〜3に係る電子線滅菌設備1について説明する。
【実施例1】
【0021】
本実施例1に係る電子線滅菌設備1は、図2に示すように、ペットボトル6を搬送しながら当該ペットボトル6の外面を滅菌するための外面滅菌用搬送装置2(搬送装置2の一例である)と、この外面滅菌用搬送装置2から受け渡されたペットボトル6を搬送しながら当該ペットボトル6の内面を滅菌するための内面滅菌用搬送装置4とが設けられる。なお、この内面滅菌用搬送装置4は、上記実施の形態における他の搬送装置4の一例である。上記電子線滅菌設備1は、さらに、外面電子線照射装置3、すなわち、上記外面滅菌用搬送装置2に搬送されているペットボトル6の外面に電子線を照射して滅菌する装置が設けられる。図2において、符号Aは外面滅菌用搬送装置2が上流側からペットボトル6を受け取る位置を示し、符号Bはペットボトル6の外面が滅菌される位置を示し、符号Cは外面滅菌用搬送装置2からペットボトル6が内面滅菌用搬送装置4に受け渡される位置を示し、符号Dは内面滅菌用搬送装置4がペットボトル6を下流側に受け渡す位置を示す。ここで、図3図7は、ペットボトル6が搬送される経路上において上流側から下流側を見た側面図である。また、図3は符号Bでの位置を示し、図4および図5は符号Bから符号Cまでの間の位置を示し(図4が上流側で図5が下流側)、図6は符号Cでの位置を示し、図7は符号Cから符号Dまでの間の位置を示す。
[外面の滅菌に関する構成]
【0022】
上記外面滅菌用搬送装置2は、図2に示すように、平面視で時計回りに回転する円板状の外面滅菌用ターンテーブル20と、この外面滅菌用ターンテーブル20の外周部に等ピッチで多数配置されてペットボトル6を搬送するための外面滅菌用搬送ユニット21〜23とを有する。
【0023】
上記外面滅菌用搬送ユニット21〜23は、それぞれ、ペットボトル6の開口部7を封止しながら内から保持する内封保持具21と、ペットボトル6の口部8を外から保持する外面滅菌用グリッパ22(外保持具の一例である)と、上記内封保持具21および外面滅菌用グリッパ22をそれぞれ適切な位置にする保持位置調整器23とを有する。この保持位置調整器23は、図3に示すように、外面滅菌用ターンテーブル20の外方側で内封保持具21を出退および昇降させる出退昇降機構24と、外面滅菌用ターンテーブル20の外方側で外面滅菌用グリッパ22を出退させる出退機構25とを有する。
【0024】
上記内封保持具21は、図3に示すように、出退昇降機構24から外面滅菌用ターンテーブル20の外方側に延びる水平バー31と、この水平バー31の先端部(外面滅菌用ターンテーブル20の外方側における先端部)で鉛直に配置されたピン32と、このピン32の下端部に配置された膨縮部33と、上記ピン32の上端部に配置された磁気ローラ34とを有する。また、上記内封保持具21は、図3図5に示すように、膨縮部33を膨張させることでペットボトル6の開口部7を内から封止しながら保持する一方、図6および図7に示すように、膨縮部33を縮小させることでペットボトル6の開口部7から抜き取り得る状態にするものである。さらに、上記内封保持具21は、上記ペットボトル6の内部における菌が上記開口部7から拡散しないようする機能を持つ部品から構成され、例えば、ゴムや樹脂などの弾性体を使用した保持具も含む。上記内封保持具21の膨縮部33は、自ら膨張および縮小するものに限られず、外力によって変形して開口部7を内から保持するものでもよい。上記内封保持具21は、図6に示すように、磁気ローラ34が磁気ガイド36(詳しくは後述する)に沿って相対移動することで、当該磁気ローラ34とともにピン32および膨縮部33が鉛直軸Zの回りに自転するものである。このようなピン32および膨縮部33の自転(回転)は、磁気ローラ34および磁気ガイド36によるものに限られず、ギヤおよびラック、または、ベルトおよびプーリによるものでもよい。上記外面滅菌用グリッパ22は、図3から図4に示すように、外面滅菌用ターンテーブル20の外方側に、つまりペットボトル6側にグリップアーム29を有し、このグリップアーム29によりペットボトル6の口部8を外から把持する構成である。
【0025】
上記出退昇降機構24は、水平バー31を、外面滅菌用搬送装置2が上流側からペットボトル6を受け取る位置で退入および上昇させた状態(膨縮部33が開口部7を封止しない状態)にし、ペットボトル6の外面が滅菌される位置で図3に示す突出および下降させた状態(膨縮部33が開口部7を封止する状態)にし、外面滅菌用搬送装置2からペットボトル6が内面滅菌用搬送装置4に受け渡される位置で図6に示す再び退入および上昇させた状態(膨縮部33が開口部7を封止しない状態)にするものである。なお、図6に示すように、外面滅菌用搬送装置2からペットボトル6が内面滅菌用搬送装置4に受け渡される位置での水平バー31は、上記出退昇降機構24により、内面電子線照射装置43(詳しくは後述する)からの電子線が膨縮部33にも照射される位置に調整される。一方で、上記出退機構25は、図2に示すように、外面滅菌用グリッパ22を、外面滅菌用搬送装置2が上流側からペットボトル6を受け取る位置で突出させた状態にし、ペットボトル6の外面が滅菌される位置で退入させた状態にし、外面滅菌用搬送装置2からペットボトル6が内面滅菌用搬送装置4に受け渡される位置で再び突出させた状態にするものである。上記出退昇降機構24および出退機構25は、いずれも、所定の位置で水平バー31および外面滅菌用グリッパ22を出退および昇降させるので、例えば制御用のカムなどを有する。なお、上記外面滅菌用グリッパ22は、ペットボトル6の回転時に当該ペットボトル6との接触部において摺動が発生しない機能を有するものである。この機能を確実に有するようにするために、上記出退機構25に代えて、または上記出退機構25に加えて、上記外面滅菌用グリッパ22のグリップアーム29を開閉させる開閉機構を、上記保持位置調整器23が有してもよい。
[内面の滅菌に関する構成]
【0026】
上記内面滅菌用搬送装置4は、図2に示すように、平面視で反時計回りに回転する円板状の内面滅菌用下段ターンテーブル40と、この内面滅菌用下段ターンテーブル40の外周部に等ピッチで多数配置されてペットボトル6を搬送するための内面滅菌用搬送ユニット44〜46とを有する。また、上記内面滅菌用搬送装置4は、図5図7に示すように(図2では省略)、内面滅菌用下段ターンテーブル40の上方に、当該内面滅菌用下段ターンテーブル40と同心の内面滅菌用上段ターンテーブル41と、上記内面滅菌用下段ターンテーブル40および内面滅菌用上段ターンテーブル41の回転を同期させる柱体42と、この内面滅菌用上段ターンテーブル41の外周部に等ピッチで多数配置されてペットボトル6の内面に電子線を照射して滅菌する内面電子線照射装置43とを有する。この内面電子線照射装置43は、そのノズル43nの先端から電子線を照射するものであり、当該ノズル43nの先端を下方に向けて配置される。
【0027】
上記内面滅菌用搬送ユニット44〜46は、図5図7に示すように、ペットボトル6の口部8を外から保持する内面滅菌用グリッパ44と、この内面滅菌用グリッパ44に取り付けられた鉛直バー45と、この鉛直バー45とともに内面滅菌用グリッパ44を昇降させる昇降装置46とを有する。上記内面滅菌用グリッパ44は、上記外面滅菌用グリッパ22と同様の構成であり、ペットボトル6側にグリップアーム49を有する。
【0028】
上記内面滅菌用上段ターンテーブル41は、図5図7に示すように、上記内面電子線照射装置43を取り付ける固定具47を有する。上記固定具47は、図6および図7に示すように、内面滅菌用グリッパ44に把持されたペットボトル6の開口部7の直上方に内面電子線照射装置43が位置するように配置される。図6に示すように、ペットボトル6が搬送される経路上における、外面滅菌用搬送装置2からペットボトル6が内面滅菌用搬送装置4に受け渡される位置には、電子線滅菌設備1の天面となる上面フレーム11から(床面となるベースプレート12からでもよい)支持具37を介して磁気ガイド36が設けられる。この磁気ガイド36は、外面滅菌用搬送装置2(具体的には外面滅菌用グリッパ22)からペットボトル6が内面滅菌用搬送装置4(具体的には内面滅菌用グリッパ44)に受け渡される際に、磁気ローラ34と面するように配置される。
【0029】
上記昇降装置46は、鉛直バー45を、外面滅菌用搬送装置2からペットボトル6が内面滅菌用搬送装置4に受け渡される位置で図6に示す下降させた状態にし、ペットボトル6の内面を滅菌する位置で図7に示すノズル43nが開口部7を介してペットボトル6の内部に入るまで上昇させた状態にし、内面滅菌用搬送装置4からペットボトル6を下流側に受け渡す位置で再び下降させた状態にするものである。また、上記昇降装置46は、所定の位置で鉛直バー45を昇降させるので、例えば制御用のカムなどを有する。
次に、上記電子線滅菌設備1の作用について説明する。
【0030】
図2に示すように、符号Aの位置で外面滅菌用搬送装置2がペットボトル6を受け取ると、外面滅菌用ターンテーブル20の回転に伴って、ペットボトル6が符号Bの位置を経て符号Cの位置まで時計回りに搬送される。符号Cの位置で外面滅菌用搬送装置2からペットボトル6が内面滅菌用搬送装置4に受け渡されると、内面滅菌用下段ターンテーブル40の回転に伴って、ペットボトル6が符号Dの位置まで反時計回りに搬送される。
【0031】
符号Aの位置ではペットボトル6が外面滅菌用グリッパ22に把持されるが、符号Bの位置までに、水平バー31が突出および下降することで、ペットボトル6が内封保持具21に保持された後、外面滅菌用グリッパ22が退入してペットボトル6の把持を解除する。すなわち、符号Aの位置から符号Bの位置までに、ペットボトル6が外面滅菌用グリッパ22から内封保持具21に持ち替えられる。その状態のまま、ペットボトル6は符号Bを通過することにより、図3に示すように、外面が滅菌される。ここで、図示しない他の磁気ガイドにより磁気ローラ34がピン32および膨縮部33とともに鉛直軸Zの回りに回転し、この回転により膨縮部33に保持されているペットボトル6も回転する。結果として、ペットボトル6の外面の全てに電子線が照射されて滅菌される。
【0032】
符号Bの位置から符号Cの位置までに、外面滅菌用グリッパ22が突出してペットボトル6を把持する。すなわち、ペットボトル6は、図4に示すように、内封保持具21に保持されたまま、外面滅菌用グリッパ22に再び把持される。
【0033】
符号Cの位置では、図5から図6に示すように、膨縮部33が縮小してペットボトル6の開口部7から抜き取られるが、この間、開口部7の直上方まで移動する内面電子線照射装置43のノズル43nから、開口部7に向けて電子線の照射が続けられる。これにより、ペットボトル6の開口部7から拡散しようとする菌が死滅するので、この際の内面電子線照射装置43が上記実施の形態における菌拡散防止手段5として作用する。なお、この際に、図6に示すように、回転するピン32および膨縮部33が、内面電子線照射装置43からの電子線の照射により滅菌される。
【0034】
符号Cの位置から符号Dの位置までに、図7に示すように、昇降装置46によりペットボトル6が上昇し、開口部7を介してノズル43nがペットボトル6の内部に入る。この間、内面電子線照射装置43のノズル43nから、ペットボトル6の内面に向けて電子線の照射が続けられる。これにより、ペットボトル6の内面の全てに電子線が照射されて滅菌される。
符号Dの位置では、滅菌されたペットボトル6が下流側に受け渡される。
【0035】
このように、上記電子線滅菌設備1によると、ペットボトル6の内部からの菌が内面電子線照射装置43からの電子線により死滅されるので、滅菌された外面を汚染することはなく、その結果、簡素な構成でペットボトル6の外面を確実に滅菌することができる。
【0036】
また、封止が解除されながら、ピン32および膨縮部33が内面電子線照射装置43により滅菌されるので、ピン32および膨縮部33に付着した菌がペットボトル6に落下してペットボトル6の外面を汚染することはなく、その結果、簡素な構成でペットボトル6の外面をより確実に滅菌することができる。
【0037】
さらに、ペットボトル6の内面に電子線を照射して滅菌するための内面電子線照射装置43が菌拡散防止手段5として作用するので、菌拡散防止手段5として別途の装置を設ける必要がなく、その結果、より簡素な構成でペットボトル6の外面を確実に滅菌することができる。
【実施例2】
【0038】
以下、本実施例2に係る電子線滅菌設備1について図8図10に基づき詳細に説明する。
【0039】
本実施例2に係る電子線滅菌設備1は、菌拡散防止手段5が、上記実施例1で説明した内面電子線照射装置43ではなく、別途の電子線照射装置である。なお、本実施例2において、上記実施例1と同一の構成については同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0040】
図8に示すように、外面滅菌用ターンテーブル20の外周部で各外面滅菌用搬送ユニット21〜23の近傍に、外面滅菌用グリッパ22に把持されたペットボトル6の開口部7に電子線を照射する開口部電子線照射装置51が、菌拡散防止手段5として設けられる。より具体的には、図9に示すように、外面滅菌用搬送装置2からペットボトル6が内面滅菌用搬送装置4に受け渡される際における、ペットボトル6の開口部7から膨縮部33までの延長線上に、開口部電子線照射装置51が配置される。
【0041】
この開口部電子線照射装置51から、図8に示すように、内封保持具21の内封が解除される際に、ペットボトル6の開口部7および膨縮部33に向けて電子線が照射される。電子線の照射は、図9から図10に示すように、外面滅菌用搬送装置2からペットボトル6が内面滅菌用搬送装置4に受け渡された後、内面電子線照射装置43により内面が滅菌される直前まで続けられる。これにより、ペットボトル6の開口部7から拡散しようとする菌が死滅するので、開口部電子線照射装置51が上記実施の形態における菌拡散防止手段5として作用する。なお、この際に、図6に示すように、回転するピン32および膨縮部33が内面電子線照射装置43からの電子線の照射により滅菌される。また、ペットボトル6の内部からの菌は、図8および図9に示すように、開口部電子線照射装置51からの電子線により死滅させるので、内面電子線照射装置43からの電子線により死滅させる必要はない。
【0042】
このように、本実施例2に係る電子線滅菌設備1によると、ペットボトル6の内部からの菌が開口部電子線照射装置51からの電子線により死滅されるので、滅菌された外面を汚染することはなく、その結果、簡素な構成でペットボトル6の外面を確実に滅菌することができる。
【0043】
また、封止が解除されながら、ピン32および膨縮部33が開口部電子線照射装置51により滅菌されるので、ピン32および膨縮部33に付着した菌がペットボトル6に落下してペットボトル6の外面を汚染することはなく、その結果、簡素な構成でペットボトル6の外面をより確実に滅菌することができる。
【0044】
さらに、ペットボトル6の内部からの菌を内面電子線照射装置43からの電子線により死滅させる必要がないので、内面電子線照射装置43からの電子線の出力を小さくでき、その結果、内面電子線照射装置43を簡素にすることが可能なので、より簡素な構成でペットボトル6の外面を確実に滅菌することができる。
【実施例3】
【0045】
以下、本実施例3に係る電子線滅菌設備1について図11および図12に基づき詳細に説明する。
【0046】
本実施例3に係る電子線滅菌設備1は、菌拡散防止手段5が、上記実施例1および2で説明した電子線照射装置43,51ではなく、ペットボトル6の開口部7から内部の菌を吸引するものである。なお、本実施例3において、上記実施例1および2と同一の構成については同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0047】
図11に示すように、外面滅菌用搬送装置2からペットボトル6が内面滅菌用搬送装置4に受け渡される位置において、ペットボトル6の口部8が側方から上方にかけて整流カバー55で覆われている。この整流カバー55は、上記位置よりも、内封保持具21に接触しない程度の上流側から、昇降装置46により上昇しているペットボトル6に接触しない程度の下流側まで(図12参照)わたされる。上記整流カバー55には、その内側における気体を吸引する吸引機56が接続される。
【0048】
内封保持具21の内封が解除された直後に、吸引機56および整流カバー55により、ペットボトル6の内部の気体が菌ごと吸引される。整流カバー55により、ペットボトル6の内部の気体が効率よく吸引されるだけでなく、吸引されている気体の菌がペットボトル6の外面にペットボトル6に落下してペットボトル6の外面を汚染することはない。これにより、吸引機56および整流カバー55が上記実施の形態における菌拡散防止手段5として作用する。
【0049】
このように、本実施例3に係る電子線滅菌設備1によると、ペットボトル6の内部からの菌が吸引機56および整流カバー55により吸引されるので、滅菌された外面を汚染することはなく、その結果、簡素な構成でペットボトル6の外面を確実に滅菌することができる。
また、菌拡散防止手段5としての電子線照射装置が不要となるので、より簡素な構成でペットボトル6の外面を確実に滅菌することができる。
【0050】
ところで、上記実施の形態および実施例1〜3では、内保持具の一例として内封保持具21について説明したが、ペットボトル6の開口部7を完全に封止しないものでもよい。勿論、内保持具として内封保持具21を用いることで、より確実にペットボトル6の内部における菌が開口部7から拡散しないので、簡素な構成でペットボトル6の外面をより確実に滅菌することができる。
【0051】
また、上記実施例1〜3では、外面滅菌用搬送装置2からペットボトル6が内面滅菌用搬送装置4に受け渡されるとして説明したが、ペットボトル6が直接的に外面滅菌用搬送装置2から内面滅菌用搬送装置4に受け渡される構成に限られない。例えば、ペットボトル6が外面滅菌用搬送装置2から他の搬送装置4を介して内面滅菌用搬送装置に受け渡される構成でもよい。
【0052】
さらに、菌拡散防止手段5として、上記実施例1では内面電子線照射装置43、上記実施例2では開口部電子線照射装置51、上記実施例3では吸引機56について説明したが、これら43,51,56を適宜組み合わせたものでもよい。また、上記実施例で説明した構成のうち、上記実施の形態で説明した構成以外については、任意の構成であり、適宜削除および変更することが可能である。
【0053】
加えて、上記実施例1〜3では、外面滅菌用搬送装置2からのペットボトル6の受け渡しの際に当該ペットボトル6を保持するものとして、外面滅菌用グリッパ22のようなグリッパについて説明したが、これに限定されるものではない。例えば、内封保持具21で保持されたペットボトル6を固定部材などにより受け渡すような、グリッパを用いない構成でもよい。
【0054】
また、上記実施例2では、開口部電子線照射装置51が外面滅菌用ターンテーブル20に設けられるとして説明したが、これに限定されるものではなく、上面フレーム11またはベースプレート12など他のものに設けられてもよい。
【符号の説明】
【0055】
1 電子線滅菌設備
2 搬送装置
3 外面電子線照射装置
4 他の搬送装置
5 菌拡散防止手段
6 ペットボトル
7 開口部
8 口部
20 外面滅菌用ターンテーブル
21 内封保持具
22 外面滅菌用グリッパ
23 保持位置調整器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12