(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
コンタクトレンズのフロントカーブを成形する下型および前記コンタクトレンズのベースカーブを成形する上型を組み付けることによって得られる一対の型に包含されたモノマーを重合することによって生成されたコンタクトレンズを前記一対の型から取り出すコンタクトレンズの製造方法であって、
(A)前記上型のレンズ成形面の裏面である非レンズ成形面を押圧することにより、前記上型と前記下型との組付状態を維持したまま前記上型のレンズ成形面から前記コンタクトレンズを部分的に剥離する第一剥離工程、
(B)前記第一剥離工程後、前記上型と前記下型との組付を解除することにより、前記上型と前記コンタクトレンズが付着した前記下型とを分離する分離工程、
(C)前記分離工程後、前記下型のレンズ成形面に付着したコンタクトレンズの周辺部を剥離する第二剥離工程、および
(D)前記第二剥離工程後、前記下型の非レンズ成形面を押圧して前記下型のレンズ成形面の凹状を凸状に変形させることにより、前記周辺部が剥離したコンタクトレンズを前記下型のレンズ成形面から剥離する第三剥離工程を有することを特徴とするコンタクトレンズの製造方法。
前記第一剥離工程において、直径5.0〜10.0mmの円柱または角柱である第一のプレスヘッドを用いて、前記上型のレンズ成形面の裏面である非レンズ成形面を押圧することを特徴とする請求項1に記載のコンタクトレンズの製造方法。
前記第一剥離工程において、前記上型の非レンズ成形面を鉛直方向の真上または真下を向く姿勢にしてから前記第一のプレスヘッドで押圧することを特徴とする請求項2に記載のコンタクトレンズの製造方法。
前記分離工程は、前記上型の非レンズ成形面が鉛直方向の真下を向く姿勢にしてから、前記下型に設けられたフランジと前記上型に設けられたフランジとの間に爪を挿入することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のコンタクトレンズの製造方法。
前記第二剥離工程において、押圧面が凹面であって前記凹面の曲率が前記下型のレンズ成形面の裏面である非レンズ成形面の曲率以上である第二のプレスヘッドを用いて、前記下型の非レンズ成形面を押圧することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のコンタクトレンズの製造方法。
前記第二剥離工程において、前記下型の非レンズ成形面を鉛直方向の真上または真下を向く姿勢にしてから前記第二のプレスヘッドで押圧することを特徴とする請求項5に記載のコンタクトレンズの製造方法。
前記第三剥離工程において、押圧面が凹面または円筒である第三のプレスヘッドを用いて、前記下型の非レンズ成形面を押圧することを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載のコンタクトレンズの製造方法。
前記第三剥離工程において、前記下型の非レンズ成形面を鉛直方向の真上または真下を向く姿勢にしてから前記第三のプレスヘッドで押圧することを特徴とする請求項7に記載のコンタクトレンズの製造方法。
コンタクトレンズのフロントカーブを成形する下型および前記コンタクトレンズのベースカーブを成形する上型を組み付けることによって得られる一対の型に包含されたモノマーを重合することによって生成されたコンタクトレンズを前記一対の型から取り出すコンタクトレンズの製造装置であって、
(A)前記上型のレンズ成形面の裏面である非レンズ成形面を押圧することにより、前記上型と前記下型との組付状態を維持したまま前記上型のレンズ成形面から前記コンタクトレンズを部分的に剥離する第一剥離手段、
(B)前記上型と前記下型との組付を解除することにより、前記上型と前記コンタクトレンズが付着した前記下型とを分離する分離手段、
(C)前記下型のレンズ成形面に付着したコンタクトレンズの周辺部を剥離する第二剥離手段、および
(D)前記下型の非レンズ成形面を押圧して前記下型のレンズ成形面の凹状を凸状に変形させることにより、前記周辺部が剥離したコンタクトレンズを前記下型のレンズ成形面から剥離する第三剥離手段を有し、
前記分離手段は、
前記上型のフランジと前記下型のフランジとの間に楔として差し込むエッジ、
前記エッジの延在方向における中央部に真上に向かう第一のテーパーが形成された半円弧の切り欠き部、および
前記エッジのうち前記切り欠き部を除く箇所に真下に向かう第二のテーパーが形成された端部を備えることを特徴とするコンタクトレンズの製造装置。
前記第二剥離手段は、押圧面が凹面であって、前記凹面の曲率は前記下型のレンズ成形面の裏面である非レンズ成形面の曲率以上である第二のプレスヘッドを含むことを特徴とする請求項10または11に記載のコンタクトレンズの製造装置。
前記第三剥離手段は、押圧面が凹面または円筒である第三のプレスヘッドを含むことを特徴とする請求項10〜12のいずれか一項に記載のコンタクトレンズの製造装置。
前記コンタクトレンズの素材はハイドロゲルまたはシリコーンハイドロゲルであることを特徴とする請求項10〜13のいずれか一項に記載のコンタクトレンズの製造装置。
コンタクトレンズのフロントカーブを成形する下型および前記コンタクトレンズのベースカーブを成形する上型を組み付けることによって得られる一対の型に包含されたモノマーを重合することによって生成されたコンタクトレンズを前記一対の型から取り出す方法であって、
(A)前記上型のレンズ成形面の裏面である非レンズ成形面を押圧することにより、前記上型と前記下型との組付状態を維持したまま前記上型のレンズ成形面から前記コンタクトレンズを部分的に剥離する第一剥離工程、
(B)前記第一剥離工程後、前記上型と前記下型との組付を解除することにより、前記上型と前記コンタクトレンズが付着した前記下型とを分離する分離工程、
(C)前記分離工程後、前記下型のレンズ成形面に付着したコンタクトレンズの周辺部を剥離する第二剥離工程、および
(D)前記第二剥離工程後、前記下型の非レンズ成形面を押圧して前記下型のレンズ成形面の凹状を凸状に変形させることにより、前記周辺部が剥離したコンタクトレンズを前記下型のレンズ成形面から剥離する第三剥離工程を有することを特徴とするコンタクトレンズの取り出し方法。
コンタクトレンズのフロントカーブを成形する下型および前記コンタクトレンズのベースカーブを成形する上型を組み付けることによって得られる一対の型に包含されたモノマーを重合することによって生成されたコンタクトレンズを前記一対の型から取り出すコンタクトレンズの製造装置であって、
前記上型のレンズ成形面の裏面である非レンズ成形面を押圧することにより、前記上型と前記下型との組付状態を維持したまま且つ前記コンタクトレンズを前記下型に付着させた状態のまま、前記上型のレンズ成形面から前記コンタクトレンズを剥離する第一剥離手段、および
前記上型と前記下型との組付を解除することにより、前記上型と前記コンタクトレンズが付着した前記下型とを分離する分離手段を有し、
前記分離手段は、
前記上型のフランジと前記下型のフランジとの間に楔として差し込むエッジ、
前記エッジの延在方向における中央部に真上に向かう第一のテーパーが形成された半円弧の切り欠き部、および
前記エッジのうち前記切り欠き部を除く箇所に真下に向かう第二のテーパーが形成された端部を備えることを特徴とするコンタクトレンズの製造装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
重合後のコンタクトレンズを取り出す方法として、例えば特許文献2には、極低温物質の液体窒素をワークと接触させることにより、内包されたコンタクトレンズとの温度差を利用しワークからコンタクトレンズを剥離させることが開示されている。しかしながら、極低温物質をワークに接触させるための特殊な部屋や装置が必要になり、装置の構成や作業者の安全性を考慮した場合好ましくない。
【0005】
また、重合後のコンタクトレンズを濡れた状態で取り出す方法として、例えば特許文献3には、コンタクトレンズが付着しているワークをメタノール液中に浸し5〜10分間放置しておくことにより、コンタクトレンズを自然とワークから剥離させることが開示されている。しかしながら、作業時の安全性に問題が生じることや、有機溶液の供給、廃棄の大規模な設備が必要となることが考えられ、工業的な生産ラインに適用することは好ましくない。また、離型工程後にコンタクトレンズを乾いた状態で検査したい場合、乾燥工程が追加で必要になり製造コストにおいても課題が残る。
【0006】
さらに、コンタクトレンズを乾いた状態で取り出す方法として、例えば特許文献4には、コンタクトレンズを保有する凹型のレンズ成形面を下方に向け、レンズ成形面と対向する側(すなわち反対側、裏面側)である非レンズ成形面の中心を上方からプレスヘッドで押圧することによりコンタクトレンズを自然落下させて取り出す方法がある。しかしながら、凹型の非レンズ成形面に応力がかかることでコンタクトレンズは凹型から剥離はするものの、コンタクトレンズの変形が生じる可能性を否定できず、コンタクトレンズを取り出せる確率には改善の余地がある。
【0007】
さらにまた、コンタクトレンズを欠損させることなく取り出す方法として、例えば特許文献5には、取り出し用指用突出部を複数の速度に分けて移動させることにより、凹型および凸型の分離時にコンタクトレンズにキズを付けないという方法がある。しかしながら、凹型および凸型を分離する際に特殊な装置・機構を必要とするため、製造コストに課題が残る。
【0008】
したがって、本発明の主たる目的は、乾いたコンタクトレンズを大掛かりな手法を用いることなく高い確率で取り出すことができる方法および装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、キャストモールド製法で作製されたワークに張り付いたコンタクトレンズを乾いた状態で(好ましくは欠損させることなく)大掛かりな手法を用いることなく高い確率で取り出す方法について鋭意検討した。その結果、以下の方法を見出した。
即ち、上型の非レンズ成形面に圧力を与えることにより、コンタクトレンズと上型との間に新たな空間が生れる傾向を見出した。具体的には、上型の非レンズ成形面を押圧すると、上型のレンズ成形面の曲率が縮小する方向に変形する。これに対し、下型のレンズ成型面は変形しない。つまり、嵌合部(上型と下型とが接合する個所)に応力が伝わると、下型のフランジを支える第一の保持具がこの応力を受け止め、下型のフランジは応力に応じて変形するものの、上型から伝わる応力はこの下型のフランジで弱まり、下型のレンズ成型面は変形に至らない。また、コンタクトレンズは弾性体のため、上型からの応力は和らげられる。この結果、上型に接するベースカーブ側には新たな空間が生まれるが、下型に接するフロントカーブ側には新たな空間が生まれない。つまり、コンタクトレンズと上型とが部分的に剥離する一方、コンタクトレンズは下型に隙間なく張り付いている(後述の第一剥離工程)。
【0010】
本発明者らはまた、楔形状の爪を用いることにより、ワークから上型と下型とを分離する確実性が向上する傾向を見出した。具体的には、エッジの上向きテーパーにより、下型を上に押し上げる力が働く。これと共に、エッジの下向きテーパーにより、上型を下に押し下げる力が働く。つまり、上方にある下型を押し上げる力と下方にある上型を下に押し下げる力とが共に働く。また、鏡像対称の爪が左右から同時にワークを引き離す。これによって、ワークから上型と下型とが確実に分離する(後述の分離工程)。
【0011】
要するに、ワークを分離する前に上型のレンズ非成形面に圧力を加えることで、コンタクトレンズと上型のレンズ成形面とが部分的に剥離している箇所が起点となり、ワークを分離すると、コンタクトレンズは、上型から剥がれ、付着したままの下型に残る。こうして上型に付着したコンタクトレンズを離型する工程は必要なく、コンタクトレンズが付着した下型を後の第二剥離工程に受け渡すことができる。
【0012】
本発明者らはさらに、コンタクトレンズの周辺付近を剥離するために必要な力とコンタクトレンズの中心付近を剥離するために必要な力とが異なるという傾向を見出した。
即ち、まずコンタクトレンズの周辺部を下型のレンズ成形面から剥離させ(後述の第二剥離工程後)、その後に付着している残りの箇所を剥離させる(後述の第三剥離工程)。コンタクトレンズの周辺部を剥離させる際には、下型の非レンズ成形面に折り目が入るような負荷を与える。これによって、下型のレンズ成形面は押圧されると変形(下型のレンズ非成形面の一部が逆の曲率になるまで反転)しやすくなり、付着している残りの箇所を剥離させる際に必要な力は下型のレンズ成形面が変形する程度にまで押圧力を弱めることができる。
要するに、まずコンタクトレンズの周辺部から剥がし、かつ、下型からコンタクトレンズの周辺部を剥離させるための力のかけ方と下型からコンタクトレンズ全体を剥離させるための力のかけ方との性質を分ける。これによって、コンタクトレンズを(好ましくは欠損することなく)容易に離型することができる。
こうして、ワークに挟みこまれたコンタクトレンズを乾いた状態で(好ましくは欠損させることなく)大掛かりな手法を用いることなく高い確率で取り出すことができる。
【0013】
以上の知見に基づいて創出された本発明の態様は、以下の通りである。
本発明の第1の態様は、コンタクトレンズのフロントカーブを成形する下型およびコンタクトレンズのベースカーブを成形する上型を組み付けることによって得られる一対の型に包含されたモノマーを重合することによって生成されたコンタクトレンズを一対の型から取り出すコンタクトレンズの製造方法であって、(A)上型のレンズ成形面からコンタクトレンズを剥離する第一剥離工程、(B)上型とコンタクトレンズが付着した下型とを分離する分離工程、(C)下型のレンズ成形面に付着したコンタクトレンズの周辺部を剥離する第二剥離工程、および(D)周辺部が剥離したコンタクトレンズを下型のレンズ成形面から剥離する第三剥離工程を有することを特徴とするコンタクトレンズの製造方法である。
【0014】
本発明の第2の態様は、第一剥離工程は直径5.0〜10.0mmの円柱または角柱である第一のプレスヘッドを含み、第一のプレスヘッドは上型のレンズ成形面の裏面である非レンズ成形面を押圧することを特徴とする第1の態様に記載のコンタクトレンズの製造方法である。
【0015】
本発明の第3の態様は、第一剥離工程において、上型の非レンズ成形面を鉛直方向の真上または真下を向く姿勢にしてから第一のプレスヘッドで押圧することを特徴とする第2の態様に記載のコンタクトレンズの製造方法である。
【0016】
本発明の第4の態様は、分離工程において、上型の非レンズ成形面が鉛直方向の真下を向く姿勢にしてから、下型に設けられたフランジと上型に設けられたフランジとの間に爪を挿入することを特徴とする第1〜第3のいずれかの態様に記載のコンタクトレンズの製造方法である。
【0017】
本発明の第5の態様は、第二剥離工程は、押圧面が凹面であって下型のレンズ成形面の裏面である非レンズ成形面の曲率以上である第二のプレスヘッドを含み、第二のプレスヘッドは下型の非レンズ成形面を押圧することを特徴とする第1〜第4のいずれかの態様に記載のコンタクトレンズの製造方法である。
【0018】
本発明の第6の態様は、第二剥離工程において、下型の非レンズ成形面を鉛直方向の真上または真下を向く姿勢にしてから第二のプレスヘッドで押圧することを特徴とする第5の態様に記載のコンタクトレンズの製造方法である。
【0019】
本発明の第7の態様は、第三剥離工程は、押圧面が凹面または円筒である第三のプレスヘッドを含み、第三のプレスヘッドは下型の非レンズ成形面を押圧することを特徴とする第1〜第6のいずれかの態様に記載のコンタクトレンズの製造方法である。
【0020】
本発明の第8の態様は、第三剥離工程において、下型の非レンズ成形面を鉛直方向の真上または真下を向く姿勢にしてから第三のプレスヘッドで押圧することを特徴とする第7の態様に記載のコンタクトレンズの製造方法である。
【0021】
本発明の第9の態様は、コンタクトレンズの素材はハイドロゲルまたはシリコーンハイドロゲルであることを特徴とする第1〜第8のいずれかの態様に記載のコンタクトレンズの製造方法である。
【0022】
本発明の第10の態様は、コンタクトレンズのフロントカーブを成形する下型およびコンタクトレンズのベースカーブを成形する上型を組み付けることによって得られる一対の型に包含されたモノマーを重合することによって生成されたコンタクトレンズを一対の型から取り出すコンタクトレンズの製造装置であって、(A)上型のレンズ成形面からコンタクトレンズを剥離する第一剥離手段、(B)上型とコンタクトレンズが付着した下型とを分離する分離手段、(C)下型のレンズ成形面に付着したコンタクトレンズの周辺部を剥離する第二剥離手段、および(D)周辺部が剥離したコンタクトレンズを下型のレンズ成形面から剥離する第三剥離手段を有することを特徴とするコンタクトレンズの製造装置である。
【0023】
本発明の第11の態様は、第一剥離手段は、直径5.0〜10.0mmの円柱または角柱である第一のプレスヘッドを含むことを特徴とする第10の態様に記載のコンタクトレンズの製造装置である。
【0024】
本発明の第12の態様は、第二剥離手段は、押圧面が凹面であって、凹面の曲率は下型のレンズ成形面の裏面である非レンズ成形面の曲率以上である第二のプレスヘッドを含むことを特徴とする第10または第11の態様に記載のコンタクトレンズの製造装置である。
【0025】
本発明の第13の態様は、第三剥離手段は、押圧面が凹面または円筒である第三のプレスヘッドを含むことを特徴とする第10〜第12のいずれかの態様に記載のコンタクトレンズの製造装置である。
【0026】
本発明の第14の態様は、コンタクトレンズの素材はハイドロゲルまたはシリコーンハイドロゲルであることを特徴とする第10〜第13のいずれかの態様に記載のコンタクトレンズの製造装置である。
【0027】
本発明の第15の態様は、コンタクトレンズのフロントカーブを成形するための下型およびコンタクトレンズのベースカーブを成形するための上型を組み付けることによって得られる一対の型に包含されたモノマーを重合することによって生成されたコンタクトレンズを一対の型から取り出す方法であって、(A)上型のレンズ成形面からコンタクトレンズを剥離する第一剥離工程、(B)上型とコンタクトレンズが付着した下型とを分離する分離工程、(C)下型のレンズ成形面に付着したコンタクトレンズの周辺部を剥離する第二剥離工程、および(D)周辺部が剥離したコンタクトレンズを下型のレンズ成形面から剥離する第三剥離工程を有することを特徴とするコンタクトレンズの取出方法である。
【0028】
本発明の第16の態様は、コンタクトレンズのフロントカーブを成形する下型およびコンタクトレンズのベースカーブを成形する上型を組み付けることによって得られる一対の型に包含されたモノマーを重合することによって生成されたコンタクトレンズを一対の型から取り出すコンタクトレンズの製造方法であって、コンタクトレンズを下型に付着させた状態のまま、上型のレンズ成形面からコンタクトレンズを剥離する第一剥離工程を有することを特徴とするコンタクトレンズの製造方法である。
【0029】
本発明の第17の態様は、コンタクトレンズのフロントカーブを成形する下型およびコンタクトレンズのベースカーブを成形する上型を組み付けることによって得られる一対の型に包含されたモノマーを重合することによって生成されたコンタクトレンズを一対の型から取り出すコンタクトレンズの製造装置であって、コンタクトレンズを下型に付着させた状態のまま、上型のレンズ成形面からコンタクトレンズを剥離する第一剥離手段を有することを特徴とするコンタクトレンズの製造装置である。
【0030】
本発明の第18の態様は、コンタクトレンズのフロントカーブを成形する下型およびコンタクトレンズのベースカーブを成形する上型を組み付けることによって得られる一対の型に包含されたモノマーを重合することによって生成されたコンタクトレンズを一対の型から上型と下型とを分離するための治具であって、上型のフランジと下型のフランジとの間に楔として差し込むエッジ、エッジの延在方向における中央部に真上に向かう第一のテーパーが形成された半円弧の切り欠き部、およびエッジのうち切り欠き部を除く箇所に真下に向かう第二のテーパーが形成された端部を備える分離治具である。
【0031】
本発明の第19の態様は、コンタクトレンズのフロントカーブを成形する下型およびコンタクトレンズのベースカーブを成形する上型を組み付けることによって得られる一対の型に包含されたモノマーを重合することによって生成されたコンタクトレンズを一対の型から取り出すコンタクトレンズの製造方法であって、コンタクトレンズを下型に付着させた状態のまま、上型のレンズ成形面からコンタクトレンズを剥離する第一剥離工程、および上型とコンタクトレンズが付着した下型とを分離する分離工程を有することを特徴とするコンタクトレンズの製造方法である。
【0032】
本発明の第20の態様は、コンタクトレンズのフロントカーブを成形する下型およびコンタクトレンズのベースカーブを成形する上型を組み付けることによって得られる一対の型に包含されたモノマーを重合することによって生成されたコンタクトレンズを一対の型から取り出すコンタクトレンズの製造装置であって、コンタクトレンズを下型に付着させた状態のまま、上型のレンズ成形面からコンタクトレンズを剥離する第一剥離手段、および上型とコンタクトレンズが付着した下型とを分離する分離手段を有することを特徴とするコンタクトレンズの製造装置である。
【0033】
本発明の第21の態様は、コンタクトレンズのフロントカーブを成形する下型およびコンタクトレンズのベースカーブを成形する上型を組み付けることによって得られる一対の型に包含されたモノマーを重合することによって生成されたコンタクトレンズを一対の型から取り出すコンタクトレンズの製造方法であって、下型のレンズ成形面に付着したコンタクトレンズの周辺部を剥離する下型仮剥離工程、および周辺部が剥離したコンタクトレンズを下型のレンズ成形面から剥離する下型本剥離工程を有することを特徴とするコンタクトレンズの製造方法である。
【0034】
本発明の第22の態様は、コンタクトレンズのフロントカーブを成形する下型およびコンタクトレンズのベースカーブを成形する上型を組み付けることによって得られる一対の型に包含されたモノマーを重合することによって生成されたコンタクトレンズを一対の型から取り出すコンタクトレンズの製造装置であって、下型のレンズ成形面に付着したコンタクトレンズの周辺部を剥離する下型仮剥離手段、および周辺部が剥離したコンタクトレンズを下型のレンズ成形面から剥離する下型本剥離手段を有することを特徴とするコンタクトレンズの製造装置である。
【0035】
本発明の他の態様は、前記上型および前記下型の少なくともいずれか一方は樹脂製であることを特徴とする。
【0036】
なお、上記の各態様をお互いに適宜組み合わせたものも本発明の一態様である。
【発明の効果】
【0037】
本発明によれば、乾いたコンタクトレンズを大掛かりな手法を用いることなく高い確率で取り出すことができる。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明するが、この発明の上述の目的、特徴および利点は、図面を参照して行う以下の実施の形態および実施例の詳細な説明から一層明らかとなろう。なお、本発明は以下の例に限定されるものではない。
本発明の実施の形態においては、次の順序で説明する。なお、本明細書において「〜」は所定の値以上かつ所定の値以下を指す。
1.コンタクトレンズの製造工程
2.本発明の具体的な内容
3.実施例および比較例
4.その他の好適例
【0040】
<1.コンタクトレンズの製造工程>
キャストモールド製法を適用したコンタクトレンズ10の製造工程について、
図1の工程フローに従って説明する。図示のように、コンタクトレンズ10の製造工程では、成形工程S1、注入工程S2、重合工程S3、離型工程S4、検査工程S5および水和工程S6を順に行う。以下、各工程について説明する。これらの工程は、いずれも清浄でかつ乾燥した環境(クリーンルーム内)で行われる。
【0041】
(成形工程:S1)
成形工程S1では、コンタクトレンズ10の成形に用いる上型12(以下、「ベースカーブ型」ともいう。)および下型14(以下、「フロントカーブ型」ともいう。)を射出成形機にてそれぞれ作製する。
【0042】
図2に示すベースカーブ型12は、コンタクトレンズ10のベースカーブを成形する第一のレンズ成形面16(以下、「BC成形面」ともいう。)を有し、このBC成形面16の裏側(「裏面」ともいう。)には規定の曲率を有した球面形状である第一の非レンズ成形面18(以下、「上型押圧面」ともいう。)を有する。また、上型12の周壁20はBC成形面16を周囲し、この周壁20と隣接する位置に鍔状のフランジ22が設けられる。
【0043】
図3に示すフロントカーブ型14は、コンタクトレンズ10のフロントカーブを成形する第二のレンズ成形面24(以下、「FC成形面」ともいう。)を有し、このFC成形面24の裏側には規定の曲率を有した球面形状である第二の非レンズ成形面26(以下、「下型押圧面」ともいう。)を有する。また、下型14の周壁28はFC成形面24を周囲し、この周壁28と隣接する位置に鍔状のフランジ30が設けられる。
【0044】
なお、上型12および下型14の材質は、たとえば、モノマー32(後述)に対して耐溶剤性や機械的特性に優れるものであればいかなるものでも良い。それに加え、後述の離型工程S4にて上型12や下型14を一部変形させるため、その変形を可能とする材質であればいかなるものでも良い。それを鑑み、本実施形態においては該材質として樹脂を使用する。この樹脂としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルペンテン、ポリサルフォン、ポリフェニレンサルファイド、環状オレフィン共重合体およびエチレンビニルアルコール共重合体などが好ましく、特に、ポリプロピレンが好ましい。
【0045】
(注入工程:S2)
注入工程S2では、成形工程S1で作製された下型14にコンタクトレンズ基材を含むモノマー混合液32(以下、「モノマー」ともいう。)を注ぎ、上型12を下型14の真上から組み合わせる。具体的に言うと、
図4の状態から
図5の状態へと移行させる。以降の説明では、
図5に示すように、上型12と下型14との空間にモノマー32が包含され、上型12と下型14とが組み合わさった状態をワーク34と称する。なお、真上とはクリーンルーム内では天井(すなわち、天および上方)方向のことを意味し、真下とはクリーンルーム内ではフロア(すなわち、地および下方)方向のことを意味する。以降、天地方向については特に記載のない限り上記の状態とする。
【0046】
コンタクトレンズ基材は、重合後にコンタクトレンズ形状を保持し、ハイドロゲルとなりうる重合体、好ましくは、シリコーンを含有し、ハイドロゲルとなりうる共重合体であればよく、従来からソフトコンタクトレンズ基材として知られているものをそのまま用いることができる。コンタクトレンズ基材として好ましくは、(a)少なくとも1種の(メタ)アクリロイル基を有するシリコーンモノマー、(b)少なくとも1種のビニル基を有する親水性モノマー、(c)少なくとも1種の架橋性モノマーおよび(d)少なくとも1種の重合開始剤を含有し、(a)シリコーンモノマーは1分子に1個の(メタ)アクリロイル基を有するシリコーンモノマーであり、シリコーンモノマー(a)は1個〜4個のケイ素原子を1分子中に含有しかつ分子中に少なくとも1つの水酸基またはポリエチレングリコール基を有しているシリコーンモノマーであることが好ましい。
【0047】
そのようなシリコーンモノマーは、例えば、特許5,452,756号明細書で示すように、少なくとも1つの水酸基及び1個〜4個のケイ素原子を1分子中に含有するシリコーンモノマーの1種または2種以上(以下、「(a1)」と称する。)、または、少なくとも1つのポリエチレングリコール基及び1個〜4個のケイ素原子を1分子中に含有するシリコーンモノマーの1種または2種以上(以下、「(a2)」と称する。)のシリコーンモノマーであることができる。シリコーンモノマー(a1)を例示すると、下記一般式(a1−1)や(a1−2)をあげることができる。
【化1】
[式中、R1、R2、R3およびR4はメチル基であって、R5は水素原子またはメチル基であり、aは1〜3の整数を表す。]
また、シリコーンモノマー(a2)を例示すると、下記一般式(a2−1)をあげることができる。
【化2】
[式中、R1、R2、R3およびR4はメチル基であり、aは1〜3の整数を表し、mは4〜8である。式中のXは下記式(Y1)または(Y2)で表される置換基から選ばれる1つである(式中、R5は水素原子またはメチル基である。)。]
【化3】
なお、(a1)または(a2)のシリコーンモノマーは、例えば、下記一般式(I)で表すこともできる。
【化4】
[式中、R1、R2、R3およびR4はメチル基であって、aは1〜3の整数を表し、nは0または1を表し、mは0または4〜8を表わす。ただし、nが1であるときにはmは0であって、nが0であるときにはmは4〜8(繰り返し平均値としての値)である。式中のXは、式(Y1)〜(Y2)で表される置換基から選ばれる1つである。]
【0048】
(重合工程:S3)
重合工程S3では、上述のようにワーク34に充填されたモノマー32を重合させる。具体的には、ワーク34内のモノマー32に対して、熱を加える、あるいは光(紫外線および/または可視光線)を照射することにより、モノマー32を重合反応させる。こうして、モノマー32が重合されることによってコンタクトレンズ10がワーク中に生成される。本実施の形態においては、ワーク34に充填したモノマー32を重合炉によって重合(熱重合)させることにより、モノマー32を硬化させることとする。
【0049】
(離型工程:S4)
離型工程S4では、重合工程S3でモノマー32の重合を終えた後、ワーク34を上型12と下型14とに分離してコンタクトレンズ10を取り出す。離型工程S4については、後で詳しく説明する。
【0050】
(検査工程:S5)
検査工程S5では、離型工程S4で取り出されたコンタクトレンズ10を回収し、検査装置を用いた自動検査および/または半自動検査にて良品もしくは不良品の判別が行われる。
【0051】
(水和工程:S6)
水和工程S6では、検査工程S5で良品と判別されたコンタクトレンズ10を膨潤する。これ以降は、滅菌後に包装され出荷される。
【0052】
<2.本発明の具体的な内容>
離型工程S4は、第一剥離工程s1、分離工程s2、第二剥離工程s3および第三剥離工程s4で構成される。
【0053】
(第一剥離工程s1)
第一剥離工程s1は、コンタクトレンズ10を(好ましくは欠損させることなく)上型12から部分的に剥離することを目的とする。この第一剥離工程s1では、第一のプレスヘッド36(第一の剥離手段、上型剥離手段、上型プレスヘッドとも称する。なお、“第一の剥離”を“上型剥離”と読み替えても構わない。)を用いて上型押圧面18を押圧する。この様子を示したものが
図6である。
【0054】
第一のプレスヘッド36は、コンタクトレンズ10と上型12との間に新たな空間を生じさせられるものであればいかなる形状であってもよい。言い換えると、コンタクトレンズ10を(好ましくは欠損させることなく)上型12から部分的に剥離すればいかなる形状であってもよい。例えば、第一のプレスヘッド36の押圧面(すなわち、
図6で示す第一のプレスヘッド36が上型押圧面18に接する面である。以降、省略。)を平坦とすることが好ましい。また、第一のプレスヘッド36の側面(すなわち、
図6では第一のプレスヘッド36の側面が正面に見えている。以降、省略。)を円柱や多角形の角柱とすることが好ましい。なお、多角形のうち例えば八角形の直径については、ある角とある角の対角線上を結ぶ直線(すなわち、八角形の外接円の直径である。)に相当する。以下、多角形については同様の定義とする。
【0055】
第一のプレスヘッド36の直径は、5.0〜10.0mm(より好適には7.0〜10.0mm、さらに好適には7.0〜9.0mm)の範囲とすることが好ましい。
【0056】
第一のプレスヘッド36の材質は、剛性や耐摩耗性に優れていればいかなる材質でもよい。例えば、真鍮、ステンレス、超硬合金もしくは強化プラスチックであり、好ましくはステンレスである。なお、後述する爪40,42、第二のプレスヘッド66および第三のプレスヘッド72の材質も第一のプレスヘッド36と同様である。
【0057】
第一のプレスヘッド36の押圧力は、コンタクトレンズ10を(好ましくは欠損させることなく)上型12から部分的に剥離する程度であればよい。好ましくは180〜220kgf/cm
2の範囲であり、より好ましくは200kgf/cm
2である。
【0058】
第一のプレスヘッド36の押込量は、コンタクトレンズ10を(好ましくは欠損させることなく)上型12から部分的に剥離する程度であればよい。好ましくは0.3〜0.4mmの範囲であり、より好ましくは0.35mmである。押込量が0.3mmを下回ると、分離工程s2の際にコンタクトレンズ10が上型12に付着する割合が高くなり、押込量が0.4mmを上回ると、ワーク34は破損しやすくなる。換言すると、押込量が0.35mmのときに、ワーク34を破損させないこととコンタクトレンズ10および上型12の間に新たな空間を生じさせることとの二律背反した状態を両立させるバランスが最良となる。
【0059】
なお、第一のプレスヘッド36の押込量とは、第一のプレスヘッド36が上型押圧面18に接触してから第一のプレスヘッド36がワーク34を押し込んだ移動距離のことを示す。また、後述する第二のプレスヘッド66の押込量および第三のプレスヘッド72の押込量においてもこの第一のプレスヘッドの押込量と同様の定義とする。
【0060】
ワーク34は第一の保持具38によって固定される。この第一の保持具38は、ワーク34の姿勢を維持しながら、作業性を考慮したクリアランスを持つものであればいかなる形態であってもよい。例えば、上型押圧面18が鉛直方向の真上(すなわち、BC成形面16が真下。
図6参照。)を向く姿勢でワーク34を固定させたり、上型押圧面18が鉛直方向の真下(すなわち、BC成形面16が真上。不図示。)を向く姿勢でワーク34を固定させたりすることも可能である。
【0061】
第一の保持具38は、例えば、台座、吸引管、レールなどが挙げられ、好ましくは円や多角形の筒である平坦な台座であり、より好ましくは円筒の平坦な台座である。なお、第一の保持具38のクリアランスが大きすぎるとワーク34のセンタリングが得られず、第一の保持具38のクリアランスが小さすぎるとワーク34を置く/取り出すなどの作業性が損なわれる。
【0062】
第一のプレスヘッド36は、
図6の白抜き矢印が示すように、第一の保持具38上に固定されたワーク34の鉛直方向の真上から上型押圧面18を真下に押圧する。押圧の際には、上型押圧面18の平面視(つまり、
図6を側面図とすると、側面図の垂線方向から視た状態(上面図)を示す。以降、省略。)の中心位置と第一のプレスヘッド36の押圧面の中心位置とを合致(センタリング)させておくのが好ましい。本工程においては、このようにして上型押圧面18の中心を押圧する。以降、押圧する場所については特記の無い限り上記の状態とする。
【0063】
上型押圧面18が押圧されると、BC成形面16に応力がかかり、BC成形面16の曲率が縮小する方向に変形する。これに対し、FC成形面24は変形しない。つまり、嵌合部(上型12と下型14とが接する箇所)に応力がかかると、フランジ30を支える第一の保持具38が下型14に伝わる応力を受け止め、フランジ30はこの応力に応じて変形するものの、この応力はフランジ30で弱まり、レンズFC面24は変形するまでに至らない。また、コンタクトレンズ10は弾性体のため、上型12から伝わる応力をある程度和らげる。
【0064】
この結果、上型12に接するコンタクトレンズ10のベースカーブ側には新たな空間が生まれるものの、下型14に接するコンタクトレンズ10のフロントカーブ側には新たな空間が生まれない。つまり、コンタクトレンズ10とBC成形面16とが部分的に剥離する一方、コンタクトレンズ10はFC成形面24に隙間なく張り付いている。
【0065】
(分離工程s2)
分離工程s2は、ワーク34を上型12と下型14とに分離することを目的とする。この分離工程s2では、爪40および42(分離手段)を用いて分離する。爪40および42を示したのが
図7であり、分離工程s2の様子を示したものが
図8である。
【0066】
爪40は、互いに対向する上面および下面によって構成された部分であって楔として差し込む部分(すなわち、エッジ46)を有する。このエッジ46の延在方向における中央部には半円形状(半円弧)の切り欠き48が設けられ、エッジ46のうち切り欠き48を除く箇所に端部50が設けられる。
【0067】
切り欠き48は、上型12のフランジ22と下型14のフランジ30との間に差し込み可能な形状を有する。そのため、切り欠き48の形状はワーク34の平面視形状に合わせて適宜設定しても構わない。切り欠き48はまた、真上に向けて第一のテーパー52を形成しておくのが好ましい。これによって、ワーク34を上型12と下型14とが容易に分離できる。端部50は、真下に向けた第二のテーパー54を形成しておくのが好ましい。これによって、ワーク34を上型12と下型14とが容易に分離できる。なお、第一のテーパー52を下向きとし、第二のテーパー54を上向きとしても構わない。
【0068】
爪42は、爪40と同様の形状を備え、切り欠き58,端部60,第一のテーパー62および第二のテーパー64を有する。つまり、爪42の形状は爪40と鏡面対称(爪40のエッジ46と爪42のエッジ56とを向かい合わせた形での鏡面対称)の形状である。
【0069】
ここでは、第一のテーパー52と第二のテーパー54とが組み合わせられることにより相乗効果を奏する。詳しく言うと、爪40をワーク34(フランジ22とフランジ30との間)に差し込むと、第一のテーパー52により、ワーク34の上方にある下型14を上に押し上げる力が働く。これと共に、第二のテーパー54により、ワーク34の下方にある上型12を下に押し下げる力が働く。つまり、上方にある下型14を上に押し上げる力と、下方にある上型12を下に押し下げる力が共に働くことにより、ワーク34を上型12と下型14とに容易に分離可能となり、下型保有率(後述)が向上する。
【0070】
第二の保持具44は、
図8の一点鎖線で示す矢印方向に吸い込む。この第二の保持具44は、上型押圧面18が真下に向く姿勢(すなわち、下型14が真上に上型12が真下に配置される。)を維持し、作業性を考慮したクリアランスを持つ範囲であればいかなる形態であってもよい。例えば、吸引管やレールなどが挙げられ、好ましくは円筒や多角形の筒状の吸引管であり、より好ましくは円筒の吸引管である。なお、第二の保持具44のクリアランスが大きすぎるとワーク34のセンタリングが得られず、第二の保持具44のクリアランスが小さすぎるとワーク34を嵌める/取り出すなどの作業性が損なわれる。
【0071】
ワーク34は第二の保持具44による吸い込みにより、上方に下型14そして下方に上型12という状態でワーク34の姿勢が維持される。平行に向き合うフランジ22とフランジ30との隙間に、右方向から爪40がフランジ30に対して平行に挿入され、左方向から爪42がフランジ30に対して平行に挿入される。このとき、端部50および60は互いに近接し、切り欠き48および58もまた近接する。爪40および42が左右から半周ずつ同時に挿入することにより、爪40および42がフランジ22および30の間に同時に入り込み、ワーク34における上型12と下型14との組付の解除にかかる力が左右均等に分散されるため、ワーク34は傾かない。挿入が完了すると、爪40および42にはフランジ22および30に対して垂直方向に引き離す力が与えられ、コンタクトレンズ10は上型12から剥がれて下型14に残り、上型12は下方に自然落下する。なお、分離の際、爪40および42は、フランジ22および30の隙間に平行に、かつ、同時に挿入することが好ましい。
【0072】
このように、鏡像対象の爪40および42は、フランジ22および30の隙間に平行かつ同時に挿入する。また、フランジ30には第一のテーパー52および62によって押し上げられる力が働き、フランジ22には第二のテーパー54および64によって押し下げられる力が働く。さらに、爪40および42は、フランジ22および30に対して垂直方向にワーク34を引き離す。これによって、ワーク34から上型12と下型14とが確実に分離する。
【0073】
また、ワーク34を分離する前に上型押圧面18に圧力を加えることにより、コンタクトレンズ10とBC成形面16とが部分的に剥離している箇所が起点となり、ワーク34を分離すると、コンタクトレンズ10は、上型12から剥がれ、付着したままの下型14に残る。この結果、上型12に付着したコンタクトレンズ10を離型する工程は必要なく、コンタクトレンズ10が付着した下型を後の第二剥離工程s3に受け渡すことができる。
【0074】
(第二剥離工程s3)
第二剥離工程s3は、上型12を分離した後、下型14に張り付いたコンタクトレンズ10の周辺部を剥離させることを目的とする。この第二剥離工程s3では、第二のプレスヘッド66(第二の剥離手段、下型仮剥離手段、下型第一プレスヘッドとも称する。なお、“第二の剥離”を“下型仮剥離”と読み替えても構わない。)を用いて下型押圧面26を押圧する。その様子を示したものが
図9(押圧前)および
図10(押圧時)である。
【0075】
第二のプレスヘッド66は、FC成形面24とコンタクトレンズ10の周辺部とが剥離させられるものであればいかなる形状であってもよい。言い換えると、好ましくはコンタクトレンズ10を欠損させることなく、下型押圧面26の周辺部に折り目68が入るような負荷を与えることができればいかなる形状であってもよい。例えば、第二のプレスヘッド66の押圧面(すなわち、
図9で示す第二のプレスヘッド66が下型押圧面26に接する面である。以降、省略。)を、下型押圧面26の曲率以上の凹面や、第二のプレスヘッド66の押圧面が中心付近に近づくにつれて段階的に曲率を小さくした複数の曲率で形成された多段階の凹面とすることが好ましい。また、第二のプレスヘッド66の側面(すなわち、
図9では第二のプレスヘッド66の側面が正面に見えている。以降、省略。)を円柱とすることが好ましい。
【0076】
第二のプレスヘッド66の曲率は、好ましくは9.0〜9.5mmであり、より好ましくは9.0mmである。第二のプレスヘッド66の直径は、好ましくは9.0〜14.0mmであり、より好ましくは9.7〜13.3mmである。
【0077】
第二のプレスヘッド66の押圧力は、FC成形面24とコンタクトレンズ10の周辺部とが剥離し、好ましくはコンタクトレンズ10を欠損させることなく、下型押圧面26の周辺部に折り曲げ線が入るような負荷を与えることができる程度であればよい。好ましくは180〜220kgf/cm
2の範囲であり、より好ましくは200kgf/cm
2である。
【0078】
第二のプレスヘッド66の押込量は、FC成形面24とコンタクトレンズ10の周辺部とが剥離し、好ましくはコンタクトレンズ10を欠損させることなく、下型押圧面26の周辺部に折り曲げ線が入るような負荷を与える程度であればよい。好ましくは1.5〜2.0mmの範囲であり、より好ましくは1.7mmである。押込量が1.5mmを下回ると、第二のプレスヘッド66による押圧の際にコンタクトレンズ10の周辺部が剥離する割合が低下し、押込量が2.0mmを上回ると、下型14は破損しやすくなる。換言すると、押込量が1.7mmのときに、下型14を破損させないこととコンタクトレンズ10の周辺部を下型14から剥離させることとの二律背反した状態を両立させるバランスが最良となる。
【0079】
折り目68とは、後述する第三剥離工程s4にて押圧して凸状の下型押圧面26を変形させる際の起点となる線(折り曲げ線)のことを指し、具体的には環状圧痕が形成される。なお、この圧痕は環状でなくとも構わない。
【0080】
下型14は第三の保持具70によって固定される。この第三の保持具70は、下型14の姿勢を維持しながら、作業性を考慮したクリアランスを持つ範囲であればいかなる形態であってもよい。例えば、下型押圧面26が鉛直方向の真上(すなわち、FC成形面24が真下。
図9参照。)を向く姿勢で下型14を固定させたり、下型押圧面26が鉛直方向の真下(すなわち、FC成形面24が真上。不図示。)を向く姿勢で下型14を固定させたりすることも可能である。
【0081】
第三の保持具70は、例えば、台座、吸引管およびレールなどが挙げられ、好ましくは周壁が円もしくは多角形であったりフランジ30が嵌るような溝であったりする平坦な台座でもよく、より好ましくは平坦な円筒の台座(つまり、下型14の設置面は平坦であり周壁は円)である。なお、第三の保持具70のクリアランスが大きすぎると下型14のセンタリングが得られず、第三の保持具70のクリアランスが小さすぎると下型14を置く/取り出すなどの作業性が損なわれる。
【0082】
図9から
図10に移行する際、第二のプレスヘッド66は、第三の保持具70上に固定された下型14の鉛直方向の真上から下型押圧面26を真下に向かって押圧する。このとき、下型14の周辺部には折り目68が入るような負荷が与えられる。下型押圧面26への押圧に伴ってFC成形面24に応力がかかると、FC成形面24の曲率が拡大する方向に変形し、FC成形面24からコンタクトレンズ10の周辺部が剥離する。押圧の際には、下型押圧面26の平面視(つまり、
図9を側面図とすると、側面図の垂線方向から視た状態(上面図)を示す。以降、省略。)の中心位置と第二のプレスヘッド66の押圧面の中心位置とを合致(センタリング)させておくのが好ましい。本工程においては、このようにして下型押圧面26の中心を押圧する。以降、押圧する場所については特記の無い限り上記の状態とする。
【0083】
(第三剥離工程s4)
第三剥離工程s4は、下型14のFC成形面24に付着したコンタクトレンズ10をFC成形面24から全て剥がすことを目的とする。この第三剥離工程s4では、第三のプレスヘッド72(第三の剥離手段、下型本剥離手段、下型第二プレスヘッドとも称する。なお、“第三の剥離”を“下型本剥離”と読み替えても構わない。)を用いて下型押圧面26を押圧する。その様子を示したものが
図11(工程前)および
図12(工程後)である。
【0084】
第三のプレスヘッド72は、コンタクトレンズ10を下型14から(好ましくは欠損させることなく)全て剥がすことができればいかなる形状であってもよい。例えば、第三のプレスヘッド72の押圧面(すなわち、
図11で示す第三のプレスヘッド72が下型押圧面26に接する面である。以降、省略。)には、円筒もしくは凹面を採用することができる。凹面の場合、直径が9.0〜9.5mm(さらに好適には9.0mm)の範囲とし、曲率が9.0〜11.0mm(さらに好適には10.0mm)の範囲とすることが好ましい。円筒の場合、外径を7.6〜8.2mm(さらに好適には7.8〜8.0mm)の範囲とし、内径を6.5〜7.2mm(さらに好適には6.7〜7.0mm)の範囲とすることが好ましい。また、第三のプレスヘッド72の側面(すなわち、
図11では第三のプレスヘッド72の側面が正面に見えている。以降、省略。)を円柱とすることが好ましい。
【0085】
第三のプレスヘッド72の押圧力は、コンタクトレンズ10を下型14から(好ましくは欠損させることなく)全て剥がすことができる程度であればよい。好ましくは180〜220kgf/cm
2の範囲であり、より好ましくは200kgf/cm
2である。
【0086】
第三のプレスヘッド72の押込量は、コンタクトレンズ10を下型14から(好ましくは欠損させることなく)全て剥がすことができる程度であればよい。好ましくは4.2〜4.6mmの範囲であり、より好ましくは4.4mmである。押込量が4.2mmを下回ると、第三のプレスヘッド72による押圧の際に一旦逆方向にまで変形した下型押圧面26が再び元に戻ってしまいコンタクトレンズ10は下型14から剥離し難くなり、押込量が4.6mmを上回ると、下型14は破損しやすくなる。換言すると、押込量が4.4mmのときに、下型14を破損させないこととコンタクトレンズ10の周辺部を下型14から剥離することとの二律背反した状態を両立させるバランスが最良となる。
【0087】
下型14は第四の保持具74によって姿勢を維持される。この第四の保持具74は、下型14の姿勢を維持しながら、作業性を考慮したクリアランスを持つ範囲であればいかなる形態であってもよい。例えば、下型押圧面26が鉛直方向の真下(すなわち、FC成形面24が真上。
図11参照。)を向く姿勢で下型14を固定させたり、下型押圧面26が鉛直方向の真上(すなわち、FC成形面24が真下。不図示。)を向く姿勢で下型14を固定させたりすることも可能である。
【0088】
第四の保持具74は、例えば、レール、吸引管および台座などが挙げられ、好ましくはレールである。なお、第四の保持具74のクリアランスが大きすぎると下型14のセンタリングが得られず、第四の保持具74のクリアランスが小さすぎると下型14を置く/取り出すなどの作業性が損なわれる。
【0089】
図11から
図12の状態に移行する際、第三のプレスヘッド72は、第四の保持具74によって姿勢を固定された下型14の鉛直方向の真下から下型押圧面26を真上に向かって押圧する。下型押圧面26に再び応力がかかると、凸状の下型押圧面26の中心部が部分的に凹状に変形する。このとき、一部のFC成形面24の曲率が逆方向にまで変形(凹状だったFC成形面24が部分的に凸状になるまで反転)する。なお、押圧の際には、下型押圧面26の平面視の中心位置と第三のプレスヘッド72の押圧面の中心位置とをセンタリングさせておくのが好ましい。本工程においては、このようにして下型押圧面26の中心を押圧する。以降、押圧する場所については特記の無い限り上記の状態とする。
【0090】
ここで、FC成形面24の曲率が一部逆方向にまで変形することにより、コンタクトレンズ10の中心付近とFC成形面24とが接する面積が狭まり、コンタクトレンズ10を容易に取り出すことができる。また、第三のプレスヘッド72にて押圧するときにはコンタクトレンズ10の周辺部は既に剥がれている。このため、コンタクトレンズ10の周辺部には第三のプレスヘッド72による応力がかからない。これによって、コンタクトレンズ10は変形せず、かつ、欠損も生じない。
【0091】
このように、まずコンタクトレンズ10の周辺部をFC成形面24から剥離させ、その後に周辺部以外をFC成形面24から剥離させる。コンタクトレンズ10の周辺部を剥離させる際には、下型押圧面26に折り目68が入るような負荷を与える。これによって、下型押圧面26(ひいてはFC成形面24)を弱い力で変形させることができる。
また、まずコンタクトレンズ10の周辺部から剥がし、かつ、下型14からコンタクトレンズ10の周辺部を剥離させるための力のかけ方と下型14からコンタクトレンズ全体を剥離させるための力のかけ方との性質を分ける。これによって、コンタクトレンズ10を(好ましくは欠損することなく)容易に離型することができる。
こうして、ワークに張り付いたコンタクトレンズを乾いた状態で(好ましくは欠損させることなく)大掛かりな手法を用いることなく高い確率で取り出すことができる。
【0092】
以下、離型工程S4を前後の工程と連結させた自動制御による場合について説明する。ただし、本発明を限定するものではなく構成の一例として挙げるが、先述の離型工程S4の各工程を単独で使用することも可能である。
【0093】
図13は、本願発明の実施の形態に係るコンタクトレンズ10の製造工程の一例として、離型工程S4前後の配置例を示す概略図である。図示のように、重合工程S3と検査工程S5との間に離型工程S4(一点鎖線で表示)が設けられ、各工程間はベルトコンベア76で接続される。なお、各工程間はワーク34に衝撃を与えることなく搬送できれば如何なる形態でも採用することができ、例えばベルトもしくはローラーなどの上をワーク34が移動しローダーやアンローダーでワーク34の移動の停止もしくは進行する搬送方法が挙げられる。
【0094】
重合工程S3終了後のワーク34を複数載せたトレイ78(点線で表示)は、ベルトコンベア76上を移動して離型工程S4の分離機80に投入される。離型工程S4では、分離機80によってワーク34から下型14が分離され、剥離機82によって下型14からコンタクトレンズ10が剥離される。
【0095】
上記の分離機80にて第一剥離工程s1および分離工程s2を行う。分離機80は、第一のプレスヘッド36、第一の保持具38、爪40および42、第二の保持具44、第一のアーム、上型回収庫、そして第二のアーム(いずれも不図示)を備える。
【0096】
分離機80では、重合工程S3から運ばれたワーク34が分離機80に投入されると、ワーク34が第一の保持具38上に固定され、第一のプレスヘッド36によって上型押圧面18が押圧される。第一のアームは、押圧されたワーク34を第一の保持具38から取り出し、ワーク34を反転し、第二の保持具44にワーク34を配置する。爪40および42がワーク34に挿入されると、コンタクトレンズ10は上型12から剥がれて下型14に残り、上型12は上型回収庫へと自然落下する。第二の保持具44、爪40および42によって保持された下型14は、第二のアームによってベルトコンベア76上で待機するトレイ78に移される。
【0097】
その後、上記の剥離機82にて第二剥離工程s3および第三剥離工程s4を行う。剥離機82は、第二のプレスヘッド66、第三の保持具70、第三のプレスヘッド72、第四の保持具74、第三のアーム、そして吸着器(いずれも不図示)を備える。
【0098】
剥離機82では、分離機80から運ばれた下型14が剥離機82に投入されると、下型14は第三の保持具70上に固定され、第二のプレスヘッド66によって下型押圧面26が押圧される。第三のアームは、第二のプレスヘッド66によって押圧された下型14を第三の保持具70から取り出し、下型14を反転し、第四の保持具74上に配置する。下型14はこのとき、先述の
図11に示すように、第四の保持具74によってフランジ30を支えられ、FC成形面24を真上に向け下型押圧面26を真下に向けた姿勢になる。第三のプレスヘッド72によって下型押圧面26が押圧されると、
図12に示すように、下型押圧面26の中心形状が変形し、コンタクトレンズ10は下型14から完全に剥がれ、吸着器による取り出しが容易となる。
こうして下型14より剥離したコンタクトレンズ10は、吸着器によって取り出され、ベルトコンベア76上で待機するトレイ78に移される。
【実施例】
【0099】
<3.実施例および比較例>
以下、本願発明に係る実施例について説明する。なお、説明の便宜上、符号は省略する。
【0100】
図14は本発明の実施例1〜8および比較例1〜5を説明する図である。なお、実施例および比較例の項目においては、説明の便宜上、符号は省略する。
ここで、図中に示す下型保有率とは、離型工程で投入した数(サンプル数ともいう。)のうち第一剥離工程を経て分離工程後にコンタクトレンズが下型に付着した割合を示し、以下の式1となる。
【数1】
また、図中に示す離型率とは、サンプル数のうち第二剥離工程を経て第三剥離工程後にコンタクトレンズが下型から剥離した割合を示し、以下の式2となる。
【数2】
さらに、図中に示す良品率とは、サンプル数のうち下型から剥離したコンタクトレンズが離型工程由来の不良ではない良品と検査工程で判定された割合を示し、以下の式3となる。
【数3】
【0101】
(実施例1)
第一のプレスヘッドは直径7.0mmの円柱を使用し、第二のプレスヘッドの押圧面は直径12.9mmおよび曲率9.5mmの凹面を使用し、第三のプレスヘッドの押圧面は直径9.0mmおよび曲率10.0mmの凹面を使用した。
重合工程で重合されたシリコーン含有コンタクトレンズを有するワークが離型工程に投入されると、分離機は、重合後のワークを第一の保持具上に固定し、第一のプレスヘッドに約200kgf/cm
2の荷重をかけ、上型押圧面を0.35mm押し込んだ。分離機はまた、押圧後のワークを天地反転させた上で、ワークを第二の保持具に固定し、爪を挿入して上型と下型とを分離した。この結果、下型保有率が100%であった。
また、剥離機は、分離された下型を第三の保持具上に固定し、第二のプレスヘッドに約200kgf/cm
2の荷重をかけ、下型押圧面を1.7mm押し込んだ。このとき、コンタクトレンズの周辺部のみ下型から剥離した。剥離機はまた、押圧後の下型を天地反転させた上で、下型を第四の保持具に固定し、第三のプレスヘッドに約200kgf/cm
2の荷重をかけ、下型押圧面を4.4mm押し込んだ。このとき、FC成形面の一部の曲率が逆方向まで変形し、コンタクトレンズ全体が下型から剥離した。剥離機はさらに、変形したFC成形面上のコンタクトレンズを取り出した。この結果、離型率および良品率は100%であった。
【0102】
(実施例2)
第一のプレスヘッドには円柱(直径8.0mm)を使用し、それ以外は実施例1と同様の操作を行った。この結果、下型保有率、離型率および良品率のいずれも100%であった。
【0103】
(実施例3)
第一のプレスヘッドには円柱(直径9.0mm)を使用し、それ以外は実施例1と同様の操作を行った。この結果、下型保有率、離型率および良品率は100%であった。
【0104】
(実施例4)
第一のプレスヘッドには円柱(直径8.0mm)を使用し、第二のプレスヘッドには凹面(直径13.3mm、曲率11.5mm)を使用し、第三のプレスヘッドの押圧面には円筒(外径(直径)7.8mm、内径6.7mm)を使用し、その他は実施例1と同様の操作を行った。この結果、下型保有率、離型率および良品率は100%であった。
【0105】
(実施例5)
第三のプレスヘッドの押圧面には円筒(外径8.0mm、内径7.0mm)を使用し、その他は実施例4と同様の操作を行った。この結果、下型保有率、離型率および良品率は100%であった。
ただし、第三剥離工程によってFC成形面は凹状から凸状へと部分的に変形したものの、この部分的に変形した面積が他の実施例に比べて広く、FC成形面の中心付近のうち凸状に変形しなかった凹状の面積も広がったため、FC成形面の中央付近とコンタクトレンズの中央付近とが張り付いた面積も広くなった。
【0106】
(実施例6)
第一のプレスヘッドには円柱(直径5.0mm)を使用し、その他は実施例4と同様の操作を行った。この結果、下型保有率および離型率は100%であり、本実施例においても本発明の効果が奏されることを確認できた。一方、第一剥離工程で第一のプレスヘッドが上型押圧面を押下したときにつけられたであろう円環状のキズ(圧痕)がいくつかのコンタクトレンズの中央付近に確認された。この結果、良品率は30%であった。
本実施例においては第一のプレスヘッドの直径を5.0mmとしており、該直径は、本実施形態で述べた好適な範囲(直径7.0〜10.0mm)から数mmではあるが外れている。それにもかかわらず、本実施例と実施例4とでは良品率において大きな差異が生じている。要するに、第一のプレスヘッドに関する上記の好適な範囲には大きな臨界的意義があることが、本実施例により示された。
【0107】
(実施例7)
第一のプレスヘッドには八角柱(すなわち、八角形の角柱であり、押圧面は平坦である。また、外接円の直径は7.8mmである。)を使用し、その他は実施例5と同様の操作を行った。この結果、下型保有率は93%であり、離型率および良品率は下型保有率に起因してともに93%であった。
【0108】
(実施例8)
第三のプレスヘッドの押圧面には円筒(外径7.6mm、内径6.5mm)を使用し、その他は実施例4と同様の操作を行った。この結果、下型保有率および離型率は100%であり、本実施例においても本発明の効果が奏されることを確認できた。一方、第三剥離工程で第三のプレスヘッドが下型押圧面を押下したときにコンタクトレンズが下型から飛び出し、いくつかのコンタクトレンズは回収できなかった。この結果、良品率は40%であった。
本実施例においては円筒を外径7.6mm、内径6.5mmとしており、該径は、本実施形態で述べた好適な範囲(外径7.8〜8.0mm、内径6.7〜7.0mm)からゼロコンマ数mmではあるが外れている。それにもかかわらず、本実施例と実施例4とでは良品率において大きな格差が生じる。要するに、第三のプレスヘッドに関する上記の好適な範囲には大きな臨界的意義があることが、本実施例により示された。
【0109】
(比較例1)
第一剥離工程を実施せず、その他は実施例1と同様に分離工程を実施したところ、下型保有率は40%であった。剥離機に投入されたコンタクトレンズは全て取り出され、後の検査工程で全て良品と判定されたものの、離型率および良品率は第一剥離工程を実施しなかった影響を受けて40%に留まった。
【0110】
(比較例2)
第二剥離工程を実施せず、その他は実施例2と同様の操作を行った。この結果、下型保有率は100%であったが、以下の不具合が生じたため、離型率は0%であった。すなわち、第三のプレスヘッドによる押圧に耐えきれず下型が破損する。もし押圧に耐えきれたとしても、第三剥離工程でFC成形面を変形させた際にコンタクトレンズもこの変形に追従し、下型にコンタクトレンズが張り付いたままとなり、コンタクトレンズの張り付きが強く吸引器で吸い出してもコンタクトレンズを取り出すことができない傾向を示した。
【0111】
(比較例3)
第一剥離工程および分離工程は実施例7と同様の操作を行ったところ、下型保有率は90%であった。次に、第二剥離工程を実施せず、第三剥離工程は実施例4と同様の操作を行ったところ、第三剥離工程でFC成形面に追従するようにコンタクトレンズが変形したため吸着器で取り出せなかった。一方、FC成形面に追従しないコンタクトレンズもわずかに有った。この結果、離型率および良品率は10%であった。
【0112】
(比較例4)
第一のプレスヘッドには八角柱(外接円の直径7.8mm)を使用し、第二のプレスヘッドの押圧面には凹面(直径13.1mm、曲率11.5mm)を使用し、そして第二離型工程と第三離型工程との順序を逆にした。つまり、第三剥離工程の後に第二剥離工程を実施した。それ以外は実施例4と同様の操作を行った。
第一剥離工程および分離工程を実施したところ、下型保有率は90%であった。続いて、第三離型工程を実施したところ、コンタクトレンズは下型の変形に追従した場合もある一方、下型の変形に追従せずに下型から剥離した場合もあった。最後に、第二離型工程を実施したところ、コンタクトレンズは下型の変形に追従したまま下型から剥離しなかった。この結果、離型率および良品率は10%であった。
【0113】
(比較例5)
第三剥離工程を実施せず、その他は実施例7と同様の操作を行った。この結果、下型保有率は97%であったが、コンタクトレンズと下型とが張り付いたままのため、吸引器にて下型からコンタクトレンズを取り出すことができず、離型率および良品率は3%であった。
【0114】
<4.その他の好適例>
本発明の技術的範囲は上述した実施の形態に限定されるものではなく、発明の構成要件やその組み合わせによって得られる特定の効果を導き出せる範囲において、種々の変更や改良を加えた形態も含む。
【0115】
(第一剥離工程)
本実施形態における第一剥離工程は、コンタクトレンズを欠損させることなく上型から部分的に剥離する工程であり、本実施形態を構成する一工程である。その一方で、第一剥離工程自体にも大きな技術的意義が存在する。
【0116】
詳しく言うと、本発明者が本実施形態を創出する前は、ワークから上型と下型とを分離する瞬間において、間に挟まれたコンタクトレンズが上型に付着するのか下型に付着するのかランダム要素が大きかった。該付着がランダムだと、あるワークに対しては上型からコンタクトレンズを剥離する作業を行わなければならない一方で、別のワークに対しては下型からコンタクトレンズを剥離する作業に切り替えねばならず余分な手間が生じる。
【0117】
しかしながら本実施形態における第一剥離工程ならば、コンタクトレンズを下型のFC成形面に確実に付着したままにすることが可能となる。言い換えると、コンタクトレンズを上型から確実に剥離させることが可能となる。
【0118】
上記の点を鑑みると、本実施形態における第一剥離工程はそれ単体で発明足りうる。これを表したものが以下の構成である。
『コンタクトレンズのフロントカーブを成形する下型および前記コンタクトレンズのベースカーブを成形する上型を組み付けることによって得られる一対の型に包含されたモノマーを重合することによって生成されたコンタクトレンズを一対の型から取り出し、コンタクトレンズを製造する方法(または装置)であって、
コンタクトレンズを下型に付着させた状態のまま、上型のレンズ成形面からコンタクトレンズを剥離する第一剥離工程(または第一剥離手段)を有することを特徴とするコンタクトレンズの製造方法(剥離方法または製造装置)。』
なお、上記の構成において第一剥離工程を行った後は、本実施形態にて述べた各工程を行うのが好ましいが、それ以外の公知の手法を用いてコンタクトレンズを製造しても構わない。また、上記の構成においては、下型の材質には特に限定は無い。その場合、公知の手法にて、コンタクトレンズを下型から剥離することによってコンタクトレンズを得てもよい。
【0119】
(爪および分離工程)
本実施形態における分離工程にてワークにおける上型と下型とを分離するのに用いられた爪自体にも大きな技術的意義が存在する。
【0120】
詳しく言うと、本発明者が本実施形態を創出する前は、ワークから上型と下型との分離が不安定であった。例えば、ワークが傾いていると爪が斜めから挿入されうまく分離しなかったり、ワークの嵌合がきつく爪を挿入してもうまく分離しなかったりした。しかしながら本実施形態における爪を用いれば、ワークから上型と下型とを確実に分離することが可能となる。
【0121】
上記の点を鑑みると、本実施形態における爪すなわち分離手段(治具)はそれ単体で発明足りうる。これを表したものが以下の構成である。
『コンタクトレンズのフロントカーブを成形する下型および前記コンタクトレンズのベースカーブを成形する上型が組み付けられてなるワークから下型と上型とを分離するための治具であって、
治具は、下型と上型との間に差し込むエッジであって対向する二面を有するエッジを有し、
エッジにおいて、二面のうち一面の側にテーパーを有する部分(好ましくはエッジの中央部であって半円弧状の切り欠きの部分)と、二面のうち別の一面の側にテーパーを有する部分(好ましくはエッジの端部)と、を備えた、ワーク分離用治具。』
上記の構成はあくまでワーク分離用治具についてのものであり、上型および下型の材質には特に限定は無い。また、該治具を使用した分離工程s2にも大きな技術的意義が存在し、該分離工程s2自体にも大きな技術的意義が存在する。
【0122】
(第一剥離工程+分離工程)
コンタクトレンズを欠損させることなく上型から部分的に剥離させるという点で、本実施形態における第一剥離工程自体にも、大きな技術的意義が存在する。そして、その後に分離工程を行うからこそ、コンタクトレンズをFC成形面に確実に付着したままの状態としたまま上型と下型とを分離することが可能となる。そのため、第一剥離工程と分離工程とを組み合わせた構成自体にも、大きな技術的意義が存在する。これを表したものが以下の構成である。
『コンタクトレンズのフロントカーブを成形する下型およびコンタクトレンズのベースカーブを成形する上型を組み付けることによって得られる一対の型に包含されたモノマーを重合することによって生成されたコンタクトレンズを一対の型から取り出し、コンタクトレンズを製造する方法(または装置)であって、
コンタクトレンズを下型に付着させた状態のまま、上型のレンズ成形面からコンタクトレンズを剥離する第一剥離工程(または第一剥離手段)、および
上型と、コンタクトレンズが付着した下型とを分離する分離工程(または分離手段)
を有することを特徴とするコンタクトレンズの製造方法(剥離方法または製造装置)。』
【0123】
(第二剥離工程+第三剥離工程)
コンタクトレンズをFC成形面に確実に付着したままの状態としたまま上型と下型とを分離するという点で、第一剥離工程と分離工程とを組み合わせた構成自体にも、大きな技術的意義が存在する。一方、下型のFC成形面に付着したコンタクトレンズをいかに剥離するかについても、本発明の課題の欄にて述べたような課題が存在する。
つまり、本実施形態における第二剥離工程と第三剥離工程とを組み合わせることにより、下型のFC成形面に付着したコンタクトレンズの剥離に係る上記の課題を解決することができる。そのため、第二剥離工程と第三剥離工程とを組み合わせた構成自体にも、大きな技術的意義が存在する。これを表したものが以下の構成である。
『コンタクトレンズのフロントカーブを成形する下型およびコンタクトレンズのベースカーブを成形する上型を組み付けることによって得られる一対の型に包含されたモノマーを重合することによって生成されたコンタクトレンズを一対の型から取り出し、コンタクトレンズを製造する方法(または装置)であって、
下型のレンズ成形面に付着したコンタクトレンズの周辺部を剥離する仮剥離工程(または仮剥離手段)、および
周辺部が剥離したコンタクトレンズを下型のレンズ成形面から剥離する本剥離工程(または本剥離手段)
を有することを特徴とするコンタクトレンズの製造方法(剥離方法または製造装置)。』
なお、上記の構成の場合、下型のFC成形面にコンタクトレンズが付着した状態から各工程を開始しても構わない(すなわち本実施形態における第一剥離工程s1がすでに行われた後である)ため、第二剥離を第一剥離と称し、第三剥離を第二剥離と称しでも構わない。また、上記の通り、第二剥離を下型仮剥離と称し、第三剥離を下型本剥離と称しても構わない。
また、上記の構成においては、下型のFC成形面にコンタクトレンズが付着したもの(すなわち上型を分離した後のもの)を用意しておけばよい。そのため、上型の材質には特に限定は無く、上型として樹脂以外の材質としては石英等を用いても構わない。その場合、本実施形態の手法または公知の手法にて上型と下型とを分離しておき、コンタクトレンズが下型に付いたものを選択したうえで上記の構成を適用すればよい。