特許第6738743号(P6738743)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6738743表面構造フィルムの製造方法および製造装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6738743
(24)【登録日】2020年7月22日
(45)【発行日】2020年8月12日
(54)【発明の名称】表面構造フィルムの製造方法および製造装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 59/04 20060101AFI20200730BHJP
   G02B 5/02 20060101ALI20200730BHJP
【FI】
   B29C59/04 B
   G02B5/02 C
【請求項の数】14
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2016-574197(P2016-574197)
(86)(22)【出願日】2016年11月11日
(86)【国際出願番号】JP2016083575
(87)【国際公開番号】WO2017126200
(87)【国際公開日】20170727
【審査請求日】2019年9月19日
(31)【優先権主張番号】特願2016-6795(P2016-6795)
(32)【優先日】2016年1月18日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000219314
【氏名又は名称】東レエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100182785
【弁理士】
【氏名又は名称】一條 力
(72)【発明者】
【氏名】冨永 善章
(72)【発明者】
【氏名】箕浦 潔
(72)【発明者】
【氏名】和田 浩光
(72)【発明者】
【氏名】佐枝 暁
【審査官】 今井 拓也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−210760(JP,A)
【文献】 特開2003−305736(JP,A)
【文献】 特開2008−137282(JP,A)
【文献】 特開2013−226667(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 59/04
G02B 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱硬化性材料を含む表面構造をフィルムの表面に有する表面構造フィルムを製造する製造装置であって、
(1)表面構造が形成されたエンドレスベルト状のモールドと、
(2)2個以上の加熱ロールに抱かせた前記モールドを前記加熱ロールを回転することにより、周回搬送するためのモールド搬送手段と、
(3)前記モールド搬送手段における第1の加熱ロールと平行に配置され、表面が弾性体に覆われたニップロールと、前記加熱ロールと前記ニップロールを用いた挟圧手段とを少なくとも備えた加圧機構と、
(4)前記加圧機構よりも前記モールドの搬送方向上流側に設置され、モールドの前記表面構造が形成された面に材料を塗布するためのモールド用塗布ユニットと、
(5)前記モールドの表面にフィルムを供給するフィルム供給手段と、
(6)前記加圧機構よりもフィルム搬送方向上流側に配置され、フィルムの前記モールドと接触する面に材料を塗布するためのフィルム用塗布ユニットと、
(7)前記モールドの表面のフィルムを剥がすためのフィルム剥離手段と、
を少なくとも備えたことを特徴とする表面構造フィルムの製造装置。
【請求項2】
前記モールド用塗布ユニットと前記第1の加熱ロールの間において、前記モールドを加熱する加熱手段を備えたことを特徴とする請求項1に記載の表面構造フィルムの製造装置。
【請求項3】
前記モールド用塗布ユニットと前記加圧機構との間に、モールド表面に塗布された材料を平坦化するための平坦化手段を備えたことを特徴とする請求項1または2に記載の表面構造フィルムの製造装置。
【請求項4】
前記第1の加熱ロールの外周表面に、前記第1の加熱ロールに対して押圧できる押圧機構を備えたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の表面構造フィルムの製造装置。
【請求項5】
前記エンドレスベルト状のモールドが樹脂であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の表面構造フィルムの製造装置。
【請求項6】
前記フィルムの前記表面構造を有する面とは反対側の表面にさらに熱硬化性材料の層を転写するための転写ユニットを備えたことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の表面構造フィルムの製造装置。
【請求項7】
熱硬化性材料を含む表面構造フィルムを製造する方法であって、
(1)表面構造が形成されたエンドレスベルト状のモールドを加熱された少なくとも2個以上の加熱ロールに抱かせることにより、前記モールドを加熱しながら周回搬送させるモールド搬送部において、前記モールドの表面に熱硬化性材料Aを塗布する工程、
(2)フィルムの表面に熱硬化性材料Bを塗布する工程、
(3)前記モールドと前記フィルムを、前記熱硬化性材料Aと前記熱硬化性材料Bが接触するように貼り合わせる工程、
(4)前記フィルム、前記熱硬化性材料A、前記熱硬化性材料B、および前記モールドを、積層した状態でニップロールにより加圧する工程、
(5)加圧後の前記フィルム、前記熱硬化性材料A、前記熱硬化性材料B、および前記モールドを、積層した状態で加熱しながら搬送する工程、
(6)前記フィルムと前記熱硬化性材料A、前記熱硬化性材料Bから構成される表面構造フィルムを、前記モールドから剥離する工程、
を少なくとも含むことを特徴とする表面構造フィルムの製造方法。
【請求項8】
前記モールドの表面に熱硬化性材料Aを塗布する工程の後、前記熱硬化性材料A側からフィルムを貼り合わせる工程の前に、前記モールドを加熱することを特徴とする請求項7に記載の表面構造フィルムの製造方法。
【請求項9】
前記モールドの表面に熱硬化性材料Aを塗布する工程の後、前記熱硬化性材料A側からフィルムを貼り合わせる工程の前に、前記熱硬化性材料Aの塗布面を平坦化することを特徴とする請求項7または8に記載の表面構造フィルムの製造方法。
【請求項10】
前記フィルム、前記熱硬化性材料A、前記熱硬化性材料B、および前記モールドを、積層した状態でニップロールにより加圧する工程の後に、前記モールドを前記加熱ロールに抱かせた状態で、前記フィルム側から前記加熱ロールに対して押圧することを特徴とする請求項7乃至9のいずれかに記載の表面構造フィルムの製造方法。
【請求項11】
前記エンドレスベルト状のモールドが樹脂であることを特徴とする請求項7乃至10のいずれかに記載の表面構造フィルムの製造方法。
【請求項12】
エンドレスベルト状のモールドは熱可塑性樹脂フィルムの表面に金型を押しつけて形状を成形する方法により製造された熱可塑性樹脂フィルムであることを特徴とする請求項11に記載の表面構造フィルムの製造方法。
【請求項13】
加熱中の前記加熱ロールの表面温度が前記モールドを構成する樹脂のガラス転移温度よりも20℃以上低いことを特徴とする請求項11または12に記載の表面構造フィルムの製造方法。
【請求項14】
前記表面構造フィルムの表面構造が形成された反対側の表面に、前記モールドの周回搬送過程において熱硬化性材料の層を転写することを特徴とする請求項7乃至13のいずれかに記載の表面構造フィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルムに表面構造を転写することにより表面構造フィルムを製造する方法およびその製造装置に関する。本発明の方法により得られた表面構造フィルムは、拡散、集光、反射、透過等の光学的な機能を有する光学フィルムや超撥液機能や細胞培養適性を有する凹凸構造フィルム等、ミクロンサイズからナノサイズの微細構造をその表面に必要とする部材として用いられる。
【背景技術】
【0002】
表面に微細な構造を有する表面構造フィルムの製造方法として、表面に微細な構造が形成されているモールドを用いて、熱硬化性または放射線硬化性材料をモールドあるいはモールドに供給される前のフィルムに塗布した後に、加熱されたモールドに前記フィルムを抱かせることにより塗布膜に微細な構造を形成するとともに硬化させて、さらにモールドから前記フィルムを剥離することにより、前記フィルムの表面に微細な構造を転写させて表面構造フィルムを得る方法がある。
【0003】
特許文献1に、熱硬化性材料であるゾルゲルをロールツーロールで引き出されたフィルムモールドに塗布した後に、モールドを基板に押し付けながら熱処理を行うことにより、基板表面にゾルゲル材料からなる微細な構造を基板に転写する方法が記載されている。フィルムモールド表面にはあらかじめ微細な構造が形成されており、この微細な構造とほぼ同じ形状の構造が基板表面にも形成される。ゾルゲル材料を適用しているため比較的耐熱性の高い凹凸構造を形成することができる。
【0004】
また、特許文献2に、あらかじめ放射線硬化性樹脂を表面に塗布したフィルムを、微細構造を表面に形成したエンドレスベルトに押し当てながら放射線照射することにより、フィルム表面に微細構造を形成した後、モールドとフィルムを剥離することにより、微細構造が表面に形成されたフィルムを製造する方法が記載されている。エンドレスベルトは樹脂からなる複製を用いることが記載されており、これによりモールドコストを抑えることが可能となる。
【0005】
また、参考文献3に、第1の加熱ロールで熱可塑性樹脂である原反を軟化させて、凹凸構造を形成した後に、第2の加熱ロール上で発泡材料を加熱により発泡させながら、凹凸構造が形成された原反上に積層する方法が記載されている。第1の加熱ロールと第2の加熱ロールの温度は、使用する原反と発泡材料に応じて、個別に設定できることが記載されており、これにより原反への凹凸構造形成と発泡材料の発泡および積層を一連の動作で行うことが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第5695804号公報
【特許文献2】特開2008−137282号公報
【参考文献3】
【0007】
特開2001−277354号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載の微細構造転写フィルムの製造方法では、長尺のフィルムロールをモールドとするためモールドコストが高くなるという問題があった。また、枚葉状の基板には適用できるものの、ロールツーロール状のフィルムに適用した場合、加熱時の収縮により熱硬化材料が未硬化のままモールドと基板が剥がれ、所定の表面構造が形成できないという問題があった。また、剥がれずに硬化できたとしても、フィルムとモールドを積層した状態において、モールド表面に形成されたパターンの内部まで硬化材料を十分に充填することができず、結果的に転写したパターン形状が不良となるという問題があった。
【0009】
また、特許文献2に記載の微細構造転写フィルムの製造方法では、熱硬化性材料からなる材料に適用した場合、硬化途中の収縮により熱硬化材料が未硬化のままモールドと基板が剥がれ、所定の表面構造が形成できないという問題があった。また、モールド表面に塗布された熱硬化性材料の平坦性が悪いために、基板と積層した状態において熱硬化性材料と基板との密着不良が発生し、基板上に均一に熱硬化性材料が転写されないという問題があった。
【0010】
また、参考文献3に記載の微細構造転写フィルムの製造方法では、第1の加熱ロールおよび第2の加熱ロールは共に高温である必要があり、熱可塑性樹脂である原反の凹凸構造の維持と、連続的に製品を巻き取るために、2個の加熱ロールに加えて、製品を冷却するための冷却ロールが必要であり、設備が大型化するという問題があった。
【0011】
本発明の目的は、上記の問題を解消することであり、熱硬化性材料を含む微細な表面構造を、高精度かつ安価なモールドコストでフィルム表面に連続的かつ均一に転写する装置および方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、以下の製造方法及び製造装置である。
【0013】
熱硬化性材料を含む表面構造をフィルムの表面に有する表面構造フィルムを製造する製造装置であって、
(1)表面構造が形成されたエンドレスベルト状のモールドと、
(2)2個以上の加熱ロールに抱かせた前記モールドを前記加熱ロールを回転することにより、周回搬送するためのモールド搬送手段と、
(3)前記モールド搬送手段における第1の加熱ロールと平行に配置され、表面が弾性体に覆われたニップロールと、前記加熱ロールと前記ニップロールロールを用いた挟圧手段とを少なくとも備えた加圧機構と、
(4)前記加圧機構よりも前記モールドの搬送方向上流側に設置され、モールドの前記表面構造が形成された面に材料を塗布するためのモールド用塗布ユニットと、
(5)前記モールドの表面にフィルムを供給するフィルム供給手段と、
(6)前記加圧機構よりもフィルム搬送方向上流側に配置され、フィルムの前記モールドと接触する面に材料を塗布するためのフィルム用塗布ユニットと、
(7)前記モールドの表面のフィルムを剥がすためのフィルム剥離手段と、
を少なくとも備えた表面構造フィルムの製造装置。
【0014】
熱硬化性材料を含む表面構造フィルムを製造する方法であって、
(1)表面構造が形成されたエンドレスベルト状のモールドを加熱された少なくとも2個以上の加熱ロールに抱かせることにより、前記モールドを加熱しながら周回搬送させるモールド搬送部において、前記モールドの表面に熱硬化性材料Aを塗布する工程、
(2)フィルムの表面に熱硬化性材料Bを塗布する工程、
(3)前記モールドと前記フィルムを、前記熱硬化性材料Aと前記熱硬化性材料Bが接触するように貼り合わせる工程
(4)前記フィルム、前記熱硬化性材料A、前記熱硬化性材料B、および前記モールドを、積層した状態でニップロールにより加圧する工程
(5)加圧後の前記フィルム、前記熱硬化性材料A、前記熱硬化性材料B、および前記モールドを、積層した状態で加熱しながら搬送する工程、
(6)前記フィルムと前記熱硬化性材料A、前記熱硬化性材料Bから構成される表面構造フィルムを、前記モールドから剥離する工程、
を少なくとも含むことを特徴とする表面構造フィルムの製造方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、表面構造フィルムを、エンドレスベルト状のモールドを適用して製作できる。従来技術のようにロールフィルム状の長尺モールドを製品ごとに製作するような工程が省けるためモールドの低コスト化が図れる。また、硬化過程においてもフィルムとモールドが剥離することなく積層状態を維持でき、また、硬化材料とフィルムとの均一な密着を得ることができるので、高精度な表面構造を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の表面構造フィルムの製造装置の一例を断面からみた概略図である。
図2】本発明の表面構造フィルムの製造装置の一例を断面からみた概略図である。
図3】本発明の表面構造フィルムの製造装置の一例を断面からみた概略図である。
図4】本発明の表面構造フィルムの製造装置の一例を断面からみた概略図である。
図5】本発明の表面構造フィルムの製造装置の一例を断面からみた概略図である。
図6】本発明の表面構造フィルムの製造装置の一例を断面からみた概略図である。
図7】本発明にかかる表面構造フィルムに適用するモールドを製造する装置の一例を断面からみた概略図である。
図8】本発明の表面構造フィルムの製造方法により製造された表面構造フィルムの一例を示した斜視図である。
図9】実施例1により製造された表面構造フィルムの表面を電子顕微鏡により観察した写真である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の表面構造フィルムの製造装置は、表面構造が形成されたエンドレスベルト状のモールドと、2個以上の加熱ロールに抱かせた前記モールドを前記加熱ロールを回転することにより、周回搬送するためのモールド搬送手段と、前記モールド搬送手段における第1の加熱ロールと平行に配置され、表面が弾性体に覆われたニップロールと、前記加熱ロールと前記ニップロールを用いた挟圧手段とを少なくとも備えた加圧機構と、前記加圧機構よりも前記モールドの搬送方向上流側に設置され、モールドの前記表面構造が形成された面に材料を塗布するためのモールド用塗布ユニットと、前記モールドの表面にフィルムを供給するフィルム供給手段と、前記加圧機構よりもフィルム搬送方向上流側に配置され、フィルムの前記モールドと接触する面に材料を塗布するためのフィルム用塗布ユニットと、前記モールドの表面のフィルムを剥がすためのフィルム剥離手段と、を少なくとも備えた製造装置である。
【0018】
図1は本発明の表面構造フィルムの製造装置の一例を断面から見た概略図である。表面構造フィルムの製造装置10はフィルム11の表面に熱硬化性材料A13及び熱硬化性材料B13’からなる構造を形成した表面構造フィルム15を形成する装置の例である。なお、熱硬化性材料Aと熱硬化性材料Bは貼り合わせた時の密着性の観点から同じ材料が好ましいが、必ずしも同じ材料である必要はなく、両材料の界面で混ざり合うものや、硬化した時に界面での密着性が発現できる材料を選択すればよい。
【0019】
図1に示すように、本発明の表面構造フィルムの製造装置10は、エンドレスベルト状のモールド12と、モールド12を第1の加熱ロール21および第2の加熱ロール22に懸架して周回搬送させるモールド搬送手段20と、第1の加熱ロール21と平行に配置されたニップロール28を第1の加熱ロール21に対して押圧する加圧機構27と、モールド12の表面に熱硬化性材料A13を塗布するモールド用塗布ユニット30と、フィルム11をモールド12の表面に供給するフィルム供給手段23と、フィルム11のモールド12接触側の表面に熱硬化性材料B13’を塗布するためのフィルム用塗布ユニット33と、モールド12より表面構造フィルム15を剥離するフィルム剥離手段24を備えている。各構成の概要は以下のとおりである。
【0020】
モールド搬送手段20は、第1の加熱ロール21、第2の加熱ロール22と、両ロールあるいは第1の加熱ロール21を回転させる駆動部を備えている。第1の加熱ロール21のみを回転駆動する場合、第2の加熱ロール22は自在に回転できるように保持してモールド20との摩擦により回転する。また、第1の加熱ロール21および第2の加熱ロール22は加熱手段を含む。加熱手段としては、ロール内部から加熱する構造が好ましいが、ロール外表面付近に赤外線加熱ヒーターや誘導加熱装置を設置して、ロール外表面から加熱を促進させてもよい。
【0021】
加圧機構27は、ニップロール28を第1の加熱ロール21に対して、幅方向均一な圧力で押圧できる機構であり、ニップロール28には芯層の外表面に弾性体を被覆した構造を適用し、芯層はその両端部を軸受により回転支持されている。ニップロール28はこの加圧機構27のストロークにより開閉し、モールド12、熱硬化性材料A13,熱硬化性材料B13’およびフィルム11を積層した状態で挟圧または開放する。また、ニップロール28は所望のプロセスやフィルム材質に合わせて、温調機構を有してもよい。
【0022】
フィルム供給手段23として、ロール状に巻かれたフィルムからフィルムを巻き出していく巻出ロール23aと、さらに、フィルム11の搬送経路に合うようにガイドロール23bを1本ないしは複数備えて、フィルム11はニップロールに抱きつかせた後、加圧部27aに搬入させる。
【0023】
フィルム剥離手段24として、フィルム11と熱硬化性材料A13、熱硬化性材料B13’とからなる積層体である表面構造フィルム15をモールド12から引き剥がすための剥離ロール24aと、剥がした表面構造フィルム15をロール状に巻き取る巻取ロール25aと、さらに、表面構造フィルム15の搬送経路に合うようにガイドロール25bを1本ないしは複数備えている。
【0024】
モールド用塗布ユニット30は、塗布材料である熱硬化性材料A13を幅方向に連続的に一定に吐出することができるものであればよく、例えば、図示したようなスリットダイ31からなる吐出器と連続的に定量の塗布液を供給できる送液機構などを組み合わせた構造のものでよい。また、スリットダイの吐出先端面とモールドとの間隔を高精度に維持するために、モールドの塗布面の反対側に支持ロール32を配してもよい。塗布器の位置を左右で高い分解能で位置調整できるような位置調整機構を設けることが好ましい。
【0025】
また、図では1個の塗布ユニットのみを示しているが、複数のモールド用塗布ユニットを設けてもよい。モールド12の表面構造の影響により塗布面の平坦性が低下する場合がある。この場合、複数回の塗布工程を経ることにより平坦性を向上できる。
【0026】
フィルム用塗布ユニット33は、モールド用塗布ユニットと同様に、塗布材料である熱硬化性材料B13’を幅方向に連続的に一定に吐出することができるものであればよく、例えば、図示したようなスリットダイ34からなる吐出器と連続的に定量の塗布液を供給できる送液機構などを組み合わせた構造のものでよい。また、スリットダイの吐出先端面とモールドとの間隔を高精度に維持するために、モールドの塗布の反対側に支持ロール35を配してもよい。塗布器の位置を左右で高い分解能で位置調整できるような位置調整機構を設けることが好ましい。
【0027】
エンドレスベルト状のモールド12は、凹凸の表面構造が形成されたエンドレスベルトである。搬送過程でロールに抱きつかせるので可撓性があるものがよい。また、均一に加圧、加熱させるために薄く、均一な厚みの材料が好ましい。形状としては適用する熱硬化性材料の変形時間や硬化時間を考慮して高低差が1mm以下の表面構造が好ましい。また、搬送中は加熱しているので、加熱温度に耐えうる材料が好ましい。
【0028】
表面構造フィルムの製造装置10による一連の成形の動作は以下のとおりである。モールド12は第1の加熱ロール21、第2の加熱ロール22によって周回搬送され、所定の温度まで加熱された状態とする。そして、モールド用塗布ユニット30によってモールド12の表面に熱硬化性材料A13を塗布する。また、フィルム供給手段23たる巻出ロール23aより巻き出した成形用フィルム11の表面にフィルム用塗布ユニット33によって、熱硬化性材料B13’を塗布する。塗布した後、加圧部27aにおいて、モールド12の表面に供給される。加圧機構27によって、モールド12と、熱硬化性材料A13、熱硬化性材料B13’と、フィルム11が積層された状態で加圧部27aで挟圧される。熱硬化性材料A13は塗布された直後から、加熱され徐々に硬化は進んでいるものの、完全に硬化が完了していない状態で加圧機構27により加圧されることで、モールド12の表面に形成された表面構造の中まで熱硬化性材料A13が入り込むと同時に加熱ロール21の表面でさらに熱エネルギーを受け続けるので硬化が促進される。一方、モールド12の表面に付与された凹凸構造の影響を受け、熱硬化性材料A13の塗布面に凹凸が発生する場合があるが、モールド12とフィルム11を貼り合わせた時に、フィルム11側に塗布された熱硬化性材料B13’が熱硬化性材料A13の塗布面の凹部に充填されるように流動し、結果的にモールド12、熱硬化性材料A13、熱硬化性材料B13’、フィルム11の積層体において各層間で隙間無く密着する。
【0029】
そして、熱硬化性材料A13およびB13’がモールド12からの熱エネルギーを受け取り、硬化が促進されることにより、フィルム11との密着が起こりはじめ容易に剥がれなくなる。この状態でモールド12、熱硬化性材料A13及びB13’、フィルム11の積層体14を第2の加熱ロール22まで搬送し、加熱されたロール表面から熱硬化性材料A13およびB13’がさらに熱エネルギーを受け取り、熱硬化性材料の硬化反応を完了させる。熱硬化性材料の硬化が完了すると、モールド12とフィルム11への熱硬化性材料A13およびB13’の密着は強固な状態となる。次に、フィルム剥離手段24たる剥離ロール24aによってモールド12の側と、フィルム11と熱硬化性材料A13およびB13’が積層された表面構造フィルム15の側に分けられる。表面構造フィルム15の表面構造はモールド表面構造の反転形状となる。剥離後、モールド12の表面には、再度、熱硬化性材料A13が塗布される。一方、表面構造フィルム15は、巻取ロール25aにより巻き取られる。上記動作が連続的に行われる。
【0030】
上記装置構成および動作により、フィルム11の表面に熱硬化性材料を含む表面構造を形成することができる。熱硬化性材料を基材となるフィルム11とあらかじめ加熱されたモールド12の両方に塗布することにより、モールド12の表面構造の凹凸形状に対して、加熱によりある程度硬化して適度な弾性率を有した熱硬化性材料A13と、熱硬化性材料A13よりは硬化度が低く流動性の高い熱硬化性材料B13’との組み合わせにより、加圧時にモールド12の表面構造の凹部への樹脂の入り込み(高い充填性)と、モールド表面での膜としての形状(高い平坦性)を両立し、微細な表面構造を高精度で得ることができる。ここで、樹脂の充填性が高いとは、熱硬化性材料A13の弾性率に対して十分に高い圧力でニップすることにより、モールド表面に形成された構造の隙間まで樹脂が流動することである。また、平坦性が高いとは、加圧時にニップ幅方向の端部や搬送方向への樹脂への流れ込みが抑制されて、幅方向と搬送方向の両方で均一な厚みが得られることである。
【0031】
さらに、エンドレスベルト状のモールドを適用することにより、加熱ロール間の距離を十分に長く取り、場合によってはさらにロール間に加熱装置を追加することにより十分な樹脂硬化時間を確保することができる。これにより、高速化や熱硬化性材料の適用範囲を広げることが可能となる。エンドレスベルト状のモールドは劣化した時点や欠点が発生した時点でモールドを交換するように管理すればよく、ロールフィルム状のモールドのような使い捨てではないので、モールドにかかるコストを低く抑えることができる。
【0032】
次に各部の構成について図1を参照しながら詳細に説明する。
【0033】
モールド搬送手段20を構成する第1の加熱ロール21は、ニップ時に荷重を受けるので、強度および加工精度が求められ、さらに加熱手段を含む。材質としては、例えば鋼や繊維強化樹脂、セラミックス、アルミ合金などが挙げられる。また、加熱手段としては内部を中空にしてカートリッジヒーターや誘導加熱装置を設置したり、内部に流路を加工して油や水、蒸気等の熱媒を流すことにより、ロール内部から加熱したりする構造でもよい。また、ロール外表面付近に赤外線加熱ヒーターや誘導加熱装置を設置して、ロール外表面から加熱する構造でもよい。
【0034】
第1の加熱ロール21の加工精度は、JIS B 0621(改訂年1984)にて定義される円筒度公差において0.03mm以下、円周振れ公差において0.03mm以下であることが好ましい。これらの値が大きくなりすぎると、挟圧時の第1の加熱ロール21とニップロール28の間に部分的な隙間ができるため、積層体14を均一に押圧できなくなり、転写する表面構造の形状にばらつきを引き起こす場合がある。また、ロールの表面粗さは、JIS B 0601(改訂年2001)にて定義される、算術平均粗さRaで0.2μm以下のものが好ましい。Raが0.2μmを超えると、モールド12の裏面に第1の加熱ロール21の形状が転写し、さらにそれがフィルム11の表面構造に転写してしまう場合があるためである。
【0035】
第1の加熱ロール21の表面には、硬質クロムめっき、セラミック溶射、ダイヤモンド・ライク・カーボン・コーティングなどの高硬度皮膜の形成処理を施すことが好ましい。第1の加熱ロール21は、常にモールド12と接触しているうえ、積層体14を介し、ニップロール28による押圧力を受けるため、その表面は非常に磨耗しやすく、第1の加熱ロール21の表面が磨耗したり、傷が入ったりすると、前述したような表面構造の形状ばらつきや、ロール表面の形状の転写といった問題が生じることがあるためである。
【0036】
一方、第2の加熱ロール22も加熱手段を含む。材質および加熱手段としては、第1の加熱ロールと同様である。第2の加熱ロール22の加工精度は、JIS B 0621(改訂年1984)にて定義される円筒度公差において0.05mm以下、円周振れ公差において0.05mm以下であることが好ましい。これらの値が大きくなりすぎると、搬送精度が低下する場合があり、積層体14あるいはモールド12において幅方向での張力ムラあるいは過大な蛇行を引き起こす可能性がある。第2の加熱ロール22の表面粗さは第1の加熱ロール同様に、JIS B 0601(改訂年2001)にて定義される、算術平均粗さRaで0.2μm以下のものが好ましい。Raが0.2μmを超えると、モールドへの熱伝導が不十分となる可能性がある。また、材質についても第1の加熱ロール21と同様に、硬質クロムめっき、セラミック溶射、ダイヤモンド・ライク・カーボン・コーティングなどの高硬度皮膜の形成処理を施すことが好ましい。モールドとの接触による傷や磨耗を防止するためである。
【0037】
そして、各ロールの端部は、ころがり軸受などにより回転支持される。第1の加熱ロール21は図示しないモータ等の駆動手段と連結され、速度を制御しながら回転可能となっている。また第2の加熱ロール22はモールド12を通じて、第1の加熱ロール21の駆動力により回転することが好ましい。速度として好ましくは1〜30m/分の範囲で搬送し、表面構造を高精度に転写しながら生産性を高くすることもできる。
【0038】
また、モールド蛇行修正機構を設けることが安定的にモールド12を搬送するために好ましい。モールド蛇行抑制機構の好ましい形態は、図1に示すように、モールド12の搬送経路において、モールド12の端部の位置を検知する端部検出センサー36と、検出された値に基づいて第2の加熱ロール22の移動を制御することにより、モールド12の搬送位置を調整するためのコントローラ37を有する。
【0039】
第2の加熱ロール22の移動手段としては、それぞれモールド12の搬送方向に対して第2の加熱ロール22の角度を調整できるものが好ましい。端部検出センサー36からの値に基づき、移動させたい方向に張力が低下するように第2の加熱ロールのモールド搬送方向に対する角度を調整する構造が好ましい。上記のモールド12の蛇行抑制機構を備えることにより、熱変形によるモールド12の蛇行を抑制し、安定したモールド12の搬送と成形動作を実現できる。また、第2の加熱ロール22はモールド12の非表面構造面をエアーシリンダー等の押圧手段で一定の荷重で押圧することが好ましい。金型は温度変化により寸法変化を起こすことから、一定の張力を維持するために上記構造が有効である。
【0040】
また、モールド搬送過程で熱硬化性材料A13を塗布後、加圧するまでの間で別の加熱ユニットにより加熱して熱硬化性材料A13の硬化を促進させてもよい。図2は、加熱ユニットを追加した装置の一例を示したもので、表面構造フィルムの製造装置40を断面から見た概略図である。加熱ユニット41を塗布した直後の位置に設置することにより、塗布した直後の熱硬化性材料A13の硬化を開始させ、ある程度硬化した状態で、加圧機構27によりフィルム11を積層した状態で加圧する。加圧時の材料の幅方向端部の広がりを抑制して、加圧後の熱硬化性材料膜の厚みを幅方向に均一にできる。加熱ユニット41としては、熱硬化性材料A13を加熱できるものであればよく、赤外線ヒーター等の加熱ユニット41を離間して設置する構成や、モールド12の非塗布側から加熱ロールを接触させて熱伝導により加熱する構成でもよい。
【0041】
また、モールド搬送過程で熱硬化性材料A13を塗布後、加圧するまでの間で熱硬化性材料Aの塗布面を平坦化する平坦化手段を設けてもよい。図3は、平坦化手段46を追加した装置の一例を示したもので、表面構造フィルムの製造装置45を断面から見た概略図である。平坦化手段46は凹凸を有する塗布面を平坦化するための構造体であって、塗布面に当接するエッジを有する構造体が好ましい。さらにエッジ部がモールド12の幅方向に均一な圧力あるいは均一なモールド12表面からの距離を保持した状態で塗布面に当接できる機構や構造を有することが好ましい。
【0042】
また、モールド搬送過程で熱硬化性材料A13およびB13’を加圧後、加熱する間にフィルム11を熱硬化性材料に密着させる押圧機構を設けてもよい。図4は、押圧機構を追加した装置の一例を示したもので、表面構造フィルムの製造装置50を断面から見た概略図である。押圧機構51は、加圧機構27により加圧された積層体14を第1の加熱ロール21の表面において、エンドレスベルト54により押圧する機構の一例である。エンドレスベルト54は、ロール52、53に懸架されており、積層体14の搬送に追従して、フィルム11との摩擦によりエンドレスベルト54が周回する。ロール52、53は回転自在に保持されている。エンドレスベルト54は加熱されていることが好ましく、ロール52、53にも温調機構を設けていることが好ましい。エンドレスベルト54の材質としてはフィルム11に対して傷をつけないように樹脂であることが好ましいが、ステンレスなどの金属ベルトであってもよい。上記の構成により、加圧後の積層体14が、加熱されながらフィルム11が熱硬化性材料A13、B13’に対して押し付けられることにより、熱硬化性材料A13、B13’の硬化を促進させつつ、モールド12の表面構造への熱硬化性材料A13の充填と、フィルム11と熱硬化性材料B13’との密着を促進させることができる。
【0043】
また、モールド搬送過程で熱硬化性材料A13、B13’の加圧後の硬化を促進させるために、加熱ロールをモールド搬送手段に追加してもよい。図5は、モールド搬送手段に3個以上の加熱ロールを追加した装置の一例を示したもので、表面構造フィルムの製造装置60を断面から見た概略図である。加熱ロール66a、66b、66c、66dが搬送手段として設けられ、さらに、図4と同様に第1の加熱ロール21と積層体14を押圧するための押圧機構51が設けられている。上記の加熱ロール66a〜66d、押圧機構51を追加した構成により、フィルム11と熱硬化性材料B13’との密着を維持しつつ、硬化を促進させることが可能となるため、図1図2に例示したモールド搬送手段では硬化が不十分である材料に対して有効である。
【0044】
ここで、加圧機構27について、図1を参照しながら説明する。加圧機構27は、ニップロール28と、これと平行に対向配置された第1の加熱ロール21に対して押圧する機構から構成される。ニップロール28は芯層の外表面に弾性体を被覆した構造である。芯層は、強度および加工精度が求められ、例えば鋼や繊維強化樹脂、セラミックス、アルミ合金などが適用される。また、弾性体は、押圧力により変形する層であり、ゴムに代表される樹脂層もしくはエラストマー材質が好ましく適用される。芯層はその両端部で軸受によって回転支持されており、さらに軸受は、シリンダなどの押圧手段29と接続されている。ニップロール28はこの押圧手段29のストロークにより開閉し、積層体14を挟圧または開放する。
【0045】
また、ニップロール28は所望のプロセスやフィルム材質に合わせて、温調機構を有してもよい。温調機構としては、ロール内部を中空にしてカートリッジヒーターや誘導加熱装置を埋め込んだり、内部に流路を加工して油や水、蒸気等の熱媒を流すことにより、ロール内部から加熱したりする構造でもよい。また、ロール外表面付近に赤外線加熱ヒーターを設置して、ロール外表面から加熱する構造でもよい。
【0046】
ニップロール28の加工精度は、JIS B 0621(改訂年1984)にて定義される円筒度公差において0.03mm以下、円周振れ公差において0.03mm以下であることが好ましい。これらの値が大きくなりすぎると、挟圧時の第1の加熱ロール21とニップロール28の間に部分的な隙間ができるため、積層体14を幅方向で均一な力で押圧できなくなり、その結果積層体14を均一に押圧できなくなり、転写する表面構造の形状にばらつきを引き起こす場合がある。また、弾性体の表面粗さは、JIS B 0601(改訂年2001)にて定義される、算術平均粗さRaが1.6μm以下のものが好ましい。Raが1.6μmを超えると、押圧時にフィルム11の裏面に、弾性体の表面形状が転写してしまう場合があるためである。
【0047】
ニップロール28の弾性体の耐熱性は、160℃以上の耐熱温度を有するものが好ましく、さらには180℃以上の耐熱温度を有するものが好ましい。ここで耐熱温度とはその温度で24時間放置したときの引張強さの変化率が10%を超えるときの温度で判定する。
【0048】
弾性体の材質としては、例えばゴムを用いる場合には、シリコーンゴムやEPDM(エチレン・プロピレン・ジエンゴム)、ネオプレン、CSM(クロロスルホン化ポリエチレンゴム)、ウレタンゴム、NBR(ニトリルゴム)、エボナイトなどを用いることができる。更に高い弾性率と硬度を求める場合は、靱性を向上させた硬質耐圧樹脂(例:ポリエステル樹脂)を用いることができる。弾性体のゴム硬度はASTM D2240:2005(ショアD)規格で70〜97°の範囲であることが好ましい。硬度が70°を下回ると弾性体の変形量が大きくなり、フィルム11との加圧接触幅が大きくなりすぎて、構造の形成に必要な圧力を確保することができなくなる場合があり、また硬度が97°を超えると、逆に該層の変形量が小さくなり、加圧接触幅が小さくなりすぎて、表面構造の転写に必要な押圧時間が確保できない場合があるためである。
【0049】
ニップロール28の駆動手段は、第1の加熱ロール21の端部とチェーンまたはベルトなどで連結し、第1の加熱ロール21と連動して回転できるようにしたり、あるいは、第1の加熱ロール21と速度を同期可能なモータなどを用いて独立して回転させることが好ましいが、回転自在の構造とし、フィルム11との摩擦によって回転されるようにしてもよい。
【0050】
フィルム供給手段23は、巻出ロール23aと、さらに、フィルム11の搬送経路に合うように設置された1本ないし複数のガイドロール23bから構成されるが、ガイドロール23bは張力検知機構を備えて、張力が一定になるようにガイドロール23aの回転トルクを制御するようにすることが好ましい。フィルム11はニップロール28に抱きつかせた後、加圧部27aに搬送されるが、抱きつかせる直前にしわ伸ばしロールを設置してもよい。
【0051】
フィルム剥離手段24は、剥離ロール24aにより表面構造フィルム15をモールド12から引き剥がした後、ロール状に巻き取る巻取ロール25aと、さらに、1本ないしは複数のガイドロール25bで構成されるが、ガイドロール25bは張力検知機構を備えて、張力が一定になるように巻取ロール25aの回転トルクを制御するようにすることが好ましい。また、表面構造フィルム15は、必ずしもロール状に巻き取る必要はなく、幅方向端部を把持しながら、搬送過程でシート状に裁断して枚葉状に回収する機構を備えてもよい。また、剥離ロール24aの内面に冷却機構を設けてもよい。加熱された表面構造フィルム15を巻き取る前に冷却してもよい。また、剥離ロールから巻き取る前までの搬送過程でエアー吹きなどの冷却装置を設けて表面構造フィルム15を冷却してもよい。巻き取る前に室温まで冷却することにより、巻き取り後の表面構造フィルム15において、温度変化で起こりうるシワや平面性不良などを抑制することができる。
【0052】
モールド用塗布ユニット30は、モールド12の搬送過程において、加圧部27aよりも上流側にスリットダイ31とこれに接続された塗布材料供給機構を備える。スリットダイ31は、モールド12の表面構造が形成された面に熱硬化性材料A13を塗布できるように対向させる。均一な塗膜を形成するためには、スリットダイ31とモールド12の間隔が高精度に均一に保持されることが好ましく、図示するように支持ロール32を表面構造が形成された面とは逆側の面からモールドを支持するように配置することが好ましい。また、支持ロール32はモールド接触時にモールド温度を所定の温度に制御できるように内部に温調機構を設けることが好ましい。ここで、スリットダイ31とモールド12の間隔について、スリットダイ31の吐出面とモールド12の表面との距離が10μm〜500μmの間隔で位置を制御できるようにしておくことが好ましい。また、幅方向の間隔の精度としては、好ましくは10μm以下、より好ましくは3μm以下である。また、本発明における精度を実現するために支持ロール32の真直度および回転振れは5μm以下が好ましく、より好ましくは1μm以下である。なお、ここではスリットダイを用いた塗布方式を例示しているが、他の塗布方式であってもよい。
【0053】
フィルム用塗布ユニット33は、フィルム11の搬送過程において、加圧部27aよりも上流側に塗布器とこれに接続された塗布材料供給機構を備えるものであって、塗布器としては上記のモールド用塗布ユニットと同様スリットダイなどを利用すればよい。この場合、スリットダイ34とフィルム11との間隔を高精度に幅方向に均一に保持されることが好ましく、図示するように支持ロール35を配置することが好ましい。ここで、スリットダイ34とフィルム11の間隔について、スリットダイ34の吐出面とフィルム11の表面との距離が10μm〜500μmの間隔で位置を制御できるようにしておくことが好ましい。また、幅方向の間隔の精度としては、好ましくは10μm以下、より好ましくは3μm以下である。また、本発明における精度を実現するために支持ロール35の真直度および回転振れは5μm以下が好ましく、より好ましくは1μm以下である。なお、ここではスリットダイを用いた塗布方式を例示しているが、他の塗布方式であってもよい。
【0054】
転写ユニットと熱硬化性材料のモールド用塗布ユニットをさらに追加して、フィルム11の両面に熱硬化性材料の層を形成できるようにしてもよい。図6は、両面に熱硬化性材料を含む層を形成するための装置の一例を示したもので、表面構造フィルムの製造装置70を断面からみた概略図である。転写ユニットを構成する第2のモールド搬送手段71をモールド搬送手段20と平行に設ける。第2のモールド搬送手段71を構成する第2のモールド80は表面に表面構造を設けてもよいし、設けなくてもよい。表面構造がない場合は、平坦な熱硬化性材料の面が得られる。第2のモールド搬送手段71は、モールド12が第1の加熱ロール21から離間する近傍で第2のモールド80がフィルム11に接触するように、加熱ロール72、73を配置して、両ロールに第2のモールド80を懸架する。第2のモールド用塗布ユニットを構成するスリットダイ74は第2のモールドの搬送過程において、フィルム接触点77よりもモールド搬送工程上流側に設ける。また、加熱ユニット75をスリットダイ74とフィルム接触点77との間に設ける。また、第1の加熱ロール21の通過後は、加熱ロール78、79により複数回挟圧してもよく、熱硬化性材料の硬化、および、フィルム11と熱硬化性材料との密着を促進させることができる。第2の加熱ロール22に搬送するフィルムを挟んで対向した位置に加熱ロール73を設ける。表面構造フィルム81は、加熱ロール72によりモールド12から剥離され、巻取ロールに巻き取られる。表面構造フィルム81は両面に熱硬化性材料の層を形成するために、熱硬化性材料の収縮にともなうフィルムの反り変形を抑制し、平面性を向上させることができる。
【0055】
エンドレスベルト状のモールド12は、表面構造が加工されたエンドレスベルトである。材質は高い強度と熱伝導率を考慮し、ニッケルや鋼、ステンレス鋼、銅などの金属を採用してもよいが、熱硬化性材料との剥離性を考慮すると樹脂であることが好ましい。樹脂の場合、より高い剥離性が得られるように表面エネルギーが25mN/m以下の熱可塑性材料が好ましい。材質としては、ポリオレフィン系材料が好ましく例示される。モールドとしての平面性を高めるために、2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(PET)と貼り合わせてもよい。
【0056】
表面構造をもつモールド12の作製方法として、熱可塑性樹脂フィルムの表面に金型を押しつけて形状を成形する方法を適用してもよい。熱可塑性樹脂フィルムの表面に金型を押しつけて形状を成形する方法では、熱可塑性樹脂フィルムを加熱した状態で金型に押し当て、金型の表面に形成された構造の反転の構造を熱可塑性樹脂フィルムの表面に形成する。例えば、図7に示すようなモールド製造装置を介したプロセスによって製造することが可能である。図7は、モールド12をエンドレスベルト状の金型101を用いて製造するための装置の一例を示す断面図である。
【0057】
図7に示す例では、フィルム102が巻出ロール110から引き出され、加熱ロール120により、加熱された表面構造を有するエンドレスベルト状の金型101の表面に供給される。金型101の表面構造は最終的に得たい表面構造フィルム15の表面構造とほぼ同じ形状が形成されている。金型101はフィルムと接触する直前に加熱ロール120によって加熱される。連続的に供給されるフィルム102はニップロール121により金型101の表面構造が押し付けられ、フィルム102に金型101の表面構造の反転した構造が形成される。
【0058】
その後、フィルム102は、金型101と密着された状態で冷却ロール130の外表面位置まで搬送される。フィルム102は、冷却ロール130によって金型101を介して熱伝導により冷却された後、剥離ロール140によって金型101から剥離され、フィルムは巻取ロール150に巻き取られる。このようなプロセスにより、ロールフィルム状のモールドを得る。図1に示すモールド12は適用する装置に合わせて適正な長さにカットして、端部を内面側からテープで固定するなどしてエンドレスベルト状に加工する。
【0059】
なお、金型101の表面に施す加工方法としては、金属ベルトの表面に直接切削やレーザー加工を施工する方法、金属ベルトの表面に形成した鍍金皮膜に直接切削やレーザー加工を施工する方法、微細構造を内面に有する円筒状の原版に電気鋳造を施す方法、金属ベルトの表面に微細構造面を有する薄板を連続して張り付ける方法などが挙げられる。また、所定の厚み、長さを持つ金属板の端部同士を突き合わせ溶接する方法、などが挙げられる。
【0060】
また、モールド12の表面構造としては、凹み形状が離散的に配置されたものが適している。これは、加圧時にモールド平坦面で圧力を受けることができるので、形状の先端で圧力を集中的に受け、先端で変形を引き起こす可能性が低いためである。凹み形状としては、好ましくは直径10nm〜1mm、高さが10nm〜0.5mmの円柱状の凹みがピッチ100nm〜1mm、より好ましくは高さ1μm〜500μmで配置されている形状が好ましい。但し、これに限定されるものではなく、円錐や角錐状の凹みであってもよい。さらに、例えば、溝が複数個ストライプ状に並んでいるものであったり、凸形状が離散的に配置されたものでもよい。
【0061】
なお、図6に示す両面に熱硬化性材料を形成する場合に用いる第2のモールド80についてもモールド12と同様の構成、材料、製造方法でよい。なお、表面構造がない平坦なものでもよい。
【0062】
次に、本発明の表面構造フィルムの製造方法について説明する。本発明の表面構造フィルムの製造方法は、表面構造が形成されたエンドレスベルト状のモールドを加熱された少なくとも2個以上の加熱ロールに抱かせることにより、前記モールドを加熱しながら周回搬送させるモールド搬送部において、前記モールドの表面に熱硬化性材料Aを塗布する工程、フィルムの表面に熱硬化性材料Bを塗布する工程、前記モールドと前記フィルムを、前記熱硬化性材料Aと前記熱硬化性材料Bが接触するように貼り合わせる工程、前記フィルム、前記熱硬化性材料A、前記熱硬化性材料B、および前記モールドを、積層した状態でニップロールにより加圧する工程、加圧後の前記フィルム、前記熱硬化性材料A、前記熱硬化性材料B、および前記モールドを、積層した状態で加熱しながら搬送する工程、前記フィルムと前記熱硬化性材料A、前記熱硬化性材料Bから構成される表面構造フィルムを、前記モールドから剥離する工程、を少なくとも含むことにより、表面構造フィルムを製造することを特徴とする。
【0063】
次に図1から図6を参照しながら、製造方法を説明する。
【0064】
準備段階として、フィルム11を巻出ロール23aより引き出し、モールド12上に沿わせ、剥離ロール24aを経て、巻取ロール25aで巻き取っている状態とする。
【0065】
続いて、駆動手段によりフィルム11を搬送しながら、第1の加熱ロール21と第2の加熱ロール22を作動し、両加熱ロールの表面温度が所定の温度になるまで温調する。両加熱ロールの表面温度の条件は、塗布する熱硬化性材料A13、B13’の材質、フィルム11の耐熱性、モールド12の表面構造の形状、アスペクト比等に依存するが、通常80℃〜200℃の間で設定される。モールドが樹脂の場合は、加熱ロールの表面温度は、モールドを構成する樹脂のガラス転移温度よりも20℃以上低いことが好ましい。モールドの表面構造の形状が変形することを抑制できるためである。また、図2に示すように、モールド用塗布ユニット30から加圧部27aまでの間に加熱ユニット41を設置して、モールドを加熱してもよい。この時、加熱ユニット41の設定温度は熱硬化性材料A13が加圧部27aにおいて適正な硬化状態となるように設定するのがよい。適正な硬化状態とすることにより、加圧時の材料の幅方向端部の広がりを抑制して、加圧後の熱硬化性材料膜の厚みを幅方向に均一にできる。
【0066】
第1の加熱ロール21及び第2の加熱ロール22の表面温度が設定値に到達したら、フィルム11を成形速度で搬送すると同時に、モールド用塗布ユニット30とフィルム用塗布ユニット33を作動させて、モールド12への熱硬化性材料A13の塗布とフィルム11への熱硬化性材料B13’の塗布を開始すると同時に、ニップロール28を閉じ、第1の加熱ロール21とニップロール28でフィルム11、モールド12を加圧し、モールド12の表面構造の反転の形状を熱硬化性材料A13に形成する。また、熱硬化性材料A13と熱硬化性材料B13’が接触して加圧されることにより、モールドの表面構造の影響を受けて発生した熱硬化性材料A13の塗布面の凹凸部に熱硬化性材料B13’が充填される。このときの条件としては、塗布する熱硬化性材料A、Bの機械的特性、モールド12の表面構造の形状、アスペクト比等に依存するがフィルムの成形速度は1〜30m/分、ニップ圧力は10MPa以上100MPa以下の範囲で設定されることが好ましい。また、図3に示すようにモールド用塗布ユニット30から加圧部27aまでの間に平坦化手段46を設置して、熱硬化性材料Aの塗布された直後の塗布面をあらかじめ平坦化しておいてもよい。完全な平坦化は難しいが、塗布面の凹凸の大きさを小さくすることにより、その後の熱硬化性材料B13’が凹凸面に充填されやすくなる。
【0067】
適用する熱硬化性材料A、Bとしては、無機材料、有機材料どちらでもよいが、フィルム11の耐熱性を考慮して、硬化温度が比較的低い有機材料が適している。例えば、フェノール樹脂、ユリア樹脂(尿素樹脂)、メラミン樹脂、 エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル、シリコーン樹脂、ポリウレタン等が好適に用いられる。また、塗布時の粘度や硬化時の硬度などが広く選択できる2液硬化型シリコーンゴムが好適に用いられる。
【0068】
ニップ圧力は10MPa未満では微細構造を転写する場合、十分に樹脂が変形しきれず成形不良となる場合がある。また、100MPa超ではモールドの形状が変形する場合があることと、強度設計上、装置が大型となりコストが問題となることがある。
【0069】
熱硬化性材料A13はモールド12からの熱伝導により加熱され、第1の加熱ロール21とニップロール28によって挟圧されることにより、モールド12の表面構造内に充填される。そして、加圧部27aを通過したフィルム11、熱硬化性材料、モールド12が積層された積層体14は、温度をほぼ維持しながら第2の加熱ロール22まで搬送される。ここでもさらにモールド12は加熱され、モールド12からの熱伝導により熱硬化性材料A13、B13’ともに加熱され、硬化が進展する。その後、フィルム剥離手段たる剥離ロール24aによって剥離される。また、図4に示すように、第1の加熱ロール21の表面において、エンドレスベルト54を用いてフィルム11側から積層体14を加圧してもよい。熱硬化性材料A13、B13’の硬化と、フィルム11との密着を促進させることができる。
【0070】
次いで、第2の加熱ロール22の表面で、フィルム剥離手段たる剥離ロール24aにより、フィルム11と熱硬化性材料A13、B13’が密着して積層された表面構造フィルム15をモールド12から剥離する。剥離された表面構造フィルム15は、巻取ロール25aで巻き取られる。
【0071】
また、図6に示すように転写ユニットと熱硬化性材料のモールド用塗布ユニットをさらに追加して、フィルム11の両面に熱硬化性材料の層を転写できるようにしてもよい。塗布する熱硬化性材料の材質や塗布厚みは、逆面に形成する熱硬化性材料A13と同等にしておくことが好ましい。また、加熱ロール72、73や他の追加する加熱ロールの設定温度についても、熱硬化性材料A13の側の加熱設定と同等にすることが好ましい。これは、表面構造フィルム81において、フィルムの両面の熱収縮量を同等にしてフィルムの反りを抑制し、平面性を向上させるためである。
【0072】
フィルム11としては、搬送や熱硬化性材料の硬化収縮においても変形しないように強度と耐熱性があることが好ましく、具体的に、好ましくは、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリブテン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリエステルアミド系樹脂、ポリエーテルエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、あるいはポリ塩化ビニル系樹脂などからなるものがある。
【0073】
製造した表面構造フィルムの形態の一例を図8に示す。図8は表面構造フィルム15の一領域を切り取った斜視図である。表面構造フィルム15は、フィルム11の表面に熱硬化性材料を含むパターン層13aが被覆され、表層に構造が形成されている。本発明の製造方法が好適に適用される好ましい構造としては、離散的に柱状あるいは錐状、円錐、角錐状の凸形状の突起や、ストライプ状であったり、凹み形状が離散的に配置されたものが好ましいが、これに限定されるものではない。パターンのピッチとしては、100nm〜1mm、高さとしては100nm〜500μmで配置されているものが好適である。
【実施例】
【0074】
[実施例1]
フィルム11には、2軸延伸したポリエチレンテレフタレートからなる厚み100μmのフィルム(商品名“ルミラー”(登録商標)、S10、東レ株式会社製)を用いた。幅は300mmとした。
【0075】
モールド12には、メチルペンテンポリマーからなる厚み100μm、長さ3m、幅320mmのフィルム(オピュラン、三井化学株式会社製)を適用し、表面構造の形成には図7に示す熱可塑性樹脂フィルムの表面に金型を押しつけて形状を成形する装置を用いた。表面構造としては、二等辺三角形の断面を持つストライプ状パターンで、二等辺三角形の高さが12.5μm、頂角が90度、ピッチが25μmで配置された波状形状である。
【0076】
熱硬化性材料A13およびB13’として、2液硬化型シリコーンゴム(商品名7-6830、東レ・ダウコーニング株式会社製)を用い、2液を混合し、攪拌した後に脱泡したものを用いた。
【0077】
表面構造フィルムの製造装置として図1に示す装置を用い、第1、第2の加熱ロール21、22は、炭素鋼からなる筒状の芯材にカートリッジヒーターを内蔵させ、表面に硬質クロム鍍金をしたものを用いた。モールド12を支持する中央部の外径は400mm、幅方向長さは340mmとした。第1の加熱ロール21の表面温度を120℃、第2の加熱ロール22の表面温度を160℃まで加熱した。
【0078】
モールド12の表面に吐出幅が290mm、スリット幅が100μmであるスリットダイ31を用いて、平坦面に塗布した場合に塗布厚みが10μmとなるように熱硬化性材料A13を塗布した。
【0079】
フィルム11の表面に吐出幅が290mm、スリット幅が200μmであるスリットダイ34を用いて、厚みが20μmとなるように熱硬化性材料B13’を塗布した。
【0080】
フィルム剥離手段たる剥離ロール24aは、外径は400mm、幅方向長さは340mmであり炭素鋼からなる中空の芯材に内部に冷却水を流せる構造とした。冷却水の温度は30℃とした。
【0081】
フィルム11のモールド12への供給はロール状に巻かれたフィルムから行い、巻出張力を30Nとした。
【0082】
表面構造フィルム15のフィルムは、巻取張力30Nでモールド12から剥離し、フィルムロールとして巻き取った。
【0083】
モールド12は2m/分の速度で周回搬送した。モールド12には張力30Nがかかるように第1、第2の加熱ロールを保持した。
【0084】
ニップロール28は外径が160mm、炭素鋼からなる筒状の芯材表面に、弾性体としてポリエステル樹脂(硬度:ショア D80°)を加圧幅が290mmとなるように、表面に被膜したものを用いた。押圧手段には油圧シリンダを用いてニップロール28に対し押圧力100kNを負荷した。このとき、ニップロール28とフィルム11との接触幅Bを、圧力測定フィルム(プレスケール、富士フィルム株式会社製)を用いて確認したところ全幅で6mmであり、成形用フィルムに負荷される圧力が約50MPaとなり、幅方向で均一であった。
【0085】
成形動作を連続的に行った結果、フィルム11上の熱硬化性材料B13’はモールド12上の熱硬化性材料A13と接合し、モールド12上の熱硬化性材料A13にモールド12の表面形状をほぼ100%転写することができた。図9に表面構造フィルムの表面を走査型電子顕微鏡で観察した結果を示す。
【0086】
[実施例2]
フィルム11およびモールド12には、実施例1に記載と同様のものを用いた。
【0087】
熱硬化性材料A13およびB13’として、2液硬化型シリコーンゴム(商品名RBL−9101−05、東レ・ダウコーニング株式会社製)を用い、2液を混合し、攪拌した後に脱泡したものを用いた。
【0088】
表面構造フィルムの製造装置として図3に示す装置を用い、第1、第2の加熱ロール21、22は、炭素鋼からなる筒状の芯材にカートリッジヒーターを内蔵させ、表面に硬質クロム鍍金をしたものを用いた。モールド12を支持する中央部の外径は400mm、幅方向長さは340mmとした。第1の加熱ロール21の表面温度を70℃まで加熱し、第2の加熱ロール22の表面温度を150℃まで加熱した。
【0089】
スリットダイ31は吐出幅が290mm、スリット幅が100μmであり、平坦面に塗布した場合に塗布厚みが25μmとなるように熱硬化性材料A13を塗布した。フィルム11の表面に吐出幅が290mm、スリット幅が200μmであるスリットダイ34を用いて、厚みが10μmとなるように熱硬化性材料B13’を塗布した。
【0090】
平坦化手段46にはステンレスからなる掻き取り幅320mmの掻き取りブレードを用い、モールド12表面と掻き取りブレードの最短距離が20μmとなるように保持した。
【0091】
掻き取りブレードにより掻き取られた余剰液は、掻き取りブレードの上方に配置され、真空ポンプに接続された吸引幅320mm、スリット幅200μmの吸引ノズルで回収した。吸引ノズルの吸引圧力は圧力調整器により−10kPaに設定した。
【0092】
フィルム剥離手段たる剥離ロール24aは、外径は400mm、幅方向長さは340mmであり炭素鋼からなる中空の芯材に内部に冷却水を流せる構造とした。冷却水の温度は30℃とした。
【0093】
フィルム11のモールド12への供給はロール状に巻かれたフィルムから行い、巻出張力を30Nとした。
【0094】
表面構造フィルム15のフィルムは、巻取張力30Nでモールド12から剥離し、フィルムロールとして巻き取った。
【0095】
モールド12は2m/分の速度で周回搬送した。モールド12には張力30Nがかかるように第1、第2の加熱ロールを保持した。
【0096】
ニップロール28は外径が160mm、炭素鋼からなる筒状の芯材表面に、弾性体としてポリエステル樹脂(硬度:ショア D80°)を加圧幅が290mmと表面に被膜したものを用いた。押圧手段には油圧シリンダを用いてニップロール28に対し押圧力100kNを負荷した。
【0097】
成形動作を連続的に行った結果、フィルム11上の熱硬化性材料B13’はモールド12上の熱硬化性材料A13と接合し、モールド12上の熱硬化性材料A13にモールド12の表面形状をほぼ100%転写することができた。
【符号の説明】
【0098】
10:本発明の表面構造フィルムの製造装置
11:フィルム
12:モールド
13:熱硬化性材料A
13’:熱硬化性材料B
13a:パターン層
14:積層体
15:表面構造フィルム
20:モールド搬送手段
21:第1の加熱ロール
22:第2の加熱ロール
23:フィルム供給手段
23a:巻出ロール
23b:ガイドロール
24:フィルム剥離手段
24a:剥離ロール
25a:巻取ロール
25b:ガイドロール
27:加圧機構
27a:加圧部
28:ニップロール
29:押圧手段
30:モールド用塗布ユニット
31:スリットダイ
32:支持ロール
33:フィルム用塗布ユニット
34:スリットダイ
35:支持ロール
36:端部検出センサー
37:コントローラ
40:本発明の表面構造フィルムの製造装置
41:加熱ユニット
45:本発明の表面構造フィルムの製造装置
46:平坦化手段
50:本発明の表面構造フィルムの製造装置
51:押圧機構
52、53:ロール
54:エンドレスベルト
60:本発明の表面構造フィルムの製造装置
66a〜66d:加熱ロール
70:本発明の表面構造フィルムの製造装置
71:第2のモールド搬送手段
72、73:加熱ロール
74:スリットダイ
75:加熱ユニット
77:フィルム接触点
78、79:加熱ロール
80:モールド
81:表面構造フィルム
100:本発明の表面構造フィルムの製造装置に適用するモールドの製造装置
101:金型
102:フィルム
110:巻出ロール
120:加熱ロール
121:ニップロール
130:冷却ロール
140:剥離ロール
150:巻取ロール
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9