特許第6738804号(P6738804)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6738804Li電池用の固形電解質並びにそれの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6738804
(24)【登録日】2020年7月22日
(45)【発行日】2020年8月12日
(54)【発明の名称】Li電池用の固形電解質並びにそれの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 25/45 20060101AFI20200730BHJP
   C01B 33/12 20060101ALI20200730BHJP
   C01B 33/152 20060101ALI20200730BHJP
   H01M 12/08 20060101ALI20200730BHJP
   H01M 10/0562 20100101ALI20200730BHJP
   H01B 1/06 20060101ALI20200730BHJP
   C01G 23/00 20060101ALI20200730BHJP
【FI】
   C01B25/45 H
   C01B33/12 A
   C01B33/152 A
   H01M12/08 Z
   H01M10/0562
   H01B1/06 A
   C01G23/00 Z
【請求項の数】10
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2017-512751(P2017-512751)
(86)(22)【出願日】2015年8月19日
(65)【公表番号】特表2017-534545(P2017-534545A)
(43)【公表日】2017年11月24日
(86)【国際出願番号】DE2015000414
(87)【国際公開番号】WO2016034158
(87)【国際公開日】20160310
【審査請求日】2018年6月29日
(31)【優先権主張番号】102014012926.8
(32)【優先日】2014年9月5日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390035448
【氏名又は名称】フォルシュングスツェントルム・ユーリッヒ・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100139527
【弁理士】
【氏名又は名称】上西 克礼
(74)【代理人】
【識別番号】100164781
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 一郎
(72)【発明者】
【氏名】マ・キァンリ
(72)【発明者】
【氏名】ティーッツ・フランク
(72)【発明者】
【氏名】ギヨン・オリヴィエ
【審査官】 西山 義之
(56)【参考文献】
【文献】 中国特許出願公開第103825052(CN,A)
【文献】 特開平02−162605(JP,A)
【文献】 特表2002−516740(JP,A)
【文献】 特開昭61−174116(JP,A)
【文献】 特開2013−136467(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 25/00−25/46
H01B 1/06
H01M 10/0562
H01M 12/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般組成式Li1+x+yTi2−x(PO3−y(SiO(式中、Mは、Al、Ga、In、Sc、V、Cr、Mn、Co、Fe、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、YbまたはLuであり、そして0≦x≦0.5であり、そして0≦y≦0.5である)を有する純粋及び/または置換リチウム−チタンホスフェートの製造において、
ここで、前記製造はゾルゲル法により行われ、
この際、原料からゾルを先ず生成し、このゾルをゲルに転化し、そしてゲルの乾燥によって、純粋または置換リチウム−チタンホスフェートを含む対応する粉体が得られる方法であって、
該製造方法の部分ステップにおいて、
−チタン(IV)イソプロポキシドを水中に入れ、この際、チタン水酸化物−酸化物の沈殿物が形成し、
−この系を10℃未満の温度に冷却し、及び
−前記沈殿物を硝酸の添加によって再び溶解し、この際、水性TiO2+硝酸塩溶液が形成する、
ことを特徴とする前記方法。
【請求項2】
水性TiO2+硝酸塩溶液にポリカルボン酸を加え、それによって室温でも安定な水性TiO2+硝酸塩溶液が形成する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
水性TiO2+硝酸塩溶液にクエン酸、フマル酸または酒石酸を加える、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
−リチウム塩及び置換に応じてM塩(Mは、Al、Ga、In、Sc、V、Cr、Mn、Co、Fe、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、YbまたはLuである)の水溶液を用意し、
−所望の化学理論量に相応して、Li塩及びM塩の水溶液を、水性TiO2+硝酸塩溶液と混合し、
−前記水性混合物を10℃未満の温度に冷却し、その後、ホスフェート塩を加えて、それによってゾルが形成する、
請求項1〜3の何れか一つに記載の方法。
【請求項5】
リチウムを、硝酸リチウム、酢酸リチウム、炭酸リチウムまたは水酸化リチウムの形で使用する、請求項1〜4の何れか一つに記載の方法。
【請求項6】
M塩を硝酸塩、酢酸塩、炭酸塩または水酸化物の形で使用する、請求項1〜5の何れか一つに記載の方法。
【請求項7】
ホスフェート塩として、リン酸及び/またはNHPOを加える、請求項1〜6の何れか一つに記載の方法。
【請求項8】
ホスフェート塩を加える前に、可溶性シリケート、オルトシリケート酸またはオルトシリケート酸のアルキルエステルを前記水性の系に加える、請求項1〜7の何れか一つに記載の方法。
【請求項9】
ゲルへのゾルの変換が、ゾルを室温に加温することによって連続的に行われる、請求項1〜8の何れか一つに記載の方法。
【請求項10】
純粋及び/または置換リチウム−チタンホスフェートを室温で50MPaと200MPaとの間の圧力で緻密化し、次いで無加圧で820℃と1050℃との間の温度で焼結する、請求項1〜8の何れか一つに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、純粋なリチウム−チタンホスフェート(英語:Lithium Titanium Phosphates(LiTi(PO、略して:LTP)の製造方法、並びにリチウム電池用の固形電解質としての使用するための置換リチウムチタンリン酸塩の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
大型で効率がよくかつ安全なリチウムベースのエネルギー貯蔵装置は、例えばハイブリッド車のための代替的な駆動コンセプトの、または例えば風力から発生した電力の貯蔵のための再生エネルギー技術の更なる発展のための本質的な構成要素である。リチウムイオン電池(英語:Lithium Ion Battery、LIB)は、現在は、携帯用途のために最も広く広まっている電流源である。電極の間にある電解質は、溶解したリチウム塩を含む。電解質が液状かまたは固形かに応じて、リチウムイオン蓄電池またはリチウムポリマー蓄電池またはリチウム個体蓄電池と呼ばれる。
【0003】
この際、固形電解質の開発は、次世代のリチウム電池の鍵となり得るものである。金属リチウムをアノードとして使用すると、これは、明らかにより高いエネルギー密度を有し、かつ有利により難燃性である。というのも、電池成分中に有機成分は無しで済ませることができるからである。それらの一般的にゲル様のまたはセラミック製の電解質の故に、更にこれらは、より優れた漏出特性を示し、そしてそれらの広い安定性範囲の故に比較的高い温度でも使用可能である。
【0004】
リチウムイオン伝導性固体電解質のための潜在的な候補の中で、置換リチウム−チタンホスフェートが既に大規模に試験されており、そしてそれらの高いイオン伝導性及びそれらの機械的安定性の故に、非常に有望なものと格付けされている。
【0005】
リチウム−チタンホスフェートの電解質としての可能性はかなり前から既に知られている。リチウム−チタンホスフェートは、いわゆるNASICON構造に結晶化する。この際、NASICONとは、「ナトリウム超イオン性伝導体(Natrium Super Ionic CONductor」の頭字語であり、そして化学式Na1+xZrSi3−x12(0<x<3)を持つ固形物質の群を指す。
【0006】
更なる意味では、NASICONという用語は、Na、Zr及び/またはSrが、等原子価の元素で置き換えられていることができ、そして同じ構造に結晶化する類似の化合物にも使用される。
【0007】
NASICON化合物は、一般的に、室温での10−5〜10−3S/cmのオーダーの高いイオン伝導度を特徴とする。100〜300℃の高めれた温度では、そのイオン伝導度は10−2〜10−1S/cmに上昇し、それ故、液状電解質と同等となる。この高い伝導度は、NASICON結晶格子内でNa−もしくはLi−イオンの可動性によって生じる。
【0008】
NASICON化合物の結晶構造は、共通の角を介して結合しているZrO八面体及びPO/SiO四面体からなる供給結合ネットワークからなる。この際、NaまたはLiイオンは、二つの異なる中間格子サイトに位置し、その間で移動する。この際、これらはいわゆるボトルネックを通り抜ける必要がある。ボトルネックの大きさは、Naイオンと[Zr(P,Si)12格子の局所的な環境との立体的な相互作用に基づいてイオン伝導性に影響を及ぼし、そして各々の場合のNASICON化合物の具体的な組成並びに周囲雰囲気の酸素含有率に依存する。イオン伝導性は、希土類元素、例えばイットリウムをNASICON化合物に加えることによって高めることができる。
【0009】
リチウム−チタンホスフェートの結晶構造中では、三価カチオンM3+、例えばAl3+、Y3+またはSc3+によるTi4+カチオンの部分的な置換が、正荷電の欠陥を引き起こし、これは、追加的なLイオンで均衡することができ、そしてそれによって荷電キャリアの数が増えるために、全体として、より高いイオン伝導性をもたらす。
【0010】
これまで文献に開示された置換LTP材料のイオン伝導性は、室温で典型的には1×10−4〜1×10−3S/cmの範囲にあり、それ故、−LiLaZr12のタイプのLiイオン伝導性ガーネットの他では−酸化物系固体電解質について文献で知られる最高値である。一般式Li1+x+yTi2−x(PO3−y(SiOに従うシリケート基によるホスフェート基の更なる置換が、イオン伝導性及び機械的安定性を更に向上するのであろうと推察された(US6,475,677B1(特許文献1))。
【0011】
LTPベースの粉体を製造するために幾つかの異なる方法が現在既に知られている。これには、固相反応、ゾル−ゲル法、並びに後続の急冷を伴う融解技術(メルトクエンチ)などが挙げられる。
【0012】
しかし、LTPベースの材料の製造における大きなチャレンジは、製造した粉体の相の純粋さを保証することである。固相反応を介して従来の方法では、製造される粉体は通常はその内部が純粋ではない。これは、この粉体のイオン伝導性の低下を不利に招く。
【0013】
LTPベース材料の製造における更なる困難さは、多くの用途に必要な緻密化である、というのも、緻密化のための温度は一般的にこれらの材料の分解温度に非常に近いからである。これまでは、コスト高で手間のかかる方法しかこれらの問題を解決することができない。
【0014】
US6,475,677B1(特許文献1)には、例えば、メルトクエンチ法が記載されている。この場合、Li1+x+yTi2−x(PO3−y(SiO(0≦x≦0.4、0≦y≦0.6)の製造のための原料(化学理論量のNHPO、Al(PO、LiCO、SiO及びTiO)を先ず約1500℃で融解し、その後、950℃で再び結晶化させるために、水浴中で冷却する。こうして得られたガラスセラミックを、ボールミル中で粉砕して、7μmの平均粒度が得られている。
【0015】
Wen et al.,“Preparation,Microstructure and Electrical Properties of Li1,4Al0,4Ti1,6(PO Nanoceramics”J.Electroceram,Volume 22,2009,pp.342−345(非特許文献1)には、製造されたLi1.4Al0.4Ti1.6(PO粉体の緻密化を、ゾルゲル法を介して、火花を用いたレーザー焼結によって理論密度のほぼ100%まで達成できたことが報告されている。室温で1.39×10−3S/cmのLiイオン伝導度が達成された。しかし、このために使用されたレーザー装置は、工業的な製造には不適切であるように思われる。
【0016】
M.Holzapfel et al.(US2012/0295168A1(特許文献2))では、Li1+xAlTi2−x(PO(x≦0.4)が粉体として初めて「相純粋に」製造された噴霧乾燥法が提案されている。この場合は、然るべき量のリチウム塩、アルミニウム塩及びチタン塩または対応する酸化物を先ずリン酸中に溶解された。次いで、一次粉体がその溶液の噴霧乾燥によって得られた。次いで、「相純粋の」Li1+xAlTi2−x(PO粉体を、約900℃の一次粉体の焼結によって生成することができた。「相純粋」とは、例えばAlPOまたはTiPなどの異相が1%未満の割合でしか存在しないことと解される。Li1+xAlTi2−x(POグリーンボディの密度の試験方法は文献には開示されていない。加えて、リン酸ベースの溶液の噴霧乾燥の危険性についての問題が問われる。
【0017】
Li1+x+yAlTi2−x3−ySi12粉体(x≦0.4)の製造のための更に別の方法がDE102012103409B3(特許文献3)に記載されている。そこには、製造のためにゾル−ゲル法が開示されている。水性リチウム−及びアンモニウム塩溶液を、チタンアルコキシド、場合によっては及びオルトシリケートと然るべき量比で混合し、それによってゾルが生ずる。この水溶液は、pH7〜pH12の中性から塩基性の範囲のpH値を示す。次いで、水性リン酸二水素アンモニウム溶液をこのゾルに添加し、それによってゲルが生じる。ゲルの形成は、グリコールまたはクエン酸などの更なる補助物質を必要とすることなく、アルコキシド溶液とリン酸塩溶液とを一緒にすることによって起こされる縮合−及び重合反応によって行われる。
【0018】
最終的な純粋な粉体は、次いでゲルの乾燥及びか焼によって得られる。この際達成される平均粒度は0.5μm〜5μmの範囲である。か焼までの全てのプロセスステップは、室温で行われる。熱処理は、障害となる気化可能な成分を熱分解するべきである。
【0019】
しかし、DE102012103409B3(特許文献3)には、そこに記載された合成経路によっては、Li1+x+yAlTi2−x3−ySi12粉体の汚染は完全には阻止できないことが記載されている。しかし、異相が生じるにもかかわらず、室温で1×10−3S/cmのオーダーのLiイオン伝導度が達成されたことが報告されている。更に、5MPaと50MPaの間の圧力で焼結することによって、緻密な焼結体が得られるであろう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】US6,475,677B1
【特許文献2】US2012/0295168A1
【特許文献3】DE102012103409B3
【非特許文献】
【0021】
【非特許文献1】Wen et al.,“Preparation, Microstructure and Electrical Properties of Li1,4Al0,4Ti1,6(PO4)3 Nanoceramics” J.Electroceram,Volume 22,2009,pp.342−345
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
本発明の課題は、室温で10−4S/cm超の高いLiイオン伝導度を示し及びLi電池用の固体電解質として使用することができる、相純粋で、リチウム−チタンホスフェート(LTP)ベースの、NASICON構造の材料を提供することである。この材料は、純粋なリチウム−チタンホスフェートだけでなく、置換リチウム−チタンホスフェートでもあり得、特に一般式Li1+x+yTi2−x(PO3−y(SiO(式中、Mは、Al、Ga、In、Sc、V、Cr、Mn、Co、Fe、Y、La−Luであり、0≦x≦0.5、並びに0≦y≦0.5である)を有するものであり得る。
【0023】
同時に、加えて簡単にかつ手間が少ない緻密化ステップにおいて理論密度の95%超に緻密化できる、リチウム−チタンホスフェートをベースとするこのような材料を提供することも本発明の課題である。
【0024】
更に、純粋または置換リチウム−チタンホスフェートを製造するための費用効果が高くかつ効率のよい方法を提供することが本発明の更に別の課題である。
【課題を解決するための手段】
【0025】
本発明の上記の課題は、主請求項の特徴を持つ製造方法、並びに副請求項に従う該製造方法の製造物によって解消される。該方法の及びその方法で製造された製造物の有利な形態はそれらを引用する請求項に記載される。
【0026】
本発明の対象は、大規模に簡単かつ費用効果高く実施でき、高い相純度を有し、そして簡単に焼結できるかまたは理論密度の95%超まで緻密化できる、リチウム−チタンホスフェートをベースとする材料を製造するための製造方法である。この方法で製造されたリチウム−チタンホスフェートベースの材料は、それの高いリチウムイオン伝導度の故に、リチウム電池またはLi/空気電池またはリチウムイオン蓄電池中に固形電解質として使用するのに特に適している。
【0027】
この際、本発明に従い製造された材料は以下の組成を有する:Li1+x+yTi2−x(PO3−y(SiO、式中、Mは、Al、Ga、In、Sc、V、Cr、Mn、Co、Fe、Y、La−Luであり、0≦x≦0.5であり、並びに0≦y≦0.5である。
【0028】
本発明は、相純粋でかつ簡単に焼結可能な、リチウム−チタンホスフェートをベースとする材料を製造するために、簡単で費用効果高くかつ簡単に制御可能な方法(合成)を開示するものである。純粋な非置換リチウム−チタンホスフェート(LiTi(PO)の他に、チタンが、Al、Ga、In、Sc、V、Cr、Mn、Co、Fe、Y、La−Luなどの遷移金属によって少なくとも部分的に置き換えられている化合物も包含される。この際、La−Luという名称は、原子番号57〜71の元素のことである。更に、ホスフェートが部分的にシリケートに置き換えられている化合物も包含される。上記の置換は、代替的にまたは累積的にも起こり得る。
【0029】
本発明による材料は、簡単にかつ圧力で援助したか焼をせずに、高密度の部材に緻密化できるという有利な特性を有する。
【0030】
本発明による方法は、先ずリチウムイオン、チタンイオン及び場合により更に別のイオンから水溶液中でゾルを提供し、これが、ホスフェートイオンを添加するとゲルに変換されるという、それ自体既知のゾルゲル法に基づくものである。
【0031】
ゾルは、コロイドの特殊なケースである。コロイドとは、固形、液状またはガス状の分散媒体中に微細に分散して存在している粒子または液滴のことである。この際、個々の粒子または液滴の大きさは、典型的にはナノメータ範囲またはマイクロメータの範囲である。ゾルとは、第一の成分がスポンジ状の三次元網状構造を形成し、それの細孔が、更に別の成分、特に溶剤で満たされている単層系のことである。ゾルは縮合によってゲルに変換でき、そしてこのゲルは、それを加水分解によって再びゾルに転化できる。
【0032】
本発明の枠内において、ゾルとは、連続的相転移の枠内で粘弾性固体(ゲル)に変換し得るポリマー溶液のことである。ゲルでは、溶剤中での合成の時に溶剤を取り込んで三次元網状構造を形成するか、または既に存在する網状構造が溶剤を取り込んで膨潤する、第一の成分からなる三次元網状構造が存在する。ゲルは、網状構造がそれの外形を維持し、そして弾性の特性を有することを特徴とする。
【0033】
本発明に従い製造された粉体は、以下の一般式Li1+x+yTi2−x(PO3−y(SiO(式中、Mは、Al、Ga、In、Sc、V、Cr、Mn、Co、Fe、Y、La−Luであり、0≦x≦0.5であり、並びに0≦y≦0.5である)を有する組成を持つ。
【0034】
リチウムが部分的にMで置換されて存在するリチウム−チタンホスフェート(LTP)をベースとする化合物は、以下ではLMTPとも略す。
【0035】
ホスフェートが部分的にシリケートで置換されて存在するリチウム−チタンホスフェート(LTP)をベースとする化合物は、以下ではLTPSとも略す。
【0036】
リチウムが部分的にMで置換されているだけでなく、ホスフェートも部分的にシリケートで置換されて存在するLTPベースの化合物は、以下ではLMTPSとも略す。
【0037】
本発明では、LTP、LMTP、LTPSまたはLMTPS粉体の製造のための方法では、低廉な原料を使用でき、そして該方法自体は、簡単な実験質装置を用いて行われる。該方法は、例えば10g〜1000gの収量を持つ実験室規模から簡単に、数トンの収量を有する工業用途のために規模拡大することもできる。
【0038】
原料としては、酸性水溶液を仕込む。本発明では、第一のプロセスステップとしては、安定なTiO2+硝酸塩溶液を用意する。
【0039】
TiO2+は、既知のように、好ましくは長い(TiO)2n+鎖を形成し、そして錯体チタン水酸化物−酸化物自体は、極めて酸性の条件下では沈殿するため、比較的安定な溶液の調製は簡単ではない。
【0040】
本発明は、第一の本質的なプロセスステップにおいて安定なTiO2+溶液を提供することによってこの問題を解決する。このためには、先ず、チタン(IV)イソプロポキシドを、十分な量の蒸留水に加える。イソプロパノール中にチタン水酸化物−酸化物沈殿物(TiO*nHO)が直ぐに形成する。
【0041】
新鮮な沈殿物は、硝酸を用いて簡単に再び溶解できる。新鮮とは、短時間のみ、すなわち数時間のみ空気に曝される沈殿物のことを言う。
【0042】
本発明の枠内において、チタン水酸化物−酸化物沈殿物が室温において短時間のうちに再び首尾良く溶液にできることが特色である。チタン水酸化物−酸化物沈殿物が再び新たに速やかに形成し、これが、存在する硝酸によってもはや溶解し得ないことが判明した。これが既に再度、溶液にされそして再び沈殿した沈殿物はもはや溶解し得ないこと、及び初回の(新鮮な)沈殿物が、所定の時間後に、前の段落に説明したように通常はもはや溶解し得ないことを意味する。
【0043】
この際、沈殿プロセスは、いつ溶液からゾルが生じるかの正確な時点を決定するのが当業者にすら困難であるように連続的に進行する。
【0044】
本発明では、硝酸中への新鮮なチタン水酸化物−酸化物沈殿物の溶解は、本発明に従い、0と10℃との間の低温、有利には0と8℃との間の温度で行われる。この際、pH値は0〜1の範囲である。この場合、チタン水酸化物−酸化物沈殿物の転移プロセスは、通常10〜20日間の時間に延長できる。
【0045】
この時間の間に、すなわちTiO2+硝酸塩溶液が存在する間に、ポリカルボン酸、例えばクエン酸が加えられる。この状態において、次いで安定した水性の系が形成し、これは、室温においても、更に改質せずとも、比較的長い時間、すなわち20日間超の時間でも保存することができる。中でも、TiO2+の二倍モル量のクエン酸の添加が、前述の効果を達成するために全く十分であることが判明した。クエン酸の他は、例えば少なくとも二つのカルボン酸を持つ他のポリカルボン酸、例えばシュウ酸、フマル酸または更には酒石酸も適している。
【0046】
次いで、この本発明による安定したTiO2+硝酸塩溶液をベースとして、純粋または置換リチウム−チタンホスフェートのどちらを得るべきかに依存して、リチウム及びMの所望の化学理論量のための然るべき量の塩の添加を行うことができる。
【0047】
リチウム及び遷移金属Mは、例えば、硝酸塩、酢酸塩または炭酸塩として上記の水性系に加えることができる。更に、LiまたはMの適当な酸化物を、前もって硝酸に溶解することもできる。原則的には、後段のか焼プロセスによって分解され得、かつ不純物を水性系中に残さないものであれば、所望の元素(Li、Al、Ga、In、Sc、V、Cr、Mn、Co、Fe、Y、La−Lu)の任意の可溶性の塩または任意の酸を使用できる。
【0048】
ホスフェート基を形成するためには、一般的にリン酸及び/またはリン酸二水素アンモニウムが加えられる。
【0049】
リン酸及び/またはリン酸二水素アンモニウムの添加の際には、新鮮に形成したTiO2+硝酸塩溶液を直ぐに更に処理する時には、クエン酸を予め添加することも有意義であることが判明した。クエン酸を添加しない場合は、TiO2+硝酸塩溶液中に自然発生的に沈殿物が生じるかもしれない。加えて、ゾル中には、後で所望の特性を持たない比較的大きな粒子が形成するかもしれない。
【0050】
ホスフェート基の部分的な置換のためには、例えば、可溶性のシリケートまたはオルトシリケート酸もしくはオルトシリケート酸のアルキルエステルの然るべき量での添加が考慮される。しかし、この添加は、常に、リン酸及び/またはリン酸二水素アンモニウムの添加の前に行われる。
【0051】
この本発明による方法の格別な利点の一つは、様々な適当な出発材料を使用できる点にある。例えば、US6,475,677B1(特許文献1)には、NHPO、Al(PO、LiCO、SiO及びTiOが出発材料として具体的に開示されている。US20120295168A1(特許文献2)では、アナターゼ変態のTiO、LiOH、Al(OH)、並びにオルトリン酸を必ず使用しなければならない。
【0052】
本発明では、−TiO2+溶液を調製する時に−、例えば硝酸塩、酢酸塩、炭酸塩または水酸化物または類似物の形のLi、Al、Ga、In、Sc、V、Cr、Mn、Co、Fe、Y及びLa−Luの元素の全ての可溶性の塩または酸を有利に使用できる。加えて、オルトケイ酸、ケイ酸テトラエチルエステル(TEOS)または他の有機系ケイ素源、並びにNHPO、(NHHPOをまたはHPOをも使用することができる。
【0053】
使用する化合物は可溶性であるべきであり、そして通常は、対応する組成のみを有するべき、すなわちできるだけ不純物を含むべきではない。
【0054】
TiO2+、リチウム及びMの塩(イオン)、場合によっては並びにシリケートまたはオルトシリケート酸及び/もしくはオルトシリケート酸のアルキルエステルを含む水性系への最後の添加としてのリン酸またはリン酸二水素アンモニウムの添加に留意すべきである。
【0055】
リン酸またはリン酸二水素アンモニウムの添加は、0と10℃との間、有利には0と5℃との間の低温で行われる。塩が溶解されているために、0℃でも氷は形成しない。場合によっては生じるリン酸チタンが沈殿する傾向が原則的に非常に強いために、上記の低温を維持することによって、この沈殿傾向を有利に減少でき、少なくとも強く制限することができる。
【0056】
リン酸またはリン酸二水素アンモニウムを水性系に添加し、そしてこれと混合したら、直ぐに均一なゾルが形成する。このプロセスは、通常は数秒間内に、例えば2秒間内に終わる。
【0057】
純粋または置換LDP成分の混合は、溶液中でナノメータスケールで行われ、これは、製造すべき粉体の相純度に対して有利な効果を持つ。更に、上記の低温は、通常はゾル内での粒子の成長を阻止する。それに対して、ゾル中での小さな粒径は、粉体製造の間に小さな粒度ももたらし、これは、次の焼結プロセスにとって有利である。
【0058】
このようにして形成されたゾルは通常は長期間安定しない。或る一定の時間後に、このゾルは連続的に均一なゲルに変化していく。この際、この変化は、温度に応じて、数分間の期間で、例えば30分間〜1時間の期間で起こる。ゲルへの上記変化は室温では数分間の範囲で比較的短時間で、0℃あたりの低温では、相応してゆっくりと、すなわち1時間までの期間で起こる。
【0059】
DE102012103409B3(特許文献3)にも同様に自発的に形成するゲルが記載されており、これは、リン酸二水素アンモニウム(NHPO)を、硝酸アルミニウム(Al(NO)、酢酸リチウム(LiCHOO)及びチタン(IV)イソプロポキシド(Ti(OCH)CH)からなる水性混合物中に加えると直ぐに得られる。しかし、硝酸アルミニウム(Al(NO)、酢酸リチウム(LiCHOO)及びチタン(IV)イソプロポキシド(Ti(OCH(CH)からなる水性混合物は、本発明の意味でのゾルではないと考えられる。というのも、後続のゲル形成のプロセスステップは、これまで再現できなかったからである。
【0060】
DE102012103409B3(特許文献3)に記載された、存在していない相の純粋さは、出発材料の水性混合物は純粋な溶液としてもゾルとしても存在せず、恐らくは比較的大きな粒子の沈殿物を既に含むことを推論させる。これは、得られた粉体の緻密化のために、通常は比較的大きな粒子が存在している時しか必要ではない圧力で援助した焼結プロセスが何のために必要であるかの説明ともなるであろう。
【0061】
本発明では純粋または置換リチウム−チタンホスフェート粉体は有利に室温下に圧縮され(例えば100MPaで)、次いで無加圧で焼結するが、DE102012103409B3(特許文献3)では、粉体は約900℃の温度で圧縮され、次いで焼結される。しかし、高温での緻密化のためには、不利に複雑な装置を用意する必要がある。
【0062】
本発明では、得られた均一なゲルを次いで、予焼結する前に、数時間乾燥する。例えば、均一なゲルを先ず100℃未満の比較的低い温度で数時間予め乾燥し、次いで100℃を超える温度で更に数時間完全に乾燥させることができる。
【0063】
その後、予焼結ステップをおおよそ600℃の温度で行い、その際、所望の純粋または置換リチウム−チタンホスフェート粉体が得られる。
【0064】
約600℃の温度では、有機構成分の主成分が、予め乾燥したゲルから蒸発されるということから出発する。乾燥されたゲルとは、本発明の枠内では、有機構成分及び非晶質の無機系構成分を含む粉体のことである。
【0065】
しかし、こうして得られた粉体は通常は未だ相純粋ではない。加えて、部分的に比較的大きな凝集物が観察され得る。この理由から、材料を緻密化をするための本焼結プロセスの前に、存在する凝集物を破壊し、有機構成分中の粘着性残渣を蒸発し、そして予焼結された粉体が焼結可能となることが保証されるように、例えばボールミル及びセラミック製ボールを用いた粉砕プロセスが提案される。
【0066】
予焼結された粉体は、白みがかった灰色であり、そして粉砕ステップの後に、50nmと100nmの間の粒度を有する。この際、この粒度は、凝集していない粉体の粒度である。
【0067】
次に、本発明の枠内では、予焼結され、場合により及び粉砕された粉体のための簡単な緻密化ステップが提案される。このためには、有利には、粉体を先ず室温で圧縮し、次いで高温で数時間焼結する。粉体の圧縮のためには、特に一軸圧縮が適している。圧縮圧としては、50MPaと200MPa、特におおよそ100MPaの押し圧力が有効であることが判明した。
【0068】
それに次いで、後続の焼結ステップを820℃と1050℃との間の温度、有利には870℃と920℃との間の温度で行うことができる。焼結は、数時間、有利には少なくとも5時間の期間にわたって行うのがよい。この際、上記の時間は、最大の調節温度での維持時間であり、そのため、必要な加熱段階及び冷却段階は考慮しない。加熱及び冷却速度としては、典型的には3〜15K/分の値を提示できる。焼結の間は、通常は加圧はしない。
【0069】
焼結された粉体をまたは緻密化されたペレットもX線回折(XRD)で検査すると、本発明に従い製造された純粋または置換リチウム−チタンホスフェート材料の試料中には、異相は検出できないことが分かった。粉体回折図は、DE102012103409B3(特許文献3)に記載されるような異相、例えばAlPOまたはTiPの反射を殆ど示さない。
【0070】
本発明に従い製造された試料の密度は、理論密度の99%超に到達した。このような高い密度を持つLTP、LMTP、LTPSまたはLMTPS材料を、簡単な緻密化及び焼結ステップを介して製造できるこのような方法は、これまで知られていない。
【0071】
本発明に従い製造された材料の高い密度は、1×10−4〜1×10−3S/cmの範囲の非常に良好なリチウムイオン伝導度をもたらす。それ故、焼結された純粋または置換リチウム−チタンホスフェート材料は、リチウム電池中で有利に固形電解質として直接使用できる。
【0072】
イオン伝導度は、対応するペレットの電気化学的インピーダンス分光分析によって求めた。結果を図4に示す。
【0073】
しかし、上記の緻密化ステップの他に、上記の粉体でできたLTPベースの緻密な部材は、流延成形によっても直接製造でき、またはLTPベースの緻密な層は、スクリーン印刷によって他の基材上に施与することができる。
【0074】
まとめると、本発明は、Li1+x+yTi2−x(PO3−y(SiO(式中、Mは、Al、Ga、In、Sc、V、Cr、Mn、Co、Fe、Y、La−Luであり、0x≦0.5であり、そして0≦y≦0.5である)の組成を有し、そして緻密化された形態で1×10−4〜1×10−3S/cmの範囲の非常に良好なリチウムイオン伝導度を室温で示す、リチウム−チタンホスフェートをベースとする、相純粋で焼結が簡単な材料を提供するものと言うことができる。それに加えて、本発明は、好ましくは固形電解質として使用できるこれらの純粋または置換リチウム−チタンホスフェート材料のための簡単でかつ費用効果の高い製造方法を開示するものである。
【実施例】
【0075】
以下に、本発明を、幾つかの図面及び選択した実施例に基づいてより詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0076】
Li1+x+yTi2−x(PO3−y(SiO(式中、Mは、Al、Ga、In、Sc、V、Cr、Mn、Co、Fe、Y、La−Luであり、0≦x≦0.5であり、そして0≦y≦0.5である)を含む本発明に従い製造される材料の好ましい組成には、以下には限定されないが、Li1.5Al0.5Ti1.5(PO、Li1.40.4Ti1.6(PO、Li1.3La0.3Ti1.7(PO、LiSc0.5Ti1.5(PO2.5(SiO0.5、または更にLi1.8Al0.4Ti1.6(PO2.6(SiO0.4が含まれる。
【0077】
当業者は一般式LiM(PO及び規則的なNASICON構造を有する他の化合物も、本発明の範囲に内のものと見なすと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0078】
図1】純粋LPT粉体にも同様に使用することができるLMTPS粉体のための本発明による製造方法のスキームである。
図2】本文中に記載のようにボールミル中での粉砕ステップの後の、600℃で予焼結したLi1.5Al0.5Ti1.5(PO粉体の粒度分布である。
図3】緻密化ステップの後の、本発明に従い製造されたLi1.5Al0.5Ti1.5(PO粉体のX線回折図である。
図4】本発明に従い製造された焼結されたLi1.5Al0.5Ti1.5(PO圧縮体を20℃で測定した場合のインピーダンススペクトルである。
図5】本発明に従い製造された焼結されたLi1.5Al0.5Ti1.5(PO圧縮体(ペレット)のイオン伝導度の温度依存性である。
【発明を実施するための形態】
【0079】
以下に記載の製造の規模は、乾燥及び焼結ステップのために使用された機械に強く依存する。通常は実験室規模の炉及び焼結炉が用意される実験質規模では、通常は数kgの製造量が可能である。しかし、大規模工業では、この方法でLMTPS粉体をトンの規模でも簡単に生成できる。
【0080】
実施例1:1kgのLi1.5Al0.5Ti1.5(PO粉体の製造
使用した化学品は、少なくとも99%の純度を有していた。Li1.5Al0.5Ti1.5(PO粉体の製造のためには、先ず1120gのチタンイソプロポキシド[Ti(IV)(OCH(CH]を、7リットルの脱イオン水を含むビーカー中にゆっくりとかつ攪拌しながら入れた。そうすると直ぐに、チタン水酸化物−酸化物析出物が生成した。この沈殿物を入念に濾過しそして洗浄した。洗浄した沈殿物を、空のビーカー中に移し、そして3リットルの脱イオン水で満たした。沈殿物の上記水溶液を含むビーカーを、氷−水混合物、場合によっては及び食塩を含む氷浴中で、一定に攪拌しながら5℃未満の温度に冷却した。
【0081】
他のビーカー中で、670mlの硝酸(65重量%濃度)を同様に5℃未満の温度に冷却した。冷却は冷蔵庫を用いて行った。冷却した硝酸を、チタン水酸化物−酸化物沈殿物を含むなおも冷却されている溶液にゆっくりと加えた。この反応で通常生じた熱は、氷浴を介して排出した。硝酸を加える速度は、チタン水酸化物−酸化物沈殿物を含む溶液の温度が10℃を超えないように調節した。こうして得られた水性系は、冷蔵庫中で0℃で3日間保存した。この際、水性TiO2+硝酸塩溶液が生じた。1720gのクエン酸一水和物の添加によって、溶液を安定化することができた。
【0082】
271.7gの硝酸リチウム(LiNO)及び492.7gの硝酸アルミニウム(Al(NO・9HO)を計り取り、そして攪拌しながら前記チタン含有溶液中に移した。それから生じた溶液を、再び氷浴中で5℃未満の温度に冷却した。加えて、次いで攪拌しながら、906.6gのリン酸二水素アンモニウム(NHPO)を加え、そこで自発的にゾルが形成した。この攪拌は、更に30分間継続した。それに次いで、ゾルをゆっくりと室温まで加温した。約1時間後に、ゲルへの連続的な変換が完了した。
【0083】
こうして得られたゲルを先ず12時間60℃で予備乾燥し、次いでもう一度24時間120℃で乾燥した。乾燥されたゲルを3時間600℃で予焼結した。この際、灰白色の粉体が得られた。この粉体を、セラミックボールを用いてボールミル中で48時間粉砕した。
【0084】
図2には、この粉砕した粉体の粒度分布を示す。この粉体は、d90<0.15μm、d50<0.097μm、及びd10<0.066μmのほぼ完璧な粒度分布を有する。
【0085】
実施例2:Li1.5Al0.5Ti1.5(POでできた緻密なペレットの製造
実施例1からの予焼結粉体1gを、13mmの直径を持つ円筒状圧縮ホース中に入れ、そして100MPaの一軸圧縮圧下に室温で圧縮した。こうして製造されたペレットを5時間、880℃で焼結した。この圧力は、成形のための粉体の圧縮のみの圧力であり、焼結の間は圧力はかけなかった。
【0086】
焼結後、純白なペレットが得られ、これは、理論密度の99%超の密度を有していた。Cu Kα波長を使用したジーメンスD4X線回折器を用いて記録したこれらのペレットの回折図は、図3から明らかなように、焼結した試料の内部に異相を示さない。
【0087】
実施例3:Li1.5Al0.5Ti1.5(POでできたペレットの伝導度測定
実施例2に従うLi1.5Al0.5Ti1.5(POでできた緻密なペレットの両面に金を蒸着した。これらのペレットの誘電特性を、−30℃と+40℃の間の温度で、市販の周波数特性分析器を用いて、1MHz〜1HzのAC周波数範囲で記録した(Biologic VMP−300)。20℃で測定した場合の対応するインピーダンススペクトルを図4に示す。
【0088】
実施例2に従い生成したLi1.5Al0.5Ti1.5(POでできたこれらの緻密なペレットについて、20℃で4×10−4S/cmの総伝導度が得られた。これについては図5を参照されたい。
【0089】
実施例4:20gのLiSc0.5Ti1.5(PO2.5(SiO0.5の製造
LiSc0.5Ti1.5(PO2.5(SiO0.5粉体の製造のために、21.77gのチタン−イソプロポキシドを、100mlの脱イオン水を含むビーカー中にゆっくりとかつ攪拌しながら入れた。そうすると直ぐに、チタン水酸化物−酸化物沈殿物が生成した。この沈殿物を入念に濾過しそして洗浄した。洗浄した沈殿物を、新たな空のビーカー中に移し、そして60mlの脱イオン水で満たした。沈殿物の上記水溶液を含むビーカーを、氷−水混合物を含む氷浴中で、一定に攪拌しながら5℃未満の温度に冷却した。
【0090】
他のビーカー中で、14mlの硝酸(65重量%濃度)を冷蔵庫中で同様に5℃未満の温度に冷却した。冷却した硝酸を、チタン水酸化物−酸化物沈殿物を含むなおも冷却されている溶液にゆっくりと加えた。この反応で通常生じた熱は、氷浴を介して排出した。硝酸を加える速度は、チタン水酸化物−酸化物沈殿物を含む溶液の温度が10℃を超えないように調節した。こうして得られた水性系は、冷蔵庫中で0℃で3日間保存した。この際、水性TiO2+硝酸塩溶液が生じた。35gのクエン酸一水和物の添加によって、溶液が安定化された。
【0091】
1.685gのScを計り取り、そして20mlの5M硝酸中に溶解した。この溶液を攪拌しながら、7.043gのLiNOと一緒に、前記チタン含有溶液中に移した。
【0092】
5.320gのテトラエチル−オルトシリケートを、25mlの5M硝酸と混合し、そしてそれから生じたゾルを、Scイオン及びLiイオンを含む上記のチタン含有溶液と混合した。このゾルを氷浴中で5℃未満の温度に冷却した。
【0093】
次いで、14.69gのNHPOを攪拌しながらこれに加えた。この攪拌は、更に30分間継続した。それに次いで、ゾルをゆっくりと室温まで加温した。約30分後に、ゲルへの連続的な変換が完了した。
【0094】
こうして得られたゲルを先ず12時間60℃で予備乾燥し、次いでもう一度24時間120℃で乾燥した。乾燥されたゲルを3時間600℃で予焼結した。この際、灰白色の粉体が得られた。LiSc0.5Ti1.5(PO2.5(SiO0.5を含む粉体を、セラミック製ボールを用いたボールミル中で48時間粉砕した。そしてこれを、実施例2に類似して緻密なペレットに緻密化できた。
本願は特許請求の範囲に記載の発明に係るものであるが、本願の開示は以下も包含する:
1.
一般組成式Li1+x+yTi2−x(PO3−y(SiO(式中、Mは、Al、Ga、In、Sc、V、Cr、Mn、Co、Fe、Y、La−Luであり、そして0≦x≦0.5であり、そして0≦y≦0.5である)を有する純粋及び/または置換リチウム−チタンホスフェートの製造において、
ここで、前記製造はゾルゲル法により行われ、
この際、原料からゾルを先ず生成し、このゾルをゲルに転化し、そしてゲルの乾燥によって、純粋または置換リチウム−チタンホスフェートを含む対応する粉体が得られる方法であって、
該製造方法の部分ステップにおいて、
−チタン(IV)イソプロポキシドを水中に入れ、この際、チタン水酸化物−酸化物の沈殿物が形成し、
−この系を10℃未満の温度に冷却し、及び
−前記沈殿物を硝酸の添加によって再び溶解し、この際、水性TiO2+硝酸塩溶液が形成する、
ことを特徴とする前記方法。
2.
水性TiO2+硝酸塩溶液にポリカルボン酸を加え、それによって室温でも安定な水性TiO2+硝酸塩溶液が形成する、上記1に記載の方法。
3.
水性TiO2+硝酸塩溶液にクエン酸、フマル酸または酒石酸を加える、上記1または2に記載の方法。
4.
−リチウム塩及び置換に応じてM塩(Mは、Al、Ga、In、Sc、V、Cr、Mn、Co、Fe、Y、La−Luである)の水溶液を用意し、
−所望の化学理論量に相応して、Li塩及びM塩の水溶液を、水性TiO2+硝酸塩溶液と混合し、
−前記水性混合物を10℃未満の温度に冷却し、その後、ホスフェート塩を加えて、それによってゾルが形成する、
上記1〜3の何れか一つに記載の方法。
5.
リチウムを、硝酸リチウム、酢酸リチウム、炭酸リチウムまたは水酸化リチウムの形で使用する、上記1〜4の何れか一つに記載の方法。
6.
M塩を硝酸塩、酢酸塩、炭酸塩または水酸化物の形で使用する、上記1〜5の何れか一つに記載の方法。
7.
ホスフェート塩として、リン酸及び/またはNHPOを加える、上記1〜6の何れか一つに記載の方法。
8.
ホスフェート塩を加える前に、可溶性シリケート、オルトシリケート酸またはオルトシリケート酸のアルキルエステルを前記水性の系に加える、上記1〜7の何れか一つに記載の方法。
9.
ゲルへのゾルの変換が、ゾルを室温に加温することによって連続的に行われる、上記1〜8の何れか一つに記載の方法。
10.
純粋及び/または置換リチウム−チタンホスフェートを室温で50MPaと200MPaとの間の圧力で緻密化し、次いで無加圧で820℃と1050℃との間の温度で焼結する、上記1〜8の何れか一つに記載の方法。
11.
上記1〜9のいずれか一つに記載の方法に従い製造可能な、一般組成式Li1+x+yTi2−x(PO3−y(SiO(式中、Mは、Al、Ga、In、Sc、V、Cr、Mn、Co、Fe、Y、La−Luであり、そして0≦x≦0.5であり、そして0≦y≦0.5である)を有する純粋及び/または置換リチウム−チタンホスフェート。
12.
理論密度の99%超の密度を有する、上記11に記載の純粋及び/または置換リチウム−チタンホスフェート。
13.
Li電池またはLi/空気電池で使用するための固形電解質であって、一般組成式Li1+x+yTi2−x(PO3−y(SiO(式中、Mは、Al、Ga、In、Sc、V、Cr、Mn、Co、Fe、Y、La−Luであり、そして0≦x≦0.5であり、そして0≦y≦0.5である)を有する純粋または置換リチウム−チタンホスフェートを含み、かつ上記1〜9のいずれか一つに記載の方法に従い製造可能な前記固形電解質。
14.
Li1.5Al0.5Ti1.5(PO、Li1.40.4Ti1.6(PO、Li1.3La0.3Ti1.7(PO、LiSc0.5Ti1.5(PO2.5(SiO0.5またはLi1.8Al0.4Ti1.6(PO2.6(SiO0.4を含む、上記13に記載の固形電解質。
図1
図2
図3
図4
図5