(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6738810
(24)【登録日】2020年7月22日
(45)【発行日】2020年8月12日
(54)【発明の名称】高電圧DCケーブル継手を製造する方法、および高電圧DCケーブル継手
(51)【国際特許分類】
H02G 15/184 20060101AFI20200730BHJP
B32B 1/08 20060101ALI20200730BHJP
B32B 25/20 20060101ALI20200730BHJP
H01B 7/00 20060101ALI20200730BHJP
H01B 5/16 20060101ALI20200730BHJP
H01B 1/02 20060101ALI20200730BHJP
H02G 15/103 20060101ALI20200730BHJP
H02G 1/14 20060101ALI20200730BHJP
H01B 3/28 20060101ALN20200730BHJP
【FI】
H02G15/184
B32B1/08 A
B32B25/20
H01B7/00 306
H01B5/16
H01B1/02 Z
H02G15/103
H02G1/14
!H01B3/28
【請求項の数】14
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-532769(P2017-532769)
(86)(22)【出願日】2015年11月17日
(65)【公表番号】特表2018-503346(P2018-503346A)
(43)【公表日】2018年2月1日
(86)【国際出願番号】EP2015076752
(87)【国際公開番号】WO2016096276
(87)【国際公開日】20160623
【審査請求日】2018年11月6日
(31)【優先権主張番号】14199380.8
(32)【優先日】2014年12月19日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】517180578
【氏名又は名称】エヌケーティー エイチブイ ケーブルズ ゲーエムべーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】マイアー, パトリック
(72)【発明者】
【氏名】ツァヴァラス, スピロス
(72)【発明者】
【氏名】クリステン, トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ソコロフ, アレクセイ
(72)【発明者】
【氏名】ヴァン−ルーン, ヤン
(72)【発明者】
【氏名】コルンマン, グザヴィエ
【審査官】
久保 正典
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2008/076058(WO,A1)
【文献】
特開2012−157124(JP,A)
【文献】
特表2009−542173(JP,A)
【文献】
特開2003−277562(JP,A)
【文献】
特表平11−511637(JP,A)
【文献】
特開平03−159514(JP,A)
【文献】
特表2011−506142(JP,A)
【文献】
特開2003−070147(JP,A)
【文献】
特表2017−529815(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 15/00−15/196
H02G 1/14
H01B 1/02
H01B 3/28
H01B 5/16
H01B 7/00
B32B 1/08
B32B 25/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
同心状に配置された個々の層を有する多層の層状構造を備える高電圧DCケーブル継手を製造する方法であって、以下の成型プロセスステップ、すなわち、
A−マンドレル上に内部導電性ゴム層(1)を成型するステップと、
B−前記内部導電性ゴム層上に、所定の調製された材料配合物から作られた電界グレーディングゴム層(2)を成型するステップと、
C−前記電界グレーディングゴム層上に絶縁性ゴム層(3)を成型するステップと、
D−前記絶縁性ゴム層(3)上と前記電界グレーディングゴム層(2)上とに配置される外部導電性ゴム層(4)を成型するステップと、
によって、前記継手を成型するステップを含む方法であり、
前記電界グレーディングゴム層が前記内部導電性ゴム層と前記外部導電性ゴム層とを物理的に分離するように、かつ前記内部導電性ゴム層と前記外部導電性ゴム層とを相互に電気的に接続するように構成されており、前記内部導電性ゴム層、前記電界グレーディングゴム層、前記絶縁性ゴム層、及び前記外部導電性ゴム層の全てが揮発性の低分子副生成物を発生させない製造方法によって架橋されることを特徴とし、ステップBに先立って、2kV/mmまでの低電界強度では導電率が約10−13〜10−11S/mであり、4kV/mmを上回る電界強度では約10−7〜10−9S/mとなるように、絶縁性ゴムと電界グレーディング充填材料を混合して、30〜40質量%の絶縁性シリコーン、2〜12質量%の導電性シリコーン、および50〜60質量%の電界グレーディング充填材料を含む前記所定の調製された材料配合物を実現するステップを含む、
方法。
【請求項2】
前記内部導電性ゴム層、前記電界グレーディングゴム層、前記絶縁性ゴム層、及び前記外部導電性ゴム層のうち少なくとも1つに用いるゴムとして白金硬化ゴムを使用するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記成型プロセスステップA〜Dの1つまたは複数が射出成型ステップである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記絶縁性ゴム層が放射線硬化性ゴム層であり、前記方法が、放射線透過性の型を使用することによって硬化させるステップを含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記絶縁性ゴム層として紫外(UV)放射線硬化性ゴム層を使用するステップを含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
エポキシまたはポリメチルメタクリレート(PMMA)を主成分とする材料から作られた紫外(UV)放射線透過性の型を使用することによって前記絶縁性ゴム層を硬化させるステップを含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記内部導電性ゴム層、前記電界グレーディングゴム層、前記絶縁性ゴム層、及び前記外部導電性ゴム層のうち少なくとも1つに用いるゴム材料としてシリコーンゴムを使用するステップを含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
同心状に配置された個々の層を有する多層の層状構造を備える高電圧DCケーブル継手であって、
内側から外側へと、内部導電性ゴム層(1)、所定の調製された材料配合物から作られた電界グレーディングゴム層(2)、絶縁性ゴム層(3)、および外部導電性ゴム層(4)を備え、前記電界グレーディングゴム層が前記内部導電性ゴム層と前記外部導電性ゴム層とを物理的に分離するように、かつ前記内部導電性ゴム層と前記外部導電性ゴム層とを相互に電気的に接続するように構成されており、前記内部導電性ゴム層、前記電界グレーディングゴム層、前記絶縁性ゴム層、及び前記外部導電性ゴム層の全てが、揮発性の低分子副生成物を発生させない成型プロセスステップによって架橋ゴムから作られることを特徴とする、高電圧DCケーブル継手であり、30〜40質量%の絶縁性シリコーン、2〜12質量%の導電性シリコーン、および50〜60質量%の電界グレーディング充填材料を含む前記調製された材料配合物から作られた前記電界グレーディングゴム層(2)が、1〜20kV/mmの所定の電界強度を下回る低電界強度で、前記絶縁性ゴム層の導電率よりも少なくとも10倍、好ましくは100倍高いが、前記内部導電性ゴム層(1、4)と前記外部導電性ゴム層(4)との間のリーク電流を確実に無視できるほどに十分に小さい導電率を有することを特徴とし、前記調製された材料配合物が、前記所定の電界強度しきい値を上回る電界強度を有する電圧で非線形の電界グレーディング特性を有することをさらに特徴とし、前記調製された材料配合物が、隣接する材料および/またはインタフェースもしくは三重点の絶縁破壊電界により調製される、
高電圧DCケーブル継手。
【請求項9】
前記内部導電性ゴム層、前記電界グレーディングゴム層、前記絶縁性ゴム層、及び前記外部導電性ゴム層のうち少なくとも1つに用いるゴムが白金硬化ゴムである、請求項8に記載の高電圧DCケーブル継手。
【請求項10】
前記成型プロセスステップの1つまたは複数が射出成型ステップである、請求項8または9に記載の高電圧DCケーブル継手。
【請求項11】
前記絶縁性ゴム層(3)が紫外(UV)硬化性ゴム層である、請求項8から10のいずれか一項に記載の高電圧DCケーブル継手。
【請求項12】
前記絶縁性ゴム層(3)がエポキシまたはポリメチルメタクリレート(PMMA)を主成分とする材料から作られた紫外(UV)透過性の型を使用することによって硬化処理される、請求項8から11のいずれか一項に記載の高電圧DCケーブル継手。
【請求項13】
前記所定の電界強度が2〜8kV/mmである、請求項8から12のいずれか一項に記載の高電圧DCケーブル継手。
【請求項14】
前記内部導電性ゴム層、前記電界グレーディングゴム層、前記絶縁性ゴム層、及び前記外部導電性ゴム層のうち少なくとも1つに用いるゴム材料がシリコーンゴムである請求項8から13のいずれか一項に記載の高電圧DCケーブル継手。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、独立クレームのプリアンブルによる高電圧DCケーブル継手を製造する方法、および高電圧ケーブル継手に関する。
【背景技術】
【0002】
6kV以上の動作電圧を有する電力ケーブルは、典型的には電界均等化のためにケーブル絶縁体内に内部導電層および外部導電層を備える。そのようなケーブルを他のケーブルまたは機器に接続するために、ケーブルの個々の要素は、ケーブル端部の領域でそれぞれ徐々に露出されるかまたはカットバックされ、例えば、ケーブル継手およびケーブル終端などの、ケーブル付属品として知られている被覆機器または接続機器がケーブル端部に配置されている。外部導電層のカットバックされた端部の存在により、それぞれのケーブルの動作においてこの位置での電界の増加がもたらされる。安全な動作を保証し、特に電界の増加が放電、ブレークダウン、またはフラッシュオーバーをもたらすことが確実にないようにするために、電界は、電界制御として知られている適切な手段および対策によって勾配がつけられ、または制御される。この点で、知られているケーブル付属品は、通常、対応する電界制御要素または電界制御体を備える。
【0003】
高電圧直流(DC)ケーブル継手は、典型的には異なる種類の材料グレードから成る多層構造の管状の幾何学形状(
図2を参照)を備える。個々の材料層の配置およびそれら材料層の設計は、継手のコア(ケーブル)が通常の動作条件で接地電位(外側)から絶縁されるように、および局所的な電界増強を防止するために電界グレーディング特性が達成されるように選択される。例えば、国際公開第00/74191号および国際公開第2007/147755号を参照されたい。国際公開第00/74191号は、DC電圧用の高電圧ケーブルの接続部または継手において電界を制御するための機器に関する。電界制御は、幾何学的な電界制御によって達成される。また、国際公開第2007/147755号は、電界制御のための機器に関する。この機器は、電界制御のための抵抗層、抵抗層の上に配置された絶縁層、およびこの絶縁層の上に配置された半導電層または導電層を備える層状構造を有する。機器の製造は、キャリア上に抵抗層を巻き、次いで所望の形状に研摩し、抵抗層の外側に絶縁層を巻き、それを所望の形状に研摩し、さらに残りの層について行うステップを含む。
【0004】
継手は、しばしば、複数のプロセスステップにおいてEPDM(エチレンプロピレンジエンモノマ)ゴムから製造される。EPDMゴムは、合成ゴムの一種であり、広範囲の物理的特性によって特徴づけられるエラストマーである。複数のプロセスステップにおいて、異なる未硬化のEPDMゴムタイプの層がマンドレルのまわりに巻かれ、周囲のスチール型内で高温および圧力の下で順次硬化処理される(圧縮成型)。そのようなケーブル継手の個々の材料層は、異なる電気的特性を有する材料から成る。
図2に示される典型的なケーブル継手では、(内側から外側へと)高電位にある導電層1、電界グレーディング層2、絶縁層3、および接地電位にある外側の導電層4がある。適切な非線形の電気的挙動をもたらす充填材を含有するEPDMゴムから成る電界グレーディング層2は、2つの主要な機能を有する。第1に、電界グレーディング層2は、通常の動作電圧において、絶縁されていないケーブル端部からの電界を制御する。第2に、電界グレーディング層2は、取り付けられた電気機器を保護するために、過電圧の場合に局所的な電界増強を抑制する空間電荷を蓄積するように設計されている。上記の製造方法および設計推奨に従って、工業規模で、DCケーブル継手が80kV〜320kVの範囲で生産されている。これらの製造技術の利点は、例えば、それらの製造技術が十分に確立されていること、および低電圧定格に対するプロセスが効率的であることである。
【0005】
しかしながら、EPDMおよびEPDM硬化化学反応の処理に関連する現在の製造方法は、労働集約的であり、そのために費用がかかる場合がある。1つの理由は、EPDMが未硬化の段階で既に極めて粘性の高い材料であり、上で論じたように、しばしば、コア(マンドレル)のまわりに、または半ば完成した継手の先行する層のまわりにそれぞれ巻かれた未硬化のEPDM巻体の形態で巻かれていることである。続いて、EPDMは、高温下で圧縮巻きされ、または硬化処理される。
【0006】
EPDMは、硬化剤として過酸化物によって開始される、ラジカルな硬化反応によって硬化処理される。硬化ステップ中に、過酸化物は、低分子の揮発性化合物に分解される。これらの副生成物は、EPDMゴムの電気的特性に悪影響を及ぼすことがある。したがって、硬化処理されたEPDMケーブル継手は、これらの揮発性の副生成物を除去するために脱ガス処理されなければならない。
【0007】
米国特許第5801332号は、絶縁性、半導電性、および導電性のシリコーンゴムの層を備える弾性回復可能なシリコーンゴムの継ぎ目カバー、特に白金触媒シリコーンゴムに関する。カバーは、例えば、射出成型技法を使用することによって生産される。
【0008】
米国特許第2005/0139373号は、そのようなスリーブを備える高電圧ケーブルおよびケーブル要素のためのスリーブに関する。スリーブは、例えば、射出成型プロセスを使用することによって、電界強度依存の材料、例えば、シリコーンゴム、EPDM、天然ゴムから作られた電界制御要素を備える。
【0009】
欧州特許第2026438号および欧州特許第2019466号は、絶縁体およびその絶縁体に埋め込まれた電界グレーディング層を備えるケーブル接続電界制御機器に関する。電界グレーディング層を形成する典型的な電界グレーディング材料は、半導電性材料微粒子で充填されたシリコーンゴムまたはEPDMであってもよい。
【0010】
本発明の一般的な目的は、最適な電気的および機械的特性を有する、改善された高電圧DCケーブル継手を実現することである。加えて、揮発性副生成物の脱ガス処理が回避された、改善された高電圧DCケーブル継手が得られる改善された製造方法を実現することが目的である。
【発明の概要】
【0011】
上述の目的は、独立クレームによる本発明によって実現される。本発明による目的は、同心状に配置された個々の層を有する多層の層状構造を備える高電圧DCケーブル継手を製造する方法によって実現され、本方法は、以下の成型プロセスステップ、すなわち、
A−マンドレル上に内部導電性ゴム層を成型するステップと、
B−前記導電性ゴム層上に、所定の調製された材料配合物から作られた電界グレーディングゴム層を成型するステップと、
C−前記電界グレーディングゴム層上に絶縁性ゴム層を成型ステップと、
D−前記絶縁性ゴム層上と前記電界グレーディングゴム層上とに配置される外部導電性ゴム層を成型するステップと、
によって継手を成型するステップを含み、
電界グレーディングゴム層が、導電性ゴム層を分離するように、かつ導電性ゴム層を相互に接続するように構成され、ゴム層が副生成物のない製造方法によって架橋される。
【0012】
ある実施形態によると、本方法は、ゴムとして白金硬化ゴムを使用するステップを含む。
【0013】
さらなる実施形態によると、本方法は、前記成型プロセスステップA〜Dの射出成型の1つまたは複数を含む。
【0014】
絶縁性ゴム層は、放射線硬化性ゴム層であってもよく、本方法は放射線透過性の型を使用することによって硬化させるステップを含むことができる。
【0015】
さらに、本方法は、前記絶縁性ゴム層として、紫外(UV)放射線硬化性ゴム層を使用するステップを含むことができる。
【0016】
本方法は、エポキシまたはポリメチルメタクリレート(PMMA)を主成分とする材料から作られた紫外(UV)放射線透過性の型を使用することによって前記絶縁性ゴム層を硬化させるステップを含むことができる。
【0017】
本方法は、前記ゴム材料としてシリコーンゴムを使用するステップを含むことができる。
【0018】
本発明に関するさらなる目的は、同心状に配置された個々の層を有する多層の層状構造を備える高電圧DCケーブル継手によって実現され、本継手は、内側から外側へと、内部導電性ゴム層(1)、所定の調製された材料配合物から作られた電界グレーディングゴム層(2)、絶縁性ゴム層(3)、および外部導電性ゴム層(4)を備え、電界グレーディングゴム層が導電性ゴム層を分離するように、かつ導電性ゴム層を相互に接続するように構成され、ゴム層が、副生成物のない成型プロセスステップによって架橋ゴムから作られている。
【0019】
ゴムは、白金硬化ゴムであってもよい。
【0020】
一実施形態によると、前記成型プロセスステップの1つまたは複数は、射出成型ステップである。
【0021】
絶縁性ゴム層は、紫外(UV)硬化性ゴム層であってもよい。
【0022】
一実施形態によると、絶縁性ゴム層は、エポキシまたはポリメチルメタクリレート(PMMA)を主成分とする材料から作られた紫外(UV)透過性の型を使用することによって硬化処理される。
【0023】
前記調製された材料配合物から作られた電界グレーディングゴム層は、所定の電界強度を下回る低電界強度では、絶縁性ゴム層の導電率よりも少なくとも10倍、好ましくは100倍高いが、導電性ゴム層間のリーク電流を確実に無視できるほどに十分に小さい導電率を有することを特徴とし、前記調製された材料配合物が、前記所定の電界強度しきい値を上回る電界強度を有する電圧で非線形の電界グレーディング特性を有することをさらに特徴とし、前記調製された材料配合物が、隣接する材料および/またはインタフェースもしくは三重点の絶縁破壊電界により調製される。所定の電界強度は、1〜20kV/mm、好ましくは2〜8kV/mmであってもよい。
【0024】
さらに、ゴム材料は、シリコーンゴムであってもよい。
【0025】
本発明の開示は、異なるゴム層が異なる導電特性を有する、多層ゴム複合体から作られた高電圧DCケーブル継手に関する。得られるケーブル継手は、電界グレーディング要素によって接地接続に対して高電圧を有すること、および1つのゴム層が非線形の導電特性を有することを特徴とする。さらに、少なくとも1つのゴム層は、好ましくは紫外光によって硬化処理されてもよく、製造プロセスは、副生成物がないことを特徴とする。1つの利点は、揮発性の低分子副生成物を放出するための脱ガス処理が不要であることである。脱ガス処理がないことは、継手の層がすべて、副生成物のない製造方法において架橋するゴムから作られるという事実による。白金硬化ゴムが成型プロセスステップにおいて使用されるのが好ましい。白金硬化ゴムの使用は、副産物のない製造方法である。
【0026】
硬化剤として過酸化物は不要であり、そのため、ケーブル継手は非過酸化物製造硬化方法を適用することによって製造される。電界グレーディングゴム材料は、所定の調製された配合物を有し、結果として最適な機械的特性および電気的特性が得られる。
【0027】
一実施形態によると、ケーブル継手は、射出成型プロセスステップによって白金硬化シリコーンゴムから作られる。ケーブル継手は、副生成物のない白金硬化シリコーンゴムから作られるのが好ましい。本製造方法は、高電圧定格(例えば、500kV)に対して容易にアップスケール可能な製造方法を提供する。射出成型を使用する場合、製造を合理化することができ、これによって結果として、リードタイムの短縮、加えてより高い品質が得られる。本発明による製造方法は、ガス状、固体、または液体の可能性がある副生成物を除去する、例えば脱ガス処理する必要がないという点で、環境的に持続可能なソリューションである。
【0028】
一実施形態において、均質の硬化プロセスである、本質的に熱を発生させることなく実行することができる紫外(UV)光による硬化が行われる。この硬化は、絶縁体材料に特に関連する品質問題を最小限にしながら容易にアップスケールすることを可能にするという点で有利である。最終的な構造は、厚さが大きい、例えば100mmを上回る場合でさえ、完全かつ均質に硬化処理される。不均質な硬化は絶縁体材料内部の導電率のばらつきをもたらすことがあるため、このことは、高電圧DC用途にとってかなり重要である。加えて、絶縁層に先立って硬化させた層は、絶縁体を熱硬化させた場合のように高温で長時間さらされることがない。
【0029】
上記の背景技術の項で言及したテーピングプロセスは、極めて労働集約的で時間がかかる。本発明による方法は、単純な同心状に配置された層設計のために、他のシリコーンゴムに基づくコンセプトと比較してさえ、より競争力がある。これによって、結果として、電界グレーディングゴムを介して相互に接続された導電性ゴム層を有する技術的に優れた製品だけでなく、よりスリムな、より速い、より労働集約的でない製造が得られる。さらなる利点は、簡略化されたロジスティクスであり、簡略化された品質管理を行うことができること、およびバッチ間のばらつきがより少ないことである。特に、上記の背景技術の項で論じたテーピングプロセスに使用される材料と比較した場合にそうである。
【0030】
一実施形態によると、絶縁性ゴム、好ましくは、シリコーンゴムは、電気的に絶縁性で、UV光透過性で、UV光硬化性であることを特徴とする。加えて、絶縁体層のUV光硬化を適用することによって、硬化時間が短縮される。
【0031】
異なるシリコーンゴム層間の付着力を改善するために、商用シリコーンプライマーを、それぞれの層の成型プロセスに先立ってそれぞれの層それぞれに塗布することができる。
【0032】
機械的な材料特性および選択される幾何学的設計は、ケーブルのX軸に沿ってほぼ一定の半径方向力を保証するように最適化される。この継手の電気的設計は、高電界での高電位とグラウンド間の電気的接続の存在によって特徴づけられる。これは、電界グレーディングゴム層、好ましくは、高電位とグラウンド間に直接接続される電界グレーディングシリコーンゴム層を組み込むことによって実現される。
【発明を実施するための形態】
【0034】
次いで、添付図面を参照して、本発明について詳細に記載する。
【0035】
初めに、
図1に示される製造方法を例示する流れ図を参照する。本発明は、同心状に配置された個々の層を有する多層の層状構造を備える高電圧DCケーブル継手を製造する方法に関する。ケーブル継手は、継手が配置されるケーブルの長手方向に細長い伸長部分を有する。ケーブル継手の断面図が
図2に示されている。
【0036】
そのため、本方法は、以下の成型プロセスステップを適用することによって継手を成型するステップを含む。
A−内部導電性ゴム層1を成型するステップ(
図2)。その目的のために、導電性ゴム層1(
図2)は、第1のゴム層1の幾何学形状を画成する第1の金属型に一体化されたマンドレルのまわりに成型される。この層は、好ましくは、(例えば、カーボンブラックが充填された)導電性シリコーンゴムから作られ、一実施形態によると、約100〜120℃で0.5〜2時間、熱硬化処理される。
B−内部導電性ゴム層上に、所定の調製された材料配合物から作られた電界グレーディングゴム層2を成型するステップ。電界グレーディングゴム層2は、電界グレーディングゴム層2の外部幾何学形状を画成するさらなる金属型を使用して、内部導電層1のまわりに成型される。一実施形態によると、ステップAと同じように硬化処理が行われる。
C−電界グレーディングゴム層上に絶縁性ゴム層3を成型するステップ。また、外部導電層が別個に成型され、次いで、絶縁体層を成型するときに型に挿入される場合は、絶縁層は、最後に成型される層であってもよい。この絶縁性ゴム層は、一実施形態によると、放射線硬化性ゴム層であり、そのような場合の方法は、紫外(UV)放射線透過性の型を使用することによって硬化させるステップを含む。絶縁性ゴム層は、UV放射線硬化性ゴム層であるのが好ましい。放射線硬化は、副生成物のないプロセスステップである。本方法は、UV放射線透過性の型を使用すること、特にエポキシまたはポリメチルメタクリレート(PMMA)を主成分とする材料から作られた型を使用することによって、前記絶縁性ゴム層を硬化させるステップを含むのが有利である。UV硬化の利点は、より安いポリマー型、および発光ダイオード(LED)UV光源またはドープ処理水銀ランプを使用する、非熱的な超高速の硬化ステップを使用することである。あるいは、従来の、スチール型で熱的に硬化させるシリコーンゴムも使用することができる。
D−絶縁性ゴム層上と前記電界グレーディングゴム層上とに配置される外部導電性ゴム層4を成型するステップ、または、外部導電性ゴム層4を別個に成型し、次いで、絶縁体層を成型するときに挿入することができる。外部導電性ゴム層4も、内部導電層1と同一または同様の材料であってもよい導電性ゴム層から成り、ステップAと同一の硬化方法が使用される。電界グレーディングゴム層2は、内部導電性ゴム層1と外部導電性ゴム層4を分離し、かつ両者を直接、または外部導電層4とケーブル絶縁体遮蔽との間の電気的コネクタによって提供される電気接点を介して相互に接続する。さらに、ゴム層はすべて、副生成物のない製造方法において架橋ゴムから作られる。架橋ゴムは、白金硬化ゴム、特に白金硬化シリコーンゴムであるのが好ましい。
【0037】
図2を参照すると、ケーブル継手の中間部分は、絶縁性ゴム層3の伸長部分を有する、長手方向の一部分として画成される。ケーブル継手の端部部分は、中間部分によって分離されるそれぞれの部分である。
図2からわかるように、絶縁層3は、内部導電性ゴム層1、および電界グレーディングゴム層2の中間部分を取り囲む、ケーブル継手の長手方向の伸長部分を有する。そして今度は、電界グレーディングゴム層2の中間部分が内部導電性ゴム層1を取り囲む。外部導電性ゴム層4は、中間部分で絶縁性ゴム層3を直接取り囲み、電界グレーディングゴム層2のそれぞれの端部部分も直接取り囲む。そのため、外部導電性ゴム層4は、ケーブル継手の端部部分で電界グレーディングゴム層2を介して、内部導電性ゴム層1から分離され、内部導電性ゴム層1と相互に接続される。
【0038】
任意選択で、プライマーを使用して、異なる層間のインタフェースにおける機械的強度を改善することができる。その目的のために、成型に先立って、市販のシリコーンゴムプライマーを、それぞれの層の外表面上に塗布することができる。プライマーは、吹付け、浸漬、または刷毛塗りによって塗布されてもよい。
【0039】
有利な一実施形態によると、1つまたは複数の成型プロセスステップは、射出成型ステップである。
【0040】
本方法は、特定の例では、2kV/mmまでの低電界強度では導電率が約10
−13〜10
−11S/mであり、4kV/mmを上回る電界強度では約10
−7〜10
−9S/mとなるように、絶縁性ゴムと電界グレーディング充填材料を混合して所定の調製された材料配合物を実現するステップも含むのが好ましい。絶縁性ゴムと電界グレーディング充填材料の混合は、好ましくは、ステップA〜Dが行われるのに先立って、少なくとも電界勾配付きゴム層が成型される(ステップB)のに先立って行われる。
【0041】
電界グレーディング充填材料は、好ましくは、小さな、実質的に球状のZnO微粒子から成るセラミック材料を含む複合材料である。ZnO微粒子は、例えば、Sb
2O
3、Bi
2O
3、Cr
2O
3、およびCo
3O
4などの異なる金属酸化物でドープされ、900℃〜1300℃の温度で焼結される。バリスターのように、焼結させた微粒子は、電界強度に依存する非線形の電気的特性を有する。低電界強度の範囲では、微粒子は絶縁体のように振る舞い、電界強度を増加するとともに、微粒子は、より導電性が高くなる。別の適用可能な電界グレーディング充填材料は、炭化ケイ素(SiC)である。
【0042】
一実施形態によると、すべての層で使用されるゴム材料は、シリコーンゴムである。シリコーンゴムを1つ、2つまたは3つの層で使用することも当然可能である。
【0043】
以下では、ケーブル継手に関する有利な製造方法が開示される。ケーブル継手は、白金硬化シリコーンゴムが使用される、成型プロセスステップ、好ましくは射出成型によって製造される。(白金が触媒として系に付加され、同時に副生成物がないため)付加系とも呼ばれる、白金に基づくシリコーンゴム硬化系では、ポリマーに触媒作用を及ぼすために、2つの別々の成分を混合しなければならない。1つの成分は、白金錯体を含有し、この白金錯体を、第2の、水素化物およびビニル官能性シロキサンポリマーと混合しなければならず、両者の間でエチルブリッジを生成する。そのようなシリコーンゴムは、速やかに硬化するが、元素の錫、硫黄、および多くのアミン化合物の存在によって、硬化速度または硬化能力さえ、容易に抑止され得る。このように、白金硬化シリコーンゴムは、揮発性副生成物を放出することなく硬化する。そのために、脱ガス処理するステップを必要とせず、したがって、製造プロセスは、「脱ガス処理フリー」になる。
【0044】
また、本発明は、上記の製造方法に従って製造される、同心状に配置された個々の層を有する多層の層状構造を備える高電圧DCケーブル継手に関する。このケーブル継手について、ここで、
図2を参照して詳細に説明する。ケーブル継手は、互いに接続されている2つのケーブルの共通の長手方向軸に沿って細長く伸び、それにより2つのケーブル間の接続がケーブル継手によって保護される。
【0045】
継手は、内側から外側へと、内部導電性ゴム層1、所定の調製された材料配合物から作られた電界グレーディングゴム層2、絶縁性ゴム層3、および外部導電性ゴム層4を備える。
【0046】
電界グレーディングゴム層2は、導電性ゴム層を分離し、かつ導電性ゴム層を相互に接続し、すべてのゴム層は、副生成物のない成型プロセスステップにおいて架橋される。一実施形態において、成型プロセスステップの1つまたは複数は、射出成型ステップである。一実施形態によると、ゴムは、白金硬化ゴムである。異なる層のゴム材料は、好ましくはシリコーンゴムである。
【0047】
有利な実施形態において、絶縁性ゴム層は、UV硬化性シリコーンゴム層であり、この層は、エポキシまたはPMMAを主成分とする材料から作られた型を使用するUV透過性の型を使用することによって硬化処理される。
【0048】
電界グレーディング層は、導電率が、受ける電界の強度に依存する材料を含む層と呼ばれる。そのため、電界グレーディング層は、非線形の電流/電圧特性を有する材料を含む層と呼ばれることがある。電界グレーディング層の調製された材料配合物は、所定の電界強度を下回る低電界強度では、絶縁性ゴム層の電気伝導率よりも少なくとも10倍、好ましくは100倍高いが、導電性ゴム層間のリーク電流を確実に無視できるほどに十分に小さい電気伝導率を有することを特徴とする。調製された材料配合物は、隣接する材料および/またはインタフェースもしくは三重点(すなわち、3つの層が出会う場所)の絶縁破壊電界により調製されており、所定の電界強度しきい値を上回る電界強度を有する電圧において非線形の電界グレーディング特性を有することをさらに特徴とし、所定の電界強度しきい値が典型的には1〜20kV/mm、好ましくは2〜8kV/mmである。
【0049】
絶縁性ゴムおよび電界グレーディング充填材料を含む所定の調製された配合物は、特定の例では、導電率が約2kV/mmまでの低電界強度では約10
−13〜10
−11S/mであり、4kV/mmを上回る電界強度では約10
−7〜10
−9S/mとなるようなものである。電界グレーディング充填材料の例については上で与えられた。特定の一実施形態によると、所定の調製された材料配合物は、30〜40質量%の絶縁性シリコーン、2〜12質量%の導電性シリコーン、および50〜60質量%の所定の電界グレーディング充填材料を含む。
【0050】
導電性ゴム層は、100Ωm未満、好ましくは50Ωm未満の体積抵抗率を有することを特徴とする導電性ゴム配合物から作られる。
【0051】
以下では、有利な高電圧ケーブル継手が開示される。継手は、
図2に示されるように、多層の層状シリコーンゴム構造から成る。異なる種類のシリコーンゴムが使用されており、それらのシリコーンゴムは、異なる電気的および機械的特性によって特徴づけられる。内側から外側へかけて、継手は、内部導電性(デフレクタ)層1、電界グレーディング層2、絶縁層3、および外部導電性シリコーン(接地)層4から成る。導電性および絶縁性シリコーンゴムには、市販のシリコーンゴムグレードが使用される。機械的特性、特にヤング率は、継手全体の広範囲にわたる機械設計要求事項に適合させるために、充填剤粒子、例えば、ATH(アルミナ三水和物)を加えることによって個々に調整される。
【0052】
絶縁性ゴム層は、10
12Ωmよりも高い体積抵抗率を有する絶縁性ゴム配合物から作られてもよい。
【0053】
シリコーン電界グレーディング要素は、電流密度が動作電界を超える電界値で電界に非線形の依存性を有する調製された材料配合物である。例示的な一実施形態では、この材料配合物は、求められる非線形な挙動をもたらす絶縁性シリコーン(30〜40質量%)、導電性シリコーン(2〜12質量%)、および充填剤粒子(50〜60質量%)から成る。本質的に、電気的な非線形の挙動は、材料が絶縁特性を有するが、それでも動作条件と同様の電界(典型的には最大約2kV/mm)で、継手およびケーブル絶縁体よりも(10〜100倍)大きい導電率を有するように調節される。2kV/mmを上回る電界強度に対しては、材料は、はるかに導電性が高くなり、局所的な電界増強の限界が生じる。特定の一例では、結果として得られる電界グレーディング材料は、典型的には2kV/mmまでの低電界では約10
−13〜10
−11S/m、および4kV/mm上回る電界では約10
−7〜10
−9S/mの導電率を有する。
【0054】
個々のシリコーンゴム層のこの配置によってケーブル継手を特色づけることよって、例えば、雷インパルスまたは技術的欠陥が引き金となる過電圧によって引き起こされる破損から接続された電気機器を保護することが可能である。機械的な視点から、継手設計は、X軸(すなわちケーブルの長手方向)に沿ってほぼ均質の機械的特性を得るように最適化される。これは、機械的な設計および材料特性をそれ相応に最適化することによって実現される。この特色を有するケーブル継手を提供すると、埋設されたケーブル上の力は、X軸全体に沿ってほとんど一定である。
【0055】
有利な一実施形態において、上で論じたように、ゴム材料は、シリコーンゴム材料である。本実施形態についてさらに説明するために、シリコーンゴムの異なる態様について以下で論じる。シリコーンは、炭素、水素、酸素、および場合によっては付加的に他の元素とともにシリコンを含むポリマーである。シリコーンは、不活性の合成化合物であり、様々な形態および利用法を有する。シリコーンは、典型的には耐熱性でゴム様であり、シーラント、接着剤、潤滑剤、医療用途、料理器具、および絶縁材で使用される。より正確は、シリコーンは、化学式[R
2SiO]
nを有する混合された無機−有機ポリマーであり、ここでRは、メチル、エチル、またはフェニルなどの有機基である。これらの材料は、4配位であるシリコン原子に結合した有機側鎖基を有する無機シリコン−酸素主鎖(−Si−O−Si−O−Si−O−)から成る。ある場合には、有機側鎖基を使用して、これらの−Si−O−主鎖の2つ以上を一緒に連結することができる。−Si−O−鎖長、側鎖基、および架橋を変えることによって、シリコーンは、種々様々の特性および組成で合成され得る。
【0056】
一実施形態によると、製造方法は、ケーブル継手を製造する場合に、射出成型を適用するステップを含む。液体シリコーンゴム(LSR)の射出成型は、耐久性のある部品を大量に生産するためのプロセスである。
【0057】
LSRは、低圧縮硬化、優れた安定性、ならびに極高温および極低温に耐える能力を有する高純度白金硬化性シリコーンであり、高品質が不可欠な部品の生産に理想的に適する。材料の熱硬化性の性質により、液体シリコーン射出成型は、加熱されたキャビティに導入されて加硫処理される前に、材料を低温に維持しながら、集中的な分配混合などの特殊な処理を必要とする。化学的に、シリコーンゴムは、シリコン原子と酸素原子とメチル側鎖基またはビニル側鎖基とが交互する主鎖を有する熱硬化性ゴムのファミリーである。シリコーンゴムは、シリコーンファミリーの約30%を構成し、そのファミリーの最大のグループになっている。シリコーンゴムは、広範囲の温度にわたってその機械的特性を維持し、シリコーンゴム中のメチル基の存在は、これらの材料を極めて疎水性にしている。
【0058】
本発明は、上記の好ましい実施形態に限定されない。様々な代替形態、修正形態、および均等形態が使用されてもよい。したがって、上記の実施形態は、本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではなく、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によって規定される。