特許第6738828号(P6738828)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6738828高い流動性を有する熱可塑性ポリマーからの複合材料異形材セクションの連続製造方法
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  • 特許6738828-高い流動性を有する熱可塑性ポリマーからの複合材料異形材セクションの連続製造方法 図000006
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6738828
(24)【登録日】2020年7月22日
(45)【発行日】2020年8月12日
(54)【発明の名称】高い流動性を有する熱可塑性ポリマーからの複合材料異形材セクションの連続製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 70/52 20060101AFI20200730BHJP
   B29C 70/16 20060101ALI20200730BHJP
   B29K 101/12 20060101ALN20200730BHJP
   B29K 105/08 20060101ALN20200730BHJP
【FI】
   B29C70/52
   B29C70/16
   B29K101:12
   B29K105:08
【請求項の数】26
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2017-551017(P2017-551017)
(86)(22)【出願日】2015年12月21日
(65)【公表番号】特表2018-501996(P2018-501996A)
(43)【公表日】2018年1月25日
(86)【国際出願番号】EP2015080785
(87)【国際公開番号】WO2016102460
(87)【国際公開日】20160630
【審査請求日】2018年9月13日
(31)【優先権主張番号】1463113
(32)【優先日】2014年12月22日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】508079739
【氏名又は名称】ローディア オペレーションズ
(73)【特許権者】
【識別番号】517217265
【氏名又は名称】サントル テクニーク デ アンデュストリ メカニーク (セウテイエム)
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】オランジュ, ジル
(72)【発明者】
【氏名】テュピニエ, ディディエ
(72)【発明者】
【氏名】パパン, フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】オーブリー, ミキャエル
(72)【発明者】
【氏名】ルブラン, ジャン−ミシェル
(72)【発明者】
【氏名】コマス−カルドナ, セバスチャン
【審査官】 関口 貴夫
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第05073413(US,A)
【文献】 国際公開第2011/131664(WO,A1)
【文献】 特開昭63−264326(JP,A)
【文献】 特表2012−532938(JP,A)
【文献】 特開昭57−181852(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 70/00−70/88
B29B 11/16
B29B 15/08−15/14
C08J 5/04− 5/10,5/24
C08G 69/00−69/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種の強化布と、少なくとも1種の熱可塑性ポリマーとからの射出−引き抜き成形による複合材料異形材の連続製造方法であって、前記方法が、
− a)50Pas以下の粘度の、そして融解状態の1種もしくは複数種の熱可塑性ポリマーをベースとする熱可塑性ポリマー組成物を用意する段階と、
− b)400℃未満、そして融解状態の前記ポリマー組成物の温度以上の温度での強化布を用意する段階と、
− c)段階b)からの前記布に段階a)からの前記ポリマー組成物を含浸させる段階と;
− d)前記ポリマー組成物を含浸した前記布を造形して前記異形材を形成する段階と
からなる段階を少なくとも含み、
− i)前記布が、前記プロセスの過程で少なくとも0.4m−1の引張速度で連続的に引っ張られ;
− ii)含浸段階c)が、布を通しての融解状態の前記ポリマー組成物の射出によって行われ;
− iii)異形材が、
− その表面温度が、半結晶性の場合には前記ポリマー組成物の結晶化温度未満であり、そして非晶質の場合には前記ポリマー組成物のガラス転移温度(Tg)より125℃未満高く、
− そのコア温度が、半結晶性の場合には前記ポリマー組成物の結晶化温度よりも高く、そして非晶質の場合には前記ポリマー組成物のガラス転移温度(Tg)より50℃超して高いような温度プロフィールで、段階d)において造形されることを特徴とする方法。
【請求項2】
b)が、b−2)350℃未満、そして融解状態の前記ポリマー組成物の温度以上の温度での強化布を用意する段階である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
造形段階d)後に冷却段階をさらに含む方法であって、前記異形材が、150℃〜50℃の範囲の温度でその厚さの全体にわたって冷却される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記布が、造形段階に充てられるチャンネルの下流に配置された引張装置を用いて0.4〜12m−1の範囲の引張速度で連続的に引っ張られる、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記布が、造形段階に充てられるチャンネルの下流に配置された引張装置を用いて0.5〜8m−1の範囲の引張速度で連続的に引っ張られる、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
段階c)において利用される前記ポリマー組成物が、1〜30Pasの範囲の粘度を融解状態で有する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
段階c)において利用される前記ポリマー組成物が、1〜25Pasの範囲の粘度を融解状態で有する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記組成物が、少なくとも1種の半結晶性もしくは非晶質ポリアミドから、またはそれらの混合物から形成される、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記ポリアミドが、6,000〜25,000g/モルにある重量平均分子量Mwを有する、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記ポリアミドが半結晶性である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
含浸c)および造形d)段階が、ホット入口ゾーン、射出チャンバーを有するホット含浸ゾーン、温度コントロールゾーン、および造形ゾーンを引き続いて含む共通のチャンネルにおいて進行し、前記チャンネルには通気孔が提供されている、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記チャンネルには、閉塞ガス状残留物もしくは空気の排除に充てられる、含浸ゾーンの下流の、かつ温度コントロールゾーンの上流の、大気圧でのゾーンに配置された、通気孔が提供されている、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
含浸c)および造形d)段階が、離れていてもいなくても、2つの別個の、連続したチャンネルにおいて進行し、第1チャンネルが、ホット入口ゾーン、および射出チャンバーを有するホット含浸ゾーンを引き続いて含み、第2チャンネルが造形ゾーンを含み、前記第1チャンネルには、通気孔が提供されている、請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記第1チャンネルには、閉塞ガス状残留物もしくは空気の排除に充てられる、含浸ゾーンの下流の、大気圧でのゾーンに配置された、通気孔が提供されている、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
含浸c)および造形d)段階が、離れていてもいなくても、2つの別個の、連続したチャンネルにおいて進行し、第1チャンネルが、ホット入口ゾーン、および射出チャンバーを有するホット含浸ゾーンを引き続いて含み、前記第1チャンネルには通気孔が提供されており、第2チャンネルが、制御された温度でのカレンダー機または一連の幾つかのカレンダー機から構成されている、請求項1〜14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記第1チャンネルには、閉塞ガス状残留物もしくは空気の排除に充てられる、含浸ゾーンの下流の、大気圧でのゾーンに配置された、通気孔が提供されている、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
温度安定化段階c’)を含浸段階c)の後に、そして造形段階d)の前にさらに含む方法であって、融解状態のポリマー組成物を含浸した前記布が、380℃未満に留まる温度、かつ、半結晶性材料に相当する場合には前記ポリマー組成物の融点よりも少なくとも10℃だけ高い、そして非晶質材料に相当する場合には前記ポリマー組成物のガラス転移温度よりも少なくとも100℃だけ高い温度にされる、請求項1〜16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
少なくとも1種の潤滑剤をさらに利用する、請求項1〜17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
段階c)および/またはd)において、少なくとも1種の潤滑剤をさらに利用する、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記潤滑剤が、ポリマー製造助剤、可塑剤、無機充填剤及びそれらの混合物から選択される、請求項18又は19に記載の方法。
【請求項21】
前記ポリマー製造助剤が、ポリフッ化ビニリデンまたはポリテトラフルオロエチレンである、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記可塑剤が、環状エステルのオリゴマーである、請求項20又は21に記載の方法。
【請求項23】
前記無機充填剤が、タルク、雲母又は黒鉛である、請求項20から22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
造形段階d)から出てくる時に得られる異形材が、その厚さの全体にわたって、半結晶性の場合には熱可塑性ポリマー組成物の結晶化温度未満の温度を有し、そして非晶質の場合には熱可塑性ポリマー組成物のガラス転移温度より60℃未満高い温度を有する、請求項1〜23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記造形異形材が、異形材の総容積に対して、35〜75%の範囲の容積の強化布を有する、請求項1〜24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記造形異形材が、異形材の総容積に対して、50〜63%の範囲の容積の強化布を有する、請求項25に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、融解状態で高い流動性を有する少なくとも1種の熱可塑性ポリマーでの布(強化材)の含浸によって製造される、複合材料の分野、より具体的には複合異形材の分野に、ならびに特に引き抜き成形技術によるそれらの製造方法に関する。
【0002】
複合異形材は現在、陸上輸送(自動車…)、エネルギー、スポーツおよびレジャー、農機具もしくは土木工学などの大量市場産業、または航空宇宙などのより限定されているが、成長しつつある市場向けの高性能材料である。実際にそれらは、良好な固有の機械的性能、特に延性および耐衝撃性、特に溶媒に対する良好な化学安定性、ならびに高性能射出成形品についての総合リサイクル性を有する。
【0003】
そのような複合異形材を製造するために特に用いられる、引き抜き成形技術は、それによれば強化材、例えばコイルの状態に詰められた繊維が、液体モノマーまたは融解ポリマーの浴中へ通すことによってポリマーマトリックスを含浸させられ、チャンネルを通して引っ張られ、チャンネルが、製造される異形材への複合材料の造形を徐々に確保する製造方法である。
【0004】
溶媒のおよびモノマーの使用を必要とし、そしてリサイクルできない製品をもたらす、広く利用される熱硬化性樹脂と比較して、熱可塑性樹脂が今日これらの異形材のマトリックスを形成するために好ましいことが指摘されるべきである。
【0005】
しかしながら、引き抜き成形による強化された熱可塑性異形材の連続展開は現在、実施および関連費用の問題に関して特に制限されている。
【0006】
このように、市場で入手可能な熱可塑性ポリマーは、融解状態で高い粘度、典型的には200Pa.sよりも大きい粘度を有し、それはおよび、何よりも繊維の割合が大きくなる場合に、特にそれが50容積%よりも大きい場合に強化布の含浸を困難にする。このタイプのポリマーの利用は、長時間の含浸時間、すなわち、遅いもしくは非常に遅い強化材引張速度と、デバイス内にバッフル(バーフィード)またはワイヤガイドの存在を必要とするかなりの操作圧力とを必要とする。大多数の場合に、これらのマトリックスから得られる異形材は、それらの機械的特性にとって有害な微小空洞と不十分含浸ゾーンとを有し得る。機械的特性の損失というこの現象は、強化布の引張速度が増加する場合にさらに際立つ。
【0007】
さらに、これらのポリマーの高い粘度レベルは、制限を課す。一方向強化に基づいて、低い厚さ、すなわち、1mm未満のバンド(「テープ」)の製造のみが、許容できるスピード条件下で可能であることが分かる。最後に、それは、射出−引き抜き成形技術(この技術は、単独で、または同様にこのホットチャンネル中へ導入される、一方向強化材、一般に連続布またはテープと組み合わせて、強化材に含浸させるという目的のために融解ポリマーを、チャンネル、いわゆるホットチャンネル中へ射出することにある)に適合しない。
【0008】
さて、この射出技術は、生産の連続モードと、かつ、高い生産速度と適合するので、産業状況で特に有利であることが分かる。実際に、射出によって含浸させられた強化材は、造形デバイスへ導入されるために、引張システムによって連続的に引っ張られる。
【0009】
図1は、この技術の実施に好適なチャンネルアセンブリを詳細に示す。含浸布の造形に充てられるスペースは、この図1に図示されるような含浸に充てられるチャンネルよりも冷たいゾーンに対応してもよいが、直ちにまたは他のやり方で、ホットチャンネルに続いて置かれた、第2のいわゆるコールドチャンネルから同じように構成されてもよいことが指摘されるべきである。
【0010】
不幸にも、この射出技術はまた、例えば、ホットチャンネルへの入口でのポリマーの流出という望ましくない現象もしくは異形材の膨潤の影響、または再び異形材とチャンネルとの間の過度の摩擦による造形ゾーンにおける閉塞の問題などの機能不良を示し得る。
【0011】
したがって、連続的であり、かつ、前記の問題を含まない、生産モードに適合する、熱可塑性材料をベースとする複合異形材の製造技術が依然として必要である。
【0012】
全ての予期に反して、本発明者らは、特異的なタイプのポリマーが関係し、そして異形材が、その造形の間ずっとその温度プロフィールを制御しながら形成されるという条件で、射出−引き抜き成形技術を用いて連続的におよび高い処理量で熱可塑性複合異形材を製造することが可能であることを今見いだした。
【0013】
したがって、その態様の1つによれば、本発明は、少なくとも1種の強化布と、少なくとも1種の熱可塑性ポリマーとからの複合材料異形材の射出−引き抜き成形による連続製造方法であって、前記方法が、
− a)50Pa.s以下の粘度の、そして融解状態の1種もしくは複数種の熱可塑性ポリマーをベースとする熱可塑性ポリマー組成物を用意する段階と、
− b)400℃未満、好ましくは350℃未満、そして融解状態の前記ポリマー組成物の温度以上の温度での強化布を用意する段階と、
− c)段階b)からの前記布に段階a)からの前記ポリマー組成物を含浸させる段階と、
− d)前記ポリマー組成物を含浸した前記布を造形して前記異形材を形成する段階と
からなる段階を少なくとも含み、
− i)前記布が、前記プロセスの過程で少なくとも0.4m.分−1の引張速度で連続的に引っ張られ;
− ii)含浸段階c)が、布を通しての融解状態の前記ポリマー組成物の射出によって行われ;
− iii)異形材が、
− その表面温度が、半結晶性の場合には前記ポリマー組成物の結晶化温度未満であり、そして非晶質の場合には前記ポリマー組成物のガラス転移温度(Tg)より125℃未満高く、
− そのコア温度が、半結晶性の場合には前記ポリマー組成物の結晶化温度よりも高く、そして
非晶質の場合には前記ポリマー組成物のガラス転移温度(Tg)より50℃超して高いような、温度プロフィールで段階d)において造形されることを特徴とする方法に関する。
【0014】
現本文において、単数形での用語「熱可塑性ポリマー」は、単一熱可塑性ポリマーか、熱可塑性ポリマーの混合物かのどちらかを示すために用いられる。
【0015】
同じことが、用語「布」について適用される。
【0016】
予想外にも、本発明者らはしたがって、一方で、50Pa.s以下の粘度の、そして融解状態の1種もしくは複数種の熱可塑性ポリマーから本質的にまたは完全にさえも構成されるポリマー組成物の使用、および他方で、造形段階中の異形材の表面とコアとの間の特異的な温度勾配の使用が、高い生産速度で射出−引き抜き成形法によって複合異形材を得ることを可能にすることを発見した。
【0017】
確かに、高い流動性を有するとも言われる低粘度の、特にポリアミド型の熱可塑性ポリマーが、複合材料の形成用のマトリックスとして、特に出願国際公開第2011/003786 A1号パンフレット、国際公開第2011/003787 A1号パンフレット、国際公開第2011/144592 A1号パンフレットおよび国際公開第2011/073198 A1号パンフレットにおいて既に提案されている。
【0018】
しかしながら、本発明者らの知る限りでは、そのようなポリマーについて考えられる利用技術のどれも、射出−引き抜き成形型の、そして温度勾配の観点から本発明に従って必要とされる特異性のさらに少ない技術に関連していない。
【0019】
以下の通り特に下の実施例から、本発明の方法は、幾つかの点で有利であることが判明する。
【0020】
第一に、高い流動性を有する熱可塑性ポリマーの利用は、強化材のより良好な含浸、したがって低い空隙率にさらに恵まれた異形材のより速い獲得を可能にする。このタイプのポリマーの利用はまた、繊維の含有量が高い異形材を製造することを可能にする。
【0021】
さらに、その表面とそのコアとの間に異形材の造形中に適用される温度勾配は、引き抜き成形によって製造される物品で典型的に観察される膨潤現象に対処しながら、工業界の要件に適合する速度での異形材の製造を可能にする。
【0022】
有利にも、強化材の高い引張速度は、このようにして形成される異形材の良好な使用におよび特に機械的特性に決して不利にならないことが分かる。
【0023】
さらには、本発明による方法は、幾何学的セクション、任意の、内実もしくは中空の観点から多種多様の異形材を、そして一方向繊維、平衡もしくは非平衡布、テープ、ひも、または多軸システム(Non Crimp Fabric)などの多様な強化布から製造することを可能にする。
【0024】
好ましい実施形態によれば、本発明の方法は、特に段階c)および/またはd)において、少なくとも1種の潤滑剤を利用する。
【0025】
本発明はまた、本発明による方法によって得られる異形材に関する。
【0026】
その態様の別のものによれば、本発明の主題は、本発明による方法によって得られる異形材を含む複合品であって、前記異形材が、曲げることによってその湾曲の点で修正されるおよび/または回転成形によってその側面の点で修正されることを特徴とする複合品である。
【0027】
本発明はまた、本発明による方法によって得られる少なくとも2つの異形材を含む複合構造体であって、その中で前記異形材が、特に溶接によって、組み立てられている構造体に関する。
【0028】
本発明による方法の他の特性、実施形態および利点は、本発明を例示し、限定しないために示される、以下の説明、実施例および図を読むと、より良く明らかになるであろう。
【0029】
図1は、射出−引き抜き成形法の実施に好適な設備の例を図式的に表す。
【0030】
本文の残りにおいて、表現「…〜…にある」、…〜…の範囲の」および「…から…まで変わる」は同等であり、特に明記しない限り、境界が含まれることを示すことを意図する。
【0031】
特に明記しない限り、表現「1つを含有する/含む」は、「少なくとも1つを含有する/含む」と理解されなければならない。
【0032】
方法
前述から次の通り、本発明による方法は、射出−引き抜き成形型のものであり、射出によって布に含浸させるための低粘度の熱可塑性ポリマー組成物の利用、および造形段階中に、特異的な温度勾配での、前記融解組成物を含浸した布からの連続法による異形材の形成をベースとする。
【0033】
本発明の意味では、熱可塑性ポリマー組成物は、本質的に、すなわち、少なくとも85重量%、好ましくは少なくとも95重量%、より好ましくは完全に、高い流動性を有する熱可塑性ポリマーから、または少なくとも2つ、少なくとも3つ、もしくはさらに多くの高い流動性を有する熱可塑性ポリマーの混合物から構成される組成物である。これらのポリマーは、結晶性、半結晶性もしくは非晶質であってもよい。
【0034】
本発明による熱可塑性ポリマー組成物はこうして、少なくとも1種の半結晶性もしくは非晶質ポリアミドからまたはそれらの混合物から形成されてもよい。
【0035】
熱可塑性ポリマー組成物は従って同様に、1つもしくは複数の補充添加剤、特に下に定義されるような流動化剤を含有してもよい。
【0036】
本発明によれば、熱可塑性ポリマー組成物または熱可塑性ポリマーは、高い流動性のものであり、この点において有利には、融解状態で50Pa.s以下の、特に1〜30Pa.s、好ましくは1〜25Pa.sの範囲の粘度を有する。
【0037】
融解状態での、この粘度は、1〜160s−1の範囲の増分剪断走査で、直径50mmの平板−平板型レオメータを用いて測定されてもよい。評価されるポリマー材料は、顆粒の、場合により厚さ150μmのフィルムの形態にある。
【0038】
したがって、本発明によるポリマー組成物が半結晶性材料に相当する場合、それは、その融点の10〜100℃上の範囲の温度にされ、測定はそれから行われる。
【0039】
逆に、本発明によるポリマー組成物が非晶質材料に相当する場合、それは、ガラス転移温度の100〜250℃上の温度にされ、測定はそれから行われる。
【0040】
そのようなポリマーの代表的なおよび非限定的な例として、ポリエステル、ポリアミドおよびそれらの誘導体などの、重縮合によって得られるポリマーが特に挙げられてもよい。
【0041】
ポリエステル、ポリアミドおよびそれらの混合物が、本発明にとりわけ特に好適である。
【0042】
これらのポリマーに関して述べられる分子量は、重量の尺度を示すために本質的に提示されることが指摘されるべきである。特定分子量は、当業者にそれ自体周知である多くの方法で測定されてもよいことが指摘されるべきである。
【0043】
これらの方法の例証として、末端基の分析に基づくもの、特に、立体排除クロマトグラフィー(SEC)とも呼ばれる、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)測定を用いるものが特に挙げられてもよい。一般に、ポリアミドに関するGPC測定は、それを溶解させるためにポリアミドの化学修飾後に、ジクロロメタン(溶媒および溶離液)中で行われてもよい。化学修飾されたポリアミドはUV発色団を有するので、UV検出器が用いられる。質量分布ならびに平均質量MnおよびMwの計算は、市販標準での較正後に、ポリスチレン(PST)当量または絶対質量で行われてもよい。必要ならば、絶対質量測定は、粘度測定検出によって行われてもよい。本発明との関連で、平均分子量MnおよびMwは、絶対質量で表される。MnおよびMwは、分布の全体から、または環状オリゴマーの寄与を考慮に入れたくない場合には低質量の切り捨て後に計算されてもよい。
【0044】
ポリエステル
半芳香族ポリエステルは好ましくは、少なくとも1種の芳香族二酸または相当するジエステルと、脂肪族、脂環式もしくは芳香族ジオールとの重縮合によって得られるポリエステルから構成される群から選択される。
【0045】
芳香族二酸およびそれらのジエステルは、例えば、テレフタル酸、ジメチルテレフタレート、イソフタル酸、ジメチルイソフタレート、5−tert−ブチルイソフタル酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸およびジメチルナフタレートの異性体から選択されてもよい。ジオールは、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、イソソルビドおよび1,4−シクロヘキサンジメタノールから選択されてもよい。
【0046】
好ましくは5,000g/モル〜20,000g/モルにある数平均分子量(Mn)を有する半芳香族ポリエステルが、それらの満足できる機械的特性および様々な造形プロセス中のそれらの挙動を考慮して特に有利である。
【0047】
半結晶性ポリエステルが特に好ましい。
【0048】
特に有利な実施形態によれば、本発明に好適な半芳香族ポリエステルは、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)およびポリエチレンナフタレート(PEN)から構成される群から選択される。
【0049】
PETおよびPBTは、半結晶性ポリエステル(M.Pt.PET=245〜250℃、M.Pt.PBT=225℃)である。
【0050】
低分子量のポリエステルを製造するために、次のような幾つかの別個のルートが存在する。第1ルートは、二酸およびジオールからの「直接エステル化」型またはジエステルおよびジオールからの「エステル交換」型の当業者に周知の方法による重縮合反応器でのポリエステルの直接溶融合成にある。例えばPETについて、反応器での溶融合成は、テレフタル酸およびエチレングリコール(直接エステル化)から、またはジメチルテレフタレートおよびエチレングリコール(エステル交換)から行われてもよい。合成方法の例は、Techniques de l’ingenieur 06/2004,J6488,12pに記載されている。このルートはしたがって、所与の時間での重縮合段階の停止による分子量の制御を可能にする。第2ルートは、標準ポリエステルの加水分解、アルコール分解、酸分解またはアミノ分解さえにある。最後に、特にPBTのために開発された、第3ルートは、開環によるPBTの製造のための環状CBT(環状ブチレンテレフタレート)モノマーの重合にある。
【0051】
PET、PBT、PTT型のポリエステルは一般に、過剰のグリコールとのテレフタル酸からの直接エステル化(PTAルート)または過剰のグリコールとのジメチルテレフタレートからのエステル交換(DMTルート)と言われる方法から重縮合反応器で溶融合成される。
【0052】
高い流動性を有するポリエステルは、それらの合成中にそれらの分子量を制御することによって、特に重合時間を制御することによって、モノマーの化学量論を制御することによって、あるいは重合前にまたは重合中に特にモノアルコールおよび/またはモノカルボン酸鎖制限剤などの鎖の長さ変更するモノマーの添加によって特に得られてもよい。分岐を導入するために多官能性化合物を重合に添加することもまた可能である。
【0053】
本発明によるポリエステルはまた、ポリエステルを、特にジオール、ジカルボン酸、モノアルコールおよび/またはモノカルボン酸などの鎖の長さを変更するモノマーと、あるいは水、ジアミンまたはモノアミンと、特に溶融体で、混合することによって得られてもよい。
【0054】
本発明のポリマー組成物はまた、上のポリエステルから特に誘導される1つもしくは複数のコポリエステル、またはこれらのポリエステルの混合物もしくは(コ)ポリエステルを含んでもよい。
【0055】
好ましい実施形態によれば、本発明による組成物は、高い流動性を有する少なくとも1種のポリアミドまたはポリアミドの混合物を含み、より好ましくはポリアミドから構成される。
【0056】
ポリアミド
考慮されるポリアミドは好ましくは、50Pa.s以下の、好ましくは1〜30Pa.sの範囲の融解状態での粘度を有する半結晶性もしくは非晶質ポリアミドである。
【0057】
この溶融粘度は、1〜160s−1の範囲の増分剪断走査で、直径50mmの平板−平板型レオメータを用いて測定されてもよい。ポリマーは、150μmの厚さの顆粒から、場合によりフィルムから形成される。
【0058】
ポリアミドは、それが半結晶性である場合、その融点の10〜100℃上の範囲の温度にされ、測定はそれから行われる。
【0059】
ポリアミドは、それが非晶質である場合、ガラス転移温度の100〜250℃上の温度にされ、測定はそれから行われる。
【0060】
本発明に好適な高い流動性を有するポリアミドとして、公文書国際公開第03/029350 A1号パンフレット、国際公開第2005/061209 A1号パンフレット、国際公開第2008/155318 A1号パンフレット、国際公開第2010/034771 A1、国際公開第2011/003786 A1号パンフレット、国際公開第2011/003787 A1号パンフレット、国際公開第2011/073198 A1号パンフレット、国際公開第2011/073200 A1号パンフレットおよび国際公開第2011/144592 A1号パンフレットに記載されているものが言及されてもよい。
【0061】
ポリアミドは特に、半結晶性または非晶質であってもよい。半結晶性ポリアミドが特に好ましい。
【0062】
ポリアミドは特に、少なくとも1種の線状脂肪族ジカルボン酸と、脂肪族もしくは環状ジアミンとの重縮合、または少なくとも1種の芳香族ジカルボン酸と、脂肪族もしくは芳香族ジアミンとの重縮合によって得られるポリアミド、少なくとも1種のアミノ酸またはラクタムのそれ自体との重縮合によって得られるポリアミド、あるいはそれらの混合物および(コ)ポリアミドからなる群から選択されてもよい。
【0063】
本発明のポリアミドは特に、PA 6.6、PA 6.10、PA 6.12、PA 12.12、PA 4.6、MXD 6などの少なくとも1種の脂肪族ジカルボン酸と脂肪族もしくは環状ジアミンとの重縮合によって得られるポリアミド、またはポリテレフタルアミド、ポリイソフタルアミド、ポリアラミド、またはそれらの混合物および(コ)ポリアミドなどの少なくとも1種の芳香族ジカルボン酸と脂肪族もしくは芳香族ジアミンとの間の重縮合によって得られるポリアミドからなる群から互いに独立して選択されてもよい。本発明のポリアミドはまた、例えばPA 6、PA 7、PA 10T、PA 11、PA 12、またはそれらの混合物および(コ)ポリアミドなどの、少なくとも1種のアミノ酸(アミノ酸は、ラクタム環の加水分解開環によって発生させることができる)もしくはラクタムのそれ自体との重縮合によって得られるポリアミドから選択されてもよい。
【0064】
特に上のポリアミド、またはこれらのポリアミドの混合物もしくは(コ)ポリアミドから誘導されるコポリアミドはまた、本発明によるポリアミドの中にあってもよい。本発明のポリアミドの重合は特に、連続的にまたは不連続的に、ポリアミドの重合のための標準操作条件下で行われる。
【0065】
高い流動性を有するポリアミドは特に、出願国際公開第2011/073198 A1号パンフレットに教示されている方法に従って得られてもよい。
【0066】
より具体的には、少なくとも6,000g/モルの、より好ましくは6,000g/モル〜18,000g/モルにある数平均分子量(Mn)を有し、満足できる機械的特性および様々な造形法中に一定の挙動を有するポリアミドが、本発明に好適である。
【0067】
好ましくは半結晶性の、本発明のポリアミドは、6,000g/モル〜25,000g/モルにある重量平均分子量(Mw)を有してもよい。
【0068】
様々な方法で、特にモノマーの化学量論の不均衡および/またはポリアミドの重合もしくは重縮合のプロセス中のブロッキング化合物(これらは、ある濃度のブロッキング末端基BTGを持った、鎖制限剤とも言われる一官能性分子である)の添加によって;あるいは混合中の、特に押出中のモノマーまたはブロッキング分子の添加によって得られる、低分子量の非進化型(non−evolutive)ポリアミド樹脂がまた利用されてもよい。これらのポリアミド樹脂の重量平均分子量Mwは、5,000〜25,000g/モル、好ましくは10,000〜16,000g/モルにある。重量平均分子量は、出願国際公開第2011/073198 A1号パンフレットに言及されている技術に従って測定されてもよい。
【0069】
これらのポリアミドは、20meq(ミリ当量)/kg以下の末端アミン基(TAG)および/または末端カルボキシル基(TCG)の濃度を有する。
【0070】
これらの樹脂は、これらが本発明による製造方法に利用される場合に;すなわち、分子量の増加に普通は有利に働く温度および圧力条件下で、それらの分子量または重合度の有意な増加が全く観察されないので非進化型と言われる。この分子量は実際に、酸性もしくはアミン末端基の、不在もしくはほぼ不在のために、複合材料異形材の製造プロセス中に変化しない。これらの樹脂は、その意味で、伝統的に使用される部分重合ポリマーまたはプレポリマーとは異なる。これらのポリアミド樹脂は好ましくは、20meq/kg以下、好ましくは15meq/kg以下、より好ましくは10meq/kg以下、さらにより好ましくは5meq/kg以下、とりわけ特に0meq/kgに等しい末端アミン基(TAG)のおよび/または末端カルボキシル基(TCG)の濃度を有する。本発明に好適なポリアミドはしたがって例えば、0meq/kgのTAGおよび500meq/kgのTCGを有してもよい。本発明に好適なポリアミドはしたがって例えば、400meq/kgのTAGおよび0meq/kgのTCGを有してもよい。5meq/kg以下の末端アミン基(TAG)の濃度を有するポリアミドは一般に、100〜1,000meq/kgにある末端カルボキシル基(TCG)の濃度を有する。5meq/kg以下の末端カルボキシル基(TCG)の濃度を有するポリアミドは一般に、100〜1,000meq/kgにある末端アミン基(TAG)の濃度を有する。
【0071】
最後に、本発明のポリアミドはまた、TAG=400meq/kg、0meq/kgのTCGおよびブロッキング末端基の濃度BTG=100meq/kgを有してもよい。
【0072】
末端アミン基(TAG)および/または末端酸基(TCG)の量は、例えば、トリフルオロエタノールへの、ポリアミドの完全溶解、および過剰の強塩基の添加後の電位差滴定によって測定されてもよい。塩基性化学種は次に、強酸の水溶液で滴定される。
【0073】
本発明によるそのような樹脂は、多くの方法で製造され得るし、当業者にそれ自体周知である。
【0074】
例えば、そのような樹脂は、二官能性および/または一官能性化合物のさらなる存在下で、ポリアミドのモノマーの、重合中の、特に重合の開始時の、重合の過程でのまたは重合の終わりでの添加によって製造され得る。これらの二官能性および/または一官能性化合物は、ポリアミドのモノマーと反応することができるアミンまたはカルボン酸官能基を有し、結果として生じるポリアミド樹脂が好ましくは20meq/kg未満のTAGおよび/またはTCGを有するような割合で利用される。本発明によって利用されるポリアミド樹脂を得るように、特に押出、一般に反応押出によって、二官能性および/または一官能性化合物をポリアミドと混合することもまた可能である。脂肪族もしくは芳香族の、任意のタイプのモノ−もしくはジカルボン酸、または脂肪族もしくは芳香族の、任意のタイプのモノ−もしくはジアミンが利用されてもよい。特に、n−ドデシルアミンおよび4−アミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、酢酸、ラウリン酸、ベンジルアミン、安息香酸、酢酸およびプロピオン酸が、一官能性化合物として利用されてもよい。特に、アジピン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカン二酸、デカン二酸、ピメリン酸、スベリン酸、脂肪酸の二量体、ジ−(カルボキシエチル)シクロヘキサノン、ヘキサメチレンジアミン、メチル−5 ペンタメチレンジアミン、メタキシリレンジアミン、ブタンジアミン、イソホロンジアミン、1,4 ジアミノ シクロヘキサンおよび3,3’,5−トリメチルヘキサメチレンジアミンが、二官能性化合物として利用されてもよい。過剰のアジピン酸または過剰のヘキサメチレンジアミンがまた、高い溶融流動性および好ましくは20meq/kg未満の末端アミン基(TAG)および/または末端カルボキシル基(TCG)を有する66型のポリアミドの製造のために利用されてもよい。
【0075】
末端基を全てもしくは事実上全て消費させるために水を排除するために、およびしたがって異形材の利用の条件が、特に圧力下であろうと、真空下であろうと、樹脂が、分子量の増加の意味でもはや全く進化しないであろうことを確保するためになど、重合の終わりに真空下で仕上げ工程を行うことによってポリアミドの酸性もしくはアミン末端基の濃度を著しく下げることがまた可能である。
【0076】
8,000g/モル未満の数平均分子量Mnを有するおよび/または25meq/kgよりも大きい末端アミン基(TAG)の濃度、25meq/kgよりも大きい末端酸基(TCG)の濃度および式2000000/(TAG+TCG+BTG)<8,000g/モルに従って含まれるブロックされた末端基(BTG)の濃度を有する低分子量のブロックされた、非進化型ポリアミド樹脂がまた、本発明の方法に利用されてもよい。これらのポリアミドは特に、ポリアミドの重合中の様々な一官能性もしくは二官能性モノマーの添加によって製造され得る。
【0077】
星形高分子鎖および該当する場合線状高分子鎖を含む星形ポリアミドがまた、高い流動性を有するポリアミドとして利用されてもよい。
【0078】
星形構造を持ったポリアミドは、星形高分子鎖と、場合により線状高分子鎖とを含むポリマーである。そのような星形高分子鎖を含むポリマーは、例えば、公文書仏国特許第2743077号明細書、仏国特許第2779730号明細書、欧州特許第0682057号明細書および欧州特許第0832149号明細書に記載されている。
【0079】
これらの化合物は、線状ポリアミドと比較して改善された流動性を有することが知られている。星形高分子鎖は、コアと、少なくとも3つのポリアミド分枝鎖とを含む。分枝鎖は、アミド基または別の種類の基を介して共有結合によってコアに結合している。コアは、有機または有機金属化合物であり、好ましくは、ヘテロ原子を場合により含む炭化水素化合物であり、それに分枝鎖が結合している。分枝鎖は、ポリアミド鎖である。分枝鎖を構成するポリアミド鎖は好ましくは、ラクタムまたはアミノ酸の重合によって得られる型の、例えばポリアミド6型のものである。本発明による星形構造を持ったポリアミドは場合により、星形鎖だけでなく、線状ポリアミド鎖を含む。その場合には、星形鎖の量と、星形鎖および線状鎖の量の合計との間の重量比は、両端を含めて0.5〜1にある。それは好ましくは、0.6〜0.9にある。
【0080】
本発明の好ましい実施形態によれば、星形構造を持った、すなわち、星形分子鎖を含むポリアミドは、少なくとも、
a)次の一般式I):
のモノマー
b)次の一般式(Ma)および(Mb):
のモノマー
c)場合により次の一般式(III):
Z−R−Z(III)
のモノマー
(式中:
− Rは、少なくとも2個の炭素原子を含み、ヘテロ原子を場合により含む線状もしくは環状の、芳香族もしくは脂肪族の炭化水素ラジカルであり;
− Aは、共有結合または、ヘテロ原子を場合により含み、1〜20個の炭素原子を含む脂肪族炭化水素ラジカルであり;
− Zは、第一級アミン官能基またはカルボン酸官能基を表し;
− Yは、Xがカルボン酸官能基を表す場合には第一級アミン官能基であるか、またはYは、Xが第一級アミン官能基を表す場合にはカルボン酸官能基であり;
− 同一であるかもしくは異なる、R、Rは、2〜20個の炭素原子を含み、ヘテロ原子を場合により含む置換もしくは非置換の脂肪族、脂環式もしくは芳香族炭化水素ラジカルを表し;
− mは、3〜8にある整数を表す)
を含むモノマーの混合物の共重合によって得られる。
【0081】
カルボン酸は、カルボン酸と酸無水物、酸塩化物またはエステルなどのそれらの誘導体とを意味すると理解される。
【0082】
これらの星形ポリアミドの獲得方法は、公文書仏国特許第2743077号明細書および仏国特許第2779730号明細書に記載されている。これらの方法は、線状高分子鎖と場合により混合された、星形高分子鎖の形成をもたらす。式(III)のコモノマーが使用される場合、重合反応は有利には、熱力学的平衡の達成まで行われる。
【0083】
式(I)のモノマーはまた、押出操作の過程で、融解ポリマーと混合されてもよい。
【0084】
したがって、本発明の別の実施形態によれば、星形構造を持ったポリアミドは、例えば押出デバイスを用いて、ラクタムおよび/またはアミノ酸の重合によって得られるタイプのポリアミドと、式(I)のモノマーとを溶融混合することによって得られる。そのような獲得方法は、欧州特許第0682070号明細書および欧州特許第0672703号明細書に記載されている。
【0085】
本発明の特定の特性によれば、ラジカルRは、シクロヘキサノイルの四価ラジカルなどの脂環式ラジカルか、1,1,1−トリイル−プロパンもしくは1,2,3−トリイル−プロパンラジカルかのどれかである。本発明に好適な他のラジカルRとして、例として置換もしくは非置換フェニルおよびシクロヘキサニルの三価ラジカル、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)に由来するラジカルなどの有利には2〜12にある数のメチレン基を持ったジアミノポリメチレンの四価ラジカル、シクロヘキサノイルまたはシクロヘキサジノイルの八価ラジカル、およびグリコール、ペンタエリスリトール、ソルビトールもしくはマンニトールなどのポリオールとアクリロニトリルとの反応によって生じる化合物に由来するラジカルが挙げられてもよい。
【0086】
有利には、少なくとも2つの異なるラジカルRが式(II)のモノマーに用いられてもよい。
【0087】
ラジカルAは、好ましくは、メチレンまたはエチル、プロピルもしくはブチルラジカルなどのポリメチレンラジカル、またはポリオキシエチレンラジカルなどのポリオキシアルキレンラジカルである。
【0088】
本発明の特定の実施形態によれば、数mは3以上であり、有利には3または4に等しい。記号Zで表される多官能性化合物の反応性官能基は、アミド官能基を形成することができる官能基である。
【0089】
好ましくは、式(I)の化合物は、2,2,6,6−テトラ−(β−カルボキシエチル)−シクロヘキサノン、トリメシン酸、2,4,6−トリ−(アミノカプロン酸)−1,3,5−トリアジンおよび4−アミノエチル−1,8−オクタンジアミンから選択される。
【0090】
星形高分子鎖がそれに由来するモノマーの混合物は、鎖制限剤、触媒、および光安定剤または熱安定剤などの添加剤などの、他の化合物を含んでもよい。
【0091】
本発明のポリアミドはまた、ポリアミドの鎖に化学結合したヒドロキシ芳香族部分を含んでもよい。このために、少なくとも1個の芳香族ヒドロキシル基と、ポリアミドの酸官能基またはアミン官能基と化学結合することができる少なくとも1つの官能基とを含む化合物であり、いったんポリアミド鎖と化学結合するとヒドロキシ芳香族部分になる、ヒドロキシ芳香族有機化合物が利用される。この化合物は好ましくは、2−ヒドロキシテレフタル酸、5−ヒドロキシイソフタル酸、4−ヒドロキシイソフタル酸、2,5−ジヒドロキシテレフタル酸、4−ヒドロキシフェニル酢酸または没食子酸、L−チロシン、4−ヒドロキシフェニル酢酸、3,5−ジアミノフェノール、5−ヒドロキシm−キシリレンジアミン、3−アミノ−フェノール、3−アミノ−4−メチル−フェノール、および3−ヒドロキシ−5−アミノ−安息香酸からなる群から選択される。
【0092】
布(強化材)
前に述べられたように、本発明による方法は、少なくとも1種の強化布を利用する。
【0093】
「布」は、特に糊付け、フェルト化、編み、織りまたはニッティングなどの、任意の方法によって結ばれた糸または繊維のアセンブリによって得られる織物エリアを意味すると理解される。これらの布はまた、繊維状またはフィラメント状網状構造と言われる。糸は、モノフィラメント、連続マルチフィラメント糸、または単一タイプの繊維からもしくは均質混合された幾つかのタイプの繊維から得られる、紡績糸を意味すると理解される。連続糸はまた、幾つかのマルチフィラメント糸のアセンブリによって得られてもよい。繊維は、フィラメントまたはカットされた、砕かれたもしくは加工されたフィラメントのセットを意味すると理解される。本発明による強化糸および/または繊維は好ましくは、炭素、ガラス、アラミド、ポリイミド、亜麻、大麻、サイザル麻、コイア、ジュート、ケナフ、竹および/またはそれらの混合物の糸および/または繊維から選択される。より好ましくは、強化布は専ら、炭素、ガラス、アラミド、ポリイミド、亜麻、大麻、サイザル麻、コイア、ジュート、ケナフ、竹および/またはそれらの混合物の糸および/または繊維から選択される強化糸および/または繊維から構成され、特に、強化布は専ら、ガラス繊維から構成される。
【0094】
これらの布は好ましくは、100〜1,200g/mにある、より好ましくは100〜1,000g/mにある、坪量、すなわち、1平方メートル当たりの重量を有する。
【0095】
それらの構造は、ランダム、一方向性(1D)または多方向性(2D、2.5D、3Dなど)であってもよい。
【0096】
特に、これらの布は、一方向繊維、平衡または非平衡布、テープ、編物、非捲縮布およびそれらの混合物から選択されてもよい。
【0097】
好ましくは、それらは、テープ形態にある。
【0098】
それらはまた、繊維の高い割合を有する異形材を得るために、折り重ねて、すなわち、この布の幾つかの折重なりの重ね合わせによって得られるテープの形態で利用されてもよい。
【0099】
強化布は、熱硬化性または熱可塑性樹脂ベースのバインダーを特に利用して予備造形されてもよい。
【0100】
含浸を容易にするために、樹脂のフローを容易にするであろう排水布を強化布に利用することが有用であり得る。
【0101】
上に記載されたようなポリマー組成物および強化布は、射出−引き抜き成形法による異形材の製造のために利用される。
【0102】
本発明による方法において、複合異形材への布の変形は、射出−引き抜き成形デバイスを通って所望のスピードで布を移動させることを可能にする引張システムによって連続モードで確保される。
【0103】
実際に、例えばキャタピラー型の、この装置は、布の全体をプロセスの開始から終了までけん引力下に維持する。
【0104】
したがって、強化布は、造形段階に充てられるチャンネルの下流に配置された引張装置を用いて、プロセスの過程で少なくとも0.4m.分−1、好ましくは0.4〜12m.分−1、特に、0.5〜8m.分−1の範囲の引張速度で連続的に引っ張られる。
【0105】
引張速度を、それが、利用されるポリマー組成物または布の特性、ポリマー組成物の射出速度、または再び、製造される異形材の所望のジオメトリーに特に関して、布の良好な含浸に適合するように調整することは当業者のためである。
【0106】
上に述べられたように、本発明による射出−引き抜き成形による製造技術は、少なくとも、以下の段階c)およびd):
c)融解ポリマー組成物の射出による布の含浸段階、および
d)異形材を形成するための含浸布の造形段階
を必要とする。
【0107】
含浸および造形の2つの段階の実施は、デバイスの幾つかの改良によって確保されてもよい。
【0108】
第1実施形態によれば、これらの2つの段階は、共通のチャンネルにおいて実施されてもよい。
【0109】
この代替案によれば、共通のチャンネルは、少なくとも1つのホット入口ゾーン、射出チャンバーを備えたホット含浸ゾーン、温度コントロールゾーン、および制御された方法で異形材が冷却される造形ゾーンを引き続いて含んでもよい。このチャンネルは一般に有利には、閉塞ガス状残留物もしくは空気の排除に充てられる、含浸ゾーンの直接下流の、および/または温度コントロールゾーンの上流の、大気圧でのゾーンに例えば配置された、通気孔を備えている。
【0110】
図1は、そのような単一チャンネルを利用するデバイスをまとめる。
【0111】
第2実施形態によれば、2つの段階は、離れていてもいなくても、2つの別個のおよび連続したチャンネルにおいて実施されてもよい。
【0112】
この代替案によれば、第1チャンネルは、少なくとも1つのホット入口ゾーンおよび射出チャンバーを備えた1つのホット含浸ゾーンを引き続いて含んでもよく、第2チャンネルは、造形ゾーンを含んでもよく、前記第1チャンネルは、閉塞ガス状残留物もしくは空気の排除に充てられる、含浸ゾーンの直接下流に通気孔を適切な場合備えている。
【0113】
この第2実施形態の別の代替案によれば、第2チャンネルは、カレンダー機から、または制御された温度での一連の幾つかのカレンダー機から構成される。
【0114】
含浸段階c)
この含浸段階c)は、400℃未満、好ましくは350℃未満、そして融解状態の前記ポリマー組成物の温度以上の温度を有する布に関して行われる。
【0115】
この段階中に、強化布は一般に、200〜380℃の範囲の温度にある。
【0116】
デバイスの配置がどうであろうと、布は、含浸段階の前に所要の温度にされなければならない。この加熱の実施は、当業者の能力内に入り、含浸に充てられるチャンネルのホット入口ゾーンにおいて達成されてもよい。
【0117】
布はまた、150〜350℃の範囲の温度で、特に予熱オーブン中で、段階b)の前に予熱されてもよい。
【0118】
含浸段階c)は、含浸ゾーンに配置された布を通しての融解ポリマー組成物の射出によって行われる。
【0119】
好ましくは、含浸は、布の少しのゾーンもポリマー組成物を含浸しないままでないことを意味する、完全である。
【0120】
このために、ポリマー組成物は、前記布の含浸に充てられるチャンネルゾーンに連結された射出チャンバーから射出されてもよい。
【0121】
この射出は、例えば、押出機、好ましくは二軸スクリュー押出機を用いて、あるいは再循環ポンプを用いて行われてもよい。
【0122】
一般に、ポリマー組成物は、押出機の入口へ導入され、押出機から出てくる時にそれが融解状態にあり、50Pa.s以下の粘度にあるようにそこで加熱される。
【0123】
ポリマー組成物のもしくは利用される布の特性、引張速度またはまた製造される異形材の所望のジオメトリーに特に関して、それらが布の良好な含浸に適合するようにポリマー組成物の温度、流量および射出圧力を調整することは当業者のためである。
【0124】
射出温度に関しては、ポリマー組成物は好ましくは、押出機から出てくる時にそれが、この段階中の布の温度と同じ位の温度で布を通して射出されるように、それが押出機を通過中に加熱される。
【0125】
したがって、ポリマー組成物は好ましくは、半結晶性材料に相当する場合には380℃未満の温度、かつ、前記ポリマー組成物の融点よりも少なくとも10℃だけ高い温度で、そして非晶質材料に相当する場合には前記ポリマー組成物のガラス転移温度よりも少なくとも100℃だけ高い温度で射出される。
【0126】
それはそれ故一般に、その射出中に200〜380℃の範囲の温度にある。
【0127】
射出速度に関しては、これは好ましくは、異形材の総容積に対して25〜65%の範囲の容積のポリマー組成物を含む異形材を生成するように調整される。
【0128】
圧力に関しては、ポリマー組成物は有利には、0.1〜20バール、好ましくは0.2〜12バール、特に0.5〜10バールの範囲の圧力で布を通して射出されてもよい。
【0129】
ポリマー組成物の温度、ならび射出の速度および圧力の調整は別として、布の速いおよび総合的な含浸は、幅(角度)の減少したチャンネルの幾何学的側面および/またはバーフィードもしくはバッフル型のシステムによって容易にされ得る。
【0130】
特定の実施形態によれば、含浸布は、含浸段階c)の後に、そして造形段階d)の前に、温度安定化段階c’)を受けてもよく、その段階で、融解状態のポリマー組成物を含浸した布は、380℃未満に留まる、かつ、半結晶性材料に相当する場合には前記ポリマー組成物の融点よりも少なくとも10℃だけ高い温度に、そして非晶質材料に相当する場合には前記ポリマー組成物のガラス転移温度よりも少なくとも100℃だけ高い温度にされる。
【0131】
2つのチャンネルを持ったデバイスの改良で、この段階は、ホットと言われるチャンネル内で行われるであろう。
【0132】
同様に、本方法は、造形段階d)の前に行われる、画定された幾何学的側面に従ってポリマーを含浸した布を造形する予備段階を含んでもよい。
【0133】
含浸布を造形して異形材を形成する段階d)
前に述べられたように、異形材は、
− その表面温度が、半結晶性の場合にはポリマー組成物の結晶化温度未満であり、そして非晶質の場合にはポリマー組成物のガラス転移温度(Tg)より60℃未満高く、
− そのコア温度が、半結晶性の場合には前記ポリマー組成物の結晶化温度よりも高く、そして非晶質の場合にはポリマー組成物のガラス転移温度(Tg)より60℃超して高いような、温度プロフィールで段階d)において造形される。
【0134】
有利には、ポリマー組成物が半結晶性である場合、異形材は、そのコア温度が前記ポリマー組成物の溶融温度未満であるような温度プロフィールで造形される。
【0135】
好ましい実施形態によれば、前記布が造形されるために段階c)において必要とされる温度プロフィールは、存在する場合安定化段階b’)から出るときに調整される。
【0136】
引き抜き成形射出デバイスにおいて、含浸のために考えられるチャンネルとは異なるチャンネルを造形段階d)のために利用すると、この温度プロフィールは、造形に充てられるチャンネルへ入る前に、有利には、2つのチャンネルの間に提供されるスペースにおいて調整されてもよく、そしてそれはそのとき温度コントロールゾーンを特徴づける。この温度コントロールゾーンは有利には、特に断熱および/または外部冷却デバイスを用いて、第1チャンネルの温度未満の温度を与えられる。
【0137】
特に、このモードの冷却は、引き抜き成形された物体の寸法がかなりのものであり、例えば厚いプレートまたは大きい横断面側面型のものである場合に、しかしまた引張速度が高い、例えば1m/分よりも大きい場合にとりわけ特に有利である。
【0138】
有利には、そのようなデバイスは、水溶液を噴霧蒸発させる形態にあってもよい。
【0139】
このタイプの冷却デバイスが利用される場合、温度コントロールゾーンは好ましくは、水性噴霧が造形される材料上へ直接に蒸発するように、空気に開かれている。
【0140】
造形段階を行うために、特に製造される異形材の寸法、温度コントロールゾーンの長さ、第1チャンネルから出るときの造形される材料の温度、ならびにその材料の表面でのおよびコアにおける所望の温度に関して、冷却噴霧の流量および蒸発温度を調整することは当業者のためである。
【0141】
添加剤
一実施形態によれば、本発明の方法は、熱可塑性ポリマーをベースとする材料中へ通常導入される少なくとも1種の添加剤を利用する。
【0142】
したがって、添加剤の例として、熱安定剤、UV安定剤、酸化防止剤、滑剤、顔料、染料、可塑剤、強化充填剤、難燃剤および耐衝撃性改質剤、特に潤滑剤が言及されてもよい。
【0143】
特に、本方法は、特に段階c)および/またはd)において、少なくとも1種の潤滑添加剤を利用する。
【0144】
したがって、潤滑剤の利用は、そのような添加剤が、造形段階中に異形材とチャンネルの壁との間の摩擦の低減を増大させることを可能にするので特に有利である。強化布引張力はこうして、より一定であり、かつ、より低い。
【0145】
好ましくは、そのような潤滑剤は、ポリフッ化ビニリデンもしくはポリテトラフルオロエチレンなどのポリマー製造助剤、環状エステルのオリゴマーなどの可塑剤、タルク、雲母、および黒鉛などのそれらの潤滑性もしくは抗粘着性について知られている無機充填剤、ならびにそれらの混合物、特に黒鉛から選択される。
【0146】
特に上で定義されたような、潤滑剤の利用は、本方法の幾つかのゾーンにおいて達成されてもよい。
【0147】
したがって、第1実施形態によれば、それは、含浸ゾーンにおいて、布の含浸に充てられる融解ポリマー組成物を形成する熱可塑性ポリマーと組み合わせて存在する。
【0148】
この実施形態によれば、潤滑剤は、押出機で熱可塑性ポリマーまたは関係ポリマーと、布を通してのその射出の前に、例えば混合されてもよい。
【0149】
さらにこの実施形態によれば、潤滑剤および熱可塑性ポリマーコンパウンドは、0.1/99.9〜10/90、好ましくは0.5/99.5〜5/95の範囲の潤滑剤/ポリアミドの重量比で利用されてもよい。
【0150】
第2実施形態によれば、潤滑剤は、2つのチャンネルを持った設備の特異的な場合に、2つのチャンネルの間に提供されるスペースにおいて利用されてもよい。
【0151】
特に、それは、外部冷却デバイスとして使用される水溶液中に存在してもよい。
【0152】
最後に、第3実施形態によれば、潤滑剤は、射出−引き抜き成形設備の配置がどうであろうと、造形ゾーンへ液体状態で導入されてもよい。
【0153】
それはそれから造形ゾーン内に、このゾーンに配置された1つもしくは複数の射出ポイントを通って直接射出される。
【0154】
この第3実施形態では、造形段階中の添加物の利用に関連して、この試剤は、上に述べられたものは別として、熱可塑性ポリマー、つまり含浸のためにおよび異形材を製造するために利用されるポリマーの結晶化温度よりも低い融点を有する、液体状態の熱可塑性ポリマーであってもよい。
【0155】
そのようなポリマーの潤滑効果は、それが、造形段階中の異形材の表面に反して、液体状態にあるという事実によって確保される。
【0156】
さらに、その潤滑作用を越えて、そのようなポリマーは、例えば表面疎水性、異形材の溶接を容易にする特異的なテクスチャー、画定された表面状態または特定の色などの表面特性を異形材上へ与え得る。
【0157】
そのような特性は、ポリマーそれ自体によって、あるいは射出されるポリマーと調合された、顔料もしくは導電性充填剤などの、充填剤および/または添加剤によってもたらされ得る。
【0158】
このポリマーは、半結晶性であっても非晶質であってもよく、有利には、異形材の造形を損なわないように、熱可塑性ポリマー、つまり異形材を構成するポリマーと最小限の相溶性を示す。
【0159】
したがって、好ましいポリマーは、低い融点、すなわち、100〜220℃の範囲の融点を有するおよび/または無水マレイン酸もしくは別の相溶化剤で官能化される。
【0160】
異形材
前に述べられたように、その態様の別のものによれば、本発明は、本発明による方法によって得られる異形材に関する。
【0161】
造形段階d)から出てくる時に得られる異形材は、その厚さの全体にわたって、半結晶性の場合には熱可塑性ポリマー組成物の結晶化温度よりも低い温度を有し、そして非晶質の場合には熱可塑性ポリマー組成物のガラス転移温度より60℃未満高い温度を有する。
【0162】
一般に、この造形段階d)に、異形材がその厚さの全体にわたって150℃〜50℃の範囲の温度まで冷却される冷却段階が続く。この段階は、当業者に公知の任意の方法によって行われてもよい。
【0163】
造形段階d)から出てくる時に、つまり本発明の方法の終わりに得られる異形材は特に、異形材の総容積に対して、35〜75%の範囲の、特に50〜63%の範囲の容積の強化布を含んでもよい。
【0164】
その横断面は、単純なもしくは複雑なジオメトリーで、中実であっても中空であってもよい。こういう訳で、単一チャンネル代替案による造形ゾーン、つまり造形に充てられるチャンネルは、期待される異形材を得るために調整されたジオメトリーを有する。
【0165】
例えば、長方形タイプの、単純な横断面を持った、異形材は、2m、または2.56m(100インチ)までをも及ぶ幅、および10mm、または15mmもしくは25mm(1インチ)までをも及ぶ0.2mmの最小厚さを有してもよい。
【0166】
複雑なジオメトリーを持った横断面は、特に正方形、あるいはオメガ型のもしくは再び任意の型のジオメトリーの、UもしくはI形状(例えば普通のIPN異形材)であってもよい。
【0167】
中空横断面の異形材として、円形もしくは長方形チューブ型の異形材が特に特色になっている。
【0168】
本発明はまた、異形材の総容積に対して、35〜75%の範囲の、特に50〜63%の範囲の容積の強化布を含む熱可塑性ポリマーマトリックスの異形材に関する。
【0169】
その態様のその上別のものによれば、本発明の主題は、本発明による方法によって得られる少なくとも1つの異形材を含む複合品であって、前記異形材の湾曲が曲げることによって修正されるおよび/またはその側面が回転成形によって修正されることを特徴とする複合品である。
【0170】
本発明はまた、本発明の方法によって得られる少なくとも2つの異形材を含む複合構造体であって、その中で前記異形材が、特に溶接によって、組み立てられている構造体に関する。
【0171】
用途
本発明による異形材は、航空宇宙、自動車、およびエネルギー産業、土木工学または農機具、ならびにスポーツおよびレジャー産業などの多くの分野で使用され得る。これらの構造体は、スポーツ物品、強化構造体(シャーシ)を製造するために、あるいはスペシャルフロア、間仕切り、車両車体部品、またはパネルなどの様々な表面を生み出すために利用され得る。航空宇宙産業において、これらの構造体は、フェアリング(機体、翼、尾翼)に特に利用される。自動車工業において、それらは、例えば、シャーシ、フロア、バンパーまたは前部ユニットもしくは後部ユニットなどの支持体に利用される。
【0172】
以下の実施例および図は、本発明の範囲を例示するためであり、それを限定するものではない。
【0173】
実験および方法
以下の実施例において、引き抜き成形による異形材の連続製造方法は、図1に例示されるような引き抜き成形設備10を用いて実施する。
【0174】
例示される射出−引き抜き成形設備10は第一に、ポリマーマトリックスを含浸させられ、そして所望の側面ジオメトリーに従って造形される強化布14のロールまたはボビンを保持するクリール12を含む。
【0175】
強化布は、ここではキャタピラー型の、引張装置16によって射出−引き抜き成形設備10を通してぴんと張られ、引っ張られる。射出−引き抜き成形設備を通っての強化布のスピードは、0.4m/分よりも大きく、好ましくは0.8〜8m/分にある。
【0176】
射出−引き抜き成形設備を通って、強化布14は第一に、それらを互いに配置するために、特にそれらを重ね合わせるために、案内装置18によって導かれる。
【0177】
強化布14は次に、強化布の加熱に充てられる予熱オーブン22、次にチャンネル20を通過する。
【0178】
このチャンネル20は第一に、ホット入口ゾーン24(その中で、布は、例えばオーブンを用いて、含浸段階を行うために必要とされる温度にされる)、次に、射出チャンバー25を備えたホット含浸ゾーン(その中で、ホット強化布は融解ポリマーを含浸する)を含む。このために、ポリマーは、低圧下の、典型的には20バール未満の射出チャンバー25中へ射出される。低圧下のこの射出は、例えば、再循環ポンプを場合により持った押出機26を用いて達成されてもよい。押出機26は例えば、強化布に含浸させることが望まれるポリマーが、顆粒(コンパウンド)または粉末の形態の熱可塑性ポリマーである場合に特に、二軸スクリュー押出機であってもよく、このシステムは、強化材料の完全な含浸に好適な量のポリマーを配送しなければならず、そしてそれは、利用される引張速度向けである。熱可塑性ポリマーの射出時の圧力/流量調整は、計量供給デバイスまたはポンプの形態での当業者に公知の様々な技術によって行われる。
【0179】
チャンネル20は次に、温度コントロールゾーン28(その中で、含浸強化布は冷却され、場合によりフラットセクションから3Dジオメトリーまでを通るように再造形され、その結果、異形材は、段階d)において必要とされる温度勾配によって造形され得る)、次に最後に異形材30の横断面のために望まれるものに対応するジオメトリーを有する造形ゾーン29を含む。異形材30は次に、例えば鋸などの、任意の適切なカッティング手段によって引張装置16の下流で所望の長さにカットされてもよい。
【0180】
チャンネル20は、含浸ゾーンの下流に、そして温度コントロールゾーンの上流に、閉塞ガス状残留物もしくは空気の排除に充てられる、通気孔を提供されてもよい。
【0181】
さらに、前に記載されたような独特のチャンネル20の代わりに、射出−引き抜き成形設備10は、幾つかのチャンネル、特にいわゆる「ホット」チャンネル(その中で、強化布14は加熱され、射出された融解ポリマーを含浸する)、およびいわゆる「コールド」チャンネル、あるいはカレンダリング系列(そこで、このようにして含浸した強化布は造形される)を含んでもよい。2つチャンネルの間に、温度コントロールゾーンを特徴づけるスペースが提供されてもよく、異形材を造形するために必要とされる温度プロフィールを得ることを可能にする。
【0182】
より正確に言えば、以下の実施例において、異形材の製造方法は、
− 300℃(SAT)で温度調整される、長さ2m50の予熱オーブン、
− 調整された引張装置(PULTREX)、
− Leistritz 18D二軸スクリュー押出機、および
− 強化材の到着および再加熱のための100mmのゾーン、融解ポリマーの射出のポイントまでの310mmのゾーン、次に365mmの勾配付きゾーン、中間ゾーンおよび250mmの造形ゾーンから構成される、横断面50*4mmの異形材の獲得のために設計されたチャンネル
を含むPultrex射出−引き抜き成形設備10を用いて行われる。
【0183】
NB(注):複雑な横断面の異形材の製造の場合には、中間ゾーンはそのとき、平坦形状から最終ジオメトリーまでの変更のゾーンである。
【0184】
以下の実施例において、この方法は、強化布として、ガラス繊維の50mmの幅を有する坪量800g/m(平衡0/90)のテープ(対照:UDV 12.45 10/800/0〜50、ATG)を利用する。テープの7つの折重なりを、約50%の繊維の容積比を得るために利用し、テープを、0.7m.分−1の引張速度でプロセスの過程で連続的に引っ張る。
【0185】
押出機での射出条件は、80g/分(4.8kg/h)でチャンネルに供給するように調整する。
【0186】
造形段階での温度は、異形材において十分なコア温度(結晶化温度Tc、すなわち、ポリアミドPA66 220℃よりも高いT)を維持しながら、融点(ポリアミドPA66について:T<260℃)よりも低い、好ましくは結晶点よりも低い異形材の表面温度を有するように調整する。温度プロフィールは、異形材内への熱電対の導入によって特異的な試験中に検証した。
【0187】
実施例1:本発明により必要とされる温度勾配の影響
引き抜き成形による異形材の連続製造方法を、ポリアミドA、すなわちSOLVAYから入手可能なPA66を利用して上に記載されたデバイスを用いて行う。このポリアミドは、260℃の融点、220℃の結晶化温度、および10s−1の剪断速度で285℃の温度で20Pa.s未満の溶融粘度を有する。
【0188】
ホット入口ゾーンにおいて、テープを、含浸段階を行うための所望の温度、すなわち300℃にする。
【0189】
それを、布の完全含浸までその温度に維持する。
【0190】
含浸ゾーンにおいて、ポリアミドAを、290℃の温度で射出する。
【0191】
対照と言われる、第1試験において、含浸布は次に温度コントロールゾーンに入り、それから出てくる時にその表面温度は、利用されるポリアミドの結晶化温度(220℃)よりも高い温度に下がり、そのコア温度は、このポリアミドの融点(260℃)に近いより高い温度に留まっている。造形ゾーンにおいて、表面温度は、ポリアミドの結晶化温度よりも高く、コア温度は、より高い(融点に近い)。
【0192】
本発明による、第2試験において、含浸布は次に温度コントロールゾーンに入り、それから出てくる時にその表面温度は、利用されるポリアミドの結晶化温度未満の温度に調整され、そのコア温度は、約250℃、すなわち、このポリアミドの融点よりも低いが、結晶点よりも上に調整される。造形ゾーンにおいて、表面温度は、ポリアミドの結晶化温度未満であり、コア温度は、より高いまま(融点に近い)である。
【0193】
得られた異形材は、最初に計算された、そして高温か焼後の質量損失によって確認される50%の繊維の容積比を有する。
【0194】
異形材の膨潤比は、次式:
膨潤比(%単位)=(最終異形材の厚さとチャンネルの厚さとの差)/(チャンネルの厚さ)*100を用いて求める。
【0195】
【0196】
本発明による方法に従って得られる異形材、すなわち、それらの表面温度が利用されるポリアミドの結晶化温度未満であるような温度プロフィールで造形されるものは、0〜5%にある、低いもしくは無視できるさえの膨潤比を有することが分かる。
【0197】
逆に、造形段階が、利用されるポリアミドの結晶化温度よりも高い表面温度を有する(それ故コアにおいてより高い)含浸布に関して行われる場合、チャンネルの通過後のポリアミドでコーティングされた折重なりの緩和のために膨潤現象が観察される。
【0198】
この膨潤は、異形材の厚さの増加をもたらし、かなりの折重なり間空隙率(空洞)をさらに発生させ得る。
【0199】
実施例2:ポリアミドの粘度の影響
引き抜き成形による異形材の連続製造方法を、ポリアミドBかポリアミドCかのどちらか(両方とも、SOLVAYによって市場に出されているTechnyl(登録商標)PA66範囲に属する)を利用して上に記載されたデバイスを用いて行う。
【0200】
これらの2つのポリアミドは、同じ融点、すなわち、260℃、比較的同様の結晶化温度(約220℃)、および本発明に従ったまたは従わない、融解状態での異なる粘度を有する。
【0201】
調合されていない、対照と言われる、ポリアミドBは、60〜70Pa.sの溶融粘度を有し、本発明に従った、ポリアミドCは、15〜20Pa.sの溶融粘度を有する。
【0202】
これらの2つのポリアミドについて、粘度は、275℃の温度でおよび10s−1で測定した。
【0203】
ホット入口ゾーンにおいて、テープを、含浸段階を行うための所望の温度、すなわち290℃にする。
【0204】
それを、布の完全含浸までこの温度に維持する。
【0205】
含浸ゾーンにおいて、ポリアミドBまたはポリアミドCを、290℃の温度で射出する。
【0206】
含浸布は次に温度コントロールゾーンに入り、それから出てくる時にその表面温度は、220℃未満の温度に調整され、そのコア温度は、利用されるポリアミドの結晶化温度と溶融温度との中間の温度、典型的には250℃に調整される。
【0207】
得られた異形材は、最初に計算された、そして高温か焼後の質量損失によって確認される、50%の繊維の容積比を有する。
【0208】
間隙比(%単位)は、秤量(標準ASTM D2734−94)によって、場合により走査電子顕微鏡法(SEM)によって測定する。含浸比を次に、次の関係:含浸比(%単位)=100−間隙比(%単位)に従って計算する。
【0209】
【0210】
このように、0.7m/分の引張速度および50%の繊維の容積比について、含浸比は、50Pa.sよりも大きい粘度を有するポリアミドと比べて、本発明に従ったポリアミドではるかにより高い。
【0211】
実施例3:潤滑添加剤の添加の影響
引き抜き成形による異形材の連続製造方法を、実施例2のポリアミドCか、ポリアミドDかのどちらかを利用して上に記載されたデバイスを用いて行う。
【0212】
ポリアミドDは、98重量%のポリアミドCと、平均粒度6ミクロンの2重量%の黒鉛(Timcal SFG6)とを含む。
【0213】
それは、ポリアミドCと同じ溶融温度および結晶化温度を有する。それは、275℃の温度でおよび10s−1で20〜25Pa.sの溶融粘度を有する。
【0214】
ホット入口ゾーンにおいて、テープを、含浸段階を行うための所望の温度、すなわち290℃にする。それを、布の完全含浸までこの温度に維持する。
【0215】
含浸ゾーンにおいて、ポリアミドCまたはポリアミドDを290℃の温度で射出する。
【0216】
含浸布は次に温度コントロールゾーンに入り、それから出てくる時にその表面温度は、利用されるポリアミドの結晶化温度未満の温度に調整され、そのコア温度は、ポリアミドの融点に近い、より高い温度に、典型的には250℃に向けて調整される。
【0217】
引張力はかなり低下する:典型的には、それは、7〜10kNのレベルから3kN未満まで変化する。
【0218】
得られた異形材は、最初に計算された、そして、か焼後の質量損失の測定によって確認される50%の繊維の容積比を有する。
【0219】
この実施例は、潤滑剤と一緒のポリアミドの利用が、異形材製造方法の安定性を有利にも向上させることを可能にするという事実を強調する。
【0220】
実に、利用されるポリアミドがポリアミドDである場合、5kN未満の、一定の引張力で安定した方法で連続的に200m超の異形材を製造することが可能である。得られた異形材は、制御されたジオメトリーとともに、美しい外観を有する。
図1