特許第6738847号(P6738847)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6738847
(24)【登録日】2020年7月22日
(45)【発行日】2020年8月12日
(54)【発明の名称】車両用電源供給システム
(51)【国際特許分類】
   B60R 16/02 20060101AFI20200730BHJP
   B60R 16/03 20060101ALI20200730BHJP
   H02J 1/00 20060101ALI20200730BHJP
   H02J 7/14 20060101ALI20200730BHJP
【FI】
   B60R16/02 645A
   B60R16/03 A
   B60R16/02 650J
   H02J1/00 304E
   H02J1/00 304G
   H02J1/00 304H
   H02J7/14 A
【請求項の数】5
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2018-45874(P2018-45874)
(22)【出願日】2018年3月13日
(65)【公開番号】特開2019-156178(P2019-156178A)
(43)【公開日】2019年9月19日
【審査請求日】2019年5月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】戸田 隆文
【審査官】 菅 和幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−113101(JP,A)
【文献】 特開平06−070459(JP,A)
【文献】 特開平09−261887(JP,A)
【文献】 特開平05−064361(JP,A)
【文献】 特開平10−262330(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 16/02
B60R 16/03
H02J 1/00
H02J 7/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される第1の電源と、
前記第1の電源に接続され、前記車両の幅方向または前後方向の一側に配置された第1の電源線と、
前記車両に搭載される前記第1の電源とは別の第2の電源と、
前記第2の電源に接続され、前記車両の幅方向または前後方向の他側に配置された第2の電源線と、
一端が前記第1の電源線に接続され、他端が前記第2の電源線に接続された、唯一の第3の電源線と、
前記第3の電源線の短絡または開放を切り替えるパワー半導体と、
を備え、
前記第3の電源線が開放された場合、前記第1または前記第2の電源からの電気供給が遮断される
ことを特徴とする車両用電源供給システム。
【請求項2】
前記パワー半導体は、順方向パワーMOSFETと、逆方向パワーMOSFETと、によって構成され、
前記第3の電源線の一端側に、前記順方向パワーMOSFETおよび前記逆方向パワーMOSFETの一方が設けられ、
前記第3の電源線の他端側に、前記順方向パワーMOSFETおよび前記逆方向パワーMOSFETの他方が設けられる
ことを特徴とする請求項1に記載の車両用電源供給システム。
【請求項3】
前記第1の電源に電気接続され、前記順方向パワーMOSFETおよび前記逆方向パワーMOSFETの一方が設けられる第1の電気接続箱と、
前記第2の電源に電気接続され、前記順方向パワーMOSFETおよび前記逆方向パワーMOSFETの他方が設けられる第2の電気接続箱と、
をさらに備える
ことを特徴とする請求項2に記載の車両用電源供給システム。
【請求項4】
車両に搭載される複数の補機に対し電気を供給しており、
前記複数の補機のうち少なくとも一部は、前記第1および前記第2の電気接続箱の両方から電気供給可能に設けられる
ことを特徴とする請求項3に記載の車両用電源供給システム。
【請求項5】
検知された前記車両の故障個所、前記第1または前記第2の電源の破損状況、または前記第1または前記第2の電源線の破断状況に応じて、前記パワー半導体に対し前記第3の電源線の短絡または開放を切り替えるための指令値を生成する制御部をさらに有し、
前記パワー半導体は、前記制御部の前記指令値に従って前記第3の電源線の短絡または開放を切り替える
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の車両用電源供給システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車などの車両において複数の電源を有する車両用電源供給システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車などの車両では自動運転システムの搭載が様々に検討されている。例えば、車両の走行位置や走行状態、運転手の運転状況を検知してその状況に応じて運転者に警告することが検討されている。また、これだけではなく、運転者が直接運転せずとも車両が常時運転環境を検知して自律的に車両を運転制御することも検討されている。そして、このような自動運転システムを車両に搭載するには、その技術内容もさることながら、その技術を下支えする基盤技術についても同時に検討されなければならない。
【0003】
その基盤技術の1つとして挙げられるものは、車両用電源供給システムである。前述した自動運転システムは、モータなどの電動アクチュエータ、これらを制御するための多くの電子部品や電子機器によって実現される。そのため、自動運転システムが搭載される車両の安全性を常時確保するためには、電気を供給するための車両用電源供給システムの信頼性も強く求められる。
【0004】
自動運転システムに関する、従来の車両用電源供給システムとしては、オルタネータなどの発電機や鉛バッテリからなるメイン電源系の他に、リチウムイオンバッテリなどからなるサブ電源系を備えるものが知られる(例えば、特許文献1参照)。このメインおよびサブの電源系には各電源に対し電源線がそれぞれ接続され、互いに独立した電源系が構築される。また、メイン電源系にも、発電機および鉛バッテリの間でもそれぞれ互いに独立した電源系が構築される。
【0005】
また、サブの電源系には、自動運転システムに関する装置や補機、例えば電動パワーステアリングシステム、アンチロック・ブレーキ・システム、先進運動支援システムなどが優先的に接続されており、これら装置などにサブの電源系の電源(リチウムイオンバッテリ)から電気が供給される。これにより、自動運転システムに対する車両用電源供給システムの信頼性を維持することができるとされる。
【0006】
また、リチウムイオンバッテリは、基本的に電気自動車やハイブリッド車に搭載される走行用モータの電源として搭載されているものであるが、その走行用の電源の一部を自動運転システムの電源として使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2017−177857号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ここで、図5を参照して、自動運転システムに関する、本発明者が先行して発明した車両用電源供給システム(以下、先行発明とも言う。)5について説明する。図5は、先行発明の車両用電源供給システム5を説明する概略構成図である。
なお、図5に示す車両Vは、走行用モータの電源として後述するリチウムイオンバッテリ60が搭載される。このリチウムイオンバッテリ60の電源の一部が自動運転システムのバックアップの電源として使用される。
【0009】
また、図5では、車両Vを車両前後方向でエンジンコンパートメント、フロア、リアの領域で3つの区画で分割し、さらに各領域において車両幅(左右)方向で2分割して計6分割の区画を設定して、システムの配置構成を説明する。すなわち、区画は合計6区画で設定されており、区画A1はエンジコンパートメント左側区画、区画A2はエンジンコンパートメント右側区画、区画A3はフロア左側区画、区画A4はフロア右側区画、そして区画A5はリア左側区画、区画A6はリア右側区画を指し示すものとする。
【0010】
図5に示すように、先行発明の車両用電源供給システム5は、メインの電源系として、発電機であるオルタネータ(第1の電源)51と、蓄電池である鉛バッテリ(第2の電源)52と、車両Vに搭載される図示しない装置や補機それぞれに電気を配送したり他の電気接続箱に対し電気を中継したりする複数(本先行発明では6つ)の電気接続箱53,54,55,56,57,58と、を備える。先行発明ではオルタネータ51および鉛バッテリ52はともに区画A1に配置されており、互いに近接して配置される。
【0011】
さらに、先行発明の車両用電源供給システム5は、サブの電源系として、蓄電池であるリチウムイオンバッテリ(第3の電源)60と、リチウムイオンバッテリ60の電圧を変換するためのDC/DCコンバータ61と、このDC/DCコンバータ61で電圧変換された電気を受電する電気配電箱62と、をさらに有する。
なお、これら機器51,52,60,61および電気箱53,54,55,56,57,58,62などの間には電源線Wがそれぞれ配置されて電気接続される。
【0012】
メインの電源系の複数の電気接続箱53,54,55,56,57,58のうち、区画A1には第1の電気接続箱53、区画A2には第2の電気接続箱54、区画A3には第3の電気接続箱55、区画A4には第4の電気接続箱56、区画A5には第5の電気接続箱57、区画A6には第6の電気接続箱58がそれぞれ配置される。
【0013】
第1〜3の電気接続箱53,54,55は、リレー回路59を介してオルタネータ51および鉛バッテリ52からそれぞれ直接に受電可能なように配設される。また、第3の電気接続箱55は、第4および第5の電気接続箱56,57に対し電気を中継して配送する。さらに、第4の電気接続箱56は、第6の電気接続箱58に対し、第3の電気接続箱55から中継された電気をさらに同様に中継して配送する。このように、第1〜6の電気接続箱53,54,55,56,57,58は、直接または中継にてオルタネータ51および鉛バッテリ52からの2系統で受電可能にそれぞれ配設される。
【0014】
そして、サブの電源系の電気配電箱62は、これら第1〜第6の電気接続箱53,54,55,56,57,58に対しリチウムイオンバッテリ60からの電気を個別に配送する。すなわち、総合的に、第1〜第6の電気接続箱53,54,55,56,57,58は、メインの電源系で2系統、さらにはサブの電源系の1系統で、合計3(2+1)系統で電気が供給されることになる。
【0015】
ところで、図5に示されるような先行発明の車両用電源供給システム5では、メインの電源系において電源線Wは車両上で並行して配索されることが多い。これは、図5に示すように、第1の電源であるオルタネータ51および第2の電源である鉛バッテリ52の電源が車両において比較的近接して配置されており、また、電源線Wが、メインの電源系で用いられる複数の電気接続箱53,54,55,56,57,58を並行して連結するように配索されることによる。
【0016】
そのため、車両衝突などに伴って、車両で並行して配索される第1および第2の電源51,52やその電源線Wがともに破断または破損する可能性がある。このとき、前述のサブの電源系がなければ、車両の装置や補機などに電気が全く供給されず、自動運転システムも同時に機能しなくなる可能性がある。例えば、自動運転システムに関し車両安全に直接影響を与える装置や補機など、具体的には、電動パワーステアリング装置やアンチロック・ブレーキ・システムなどの駆動系装置に電気が供給されなくなった場合には、車両の安全性を著しく害してしまう可能性がある。
【0017】
そこで、本発明者らは、この同時破損に着目し鋭意検討を行った。その結果、本発明者らは、この第1および第2の電源51,52やその電源線Wの同時破損のリスクに備えて、本来、走行用であるリチウムイオンバッテリ60を、自動運転システムのためのサブの電源系として冗長的に組み込んだとも捉え得るという新たな知見を得た。すなわち、発明者らは、第1および第2の電源51,52における同時破損のリスクを低減することができれば、サブの電源系を不要にできる可能性を見出したのである。
【0018】
ただし、図5に示すようなサブの電源系を単に不要にするにしても、システムの信頼性を担保するためには、第1および第2の電源51,52やその電源線Wのうち一方が破損または破断したとしても、残存する他方の電源51,52から電気をバックアップ的に供給する手段についても同時に検討すべきである。すなわち、本発明者らは、2つの電源51,52やその電源線Wを互いに補完可能な構成とすることも同時に検討した。これにより、本発明者らは、残存する電力を有効活用してシステムの信頼性も維持できると目論んだ。
【0019】
また、前述したようにメイン電源系において第1および第2の電源51,52やその電源線Wは別個独立に構築されるので、各電源51,52において装置や機器それぞれに対し電源線Wが個別に配索され接続される。そのため、車両内に使用される電源線Wが必要上に長くなってしまう可能性があった。その結果、電線配索の複雑化や車両重量の増加を招いており、改善の余地があった。
【0020】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、車両が衝突されたとしても第1および第2の電源や電源線がともに破断または破損するリスクを低減させるとともにこれら電源系間で補完性を実現してシステムの電源冗長性を向上させることができ、また、使用する電線の削減やその配索の簡素化を図りシステムの軽量化やコスト削減を実現することができる車両用電源供給システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明の上記目的は、下記の構成により達成される。
(1) 車両に搭載される第1の電源と、
前記第1の電源に接続され、前記車両の幅方向または前後方向の一側に配置された第1の電源線と、
前記車両に搭載される前記第1の電源とは別の第2の電源と、
前記第2の電源に接続され、前記車両の幅方向または前後方向の他側に配置された第2の電源線と、
一端が前記第1の電源線に接続され、他端が前記第2の電源線に接続された、唯一の第3の電源線と、
前記第3の電源線の短絡または開放を切り替えるパワー半導体と、
を備え、
前記第3の電源線が開放された場合、前記第1または前記第2の電源からの電気供給が遮断される
ことを特徴とする車両用電源供給システム。
(2) 前記パワー半導体は、順方向パワーMOSFETと、逆方向パワーMOSFETと、によって構成され、
前記第3の電源線の一端側に、前記順方向パワーMOSFETおよび前記逆方向パワーMOSFETの一方が設けられ、
前記第3の電源線の他端側に、前記順方向パワーMOSFETおよび前記逆方向パワーMOSFETの他方が設けられる
ことを特徴とする(1)に記載の車両用電源供給システム。
(3) 前記第1の電源に電気接続され、前記順方向パワーMOSFETおよび前記逆方向パワーMOSFETの一方が設けられる第1の電気接続箱と、
前記第2の電源に電気接続され、前記順方向パワーMOSFETおよび前記逆方向パワーMOSFETの他方が設けられる第2の電気接続箱と、
をさらに備える
ことを特徴とする(2)に記載の車両用電源供給システム。
(4) 車両に搭載される複数の補機に対し電気を供給しており、
前記複数の補機のうち少なくとも一部は、前記第1および前記第2の電気接続箱の両方
から電気供給可能に設けられる
ことを特徴とする(3)に記載の車両用電源供給システム。
(5) 検知された前記車両の故障個所、前記第1または前記第2の電源の破損状況、または前記第1または前記第2の電源線の破断状況に応じて、前記パワー半導体に対し前記第3の電源線の短絡または開放を切り替えるための指令値を生成する制御部をさらに有し、
前記パワー半導体は、前記制御部の前記指令値に従って前記第3の電源線の短絡または開放を切り替える
ことを特徴とする(1)〜(4)のいずれか1つに記載の車両用電源供給システム。
【0022】
上記(1)の車両用電源システムの構成によれば、車両が衝突されたとしても第1および第2の電源や電源線がともに破断または破損するリスクを低減させるとともにこれら電源系間で補完性を実現してシステムの電源冗長性を向上させることができ、また、使用する電線の削減やその配索の簡素化を図りシステムの軽量化やコスト削減を実現することができる。
上記(2)の車両用電源供給システムの構成によれば、大容量の電気であっても、第3の電源線を通じて他方の電源から迅速に電気を供給することができる。
上記(3)の車両用電源システムの構成によれば、各電気接続箱を通じてこれに接続される複数の補機や装置などに他方の電源から分配して電気を供給することができる。
上記(4)の車両用電源システムの構成によれば、例えば、補機が自動運転システムに関連性の高いシステム、電動パワーステアリングシステム、アンチロック・ブレーキ・システム、先進運動支援システムなどであった場合には、一方の電源からの電気供給が不能になっても他方の電源からそのまま電気が供給される。これにより、どのような破損や破断状況であっても自動運転システムが停止してしまうのを可能な限り回避することができる。
上記(5)の車両用電源システムの構成によれば、制御部が故障個所や破損または破断状況に応じてパワー半導体の短絡または開放を適切に切り替えるので、パワー半導体が不要に切り替わるのを抑制することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の車両用電源供給システムによれば、車両が衝突されたとしても第1および第2の電源やその電源線がともに破断または破損するリスクを低減させるとともにこれら電源系間で補完性を実現してシステムの電源冗長性を向上させることができる。また、使用する電線の削減やその配索の簡素化を図りシステムの軽量化やコスト削減を実現することができる。
【0024】
以上、本発明について簡潔に説明した。さらに、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細はさらに明確化されるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1図1は、本発明の実施形態に係る車両用電源供給システムを説明する概略構成図である。
図2図2は、図1に示す制御部の動作を説明するフローチャート図である。
図3図3は、図1に示す区画A1で電源線の破断が発生した様子を説明する模式図である。
図4図4は、図1に示す区画A2で電源線の破断が発生した様子を説明する模式図である。
図5図5は、先行発明の車両用電源供給システムを説明する概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の車両用電源供給システムに関する具体的な実施形態について、各図を参照しながら以下に説明する。
【0027】
<車両用電源供給システムの構成について>
図1を参照して、本実施形態の車両用電源供給システム1の構成について説明する。図1は、本実施形態に係る車両用電源供給システム1を説明する概略構成図である。
なお、図1では、車両Vを車両前後方向でエンジンコンパートメント、フロア、リアの領域で3つの区画で分割し、さらに各領域において車両幅(左右)方向で2分割して計6分割の区画を設定して、システムの配置構成を説明する。すなわち、区画は合計6区画で設定されており、区画A1はエンジコンパートメント左側区画、区画A2はエンジンコンパートメント右側区画、区画A3はフロア左側区画、区画A4はフロア右側区画、そして区画A5はリア左側区画、区画A6はリア右側区画を指し示すものとする。
また、図1では、後述する順方向及び逆方向のパワーMOSFET15,25を模式的に表現して示しているが、後述する電子制御ユニット17,27からそれぞれオンオフ制御可能なように、これらパワーMOSFET15,25それぞれには所定の電圧を印加するための電気回路(不図示)も設けられる。
【0028】
図1に示すように、本実施形態の車両用電源供給システム1は、自動車などの車両V内に搭載されており、第1の電源系10と第2の電源系20の2系統により構成され、後述する補機D1,D2などに電力を供給する。第1および第2の電源系10,20は、互いに並行して車両の前後方向に沿って配置される。具体的には、第1の電源系10は、車両の左側、すなわち区画A1,A3,A5に配置される。第2の電源系20は、車両の右側、すなわち区画A2,A4,A6に配置される。
【0029】
なお、補機のうち符合「D1」で指し示すものは、第1および第2の電源系10,20のいずれか一方からのみ電気供給されるものを意味する。補機D1には、走行システムに関する機器、例えばライト、メータ、エアコン、アラームなどが該当する。その一方で、符合「D2」で指し示すものは、第1および第2の電源系10,20の両方からも電気供給可能なものを意味する。補機D2には、駆動システムに関する補機、例えば自動運転システムに関連性の高いシステム、電動パワーステアリングシステム、アンチロック・ブレーキ・システム、先進運動支援システムなどを構成する装置や機器などが該当する。
【0030】
第1の電源系10は、オルタネータ(第1の電源)11と、リレー回路12と、第1、第2および第3の電気接続箱13,14,19と、オルタネータ11と第1および第2の電気接続箱13,14とをそれぞれ電気接続する第1および第2の電源線{第1の電源系(第1)の電源線}W11,W12と、第2および第3の電気接続箱14,19とを電気接続する第3の電源線{第1の電源系(第1)の電源線}W13と、を含んで構成される。
【0031】
第1の電源系10のオルタネータ11は、区画A1内に配置されており、図示しないエンジンにより回動駆動されて発電し電気を供給する。また、オルタネータ11は、図示しないDC/DCコンバータが内装または外装され電気接続される。オルタネータ11の電気は、DC/DCコンバータにより所望の電圧値に変換されて車両内に供給される。
なお、オルタネータ11は、主電源として用いられ、第2の電源系20にも電気供給する。
【0032】
第1の電源系10の第1の電気接続箱13は、区画A1に配置され、リレー回路12および第1の電源線W11を介してオルタネータ11に接続され、オルタネータ11から直接的に電気供給される。また、第1の電気接続箱13には補機D1が接続され、第1の電気接続箱13は補機D1に電気を供給する。
【0033】
第1の電源系10の第2の電気接続箱14は、区画A3に配置され、リレー回路12および第2の電源線W12を介してオルタネータ11に接続され、オルタネータ11から直接的に電気供給される。また、第2の電気接続箱14には補機D1および補機D2が接続され、第2の電気接続箱14は補機D1および補機D2の両方に電気を供給する。
なお、当該補機D2は、後述する第2の電源系20の第2の電気接続箱24にも電気接続され、第2の電源系20からも電気供給可能に設けられる。
【0034】
また、当該第2の電気接続箱14は、パワー半導体の一部を構成する順方向パワーMOSFET15と、電源制御装置(制御部)16と、電子制御ユニット(制御部)17と、リレー回路18と、を有する。
なお、リレー回路18は、当該第2の電気接続箱14に内装されており、第3の電源線W13の一端側(図1中、上端側)に接続される。また、電源制御装置16は、受電する電気を各装置や補機D1,D2などに対し所定量で分配供給するための制御装置である。
【0035】
順方向パワーMOSFET15は、ダイオード素子を含み、大容量の電力にも対応可能であり、またスイッチング速度も速いものである。また、後述する第2の電源系20の逆方向パワーMOSFET25と合わせて、電気の短絡または開放を行う1つの電気スイッチとして機能する。すなわち、順方向パワーMOSFET15および逆方向パワーMOSFET25を用いて、両方をオフにすれば開放して第1の電源系10と第2の電源系20の間で電気が遮断され、他方両方をオンにすれば短絡して第1の電源系10と第2の電源系20の間で電気を通電させることが可能となる。
【0036】
電子制御ユニット17には、車両内に搭載される図示しないセンサからの各種検知信号が入力される。当該センサの一部には、オルタネータ11や後述する鉛バッテリ21などの破損状況、電源線W11,W12,W13,W21,W22,W23の破断状況、これら故障箇所などを監視するものが含まれる。電子制御ユニット17は、センサが検知する電源11,21の破損状況、電源線W11,W12,W13,W21,W22,W23の破断状況または故障個所に応じてパワー半導体(順方向パワーMOSFET15、逆方向パワーMOSFET25)に対し短絡または開放させるか否かの指令値を生成する。
なお、この指令値の生成機能が実装される装置は、センサの検知信号に応じて判定可能な演算装置であれば電子制御ユニット17に限定されない。例えば、電源制御装置16に設けても良く、または後述する第2の電源系20の電子制御ユニット27に一元的に設けたり、あるいはその他マイコンを新設したりして実現してもよい。
【0037】
第1の電源系10の第3の電気接続箱19は、区画A5に配置され、第3の電源線W13を介して第2の電気接続箱14に接続される。そして、当該第3の電気接続箱19は、第2の電気接続箱14によって電気が中継され、オルタネータ11から電気供給される。また、第3の電気接続箱19には補機D1および補機D2が接続され、第3の電気接続箱19は補機D1および補機D2の両方に電気を供給する。
なお、当該補機D2は、同様に、後述する第2の電源系20の第3の電気接続箱29にも電気接続され、第2の電源系20からも電気供給可能に設けられる。
【0038】
このように第1の電源系10では、第1〜第3の電源線W11,W12,W13が設けられており、オルタネータ11に接続され、車両Vの幅方向で左側、すなわち区画A1,A3,A5に配置される。そして、第1〜第3の電源線W11,W12,W13は、オルタネータ11からの電気を第1〜第3の電気接続箱13,14,19それぞれに伝送する。
【0039】
次に第2の電源系20について説明する。
第2の電源系20は、第1の電源系10と同様に、鉛バッテリ(第2の電源)21と、リレー回路22と、第1、第2および第3の電気接続箱23,24,29と、鉛バッテリ21と第1および第2の電気接続箱23,24とをそれぞれ電気接続する第1および第2の電源線{第2の電源系(第2)の電源線}W21,W22と、第2および第3の電気接続箱24、29とを電気接続する第3の電源線{第2の電源系(第2)の電源線}W23と、を含んで構成される。
【0040】
鉛バッテリ21は、区画A2内に配置されており、接地して設けられる。また、鉛バッテリ21は、バッテリ容量が低下しないように、オルタネータ11などの発電機により充電される。
なお、本実施形態では、第2の電源として鉛バッテリ21を用いるが、これに限定されない。電源の機能を有するものであれば、発電機や、リチウムイオンバッテリなどの蓄電池などを適宜用いることが可能である。また、鉛バッテリ21は通常では電気供給しないが、異常発生時には電気供給可能なように切り替えられる。
【0041】
第2の電源系20の第1の電気接続箱23は、区画A2に配置され、リレー回路22および第1の電源線W21を介して鉛バッテリ21に接続され、鉛バッテリ21から直接的に電気供給される。また、第1の電源系10の第1の電気接続箱13と同様に、当該第1の電気接続箱23には補機D1が接続される。
【0042】
第2の電源系20の第2の電気接続箱24は、区画A4に配置され、リレー回路22および第2の電源線W22を介して鉛バッテリ21に接続され、鉛バッテリ21から直接的に電気供給される。また、当該第2の電気接続箱24には補機D1および補機D2の両方が接続される。
【0043】
また、当該第2の電気接続箱24は、第1の電源系10と同様に、パワー半導体の一部を構成する逆方向パワーMOSFET25と、電源制御装置(制御部)26と、電子制御ユニット(制御部)27と、リレー回路28と、を有する。
なお、当該電源制御装置26、電子制御ユニット27およびリレー回路28は、第1の電源系10のものと同様な機能を有する。
【0044】
逆方向パワーMOSFET25は、前述したように、第1の電源系10の順方向パワーMOSFET15と合わせて電気スイッチとして機能し、第1または第2の電源系10,20の電子制御ユニット17,27の指令値に従って後述する連絡電源線(第3の電源線)W3全体の短絡または開放を切り替えることが可能である。
なお、初期の状態、すなわち電子制御ユニット17,27が電源11,21の破損などを検知していない正常の状態では、パワー半導体(順方向パワーMOSFET15、逆方向パワーMOSFET25)は何れもオン(ON)に設定されており短絡している。また、この初期の状態では、主にオルタネータ11で発電された電気が第1および第2の電源系10,20の両方に供給され、オルタネータ11による供給によって賄えない場合に鉛バッテリ21から電気供給される。
【0045】
また、これらパワーMOSFET15,25の間には、連絡電源線W3が配設される。換言すれば、連絡電源線W3は、電気回路的にはその一端で第1の電源系10の電源線W11,W12,W13に接続され、その他端で第2の電源系20の電源線W21,W22,W23に接続される。そして、順方向パワーMOSFET15と逆方向パワーMOSFET25とによって構成されるパワー半導体が、電気スイッチ回路として連絡電源線W3の間に介挿して設けられ、その電源線W3の短絡または開放を切り替える。
【0046】
第2の電源系20の第3の電気接続箱29は、区画A6に配置され、第3の電源線W23を介して第2の電気接続箱24に接続される。そして、当該第3の電気接続箱29は、第2の電気接続箱24によって電気が中継され、鉛バッテリ21から電気供給される。また、第2の電気接続箱29には補機D1および補機D2が接続される。
【0047】
<車両用電源供給システムの動作について>
次に図2を参照して、本実施形態の車両用電源供給システム1の動作について説明する。図2は、図1に示す電子制御ユニット(制御部)17,27の動作を説明するフローチャート図である。
【0048】
図2に示すように、ステップS1では、電子制御ユニット17,27は、車内に搭載されるセンサや他の制御装置または補機D1,D2などからの検知信号を受信する。そして、電子制御ユニット17,27は、この検知信号のうち電源11,21の破損、または電源線W11,W12,W13,W21,W22,W23の破断、そして故障個所などの検知信号が受信された否かを判定する。電子制御ユニット17,27は、この判定の結果、故障の検知信号を受信した(YES)と判定すれば、ステップS2に進む。その一方で、電子制御ユニット17,27は、故障の検知信号を受信しない(NO)と判定すれば、最初のステップ(START)に戻る。
【0049】
ステップS2では、電子制御ユニット17,27は、故障の検知信号に基づいて、順方向パワーMOSFET15および逆方向パワーMOSFET25オフにして開放に切り替えるか否かを判定する。この判定の結果、電子制御ユニット17,27は、切り替えるべき(YES)と判定すれば、ステップS3に進む。その一方で、電子制御ユニット17,27は、切り替える必要がない(NO)と判定すれば、最初のステップ(START)に戻る。
【0050】
ステップS3では、電子制御ユニット17,27は、順方向パワーMOSFET15および逆方向パワーMOSFET25に対し連絡電源線W3を開放するための指示値を生成する。そして、当該指令値に従って、順方向パワーMOSFET15および逆方向パワーMOSFET25はオフにされ開放される。その結果、第1の電源系10と第2の電源系20の間で電気が遮断される。
【0051】
このように、一方の電源11,21または電源線W11,W12,W13,W21,W22,W23が破損したり破断したりして機能しなくなった場合、ステップS1〜S3までの一連のステップが実行されることで、順方向パワーMOSFET15および逆方向パワーMOSFET25が開放に切り替えられて、第1の電源系10と第2の電源系20の間で電気が遮断される。この場合であっても、駆動システムに関する補機、例えば自動運転システムに関連性の高いシステム、電動パワーステアリングシステム、アンチロック・ブレーキ・システム、先進運動支援システムなどを構成する装置や機器などの補機D2には、一方の電源11,21からの電気供給が不能になっても他方の電源11,21から電気が供給される。これにより、どのような破損や破断状況であっても自動運転システムが停止してしまうのを可能な限り回避することができる。
【0052】
<パワー半導体による電気の補完の状況について>
さらに図3および図4を参照して、一方の電源系10,20の電源線W11,W12,W13,W21,W22,W23が破断した場合、どのように電気が供給されるかについて説明する。図3は、図1に示す区画A1で電源線W11,W12の破断が発生した様子を説明する模式図である。図4は、図1に示す区画A2で電源線W21,W22の破断が発生した様子を説明する模式図である。
【0053】
図3に示すように、本ケースでは第1の電源系10の第1および第2の電源線W11,W12で破断が発生している。この場合には、オルタネータ11からの電気が供給されず、そのままの状態では第1の電源系10に電気接続される補機D1,D2が停止してしまう可能性がある。また、これら電源線W11,W12の破損に伴って異常電流が発生する可能性がある。
【0054】
そこで、電子制御ユニット17,27は、センサによって検知されたこの電源線W11,W12の破断の状況に応じて、順方向パワーMOSFET15および逆方向パワーMOSFET25を開放に切り替えるための指令値(オフ)を生成する。そして、当該指令値に従って、順方向パワーMOSFET15および逆方向パワーMOSFET25がオフにされ、連絡電源線W3が開放状態に切り替えられる。
【0055】
これにより、第1の電源系10においてオルタネータ11からの電源供給が不能になっても、第2の電源系20には鉛バッテリ21からの電源供給が維持される。言い換えれば、駆動システムに関する補機、例えば自動運転システムに関連性の高いシステム、電動パワーステアリングシステム、アンチロック・ブレーキ・システム、先進運動支援システムなどを構成する装置や機器などの補機D2には、電源11からの電気供給が不能になっても電源21から電気が供給される。これにより、どのような破損や破断状況であっても自動運転システムが停止してしまうのを可能な限り回避することができる。
【0056】
次に図3とは別のケースについて説明する。
図4に示すように、本ケースでは、第2の電源系20の第1および第2の電源線W21,W22で破断が発生している。この場合には、電源線W21,W22の破損に伴って異常電流が発生する可能性がある。
【0057】
そこで、電子制御ユニット17,27は、センサによって検知されたこの電源線W21,W22の破断の状況に応じて、順方向パワーMOSFET15および逆方向パワーMOSFET25を開放に切り替えるための指令値(オフ)を生成する。そして、当該指令値に従って、順方向パワーMOSFET15および逆方向パワーMOSFETがオフにされ、連絡電源線W3が開放状態に切り替えられる。
【0058】
これにより、第2の電源系20において鉛バッテリ21からの電源供給が不能になっても、第1の電源系10にはオルタネータ11からの電源供給が維持される。言い換えれば、駆動システムに関する補機、例えば自動運転システムに関連性の高いシステム、電動パワーステアリングシステム、アンチロック・ブレーキ・システム、先進運動支援システムなどを構成する装置や機器などの補機D2には、電源21からの電気供給が不能になっても電源11から電気が継続して供給される。これにより、どのような破損や破断状況であっても自動運転システムが停止してしまうのを可能な限り回避することができる。
【0059】
<本実施形態の車両用電源供給システムの利点について>
本実施形態の車両用電源供給システム1によれば、車両Vに搭載されるオルタネータ(第1の電源)11と、オルタネータ11に接続され、車両Vの区画A1,A3,A5(幅方向または前後方向の一側)に配置された第1の電源系10の電源線W11,W12,W13(第1の電源線)と、車両Vに搭載される鉛バッテリ(第1の電源とは別の第2の電源)21と、鉛バッテリ21に接続され、車両VのA2,A4,A6(幅方向または前後方向の他側)に配置された第2の電源系20の電源線W21,W22,W23(第2の電源線)と、一端が第1の電源系10の電源線W11,W12,W13に接続され、他端が第2の電源系20の電源線W21,W22,W23に接続された連絡電源線(第3の電源線)W3と、連絡電源線W3の短絡または開放を切り替えるパワー半導体(順方向パワーMOSFET15、逆方向パワーMOSFET25)と、を備える。このため、車両Vが衝突されたとしてもオルタネータ11および鉛バッテリ21、またはその電源線W11,W12,W13,W21,W22,W23がともに破断または破損するリスクを低減させるとともにこれら電源系10,20間で補完性を実現してシステムの電源冗長性を向上させることができる。また、使用する電線の削減やその配索の簡素化を図りシステムの軽量化やコスト削減を実現することができる。
【0060】
特に、本実施形態の車両用電源供給システム1によれば、第1および第2の電源系10,20の電源線(第1および第2の電源線)W11,W12,W13,W21,W22,W23は車両Vの幅方向に離間して配置される。このため、車両Vが前後左右いずれの箇所で衝突したとしても、オルタネータ11、鉛バッテリ21、またはその電源線W11,W12,W13,W21,W22,W23が全部同時に破断したり破損したりすることを防ぐことができる。この結果、駆動システムに関する補機、例えば自動運転システムに関連性の高いシステム、電動パワーステアリングシステム、アンチロック・ブレーキ・システム、先進運動支援システムなどを構成する装置や機器などの補機D2には、電源11、21の一方からの電気供給が不能になっても電源11、21の他方から電気が供給される。これにより、どのような破損や破断状況であっても自動運転システムが停止してしまうのを可能な限り回避することができる。こうして、駆動システムに関する補機へ電気が供給されず全機能が停止するリスクを低減することができる。
【0061】
また、本実施形態の車両用電源供給システム1によれば、パワー半導体は、順方向パワーMOSFET15と、逆方向パワーMOSFET25と、によって構成され、連絡電源線(第3の電源線)W3の一端側に、順方向パワーMOSFET15および逆方向パワーMOSFET25の一方が設けられ、連絡電源線W3の他端側に、順方向パワーMOSFET15および逆方向パワーMOSFET25の他方が設けられる。このため、大容量の電気が連絡電源線W3に供給される場合であっても、連絡電源線W3への電気供給の切り替えを行うことができる。
【0062】
また、本実施形態の車両用電源供給システム1によれば、オルタネータ(第1の電源)11に電気接続され、順方向パワーMOSFET15および逆方向パワーMOSFET25の一方が設けられる第1の電源系10の第2の電気接続箱(第1の電気接続箱)14と、鉛バッテリ(第2の電源)21に電気接続され、順方向パワーMOSFET15および逆方向パワーMOSFET25の他方が設けられる第2の電源系20の第2の電気接続箱(第2の電気接続箱)24と、をさらに備える。このため、各電気接続箱14,24を通じてこれに接続される複数の補機D1,D2や装置などに他方の電源から分配して電気を供給することができる。
【0063】
また、本実施形態の車両用電源供給システム1によれば、車両Vに搭載される複数の補機D1,D2に対し電気を供給しており、複数の補機D1,D2のうち少なくとも一部の補機D2は、第1および第2の電源系10,20の電気接続箱(第1および第2の電気接続箱)13,14,19,23,24,29の両方から電気供給可能に設けられる。このため、例えば、補機D2が自動運転システムに関連性の高いシステム、電動パワーステアリングシステム、アンチロック・ブレーキ・システム、先進運動支援システムなどであった場合には、一方の電源11,21からの電気供給が不能になっても他方の電源11,21からそのまま電気が供給される。これにより、どのような破損や破断状況であっても自動運転システムが停止してしまうのを可能な限り回避することができる。
【0064】
また、本実施形態の車両用電源供給システム1によれば、検知された車両Vの故障個所、オルタネータ11または鉛バッテリ21(第1または第2の電源)の破損状況、または第1または第2の電源系10,20の電源線(第1または第2の電源線)W11,W12,W13,W21,W22,W23の破断状況に応じて、パワー半導体(順方向パワーMOSFET15、逆方向パワーMOSFET25)に対し連絡電源線(第3の電源線)W3の短絡または開放を切り替えるための指示値を生成する電子制御ユニット(制御部)17,27をさらに有し、パワー半導体は、電子制御ユニット17,27の指令値に従って連絡電源線W3の短絡または開放を切り替える。このため、電子制御ユニット17,27が故障個所や破損または破断状況に応じてパワー半導体の短絡または開放を適切に切り替えるので、パワー半導体が不要に切り替わるのを抑制することができる。
【0065】
すなわち、このような構成により、車両衝突に伴って一方の電源11,21またはその電源線W11,W12,W13,W21,W22,W23が機能しなくなっても、残存する他方の電源11,21および電源線W11,W12,W13,W21,W22,W23によってシステム全体として機能を継続させることができる。すなわち、電源系10,20間で補完性を実現してシステムの電源冗長性を向上させることができる。また、車両Vに搭載される電気接続箱13,14,19全部に各電源11,21から電源線をそれぞれ直接に延ばして電気接続する必要がなくなるので、電源線の一部を省略し、またその配索を簡素化して、システムの軽量化およびコスト削減を図ることができる。
【0066】
以上で具体的実施形態の説明を終えるが、本発明の態様はこれら実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良などが可能である。
【0067】
ここで、上述した本発明に係る車両用電源供給システムの実施形態の特徴をそれぞれ以下[1]〜[5]に簡潔に纏めて列記する。
[1]車両(V)に搭載される第1の電源(オルタネータ、11)と、
前記第1の電源(オルタネータ、11)に接続され、前記車両(V)の幅方向または前後方向の一側に配置された第1の電源線(第1の電源系10の電源線、W11,W12,W13)と、
前記車両(V)に搭載される前記第1の電源(オルタネータ、11)とは別の第2の電源(鉛バッテリ、21)と、
前記第2の電源(鉛バッテリ、21)に接続され、前記車両(V)の幅方向または前後方向の他側に配置された第2の電源線(第2の電源系20の電源線、W21,W22,W23)と
一端が前記第1の電源線(第1の電源系10の電源線、W11,W12,W13)に接続され、他端が前記第2の電源線(第2の電源系20の電源線、W21,W22,W23)に接続された第3の電源線(連絡電源線、W3)と、
前記第3の電源線(連絡電源線、W3)の短絡または開放を切り替えるパワー半導体(順方向パワーMOSFET15、逆方向パワーMOSFET25)と、
を備える
ことを特徴とする車両用電源供給システム(1)。
[2]前記パワー半導体(順方向パワーMOSFET15、逆方向パワーMOSFET25)は、順方向パワーMOSFET(15)と、逆方向パワーMOSFET(25)と、によって構成され、
前記第3の電源線(連絡電源線、W3)の一端側に、前記順方向パワーMOSFET(15)および前記逆方向パワーMOSFET(25)の一方が設けられ、
前記第3の電源線(連絡電源線、W3)の他端側に、前記順方向パワーMOSFET(15)および前記逆方向パワーMOSFET(25)の他方が設けられる
ことを特徴とする[1]に記載の車両用電源供給システム(1)。
[3]前記第1の電源(オルタネータ、11)に電気接続され、前記順方向パワーMOSFET(15)および前記逆方向パワーMOSFET(25)の一方が設けられる第1の電気接続箱(第1の電源系10の第2の電気接続箱、14)と、
前記第2の電源(鉛バッテリ、21)に電気接続され、前記順方向パワーMOSFET(15)および前記逆方向パワーMOSFET(25)の他方が設けられる第2の電気接続箱(第2の電源系20の第2の電気接続箱、24)と、
をさらに備える
ことを特徴とする[2]に記載の車両用電源供給システム(1)。
[4]車両(V)に搭載される複数の補機(D1,D2)に対し電気を供給しており、
前記複数の補機(D1,D2)のうち少なくとも一部(D2)は、前記第1および前記第2の電気接続箱(第1の電源系10の第2の電気接続箱、14:第2の電源系20の第2の電気接続箱、24)の両方から電気供給可能に設けられる
ことを特徴とする[3]に記載の車両用電源供給システム(1)。
[5]検知された前記車両(V)の故障個所、前記第1または前記第2の電源(オルタネータ、11:鉛バッテリ、21)の破損状況、または前記第1または前記第2の電源線(第1の電源系10の電源線、W11,W12,W13:第2の電源系20の電源線、W21,W22,W23)の破断状況に応じて、前記パワー半導体(順方向パワーMOSFET15、逆方向パワーMOSFET25)に対し前記第3の電源線(連絡電源線、W3)の短絡または開放を切り替えるための指令値を生成する制御部(電子制御ユニット、17,27)をさらに有し、
前記パワー半導体(順方向パワーMOSFET15、逆方向パワーMOSFET25)は、前記制御部(電子制御ユニット、17,27)の前記指令値に従って前記第3の電源線(連絡電源線、W3)の短絡または開放を切り替える
ことを特徴とする[1]〜[4]のいずれか1つに記載の車両用電源供給システム(1)。
【符号の説明】
【0068】
1 車両用電源供給システム
10 第1の電源系
11 オルタネータ(第1の電源)
12 リレー回路
13 第1の電気接続箱
14 第2の電気接続箱(第1の電気接続箱)
15 順方向パワーMOSFET
16 電源制御装置
17 電子制御ユニット(制御部)
18 リレー回路
19 第3の電気接続箱
20 第2の電源系
21 鉛バッテリ(第2の電源)
22 リレー回路
23 第1の電気接続箱
24 第2の電気接続箱(第2の電気接続箱)
25 逆方向パワーMOSFET
26 電源制御装置
27 電子制御ユニット(制御部)
28 リレー回路
29 第3の電気接続箱
5 車両用電源供給システム
51 オルタネータ
52 鉛バッテリ
53 第1の電気接続箱
54 第2の電気接続箱
55 第3の電気接続箱
56 第4の電気接続箱
57 第5の電気接続箱
58 第6の電気接続箱
59 リレー回路
60 リチウムイオンバッテリ
61 DC/DCコンバータ
62 電気配電箱
V 車両
A1 区画(エンジコンパートメント左側区画)
A2 区画(エンジンコンパートメント右側区画)
A3 区画(フロア左側区画)
A4 区画(フロア右側区画)
A5 区画(リア左側区画)
A6 区画(リア右側区画)
W 電源線
W11 第1の電源線(第1の電源線)
W12 第2の電源線(第1の電源線)
W13 第3の電源線(第1の電源線)
W21 第1の電源線(第2の電源線)
W22 第2の電源線(第2の電源線)
W23 第3の電源線(第2の電源線)
W3 連絡電源線(第3の電源線)
D1 補機
D2 補機
図1
図2
図3
図4
図5