特許第6738961号(P6738961)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6738961タービンケーシング用の保温装置、タービンケーシング用の保温ブロックの固定器具、およびタービンケーシング用の保温ブロックの固定方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6738961
(24)【登録日】2020年7月22日
(45)【発行日】2020年8月12日
(54)【発明の名称】タービンケーシング用の保温装置、タービンケーシング用の保温ブロックの固定器具、およびタービンケーシング用の保温ブロックの固定方法
(51)【国際特許分類】
   F01D 25/24 20060101AFI20200730BHJP
   F02C 7/00 20060101ALI20200730BHJP
   F02C 7/24 20060101ALI20200730BHJP
【FI】
   F01D25/24 K
   F02C7/00 E
   F02C7/24 A
【請求項の数】11
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2019-517717(P2019-517717)
(86)(22)【出願日】2018年5月11日
(86)【国際出願番号】JP2018018327
(87)【国際公開番号】WO2018207913
(87)【国際公開日】20181115
【審査請求日】2019年10月7日
(31)【優先権主張番号】特願2017-94451(P2017-94451)
(32)【優先日】2017年5月11日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】514030104
【氏名又は名称】三菱日立パワーシステムズ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】517162552
【氏名又は名称】株式会社Thermal Power Plant Engineering
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】阿部 飛太
(72)【発明者】
【氏名】黒川 祐二
(72)【発明者】
【氏名】和泉 卓也
(72)【発明者】
【氏名】中尾 猛
(72)【発明者】
【氏名】井手 啓介
(72)【発明者】
【氏名】古賀 理
【審査官】 高吉 統久
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭61−175694(JP,U)
【文献】 特開昭60−182306(JP,A)
【文献】 特開平10−325500(JP,A)
【文献】 特開昭53−085811(JP,A)
【文献】 実開昭62−100497(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01D 25/10
F01D 25/24
F01D 25/28
F02C 7/00
F02C 7/24
F16B 5/00
F23M 5/00
F27D 1/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タービンケーシング本体の表面に設置される保温ブロックと、
前記保温ブロックの厚み方向に貫通可能な固定棒と、
前記タービンケーシング本体の表面に固定されるソケットと、
を備え、
前記保温ブロックは、所定の位置に挿通孔が形成された袋体と、前記袋体内に充填された無機繊維と、を有し、
前記固定棒は、前記挿通孔から前記保温ブロックに入れられ、前記保温ブロックを厚み方向に貫通する棒状の本体部と、前記本体部の第一端に形成され、棒状の前記本体部に対する径方向外側に突出した一対の突起を含む係合部と、を有し、
前記ソケットは、ソケット軸線を中心として、中空円筒状を成し、ソケット軸線が延びる軸線方向の第1側の端が開放端を成し、
前記ソケットは、前記ソケットの内周面から外周側に凹み、前記突起が入れるように形成された第1の案内溝と、第2の案内溝と、凹設溝を有し、
前記第1の案内溝は、前記開放端中の第1の始端と、第1の終端とを有し、前記第1の始端から前記第1の終端まで軸線方向に延び、
前記第2の案内溝は、前記第1の終端につながる第2の始端と、第2の終端とを有し、前記第2の始端から前記第2の終端まで前記ソケット軸線に対する周方向に延び、
前記凹設溝は、前記第2の終端につながり、前記第2の終端から前記軸線方向に延びる、
タービンケーシング用の保温装置。
【請求項2】
前記凹設溝は、前記第2の終端から前記軸線方向における前記ソケットの開放端側に延びている、
請求項1に記載のタービンケーシング用の保温装置。
【請求項3】
前記凹設溝は、前記第2の終端から前記軸線方向における前記開放端側とは反対側の前記タービンケーシング本体側に延びている、
請求項1に記載のタービンケーシング用の保温装置。
【請求項4】
前記固定棒の前記本体部には、雄ネジが形成され、
前記固定棒は、前記本体部に挿通可能であり、前記保温ブロックを前記タービンケーシング本体側に押圧するフランジと、前記フランジを前記本体部の所定の位置で固定するために前記本体部に捩じ込まれているナットと、を有する、
請求項1から請求項3の何れか一項に記載のタービンケーシング用の保温装置。
【請求項5】
前記保温ブロックは、前記タービンケーシング本体の表面を被覆する第1の保温ブロックと、前記第1の保温ブロックの厚み方向に板状の補強部材を介して積層された第2の保温ブロックと、を有し、
前記第1の保温ブロックは、所定の位置に挿通孔が形成された第1の袋体と、前記第1の袋体内に充填された無機繊維と、を有し、
前記第2の保温ブロックは、所定の位置に挿通孔が形成された第2の袋体と、前記第2の袋体内に充填された無機繊維と、を有する、
請求項1から請求項4の何れか一項に記載のタービンケーシング用の保温装置。
【請求項6】
前記第1の袋体内には、前記無機繊維として生体溶解性繊維が充填され、
前記第2の袋体内には、前記無機繊維としてロックウールが充填されている、
請求項5に記載のタービンケーシング用の保温装置。
【請求項7】
前記補強部材は、エキスパンドメタル、またはパンチングメタルである、
請求項5または請求項6に記載のタービンケーシング用の保温装置。
【請求項8】
固定棒と、
ソケット軸線を中心として、中空円筒状を成し、ソケット軸線が延びる軸線方向の第1側の端が開放端を成すソケットと、
を備え、
前記固定棒は、棒状を成し、雄ネジが形成されている本体部と、前記本体部の第一端に形成され、棒状の前記本体部に対する径方向外側に突出した一対の突起を含む係合部と、前記本体部に挿通可能なフランジと、前記フランジを前記本体部の所定の位置で固定するために前記本体部に捩じ込まれているナットと、を有し、
前記ソケットは、前記ソケットの内周面から外周側に凹み、前記突起が入れるように形成された第1の案内溝と、第2の案内溝と、凹設溝を有し、
前記第1の案内溝は、前記開放端中の第1の始端と、第1の終端とを有し、前記第1の始端から前記第1の終端まで軸線方向に延び、
前記第2の案内溝は、前記第1の終端につながる第2の始端と、第2の終端とを有し、前記第2の始端から前記第2の終端まで前記ソケット軸線に対する周方向に延び、
前記凹設溝は、前記第2の終端につながり、前記第2の終端から前記軸線方向に延びる、
タービンケーシング用の保温ブロックの固定器具。
【請求項9】
保温ブロックをタービンケーシング本体に設置する設置工程と、
前記タービンケーシング本体の表面に配設され、ソケット軸線を中心として、中空円筒状を成し、ソケット軸線が延びる軸線方向の第1側の端が開放端を成すソケットに対して、前記保温ブロックの位置を調整する位置調整工程と、
係合部を有する固定棒を前記保温ブロックに貫通させる貫通工程と、
前記係合部が前記ソケット内に収まるよう、前記固定棒を押操作する押操作工程と、
前記固定棒を前記ソケット軸線に対する周方向に回転操作する回転操作工程と、
前記係合部を前記ソケットに係合させる係合工程と、
を実行し、
前記保温ブロックは、所定の位置に挿通孔が形成された袋体と、前記袋体内に充填された無機繊維と、を有すると共に、一面側から他面側にかけて厚みを有し、
前記固定棒は、棒状の本体部と、前記本体部の第一端に形成され、棒状の前記本体部に対する径方向外側に突出した一対の突起を含む前記係合部と、を有し、
前記ソケットは、前記ソケットの内周面から外周側に凹み、前記突起が入れるように形成された第1の案内溝と、第2の案内溝と、凹設溝を有し、
前記第1の案内溝は、前記開放端中の第1の始端と、第1の終端とを有し、前記第1の始端から前記第1の終端まで軸線方向に延び、
前記第2の案内溝は、前記第1の終端につながる第2の始端と、第2の終端とを有し、前記第2の始端から前記第2の終端まで前記ソケット軸線に対する周方向に延び、
前記凹設溝は、前記第2の終端につながり、前記第2の終端から前記軸線方向に延び、
前記設置工程では、前記保温ブロックの前記他面側を前記タービンケーシング本体の表面に接触させ、
前記位置調整工程では、前記ソケットが、前記保温ブロックの前記他面側の所定の位置に形成された挿通孔に嵌合するように、前記保温ブロックの位置を調整し、
前記押操作工程では、前記第1の案内溝の前記第1の始端から前記第1の案内溝内に前記突起を入れ、前記第1の案内溝の前記第1の終端まで前記固定棒を押操作し、
前記回転操作工程では、前記第1の案内溝内の前記突起を前記第2の案内溝の前記第2の始端から前記第2の案内溝内に入れ、前記第2の案内溝の前記第2の終端まで前記固定棒を前記周方向に回転操作し、
前記係合工程では、前記第2の案内溝内の前記突起を前記凹設溝に入れる、
タービンケーシング用の保温ブロックの固定方法。
【請求項10】
前記係合工程は、前記第2の終端から前記固定棒を前記軸線方向に押操作する押操作工程を含む、
請求項9に記載のタービンケーシング用の保温ブロックの固定方法。
【請求項11】
前記係合工程は、前記第2の終端から前記固定棒を前記軸線方向に引操作する引操作工程を含む、
請求項9に記載のタービンケーシング用の保温ブロックの固定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タービンケーシング用の保温装置、タービンケーシング用の保温ブロックの固定器具、およびタービンケーシング用の保温ブロックの固定方法に関する。
本願は、2017年5月11日に日本国に出願された特願2017−094451号に基づき優先権を主張し、この内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
一般に、発電所や化学プラント等で使用される蒸気タービン、およびガスタービン(以下、総称して「タービン発電機」という。)のタービンケーシングは、ロータ等の回転部の中心軸を境に上下に2分割して構成されている。上部ケーシングと下部ケーシングとは、それぞれのフランジ部で、ボルトによって互いに締結される。タービンケーシングの内面には、静翼等の静止部分が設けられる。タービンケーシング内には、動翼を取りつけたロータ等の回転部が水平に貫装されている。この回転部は、タービンケーシングに設けられた軸受けにより、回転可能に支承されている。
【0003】
ここで、タービン等の運転時には、タービンケーシングの内部に高温、高圧のガス等の流体が流れる。このとき、静止系と回転系のクリアランスが狭ければ狭いほど洩れる流体が減少し、より多くのエネルギを回転系に伝えることができる。タービンケーシングの外面は、通常、熱放散防止のために耐熱性断熱材からなる保温ブロックで被覆されている。
【0004】
このような保温ブロックのタービンケーシングへの設置構造としては、例えば、図4Aに示す構造が知られている。具体的に、タービンケーシング101の表面には、綿状の断熱材102、および保温ブロック103が交互に複数積層されている。複数の断熱材102、および複数の保温ブロック103は、これらに形成された複数の挿通孔105のそれぞれに、スタッドボルト104が挿通され、タービンケーシング101に対して固定されている。
【0005】
ところで、タービン発電機は、定期的な点検作業の際にケーシングが開放される。そのため、その都度、保温ブロックをタービンケーシングから着脱する必要がある。よって、保温ブロックのタービンケーシングへの設置構造は、着脱作業が容易に行える構造であることが望ましい。しかしながら、図4Aに示す保温ブロックのタービンケーシングへの固定構造では、断熱材102と保温ブロック103を複数層に積層する必要があることから、作業工程が多くなり多大な設置工数を要する。
【0006】
このような問題に対して、本発明者らは、簡易かつ迅速に施工することができ、施工期間の短縮化、およびメンテナンス費用の低減を図ることができるタービンケーシング用保温構造を提案している(特許文献1)。
【0007】
具体的に、この構造は、図4Bに示すように、タービンケーシングの表面に配置された網状部材203と、この表面を覆うようにして配置される保温ブロック201と、ベルト205と、を備えている。ベルト205の一部は、タービン保温ブロック201を厚み方向に貫通するようにして設けられた貫通孔202に挿通される。ベルト205中で貫通孔202に挿通されている部分の端部には、フック204が設けられている。このフック204には、網状部材203が係止されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第5836155号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前記の特許文献1に開示のタービンケーシング用保温構造では、保温ブロックの貫通穴にベルトの一部を通し、ベルトの一端に設けられたフックを網状部材の所定の箇所に引っ掛けて、ベルトの他端を上方に引っ張ったまま保温ブロックを下方(網状の部材の側)に押し付けるだけで、施工することができる。このため、前記の特許文献1に開示のタービンケーシング用保温構造によれば、作業者が簡単、かつ、迅速に施工することができ、施工期間の短縮化およびメンテナンス費用の低減を図ることができる。
【0010】
一方で、特許文献1に開示のタービンケーシング用保温構造においては、布製のベルトにより締め付けて固定するため、その締め付け具合によっては、保温ブロックがタービンケーシングへ密着せず、充分な保温効果が得られない場合があるという問題がある。
【0011】
特に、タービンケーシングのうち、下側ケーシングに取り付ける保温ブロックは、重力により鉛直下方(保温ブロックがタービンケーシングから離れる方向)への力が作用するため、ベルトの締め付けを相当程度強くしなければ、保温ブロックのタービンケーシングへの密着性を確保することができない。
【0012】
さらに、ベルトの固定はベルト端部に設けられた布製テープを、保温ブロックの表面に貼着された布製テープに密着させることにより行われるが、保温ブロックの着脱を繰り返すうちに、これら布製テープが劣化し、密着力が弱まることにより、固定強度が落ちることも懸念される。
【0013】
本発明は、以上の点に鑑みて創案されたものであり、発電所等で使用されるタービン発電機のタービンケーシングに対して、簡易的かつ迅速に設置、および取り外すことができ、繰り返し使用が可能なタービンケーシング用の保温装置、タービンケーシング用の保温ブロックの固定器具、およびタービンケーシング用の保温ブロックの固定方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記の目的を達成するために、本発明のタービンケーシング用の保温装置は、
タービンケーシング本体の表面に設置される保温ブロックと、前記保温ブロックの厚み方向に貫通可能な固定棒と、前記タービンケーシング本体の表面に固定されるソケットと、を備える。前記保温ブロックは、所定の位置に挿通孔が形成された袋体と、前記袋体内に充填された無機繊維と、を有する。前記固定棒は、前記挿通孔から前記保温ブロックに入れられ、前記保温ブロックを厚み方向に貫通する棒状の本体部と、前記本体部の第一端に形成され、棒状の前記本体部に対する径方向外側に突出した一対の突起を含む係合部と、を有する。前記ソケットは、ソケット軸線を中心として、中空円筒状を成し、ソケット軸線が延びる軸線方向の第1側の端が開放端を成す。前記ソケットは、前記ソケットの内周面から外周側に凹み、前記突起が入れるように形成された第1の案内溝と、第2の案内溝と、凹設溝を有する。前記第1の案内溝は、前記開放端中の第1の始端と、第1の終端とを有し、前記第1の始端から前記第1の終端まで軸線方向に延びる。前記第2の案内溝は、前記第1の終端につながる第2の始端と、第2の終端とを有し、前記第2の始端から前記第2の終端まで前記ソケット軸線に対する周方向に延びる。前記凹設溝は、前記第2の終端につながり、前記第2の終端から前記軸線方向に延びる。
【0015】
本態様は、所定の位置に挿通孔が形成された袋体内に無機繊維を充填してなり、タービンケーシング本体の表面に設置される保温ブロックを備える。これにより、タービンケーシング本体からの熱放散を無機繊維により効率的に防止することができる。よって、本態様によれば、タービンケーシング本体の保温性能を高めることができる。
【0016】
本態様は、一対の突起を含む係合部を有する固定棒を備える。これにより、この固定棒を挿通孔から保護ブロック内に挿入し、固定棒とソケットとを係合させることで、保温ブロックをタービンケーシング本体の表面に対して強固に固定することができる。
【0017】
本態様のソケットの内周面には、開放端中の第1の始端から第1の終端まで軸線方向に延びる第1の案内溝が形成されている。これにより、固定棒の突起を第1の始端から第1の案内溝に入れて、第1の始端から第1の終端まで移動させることで、この突起を軸線方向に案内することができる。
【0018】
本態様のソケットの内周面には、第2の始端が第1の終端につながり、第2の始端から第2の終端まで周方向に延びる第2の案内溝が形成されている。これにより、第1の案内溝内の突起を第2の始端から第2の案内溝に入れて、突起を第2の始端から第2の終端まで移動させることで、この突起を周方向に案内することができる。
【0019】
本態様のソケットの内周面には、第2の終端につながり、軸線方向に延びる凹設溝が形成されている。これにより、第2の案内溝の突起を凹設溝に入れ、軸線方向に移動させることで、凹設溝に固定棒の突起を係合する。よって、本態様では、固定棒をソケットに対してロックすることができ、固定棒とソケットが強固に固定される。
【0020】
本態様では、ソケットがタービンケーシング本体の表面に配設されている。これにより、保温ブロックをタービンケーシング本体の表面に設置する際には、ソケットを目印として設置することができる。よって、本態様では、保温ブロックのタービンケーシング本体への位置決めが容易になる。
【0021】
また、凹設溝が第2の終端から軸線方向におけるタービンケーシング本体側に延びている場合には、固定棒をタービンケーシング本体側への押操作という簡単な操作により、突起を凹設溝に係合させて、固定棒をソケットに対してロックさせることができる。
【0022】
また、凹設溝が第2の終端から軸線方向におけるソケットの開放端側に延びている場合には、固定棒を開放端側への引操作という簡単な操作により、突起を凹設溝に係合させて、固定棒をソケットに対してロックさせることができる。
【0023】
ここで、以上の態様において、固定棒の本体部に挿通可能であり、保温ブロックをタービンケーシング本体側に押圧するフランジを有してもよい。この態様では、固定棒をタービンケーシング用の保温ブロックに挿通した状態において、フランジを保温ブロックの表面から押圧することができるため、保温ブロックのタービンケーシング本体への固定が強固になる。
【0024】
フランジを有する態様において、固定棒の本体部には雄ネジが形成され、フランジを本体部の所定の位置で固定するナットが本体部に捩じ込まれていてもよい。この態様では、ナットにより、フランジの移動を規制することができるため、保温ブロックのタービンケーシング本体への固定が強固になる。
【0025】
以上のいずれかの態様において、前記保温ブロックは、前記タービンケーシング本体の表面を被覆する第1の保温ブロックと、前記第1の保温ブロックの厚み方向に板状の補強部材を介して積層された第2の保温ブロックと、を有してもよい。前記第1の保温ブロックは、所定の位置に挿通孔が形成された第1の袋体と、前記第1の袋体内に充填された無機繊維と、を有する。前記第2の保温ブロックは、所定の位置に挿通孔が形成された第2の袋体と、前記第2の袋体内に充填された無機繊維と、を有する。この態様では、第1の保温ブロックと第2の保温ブロックにおいて無機繊維としての材質を変更する等、多様な使用方法が可能となる。例えば、タービンケーシング本体の表面を被覆する第1の保温ブロックを構成する第1の無機繊維として、保温効果の高い生体溶解性繊維を使用する一方で、第2の保温ブロックを構成する第2の無機繊維として、保温効果は劣るものの原材料費が安いロックウールを使用することで、保温性とコストのバランスを保つことができる。
【0026】
また、第1の保温ブロックと第2の保温ブロックが板状の補強部材を介して積層されている場合には、第1の保温ブロックと第2の保温ブロックの剪断変形を防止し、積層状態を長期にわたって保持することができる。
【0027】
また、前記第1の袋体内に前記無機繊維として生体溶解性繊維が充填されている場合には、保温性をより一層高めることができる。
【0028】
また、前記第2の袋体内に前記無機繊維としてロックウールが充填されている場合には、保温性を保持することができるとともに、原材料コストを低額に抑えることができる。
【0029】
また、補強部材は、エキスパンドメタル、またはパンチングメタルである場合には、第1の保温ブロックと第2の保温ブロックの剪段変形を確実に防止することができる。
【0030】
前記の目的を達成するために、本発明のタービンケーシング用の保温ブロックの固定器具は、
固定棒と、ソケット軸線を中心として、中空円筒状を成し、ソケット軸線が延びる軸線方向の第1側の端が開放端を成すソケットと、を備える。前記固定棒は、棒状を成し、雄ネジが形成されている本体部と、前記本体部の第一端に形成され、棒状の前記本体部に対する径方向外側に突出した一対の突起を含む係合部と、前記本体部に挿通可能なフランジと、前記フランジを前記本体部の所定の位置で固定するために前記本体部に捩じ込まれているナットと、を有する。前記ソケットは、前記ソケットの内周面から外周側に凹み、前記突起が入れるように形成された第1の案内溝と、第2の案内溝と、凹設溝を有する。前記第1の案内溝は、前記開放端中の第1の始端と、第1の終端とを有し、前記第1の始端から前記第1の終端まで軸線方向に延びる。前記第2の案内溝は、前記第1の終端につながる第2の始端と、第2の終端とを有し、前記第2の始端から前記第2の終端まで前記ソケット軸線に対する周方向に延びる。前記凹設溝は、前記第2の終端につながり、前記第2の終端から前記軸線方向に延びる。
【0031】
本態様は、一対の突起を含む係合部を有する固定棒を備える。これにより、この固定棒と、後述するソケットを離脱不能となるように係合させることができる。
【0032】
本態様は、固定棒の本体部に挿通可能なフランジ、および本体部に形成された雄ネジに螺合可能なナットを有する。これにより、例えば、固定棒をタービンケーシング用の保温ブロックに挿通した状態において、フランジを保温ブロックの表面から押圧することができるとともに、フランジを固定棒における所定の位置で固定することができる。よって、本態様では、保温ブロックのタービンケーシング本体への取り付けを強固なものとすることができる。
【0033】
本態様のソケットの内周面には、開放端中の第1の始端から第1の終端まで軸線方向に延びる第1の案内溝が形成されている。これにより、固定棒の突起を第1の始端から第1の案内溝に入れて、第1の始端から第1の終端まで移動させることで、この突起を軸線方向に案内することができる。
【0034】
本態様のソケットの内周面には、第2の始端が第1の終端につながり、第2の始端から第2の終端まで周方向に延びる第2の案内溝が形成されている。これにより、第1の案内溝内の突起を第2の始端から第2の案内溝に入れて、突起を第2の始端から第2の終端まで移動させることで、この突起を周方向に案内することができる。
【0035】
本態様のソケットの内周面には、第2の終端につながり、軸線方向に延びる凹設溝が形成されている。これにより、第2の案内溝の突起を凹設溝に入れ、軸線方向に移動させることで、凹設溝に固定棒の突起を係合する。よって、本態様では、固定棒をソケットに対してロックすることができ、固定棒とソケットが強固に固定される。
【0036】
前記の目的を達成するために、本発明のタービンケーシング用の保温ブロックの固定方法は、
保温ブロックをタービンケーシング本体に設置する設置工程と、前記タービンケーシング本体の表面に配設され、ソケット軸線を中心として、中空円筒状を成し、ソケット軸線が延びる軸線方向の第1側の端が開放端を成すソケットに対して、前記保温ブロックの位置を調整する位置調整工程と、係合部を有する固定棒を前記保温ブロックに貫通させる貫通工程と、前記係合部が前記ソケット内に収まるよう、前記固定棒を押操作する押操作工程と、前記固定棒を前記ソケット軸線に対する周方向に回転操作する回転操作工程と、前記係合部を前記ソケットに係合させる係合工程と、を実行する。前記保温ブロックは、所定の位置に挿通孔が形成された袋体と、前記袋体内に充填された無機繊維と、を有すると共に、一面側から他面側にかけて厚みを有する。前記固定棒は、棒状の本体部と、前記本体部の第一端に形成され、棒状の前記本体部に対する径方向外側に突出した一対の突起を含む前記係合部と、を有する。前記ソケットは、前記ソケットの内周面から外周側に凹み、前記突起が入れるように形成された第1の案内溝と、第2の案内溝と、凹設溝を有する。前記第1の案内溝は、前記開放端中の第1の始端と、第1の終端とを有し、前記第1の始端から前記第1の終端まで軸線方向に延びる。前記第2の案内溝は、前記第1の終端につながる第2の始端と、第2の終端とを有し、前記第2の始端から前記第2の終端まで前記ソケット軸線に対する周方向に延びる。前記凹設溝は、前記第2の終端につながり、前記第2の終端から前記軸線方向に延びる。前記設置工程では、前記保温ブロックの前記他面側を前記タービンケーシング本体の表面に接触させる。前記位置調整工程では、前記ソケットが、前記保温ブロックの前記他面側の所定の位置に形成された挿通孔に嵌合するように、前記保温ブロックの位置を調整する。前記押操作工程では、前記第1の案内溝の前記第1の始端から前記第1の案内溝内に前記突起を入れ、前記第1の案内溝の前記第1の終端まで前記固定棒を押操作する。前記回転操作工程では、前記第1の案内溝内の前記突起を前記第2の案内溝の前記第2の始端から前記第2の案内溝内に入れ、前記第2の案内溝の前記第2の終端まで前記固定棒を前記周方向に回転操作する。前記係合工程では、前記第2の案内溝内の前記突起を前記凹設溝に入れる。
【0037】
本態様では、設置工程を実行する。これにより、保温ブロックをタービンケーシング本体の表面に設置することができる。
【0038】
本態様では、位置調整工程を実行する。これにより、保温ブロックを適切な位置に位置調整することができる。
【0039】
本態様では、貫通工程を実行する。これにより、固定棒を保温ブロック内に貫通させることができる。このとき、ソケットに対して保温ブロックの挿通孔が位置調整されているため、保温ブロック内を貫通した固定棒の係合部は、ソケットの開放端からソケット内に入り、固定棒を仮固定することができる。
【0040】
本態様では、押操作工程を実行する。これにより、押操作という簡単な操作により、固定棒の突起をソケット内で軸線方向に案内することができる。
【0041】
本態様では、回転操作工程を実行する。これにより、回転操作という簡単な操作により、固定棒の突起をソケット内で周方向に案内することができる。
【0042】
本態様では、係合工程を実行する。これにより、第2の案内溝の第2の終端位置から凹設溝に固定棒の突起を入れることで、固定棒をソケットに対してロックすることができるため、固定棒とソケットが強固に固定される。
【0043】
また、係合工程が第2の終端から固定棒を押操作する押操作工程を含む場合には、押操作という簡単な操作により、凹設溝に固定棒の突起を入れることで、固定棒をソケットに対してロックすることができるため、固定棒とソケットが強固に固定される。
【0044】
また、係合工程が第2の終端から固定棒を引操作する引操作工程を含む場合には、引操作という簡単な操作により、凹設溝に固定棒の突起を入れることで、固定棒をソケットに対してロックすることができるため、固定棒とソケットが強固に固定される。
【発明の効果】
【0045】
本発明の一態様では、タービンケーシングに対して保温装置を、簡易かつ迅速に設置することができ、この保温装置を繰り返し使用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0046】
図1】本発明の実施形態に係る保温装置の全体外観図である。
図2A】本発明の実施形態に係る固定器具の要部切り欠き側面図である。
図2B】本発明の実施形態に係る他の固定器具の要部切り欠き側面図である。
図3A】本発明の実施形態に係るソケットの斜視図である。
図3B】本発明の実施形態に係る他のソケットの斜視図である。
図4A】従来の保温構造の断面図である。
図4B】他の従来の保温構造の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
以下、タービンケーシング用の保温装置、タービンケーシング用の保温ブロックの固定器具、およびタービンケーシング用の保温ブロックの固定方法に関する本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0048】
本実施形態に係るタービンケーシング用の保温装置について、図1を用いて説明する。タービンケーシング用の保温装置1は、例えば、図1に示すように、発電所等で使用されるタービン発電機のタービンケーシング本体2の表面21を被覆して、タービンケーシング本体2を保温する。この保温装置1は、保温ブロック3と、保温ブロック3をタービンケーシング本体2の表面21に固定するための固定器具4を備えている。
【0049】
保温ブロック3は、タービンケーシング本体2の表面21を直接的に被覆する第1の保温ブロック3aと、第1の保温ブロック3a上に配置された板状の補強部材33と、第1の保温ブロック3a上に配置された板状の補強部材33と、第1の保温ブロック3a上に補強部材33を介して厚み方向に積層さされた第2の保温ブロック3bと、を有する。第1の保温ブロック3a、および第2の保温ブロック3bは、ブロック状の断熱材であり、第1の保温ブロック3aと第2の保温ブロック3bは縫着されて一体化されている。第1の保温ブロック3aは、ガラスクロスで作られた第1の袋体31aと、この中に充填されたロックウール、生体溶解性繊維等から選択される無機繊維32と、有する。第2の保温ブロック3bは、ガラスクロスで作られた第2の袋体31bと、この中に充填されたロックウール、生体溶解性繊維等から選択される無機繊維32と、有する。
【0050】
ここで、必ずしも、保温ブロック3は、第1の保温ブロック3aと第2の保温ブロック3bとが積層されている必要はない。例えば、保温ブロック3と同じ厚みを有する第1の保温ブロック3a、または第2の保温ブロック3bの何れか一方から構成されていてもよい。
【0051】
但し、保温ブロック3を第1の保温ブロック3aと第2の保温ブロック3bとの2層構造とすることにより、第1の保温ブロック3aと第2の保温ブロック3bに使用する無機繊維32を異なるものとすることができる。例えば、保温効果がより求められるタービンケーシング本体2の表面21を被覆する第1の保温ブロック3aに使用する無機繊維32として、保温効果の高い生体溶解性繊維を充填することができる。一方で、第2の保温ブロック3bに使用する無機繊維32として、生体溶解性繊維よりは保温効果は劣るものの低コストであるロックウールを充填することで、保温効果とコストのバランスを確保することができる。
【0052】
第1の袋体31a及び第2の袋体31bには、それぞれ挿通孔34が形成されている。第2の袋体31bの挿通孔34の位置は、第1の袋体31aの挿通孔34の位置に対応する。第1の保温ブロック3a及び第2の保温ブロック3bには、第1の袋体31aの挿通孔34及び第2の袋体31bの挿通孔34を含み、第1の保温ブロック3aと第2の保温ブロック3bを貫通する貫通孔が形成されている。
【0053】
ここで、必ずしも、第1の保温ブロック3aと第2の保温ブロック3bを貫通する貫通孔は形成されている必要はない。但し、貫通孔が形成されていることにより、後述する固定器具4としての固定棒41の第1の保温ブロック3a、および第2の保温ブロック3bへの貫通操作が容易になる。
【0054】
補強部材33は、例えば、金属製であって表面が千鳥状の網目が形成されたエキスパンドメタル、または丸状の網目が形成されたパンチングメタルである。
【0055】
ここで、必ずしも、第1の保温ブロック3aと第2の保温ブロック3bの間には、補強部材33を介装する必要はない。但し、第1の保温ブロック3aと第2の保温ブロック3bが縫着のみで固定されている場合には、第1の保温ブロック3aと第2の保温ブロック3bの間に剪断変形が生じ、第1の保温ブロック3aと第2の保温ブロック3bの積層状態が長期において保持できない可能性がある。そのため、第1の保温ブロック3aと第2の保温ブロック3bの剪断変形を未然に防止し、積層状態を長期に保持する観点からも、補強部材33を介装することが好ましい。
【0056】
第1の保温ブロック3aと第2の保温ブロック3bは、それぞれが舌片部35,35を有するように、その一部が外方に突出するように剪断方向にずれた状態で積層されている。
【0057】
ここで、必ずしも、第1の保温ブロック3aと第2の保温ブロック3bは舌片部35,35を有するように積層されている必要はない。第1の保温ブロック3aの四方面と第2の保温ブロック3bの四方面とが重なり合うように積層されていてもよい。但し、第1の保温ブロック3aと第2の保温ブロック3bが舌片部35を有するように積層されている場合には、複数の保温ブロック3をタービンケーシング本体2の周方向に配置する場合に、隣接する保温ブロック3間に形成される隙間が段状となるため、タービンケーシング本体2からの熱放散を低減することができる。よって、第1の保温ブロック3aと第2の保温ブロック3bが舌片部35を有するように積層されている場合には、保温効果を高めることができる。
【0058】
このようにして構成された保温ブロック3は、タービンケーシング本体2の表面21にそれぞれ配置されるとともに、隣接する保温ブロック3間に形成される隙間には布製テープ36が貼着される。
【0059】
ここで、必ずしも、隣接する保温ブロック3間に形成される隙間には布製テープ36が貼着される必要はない。但し、布製テープ36が貼着されることにより、隣接する保温ブロック3間に形成される隙間からの熱放散を防止し、保温効果を高めることができる。
【0060】
固定器具4は、保温ブロック3をタービンケーシング本体2に固定する。この固定器具4は、固定棒41と、タービンケーシング本体2の表面21に溶接固定されたソケット42と、を有する。
【0061】
固定棒41は、図1図2A及び図2Bに示すように、棒状体の本体部411と、本体部411の第一端に形成され、ソケット42内に係合する係合部413と、本体部411の第二端に形成され、作業者が固定棒41を操作するためのハンドル414と、を有している。本体部411は、第2の保温ブロック3bの挿通孔34及び第2の保温ブロック3bの挿通孔34に貫通可能な棒状体である。この本体部411の外周には、雄ネジが形成されている。係合部413は、略円筒状の胴部と、この胴部から、棒状の本体部411に対する径方向外側に突出する一対の突起412と、を有する。
【0062】
ここで、必ずしも、本体部411の第二端にはハンドル414を有している必要はない。但し、ハンドル414を有することにより、後述する固定棒41のソケット42への固定に際しての回転操作等が容易になり、作業者の作業負担を軽減することができる。
【0063】
固定棒41は、さらに、把持部415と、ナット417bと、ナット417bに接合されたフランジ416と、ナット417aと、を有する。把持部415は、本体部411を保温ブロック3内に貫通した状態において、第2の保温ブロック3bの表面から保温ブロック3を圧接可能である。ナット417bは、本体部411の雄ネジに捩じ込まれている。ナット417aは、ナット417bに接合されたフランジ416の本体部411に対する位置調整を行うために、この本体部411に捩じ込まれている。
【0064】
ここで、必ずしも、固定棒41は、フランジ416を有している必要はない。但し、フランジ416を有していることにより、保温ブロック3をタービンケーシング本体2に対して圧接することができるため、保温ブロック3のタービンケーシング本体2に対する固定をより強固にできる。
【0065】
ソケット42としては、図2A及び図3Aに示す仕様のソケット42aと、図2B及び図3Bに示す仕様のソケット42bと、が考えられる。ソケット42a,42bは、いずれも、ソケット軸線を中心として中空円筒状である。ここで、ソケット軸線が延びる方向を軸線方向とする。中空円筒状のソケット42a,42bにおける軸線方向の第1側は、開放されている。中空円筒状のソケット42a,42bにおける軸線方向の第2側は、封止されている。ソケット42a,42bの内周面には、固定棒41の突起412が係合可能な案内溝421と、この案内溝421につながって突起412をロック位置に保持するための凹設溝422と、が形成されている。
【0066】
案内溝421、および凹設溝422の詳細構造について、図3A及び図3Bに基づき説明する。案内溝421は、固定棒41の一対の突起412が係合するようにソケット42a,42bの内周面から外周側に凹むように形成されている。案内溝421は、第1の案内溝421aと、第2の案内溝421bとを有する。第1の案内溝421aは、ソケット42a,42bの開放端中の第1第1の始端A1と、第1の終端B1とを有する。第1の案内溝421aは、第1の始端A1から第1の終端B1までソケット軸線が延びる軸線方向に延びている。第2の案内溝421bは、第1の終端B1とつながる第2の始端A2と、第2の終端B2とを有する。第2の案内溝421bは、第2の始端A2から第2の終端B2までソケット軸線に対する周方向に延びている。
【0067】
凹設溝422も、案内溝421と同様、固定棒41の一対の突起412が係合するようにソケット42a,42bの内周面から外周側に凹むように形成されている。この凹設溝422は、第2の案内溝421bの第2の終端B2につながり、軸線方向に延びている。なお、図2A及び図3Aに示す仕様のソケット42aの凹設溝422は、第2の案内溝421bの第2の終端B2につながり、この第2の終端B2から封止端側、つまり、タービンケーシング本体2の側に延びている。また、図2B及び図3Bに示す仕様のソケット42bの凹設溝422は、第2の案内溝421bの第2の終端B2につながり、この第2の終端B2からソケット42bの開放端側に延びている。仕様が互いに異なるソケット42aとソケット42bとのうち、いずれを用いるかは、上側のタービンケーシング本体2に配置されるソケットであるか、下側のタービンケーシング本体2に配置されるソケットであるかに応じて、選択される。
【0068】
例えば、上下方向に分割されたタービンケーシング本体2の、上側のタービンケーシング本体2に配設されるソケットとしては、凹設溝422がタービンケーシング本体2側に延びているソケット42aが用いられる。上側のタービンケーシング本体2に配設されたソケット42aに対しては、固定棒41は鉛直方向の上方向から下方向に向けて挿入される。固定棒41がソケット42aに挿入された状態では、固定棒41には重力の作用により上側のタービンケーシング本体2側に力が作用する。このソケット42aの凹設溝422は、第2の案内溝421bの第2の終端B2から上側のタービンケーシング本体2側に延びている。よって、固定棒41の突起412の凹設溝422に対する係合状態が解除され難いものとなる。
【0069】
一方、上下方向に分割されたタービンケーシング本体2の、下側のタービンケーシング本体2に配設されるソケットとしては、凹設溝422が開放端縁側に向けて形成されたソケット42bが用いられる。下側のタービンケーシング本体2に配設されたソケット42bに対しては、固定棒41は鉛直方向の下方向から上方向に向けて挿入される。固定棒41がソケット42bに挿入された状態では、固定棒41には重力の作用により下側のタービンケーシング本体2から離反する方向に力が作用する。このソケット42bの凹設溝422は、第2の案内溝421bの第2の終端B2からソケット42bの開放端側である、下側のタービンケーシング本体2から離反する方向に延びている。よって、固定棒41の突起412の凹設溝422に対する係合状態が解除され難いものとなる。
【0070】
次に、保温ブロック3のタービンケーシング本体2への固定方法について説明する。
【0071】
[保温ブロックの設置工程]
まず、タービンケーシング本体2の表面21に、保温ブロック3のうち、第1の保温ブロック3aの裏面(他面)が接するように設置する。
【0072】
[位置調整工程]
保温ブロック3の設置工程において、保温ブロック3をタービンケーシング本体2の表面21に設置したら、第1の保温ブロック3aの第1の袋体31aの裏面(他面)に形成された挿通孔34に、タービンケーシング本体2の表面21に配設されたソケット42が嵌合するように、保温ブロック3の位置調整を行う。
【0073】
[貫通工程]
位置調整工程において、保温ブロック3のタービンケーシング本体2の表面21への位置決めが完了すると、第2の保温ブロック3bの第2の袋体31bの表面側を作業者の一方の手で仮押さえながら、他方の手で第2の保温ブロック3bの第2の袋体31bに形成された挿通孔34に突起412を含む係合部413側から固定棒41を保温ブロック3内に挿入して、この固定棒41を保温ブロック3内に貫通させる。そして、ソケット42の第1の始端A1から第1の案内溝421a内に、固定棒41の突起412を入れる。
【0074】
[フランジ圧接工程]
挿入工程において、固定棒41を保温ブロック3内に挿入した状態で、ナット417a,417bを固定棒41の本体部411に捩じ込み、フランジ416にて保温ブロック3が押圧されるよう、フランジ416の位置を調整する。
【0075】
[押操作工程]
第1の始端A1と突起412の係合状態が確認できた時点で固定棒41を押操作する。この押操作により、固定棒41の突起412は、ソケット42の第1の案内溝421aにガイドされながら第1の終端B1に突き当たるまで摺動する。
【0076】
[回転操作工程]
押操作工程により、突起412の第1の終端B1への突き当たりが確認できた時点で、固定棒41をソケット軸線に対する周方向の一方側(時計回り、または反時計回り)に回転操作する。この回転操作により、第1の案内溝421a内の突起412は、ソケット42の第2の始端A2から第2の案内溝421b内に入り、この第2の案内溝421bにガイドされながら第2の終端B2に突き当たるまで摺動する。
【0077】
[係合工程]
回転操作工程により、突起412の第2の終端B2への突き当たりが確認できた時点で、固定棒41を押操作、または引操作する。この押操作または引操作により、固定棒41の突起412は第2の終端B2から凹設された凹設溝422に係合する。これにより、固定棒41がソケット42に対してのロックが完了する。
【0078】
例えば、上下方向に分割されたタービンケーシング本体2の、上側のタービンケーシング本体2に配設されるソケット42aの凹設溝422は、前述した通り、第2の終端B2から軸線方向のタービンケーシング本体2側に延びている。このため、突起412の第2の終端B2への突き当たりが確認できた時点において、固定棒41を押操作することにより、突起412を凹設溝422に係合させることができる。
【0079】
一方、上下方向に分割されたタービンケーシング本体2の、下側のタービンケーシング本体2に配設されるソケット42bの凹設溝422は、前述した通り、第2の終端B2から軸線方向のソケット42bの開放端側に延びている。このため、突起412の第2の終端B2への突き当たりが確認できた時点において、固定棒41を引操作することにより、突起412を凹設溝422に係合させることができる。
【0080】
以上、本実施形態に係るタービンケーシング用の保温装置では、発電所等で使用されるタービン発電機のタービンケーシングに対して、簡易的かつ迅速に設置、および取り外すことができ、繰り返し使用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明の一態様では、タービンケーシングに対して保温装置を、簡易かつ迅速に設置することができ、この保温装置を繰り返し使用可能である。
【符号の説明】
【0082】
1 保温装置
2 タービンケーシング本体
21 表面
3 保温ブロック
3a 第1の保温ブロック
3b 第2の保温ブロック
31a 第1の袋体
31b 第2の袋体
32 無機繊維
33 補強部材
34 挿通孔
35 舌片部
36 布製テープ
4 固定器具
41 固定棒
411 本体部
412 突起
413 係合部
414 ハンドル
415 把持部
416 フランジ
417a,417b ナット
42,42a,42b ソケット
421 案内溝
421a 第1の案内溝
421b 第2の案内溝
422 凹設溝
A1 第1の始端
A2 第2の始端
B1 第1の終端
B2 第2の終端
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B