特許第6739019号(P6739019)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6739019
(24)【登録日】2020年7月27日
(45)【発行日】2020年8月12日
(54)【発明の名称】除菌ケース
(51)【国際特許分類】
   A61L 2/20 20060101AFI20200730BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20200730BHJP
   H04M 1/02 20060101ALI20200730BHJP
   A61L 101/10 20060101ALN20200730BHJP
【FI】
   A61L2/20 100
   H02J7/00 301B
   H02J7/00 301C
   H04M1/02 C
   A61L101:10
【請求項の数】12
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2017-519396(P2017-519396)
(86)(22)【出願日】2016年5月19日
(86)【国際出願番号】JP2016064890
(87)【国際公開番号】WO2016186168
(87)【国際公開日】20161124
【審査請求日】2019年5月10日
(31)【優先権主張番号】特願2015-104000(P2015-104000)
(32)【優先日】2015年5月21日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】591012266
【氏名又は名称】株式会社クリエイティブテクノロジー
(73)【特許権者】
【識別番号】515137565
【氏名又は名称】有限会社マツダデザイン
(74)【代理人】
【識別番号】100101926
【弁理士】
【氏名又は名称】塚原 孝和
(72)【発明者】
【氏名】草野 睦
(72)【発明者】
【氏名】辰己 良昭
(72)【発明者】
【氏名】羅 莉
(72)【発明者】
【氏名】坪井 和樹
(72)【発明者】
【氏名】小山 里美
(72)【発明者】
【氏名】松田 武史
(72)【発明者】
【氏名】林 周二郎
【審査官】 柴田 啓二
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−236414(JP,A)
【文献】 特開平07−309605(JP,A)
【文献】 特開2000−219503(JP,A)
【文献】 中国実用新案第201516177(CN,U)
【文献】 特開平09−220275(JP,A)
【文献】 特開2004−201788(JP,A)
【文献】 特開2014−158217(JP,A)
【文献】 特開2013−236120(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 2/00
H04M 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1対の電極の双方をシート状の誘電体内部に収納して形成した電極シートが表面に敷設され且つこの電極シート上に移動体通信機を載置可能な載置部,及び上記電極シートと移動体通信機とに所定の電圧を供給するための電圧供給部を有するケース本体と、
このケース本体に取付け取外し自在及び開閉自在に取り付けられるカバー体と
を備える除菌ケースであって、
上記電圧供給部は、
電源をオゾン発生に必要な電圧に変換して上記1対の電極に供給することにより、上記電極シートからオゾンを発生させるための第1の回路と、
上記移動体通信機の電源用雌コネクタに接続可能な雄コネクタに、電源を移動体通信機の電源電圧に変換して供給するための第2の回路と
を備えることを特徴とする除菌ケース。
【請求項2】
請求項1に記載の除菌ケースにおいて、
上記電極シートとは別体の電極シートを、上記カバー体の天壁の内面に設け、
上記第1の回路を、当該別体の電極シートの1対の電極にも接続した、
ことを特徴とする除菌ケース。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の除菌ケースにおいて、
上記移動体通信機を載置するためのスペーサを、上記載置部上の電極シート上に突設した、
ことを特徴とする除菌ケース。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載の除菌ケースにおいて、
上記載置部の断面形状を、波形に形成し、上記電極シートをこの波形の載置部に添って敷設した、
ことを特徴とする除菌ケース。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の除菌ケースにおいて、
上記電源は、交流電源であり、
上記第1の回路は、上記電源の交流電圧を所望値の交流電圧又はパルス状電圧に変換して上記1対の電極に供給する回路であり、
上記第2の回路は、上記電源の交流電圧を所望値の直流電圧に変換して上記雄コネクタに供給する回路である、
ことを特徴とする除菌ケース。
【請求項6】
請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の除菌ケースにおいて、
上記電源は、直流電源であり、
上記第1の回路は、上記電源の直流電圧を所望値の交流電圧又はパルス状電圧に変換して上記1対の電極に供給する回路であり、
上記第2の回路は、上記電源の直流電圧を所望値の直流電圧に変換して上記雄コネクタに供給する回路である、
ことを特徴とする除菌ケース。
【請求項7】
請求項6に記載の除菌ケースにおいて、
上記第2の回路は、上記電源の直流電圧をそのまま上記雄コネクタに供給する回路である、
ことを特徴とする除菌ケース。
【請求項8】
請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の除菌ケースにおいて、
上記電極シートの少なくとも誘電体を、高分子樹脂で形成した、
ことを特徴とする除菌ケース。
【請求項9】
請求項1ないし請求項8のいずれかに記載の除菌ケースにおいて、
上記カバー体を閉じた状態でのみ上記電源をオンすることができ且つ電源オン時における所定長さの除菌時間経過後に電源をオフにすることができるスイッチ機構を、上記ケース本体に設けた、
ことを特徴とする除菌ケース。
【請求項10】
請求項1ないし請求項9のいずれかに記載の除菌ケースにおいて、
除菌処理時間を表示する除菌メータを、上記ケース本体に設けた、
ことを特徴とする除菌ケース。
【請求項11】
請求項1ないし請求項10のいずれかに記載の除菌ケースにおいて、
上記1対の電極のそれぞれは、櫛歯状に形成され、1対の電極の櫛歯同士が、一定間隔を保って、噛み合っている、
ことを特徴とする除菌ケース。
【請求項12】
請求項1ないし請求項11のいずれかに記載の除菌ケースにおいて、
上記電極シートと上記載置部に載置された移動体通信機又は移動体通信機ケースとの距離を10mm以下の範囲内に保持する保持部を、載置部に設けた、
ことを特徴とする除菌ケース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、スマートフォン等の移動体通信機を除菌するための除菌ケースに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、移動体通信機であるスマートフォンは、布状のもので表面を拭き取ることで清掃することができる。そして、清掃だけでなく、スマートフォンの除菌を行う場合には、一般的に、洗剤やアルコール等の消毒液で拭き取る作業を行う。
しかし、この除菌方法であると、スマートフォンを手作業で拭く作業が必要であり、非常に手間がかかる。しかも、消毒液等が、手に付着すると、手がかぶれるおそれもある。
【0003】
そこで、このような拭き作業を必要とすることなくスマートフォンを除菌できる技術として、例えば、特許文献1に記載の除菌装置が提案されている。
この除菌装置は、スマートフォンの充電器として機能すると共に除菌器としても機能する構造になっている。具体的には、スマートフォンを装置のケーシング内に収納すると共にスマートフォンの充電端子を装置のコネクタに接続することで、スマートフォンに電力を供給する。そして、ケーシングの内部には、紫外線ランプが設けられ、充電時に、紫外線をこのランプからスマートフォンに照射することで、除菌する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014−068484号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記した従来の技術では、次のような課題があった。
すなわち、上記の除菌装置では、スマートフォンの部位のうち、紫外線が当たっている部位しか除菌されない。このため、紫外線が当たりづらいスマートフォンの側面や隙間等では、十分な除菌が行われない。これに対して、この装置を、スマートフォンの側面を含む全ての面を除菌することができる構造にするには、紫外線ランプを、装置の内部であって、スマートフォンの上面、下面、側面の全ての面に対向する部位に装着しなければならない。したがって、スマートフォンの全面を除菌可能な構造にするには、装置自体を大きくしなければならず、装置の大型化及び重量化が問題になる。
また、光を用いているため、アクセサリやケースを付けた状態のスマートフォンの場合には、これらのアクセサリ等の陰に隠れた部分を、除菌することができない。
【0006】
この発明は、上述した課題を解決するためになされたもので、ケース自体の小型化を図ることができると共に、移動体通信機の表面だけでなく、隠れた部分も確実に除菌することができ、しかも、移動体通信機の除菌作業スペースの省スペース化と、充電及び除菌の同時作業が可能な除菌ケースを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、請求項1の発明は、1対の電極の双方をシート状の誘電体内部に収納して形成した電極シートが表面に敷設され且つこの電極シート上に移動体通信機を載置可能な載置部,及び上記電極シートと移動体通信機とに所定の電圧を供給するための電圧供給部を有するケース本体と、このケース本体に取付け取外し自在及び開閉自在に取り付けられるカバー体とを備える除菌ケースであって、上記電圧供給部は、電源をオゾン発生に必要な電圧に変換して上記1対の電極に供給することにより、上記電極シートからオゾンを発生させるための第1の回路と、上記移動体通信機の電源用雌コネクタに接続可能な雄コネクタに、電源を移動体通信機の電源電圧に変換して供給するための第2の回路とを備える構成とした。
かかる構成により、カバー体を開いた状態で、移動体通信機をケース本体の電極シート上に載置し、電圧供給部の第2の回路の雄コネクタを、移動体通信機の電源用雌コネクタに接続する。
そして、カバー体を閉じた後、電源をオンにすると、電圧供給部の第1の回路によって、電極シートの1対の電極にオゾン発生に必要な電圧が供給される。この結果、オゾンが電極シートから放出され、電極シート上に載置された移動体通信機が除菌される。
これと並行して、第2の回路によって、電源が移動体通信機の電源電圧に変換され、この電源電圧が、雄コネクタと移動体通信機の電源用雌コネクタを通じて、移動体通信機に供給される。この結果、移動体通信機が充電される。
このように、この発明の除菌ケースによれば、オゾンで除菌をしながら充電することができる。つまり、わざわざ手間暇をかけて、移動体通信機の除菌作業をしなくとも、習慣となっている充電作業のついでに除菌作業を自動的に行うことができる。
また、移動体通信機を除菌ケース内に閉じこめた状態で、ガス状のオゾンを放出するので、オゾンが除菌ケース内に充満する。この結果、オゾンが、移動体通信機の全体に回り込み、移動体通信機の表面だけでなく、アクセサリ等で隠れた部分も除菌する。
さらに、通常は、オゾン発生体の材料として、セラミックスを用いるが、この発明のように、オゾン発生体として、電極シートを用いると、オゾンを、移動体通信機に対して直接面上に放射することができる。この結果、電極シートからの単位面積当たりのオゾン発生量を、セラミックによる単位面積当たりのオゾン発生量よりも、少なくすることができる。この結果、オゾン発生体を駆動させる電源の消費量を少なくすることができ、省エネに繋がる。
そして、除菌終了後は、電源をオフにして、カバー体を開き、移動体通信機をケース本体から取り出すことができる。
また、この発明の除菌ケースは、移動体通信機を収納するケース本体とカバー体とで構成されているので、全体の大きさを移動体通信機の大きさに近づけることができ、ケース自体を小型化且つ軽量化することができる。この結果、狭い作業スペースであっても、除菌作業を行うことができる。
さらに、電極シートをケース本体内に敷設する構成であるが、電極シート自体が薄いシート状であるので、電極シートによって除菌ケースが大型化するおそれはない。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1に記載の除菌ケースにおいて、電極シートとは別体の電極シートを、カバー体の天壁の内面に設け、第1の回路を、当該別体の電極シートの1対の電極にも接続した構成とする。
かかる構成により、オゾンを上方と下方の両方から移動体通信機に放出することができる。この結果、移動体通信機に対する除菌時間を短縮することができる。
【0009】
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2に記載の除菌ケースにおいて、移動体通信機を載置するためのスペーサを、載置部上の電極シート上に突設した構成とする。
かかる構成により、多量の空気が、移動体通信機の下側にも入り込み、電極シートによるオゾンの発生率が高くなる。この結果、除菌効果を高めることができる。
【0010】
請求項4の発明は、請求項1又は請求項2に記載の除菌ケースにおいて、載置部の断面形状を、波形に形成し、電極シートをこの波形の載置部に添って敷設した構成とする。
かかる構成により、波形の載置部と移動体通信機との間に、多量の空気が充満し、電極シートによるオゾンの発生率が高くなる。この結果、除菌効果を高めることができる。さらに、載置部を、平面形状でなく、波形形状にして、電極シートをこの載置部に添って敷設することで、電極シートの面積を大きく採ることができる。
【0011】
請求項5の発明は、請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の除菌ケースにおいて、電源は、交流電源であり、第1の回路は、電源の交流電圧を所望値の交流電圧又はパルス状電圧に変換して1対の電極に供給する回路であり、第2の回路は、電源の交流電圧を所望値の直流電圧に変換して雄コネクタに供給する回路である構成とした。
かかる構成により、電源が電圧供給部に供給されると、第1の回路によって、この電源の交流電圧が所望値の交流電圧又はパルス状電圧に変換されて1対の電極に供給される。これと同時に、第2の回路において、電源の交流電圧が所望値の直流電圧に変換されて雄コネクタに供給される。
【0012】
請求項6の発明は、請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の除菌ケースにおいて、電源は、直流電源であり、第1の回路は、電源の直流電圧を所望値の交流電圧又はパルス状電圧に変換して1対の電極に供給する回路であり、第2の回路は、電源の直流電圧を所望値の直流電圧に変換して雄コネクタに供給する回路である構成とした。
かかる構成により、電源が電圧供給部に供給されると、第1の回路によって、この電源の直流電圧が所望値の交流電圧又はパルス状電圧に変換されて1対の電極に供給される。これと同時に、第2の回路において、電源の直流電圧が所望値の直流電圧に変換されて雄コネクタに供給される。
【0013】
請求項7の発明は、請求項6に記載の除菌ケースにおいて、第2の回路は、電源の直流電圧をそのまま雄コネクタに供給する回路である構成とした。
かかる構成により、第2の回路においては、電源の直流電圧がそのまま雄コネクタに供給される。
【0014】
請求項8の発明は、請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の除菌ケースにおいて、電極シートの少なくとも誘電体を、高分子樹脂で形成した構成とする。
かかる構成により、少なくとも誘電体が高分子樹脂で形成された電極シートによって、オゾンを発生することができる。
通常は、オゾン発生体の材料として、セラミックスを用いるが、この発明のように、オゾン発生体として、高分子樹脂のシートを用いることで、電極シートの薄型化、軽量化及びオゾン発生部の広面積化を図ることができるだけでなく、そのフレキシブル性により、ケース本体の載置部が湾曲等していても、電極シートを、載置部の形状に合わせて敷設することができる。
【0015】
請求項9の発明は、請求項1ないし請求項8のいずれかに記載の除菌ケースにおいて、カバー体を閉じた状態でのみ電源をオンすることができ且つ電源オン時における所定長さの除菌時間経過後に電源をオフにすることができるスイッチ機構を、ケース本体に設けた構成とする。
かかる構成により、移動体通信機をケース本体内に収納した後、カバー体を閉じると、スイッチ機構により、電源がオン状態になる。これにより、収納された移動体通信機の除菌作業が自動的に行われる。そして、所定長さの除菌時間が経過し、除菌が完了すると、スイッチ機構により、電源がオフ状態になる。
【0016】
請求項10の発明は、請求項1ないし請求項9のいずれかに記載の除菌ケースにおいて、除菌処理時間を表示する除菌メータを、ケース本体に設けた構成とする。
かかる構成により、除菌メータにより、除菌の処理時間の目安を視認することができ、除菌の達成感を実感することができる。
【0017】
請求項11の発明は、請求項1ないし請求項10のいずれかに記載の除菌ケースにおいて、1対の電極のそれぞれは、櫛歯状に形成され、1対の電極の櫛歯同士が、一定間隔を保って、噛み合っている構成とした。
かかる構成により、櫛歯同士が一定間隔を保って噛み合っている1対の電極間で放電現象が起こり、オゾンが発生する。
【0018】
請求項12の発明は、請求項1ないし請求項11のいずれかに記載の除菌ケースにおいて、電極シートと載置部に載置された移動体通信機又は移動体通信機ケースとの距離を10mm以下の範囲内に保持する保持部を、載置部に設けた構成とする。
かかる構成により、ざらざらの表面を有する移動体通信機や、ざらざらした素材や布製のケースをつけた移動体通信機であっても、確実に除菌することができる。
【発明の効果】
【0019】
このように、この発明の除菌ケースによれば、オゾンで除菌をしながら同時に移動体通信機の充電ができるので、非常に便利である。
また、光でなく、ガス状のオゾンで除菌する構成であるので、移動体通信機の表面だけでなく、隠れた部分も除菌することができる。
また、この発明の除菌ケースは、全体の大きさを移動体通信機の大きさに近づけることができるので、ケース自体の小型化と軽量化とを図ることができる。
【0020】
特に、請求項2の発明によれば、移動体通信機に対する除菌時間を短縮することができる。
【0021】
また、請求項3の発明によれば、オゾンの発生率を高くして、除菌効果を高めることができる。
【0022】
また、請求項4の発明によれば、オゾンの発生率をより一層高めることができる。
【0023】
また、請求項8の発明によれば、さらなる小型化が可能となる。
【0024】
請求項9及び請求項10の発明によれば、除菌終了後に自動的に電源をオフしたり、また、除菌処理時間の目安を視認することができるので、非常に便利である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】この発明の第1実施例に係る除菌ケースを分離して示す斜視図である。
図2】ケース本体の正面図である。
図3】ケース本体を破断して示す概略平面図である。
図4図3の矢視A−A断面図である。
図5】スイッチ回路の構造を示す概略図である。
図6】スイッチ回路のピン体の配置状態を示す側面図である。
図7】除菌メータを示す概略断面図である。
図8】カバー体を開口側から示す正面図である。
図9】カバー体をケース本体に取り付けた状態を示す断面図である。
図10】除菌ケースの使用例を示す概略側面図であり、図10の(a)は、スマートフォンをケース本体に載せた状態を示し、図10の(b)は、スマートフォンをケース本体に電気的に接続した状態を示し、図10の(c)は、カバー体を閉じた状態を示す。
図11】スマートフォンをケース本体に載せた状態で、カバー体を完全に閉じた状態を示す斜視図である。
図12】電極シートからのオゾン発生状態を示す概略図である。
図13】オゾンによる除菌作用を説明するための断面図である。
図14】この発明の第2実施例に係る除菌ケースを示す断面図である。
図15】この発明の第3実施例に係る除菌ケースを示す断面図である。
図16】この発明の第4実施例に係る除菌ケースを示す断面図である。
図17】電極シートと昇圧回路との電気的接続構造を示す概略平面図である。
図18】除菌ケースを一部破断して示す概略側面図である。
図19】この発明の第5実施例に係る除菌ケースのケース本体を破断して示す概略断面図である。
図20】この発明の第6実施例に係る除菌ケースのケース本体を破断して示す概略断面図である。
図21】この発明の第7実施例に係る除菌ケースを示す概略側面図である。
図22】この発明の第8実施例に係る除菌ケースの要部を示す断面図である。
図23図22に示す要部を分解して示す斜視図である。
図24】第8実施例の電極の変形例を示す平面図である。
図25】この発明の第9実施例に係る除菌ケースの要部を示す断面図である。
図26】除菌作用を説明するための部分拡大断面図である。
図27】菌の生存状態を示す写真の転写図である。
図28】菌の生存率と距離との関係を示す線図である。
図29】第9実施例の一変形例に係る除菌ケースの要部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、この発明の最良の形態について図面を参照して説明する。
【0027】
(実施例1)
図1は、この発明の第1実施例に係る除菌ケースを分離して示す斜視図である。
図1に示すように、この実施例の除菌ケース1−1は、ケース本体2とカバー体3とを備えている。
【0028】
図2は、ケース本体2の正面図である。
図1及び図2に示すように、ケース本体2は、移動体通信機であるスマートフォン100をセットするための基体であり、載置部4と電圧供給部6とにより構成されている。
載置部4は、厚さtで幅wの長方形状の板体であり、その表面には、スマートフォン100を載置可能な電極シート5が敷設されている。
【0029】
電極シート5は、オゾンを発生するフレキシブルなシートである。
図3は、ケース本体2を破断して示す概略平面図であり、図4は、図3の矢視A−A断面図である。
図3及び図4に示すように、電極シート5は、シート状の誘電体50とこの誘電体50内部に収納された1対の電極51,52とで形成されている。
具体的には、図4に示すように、誘電体50は、2層の誘電体層50a,50bで構成されており、電極51,52が下層の誘電体層50b上に形成され、上層の誘電体層50aが、電極51,52を覆うように、誘電体層50b上に積層されている。
このような電極シート5は、全て高分子樹脂で形成されている。この実施例では、誘電体層50a,50bを、それぞれポリイミド樹脂で形成しただけでなく、電極51,52も高分子樹脂である導電性ポリマーで形成した。このように電極シート5全体を高分子樹脂で形成することで、電極シート5のフレキシブル性を高めると共に、電極シート5の薄型化、軽量化及びオゾン発生部分の広面積化を図っている。
また、図3に示すように、1対の電極51,52のそれぞれは、櫛歯状に形成され、これら櫛歯51a,52a同士が、一定間隔を保って、噛み合っている。
【0030】
電圧供給部6は、電極シート5とスマートフォン100とに所定の電圧を供給するための部分である。
具体的には、図3に示すように、電圧供給部6は、載置部4の後端部側(図3の上方端部側)に配設された収納部60内に収納されている。
この電圧供給部6は、第1の回路としての昇圧回路61と第2の回路としての直流変換回路62とスイッチ機構としてのスイッチ回路63と除菌メータ64とで構成されている。
【0031】
昇圧回路61は、電源電圧をオゾン発生に必要な電圧に変換して電極シート5の電極51,52に供給するための回路である。
具体的には、この実施例では、電源として100Vの商用交流電圧の電源65が用いられ、昇圧回路61は、スイッチ回路63を介してこの電源65に電気的に接続されている。昇圧回路61は、電源65から入力した100Vの交流電圧を例えば2kV〜10kVの交流電圧又はパルス電圧に昇圧して、電極シート5の電極51,52に供給する機能を有している。
【0032】
直流変換回路62は、交流電圧の電源65をスマートフォン100(図1参照)の電源電圧に変換して、雄コネクタ7に供給するための回路である。
具体的には、直流変換回路62も、昇圧回路61と同様に、スイッチ回路63を介して電源65に電気的に接続されている。直流変換回路62は、電源65から入力した100Vの交流電圧を例えば5Vの直流電圧に変換して、雄コネクタ7に供給する機能を有している。
雄コネクタ7は、図1及び図2に示すように、収納部60の前壁60aの中央且つ下部側に突設されている。詳しくは、スマートフォン100を載置部4の電極シート5の上に載置した際に、スマートフォン100の後面に設けられている雌コネクタ101を、この雄コネクタ7に接続することができるように設定されている。また、雄コネクタ7には、図3に示すように、電源端子7a,7bが設けられ、雄コネクタ7を雌コネクタ101に接続した際に、電源端子7a,7bが雌コネクタの図示しない電源端子に接触するようになっている。
【0033】
スイッチ回路63は、電源65を昇圧回路61,直流変換回路62及び除菌メータ64に供給又は遮断するための回路である。
【0034】
図5は、スイッチ回路63の構造を示す概略図であり、図6は、スイッチ回路63のピン体の配置状態を示す側面図である。
図5に示すように、スイッチ回路63はピン体63aとスプリング63bと固定端子63cと可動端子63dとで構成されている。
ピン体63aは、図6に示すように、先端が収納部60の前壁60aに設けられた孔60bに挿通されている。そして、スプリング63bが、このピン体63aと収納部60との間に介在し、ピン体63aを前壁60aの外方に突出させるように付勢している。
一方、固定端子63cは、図5に示すように、昇圧回路61,直流変換回路62及び除菌メータ64の一方の入力端に電気的に接続され、可動端子63dは、電源65の一方の出力端に電気的に接続されている。この可動端子63dは、板バネ状の金属体であり、外力を受けていない場合には、収納部60の後方(図5の上方、図6の右方)から前方(図5の下方、図6の左方)に向かってストッパ63eに圧接している。したがって、ピン体63aによる押圧力を受けていない場合には、可動端子63dは、固定端子63cに接触していない。しかし、破線で示すように、ピン体63aが後方に移動して、可動端子63dを後方に押圧すると、可動端子63dが固定端子63cに接触する。
つまり、このスイッチ回路63は、ピン体63aの移動によって、電源65からの商用電源を供給又は遮断する機能を有する。
さらに、このスイッチ回路63には、電源オン後、所定時間経過後に電源をオフにする機能をも有している。
具体的には、コントローラ63fが、固定端子63cの後段に設けられている。このコントローラ63fは、図示しないタイマーを内蔵しており、電源オン時に、このタイマーを作動させる。すると、このコントローラ63fは、タイマーの時間経過に基づいて、所定時間経過後に固定端子63cと昇圧回路61,直流変換回路62及び除菌メータ64との間の電気的接続を断つ。そして、コントローラ63fは、電源がオフになると、タイマーをリセットとすると共に、固定端子63cと昇圧回路61,直流変換回路62及び除菌メータ64とを電気的に接続した状態に戻す。
【0035】
除菌メータ64は、除菌の処理時間を表示するための機器である。
図7は、除菌メータ64を示す概略断面図である。
図7に示すように、除菌メータ64は、スイッチ回路63を介して電源65に電気的に接続された状態で、収納部60の天壁60c上に取り付けられている。これにより、スイッチ回路63が閉じて電源がオン状態になると、除菌メータ64が作動して、除菌の処理時間を表示する。
【0036】
一方、カバー体3は、図1に示すように、ケース本体2に開閉自在に取り付けられる箱体であり、底壁31と天壁32と両側壁33,34と前壁35とで形成されている。そして、開口30が、ケース本体2側を向く面に設けられている。
図8は、カバー体3を開口30側から示す正面図であり、図9は、カバー体3をケース本体2に取り付けた状態を示す断面図である。
図8に示すように、このカバー体3は、1対の溝33a,34aを有している。
具体的には、溝33aが側壁33と底壁31との角部に形成され、溝34aが側壁34と底壁31との角部に形成されている。このような溝33a,34aの幅(図8の上下幅)は、ケース本体2の載置部4の厚さt(図2参照)にほぼ等しく設定され、溝33a,34a間の距離は、載置部4の幅wにほぼ等しく設定されている。
カバー体3が、かかる構造を有しているので、図9に示すように、カバー体3の底壁31を、ケース本体2の載置部4の下に位置させた状態で、溝33a,34aを載置部4の両端にスライド自在に嵌め込むことができる。この状態から、カバー体3を、ケース本体2の収納部60側にスライドさせて、カバー体3を完全に閉じることができる。
【0037】
以上のように、この実施例の除菌ケース1−1では、ケース本体2とカバー体3との全体の大きさを、スマートフォン100の大きさに近づけることができるので、除菌ケース1−1自体を小型化及び軽量化することができる。
さらに、薄い電極シート5をケース本体2内に敷設する構成であるので、電極シート5によって除菌ケース1−1が大型化するおそれはない。
【0038】
次に、この実施例の除菌ケース1−1の使用例について説明する。
図10は、除菌ケース1−1の使用例を示す概略側面図であり、図10の(a)は、スマートフォン100をケース本体2に載せた状態を示し、図10の(b)は、スマートフォン100をケース本体2に電気的に接続した状態を示し、図10の(c)は、カバー体3を閉じた状態を示す。また、図11は、スマートフォン100をケース本体2に載せた状態で、カバー体3を完全に閉じた状態を示す斜視図である。
【0039】
スマートフォン100は、次のようにして、この実施例の除菌ケース1−1を用いて充電及び除菌することができる。
まず、ユーザは、図10の(a)において、ケース本体2の電源65を、図示しない商用電源のコンセントに差し込む。
かかる状態では、スイッチ回路63のピン体63aは、外方からの押圧力を受けていないので、図5の実線で示したように、可動端子63dが固定端子63cと非接触状態にあり、電源はオフ状態である。このため、商用電源はケース本体2に入力されない。
かかる状態で、図10の(a)に示すように、雌コネクタ101をケース本体2の雄コネクタ7に向けた状態で、スマートフォン100を載置部4の電極シート5上に載置した後、スマートフォン100を収納部60側に移動させる。スマートフォン100を収納部60側に目一杯移動させることで、図10の(b)に示すように、雌コネクタ101を、収納部60から突出した雄コネクタ7に接続することができる。つまり、スマートフォン100は、雌コネクタ101と雄コネクタ7を通じて、直流変換回路62(図5参照)と電気的に接続された状態になる。
【0040】
次に、二点鎖線で示すように、カバー体3を載置部4に嵌める。具体的には、図9に示したように、カバー体3の溝33a,34aを載置部4の両端に嵌め込み、カバー体3をケース本体2の収納部60側に向けてスライドさせる。
そして、図10の(c)に示すように、カバー体3を収納部60側に目一杯移動させると、図11に示すように、カバー体3が完全に閉じた状態になる。
かかる状態では、図10の(c)に示すように、スイッチ回路63(図5参照)のピン体63aは、カバー体3の底壁31による押圧力を受けているので、ピン体63aが電圧供給部6内部に移動し、図5の破線で示したように、可動端子63dが固定端子63cに接触する。この結果、電源がオン状態に変わり、商用電源が電源65及びスイッチ回路63を介して、昇圧回路61と直流変換回路62と除菌メータ64とに入力され、これらが作動する。
【0041】
図12は、電極シート5からのオゾン発生状態を示す概略図である。
昇圧回路61が作動状態になると、図12に示すように、商用交流電圧の電源65から入力された100Vの交流電圧が、昇圧回路61によって、2kV〜10kVの交流電圧又はパルス電圧に昇圧され、電極シート5の電極51,52に供給される。すると、電極51の櫛歯51aの極性と電極52の櫛歯52aの極性とが、逆極性になり、放電が櫛歯51a,52a間に生じ、オゾンO3が発生する。この結果、矢印で示すように、多量のオゾンO3が電極シート5の周囲に放出される。
【0042】
図13は、オゾンによる除菌作用を説明するための断面図である。
上記のように、多量のオゾンO3が電極シート5の周囲に放出されると、図13に示すように、ガス状のオゾンO3は、閉じた除菌ケース1−1内に閉じこめられ、除菌ケース1−1全体に充満する。このため、オゾンO3が、スマートフォン100の周囲全体に回り込み、スマートフォン100の表面だけでなく、アクセサリ等で隠れた部分も除菌することとなる。
かかる状態では、図11に示すように、除菌メータ64によって、除菌の処理時間すなわち除菌ケース1−1の作動時間を視認することができる。
【0043】
一方、直流変換回路62では、電源65からの100Vの交流電圧が例えば5Vの直流電圧に変換され、図10に示したように、この直流電圧が、雄コネクタ7と雌コネクタ101を通じてスマートフォン100に供給される。つまり、スマートフォン100に対する除菌と充電とが同時に行われる。
【0044】
かかる電源オン状態においては、図5に示したように、コントローラ63fによって、タイマーが作動している。そして、除菌や充電が十分に達成されたであろう所定時間が経過すると、コントローラ63fが、固定端子63cと昇圧回路61,直流変換回路62及び除菌メータ64との電気的接続を断ち、除菌と充電とを終了させる。
ユーザは、除菌終了を確認後、図10の(c)に示す状態のカバー体3を、図10の(b)に示すように、左方にスライドさせる。これにより、ピン体63aへのカバー体3による押圧力が解放されるので、電源がオフ状態になる。この結果、コントローラ63fによって、タイマーがリセットされると共に、固定端子63cと昇圧回路61,直流変換回路62及び除菌メータ64とが元の電気的接続状態に戻される。
そして、図10の(a)に示すように、カバー体3をケース本体2から取り外すことで、除菌と充電が達成されたスマートフォン100を、除菌ケース1−1から取り出すことができる。
【0045】
(実施例2)
次に、この発明の第2実施例について説明する。
図14は、この発明の第2実施例に係る除菌ケース1−2を示す断面図である。
図14に示すように、この実施例の除菌ケース1−2は、スペーサ8を有している点が、上記第1実施例と異なる。
すなわち、複数のスペーサ8を、ケース本体2の電極シート5上に配設した。具体的には、載置されたスマートフォン100の下面四隅をこれらのスペーサ8で支持するように、4つ以上のスペーサ8を電極シート5上に固着した。
【0046】
かかる構成により、空隙S1が、スマートフォン100の下面と電極シート5との間に形成され、多量の空気が、この空隙S1にも入り込む。
これにより、電極シート5の上方に多量の酸素を確保することができ、電極シート5によるオゾンの発生率を高めることができる。
その他の構成、作用及び効果は、上記第1実施例と同様であるので、それらの記載は省略する。
【0047】
(実施例3)
次に、この発明の第3実施例について説明する。
図15は、この発明の第3実施例に係る除菌ケース1−3を示す断面図である。
図15に示すように、この実施例の除菌ケース1−3は、載置部4と電極シート5との形状が、上記第1及び第2実施例と異なる。
すなわち、載置部4を断面波形状に湾曲させ、フレキシブルな電極シート5をこの載置部4の形状に添って敷設した。
かかる構成により、多数の空隙S2が、スマートフォン100の下面と波形状の電極シート5との間に形成され、多量の空気が、これらの空隙S2に充満する。
これにより、電極シート5に多量の酸素を確保することができ、電極シート5によるオゾンの発生率を高めることができる。
さらに、電極シート5を、波形状に敷設することで、電極シート5の面積を大きく採ることができる。
その他の構成、作用及び効果は、上記第1及び第2実施例と同様であるので、それらの記載は省略する。
【0048】
(実施例4)
次に、この発明の第4実施例について説明する。
図16は、この発明の第4実施例に係る除菌ケース1−4を示す断面図である。
図16に示すように、この実施例の除菌ケース1−4では、電極シート5とは別体の電極シート5’を有している点が、上記第1ないし第3実施例と異なる。
【0049】
具体的には、電極シート5’を、カバー体3の天壁32内面に敷設した。
図17は、電極シート5’と昇圧回路61との電気的接続構造を示す概略平面図である。
図17に示すように、電極シート5’は、電極シート5と同構造であり、誘電体50と電極51,52とを有している。そして、雌コネクタ53の端子53a,53bが、この電極シート5’の電極51,52に接続され、雄コネクタ54の端子54a,54bが、昇圧回路61の両出力端に接続されている。これにより、雄コネクタ54を雌コネクタ53に挿入することで、雌コネクタ53の端子53a,53bと雄コネクタ54の端子54a,54bとが接触し、昇圧回路61と電極シート5’の電極51,52とが、雌コネクタ53及び雄コネクタ54を介して電気的に接続する。
【0050】
図18は、この実施例の除菌ケース1−4を一部破断して示す概略側面図である。
図18に示すように、電極シート5’は、カバー体3の天壁32の内面に貼り付けられており、その雌コネクタ53は、天壁32の後側に取り付けられている。一方、昇圧回路61に接続された雄コネクタ54は、電圧供給部6の前壁60a上部に突設されている。
【0051】
除菌ケース1−4が上記構成を採ることにより、カバー体3を、スマートフォン100が接続されたケース本体2の載置部4に嵌め、収納部60側に移動させると、電極シート5’の雌コネクタ53が、収納部60側の雄コネクタ54に近づく。そして、カバー体3を収納部60側に目一杯近づけると、雄コネクタ54が雌コネクタ53に挿入される。この結果、電圧供給部6の昇圧回路61と電極シート5’の電極51,52とが、雌コネクタ53及び雄コネクタ54を介して電気的に接続する。
かかる状態では、ピン体63aの移動により、電源がオン状態になっているので、交流電圧又はパルス状電圧が、昇圧回路61から電極シート5と電極シート5’の双方の電極51,52に供給される。これにより、オゾンが、上側の電極シート5’と下側の電極シート5からスマートフォン100に放出され、スマートフォン100が短時間に除菌される。
その他の構成、作用及び効果は、上記第1ないし第3実施例と同様であるので、それらの記載は省略する。
【0052】
(実施例5)
次に、この発明の第5実施例について説明する。
図19は、この発明の第5実施例に係る除菌ケース1−5のケース本体2を破断して示す概略断面図である。
図19に示すように、この実施例の除菌ケース1−5は、電源が、直流電源としての電池65’である点が、上記第1ないし第4実施例と異なる。
この実施例では、電池65’は、例えば、6Vの直流電圧を供給可能な乾電池であり、ケース本体2の収納部60内に収納することができる。
この電池65’は、スイッチ回路63を介して昇圧回路61’と直流変換回路62’と除菌メータ64とに接続されている。
昇圧回路61’は、電池65’からの6V直流電圧を2kV〜10kVの交流電圧又はパルス電圧に昇圧する機能を有し、直流変換回路62’は、電池65’からの6V直流電圧を5Vの直流電圧に変換する機能を有している。
【0053】
かかる構成により、電池65’からの6V直流電圧が、昇圧回路61’によって、この2kV〜10kVの交流電圧又はパルス状電圧に変換される。そして、この交流電圧又はパルス状電圧が昇圧回路61’から電極シート5の電極51,52に供給される。これと同時に、電池65’からの6V直流電圧が、直流変換回路62’によって、5Vの直流電圧に変換され、雄コネクタ7に供給される。
その他の構成、作用及び効果は、上記第1ないし第4実施例と同様であるので、それらの記載は省略する。
【0054】
(実施例6)
次に、この発明の第6実施例について説明する。
図20は、この発明の第6実施例に係る除菌ケース1−6のケース本体2を破断して示す概略断面図である。
図20に示すように、この実施例の除菌ケース1−6は、直流変換回路62’’が、電源の直流電圧をそのまま雄コネクタ7に供給する構造になっている点が、上記第1ないし第5実施例と異なる。
具体的には、雌コネクタ66が、電圧供給部6の収納部60の後壁60dに設けられ、この雌コネクタ66が、スイッチ回路63を介して昇圧回路61’’と直流変換回路62’’と除菌メータ64とに電気的に接続されている。
直流変換回路62’’は、雌コネクタ66からの直流電源を変換せずにそのまま雄コネクタ7に出力する回路であり、配線62a,62b自体で形成されている。
【0055】
この実施例の電源は、スマートフォン100で使用されている周知の充電器200から供給される5Vの直流電源である。
具体的には、充電器200は、100Vの商用電圧を5Vの直流電圧に変換する変換器201と、変換器201から引き出されたケーブル202と、ケーブル202の先端部に取り付けられたUSBコネクタ203とで構成されている。
そして、この充電器200のUSBコネクタ203を、ケース本体2の雌コネクタ66に挿入することで、USBコネクタ203の図示しない電源端子が、雌コネクタ66の端子66a,66bに接触するようになっている。
【0056】
かかる構成により、充電器200の変換器201を商用電源のコンセントに接続すると共に、USBコネクタ203をケース本体2の雌コネクタ66に接続すると、スイッチ回路63のオン時には、USBコネクタ203からの5V直流電圧が、昇圧回路61’’と直流変換回路62’’と除菌メータ64とに供給される。そして、5V直流電圧は、昇圧回路61’’によって2kV〜10kVの交流電圧又はパルス状電圧に変換され、直流変換回路62’’によって、5V直流電圧のまま、雄コネクタ7に供給される。
その他の構成、作用及び効果は、上記第1ないし第5実施例と同様であるので、それらの記載は省略する。
【0057】
(実施例7)
次に、この発明の第7実施例について説明する。
図21は、この発明の第7実施例に係る除菌ケース1−7を示す概略側面図である。
上記第1ないし第6実施例では、カバー体3をスライドさせて、ケース本体2に取り付けることができる構成としたが、この実施例の除菌ケース1−7は、図21に示すように、カバー体3をケース本体2に回転自在に取り付けた点が、上記第1ないし第6実施例と異なる。
具体的には、カバー体3の前壁35側の下部を、ケース本体2の載置部4の前側(図21の左側)に軸39を用いて回転自在に取り付けた。
そして、スイッチ回路63のピン体63aを、ケース本体2の収納部60の天壁60c上に取り付けた。
【0058】
かかる構成により、図21の実線で示すように、カバー体3を開いて、スマートフォン100をケース本体2に載置することができる。そして、図21の二点鎖線で示すように、カバー体3を閉じることで、スマートフォン100を除菌ケース1−7内に閉じこめることができる。そして、カバー体3を閉じると、カバー体3の天壁32がピン体63aを押圧するので、電源がオン状態になる。
その他の構成、作用及び効果は、上記第1ないし第6実施例と同様であるので、それらの記載は省略する。
【0059】
(実施例8)
次に、この発明の第8実施例について説明する。
図22は、この発明の第8実施例に係る除菌ケースの要部を示す断面図であり、図23は、図22に示す要部を分解して示す斜視図である。
図22に示すように、この実施例の除菌ケースは、電極シート5’’の構造が、上記実施例の電極シート5,5’と異なる。
すなわち、一方の電極51’のみが誘電体50内部に収納され、他方の電極52’−1は、誘電体50の表面に設けられている。
【0060】
具体的には、図23に示すように、ベタ状の電極51’が下層の誘電体層50b上に積層形成され、上層の誘電体層50aが、電極51’を覆うように誘電体層50b上に積層されている。そして、電極51’とほぼ同形の電極52’−1が、誘電体層50a上に形成されている。さらに、保護層55が、電極52’−1の上に積層されている。
また、電極51’の角部には、端子部51a’が設けられ、その上の誘電体層50aの角部には、端子部51a’を覗く矩形状の給電口50cが形成されている。さらに、給電口50cと連通する給電口55aが、保護層55の角部に設けられている。そして、昇圧回路61の一方の出力端から延出した配線61aが、給電口55aと給電口50cを通って、電極51’の端子部51a’に接続されている。
一方、電極52’−1の角部には、端子部52a’が設けられ、その上の保護層55の角部には、端子部52a’を覗く矩形状の給電口55bが形成されている。そして、昇圧回路61の他方の出力端から延出した配線61bが、給電口55bを通って、電極52’−1の端子部52a’に接続されている。
さらに、誘電体50の表面に設けられた電極52’−1には、多数の円形孔52b’が一定間隔で穿設されている。
この実施例の電極シート5’’においても、上記第1実施例の電極シート5と同様に、電極シート5’’全体を、全て高分子樹脂で形成した。すなわち、誘電体層50a,50bと保護層55とを、それぞれポリイミド樹脂で形成しただけでなく、電極51’,52’−1も高分子樹脂である導電性ポリマーで形成した。
なお、この実施例では、保護層55を、誘電体50の表面にある電極52’−1の上に設けたが、保護層55は、必須の部材ではなく、場合によっては、設けることを要しない。
また、この実施例は、他の電極として、多数の円形孔52b’を有した電極52’−1を適用したが、図24の(a)に示すように、網状の電極52’−2を他の電極として適用することができるし、図24の(b)に示すように、櫛歯状の電極52’−3を他の電極として適用することができる。
その他の構成、作用及び効果は、上記第1ないし第7実施例と同様であるので、それらの記載は省略する。
【0061】
(実施例9)
次に、この発明の第9実施例について説明する。
図25は、この発明の第9実施例に係る除菌ケースの要部を示す断面図であり、図26は、除菌作用を説明するための部分拡大断面図である。
図25に示すように、この実施例の除菌ケース1−9は、除菌対象面と電極シート5との距離hを一定値に保つ構造になっている点が、上記第1〜第8実施例と異なる。
すなわち、この実施例では、保持部としてのスペーサ8’の高さhを10mm以下の範囲内に設定した。
【0062】
上記第2実施例等で示したように、スマートフォン100の表面が鏡面である場合には、スマートフォン100と電極シート5との距離の如何にかかわらず、スマートフォン100の表面の菌をオゾンによってほぼ完全に除菌することができる。
しかし、スマートフォン100の表面がざらざらであったり、ざらざらした素材や布製のケースに収納したスマートフォン100を除菌する場合には、除菌対象であるスマートフォン100の表面やケース表面と電極シート5との距離が大きいと、除菌効果がほとんど得られないことがある。
【0063】
そこで、この実施例では、スペーサ8’の高さhを10mm以下の範囲内に設定して、除菌対象を電極シート5の近傍に位置させることにより、ざらざらな表面を有したスマートフォン100やざらざらした素材や布製のケースに対しても、高い除菌効果を得ることができるようにした。
具体的には、4つ以上のスペーサ8’を電極シート5上に固着して、除菌対象と電極シート5との距離hが、10mm以下の範囲内に保持されるようにした。
【0064】
これにより、図25に示すように、スマートフォン100をざらざらした素材や布製のケース110(移動体通信機ケース)に収納して、ケース110をスペーサ8’上に載置すると、ケース110の表面と電極シート5との距離hが、10mm以下の範囲内の距離に保たれる。
かかる状態で、カバー体3をケース本体2に嵌めて、オゾンを発生させると、オゾンが、ケース110と電極シート5との間の空隙に充満し、ケース110の表面に付着した菌を除菌しようとする。
【0065】
しかし、ケース110の表面がざらざらしていると、図26に示すように、ほとんどの菌Kがケース110の表面110aの多数の凹部110b内に入り込む。したがって、ケース110の表面110aと電極シート5との距離hが大きいと、オゾンが凹部110b内の菌Kを除菌することができず、除菌効果が著しく低下する。
しかしながら、この実施例では、ざらざらなケース110の表面110aと電極シート5との距離hを、スペーサ8’によって、10mm以下の範囲内の距離に保つことにより、ケース110の表面110aを電極シート5の近傍に対面させているので、凹部110b内の菌Kがオゾンによって確実に除菌される。
【0066】
発明者等は、かかる効果を実証すべく、次のような実験を行った。
図27は、菌Kの生存状態を示す写真の転写図である。
発明者等は、この実験を一般的な室内環境で行った。
まず、準備として、雑菌(一般生菌、以下「菌K」と記す)を別途培養し、この菌Kを図示しないポリエステル綿混紡の布片に噴霧した後、布片を乾燥させた。
そして、この準備しておいた布片の表面を、5cm角の培地Bでふき取り、35℃の温度下で48時間、菌Kをこの培地Bで培養した。すると、図27の(a)に示すように、5cm角の培地Bに、「137」の菌Kが生存していた。
つまり、オゾン処理をしない状態では、菌Kの生存数は、「137」であることを確認した。
次に、準備しておいた上記布片を、菌Kが噴霧された面を電極シート5に対面させた状態で、電極シート5の真上xmmに固定した。かかる状態で、オゾンを電極シート5から発生させ、布片をオゾン中に2時間晒した。このとき、周波数13Hzでp−p14kVのパルス電源を電極シート5に供給して、オゾンを発生させた。
しかる後、オゾン処理されたこの布片の表面を、5cm角の培地Bでふき取り、35℃の温度下で48時間、菌Kをこの培地Bで培養した。
布片と電極シート5との距離xmmを、2mm、5mm、10mm、20mm、30mmに設定して、上記のオゾン処理を行った。すると、布片と電極シート5との距離2mmでは、図27の(b)に示すように、5cm角の培地Bにおける菌Kの生存数は、「1」であり、距離5mmでは、図27の(c)に示すように、菌Kの生存数は、「19」であり、距離10mmでは、図27の(d)に示すように、菌Kの生存数は、「51」であり、距離20mmでは、図27の(e)に示すように、菌Kの生存数は、「103」であり、距離30mmでは、図27の(f)に示すように、菌Kの生存数は、「102」であった。
つまり、オゾン処理をした状態では、布片と電極シート5との距離を増加させると、菌Kの生存数が増加することを確認した。
【0067】
図28は、菌Kの生存率と距離との関係を示す線図である。
発明者等は、菌Kの生存率を、(オゾン処理後の菌数÷オゾン未処理の菌数)×100(%)として定義し、上記オゾン処理における電極シート/布片間距離と菌Kの生存率との関係をプロットした。
すると、図28に示すように、点p1〜p5を得た。
点p1,p2,p3が示すように、距離2mm,5mm,10mmでは、生存率が、1%,14%,37%であり、基準生存率50%を下回っている。
ところが、点p4,p5が示すように、距離20mm,30mmでは、75%,74%であり、基準生存率50%を大きく上回っている。
かかる実験結果から、生存率が確実に「50」%未満になる布片と電極シート5との距離は、10mm以下であると判断することができる。
そこで、発明者等は、図25に示すスペーサ8’で保持する距離hを、10mm以下の範囲内に設定した。このように、ケース110の表面110aと電極シート5との距離hを、10mm以下の範囲内に保つことで、図28に示すように、ケース110の表面110aに生存する菌Kを、基準生存率「50」%未満に抑制することができる。
【0068】
なお、この実施例では、電極シート5上に突設したスペーサ8’を、保持部として適用した例を示したが、保持部は、このようなスペーサ8’だけに限定されるものではない。図29に示すように、載置部4の隅を上方に突出させて形成したスペーサ8’’も含む。
その他の構成、作用及び効果は、上記第1ないし第8実施例と同様であるので、それらの記載は省略する。
【0069】
なお、この発明は、上記実施例に限定されるものではなく、発明の要旨の範囲内において種々の変形や変更が可能である。
例えば、上記実施例では、電極シート5,5’’の電極51,52,51’,52’−1〜52’−3も、誘電体50と同じく高分子樹脂である導電性ポリマーで形成したが、電極51,52,51’,52’−1〜52’−3を銅等の金属箔や、炭素や銀等の導電性インクで形成しても良い。
また、上記第1〜第7実施例の電極シート5,5’では、櫛歯状の1対の電極51,52を共に誘電体50内に収納した構成を採用し、第8実施例の電極シート5’’では、一方の電極51’を誘電体50内に収納すると共に他方の電極52’−1を誘電体50の表面に設けた構成を採用したが、電極シートの構成は、これに限らず、例えば、1対の電極を平板状に形成して、これら2つの電極を、一定間隔を保って、横並びにした構成にしても良く、また、一つの電極を共に渦巻き状に形成して、これら渦巻き状の1対の電極を一定の間隔を保って嵌め合わせた構成にしても良い。
また、上記実施例では、除菌メータ64を備えた除菌ケース1−1〜1−7について例示したが、除菌メータ64を備えていない除菌ケースも、この発明の範囲に含まれることは勿論である。
また、上記実施例では、移動体通信機の一例として、スマートフォン100を示したが、これに限らず、移動体通信機には、いわゆるガラパゴス携帯電話といわれる携帯電話や一般的な携帯電話等も含まれることは、勿論である。
【符号の説明】
【0070】
1−1〜1−7,1−9…除菌ケース、 2…ケース本体、 3…カバー体、 4…載置部、 5,5’,5’’…電極シート、 6…電圧供給部、 7,54…雄コネクタ、 7a,7b…電源端子,53a,53b,54a,54b,66a,66b…端子、 8,8’,8’’…スペーサ、 30…開口、 31…底壁、 32…天壁、 33,34…側壁、 33a,34a…溝、 35…前壁、 39…軸、 50…誘電体、 50a,50b…誘電体層、 50c,55a,55b…給電口、 51,52,51’,52’−1〜52’−3…電極、 51a,52a…櫛歯、 51a’,52a’…端子部、 52b’…円形孔、 53,66,101…雌コネクタ、 55…保護層、 60…収納部、 60a…前壁、 60b…孔、 60c…天壁、 60d…後壁、 61,61’,61’’…昇圧回路、 61a,61b…配線、 62,62’,62’’…直流変換回路、 62a,62b…配線、 63…スイッチ回路、 63a…ピン体、 63b…スプリング、 63c…固定端子、 63d…可動端子、 63e…ストッパ、 63f…コントローラ、 64…除菌メータ、 65…電源、 65’…電池、 100…スマートフォン、 110…ケース、 110a…表面、 110b…凹部、 200…充電器、 201…変換器、 202…ケーブル, 203…USBコネクタ、 B…培地、 h…距離、 K…菌、 S1,S2…空隙。
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