特許第6739081号(P6739081)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6739081
(24)【登録日】2020年7月27日
(45)【発行日】2020年8月12日
(54)【発明の名称】錠剤分割装置
(51)【国際特許分類】
   A61J 3/00 20060101AFI20200730BHJP
【FI】
   A61J3/00 310F
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-851(P2017-851)
(22)【出願日】2017年1月6日
(65)【公開番号】特開2018-108312(P2018-108312A)
(43)【公開日】2018年7月12日
【審査請求日】2019年6月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000151472
【氏名又は名称】株式会社トーショー
(74)【代理人】
【識別番号】100106345
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 香
(72)【発明者】
【氏名】大村 義人
【審査官】 胡谷 佳津志
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/032418(WO,A1)
【文献】 特開平11−226088(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/014533(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0005800(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0031872(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61J 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
落下して来た錠剤を受け入れて裁断位置へ導く錠剤案内機構と、前記裁断位置の錠剤を裁断する裁断機構と、前記裁断機構の横に設けられていて前記裁断機構の駆動を行う駆動機構と、前記錠剤案内機構と前記裁断機構とを収めた箱体とを備えた錠剤分割装置において、前記箱体を上下に貫く回転伝動軸が設けられており、薬剤分包機に搭載される錠剤フィーダのベース部の上に前記箱体を載せることで前記回転伝動軸の下端部が前記ベース部と回転伝動可能に連結されるとともに前記錠剤案内機構の錠剤裁断片送出口が前記ベース部の錠剤受入箇所に連結されるようになっており、ランダム収容した錠剤を整列盤の回転にて一つずつ落下排出させる錠剤カセットを前記箱体の上に載せることで前記回転伝動軸の上端部が前記整列盤と回転伝動可能に連結されるとともに前記錠剤案内機構の錠剤受入口が前記錠剤カセットの錠剤排出箇所と連結されるようになっていることを特徴とする錠剤分割装置。
【請求項2】
前記錠剤案内機構が、周縁部に凹みを形成された円板状回転体を具備しており、前記円板状回転体が、前記回転伝動軸と回転伝動可能に連結されていて、受け入れた錠剤を前記凹みに保持して回転することで移動させるようになっていることを特徴とする請求項1記載の錠剤分割装置。
【請求項3】
前記回転伝動軸から前記錠剤カセットの前記整列盤への回転伝達比と、前記回転伝動軸から前記円板状回転体への回転伝達比とが、前記錠剤カセットの錠剤排出と前記円板状回転体の前記凹みの錠剤受入とを同期させるように、対応づけられていることを特徴とする請求項2記載の錠剤分割装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、錠剤を裁断して幾つかの錠剤裁断片に分割する錠剤分割装置に関し、詳しくは、多数の錠剤をランダム収容して逐次排出する錠剤フィーダを多数搭載した薬剤分包機に対して錠剤フィーダのうちの着脱部分である錠剤カセットに代えて搭載するのに好適な錠剤分割装置に関する。
【背景技術】
【0002】
錠剤分割装置は、手動のものは別として、或る程度以上自動化されたものは(例えば特許文献1〜7参照)、一粒の錠剤を裁断して二つの半錠などに分割するための裁断機構に加え、多数の錠剤をランダム収容して逐次排出する錠剤フィーダも具備して、錠剤フィーダと裁断機構とを連動させることで、所要の錠剤裁断片を適時に供給するようになっている。それらのうち幾つかは薬剤分包機に搭載して使用されるが(例えば特許文献1,2参照)、他の幾つかは薬剤分包機から独立して使用されるようになっている(例えば特許文献3〜7参照)。裁断機構には、進退刃を用いるものや(例えば特許文献1〜3,4〜7参照)、回転刃を用いるものがある(例えば特許文献3参照)。
【0003】
また、そのような裁断機構と錠剤フィーダとの組み合わせ方を見ると、特に、錠剤フィーダが、電動モータ等の駆動部材を含むフィーダベース(ベース部)と、受動部材からなる着脱式の錠剤カセットとからなり、ベース部の上に錠剤カセットを載置した状態で錠剤排出を行うものである場合の組み合わせ方を見ると、独立タイプでは(例えば特許文献3〜7参照)、フィーダベースと裁断機構とが錠剤分割装置の本体部に組み込まれ、その本体部に錠剤カセットを装着すると、錠剤カセットから一つずつ落下排出された錠剤がフィーダベースを落下通過してから裁断機構まで落下するようになっている。
【0004】
これに対し、薬剤分包機搭載タイプでは(例えば特許文献1,2参照)、錠剤カセットも、フィーダベースも、薬剤分包機に通常態様で搭載された錠剤フィーダのものが流用される。そして、裁断機構は、別ユニット化されて、錠剤フィーダ格納庫の直下や錠剤フィーダ格納庫内の他の錠剤フィーダを取り出した後の空き空間に格納する態様で薬剤分包機に搭載され、対応する上流の錠剤フィーダと錠剤案内用の管路で繋がれる。
このタイプでも、やはり錠剤カセットから一つずつ落下排出された錠剤がフィーダベースを落下通過してから裁断機構まで落下するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−226088号公報
【特許文献2】特開平11−226089号公報
【特許文献3】特開2011−83357号公報
【特許文献4】特開2011−97969号公報
【特許文献5】特開2012−29800号公報
【特許文献6】特開2012−179127号公報
【特許文献7】特開2013−039236号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、このような薬剤分包機搭載タイプの錠剤分割装置は、裁断機構に駆動部材を付設した組込用ユニットが横に長い形をしていたため、錠剤フィーダ格納庫の直下などに組み込むのには好都合であるが、錠剤フィーダ格納庫の中に組み込んだ場合、隣り合う二個の錠剤カセットの載置空間を一個の組込用ユニットが占有するため、それと分割対象錠剤の供給元の錠剤カセットとを合わせた三個分のカセット載置空間が一台の錠剤分割装置の搭載に費やされるので、錠剤分割装置の庫内搭載数が増えると、急に、通常使用の錠剤カセットの搭載個数ひいては自動分包可能な錠剤の種類が減少してしまうこととなる。
【0007】
そして、かかる不都合を緩和や解消するには、先ず基本的事項として、裁断機構の小形化や裁断機構と錠剤カセットとの一体化ということが思い浮かぶ。
さらに、その具体策の典型例として、カッター刃と留め具だけの最少部材で裁断機構を構成し、それを錠剤カセットの錠剤整列部のうちで仕切り板より低い部位に仕切り板のようにして錠剤整列部に組み込むことが考えられる。そうすれば、錠剤カセットの内部に裁断機構の全体が総て収まるので、錠剤分割装置の搭載による剤種の減少が避けられる。
【0008】
しかしながら、そのような裁断用カッター刃を錠剤フィーダの錠剤カセットの錠剤整列部に組み込む具体化では、錠剤整列部がカセット内底のロータ(整列盤)の周縁部分に形成されていて循環運動するという最も実使用されている錠剤カセットに適用した場合、錠剤カセットの錠剤整列部内の水平な円形の経路を移動中の錠剤がそれを待ち受けているカッター刃に当接した反動で裁断されるというメカニズムで錠剤分割が遂行されることから、錠剤の移動状態の安定度が分割精度に大きく影響するところ、錠剤整列部の錠剤の移動状態はその中に入っている幾つかの錠剤の収まり具合といった直接的状況ばかりか錠剤整列部の上部空間にランダム収容された多数の錠剤の重なり具合といった間接的状況にも影響されるので、そして、それらの状況が不確定で変化しやすいものであるため、錠剤裁断の状態が安定せず、裁断の精度を向上させるのが難しく、分割可能な錠剤が限定される。
【0009】
しかも、錠剤裁断が間欠的に行われる度に、その反動で錠剤カセットの錠剤整列部の動作状態が乱れやすく、特にロータの回転状態に急減速と直後の急加速とが発現しやすいので、そして、そのような乱れが発現すると、それが錠剤整列動作に良くない影響を及ぼすことになるのも、好ましくない。
また、錠剤を整列させるのに使う動力に加えて錠剤を裁断するのに使う動力までも必要になるため、硬めの錠剤を裁断するには、錠剤フィーダベースに装備されている動力源や伝動部材さらには錠剤カセットの構成部材についても強化が必要になるので、不所望なコストアップを覚悟せざるを得ない。
【0010】
さらに、錠剤整列部の中で錠剤裁断を実行すると、裁断に付随して発生した粉塵や欠けら等が錠剤カセットの内面に付着したり摺動用の間隙に詰まったりするといったことの発生頻度が高くなるので、その点も好ましくない。
このように、カッター刃を錠剤整列部に組み込む方式の錠剤分割装置は、コンパクト化に関しては優れたものとなるが、性能や実用性に関しては従来品のレベルを確保することすら困難であると言わざるを得ない。
そこで、薬剤分包機の錠剤カセット搭載箇所へコンパクトに搭載できて実用性等も良い錠剤分割装置を開発することが技術的な課題となる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の錠剤分割装置は(解決手段1)、このような課題を解決するために創案されたものであり、落下して来た錠剤を受け入れて裁断位置へ導く錠剤案内機構と、前記裁断位置の錠剤を裁断する裁断機構と、前記裁断機構の横に設けられていて前記裁断機構の駆動を行う駆動機構と、前記錠剤案内機構と前記裁断機構とを収めた箱体とを備えた錠剤分割装置において、前記箱体を上下に貫く回転伝動軸が設けられており、薬剤分包機に搭載される錠剤フィーダのベース部の上に前記箱体を載せることで前記回転伝動軸の下端部が前記ベース部と回転伝動可能に連結されるとともに前記錠剤案内機構の錠剤裁断片送出口が前記ベース部の錠剤受入箇所に連結されるようになっており、ランダム収容した錠剤を整列盤の回転にて一つずつ落下排出させる錠剤カセットを前記箱体の上に載せることで前記回転伝動軸の上端部が前記整列盤と回転伝動可能に連結されるとともに前記錠剤案内機構の錠剤受入口が前記錠剤カセットの錠剤排出箇所と連結されるようになっていることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の錠剤分割装置は(解決手段2)、上記解決手段1の錠剤分割装置であって、前記錠剤案内機構が、周縁部に凹みを形成された円板状回転体を具備しており、前記円板状回転体が、前記回転伝動軸と回転伝動可能に連結されていて、受け入れた錠剤を前記凹みに保持して回転することで移動させるようになっていることを特徴とする。
【0013】
さらに、本発明の錠剤分割装置は(解決手段3)、上記解決手段2の錠剤分割装置であって、前記回転伝動軸から前記錠剤カセットの前記整列盤への回転伝達比と、前記回転伝動軸から前記円板状回転体への回転伝達比とが、前記錠剤カセットの錠剤排出と前記円板状回転体の前記凹みの錠剤受入とを同期させるように、対応づけられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
このような本発明の錠剤分割装置にあっては(解決手段1)、裁断機構等を格納した箱体を錠剤フィーダの錠剤カセットとベース部との間に割り込ませることができるようにしたことにより、錠剤カセットに背の低いものを採用すれば、薬剤分包機の錠剤カセット搭載箇所に錠剤カセットだけでなく裁断機構等までも搭載できるので、カッター刃を錠剤カセットに組み込むまでもなく、コンパクト実装が叶うものとなる。しかも、錠剤裁断が錠剤カセットより下方で実行されることから、裁断に付随して発生した粉塵や欠けら等が錠剤カセットの内面に付着したり錠剤整列部の中に詰まったりすることが無いので、カッター刃の実装態様によっては懸念されるような性能の低下も回避されている。
【0015】
また、そのような割り込み介装態様への改造に加え、箱体を上下に貫く回転伝動軸も導入して、箱体を介在させればそれに随伴してベース部から錠剤カセットへ回転が伝達されるようにもしたことにより、薬剤分包機が新設であれ既設であれ、その錠剤フィーダ格納庫の中に錠剤分割装置を組み込むのが簡便に行えるようになる。しかも、錠剤カセットの着脱容易性等は損なうことなく維持されるので、実用性が高い。さらに、裁断機構の駆動が駆動機構によって行われるので、ベース部に過大な負荷が掛かることもない。
したがって、この発明によれば、薬剤分包機の錠剤カセット搭載箇所へコンパクトに搭載できて実用性等も良い錠剤分割装置を実現することができる。
【0016】
また、本発明の錠剤分割装置にあっては(解決手段2)、錠剤カセットから受け入れた錠剤を裁断位置へ導く錠剤案内機構として、管路等の静的な経路形成部材にとどまらず、動的な円板状回転体も導入して、円板状回転体の周縁部に形成された凹みに収めて錠剤を運ぶようにしたことにより、錠剤の受取と移動と受渡とを円板状回転体の回転運動でシンプル且つ的確に遂行することができるうえ、錠剤に衝撃を与えることなく錠剤を裁断位置に安定状態で正確にセットすることができる。しかも、円板状回転体が回転伝動軸に連結されているので、専用の回転駆動手段が不要であり、そのようにしても円板状回転体の回転負荷は軽いので、ベース部の強化は要らない。
【0017】
さらに、本発明の錠剤分割装置にあっては(解決手段3)、錠剤カセットの錠剤排出タイミングと円板状回転体の凹みの錠剤受入タイミングとが同期するようにしたことにより、錠剤カセットから錠剤案内機構への錠剤引渡が円滑に行われることとなる。しかも、そのような同期採りが、回転伝動軸から整列盤および円板状回転体への両回転伝達比の対応づけにて具体化したことにより、簡便に実現される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施例1について、錠剤分割装置の構造を示し、(a)が分離している状態の錠剤カセットと錠剤分割装置とベース部の正面図、(b)が装着状態の錠剤カセットと錠剤分割装置とベース部の正面図、(c)が箱体の天板部を切り取った錠剤カセットの平面図である。
図2】(a)が錠剤分割装置のAA矢視断面図、(b)が錠剤分割装置のBB矢視断面図である。
図3】錠剤フィーダ格納庫に複数の錠剤分割装置を搭載した薬剤分包機の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
このような本発明の錠剤分割装置について、これを実施するための具体的な形態を、以下の実施例1により説明する。
図1〜3に示した実施例1は、上述した解決手段1〜3(出願当初の請求項1〜3)を総て具現化したものである。
なお、それらの図示に際しては、簡明化等のため、ボルト等の締結具や,ヒンジ等の連結具,ギヤやタイミングベルト等の伝動部材,モータドライバ等の電気回路,コントローラ等の電子回路などは図示を割愛し、発明の説明に必要なものや関連するものを中心に図示した。
【実施例1】
【0020】
本発明の錠剤分割装置の実施例1について、その具体的な構成を、図面を引用して説明する。図1は、(a)が分離している状態の錠剤カセット20と錠剤分割装置30とベース部13とに係る正面図、(b)が装着状態の錠剤カセット20と錠剤分割装置30とベース部13とに係る正面図、(c)が箱体31,32の天板部を切り取った錠剤カセット30に係る平面図である。また、図2は、(a)が錠剤分割装置30のAA矢視断面図、(b)が錠剤分割装置30のBB矢視断面図である。さらに、図3は、錠剤フィーダ格納庫11に多数の錠剤カセット16と複数の錠剤分割装置30を搭載した薬剤分包機10の模式図である。
【0021】
錠剤分割装置30は(図1(a),(b)参照)、先ず使用目的に基づく概要構成を述べると、通常の錠剤カセット16を置き換える態様で薬剤分包機10に搭載するためのものであり、薬剤分包機10の錠剤フィーダ格納庫11の棚12に設けられて隣り合っている二個のベース部13,13の上に着脱しうるようになっていて、そこに装着して使用される。また、錠剤分割装置30は、その上に専用の錠剤カセット20を着脱することもできるようになっており、乗載された錠剤カセット20の錠剤排出箇所23から落下した錠剤を受け入れて、それを裁断して二つの半錠(複数の錠剤裁断片)にしてから、半錠を一つずつベース部13の錠剤受入箇所15へ落下させるようになっている。さらに、錠剤分割装置30に錠剤カセット20を重ねた合計の高さが、通常の錠剤カセット16の高さと概ね一致するようにもなっている。
【0022】
次に(図1図2参照)、単体構成を述べると、錠剤分割装置30は、錠剤カセット20の錠剤排出箇所23から落下して来た錠剤を錠剤受入口63に受け入れて錠剤裁断位置である開閉板65の上へ導く錠剤案内機構60と、その裁断位置の錠剤を裁断する裁断機構50と、その裁断機構の横に設けられていて裁断機構50の動作駆動を行う駆動機構70と、裁断機構50と錠剤案内機構60と駆動機構70の伝動部分とを格納した作動部用箱体31と、駆動機構70のうち作動部用箱体31に収まりきらない駆動源等を格納したモータ用箱体32と、作動部用箱体31を上下に貫く回転伝動軸40とを具えている。
【0023】
以下、各部を詳述する。作動部用箱体31とモータ用箱体32は、一体物であっても良いが、この例では、製造や保守の容易性等を考慮して、別体で作られており、各々の箱体に内蔵物を格納してから両箱体31,32を隣り合わせで連結させることで、あるいは両箱体31,32を隣り合わせで連結させてから夫々の箱体に内蔵物を格納することで、一体的に取り扱えるようになっている。作動部用箱体31の高さは通常の錠剤カセット16の半分強程度であり、モータ用箱体32の高さはそれより少し大きい程度である。
【0024】
回転伝動軸40は、作動部用箱体31の内部の中央位置近くに直立状態で軸回転可能に支持された軸体からなり(図1参照)、その下端部43の端面の穿孔の内周面に噛合壁44が形成されている(図2(a)参照)。この回転伝動軸40の下端部43が噛合壁44も含めて通常の錠剤カセット16の整列盤の下端部と同様になっていることから、薬剤分包機に搭載される錠剤フィーダのベース部13の上に作動部用箱体31を載せると(図1(a),(b)参照)、回転伝動軸40の下端部43の穿孔にベース部13の錠剤カセット駆動用のスプライン軸14が嵌入するとともに、下端部43の噛合壁44とスプライン軸14とが噛み合うので、下端部43ひいては回転伝動軸40がベース部13と回転伝動可能に連結されるものとなっている。
【0025】
一方、回転伝動軸40の上端部41には(図1(c),図2(a)参照)、軸部からその外径方向へ放射状に突き出た噛合羽42が幾本(図示の例では3本)か形成されており、そのような上端部41が軸部ばかりか噛合羽42も含めて錠剤カセット20の整列盤21の下端部の嵌合穴に雄雌対応している。そのため、回転伝動軸40は、錠剤カセット20を作動部用箱体31の上に載せ置くと(図1(b)参照)、上端部41と整列盤21とが、ひいては回転伝動軸40と整列盤21とが、回転伝動可能に連結されるものとなっている。
【0026】
裁断機構50は(図1(c)参照)、公知の対向刃方式が採用されており(特許文献1,2参照)、一対の固定刃ユニット51と可動刃ユニット52とを具備している。この例では、上述したように開閉板65の上が錠剤裁断位置になっているので(図2(b)参照)、その直ぐ手前に固定刃ユニット51が固定され(図1(c)参照)、錠剤裁断位置の少し奥であって回転伝動軸40より手前の所に可動刃ユニット52が進退可能に保持されている(図1(c)参照)。そして、可動刃ユニット52を固定刃ユニット51に向かって前進させると、錠剤裁断位置(開閉板65の上)の錠剤を上下に裁断して二つの半錠(錠剤裁断片)に分割する。また、何れのユニット51,52も、底部に挟み込むシムを取り替えることで簡便に刃の高さ位置を錠剤に合わせることができるようになっている。
【0027】
駆動機構70は(図1(c),図2参照)、錠剤裁断時に可動刃ユニット52を進退させるものであり、そのために、前端部に可動刃ユニット52を保持する進退部71,71と、出力軸を回転させるモータ73と、その回転運動を直線運動に変換して進退部71に伝達する回転直線変換部72と、モータ73に駆動電力を供給するドライバ74とを具備している。それらと回転伝動軸40との干渉を回避するために、この駆動機構70では(図1(c)参照)、進退部71,71が二つの部材に分かれて回転伝動軸40の両側に配設されるとともに、回転直線変換部72が回転伝動軸40の後方に設置されている。
【0028】
この回転直線変換部72は、詳細な図示を割愛したが、例えば、クランクとスライダとの組み合わせや、回転輪とリンク部材とスライダとの組み合わせ等で、具体化されている。なお、進退部71は、可動刃ユニット52の進退駆動を行うに際して、開閉板65の開閉駆動も行うようになっている。
また、モータ73とドライバ74は、高価だが超小型のものを採用すれば回転直線変換部72等と一緒に作動部用箱体31に格納しえないこともないが、この例では、コストと利点とのバランスを重視して、モータ用箱体32に格納しうるものを採用している。
【0029】
錠剤案内機構60は(図2(b)参照)、錠剤受入口63から始まって錠剤通路64と錠剤裁断位置および開閉板65とを経由して錠剤裁断片送出口66に至る錠剤落下経路63〜66を主体としたものであるが、錠剤受入口63の直下に設けられて錠剤通路64に臨んでいる円板状回転体61も具備している。それらのうち、錠剤受入口63は、箱体31の天板部に形成された開口であって、作動部用箱体31に搭載された錠剤カセット20の錠剤排出箇所23と連通するようになっている。錠剤通路64は、円板状回転体61の周縁部に沿って約半周分ほど形成されている。開閉板65は、進退部71の進退に随伴して開閉動作を行うものであり、閉状態では錠剤を受け止めて錠剤裁断位置に留め置く一方、開状態では錠剤裁断後の錠剤裁断片を落下させて錠剤裁断片送出口66へ送るようになっている。
【0030】
円板状回転体61は(図1(c),図2(b)参照)、周縁部に等ピッチで複数(図では3個)の凹み62が形成された縦置きの円板部と(図2(b)参照)、その中心から直に又は横軸を介して後方の回転伝動軸40に歯部を向けた「かさ歯車部(図1(c)参照)」とを具備したものであり、そのかさ歯車部と(図1(c)参照)、上述の回転伝動軸40に付設されているかさ歯車45とが(図2(a)参照)、噛合している(図1(c)参照)。そして、この噛合によって円板状回転体61と回転伝動軸40とが回転伝動可能に連結されているので、回転伝動軸40が軸回転すると、それに随伴して円板状回転体61が回転(自転)するようになっている。
【0031】
また、円板状回転体61の凹み62は(図2(b)参照)、何れも、錠剤5の出し入れに要する僅かな遊びを伴って、その中に錠剤5を収めることができるように形成されており、錠剤受入口63の直下で上向きになっているときは、錠剤受入口63から錠剤5を受け入れることができ、錠剤通路64に面して斜めや横向きになっているときは、錠剤通路64の中に錠剤5を保持し続け、開閉板65の上方で下向きになったときは、錠剤5を開閉板65の上の錠剤裁断位置に留め置くようになっている。そして、円板状回転体61は、錠剤受入口63から受け入れた錠剤5を一つずつ各凹み62に保持して回転することで錠剤裁断位置へ移動させるものとなっている。
【0032】
さらに、回転伝動軸40からかさ歯車45を介して円板状回転体61に伝達される回転運動の回転伝達比と、回転伝動軸40から錠剤カセット20の整列盤21に伝達される回転運動の回転伝達比とが、噛合箇所の歯数比の設定等で、適切に対応づけられていることから、具体的には、回転伝動軸40が所定角度だけ回転すると整列盤21が一錠排出分だけ回転するとともに円板状回転体61が凹み62の一ピッチ分だけ回転するように両回転伝達比が設定されていることから、錠剤カセット20の錠剤排出箇所23から下方への錠剤排出タイミングと、錠剤受入口63を介して円板状回転体61の凹み62に錠剤を受け入れるタイミングとが一対一で同期するので、錠剤カセット20から凹み62への錠剤受渡が多すぎず少なすぎず無駄なく行われる。
【0033】
錠剤裁断片送出口66は(図2(b)参照)、錠剤分割装置30の作動部用箱体31をベース部13の上に載せると(図1(b)参照)、それに随伴して、ベース部13の錠剤受入箇所15に連結されるようになっており(図1(a)参照)、それによって、半錠を錠剤裁断片送出口66へ送り込むことのできる連通状態が確立されるものである。
錠剤受入口63は(図2(b)参照)、作動部用箱体31の上に錠剤カセット20を載せると(図1(b)参照)、それに随伴して、錠剤カセット20の錠剤排出箇所23に連結されるようになっており(図1(a)参照)、それによって、錠剤カセット20から落下排出された錠剤を受け入れることのできる連通状態が確立されるものである。
【0034】
ここで(図1(a),(b)参照)、錠剤分割装置30の作動部用箱体31に載せて使用される錠剤カセット20についても説明する。
錠剤カセット20は、薬剤分包機10に錠剤フィーダ格納庫11に多数搭載される通常の錠剤カセット16と基本的には同様構造のものであるが、整列盤21の下端部や錠剤排出箇所23の形状にいては、ベース部13でなく作動部用箱体31の上部構想に適合するように変形されている。また、錠剤カセット20は、錠剤カセット16より背が低くなっていて、その分だけ、仕切板22より上に収容される錠剤の個数が少なくなっているが、錠剤を裁断して生じる錠剤裁断片の個数が元の錠剤の個数より倍以上に増えることと、錠剤を分割した錠剤裁断片を分包に供する頻度が一般に多くはないことから、錠剤収容量減少の不利益より実装数増加の利点の方が大きく勝る。
【0035】
この実施例1の錠剤分割装置30について、その使用態様及び動作を、図面を引用して説明する。図1(a)は、錠剤カセット20と錠剤分割装置30とベース部13,13とが分離している状態を示し、図1(b)は、ベース部13,13に錠剤分割装置30が搭載され更にその錠剤分割装置30に錠剤カセット20が搭載された状態を示している。また、図3は、薬剤分包機10の錠剤フィーダ格納庫11に多数の錠剤カセット16と幾つかの錠剤分割装置30を搭載した状態を示している。
【0036】
錠剤分割装置30を薬剤分包機10の錠剤フィーダ格納庫11に搭載して使用するときは(図3参照)、錠剤フィーダ格納庫11内で隣り合っている二個のベース部13,13を一個の錠剤分割装置30のために確保しておき、そこに錠剤分割装置30を載置する(図3図1(a),(b)参照)。
そうすると、それに随伴して、ベース部13のスプライン軸14と錠剤分割装置30の回転伝動軸40とが回転伝動可能に連結されるので、回転伝動軸40とそれに随伴する円板状回転体61が薬剤分包機10のコントローラの制御に従って動作する状態になる。
【0037】
さらに、ドライバ74に係る給電用や信号伝送用の図示しないケーブルを薬剤分包機10の図示しない電源やコントローラ等に接続すると、モータ73を含む駆動機構70とそれで駆動される固定刃ユニット51や開閉板65が薬剤分包機10のコントローラの制御に従って動作する状態になる。
こうして、薬剤分包機10に搭載した錠剤分割装置30の動作準備が調い、二個の錠剤カセット16の搭載箇所だった所が、錠剤分割装置30を介して、錠剤カセット20の搭載箇所になる。
【0038】
それから、錠剤を補充した錠剤カセット20を錠剤分割装置30の作動部用箱体31の上に搭載すると、それに随伴して、錠剤カセット20の錠剤排出箇所23と錠剤分割装置30の錠剤受入口63とが連通するとともに、整列盤21の下端部と回転伝動軸40の上端部41とが軸回転伝動可能に係合し、ひいてはベース部13のスプライン軸14と整列盤21とが回転伝動軸40を介して軸回転伝動可能になる。そのため、薬剤分包機10では、コントローラの制御にて作動部用箱体31搭載先のベース部13のスプライン軸14を軸回転させると、回転伝動軸40も整列盤21もスプライン軸14と一緒に同じ量だけ軸回転するようになる。
【0039】
そして、コントローラ制御に従ってスプライン軸14ひいては回転伝動軸40が所定量だけ軸回転すると、それに随伴して錠剤カセット20の整列盤21が同量だけ回転するとともに錠剤分割装置30の円板状回転体61が同期して回転するので、錠剤カセット20では、整列盤21の回転に伴って仕切板22の下に来た一個の錠剤が、錠剤排出箇所23から落下排出され、錠剤分割装置30では(図2(b)参照)、その錠剤5が、錠剤受入口63から受け入れられて、円板状回転体61の回転に伴って錠剤受入口63の直下に来ていた凹み62に収められ、更に円板状回転体61の回転に伴う凹み62の移動によって弧状の錠剤通路64を落下して、閉状態の開閉板65の上の錠剤裁断位置に運ばれる。
【0040】
これで、錠剤裁断の準備が調うので、半錠の錠剤裁断片が必要になったときには、コントローラ制御に従ってモータ73が動作し、それによって進退部71が前進し、それに伴って可動刃ユニット52が前進するとともに開閉板65が開くので、裁断位置の錠剤が上下の半錠(錠剤裁断片)に分割され、下側の半錠が錠剤裁断片送出口66から落下排出される一方、上側の半錠は可動刃ユニット52の上にとどまる。
そして、半錠がもう一つ必要になったときには、コントローラの制御によってスプライン軸14等は動作することなくモータ73が動作し、それによって進退部71と共に可動刃ユニット52が後退するので、残っていた上側の半錠が錠剤裁断片送出口66から落下排出され、その後、開閉板65が閉じる。
【0041】
こうして、半錠の逐次排出が2回行われるので、後はそれを繰り返すことで、必要な個数の半錠(錠剤裁断片)が一つずつ適切なタイミングで分包に供される。
そして、そのような半錠逐次排出の後に錠剤カセット20が空になったときには、錠剤カセット20を錠剤分割装置30から取り外して錠剤を補充し、錠剤を収容した錠剤カセット20を錠剤分割装置30に再装着すれば、薬剤分包機10が再稼働可能になる。
さらに、錠剤分割装置30の清掃や修理に関して確認や実施の作業を行うときには、錠剤カセット20を錠剤分割装置30から取り外してから或いは錠剤カセット20を錠剤分割装置30に搭載したまま錠剤分割装置30をベース部13から取り外して必要な作業を行い、その後は逆順でベース部13に再装着することで、簡便かつ迅速に行える。
【0042】
[その他]
上記実施例では、ドライバ74に係るケーブルを直接的に薬剤分包機10の電源等に接続したが、間接的に接続しても良い。例えば、薬剤分包機10の内部で電源等とベース部13との間に予め敷設されているケーブルに未使用の電線が有ればそれを流用したりケーブルの追加や交換にて電線を増やしたりして薬剤分包機10の電源等とモータ用箱体32搭載予定のベース部13との間で使用可能電線の接続を予め確立しておき更に各使用可能電線の端子をベース部13の上端部に配しておくとともに、ドライバ74に係る電線の端子をモータ用箱体32の下端部に配しておくことにより、錠剤分割装置30の隣接ベース部13,13への搭載に随伴してモータ73までも動作可能になる。
【符号の説明】
【0043】
5…錠剤、
10…薬剤分包機、
11…錠剤フィーダ格納庫、12…棚、
13…ベース部(錠剤フィーダ)、14…スプライン軸、
15…錠剤受入箇所(錠剤裁断片受入箇所)、16…錠剤カセット(錠剤フィーダ)、
20…錠剤カセット、
21…整列盤、22…仕切板、23…錠剤排出箇所、
30…錠剤分割装置、
31…作動部用箱体、32…モータ用箱体、
40…回転伝動軸、
41…上端部、42…噛合羽、43…下端部、44…噛合壁、45…かさ歯車、
50…裁断機構、
51…固定刃ユニット、52…可動刃ユニット、
60…錠剤案内機構、
61…円板状回転体、62…凹み、63…錠剤受入口、
64…錠剤通路、65…開閉板(錠剤裁断位置)、66…錠剤裁断片送出口、
70…駆動機構、
71…進退部、72…回転直線変換部、73…モータ、74…ドライバ
図1
図2
図3