【実施例1】
【0020】
本発明の錠剤分割装置の実施例1について、その具体的な構成を、図面を引用して説明する。
図1は、(a)が分離している状態の錠剤カセット20と錠剤分割装置30とベース部13とに係る正面図、(b)が装着状態の錠剤カセット20と錠剤分割装置30とベース部13とに係る正面図、(c)が箱体31,32の天板部を切り取った錠剤カセット30に係る平面図である。また、
図2は、(a)が錠剤分割装置30のAA矢視断面図、(b)が錠剤分割装置30のBB矢視断面図である。さらに、
図3は、錠剤フィーダ格納庫11に多数の錠剤カセット16と複数の錠剤分割装置30を搭載した薬剤分包機10の模式図である。
【0021】
錠剤分割装置30は(
図1(a),(b)参照)、先ず使用目的に基づく概要構成を述べると、通常の錠剤カセット16を置き換える態様で薬剤分包機10に搭載するためのものであり、薬剤分包機10の錠剤フィーダ格納庫11の棚12に設けられて隣り合っている二個のベース部13,13の上に着脱しうるようになっていて、そこに装着して使用される。また、錠剤分割装置30は、その上に専用の錠剤カセット20を着脱することもできるようになっており、乗載された錠剤カセット20の錠剤排出箇所23から落下した錠剤を受け入れて、それを裁断して二つの半錠(複数の錠剤裁断片)にしてから、半錠を一つずつベース部13の錠剤受入箇所15へ落下させるようになっている。さらに、錠剤分割装置30に錠剤カセット20を重ねた合計の高さが、通常の錠剤カセット16の高さと概ね一致するようにもなっている。
【0022】
次に(
図1〜
図2参照)、単体構成を述べると、錠剤分割装置30は、錠剤カセット20の錠剤排出箇所23から落下して来た錠剤を錠剤受入口63に受け入れて錠剤裁断位置である開閉板65の上へ導く錠剤案内機構60と、その裁断位置の錠剤を裁断する裁断機構50と、その裁断機構の横に設けられていて裁断機構50の動作駆動を行う駆動機構70と、裁断機構50と錠剤案内機構60と駆動機構70の伝動部分とを格納した作動部用箱体31と、駆動機構70のうち作動部用箱体31に収まりきらない駆動源等を格納したモータ用箱体32と、作動部用箱体31を上下に貫く回転伝動軸40とを具えている。
【0023】
以下、各部を詳述する。作動部用箱体31とモータ用箱体32は、一体物であっても良いが、この例では、製造や保守の容易性等を考慮して、別体で作られており、各々の箱体に内蔵物を格納してから両箱体31,32を隣り合わせで連結させることで、あるいは両箱体31,32を隣り合わせで連結させてから夫々の箱体に内蔵物を格納することで、一体的に取り扱えるようになっている。作動部用箱体31の高さは通常の錠剤カセット16の半分強程度であり、モータ用箱体32の高さはそれより少し大きい程度である。
【0024】
回転伝動軸40は、作動部用箱体31の内部の中央位置近くに直立状態で軸回転可能に支持された軸体からなり(
図1参照)、その下端部43の端面の穿孔の内周面に噛合壁44が形成されている(
図2(a)参照)。この回転伝動軸40の下端部43が噛合壁44も含めて通常の錠剤カセット16の整列盤の下端部と同様になっていることから、薬剤分包機に搭載される錠剤フィーダのベース部13の上に作動部用箱体31を載せると(
図1(a),(b)参照)、回転伝動軸40の下端部43の穿孔にベース部13の錠剤カセット駆動用のスプライン軸14が嵌入するとともに、下端部43の噛合壁44とスプライン軸14とが噛み合うので、下端部43ひいては回転伝動軸40がベース部13と回転伝動可能に連結されるものとなっている。
【0025】
一方、回転伝動軸40の上端部41には(
図1(c),
図2(a)参照)、軸部からその外径方向へ放射状に突き出た噛合羽42が幾本(図示の例では3本)か形成されており、そのような上端部41が軸部ばかりか噛合羽42も含めて錠剤カセット20の整列盤21の下端部の嵌合穴に雄雌対応している。そのため、回転伝動軸40は、錠剤カセット20を作動部用箱体31の上に載せ置くと(
図1(b)参照)、上端部41と整列盤21とが、ひいては回転伝動軸40と整列盤21とが、回転伝動可能に連結されるものとなっている。
【0026】
裁断機構50は(
図1(c)参照)、公知の対向刃方式が採用されており(特許文献1,2参照)、一対の固定刃ユニット51と可動刃ユニット52とを具備している。この例では、上述したように開閉板65の上が錠剤裁断位置になっているので(
図2(b)参照)、その直ぐ手前に固定刃ユニット51が固定され(
図1(c)参照)、錠剤裁断位置の少し奥であって回転伝動軸40より手前の所に可動刃ユニット52が進退可能に保持されている(
図1(c)参照)。そして、可動刃ユニット52を固定刃ユニット51に向かって前進させると、錠剤裁断位置(開閉板65の上)の錠剤を上下に裁断して二つの半錠(錠剤裁断片)に分割する。また、何れのユニット51,52も、底部に挟み込むシムを取り替えることで簡便に刃の高さ位置を錠剤に合わせることができるようになっている。
【0027】
駆動機構70は(
図1(c),
図2参照)、錠剤裁断時に可動刃ユニット52を進退させるものであり、そのために、前端部に可動刃ユニット52を保持する進退部71,71と、出力軸を回転させるモータ73と、その回転運動を直線運動に変換して進退部71に伝達する回転直線変換部72と、モータ73に駆動電力を供給するドライバ74とを具備している。それらと回転伝動軸40との干渉を回避するために、この駆動機構70では(
図1(c)参照)、進退部71,71が二つの部材に分かれて回転伝動軸40の両側に配設されるとともに、回転直線変換部72が回転伝動軸40の後方に設置されている。
【0028】
この回転直線変換部72は、詳細な図示を割愛したが、例えば、クランクとスライダとの組み合わせや、回転輪とリンク部材とスライダとの組み合わせ等で、具体化されている。なお、進退部71は、可動刃ユニット52の進退駆動を行うに際して、開閉板65の開閉駆動も行うようになっている。
また、モータ73とドライバ74は、高価だが超小型のものを採用すれば回転直線変換部72等と一緒に作動部用箱体31に格納しえないこともないが、この例では、コストと利点とのバランスを重視して、モータ用箱体32に格納しうるものを採用している。
【0029】
錠剤案内機構60は(
図2(b)参照)、錠剤受入口63から始まって錠剤通路64と錠剤裁断位置および開閉板65とを経由して錠剤裁断片送出口66に至る錠剤落下経路63〜66を主体としたものであるが、錠剤受入口63の直下に設けられて錠剤通路64に臨んでいる円板状回転体61も具備している。それらのうち、錠剤受入口63は、箱体31の天板部に形成された開口であって、作動部用箱体31に搭載された錠剤カセット20の錠剤排出箇所23と連通するようになっている。錠剤通路64は、円板状回転体61の周縁部に沿って約半周分ほど形成されている。開閉板65は、進退部71の進退に随伴して開閉動作を行うものであり、閉状態では錠剤を受け止めて錠剤裁断位置に留め置く一方、開状態では錠剤裁断後の錠剤裁断片を落下させて錠剤裁断片送出口66へ送るようになっている。
【0030】
円板状回転体61は(
図1(c),
図2(b)参照)、周縁部に等ピッチで複数(図では3個)の凹み62が形成された縦置きの円板部と(
図2(b)参照)、その中心から直に又は横軸を介して後方の回転伝動軸40に歯部を向けた「かさ歯車部(
図1(c)参照)」とを具備したものであり、そのかさ歯車部と(
図1(c)参照)、上述の回転伝動軸40に付設されているかさ歯車45とが(
図2(a)参照)、噛合している(
図1(c)参照)。そして、この噛合によって円板状回転体61と回転伝動軸40とが回転伝動可能に連結されているので、回転伝動軸40が軸回転すると、それに随伴して円板状回転体61が回転(自転)するようになっている。
【0031】
また、円板状回転体61の凹み62は(
図2(b)参照)、何れも、錠剤5の出し入れに要する僅かな遊びを伴って、その中に錠剤5を収めることができるように形成されており、錠剤受入口63の直下で上向きになっているときは、錠剤受入口63から錠剤5を受け入れることができ、錠剤通路64に面して斜めや横向きになっているときは、錠剤通路64の中に錠剤5を保持し続け、開閉板65の上方で下向きになったときは、錠剤5を開閉板65の上の錠剤裁断位置に留め置くようになっている。そして、円板状回転体61は、錠剤受入口63から受け入れた錠剤5を一つずつ各凹み62に保持して回転することで錠剤裁断位置へ移動させるものとなっている。
【0032】
さらに、回転伝動軸40からかさ歯車45を介して円板状回転体61に伝達される回転運動の回転伝達比と、回転伝動軸40から錠剤カセット20の整列盤21に伝達される回転運動の回転伝達比とが、噛合箇所の歯数比の設定等で、適切に対応づけられていることから、具体的には、回転伝動軸40が所定角度だけ回転すると整列盤21が一錠排出分だけ回転するとともに円板状回転体61が凹み62の一ピッチ分だけ回転するように両回転伝達比が設定されていることから、錠剤カセット20の錠剤排出箇所23から下方への錠剤排出タイミングと、錠剤受入口63を介して円板状回転体61の凹み62に錠剤を受け入れるタイミングとが一対一で同期するので、錠剤カセット20から凹み62への錠剤受渡が多すぎず少なすぎず無駄なく行われる。
【0033】
錠剤裁断片送出口66は(
図2(b)参照)、錠剤分割装置30の作動部用箱体31をベース部13の上に載せると(
図1(b)参照)、それに随伴して、ベース部13の錠剤受入箇所15に連結されるようになっており(
図1(a)参照)、それによって、半錠を錠剤裁断片送出口66へ送り込むことのできる連通状態が確立されるものである。
錠剤受入口63は(
図2(b)参照)、作動部用箱体31の上に錠剤カセット20を載せると(
図1(b)参照)、それに随伴して、錠剤カセット20の錠剤排出箇所23に連結されるようになっており(
図1(a)参照)、それによって、錠剤カセット20から落下排出された錠剤を受け入れることのできる連通状態が確立されるものである。
【0034】
ここで(
図1(a),(b)参照)、錠剤分割装置30の作動部用箱体31に載せて使用される錠剤カセット20についても説明する。
錠剤カセット20は、薬剤分包機10に錠剤フィーダ格納庫11に多数搭載される通常の錠剤カセット16と基本的には同様構造のものであるが、整列盤21の下端部や錠剤排出箇所23の形状にいては、ベース部13でなく作動部用箱体31の上部構想に適合するように変形されている。また、錠剤カセット20は、錠剤カセット16より背が低くなっていて、その分だけ、仕切板22より上に収容される錠剤の個数が少なくなっているが、錠剤を裁断して生じる錠剤裁断片の個数が元の錠剤の個数より倍以上に増えることと、錠剤を分割した錠剤裁断片を分包に供する頻度が一般に多くはないことから、錠剤収容量減少の不利益より実装数増加の利点の方が大きく勝る。
【0035】
この実施例1の錠剤分割装置30について、その使用態様及び動作を、図面を引用して説明する。
図1(a)は、錠剤カセット20と錠剤分割装置30とベース部13,13とが分離している状態を示し、
図1(b)は、ベース部13,13に錠剤分割装置30が搭載され更にその錠剤分割装置30に錠剤カセット20が搭載された状態を示している。また、
図3は、薬剤分包機10の錠剤フィーダ格納庫11に多数の錠剤カセット16と幾つかの錠剤分割装置30を搭載した状態を示している。
【0036】
錠剤分割装置30を薬剤分包機10の錠剤フィーダ格納庫11に搭載して使用するときは(
図3参照)、錠剤フィーダ格納庫11内で隣り合っている二個のベース部13,13を一個の錠剤分割装置30のために確保しておき、そこに錠剤分割装置30を載置する(
図3,
図1(a),(b)参照)。
そうすると、それに随伴して、ベース部13のスプライン軸14と錠剤分割装置30の回転伝動軸40とが回転伝動可能に連結されるので、回転伝動軸40とそれに随伴する円板状回転体61が薬剤分包機10のコントローラの制御に従って動作する状態になる。
【0037】
さらに、ドライバ74に係る給電用や信号伝送用の図示しないケーブルを薬剤分包機10の図示しない電源やコントローラ等に接続すると、モータ73を含む駆動機構70とそれで駆動される固定刃ユニット51や開閉板65が薬剤分包機10のコントローラの制御に従って動作する状態になる。
こうして、薬剤分包機10に搭載した錠剤分割装置30の動作準備が調い、二個の錠剤カセット16の搭載箇所だった所が、錠剤分割装置30を介して、錠剤カセット20の搭載箇所になる。
【0038】
それから、錠剤を補充した錠剤カセット20を錠剤分割装置30の作動部用箱体31の上に搭載すると、それに随伴して、錠剤カセット20の錠剤排出箇所23と錠剤分割装置30の錠剤受入口63とが連通するとともに、整列盤21の下端部と回転伝動軸40の上端部41とが軸回転伝動可能に係合し、ひいてはベース部13のスプライン軸14と整列盤21とが回転伝動軸40を介して軸回転伝動可能になる。そのため、薬剤分包機10では、コントローラの制御にて作動部用箱体31搭載先のベース部13のスプライン軸14を軸回転させると、回転伝動軸40も整列盤21もスプライン軸14と一緒に同じ量だけ軸回転するようになる。
【0039】
そして、コントローラ制御に従ってスプライン軸14ひいては回転伝動軸40が所定量だけ軸回転すると、それに随伴して錠剤カセット20の整列盤21が同量だけ回転するとともに錠剤分割装置30の円板状回転体61が同期して回転するので、錠剤カセット20では、整列盤21の回転に伴って仕切板22の下に来た一個の錠剤が、錠剤排出箇所23から落下排出され、錠剤分割装置30では(
図2(b)参照)、その錠剤5が、錠剤受入口63から受け入れられて、円板状回転体61の回転に伴って錠剤受入口63の直下に来ていた凹み62に収められ、更に円板状回転体61の回転に伴う凹み62の移動によって弧状の錠剤通路64を落下して、閉状態の開閉板65の上の錠剤裁断位置に運ばれる。
【0040】
これで、錠剤裁断の準備が調うので、半錠の錠剤裁断片が必要になったときには、コントローラ制御に従ってモータ73が動作し、それによって進退部71が前進し、それに伴って可動刃ユニット52が前進するとともに開閉板65が開くので、裁断位置の錠剤が上下の半錠(錠剤裁断片)に分割され、下側の半錠が錠剤裁断片送出口66から落下排出される一方、上側の半錠は可動刃ユニット52の上にとどまる。
そして、半錠がもう一つ必要になったときには、コントローラの制御によってスプライン軸14等は動作することなくモータ73が動作し、それによって進退部71と共に可動刃ユニット52が後退するので、残っていた上側の半錠が錠剤裁断片送出口66から落下排出され、その後、開閉板65が閉じる。
【0041】
こうして、半錠の逐次排出が2回行われるので、後はそれを繰り返すことで、必要な個数の半錠(錠剤裁断片)が一つずつ適切なタイミングで分包に供される。
そして、そのような半錠逐次排出の後に錠剤カセット20が空になったときには、錠剤カセット20を錠剤分割装置30から取り外して錠剤を補充し、錠剤を収容した錠剤カセット20を錠剤分割装置30に再装着すれば、薬剤分包機10が再稼働可能になる。
さらに、錠剤分割装置30の清掃や修理に関して確認や実施の作業を行うときには、錠剤カセット20を錠剤分割装置30から取り外してから或いは錠剤カセット20を錠剤分割装置30に搭載したまま錠剤分割装置30をベース部13から取り外して必要な作業を行い、その後は逆順でベース部13に再装着することで、簡便かつ迅速に行える。
【0042】
[その他]
上記実施例では、ドライバ74に係るケーブルを直接的に薬剤分包機10の電源等に接続したが、間接的に接続しても良い。例えば、薬剤分包機10の内部で電源等とベース部13との間に予め敷設されているケーブルに未使用の電線が有ればそれを流用したりケーブルの追加や交換にて電線を増やしたりして薬剤分包機10の電源等とモータ用箱体32搭載予定のベース部13との間で使用可能電線の接続を予め確立しておき更に各使用可能電線の端子をベース部13の上端部に配しておくとともに、ドライバ74に係る電線の端子をモータ用箱体32の下端部に配しておくことにより、錠剤分割装置30の隣接ベース部13,13への搭載に随伴してモータ73までも動作可能になる。