(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記樹脂成形品の外管内壁に予め半径方向に段差、溝、凹凸のいずれかを設けた請求項1から3の内の、いずれか一の請求項に記載された可撓性チューブと樹脂成形品の超音波振動溶着方法。
前記樹脂成形品の外管内壁に予め半径方向に段差、溝、凹凸のいずれかを設けた、請求項5から7のいずれか一の請求項に記載された可撓性チューブと樹脂成形品の超音波振動溶着装置。
前記樹脂成形品は、外管と、外管内に同軸方向に配置された内管とを備え、前記外管が、当該外管と前記内管との間に環状の挿入用空間を形成すべく、外管内壁と、外管および内管を連結する外管底壁とを有する、請求項5から8のいずれか一の請求項に記載された超音波振動溶着装置。
【背景技術】
【0002】
従来から、医療器具として、点滴筒などの樹脂成形品に可撓性チューブが直接一体に接続されたものが用いられている。
図17は、点滴筒10Aに可撓性チューブ20を接続した医療器具の全体図であり、
図18は、点滴筒10Aと可撓性チューブ(以下、略して「チューブ」と記載する)20の接続部分の拡大図である(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
点滴筒10Aとチューブ20の接続部分は、
図18に示したように、点滴筒10Aの下端には、外管11と内管12が突出していて、外管11と内管12の間には、チューブ20を挿入するための挿入用空間13が形成されている。チューブ20は挿入用空間13に挿入され固定されるが、チューブ20に外力がかかっても抜けないように離脱防止策がとられている。
【0004】
従来技術として、チューブを点滴筒などの樹脂成形品に一体に接続するのに超音波振動溶着装置を利用したものとして、
図19、20に示したものが知られている(例えば、特許文献2参照)。
図19は、チューブ20と点滴筒10Aを接続する直前の要部断面図を示している。
図20は、チューブ20と点滴筒10Aを接続したときの部分拡大図を示している。なお
図19、20に示したように、接続作業は、作業の便宜上、点滴筒10Aの上下関係を前記の
図17、18と逆にして行われる。
図19、20では、内管12がチューブ20の端部内に挿入されると共に、チューブ20の端部が挿入用空間13に挿入されている。
【0005】
上記従来の装置では、外管11に、径方向外方への変形を抑制するリング状ガイド体4を外嵌すると共に、外管11とチューブ20の間に、工具ホーン3先端の当接部3aを当て、工具ホーン3を軸方向(内管12の軸方向)に数十μmの振幅で、15〜40kHzの超音波振動をさせる。そして、工具ホーン3先端の当接部3aが当たっている外管11の内周部のみを溶融させ、チューブ20に対し径方向に圧接状に固化させることで、外管11の内周部に、チューブ20を内管12に押圧する離脱防止部15aを形成する。そして、チューブ20と点滴筒10Aが離れないように接続している。
【0006】
繰り返しの説明になるが、
図19、20に示されるように、外管11にリング状ガイド体4を外嵌して、外管11の内壁に形成した段差部14に超音波振動している工具ホーン3が押し当てられると、外管11の径方向外方への変形が抑制された状態で段差部14の一部が溶融してチューブ20に圧接状に固化する。そして、チューブ20を内管12に押圧する離脱防止部15aが形成され、チューブ20は点滴筒10Aに接続される。外管11にリング状ガイド体4を嵌めたことで、離脱防止部15aは、チューブ20を圧接して固まる。
図17、18の状態で、チューブ20に外力がかかってもチューブ20は点滴筒10Aから抜けない、とされている。
【0007】
しかし、この方法にも課題がある。上記従来の溶着方法および装置では、外管11の内周部のみを溶融させるために
図21A、
図21Bのように、工具ホーン3の中心から外部へチューブを通す孔38(又は嵌脱用開口部39)を設けておき、この孔38(又は嵌脱用開口部39)にチューブ20を矢印で示したように通す(嵌める)作業と外す(脱す)作業が必要である。接続作業の都度、一つの作業ごとに、工具ホーン3の孔38(又は嵌脱用開口部39)にチューブ20を通す(嵌める)作業と外す(脱す)作業に時間がかかるのが一つ目の課題である。
【0008】
上記従来の接続方法の作業手順を
図22にフローチャートで示した。
図22の作業手順を順に説明すると、まず、外管11の外周をリング状ガイド体4で囲む(ステップS11)。次に、チューブ20を、挿入用空間13に入れる(ステップS12)。チューブ20を工具ホーン3の孔に通す(ステップS13)。工具ホーン3を超音波振動し、工具ホーンの先端3aで外管11の内周部を溶かす(ステップS14)。外管11の径方向外方への変形を抑制した状態で、離脱防止部15aを形成する(ステップS15)。工具ホーン3を元の位置に戻し(ステップS16)、チューブ20を工具ホーン3の孔から外す(ステップS17)。リング状ガイド体4を離す(ステップS18)。そして、点滴筒10Aとチューブ20の接続作業が完了する(ステップS19)。
【0009】
図22の接続作業のフローチャートから、工具ホーンの中心の孔にチューブ20を通す作業(ステップS13)と外す作業(ステップS17)が無くなれば、生産性は飛躍的に向上する。
二つ目の課題は、上記従来の方法は、外管11の離脱防止部15aでチューブ20を押圧する離脱防止策であり、超音波振動溶着装置を利用しているのに外管11の内周部とチューブ(可撓性チューブ)20を溶着していないことである。外管11の内周部とチューブ20を溶着すれば離脱防止力は飛躍的に向上する。
【0010】
なお、医療器具のチューブの中には、
図23A、
図23Bに断面図を示したように、外周面に段差のあるチューブとして、チューブの外形を軸方向に沿って波を打たせた形のチューブ、例えば、カテーテル用のチューブがある。
なお、
図23A、
図23Bでは、
図23Aの外周面に段差のあるチューブ22に軸方向の圧縮力F
1を加えると、
図23Bのように軸方向の長さ(L
0)が縮んで長さ(L
1)となり、段差のピッチ(P
0)も縮んでピッチ(P
1)となるが、外径(D
0)は拡大して外径(D
1)となることを示している。(詳しくは、特許文献3参照)。
【0011】
三つ目の課題は、これら外周面に段差のあるチューブで、段差の山がつるまき状につながっているものは、
図19、20で説明した従来の方法では、チューブ22と樹脂成形品10Aの当接部が全周にわたって完全密着するように接続できないことである。
また、チューブを接続する従来の樹脂成形品として、軸継手10Cを用いることもあるが、上記課題があることは同じである。参考のため、軸継手10Cの例を
図24に示した。
【0012】
図24の軸継手10Cでは、上下に内管12A、12Bを突出させ、上の内管12Aの外に外管底壁11cでつないだ外管11を設け、外管11と内管12Aの間にチューブの挿入用空間13を形成している。なお、
図24の外管11の外管内壁11aには、
図19にあった段差部14を形成していない場合を示した。下方に突出している内管12Bの表面には、抜け止め溝12cを形成している。
【0013】
軸継手10Cの例では、
図25のように、チューブ20Aを内管12Aに被せ、図示しないリング状ガイド体を外嵌して、外管11の径方向外方への変形を抑制した状態で、同じく図示しない工具ホーンで外管11の内周部のみを溶融させ、離脱防止部15bを形成して接続している。そして、て、チューブ20Bを下方から内管12Bに押し込んで接続している。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明は、以下にそれぞれのチューブに対する実施形態を例示することにより、(1)外管と内管の間に挿入用空間を形成した点滴筒などの樹脂成形品に、前記挿入用空間内にチューブを圧接した状態で直接一体に接続できることを説明することとし、特に(2)従来のように、工具ホーンの中心に開けた孔にチューブを通したり外したりすることなく、(3)外管内壁とチューブの外周面が溶けて互いに入り込んだ形で溶着し、その結果、チューブと樹脂成形品の接続強度が大きくなること、(4)外周面に段差がないチューブ、あるいは外周面に段差のあるチューブのそれぞれについて適用可能であること、を説明する。
【0024】
なお、後述する実施形態1から3では、図示を簡単にするため、樹脂成形品に「チューブの軸継手」を用いた例を示す。「チューブの軸継手」は、内管の両端が軸方向に外管底壁(挿入用空間底壁)からそれぞれ反対方向に突き出ている形をしているが、外管と、外管内に同軸方向に配置され、軸方向に突出している内管が備えられ、外管と内管の間に挿入用空間が形成されていることは「点滴筒」と同じである。
【0025】
また、
図1から
図3に示した、本発明の実施形態1に係る超音波振動溶着装置の要部側面図では、チューブと樹脂成形品(軸継手)の軸芯を水平方向として図示し、
図4、
図6から
図16の工程を示した図では、チューブと樹脂成形品(軸継手)の軸芯を水平方向と垂直方向の両方を混在して図示したが、図面上のスペースの都合によるものであることを理解されたい。
(実施形態1)
【0026】
実施形態1では、樹脂成形品(軸継手)10Bに外周面に段差のない可撓性チューブ20を溶着する超音波振動溶着方法および装置を説明する。
実施形態1の樹脂成形品10Bは、外管11と、外管11内に同軸方向に配置された内管12を備えており、外管11は、外管11および内管12を連結する円環状の外管底壁11cを有しており、当該外管11の内側表面(外管内壁)11a、外管底壁11cおよび内管12によって、これらの間に環状の挿入用空間13が形成されている。この挿入用空間13には、樹脂成形品10Bと接続させる樹脂チューブ20の端部20aが挿入される。
【0027】
樹脂成形品10Bおよびチューブ20は、用途に応じて、超音波振動溶着による接続に好適な樹脂素材が用いられ、特に限定しないが、例えば、樹脂成形品10Bの構成材料としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、即ち非塩素系材料を例示することができる。
また、チューブ20の構成材料としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、軟質ポリ塩化ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリアミド等の樹脂材料や、天然ゴム、シリコーンゴム、スチレン−ブタジエンゴム等の各種ゴム材料、各種熱可塑性エラストマー等の弾性材料を例示することができる。
【0028】
また、樹脂成形品10Bおよびチューブ20の形状や外形寸法は、特に限定するものではないが、チューブ20および外管11の肉厚は、軸方向および径方向の加圧や圧縮により、径方向に容易に膨出、収縮することができる可撓性やシワ寄せ加工性を備えることが望ましく、接続工程における素材の加熱温度にも依るが、実際に使用する上で一定強度が必要であることから、チューブ20および外管11の肉厚は、例えば1〜2mm程度に好適に設定される。
【0029】
図1から
図3に、本発明の実施形態1に係る超音波振動溶着装置の要部側面図を示した。樹脂成形品10Bとチューブ20を接続する超音波振動溶着装置について、
図1では本発明の実施形態1に係る超音波振動溶着装置の要部側面図を示し、
図2では、溶着準備作業時の状態を示し、
図3では、溶着作業時の状態を示している。なお、
図1の本発明の実施形態1に係る超音波振動溶着装置は、装置の要部のみを示し、樹脂成型品10Bとチューブ20は示していない。
図2、3には、樹脂成型品10Bとチューブ20も示したので、これらの図を総合すれば、それらの構造を容易に理解できるであろう。
【0030】
図1の本発明の実施形態1に係る超音波振動溶着装置では、装置のフレーム100に垂直方向に支柱81を設け、支柱81の中央に樹脂成形品10Bを取り付ける孔(「支柱孔」という)80aを開けたベース台80を形成し、支柱孔80aの位置を基準に支柱81の上下には水平方向に延びる枝(ブランチ)84、85が設けてある。
上方のブランチ84にはエアシリンダー34が取り付けてあり、エアシリンダー34の先端にはバネ33と移動枠31が取り付けてある。そして、移動枠31には、圧電素子を用いた超音波振動手段32と、この超音波振動手段32と一体に組み立てられた工具ホーン30が取り付けてある。工具ホーン30は、バネ33により支柱孔80aの位置方向に向けて付勢されていて、エアシリンダー34が吸引動作すると、工具ホーン30が支柱孔80aの位置から遠ざかるようにしてある。
【0031】
下方のブランチ85にはエアシリンダー44が取り付けてあり、エアシリンダー44の先端にはバネ43とアンビル40が取り付けてある。アンビル40はバネ43により支柱孔80aの位置方向に向けて付勢されていて、エアシリンダー44が吸引動作すると、アンビル40が支柱孔80aの位置から遠ざかるようにしてある。
フレーム100の右側には、チューブ押し込み部材50、51のガイドテーブル86を設けていて、チューブ押し込み部材50は、部材51の蓋として、部材51に対して上下方向にコイルバネ等の手段で弾性的に支えられているとともに、上下方向に着脱自在に支えられている。ガイドテーブル86の上面にはカム状スライド面86aがあり、チューブ押し込み部材50、51を(例えば、ボールねじとモータの組み合わせ等による、図示しない駆動手段により)、図において右から左方向に移動すると、チューブ押し込み部材50、51が、チューブ20を把持した状態で、チューブ20の先端を樹脂成形品10Bの挿入用空間13(
図2および後述の
図4参照)に押し込むようにしている。
【0032】
ベース台80の図において左側には、支柱孔80aと同軸の中空円柱部分82を設けている。中空円柱部分82に外嵌して、樹脂成形品10Bを支持する支持キャップ71が回転可能に被せられている。
支持キャップ71には支柱孔80aと同軸の支持孔71aが開けてある。また、中空円柱部分82の紙面左端面と支持キャップ71には、複数の位置決め用穴83a、83bと位置決めピン72を挿入する貫通孔71bがそれぞれ同心円周上に適宜のピッチで設けられている。これらの支柱孔80a、支持孔71a、貫通孔71b、位置決め用穴83a、83bは、樹脂成形品10Bを支柱孔80aと同軸の支持孔71aで支持した状態で、中空円柱部分82に対して支持キャップ71を回転させて、位置決めピン72を所望の位置決め用穴83a、83bのいずれかに入れて位置決めするために設けてある。
【0033】
図2では、上記構造をした本発明の装置を用いて、樹脂成形品10Bをベース台80に取り付け、樹脂成形品10Bの挿入用空間13にチューブ20の先端20aを入れて、チューブ押し込み部材50、51でチューブ20を把持する寸前の状態、つまり溶着準備作業時の状態を示している。
そして、
図2の状態から、挿入用空間13にチューブ20の先端20aを押し込んで樹脂成形品10Bの外管11を半径方向に膨張させた後、図示していない制御部によって、
図3のように、エアシリンダー34と44の吸引動作を止めて、バネ33、34の付勢力により、工具ホーン30とアンビル40で外管外壁11bを押圧する。そして、外管11が半径方向に膨張した分を元の円筒状の姿に押し戻し、超音波振動手段32により工具ホーン30を振動させ、外管内壁11aとチューブ20の外周面20bを溶融させて一体接続する溶着作業を行う。
【0034】
図3に示す状態で、外管内壁11aとチューブ20の外周面20bが溶着し、超音波振動手段32の超音波振動を止めて、溶着部分が固化したら、エアシリンダー34と44を吸引動作させ、外管外壁11bから工具ホーン30とアンビル40を離す。そして作業者が、位置決めピン72を中空円筒部分82の位置決め孔83aから抜いて、支持キャップ71を中空円筒部分82の周りに回転させ、他の位置決め用穴83bに入れて位置決めする。支持キャップ71の回転とともに、樹脂成形品10Bとチューブ20の溶着部分と未溶着部分が入れ替わり、溶着部分がアンビル40に対向し、未溶着部分が工具ホーン30に対向する。
【0035】
そして、再び、エアシリンダー34と44の吸引動作を止めて、バネ33、34の力で、外管11の半径方向に膨張した分の残っている未溶着部分を元の円筒状の姿に押し戻し、超音波振動手段32により工具ホーン30を振動させ、外管内壁11aとチューブ20の外周面を溶融させ、一体に接続する。
なお、
図1から
図3の説明では、位置決めピン72による位置決めを、中空円柱部分82の2つの位置決め用穴83a、83bで説明したが、この超音波振動溶着作業時の樹脂成型品とチューブの反転作業における回動角度については、位置決め用穴などの数を必要により適宜増やして、所望の回動角度を定め、溶着重ね代を考慮して行なうことができる。
【0036】
外管内壁11aとチューブ20の全ての外周面の溶着作業が終了したら、エアシリンダー34と44を吸引動作させ、外管外壁11bから工具ホーン30とアンビル40を離し、チューブ押し込み部材50、51をフレーム100の右側に移動させて、チューブ押し込み部材50、51をチューブ20から離し、一体となったチューブ20と樹脂成形品10Bを装置から取り出す。
【0037】
本発明の装置の構成要素は以下のものが含まれる。
(a)樹脂成形品を支持するベース台(80)、
(b)樹脂成形品の内管をチューブの端部内に挿入した状態で当該チューブを把持し、樹脂成形品の挿入用空間に前記チューブの先端部分を嵌め込み、前記外筒底壁に押し付けて加圧するチューブの押し込み手段(50、51)、
(c)挿入用空間に嵌め込まれた前記チューブの先端部分に対応する外管を超音波振動させる工具ホーン(30)
(d)前記工具ホーンに対向する位置に配置され、前記外管外壁を前記工具ホーンに向かって加圧するアンビル(40)
(e)工具ホーン(30)とアンビル(40)で押し戻し動作をさせる押し戻し動作手段(バネ(33)、(43)とエアシリンダー(32)、(44))、
(f)超音波振動手段(32)、および
(g)チューブの押し込み手段と、工具ホーンおよびアンビルの押し戻し手段と、並びに超音波振動手段とを制御する制御手段(図示せず)。
【0038】
上記に含めていない「ベース台80の紙面左側に中空円柱部分82を設け、中空円柱部分82に、樹脂成形品10Bを支持する支持キャップ71を回転可能に被せている回転手段」については、電動で支持キャップ71を所定角度回転する回転手段として、上記制御手段で制御しても良い。また、これを設けずに、ベース台80で樹脂成形品10Bを支持した状態で、作業者が樹脂成形品10Bをつまんで回転させるという手作業に置き換えても良い。その他、
図1から3の実施形態は一例を示したものにすぎず、当業者により任意の構造を採用することができる。
【0039】
実施形態1では、チューブ20を樹脂成形品10Bの内管12に被せ、チューブ20の先端20aを挿入用空間13に入れて、チューブ20を軸方向に加圧して圧縮していくと、チューブ20が軸方向に圧縮されると同時に半径方向に膨張し、チューブ20が外管11を半径方向に膨張させることを利用している。
図4は、本発明の実施形態1に係る超音波振動溶着装置で、樹脂成形品と外周面に段差のないチューブを溶着する工程(A)〜(F)を示す。即ち、
図4の工程(A)に示すように、ベース台80で支持した樹脂成形品10Bの内管12にチューブ20を被せ、
図4の工程(B)のように、チューブ押し込み部材50、51で白矢印のように掴んで、チューブ20を軸方向の下方に、挿入用空間13に押し込んでいくと、チューブ20の先端は外管底壁11cに当たる。その後、
図4の工程(C)のように、チューブ20をチューブ押し込み部材50、51で掴んだまま軸方向に加圧すると、チューブ20は半径方向に膨張し、外管11も半径方向に膨張する。チューブ20の半径方向の膨張は、チューブの先端部分が外管底壁11cに当たって行き場がなくなり、挿入用空間13に充満して生じる。そのため、チューブ20を押し込んでいくと外管底壁11cより上方に向けて徐々に半径寸法が拡大する。
図4の工程(C)では、外管11がお椀状に膨張している様子を示している。
【0040】
外管11が半径方向に膨張した状態で、
図4の工程(D)のように、外管11の外側表面(外管外壁)11bを工具ホーン30とアンビル40で挟んで押圧する。そして、工具ホーン30とアンビル40で外管11の半径方向の膨張を押さえ込む。このことにより、外管外壁11bは膨らんだ曲面から、膨張していた部分が押さえ込まれた元の円筒面に押し戻される。このとき、チューブ20も外管11によって半径方向に押し込まれ、圧縮される。
【0041】
なお上記のように、チューブ20を挿入用空間13に押し込むことでチューブ20が半径方向に膨らみ、外管11も半径方向に膨らむので、外管外壁11bに工具ホーン30とアンビル40を当てて、外管11が膨らんだ分を押し戻している。押し戻すことで、挿入用空間13での外管内壁11aとチューブ20の外周面20bの圧力が高まる。そのため、工具ホーン30を押し戻した位置で止めて、超音波振動を与えると、チューブ20と外管内壁11aは溶融して接続する。
【0042】
なお、図示していないが、
図4の工程(E)の次に、工具ホーン30とアンビル40を
図4の工程(C)のように離し、チューブ20と外管内壁11aの全周が溶着するまで、工具ホーン30とアンビル40に対して相対的に、樹脂成形品10Bを所定角度回転させ、再び
図4の工程(D)の押し戻し動作と、
図4の工程(E)の超音波振動溶着動作をする。このことにより、
図4の工程(F)のようにチューブ20と外管内壁11aの全周が溶着して接続される。
【0043】
図4の工程(C)から
図4の工程(D)の、お椀状に膨張した表面を円筒状の表面にすることは、外管11の外管外壁11bと外管内壁11aの表面積を小さくすることであり、表面の各微小部分が均等に縮まない所にはシワが発生する。この外管11の膨らんだ表面を元の円筒面に戻す動作は、外管内壁11aとチューブ20の外周面20bにシワを寄せる、シワ寄せ動作をさせていることになる。
図4の工程(A)では、チューブ20の外周面20bに外力がかかっていない自由状態であるため、シワがよっていないが、
図4の工程(D)では、チューブ20の外周面20bを一度膨らませた後、強制的に圧縮するシワ寄せ動作をしたので、挿入用空間13の中にあるチューブ20の外周面20bは、微細なシワがよった、あるいはシワがよっていなくても表面に微細なシワが寄ろうとしている不安定な加圧状態になっている。このチューブ20の外周面20bを加圧してシワ寄せ動作をした不安定な加圧状態としたまま、
図4の工程(E)のように、工具ホーン30に超音波振動させると、チューブ20の外周面20bと外管内壁11aが溶けて互いに入り込んだ形で溶着する。そして、チューブ20と樹脂成形品10Bの所定の接続強度が得られる。
【0044】
このことは、高い圧力で押し固めた可撓性チューブは、既に固いチューブと同等になっていると考えれば、工具ホーン30を超音波振動させると、外管内壁11aとチューブ20の外周面20bが溶けて互いに入り込んだ形で溶着することが理解できる。
図19、20の従来例では、超音波振動で溶融、固化させた離脱防止部15aをチューブ20の外周面に食い込ませた形で絞め付け、抜けないようにしていたが、実施形態1では、チューブ20を挿入用空間13に入れ、挿入用空間13内にチューブを加圧した状態で超音波振動を加え、外管内壁11aとチューブ外周面20bが溶けて入り込んだ形で溶着している。このことにより、本発明は、段差のないチューブと樹脂成形品との接続について、外管内壁11aとチューブ外周面20bが互いに溶けて入り込んだ形で溶着して大きい接続強度を得ている。
【0045】
図5に、実施形態1の溶着する作業手順をフローチャートで示した。まず、ベース台80に軸継手10Bを取り付ける(ステップS1)。次に、チューブ20を、挿入用空間13に入れる(ステップS2)。チューブ20を軸方向に押し込み、チューブ20の圧力で外管11を膨らませる(ステップS3)。可撓性チューブの先端と外管を膨張させた状態から、工具ホーン30とアンビル40で膨張した外管外壁11bを元の形に押し戻す(ステップS4)。工具ホーン30を超音波振動させ、外管内壁11aとチューブ20の外周面を溶着する(ステップS5)。工具ホーン30とアンビル40、を外管外壁11bから離す(ステップS6)。
【0046】
そして、全周が溶着するまで軸継手10Bを、工具ホーン30とアンビル40に対して相対的に、所定角度回転させ(ステップS7)、ステップS4からステップS7の手順を繰り返す。全周が溶着したら、ステップS6の後にチューブ押し込み部材50、51を元の位置に戻す(ステップS8)。軸継手10Bをベース台80から抜く(ステップS9)。このことにより、軸継手10Bとチューブ20の接続作業が完了する(ステップS10)。
【0047】
以上、本発明が(1)外管11と内管12の間に挿入用空間13を形成した軸継手10Bなどの樹脂成形品に、挿入用空間13内にチューブ20を圧接した状態で直接一体に接続することを説明した。
特に(2)工具ホーンの中心の孔にチューブを通す作業と外す作業を不要としている。(3)外管内壁11aとチューブ20の外周面を溶着して離脱防止効果を高める。という従来技術では未解決であった課題を解決する新たな溶着方法および装置を実現していることを説明した。
【0048】
なお、本発明は、「工具ホーンにチューブを通さないで、点滴筒の外管内壁と可撓性チューブを、シワができるほど加圧した状態で溶着する発明」ということができる。
以上、実施形態1では、外管11と内管12の間に挿入用空間13を形成した樹脂成形品10を支持するベース台80と、可撓性チューブ20を把持して、ベース台80に支持した樹脂成形品10の挿入用空間13に当該可撓性チューブ20の先端を押し込み、当該可撓性チューブ20の先端と外管11を半径方向に膨張させる押し込み手段50、51と、樹脂成形品10の外管外壁11bの一面側に当接する工具ホーン30と、樹脂成形品10の外管外壁11bの工具ホーン30と反対の他面側に当接するアンビル40と、樹脂成形品10の外管外壁11bを工具ホーン30とアンビル40で押圧して、半径方向に膨張した外管11と可撓性チューブ20を押し戻す押し戻し手段(バネ33、43とエアシリンダー32、44)、工具ホーン30を超音波振動させる超音波振動手段32と、樹脂成形品10を可撓性チューブ20先端の軸芯の周りに所定角度回転させる回転手段(支持キャップ)71と、押し込み手段50、51と、押し戻し手段(バネ33、43とエアシリンダー32、44)と、超音波振動手段32と、回転手段71と、を制御する図示しない制御手段と、を用いて当該制御手段に、
(1)押し込み手段50、51により、ベース台80に支持した樹脂成形品10の挿入用空間13に可撓性チューブ20の先端を押し込み、当該可撓性チューブ20の先端と外管11を半径方向に膨張させ、
(2)可撓性チューブの先端と外管を膨張させた状態から、押し戻し手段により、樹脂成形品10の外管外壁11bを工具ホーン30とアンビル40で押圧して、半径方向に膨張した外管11と可撓性チューブ20を押し戻し、
(3)超音波振動手段32により、工具ホーン30を超音波振動させ、樹脂成形品10の外管内壁11aと可撓性チューブ20の外周面を加圧した状態で溶着し、
(4)前記押し戻し手段により、工具ホーン30とアンビル4を樹脂成形品10から離し、
(5)回転手段71により、前記工具ホーンと前記アンビルに対して樹脂成形品10を可撓性チューブ20先端の軸芯の周りに所定角度、相対的に回転させ、
(6)上記(2)から(5)を所定回数繰り返し、
(7)押し戻し手段により、工具ホーン30とアンビル4を樹脂成形品10から離すとともに、押し込み手段50、51を樹脂成形品10から離し、ベース台80から樹脂成形品10を取り出せるようにする、
工程を実行することにより、可撓性チューブ20を、樹脂成形品10に設けた外管11と内管12の間の挿入用空間13に一体接続するようにした、可撓性チューブ20と樹脂成形品10の超音波振動溶着方法と装置について説明した。
【0049】
(実施形態1の第1変形例)
実施形態1を説明した上記
図4の工程(C)では、外管11が「お椀状」に膨張、変形している様子を示したが、外管11の肉厚と軸方向の長さによっては、外管11が挿入用空間底部から「逆円錐状」に広がるように膨張、変形する場合もある。
そのような場合を、実施形態1の第1変形例として、
図6に工程(A)から(F)として図示した。
図6の工程(A)の状態から、
図6の工程(B)のようにチューブ20を挿入用空間13に入れ、
図6の工程(C)のようにチューブ20を挿入用空間底部(外管底壁11c)に向けて押し込むと、外管11が挿入用空間底部から逆円錐状に広がるように変形する。しかし、
図6の工程(D)のように、外管外壁11bから工具ホーン30とアンビル40が外管外壁11bに当たり、外管11の挿入用空間底部から逆円錐状に広がった変形を押し戻す。
図6の工程(D)の状態は、ほぼ
図4の工程(D)の状態と同じといえる。その後、
図6の工程(E)のように、工具ホーン30を超音波振動させれば、挿入用空間13にチューブ20を圧接した状態で、外管内壁11aとチューブ20の外周面は溶着する。
【0050】
なお、図示していないが、
図6の工程(E)の次に、工具ホーン30とアンビル40を
図6の工程(C)のように外管外壁11bから離し、チューブ20と外管内壁11aの全周が溶着するまで、工具ホーン30とアンビル40に対して相対的に、所定角度回転させ、再び
図6の工程(D)の押し戻し動作と、
図6の工程(E)の超音波振動溶着動作をする。そして、外管11とチューブ20は直接一体に接続する。このことは、実施形態1と同じである。
(実施形態1の第2変形例)
実施形態1の第2変形例では、
図7の工程(A)、(B)のように、工具ホーン30とアンビル40の押圧面を円錐面として、外管11Bの外径寸法が、外管底壁11cから軸方向に離れるにつれてテーパー状に細くなるようにしている。
【0051】
そのため、実施形態1の第2変形例で外管11Bに超音波振動を加えると、挿入用空間13にチューブ20を圧接した状態で、外管内壁11aとチューブ20が溶着するとともに、外管底壁11cから軸方向に離れるにつれて外径寸法とともに内径寸法が小さくなるように外管11Bがチューブ20の外周面20bを絞っている。そして、チューブ20を外管内壁11aで強固に把持されて、樹脂成形品の挿入用空間13から抜けないようにしている。
(実施形態1の第3変形例)
実施形態1の第3変形例では、
図8の工程(A)、(B)のように、工具ホーン30の押圧面を、断面で見て内側に凸の曲面として、樹脂成形品のチューブ収納用の外管11Cの中央部の内径を小さく絞っている。
【0052】
そのため、実施形態1の第3変形例で外管11Cに超音波振動を加えると、挿入用空間13にチューブ20を圧接した状態で、外管内壁11aとチューブ20が溶着するとともに、チューブ20は絞られた外管11Cの中央部で強固に把持されて、抜けないようにしている。
(実施形態1の第4の変形例)
実施形態1の第4の変形例では、軟質のチューブ本体21bの外周にチューブ本体21bより硬い外皮21cを被せた形の、硬度的に二重構造をしたチューブ21を用いた場合を説明する。
【0053】
実施形態1の第4の変形例では、チューブ21を樹脂成形品のチューブ収納用の挿入用空間13に入れ、挿入用空間13にチューブ21を軸方向に加圧して、チューブ21の外周面、特に外皮21cにシワを発生させた状態で、外管11に工具ホーン30を押圧して超音波振動溶着する。
図9の工程(A)では、チューブ21の構造を、軟質のチューブ本体21bの外周にチューブ本体より硬い外皮21cを被せた形にしている。
図9の工程(B)のように、チューブ21をチューブ収納用の挿入用空間13にいれて、チューブ21を圧縮していくと、軟質のチューブ本体21bは圧縮され、硬い外皮21cにはシワが発生する。
図9の工程(C)のように、チューブ21も外管11も軸方向に圧縮され、同時に半径方向に膨張する。ここで、
図9の工程(D)のように、工具ホーン30とアンビル40でチューブ21と外管11の膨張した部分を圧縮する。このチューブ21と外管11の膨張した分を再圧縮するシワ寄せ動作をした不安定な加圧状態のまま、外管11に工具ホーン30の超音波振動を与えると、外管内壁11aとチューブ20の外周面が溶けて入り込んだ形で溶着することができる。
【0054】
実施形態1の第4の変形例では、軟質のチューブ本体21bの外周にチューブ本体より硬い外皮21cを被せたチューブ21を用いて超音波振動溶着することで、微細なシワや段差をつくり、チューブと樹脂成形品が溶けて互いに入り込んだ形でチューブ21と樹脂成形品が溶着し、所定の接続強度が得られる。このように、実施形態1では、外管内壁11aと段差のないチューブ21の外周面を溶着している。
【0055】
なお、実施形態1の第2変形例から第4変形例の説明では、ベース台80の図示を省略して説明した。また、押し込み部材50、51は、内面にギザギザのある円筒部材として図示したが、チューブを把持して軸方向に押し込むことができればよく、場合によっては人間が手でチューブを把持して軸方向に押し込むようにしても良い。
以上、実施形態1で説明したように、チューブ20、21を挿入用空間13の軸方向に加圧しチューブ20、21の先端部分を軸方向に圧縮し半径方向に膨張させる。そして、可撓性チューブの先端と外管を膨張させた状態から、外管外壁11bを工具ホーン30とアンビル40で押圧し、半径方向に膨張した部分に所定の大きさの加圧力を加えて圧縮すると、チューブ20、21の外周に環状のシワが生じる。この環状のシワが生じた状態で、工具ホーン30を超音波振動させ、外管内壁11aとチューブ20、21の表面を超音波振動溶着すると、チューブ20、21のシワに外管内壁11aが溶け込み、樹脂成形品の軸方向にチューブが抜けなくなる。
【0056】
あるいはシワがよっていなくても表面に微細なシワが寄ろうとしている不安定な状態になっている。このチューブの外周面を加圧してシワ寄せ動作をした不安定な加圧状態としたまま、工具ホーン30に超音波振動させると、外管内壁11aとチューブ20、21の外周面が溶けて互いに入り込んだ形で溶着する。そして、チューブと樹脂成形品に所定の接続強度が得られる。
【0057】
また、
図7、8で説明したように、工具ホーン30とアンビル40の押圧面の形状を円錐状の断面形状にしたり、内側に凸の断面形状にしたりして、外管の外壁11B、11Cをより圧縮した形に成形すると、圧縮した分だけ樹脂成形品の軸方向にチューブ20、21の離脱防止力が増大する。
(実施形態2)
【0058】
実施形態2では、外周面に段差のあるチューブ、すなわち外周の軸方向に波を打つ段差があるチューブ22と、外管11と、外管11内に同軸方向に配置された内管12が備えられ、外管11と内管12間に挿入用空間13が形成された樹脂成形品(軸継手10B)を溶着するときの実施形態を説明する。
実施形態2では、
図23で示したような、あらかじめ外周面に段差のあるチューブ、すなわち外周の軸方向に波を打つ段差のあるチューブ22を作っておいて、
図10の工程(A)に示すように、ベース台80に支持した軸継手10Bの内管12にチューブ22を被せ、
図10の工程(B)に示すようにチューブ押し込み部材50、51を用いて、チューブ22の外周を掴んで、チューブ22の先端を挿入用空間13に入れ、軸方向の下方に押し込んでいくと、チューブ22の先端は挿入用空間底壁(外管底壁11c)に当たる。その後は、実施形態1と同じ方法、手順で超音波振動溶着をする。
【0059】
すなわち、
図10の工程(C)に示すように、チューブ22をチューブ押し込み部材50、51で掴んだまま、チューブ22の先端を挿入用空間13に入れ、軸方向に加圧すると、チューブ22は半径方向に膨張し、外管11も半径方向に膨張する。チューブ22の半径方向の膨張は、チューブの先端部分22aが外管底壁11cに当たって、挿入用空間13に充満して生じる。そして、外管底壁11cより上方に向けて徐々に半径寸法が拡大する。
図10の工程(C)では、外管11がお椀状に膨張している様子を示している。
【0060】
外管11が半径方向に膨張した状態で、
図10の工程(D)に示すように、外管外壁11bを工具ホーン30とアンビル40で挟んで押圧する。そして、工具ホーン30とアンビル40で外管11の半径方向の膨張を押さえ込む。このことにより、外管外壁11bは膨らんだ曲面から、膨張していた部分が押さえ込まれた元の円筒面に戻る。このとき、チューブ22も外管11によって半径方向に圧縮される。
【0061】
お椀状に膨張した表面を円筒状の表面にすることは、外管外壁11bの表面積を小さくすることであり、表面の各微小部分が均等に縮まない所にはシワが発生する。この外管外壁11bの膨らんだ表面を元の円筒面に戻す動作は、外管内壁11aとチューブ22の外周面22bにシワを寄せる、シワ寄せ動作をさせていることになる。
外管11の肉厚と軸方向の長さにより、外管11は「お椀状」、「逆円錐状」の他に、例えば「太鼓状」に膨張することも考えられるが、その場合でも、
図10の工程(D)に示すように、外管外壁11bを工具ホーン30とアンビル40で挟んで押圧する。そして、工具ホーン30とアンビル40で外管11の半径方向の膨張を押さえ込む。このことにより、外管外壁11bは膨らんだ曲面から、膨張していた部分が押さえ込まれた元の円筒面に戻る。このとき、チューブ22も外管11によって半径方向に圧縮されることは同じである。
【0062】
図10の工程(A)では、チューブ22の外周面に外力がかかっていない自由状態であるが、
図10の工程(D)では、チューブ22の外周面22bを一度膨らませた後、強制的に圧縮するシワ寄せ動作をしたので、挿入用空間13の中にあるチューブ22の外周面22bは、
図10の工程(A)に示す状態より外周の軸方向に波を打つ段差が大きくなり、表面に微細なシワがよった、あるいはシワがよっていなくても表面に微細なシワが寄ろうとしている不安定な状態になっている。
【0063】
このチューブ22の外周面を加圧してシワ寄せ動作をした不安定な加圧状態としたまま、
図10の工程(E)に示すように、工具ホーン30を超音波振動させると、外管内壁11aとチューブ22の外周面が溶けて互いに入り込んだ形で溶着する。そして、チューブ22と軸継手10Bの所定の接続強度が得られる。
なお、図示していないが、
図10の工程(E)の次に、工具ホーン30とアンビル40を
図10の工程(C)のように外管外壁11bから離し、チューブ22と外管内壁11aの全周が溶着するまで、工具ホーン30とアンビル40に対して相対的に、所定角度回転させ、再び
図10の工程(D)の押し戻し動作と、
図10の工程(E)の超音波振動溶着動作をする。そして、外管11とチューブ22は直接一体に接続する。このことは、実施形態1と同じである。
【0064】
このように、実施形態2では、あらかじめ外周面に段差のあるチューブ22を挿入用空間13に入れて加圧した状態で、実施形態1と同じく、シワ寄せ動作をすることにより、加圧も、シワ寄せ動作もしない場合に比べて接合強度を著しく高めることができる。
本発明の実施形態2では、上記説明したとおり、従来例と違った方法で、外周面に段差のあるチューブと樹脂成形品との接続について、外管内壁11aとチューブ22の外周面22bが互いに溶けて入り込んだ形で溶着して大きい接続強度を得ている。
(実施形態2の第1変形例)
実施形態2の第1変形例では、あらかじめチューブ22Aの先端部分の一定長さ部分に外溝W
oと内溝W
iを作っておいて、既にできた溝W
o、W
iのあるチューブ22Aの先端部分を挿入用空間13に入れ、チューブ22Aの先端部分が圧縮され、溝W
oの山頂部分が外管内壁11aを押圧するまで入れた加圧状態で、外管外壁11bに工具ホーン30を押圧して超音波振動溶着するようにしている。
【0065】
あらかじめチューブ22Aの先端部分に溝を作っておく方法としては、チューブ22Aの外周面、内周面に機械加工で溝を掘る方法、チューブ22Aの外周面、内周面に高温に熱した溝付き棒をいれて、高温にしたチューブ22Aに溝を転造する方法など任意の方法を採用することができる。
図11の工程(A)に示すように、あらかじめの先端部分に溝W
o、W
iを作っておいたチューブ22Aを挿入用空間13に入れ、
図11の工程(B)、工程(C)のように軸方向に加圧すると、チューブ22Aを軸方向に圧縮し、半径方向に膨張させる。溝W
oの山頂部分が外管内壁11aを押圧し、溝W
iの山頂部分が内管外壁12bを押圧した状態で、
図12の工程(D)に示すように工具ホーン30とアンビル40で押圧して半径方向の膨張した部分を再び圧縮する。そして、
図12の工程(E)のように、工具ホーン30を超音波振動させると、溝W
oとその他のチューブ22Aの表面にできる微細なシワに樹脂成形品の外管内壁11aが溶け込んだ形にチューブ22Aを溶着する。そして、溝W
iとその近傍の表面にできる微細なシワに樹脂成形品10Bの内管外壁12bが溶け込んだ形にチューブ22Aを溶着することができる。
【0066】
このように、実施形態2の第1変形例では、あらかじめ先端部分に溝W
o、W
iを作っておいたチューブ22Aを樹脂成形品の外管内壁11aと内管外壁に高い強度で溶着することができる。
図13は、
図12の工程(E)における、矢視AL13で示す断面図であり、上側の工具ホーン30と下側のアンビル40で樹脂成型品10Bの外管11とチューブ22Aを挟んで、工具ホーン30を超音波振動させている状態(図中符号Cで示す)を示している。
図13を見ればわかる様に、樹脂成型品10Bとチューブ22Aは、工具ホーン30のある上側で互いに超音波振動して溶着する。
【0067】
実際の溶着作業としては、一度、
図13に示した状態で超音波振動溶着した後、工具ホーン30とアンビル40を離し、樹脂成型品10Bとチューブ22Aを上下反転して、(軸回りに回動させて)工具ホーン30に対して下側にあった溶着すべき部分を上側にして、工具ホーン30とアンビル40で外管外壁11bを押して、新たに超音波振動溶着作業を行う。必要により、超音波振動溶着した都度、樹脂成型品10Bとチューブ22Aを所望の角度を回転させて、超音波振動溶着作業を行うのは、既に
図1から
図3を参照して、本発明の超音波振動溶着装置の構造として説明した通りである。
図14は、治具80から取り出した樹脂成形品とチューブ22Aを示している。
(実施形態2の第2の変形例)
実施形態2の第2の変形例では、
図15のように、チューブ22Bの外周にコイル状のばね材90を巻きつけている。巻き付け円の内径を、チューブ22Bの外径より小さく設定して内径のコイル状のばね材90をチューブ22Bに巻きつけると、チューブ22Bの外周でコイル状のばね材90を巻きつけられた部分が凹む。この様な方法で、あらかじめチューブ22Bの先端部分に溝W
oを作っておくことができる。チューブの外径より小さい内径の溝W
oに巻回されるコイル状のばね材90は、別部品となるが簡単にチューブの先端部分に溝を付けることができる。コイル状のばね材90をプラスチックのコイルで作れば、外管内壁とチューブを溶着した部分が、外管内壁とプラスチックのコイル90とチューブ22Bの3部材を溶着した部分に置き換えることが出来るので、より一層接合強度の高い溶着方法が得られる。
【0068】
なお、実施形態2の第1変形例と第2変形例の説明では、ベース台80の図示を省略して説明した。
(実施形態3)
【0069】
実施形態3では、外管11の外管内壁11aに予め半径方向に段差(螺旋溝)17を設けることによって、外周面が平滑なチューブ20と樹脂成形品10Bの接合強度を確保する実施形態を説明する。
実施形態3では、
図16の工程(A)に示したように、あらかじめ外管内壁11aに溝17を刻設しておいて、
図16の工程(B)に示すように、溝17のついた挿入用空間13にチューブ20を押し込んで、チューブ20の外周面を外管内壁に設けた溝17に入り込ませるようにしている。
【0070】
そして
図16の工程(C)に示すように、チューブ20を軸方向に加圧して、外管11の内側表面の溝17にチューブ20の外周面を押圧する。そしてこの状態から工具ホーン30とアンビル40で圧縮し、工具ホーンで超音波振動を加えると、
図16の工程(D)のように、溝17にチューブ20と外管内壁が溶けて、互いに入り込んだ形に溶着する。
繰り返しになるが、実施形態3では、あらかじめ外管内壁に溝17を作っておいて、チューブ20を挿入用空間13に入れて加圧し、軸方向に圧縮し、半径方向に膨張させた状態で、工具ホーンとアンビルで押圧して半径方向の膨張を再圧縮し、このような状態で、工具ホーンで超音波振動を加えることにより、溝17に外管内壁を溶け込ませた形でチューブ20と樹脂成形品を溶着する。そして、所要のチューブと樹脂成形品の接続強度を得ている。
【0071】
上記実施形態3では、では、樹脂成形品の外管内壁に予め半径方向に溝17を設けた場合を説明したが、溝17の他に、樹脂成形品の外管内壁に予め半径方向に段差、凹凸、その他の形をした溝のいずれかを設けても良い。
なお、以上の各実施形態の説明では、発明を理解しやすくするために、工具ホーンで超音波振動を加えるタイミングは、工具ホーンとアンビルで押圧して半径方向の膨張を再圧縮した状態とした後であるとして説明したが、工具ホーンで超音波振動を加えるタイミングを、工具ホーンとアンビルで押圧して半径方向の膨張を再圧縮する工程を開始するときまたは、その直前、或いは直後としても、同等の接続強度が得られる。