(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来から、ビタミン類は、保湿や美白等の様々な効能をもつことが知られており、化粧品や医薬部外品によく配合されている。ビタミン類は、脂溶性ビタミンと水溶性ビタミンに大別される。脂溶性ビタミンに分類されるものとして、ビタミンA類、ビタミンD類、ビタミンE類、及びビタミンK類がある。一方、水溶性ビタミンに分類されるものとして、ビタミンB群、及びビタミンCがある。
【0003】
さらに、水溶性ビタミンであっても、誘導体化されることにより油溶性に性質が変化したビタミンもある。このようなビタミンの誘導体化は、安定性の向上や皮膚への吸収性の向上を主な目的として行われる。誘導体化されたビタミンの一例としては、L−アスコルビン酸脂肪酸エステルなどが挙げられる。
【0004】
安定性の向上等を目的に種々の誘導体化ビタミンが開発されている。しかしながら、そのような誘導体化ビタミンであっても、必ずしも安定性に優れているとは限らず、光、水、熱、酸素、pH等の様々な影響により、異性化、酸化分解、加水分解等を起こし、経時的に着色を生じることがある。その中でもL−アスコルビン酸脂肪酸エステルの一種であるテトラヘキシルデカン酸アスコルビルは、加水分解耐性が特に低く着色が生じやすいことが知られている。
【0005】
これまで、ビタミン類の安定性のために様々な方法が考えられてきた。ビタミン類の安定性を向上させる方法として、例えば次の方法がある。特許文献1には、フッ素系界面活性剤を中和して乳化剤として使用することでビタミン類の安定性を向上させた皮膚外用剤を教示する。特許文献2には、油溶性抗酸化剤、両親媒性物質及び親水性非イオン系界面活性剤を特定の比率で乳化させることでビタミン類の安定性を向上させた乳化組成物を教示する。
【0006】
しかしながら、これらのビタミン類の安定化法は、乳化物としての剤形に限定され、化粧水、美容液等の剤形で処方化することができないという課題があった。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に本発明の実施の形態を説明する。
【0012】
(a)流動性ゲル
本実施形態で用いられる流動性ゲルは、水にゲル化剤を加え加熱溶解しその後冷却することで崩壊性ゲルが形成され、その崩壊性ゲルを破砕することで得ることができる。ゲル化剤の具体例としては、例えば、寒天、ジェランガム、カラギーナン、ペクチン、ゼラチン、アルギン酸、アルギン酸塩などが挙げられ、これらはいずれか1種類以上を選択して用いることができる。また、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0013】
ゲル化剤の含量は、特に限定されず、例えば、流動性ゲルに対する含量として、0.01質量%〜1質量%でもよく、より好ましくは0.02質量%〜0.5質量%である。
【0014】
(b)流動性ゲルと共に配合されるその他の成分
流動性ゲルと共に配合されるその他の成分として、例えば、次の成分を配合してもよい。
【0015】
ゲル化剤によるゲル化を促進するために、塩類を配合してもよい。塩類の種類としては、例えば、1価の塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等)、2価の塩(例えば、カルシウム塩、マグネシウム塩、銅塩等)などが挙げられ、これらはいずれか1種類以上を選択して用いてもよい。
【0016】
崩壊性ゲルの固さを調整したり、粘性を付与したりするために、高分子物質を配合してもよい。高分子物質としては、ゲル化能を持たない親水性高分子化合物を用いることができる。配合できる高分子物質の具体例としては、例えばガラクトマンナン(例えば、グァーガム、ローカストビーンガム、タラガム等)、キサンタンガム、タマリンドシードガム、トラガントゴム、カラヤガム、プルラン、サイリウムシードガム、グルコマンナン、キチン、キトサン、澱粉、デキストリン等の多糖類、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム等のセルロース誘導体等が挙げられ、これらはいずれか1種類以上を選択して用いてもよい。
【0017】
更に、水の他に、水と混和する有機溶媒を配合してもよい。具体的には、例えば、エタノール、プロパノール、グリセリン、ジグリセリン、グリコール類(例えばブチレングリコール)などが挙げられ、これらはいずれか1種類以上を選択して用いてもよい。
【0018】
流動性ゲルには、上記の塩類、高分子物質及び有機溶媒とともに、必要に応じて、通常化粧料に用いられる各種素材を配合してもよい。具体的には、医薬部外品、化粧品等に配合される各種成分として、有効成分、保湿剤、増粘剤、防腐剤、収れん剤、pH調製剤、紫外線吸収剤、紫外線散乱剤、光沢剤、色素、香料、不溶性固形分等を必要に応じて適宜配合することができる。
【0019】
(c)油溶性ビタミン
本実施形態で用いられる油溶性ビタミンとは、脂溶性ビタミン及び誘導体化されることにより油溶性に性質が変化した水溶性ビタミンのことをいう。具体的には、脂溶性ビタミンとは、ビタミンA類、ビタミンD類、ビタミンE類、及びビタミンK類をいう。誘導体化されることにより油溶性に性質が変化した水溶性ビタミンとは、油溶性ビタミンB誘導体、及び油溶性ビタミンC誘導体をいう。
【0020】
より具体的には、ビタミンA類とは、例えばビタミンA油、レチノール、酢酸レチノール、レチノイン酸トコフェリル等が挙げられる。
【0021】
ビタミンD類とは、例えば、エルゴカルシフェロール、コレカルシフェロール等が挙げられる。
【0022】
ビタミンE類とは、例えば、トコフェロール、トコトリエノール、酢酸トコフェロール、ニコチン酸トコフェロール等が挙げられる。
【0023】
ビタミンK類とは、例えば、フィトナジオン、メナジオン等が挙げられる。
【0024】
油溶性ビタミンB誘導体とは、例えば、トリスヘキシルデカン酸ピリドキシン、ジカプリル酸ピリドキシン、ジパルミチン酸ピリドキシン等が挙げられる。
【0025】
油溶性ビタミンC誘導体とは、例えば、パルミチン酸アスコルビル、ジパルミチン酸アスコルビル、テトラヘキシルデカン酸アスコルビル、ステアリン酸アスコルビル、アスコルビン酸メチルシラノール、パルミチン酸アスコルビルリン酸3Na、イソステアリルアスコルビルリン酸2Na等が挙げられる。
【0026】
これらの油溶性ビタミンは、いずれか1種類以上を選択して用いることができる。また2種類以上を混合して用いてもよい。用いられる油溶性ビタミンは、特に限定されないが、好ましくは油溶性ビタミンC誘導体であり、更に好ましくはテトラヘキシルデカン酸アスコルビルである。
【0027】
油溶性ビタミンの含量は、特に限定されず、例えば、化粧品の全質量に対して、0.01〜5.0質量%でもよく、0.1〜4.0質量%でもよく、1.0〜3.5質量%でもよい。
【0028】
本実施形態で用いられる油溶性ビタミンは、流動性ゲル中に分散相として分散され、油相を形成する。このとき、流動性ゲルは連続相を形成する。
【0029】
(d)油相の形成
本実施形態に係る化粧料は、流動性ゲルに、油溶性ビタミンを油相として分散させることにより形成される。連続相としての流動性ゲルと、油溶性ビタミンが流動性ゲル中に分散相として分散した油相と、を含む水中油分散型化粧料である。流動性ゲルに油相を分散させることで、
被膜を形成することなく、様々な大きさの粒径を有する油相を流動性ゲル中に安定的に保持することができる。
【0030】
(e)着色抑制方法
油溶性ビタミン(特にテトラヘキシルデカン酸アスコルビル)は、水と反応して加水分解され、褐色に色づく。本発明に係る実施方法では、流動性ゲルに油溶性ビタミンを油相として分散させ、油相の平均油滴径を所定の大きさの範囲に調整する方法により、油溶性ビタミンの加水分解を抑制する。油溶性ビタミンの加水分解を抑制するために、流動性ゲル中の油相(油溶性ビタミン)の比表面積をできるだけ小さくする必要がある。油相の比表面積をできるだけ小さくする、つまり、油相の油滴径をできるだけ大きくすることで、油溶性ビタミンの加水分解を抑制することができる。ひいては、油溶性ビタミンの着色を抑制することができる。要するに、油相の油滴径が大きくなればなるほど、油溶性ビタミンの着色は抑制される。逆に油相の油滴径が小さくなればなるほど、油溶性ビタミンの着色は促進される。
【0031】
本発明に係る実施形態では、流動性ゲル中における油相の平均油滴径は、所定の大きさの範囲内に存在する。油相の平均油滴径が小さすぎると、油溶性ビタミンの着色が促進されるだけでなく、流動性ゲル中に分散された油相の油滴が見難くなり、化粧料の美観として好ましいものではなくなる。油相の平均油滴径が大きすぎると、そもそも流動性ゲル中に油滴を全体に分散させることができない。
【0032】
(f)流動性ゲル中の油相の平均油滴径
そのような事情に鑑み、流動性ゲル中に油滴を分散させたときの好ましい油相の平均油滴径は、特に限定しないが、0.3mm〜4.0mmであり、より好ましくは1.0mm〜4.0mmであり、より好ましくは2.0mm〜4.0mmである。油相の平均油滴径は、流動性ゲル中に油滴を分散できる範囲内で、できるだけ大きいほうが好ましい。平均油滴径の大きさは、撹拌の速度及び時間で調整できる。
【0033】
(g)油性物質
好ましい一実施形態において、油溶性ビタミンと共に油性物質を混合し、その混合物が油相として流動性ゲル中に分散されるようにしてもよい。
【0034】
油性物質としては、例えば、アボカド油、アーモンド油、オリーブ油、カカオ油、ゴマ油、サフラワー油、大豆油、ツバキ油、パーシック油、ひまし油、ぶどう種子油、マカデミアナッツ油、ミンク油、綿実油、モクロウ、ヤシ油、卵黄油、パーム油、パーム核油、トリイソオクタン酸グリセリル、コレステロール脂肪酸エステル等の油脂類; 流動パラフィン、スクワラン等の炭化水素類; イソステアリルアルコール、オレイルアルコール、オクチルドデカノール等の高級アルコール類; イソステアリン酸ヘキシルデシル、アジピン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジ−2−エチルヘキシル、リンゴ酸ジイソステアリル、ジ−2−エチルヘキサン酸エチレングリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、ジ−2−ヘプチルウンデカン酸グリセリン、トリ−2−エチルヘキサン酸グリセリン、トリ−2−エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトラ−2−エチルヘキサン酸ペンタンエリトリット、グリセリン脂肪酸エステル等の合成エステル油類; ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン、メチルポリシロキサン等の鎖状ポリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサンシロキサン等の環状ポリシロキサン等のシリコーン油; イソステアリン酸、オレイン酸、等の高級脂肪酸などが挙げられる。上記の中から1種類以上を選択して用いることができる。また、2種類以上を混合して用いてもよい。由来や構造は特に限定されず、用途に応じて適宜選択することができる。
【0035】
好ましい一実施形態において油性物質としては、シリコーン油、グリセリン脂肪酸エステル及び流動パラフィンからなる群から選択される少なくとも1種を用いてもよい。シリコーン油のより詳細に関しては、鎖状ポリシロキサンを用いてもよく、更にはメチルポリシロキサン及び/又はメチルフェニルポリシロキサンを用いてもよい。
【0036】
油性物質の配合量は、特に限定されず、化粧料の全質量に対して、0.5〜50質量%でもよく、1〜20質量%でもよく、2〜10質量%でもよい。油溶性ビタミンと共に油性物質を混合することで、油相の比重を調整することができる。比重の重い油性物質と、比重の軽い油性物質とを混合し、望みの比重をもった油相を作製することができる。望みの比重をもった油相を作製することで、流動性ゲルの分散状態及び安定性を制御することができる。
【0037】
なお、このように化粧料に油性物質を添加するとき、化粧料の全質量に対する流動性ゲルの量は、特に限定されず、例えば、50〜99.5質量%でもよく、80〜99質量%でもよく、90〜98質量%でもよい。
【0038】
化粧料には、更に必要に応じて、化粧料に用いられる各種素材を添加してもよい。例えば、医薬部外品、化粧品等に配合される各種成分として、有効成分、保湿剤、増粘剤、防腐剤、収れん剤、紫外線吸収剤、紫外線散乱剤、光沢剤、色素、香料、不溶性固形分等が挙げられる。保湿剤としては、セラミド(例えばヒト型セラミド)などを添加してもよい。これらの素材は、流動性ゲルに油性物質を添加し混合する際に添加してもよく、油性物質中に予め添加しておいてもよく、油性物質を添加混合して油相を形成した後に添加してもよい。
【0039】
本実施形態が対象とする化粧料は、皮膚、毛髪、などに塗布して利用される組成物をいい、使用目的は特に制限されず、各種用途に使用できる。例えば、医薬部外品又は化粧品等に使用できる。
【実施例1】
【0040】
以下、実施例を示してより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0041】
下記表1の処方に従って化粧料を作製した。詳細には、実施例1〜4及び比較例1では、ジェランガム0.1質量部、塩化カルシウム0.04質量部、キサンタンガム0.03質量部、グリセリン6.5質量部、ペンチレングリコール1.0質量部、クレアチン0.5質量部、フェノキシエタノール0.4質量部、1,3ブチレングリコール2.5質量部、及び水86.93質量部を85℃で加熱溶解し、その後、室温まで冷却してゲルを作製した。
【0042】
比較例2、3は、テトラヘキシルデカン酸アスコルビル100.0質量部である。
【0043】
別処方の例として、下記表2の処方に従って化粧料を作製した。詳細には、実施例5〜7及び比較例4では、ジェランガム0.1質量部、塩化カルシウム0.04質量部、キサンタンガム0.03質量部、グリセリン6.08質量部、ペンチレングリコール1.0質量部、メチルグルセス−20 0.5質量部、メチルグルセス−10 0.5質量部、マルチトール1.5質量部、グリセリルグルコシド0.72質量部、ポリグリセリン−6 0.5質量部、ジグリセリン1.0質量部、ポリクオタニウム−51 0.0035質量部、PCA−Na1.0質量部、フェノキシエタノール0.4質量部、1,3ブチレングリコール2.03質量部及び水82.5965質量部を85℃で加熱溶解し、その後、室温まで冷却してゲルを作製した。
【0044】
次いで、作製した実施例1〜7、比較例1、4のゲルをホモミキサーで破砕し、流動性ゲルを得た。その後、油溶性ビタミンとしてテトラヘキシルデカン酸アスコルビル2.0質量部を、実施例1〜7、比較例1、4の流動性ゲルにそれぞれ添加し、流動性ゲル中に分散させた。
【0045】
このとき、各種大きさの油滴径を有する化粧料を得るために、実施例1〜7については撹拌棒を用いて、比較例1、4についてはホモミキサーを用いて、それぞれ流動性ゲル中にテトラヘキシルデカン酸アスコルビルを分散させた。特に実施例1〜4、実施例5〜7については、撹拌棒の撹拌スピード、撹拌時間を調整することにより、各種大きさの油滴径を有する化粧料を得た。
【0046】
表1中の配合成分の詳細は以下の通りである。
・ジェランガム:ケルコゲル/DSP五協フード&ケミカル株式会社製
・塩化カルシウム:日本薬局方 塩化カルシウム水和物H/富田製薬株式会社製
・キサンタンガム:ノムコートZZ/日清オイリオグループ株式会社製
・グリセリン:濃グリセリンS/新日本理化株式会社製
・ペンチレングリコール:ジオールPD−V/高級アルコール工業株式会社製
・クレアチン:TEGO Cosmo C 100/EVONIK Industries製
・フェノキシエタノール:カフレクトPE−1/交洋ファインケミカル株式会社製
・1,3ブチレングリコール:1,3ブチレングリコールP/KHネオケム株式会社製
・テトラヘキシルデカン酸アスコルビル:NIKKOL VC−IP EX/日光ケミカルズ株式会社製
【0047】
次いで、化粧料の着色を促進させるために、加速試験として、実施例1〜4、比較例1、2の化粧料については60℃の条件下で7日間静置した。実施例5〜7、比較例4の化粧料については60℃の条件下で11日間静置した。比較例3については、加速試験は行わなかった。
【0048】
加速試験後の実施例1〜7及び比較例1〜4について、各種評価を行った。結果は次の通りである。
【0049】
(油相の平均油滴径)
油相の平均油滴径は、実施例1〜7については目視により、比較例1、4については光学顕微鏡により、油滴径を測定した。詳細には、目視による測定方法においては、化粧料を入れたガラス瓶の側面から透けて見える油滴を、定規を用いて、50個測定し、その平均直径を平均油滴径とした。光学顕微鏡による測定方法においては、スライドグラス上に滴下された化粧料を光学顕微鏡で観察し、観察視野に現れた油滴の直径を50個測定し、その平均直径を平均油滴径とした。その結果を表1、2の「平均油滴径(mm)」に記載した。
【0050】
(着色評価)
着色評価は、紫外可視分光光度計(UV−2450、島津製作所社製)を用いて、吸光度を測定することにより行った。詳細には、化粧料約100mLを、卓上遠心分離機(himac CT 4D、HITACHI社製)を用いて2500rpm、5分の条件で、油相と流動性ゲルとに分離させ、油相75μLを分取した。油相75μLを2−プロパノール(高速液体クロマトグラフィー用、関東化学社製)5mLで希釈し、試料溶液とした。試料溶液を、紫外可視分光光度計を用いて、波長285nm付近に有する極大吸収波長の吸光度を測定した。3回測定を行い、その吸光度の平均値を表1、2の「着色評価(平均吸光度)」に記載した。
【0051】
表1に示すように、実施例1〜4、比較例1における、平均油滴径と着色評価との関係を着目したとき、平均油滴径が小さくなるほど、平均吸光度は高くなっていた。このことは、平均油滴径が小さいほど、着色の度合いが高くなることを示している。また、この着色は、テトラヘキシルデカン酸アスコルビルが加水分解されていることを示す。すなわち、平均油滴径が小さいほどテトラヘキシルデカン酸アスコルビルの加水分解が促進され、平均油滴径が大きいほどテトラヘキシルデカン酸アスコルビルの加水分解が抑制されることがいえる。
【0052】
比較例2は、水がない状態で、テトラヘキシルデカン酸アスコルビルについて加速試験を行ったときの着色評価を行ったものである。比較例3は、テトラヘキシルデカン酸アスコルビルについて加速試験を行わずに着色評価を行ったものである。比較例2では、水がないため、加速試験を行っても、加水分解はほとんど促進されなかった。加速試験を行わなかった比較例3と、比較例2とを比較しても、その差はわずかであった。
【0053】
表2は、表1とは別処方で、表1と同様に試験を行ったものである。表1と同様に、平均油滴径と着色評価との関係を着目したとき、平均油滴径が小さくなるほど平均吸光度は高くなっており、平均油滴径が大きくなるほど平均吸光度は低くなっていた。
【0054】
表1の実施例と表2の実施例とを比較したとき、同じような平均油滴径であっても、その平均吸光度にはかなりの差がある。これは、処方の違いによる影響も考えられるが、加速試験を行った期間に差があることの影響が大きいと考えられる。
【0055】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これら実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその省略、置き換え、変更などは、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【0056】
【表1】
【0057】
【表2】
【解決手段】流動性ゲルに、油溶性ビタミンを油相として分散させ、前記油相の平均油滴径を0.3mm〜4.0mmに調整する、着色抑制方法であり、前記着色抑制方法により製造された化粧料である。前記油溶性ビタミンは、ビタミンC誘導体であってもよい。更に前記ビタミンC誘導体は、テトラヘキシルデカン酸アスコルビルであってもよい。