(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
食品や医薬品などのコールドチェーンにおいて、商品が消費者へ届くまでに様々な業者を経由する。しかし、業者間で統一した温度管理システムがないため、商品の受け渡し時や、温度管理体制の整っていない業者を経由した際に、適正な温度に保たれていない可能性がある。
【0003】
適正な温度に保たれていることを確認する方法として、電子温度センサを利用して温度履歴を記録する取り組みが行われている。しかし、この場合はデータを内部メモリに記録するか外部ネットワークと通信する必要があり、電子温度センサには電池又は外部電源から電力を供給しなくてはならない。こうした電力供給は、管理コストの増加や災害時の脆弱性につながり、業者ごとにばらつきのある管理システムは不確実性が高くリスクが伴う。昨今の世界的な環境意識の高まりから、無駄な待機電力の削減や駆動時の省エネルギー性が求められている一方で、ECサイトの普及により生鮮食品や医薬品など温度管理が必要な商品の需要も増えていることから、電力を供給しなくとも簡便に温度履歴を残す方法の開発が求められている。
【0004】
電力供給せずに温度履歴を残す方法としては、所定の温度で不可逆的に色が変化する感温変色性材料を用いる方法が考えられる。感温変色性材料としては、一般に、電子受容体となる物質と電子供与体となる物質を共存させ、例えば、前者又は後者の融点を超える温度になると両者が反応して色が変化するような間接的方法が知られている。しかし、このような間接的方法では、反応の再現性が低く、加工法に問題を抱えていることが多く、実用化された材料は非常に少ない。
【0005】
一方、ジアセチレンモノマーを重合して得られるポリジアセチレンは、所定の温度で不可逆的に青色から赤色へ色相転移することが知られており、これまでも、その性質を温度センサとして利用することが検討されてきた。例えば、特許文献1には、結晶状態のジアセチレンモノマーを重合することで得られるポリジアセチレンからなる温度指示薬が記載されている。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明で用いるポリジアセチレンは、下記反応式に示すように、分子内に−C≡C−C≡C−構造を有するジアセチレンモノマー(R
1−C≡C−C≡C−R
2)を重合することで得られるポリマーである。
【0014】
【化1】
〔上記式において、R
1及びR
2は、水素原子又は任意の置換基であり、aは、重合度である。〕
【0015】
ポリジアセチレンを製造するためのジアセチレンモノマーとしては、R
1=R
2となる対称型のジアセチレンモノマーでもよく、R
1≠R
2となる非対称型のジアセチレンモノマーでもよいが、下記式(1)で表されるジアセチレンモノマーが好ましい。
【化2】
〔上記式(1)において、Rは、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、又は炭素数2〜9のアルコキシアルキル基であり、mは、1〜15の整数であり、nは、0〜10の整数である。〕
【0016】
上記式(1)のRとなり得る炭素数1〜6のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、及びn−ヘキシル基等が挙げられる。なかでも、メチル基及びエチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。上記式(1)のRとなり得るは炭素数2〜9のアルコキシアルキル基としては、上記の炭素数1〜6のアルキル基における1つの水素基が、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシキ基等の炭素数1〜3のアルコキシ基に置換された化合物が挙げられる。なかでも、2−メトキシエチル基及び2−エトキシエチル基が好ましく、2−メトキシエチル基がより好ましい。上記式(1)のRとしては、水素原子、メチル基、エチル基、2−メトキシエチル基、及び2−エトキシエチル基が好ましく、水素原子、メチル基、及び2−メトキシエチル基がより好ましい。
【0017】
上記式(1)で表されるジアセチレンモノマーとしては、下記式(1a)で表されるジアセチレンモノマー、下記式(1b)で表されるジアセチレンモノマー、又は下記式(1c)で表されるジアセチレンモノマーが好ましい。
【0018】
【化3】
〔上記式(1a)において、mは、1〜15の整数であり、nは、0〜10の整数である。〕
【0019】
【化4】
〔上記式(1b)において、mは、1〜15の整数であり、nは、0〜10の整数である。〕
【0020】
【化5】
〔上記式(1c)において、mは、1〜15の整数であり、nは、0〜10の整数である。〕
【0021】
上記式(1a)で表されるジアセチレンモノマーの具体例としては、12,14−ノナコサジイン酸(m=13、n=10)、12,14−ヘプタコサジイン酸(m=11、n=10)、12,14−ペンタコサジイン酸(m=9、n=10)、12,14−トリコサジイン酸(m=7、n=10)、12,14−ドコサジイン酸(m=6、n=10)、12,14−ヘンイコサジイン酸(m=5、n=10)、12,14−エイコサジイン酸(m=4、n=10)、12,14−ノナデカジイン酸(m=3、n=10)、12,14−オクタデカジイン酸(m=2、n=10)、及び12,14−ヘプタデカジイン酸(m=1、n=10)等の12,14−ジイン酸;10,12−ノナコサジイン酸(m=15、n=8)、10,12−ヘプタコサジイン酸(m=13、n=8)、10,12−ペンタコサジイン酸(m=11、n=8)、10,12−トリコサジイン酸(m=9、n=8)、10,12−ドコサジイン酸(m=8、n=8)、10,12−ヘンイコサジイン酸(m=7、n=8)、10,12−エイコサジイン酸(m=6、n=8)、10,12−ノナデカジイン酸(m=5、n=8)、10,12−オクタデカジイン酸(m=4、n=8)、10,12−ヘプタデカジイン酸(m=3、n=8)、10,12−ヘキサデカジイン酸(m=2、n=8)、及び10,12−ペンタデカジイン酸(m=1、n=8)等の10,12−ジイン酸;8,10−ヘプタコサジイン酸(m=15、n=6)、8,10−ペンタコサジイン酸(m=13、n=6)、8,10−トリコサジイン酸(m=11、n=6)、8,10−ドコサジイン酸(m=10、n=6)、8,10−ヘンイコサジイン酸(m=9、n=6)、8,10−エイコサジイン酸(m=8、n=6)、8,10−ノナデカジイン酸(m=7、n=6)、8,10−オクタデカジイン酸(m=6、n=6)、8,10−ヘプタデカジイン酸(m=5、n=6)、8,10−ヘキサデカジイン酸(m=4、n=6)、及び8,10−ペンタデカジイン酸(m=3、n=6)等の8,10−ジイン酸;6,8−ペンタコサジイン酸(m=15、n=4)、6,8−トリコサジイン酸(m=13、n=4)、6,8−ドコサジイン酸(m=12、n=4)、6,8−ヘンイコサジイン酸(m=11、n=4)、6,8−エイコサジイン酸(m=10、n=4)、6,8−ノナデカジイン酸(m=9、n=4)、6,8−オクタデカジイン酸(m=8、n=4)、6,8−ヘプタデカジイン酸(m=7、n=4)、6,8−ヘキサデカジイン酸(m=6、n=4)、及び6,8−ペンタデカジイン酸(m=5、n=4)等の6,8−ジイン酸;4,6−トリコサジイン酸(m=15、n=2)、4,6−ドコサジイン酸(m=14、n=2)、4,6−ヘンイコサジイン酸(m=13、n=2)、4,6−エイコサジイン酸(m=12、n=2)、4,6−ノナデカジイン酸(m=11、n=2)、4,6−オクタデカジイン酸(m=10、n=2)、4,6−ヘプタデカジイン酸(m=9、n=2)、4,6−ヘキサデカジイン酸(m=8、n=2)、及び4,6−ペンタデカジイン酸(m=7、n=2)等の4,6−ジイン酸;2,4−ヘンイコサジイン酸(m=15、n=0)、2,4−エイコサジイン酸(m=14、n=0)、2,4−ノナデカジイン酸(m=13、n=0)、2,4−オクタデカジイン酸(m=12、n=0)、2,4−ヘプタデカジイン酸(m=11、n=0)、及び2,4−ヘキサデカジイン酸(m=10、n=0)、2,4−ペンタデカジイン酸(m=9、n=0)等の2,4−ジイン酸が挙げられる。なかでも、10,12−ジイン酸及び8,10−ジイン酸が好ましい。10,12−ジイン酸としては、10,12−ペンタコサジイン酸及び10,12−トリコサジイン酸が好ましい。8,10−ジイン酸としては、8,10−トリコサジイン酸及び8,10−ヘンイコサジイン酸が好ましい。
【0022】
上記式(1b)で表されるジアセチレンモノマーの具体例としては、12,14−ノナコサジイン酸メチル(m=13、n=10)、12,14−ヘプタコサジイン酸メチル(m=11、n=10)、12,14−ペンタコサジイン酸メチル(m=9、n=10)、12,14−トリコサジイン酸メチル(m=7、n=10)、12,14−ドコサジイン酸メチル(m=6、n=10)、12,14−ヘンイコサジイン酸メチル(m=5、n=10)、12,14−エイコサジイン酸メチル(m=4、n=10)、12,14−ノナデカジイン酸メチル(m=3、n=10)、12,14−オクタデカジイン酸メチル(m=2、n=10)、及び12,14−ヘプタデカジイン酸メチル(m=1、n=10)等の12,14−ジイン酸メチル;10,12−ノナコサジイン酸メチル(m=15、n=8)、10,12−ヘプタコサジイン酸メチル(m=13、n=8)、10,12−ペンタコサジイン酸メチル(m=11、n=8)、10,12−トリコサジイン酸メチル(m=9、n=8)、10,12−ドコサジイン酸メチル(m=8、n=8)、10,12−ヘンイコサジイン酸メチル(m=7、n=8)、10,12−エイコサジイン酸メチル(m=6、n=8)、10,12−ノナデカジイン酸メチル(m=5、n=8)、10,12−オクタデカジイン酸メチル(m=4、n=8)、10,12−ヘプタデカジイン酸メチル(m=3、n=8)、10,12−ヘキサデカジイン酸メチル(m=2、n=8)、及び10,12−ペンタデカジイン酸メチル(m=1、n=8)等の10,12−ジイン酸メチル;8,10−ヘプタコサジイン酸メチル(m=15、n=6)、8,10−ペンタコサジイン酸メチル(m=13、n=6)、8,10−トリコサジイン酸メチル(m=11、n=6)、8,10−ドコサジイン酸メチル(m=10、n=6)、8,10−ヘンイコサジイン酸メチル(m=9、n=6)、8,10−エイコサジイン酸メチル(m=8、n=6)、8,10−ノナデカジイン酸メチル(m=7、n=6)、8,10−オクタデカジイン酸メチル(m=6、n=6)、8,10−ヘプタデカジイン酸メチル(m=5、n=6)、8,10−ヘキサデカジイン酸メチル(m=4、n=6)、及び8,10−ペンタデカジイン酸メチル(m=3、n=6)等の8,10−ジイン酸メチル;6,8−ペンタコサジイン酸メチル(m=15、n=4)、6,8−トリコサジイン酸メチル(m=13、n=4)、6,8−ドコサジイン酸メチル(m=12、n=4)、6,8−ヘンイコサジイン酸メチル(m=11、n=4)、6,8−エイコサジイン酸メチル(m=10、n=4)、6,8−ノナデカジイン酸メチル(m=9、n=4)、6,8−オクタデカジイン酸メチル(m=8、n=4)、6,8−ヘプタデカジイン酸メチル(m=7、n=4)、6,8−ヘキサデカジイン酸メチル(m=6、n=4)、及び6,8−ペンタデカジイン酸メチル(m=5、n=4)等の6,8−ジイン酸メチル;4,6−トリコサジイン酸メチル(m=15、n=2)、4,6−ドコサジイン酸メチル(m=14、n=2)、4,6−ヘンイコサジイン酸メチル(m=13、n=2)、4,6−エイコサジイン酸メチル(m=12、n=2)、4,6−ノナデカジイン酸メチル(m=11、n=2)、4,6−オクタデカジイン酸メチル(m=10、n=2)、4,6−ヘプタデカジイン酸メチル(m=9、n=2)、4,6−ヘキサデカジイン酸メチル(m=8、n=2)、及び4,6−ペンタデカジイン酸メチル(m=7、n=2)等の4,6−ジイン酸メチル;2,4−ヘンイコサジイン酸メチル(m=15、n=0)、2,4−エイコサジイン酸メチル(m=14、n=0)、2,4−ノナデカジイン酸メチル(m=13、n=0)、2,4−オクタデカジイン酸メチル(m=12、n=0)、2,4−ヘプタデカジイン酸メチル(m=11、n=0)、2,4−ヘキサデカジイン酸メチル(m=10、n=0)、及び2,4−ペンタデカジイン酸メチル(m=9、n=0)等の2,4−ジイン酸メチルが挙げられる。なかでも、10,12−ジイン酸メチル及び8,10−ジイン酸メチルが好ましい。10,12−ジイン酸メチルとしては、10,12−ペンタコサジイン酸メチル及び10,12−トリコサジイン酸メチルが好ましい。8,10−ジイン酸メチルとしては、8,10−トリコサジイン酸メチル及び8,10−ヘンイコサジイン酸メチルが好ましい。
【0023】
上記式(1c)で表されるジアセチレンモノマーの具体例としては、12,14−ノナコサジイン酸2−メトキシエチル(m=13、n=10)、12,14−ヘプタコサジイン酸2−メトキシエチル(m=11、n=10)、12,14−ペンタコサジイン酸2−メトキシエチル(m=9、n=10)、12,14−トリコサジイン酸2−メトキシエチル(m=7、n=10)、12,14−ドコサジイン酸2−メトキシエチル(m=6、n=10)、12,14−ヘンイコサジイン酸2−メトキシエチル(m=5、n=10)、12,14−エイコサジイン酸2−メトキシエチル(m=4、n=10)、12,14−ノナデカジイン酸2−メトキシエチル(m=3、n=10)、12,14−オクタデカジイン酸2−メトキシエチル(m=2、n=10)、及び12,14−ヘプタデカジイン酸2−メトキシエチル(m=1、n=10)等の12,14−ジイン酸2−メトキシエチル;10,12−ノナコサジイン酸2−メトキシエチル(m=15、n=8)、10,12−ヘプタコサジイン酸2−メトキシエチル(m=13、n=8)、10,12−ペンタコサジイン酸2−メトキシエチル(m=11、n=8)、10,12−トリコサジイン酸2−メトキシエチル(m=9、n=8)、10,12−ドコサジイン酸2−メトキシエチル(m=8、n=8)、10,12−ヘンイコサジイン酸2−メトキシエチル(m=7、n=8)、10,12−エイコサジイン酸2−メトキシエチル(m=6、n=8)、10,12−ノナデカジイン酸2−メトキシエチル(m=5、n=8)、10,12−オクタデカジイン酸2−メトキシエチル(m=4、n=8)、10,12−ヘプタデカジイン酸2−メトキシエチル(m=3、n=8)、10,12−ヘキサデカジイン酸2−メトキシエチル(m=2、n=8)、及び10,12−ペンタデカジイン酸2−メトキシエチル(m=1、n=8)等の10,12−ジイン酸2−メトキシエチル;8,10−ヘプタコサジイン酸2−メトキシエチル(m=15、n=6)、8,10−ペンタコサジイン酸2−メトキシエチル(m=13、n=6)、8,10−トリコサジイン酸2−メトキシエチル(m=11、n=6)、8,10−ドコサジイン酸2−メトキシエチル(m=10、n=6)、8,10−ヘンイコサジイン酸2−メトキシエチル(m=9、n=6)、8,10−エイコサジイン酸2−メトキシエチル(m=8、n=6)、8,10−ノナデカジイン酸2−メトキシエチル(m=7、n=6)、8,10−オクタデカジイン酸2−メトキシエチル(m=6、n=6)、8,10−ヘプタデカジイン酸2−メトキシエチル(m=5、n=6)、8,10−ヘキサデカジイン酸2−メトキシエチル(m=4、n=6)、及び8,10−ペンタデカジイン酸2−メトキシエチル(m=3、n=6)等の8,10−ジイン酸2−メトキシエチル;6,8−ペンタコサジイン酸2−メトキシエチル(m=15、n=4)、6,8−トリコサジイン酸2−メトキシエチル(m=13、n=4)、6,8−ドコサジイン酸2−メトキシエチル(m=12、n=4)、6,8−ヘンイコサジイン酸2−メトキシエチル(m=11、n=4)、6,8−エイコサジイン酸2−メトキシエチル(m=10、n=4)、6,8−ノナデカジイン酸2−メトキシエチル(m=9、n=4)、6,8−オクタデカジイン酸2−メトキシエチル(m=8、n=4)、6,8−ヘプタデカジイン酸2−メトキシエチル(m=7、n=4)、6,8−ヘキサデカジイン酸2−メトキシエチル(m=6、n=4)、及び6,8−ペンタデカジイン酸2−メトキシエチル(m=5、n=4)等の6,8−ジイン酸2−メトキシエチル;4,6−トリコサジイン酸2−メトキシエチル(m=15、n=2)、4,6−ドコサジイン酸2−メトキシエチル(m=14、n=2)、4,6−ヘンイコサジイン酸2−メトキシエチル(m=13、n=2)、4,6−エイコサジイン酸2−メトキシエチル(m=12、n=2)、4,6−ノナデカジイン酸2−メトキシエチル(m=11、n=2)、4,6−オクタデカジイン酸2−メトキシエチル(m=10、n=2)、4,6−ヘプタデカジイン酸2−メトキシエチル(m=9、n=2)、4,6−ヘキサデカジイン酸2−メトキシエチル(m=8、n=2)、及び4,6−ペンタデカジイン酸2−メトキシエチル(m=7、n=2)等の4,6−ジイン酸2−メトキシエチル;2,4−ヘンイコサジイン酸2−メトキシエチル(m=15、n=0)、2,4−エイコサジイン酸2−メトキシエチル(m=14、n=0)、2,4−ノナデカジイン酸2−メトキシエチル(m=13、n=0)、2,4−オクタデカジイン酸2−メトキシエチル(m=12、n=0)、2,4−ヘプタデカジイン酸2−メトキシエチル(m=11、n=0)、2,4−ヘキサデカジイン酸2−メトキシエチル(m=10、n=0)、及び2,4−ペンタデカジイン酸2−メトキシエチル(m=9、n=0)等の2,4−ジイン酸2−メトキシエチルが挙げられる。なかでも、10,12−ジイン酸2−メトキシエチル及び8,10−ジイン酸2−メトキシエチルが好ましい。10,12−ジイン酸2−メトキシエチルとしては、10,12−ペンタコサジイン酸2−メトキシエチル及び10,12−トリコサジイン酸2−メトキシエチルが好ましい。8,10−ジイン酸2−メトキシエチルとしては、8,10−トリコサジイン酸2−メトキシエチル及び8,10−ヘンイコサジイン酸2−メトキシエチルが好ましい。
【0024】
本発明においては、所定の温度(例えば0〜70℃)で不可逆的に色が変わるポリジアセチレンの特性を利用した感温変色性組成物及び温度管理システムを構築するため、ポリジアセチレンを安定的に製造することが重要である。しかし、前述のように、ポリジアセチレンを安定的に製造することは難しい。
【0025】
ここで、結晶状態のジアセチレンモノマーは固相重合を起こすことが知られていることから、ジアセチレンモノマーの結晶を安定的に製造することができれば、ポリジアセチレンを安定的に製造することが可能と考えられる。ただし、ジアセチレンモノマーは、一般に水中で凝集しやすく、その凝集物は通常アモルファス状態である。ジアセチレンモノマーがアモルファス状態であると、分子間距離が大きすぎて固相重合は起きない。ジアセチレンモノマーの濃度を低くすれば凝集を抑えることは可能であるが、ポリジアセチレンを製造する効率を上げることは難しい。
【0026】
そこで、本発明では、ジアセチレンモノマーを再沈法にて水中にナノ分散させ、これをゲル化剤である高吸水性樹脂に吸収させることでジアセチレンモノマーのナノ分散を維持し、その状態で冷却してジアセチレンモノマーを結晶化させる。こうすることで、ナノ分散した結晶ジアセチレンモノマーが重合して、ポリジアセチレンを安定的に製造することができる。以下、その感温変色性組成物の製造方法を具体的に説明する。
【0027】
まず、非イオン性界面活性剤を水に溶解させた水溶液を調製し(工程(a))、その水溶液にジアセチレンモノマーを分散させる(工程(b))。このように、非イオン性界面活性剤を共存させることで、水中では有機相となるジアセチレンモノマーを再沈法にて水中にナノ分散させることができる。なお、イオン性界面活性剤を用いた場合でも、水中でジアセチレンモノマーは良好に分散するが、イオン性界面活性剤との相互作用によってポリジアセチレンは当初から赤色に変色してしまうことから、感温変色性組成物を得ることはできない。
【0028】
非イオン性界面活性剤としては、エステル系非イオン性界面活性剤、エーテル系非イオン性界面活性剤、エステルエーテル系非イオン性界面活性剤、アルカノールアミド系非イオン性界面活性剤、アルキルグリコシド系非イオン性界面活性剤、高級アルコール系非イオン性界面活性剤が挙げられる。なかでも、エーテル系非イオン性界面活性剤が好ましい。
【0029】
エーテル系非イオン性界面活性剤としては、ポリ(オキシエチレン)ラウリルエーテル、ポリ(オキシエチレン)ミリスチルエーテル、ポリ(オキシエチレン)セチルエーテル、ポリ(オキシエチレン)ステアリルエーテル、ポリ(オキシエチレン)オレイルエーテル、ポリ(オキシエチレン)オクチルドデシル
エーテル等のポリ(オキシエチレン)アルキルエーテル;ポリ(オキシプロピレン)ラウリルエーテル、ポリ(オキシプロピレン)ミリスチルエーテル、ポリ(オキシプロピレン)セチルエーテル、ポリ(オキシプロピレン)ステアリルエーテル、ポリ(オキシプロピレン)オレイルエーテル、ポリ(オキシプロピレン)オクチルドデシル
エーテル等のポリ(オキシプロピレン)アルキルエーテル;ポリ(オキシエチレン)オクチルフェニルエーテル、ポリ(オキシエチレン)ノニルフェニルエーテル等のポリ(オキシエチレン)アルキルフェニルエーテル;ポリ(オキシプロピレン)オクチルフェニルエーテル、ポリ(オキシプロピレン)ノニルフェニルエーテル等のポリ(オキシプロピレン)アルキルフェニルエーテル;ポリ(オキシエチレン)ポリ(オキシプロピレン)グリコールが挙げられる。なかでも、ポリ(オキシエチレン)アルキルエーテルが好ましく、ポリ(オキシエチレン)ステアリルエーテルがより好ましい。
【0030】
水溶液中の非イオン性界面活性剤の濃度は、水溶液にジアセチレンモノマーをナノ分散させることができる濃度とすればよいが、例えば、0.05〜5重量%とすることが好ましく、0.1〜1重量%とすることがより好ましい。
【0031】
非イオン性界面活性剤を水に溶解させた水溶液にジアセチレンモノマーをナノ分散させる方法としては、ジアセチレンモノマーを有機溶媒に溶解させたモノマー溶液を調製し(工程(b1)、非イオン性界面活性剤を水に溶解させた水溶液に上記のモノマー溶液を滴下する(工程(b2))方法が好ましい。有機溶媒としては、ジアセチレンモノマーを溶解させることを考慮して適宜選択すればよい。有機溶媒としては、ヘキサン等の脂肪族炭化水素;トルエン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン等の芳香族炭化水素;メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール等のアルコール;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル;酢酸エチル、プロピオン酸エチル等のエステル等が挙げられる。なかでも、ジアセチレンモノマーの溶解性及び水との親和性の観点から、ケトンが好ましく、アセトンがより好ましい。モノマー溶液中のジアセチレンモノマーの濃度は、例えば、0.01〜0.1Mとすることができる。非イオン性界面活性剤を水に溶解させた水溶液にモノマー溶液を滴下する際には、当該水溶液を攪拌することが好ましい。
【0032】
水溶液に分散させるジアセチレンモノマーの濃度は、0.005〜0.5Mとすることが好ましい。ジアセチレンモノマーの濃度を0.005M以上とすることで、ジアセチレンモノマーを重合してポリジアセチレンを製造する効率を上げることができる。また、ジアセチレンモノマーの濃度を0.5M以下とすることで、ジアセチレンモノマーの凝集を抑えることができる。ジアセチレンモノマーの濃度は、0.01〜0.1Mとすることがより好ましい。
【0033】
さらに、モノマー溶液を滴下して得られた水溶液から有機溶媒を除去する(工程(b3))ことが好ましい。こうすることで、ジアセチレンモノマーが結晶化しやすくなる。水溶液から有機溶媒を除去する方法としては、例えば、エバポレーターを用いて減圧する方法が挙げられる。
【0034】
ここで、得られた水溶液に、ジアセチレンモノマーを重合するためのラジカル重合開始剤を添加することが好ましい。ラジカル重合開始剤は、熱により開裂してラジカルを発生する熱ラジカル重合開始剤でもよく、光により開裂してラジカルを発生する光ラジカル重合開始剤でもよい。ただし、後述するように、ジアセチレンモノマーを重合する際には温度が高くなりすぎないように管理する必要があることから、光照射によりラジカル重合を行うことが可能な光ラジカル重合開始剤が好ましい。
【0035】
光ラジカル重合開始剤としては、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、2−ヒドロキシ−4’−(2−ヒドロキシエトキシ)−2−メチルプロピオフェノン、2−ヒドロキシ−1−(4−(4−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオニル)ベンジル)フェニル)−2−メチルプロパン−1−オン)等のα−ヒドロキシアルキルフェノン;ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、アセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−フェニル−2−(p−トルエンスルホニルオキシ)アセトフェノン、ベンゾイン、2−ベンジル−2−(ジメチルアミノ)−4’−モルホリノブチロフェノン、2−メチル−4’−(メチルチオ)−2−モルフォリノプロピオフェノン、2−イソニトロソプロピオフェノン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン等のアルキルフェノン;ベンジル、p−アニシル等のベンジル類;ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、1,4−ジベンゾイルベンゼン、2−ベンゾイル安息香酸、4−ベンゾイル安息香酸、2−ベンゾイル安息香酸メチル等のベンゾフェノン類;2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−ホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキシド等のアシルホスフィンオキシド;1−[4−(フェニルチオ)フェニル]−1,2−オクタジオン−2−(ベンゾイル)オキシム等のオキシムエステル;2−クロロチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン等のチオキサントンが挙げられる。なかでも、α−ヒドロキシアルキルフェノンが好ましく、2−ヒドロキシ−4’−(2−ヒドロキシエトキシ)−2−メチルプロピオフェノンがより好ましい。
【0036】
光ラジカル重合開始剤の使用量に関しては、ジアセチレンモノマーをラジカル重合させるために必要な量とすればよいが、ジアセチレンモノマーを効率よくラジカル重合させる観点から、一般的な使用量より多くすることが好ましい。光ラジカル重合開始剤の使用量は、例えば、ジアセチレンモノマーに対して1〜150重量%とすることが好ましく、10〜100重量%とすることがより好ましい。
【0037】
次いで、ジアセチレンモノマーを分散させた水溶液にゲル化剤を添加して、ハイドロゲルを得る(工程(c))。こうすることで、ジアセチレンモノマーを分散させた水溶液がゲル化した流動性のないハイドロゲルの状態となり、ジアセチレンモノマーがナノ分散した状態を維持することができる。ゲル化剤としては、ポリアクリル酸塩、ポリスルホン酸塩、無水マレイン酸塩、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド、ポリアスパラギン酸塩、ポリグルタミン酸塩、ポリアルギン酸塩、デンプン、セルロース等の高吸水性樹脂が挙げられる。なかでも、ポリアクリル酸塩が好ましく、ポリアクリル酸ナトリウムがより好ましい。
【0038】
ゲル化剤の使用量に関しては、ジアセチレンモノマーを分散させた水溶液がハイドロゲルの状態になるために必要な量とすればよいが、例えば、水溶液100mLに対して1〜50gとすることが好ましく、5〜20gとすることがより好ましい。
【0039】
その後、得られたハイドロゲルを冷却して、ジアセチレンモノマーを結晶化させる(工程(d))。こうすることで、濃度の高い状態でジアセチレンモノマーの結晶を得ることができる。冷却の温度は、水溶液中のジアセチレンモノマーが結晶化する温度であればよいが、効率の観点から、水の凝固点(0℃)より低いことが好ましい。
【0040】
工程(d)の後、後述する工程(e)の前に、ハイドロゲルに水を添加する(工程(f))ことが好ましい。こうすることで、ハイドロゲルに適度な流動性を付与したゲル状物を得ることができ、取り扱い性が向上する。水の添加量は、ハイドロゲルに適度な流動性を付与したゲル状物が得られる量とすればよいが、例えば、ハイドロゲル中に存在する水の量の2〜20倍とすることが好ましく、5〜15倍とすることがより好ましい。ゲル状物には、必要に応じて、防腐剤、増粘剤、pH調整剤、防錆剤、潤滑剤、消泡剤、老化防止剤、抗菌剤、難燃剤、紫外線吸収剤、離型剤、分散剤、帯電防止剤、染料(蛍光染料を含む)、顔料、無機微粒子、有機微粒子等の添加剤を添加することもできる。
【0041】
そして、結晶化させたジアセチレンモノマーをラジカル重合して、ポリジアセチレンを生成させる(工程(e))。こうすることで、ポリジアセチレンを安定的に生成させることができ、感温変色性組成物とすることができる。前述のように、工程(c)において水溶液に光ラジカル重合開始剤を添加しておき、本工程において光を照射して光ラジカル重合開始剤を開裂させることで、結晶化させたジアセチレンモノマーをラジカル重合することが好ましい。照射する光は、光ラジカル重合開始剤を開裂させることが可能な光であればよく、可視光でも紫外線でもよい。なお、生成するポリジアセチレンは、当初は青色を呈しているが、所定の温度になると不可逆的に赤色に変化することから、ジアセチレンモノマーの重合に際しては、得られるポリジアセチレンの変色温度以上にならないように注意する必要がある。
【0042】
以上のようにして得られる本発明の感温変色性組成物は、ポリジアセチレンと、ゲル化剤と、水と(さらには非イオン性界面活性剤)を含むハイドロゲルの状態である。本発明の感温変色性組成物が、所定の温度で不可逆的に色が変化する性質を持つ理由はポリジアセチレンを含むためであることから、本発明の感温変色性組成物から、ポリジアセチレン以外の成分を除去しても構わない。すなわち、本発明の感温変色性組成物は、ポリジアセチレンを必須成分として含むものであればよく、ゲル化剤、水、非イオン性界面活性剤等は任意成分であって、ハイドロゲルの状態でなくてもよい。
【0043】
本発明の感温変色性組成物は、ポリジアセチレンを含有していることから、当初は青色を呈しているが、所定の温度になると不可逆的に赤色に変化する。すなわち、本発明の感温変色性組成物を用いた温度管理システムとすることで、例えばコールドチェーンにおいて適正な温度に保たれていたか否かを確認することが可能となる。なお、適正な温度は商品の性質などによって異なるが、感温変色性組成物の変色温度はポリジアセチレンの種類によって異なることから、目的とする適正温度を超えると変色するポリジアセチレンを含む感温変色性組成物を用いればよい。
【実施例】
【0044】
<実施例1>
50mlのアセトンに、ジアセチレンモノマーとして10,12−ペンタコサジイン酸メチル(PDME、methyl pantacosa−10,12−diynoate)を10
−2Mの濃度になるよう加え、室温で5分間攪拌し、定性ろ紙NO.2(ADVANTEC社製)を用いてろ過することで、モノマー溶液を得た。次に、50mlの純水に、非イオン性界面活性剤であるポリオキシエチレンステアリルエーテル(花王製、商品名:エマルゲン350)0.25gを加え、70℃に加熱しながら攪拌することで界面活性剤水溶液を得た。界面活性剤水溶液を攪拌しながら、モノマー溶液を0.5ml/minの滴下速度で加えた。このとき、気化したアセトンを排気するため、反応器は密閉せず、ドラフトチャンバー内で行った。モノマー溶液を全て滴下して得られた混合液をナスフラスコに移し、70℃の恒温水槽を用いてエバポレーターにて減圧することで、混合液中のアセトンを蒸発させて除去した。アセトンの蒸発がなくなって液面が落ち着いた時点で、ゆっくりと大気圧に戻した。
【0045】
p
得られた混合液50mlに対し、光ラジカル重合開始剤0.15gを加えた。次に、乾燥させたポリアクリル酸ナトリウム(ゲル化剤、ケニス製、商品名:超吸水性樹脂)6.25gを加えて攪拌することでハイドロゲルを得た。得られたハイドロゲルを−18℃の温度まで下げて凍結させることで、ジアセチレンモノマーを結晶化させた。
【0046】
その後、ハイドロゲルを常温に戻して解凍し、そこに純水450gと安息香酸ナトリウム(防腐剤)2.5gを加え、流動性のあるゲル状物とした。このゲル状物に、1.0kwメタルハイドライトランプを数秒間照射することで、ジアセチレンモノマーのラジカル重合を行い、ポリジアセチレンを含む感温変色性組成物1(青色)を得た。なお、重合にあたっては、ハイドロゲルがポリジアセチレンの変色温度(実施例1では10℃)以上にならないように注意した。
【0047】
得られた感温変色性組成物1の比色応答性を評価した。まず、感温変色性組成物1から塩化ナトリウムを用いた浸透圧法によりポリジアセチレンを抽出し、その吸光度を紫外可視分光光度計(島津製作所製、商品名:UV−1280)を用いて測定したところ、波長680nmに吸収ピークを有していることが分かった(
図3)。これは、感温変色性組成物1が青色を呈していることと一致する。次いで、感温変色性組成物1を10℃から徐々に加熱したところ、感温変色性組成物1は青色から赤色に変化した。その際の吸光度変化を測定したところ、波長680nmの吸収ピークが減少し、波長555nmの吸収ピークが現れていることが分かった(
図2)。これは、感温変色性組成物1が青色から赤色に変化していることと一致する。そして、比色応答性として、以下の式によりCR値を算出し、それをグラフにした結果を
図1に示す。
PB=A
680nm/(A
680nm+A
555nm)
CR=(PB
0−PB)/PB
0
なお、上記式において、A
680nm及びA
555nmは、それぞれ波長680nm及び波長555nmの吸光度であり、PB
0は、初期のPB値(実施例1では10℃の吸光度データから算出したPB値)である。
【0048】
図1に示すように、感温変色性組成物1は、10℃を超えると赤色に変色し始め、35〜40℃で完全に赤色に変化することが分かる。なお、いったん赤色になった感温変色性組成物1の温度を下げても青色には戻らない。このような変化をする感温変色性組成物1は、例えば包装フィルムに入れてパッケージ化することで、温度管理システムとして好適に利用することができる。
【0049】
<実施例2>
ジアセチレンモノマーとして、10,12−トリコサジイン酸メチル(TDME、Methyl tricosa−10,12−diynoate)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、感温変色性組成物2を得た。感温変色性組成物2の比色応答性を評価した結果を
図1に示す。
【0050】
<実施例3>
ジアセチレンモノマーとして、10,12−ペンタコサジイン酸(PDA、10,12−pentacosadiynoic acid)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、感温変色性組成物3(青色)を得た。感温変色性組成物3の比色応答性を評価した結果を
図1に示す。
【0051】
<実施例4>
ジアセチレンモノマーとして、10,12−トリコサジイン酸(TDA、10,12−tricosadiynoic acid)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、感温変色性組成物4(青色)を得た。感温変色性組成物4の比色応答性を評価した結果を
図1に示す。
【0052】
<実施例5>
ジアセチレンモノマーとして、8,10−ヘンイコサジイン酸(HDA、8,10−heneicosadiynoic acid)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、感温変色性組成物5(青色)を得た。感温変色性組成物5の比色応答性を評価した結果を
図1に示す。
【0053】
<実施例6>
実施例1と同様の方法で、非イオン性界面活性剤とジアセチレンモノマーを混合した混合液に光ラジカル重合開始剤を加えた後、−18℃の温度まで下げて凍結させることで、ジアセチレンモノマーを結晶化させた。その後、凍結した混合液を常温に戻して解凍し、そこに乾燥させたポリアクリル酸ナトリウムを加えて攪拌することでハイドロゲルを得た。そこに純水450gと安息香酸ナトリウム2.5gを加え、流動性のあるゲル状物とした。このゲル状物に、1.0kwメタルハイドライトランプを数秒間照射することで、ジアセチレンモノマーのラジカル重合を行い、ポリジアセチレンを含む感温変色性組成物6(うすい青色)を得た。
【0054】
得られた感温変色性組成物6から塩化ナトリウムを用いた浸透圧法によりポリジアセチレンを抽出し、その吸光度を紫外可視分光光度計(島津製作所製、商品名:UV−1280)を用いて測定したところ、波長680nmに吸収ピークを有するものの、その吸光度は非常に小さいことが分かった(
図3)。これは、感温変色性組成物6がうすい青色を呈していることと一致する。実施例6では、混合液のまま冷却してジアセチレンモノマーを結晶化させてからハイドロゲルにしたため、ジアセチレンモノマーの一部が結晶化せずにアモルファス状態で凝集してしまいラジカル重合が進まなかったと考えられる。感温変色性組成物6を徐々に加熱したところ、感温変色性組成物6はうすい青色からうすい赤色に変化したが、その変化は感温変色性組成物1に比べて小さかった。
【0055】
<比較例1>
実施例1と同様の方法で、非イオン性界面活性剤とジアセチレンモノマーを混合した混合液に光ラジカル重合開始剤を加えた後、純水450gと安息香酸ナトリウム2.5gを加え、1.0kwメタルハイドライトランプを数秒間照射することで、ジアセチレンモノマーのラジカル重合を行った。しかし、混合液の色は全く変わらず、ラジカル重合は起きなかった。
【解決手段】本発明に係る感温変色性組成物は、ポリジアセチレンと、ゲル化剤と、水とを含むハイドロゲルである。本発明に係る感温変色性組成物は、非イオン性界面活性剤を水に溶解させた水溶液を調製する工程と、前記水溶液にジアセチレンモノマーを分散させる工程と、前記ジアセチレンモノマーを分散させた前記水溶液にゲル化剤を添加して、ハイドロゲルを得る工程と、前記ハイドロゲルを冷却して、前記ジアセチレンモノマーを結晶化させる工程と、結晶化させた前記ジアセチレンモノマーをラジカル重合して、ポリジアセチレンを生成させる工程とを有する方法により、好適に製造することができる。