特許第6739129号(P6739129)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6739129水面浮遊型農薬組成物用拡展剤及びこれを含む農薬組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6739129
(24)【登録日】2020年7月27日
(45)【発行日】2020年8月12日
(54)【発明の名称】水面浮遊型農薬組成物用拡展剤及びこれを含む農薬組成物
(51)【国際特許分類】
   A01N 25/00 20060101AFI20200730BHJP
   A01N 25/08 20060101ALI20200730BHJP
   A01N 25/12 20060101ALI20200730BHJP
【FI】
   A01N25/00 101
   A01N25/08
   A01N25/12
【請求項の数】8
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2020-90052(P2020-90052)
(22)【出願日】2020年5月22日
【審査請求日】2020年5月29日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000210654
【氏名又は名称】竹本油脂株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094190
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 清路
(74)【代理人】
【識別番号】100151644
【弁理士】
【氏名又は名称】平岩 康幸
(74)【代理人】
【識別番号】100151127
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 勝雅
(72)【発明者】
【氏名】鬼頭 信臣
【審査官】 三上 晶子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−143849(JP,A)
【文献】 特開2009−114102(JP,A)
【文献】 特開2008−63271(JP,A)
【文献】 特開2007−131594(JP,A)
【文献】 米国特許第2407205(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01N 1/00−65/48
A01P 1/00−23/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される化合物を含有することを特徴とする水面浮遊型農薬組成物用拡展剤。
HO−R−O−G−H (1)
(式中、Rは炭素原子数が6〜14のアルキレン基であり、Gは−(RO)−で表される2価の基であり、Rは炭素原子数が2又は3のアルキレン基であり、sは1〜10の整数であり、sが2以上の場合、−(RO)−におけるRは全て同一であっても、異なっていてもよい。)
【請求項2】
前記一般式(1)の化合物において、Rは炭素原子数が8〜12のアルキレン基である請求項1に記載の水面浮遊型農薬組成物用拡展剤。
【請求項3】
前記一般式(1)の化合物において、Rは炭素原子数が8又は9のアルキレン基であり、sは2〜8の整数である請求項1又は2に記載の水面浮遊型農薬組成物用拡展剤。
【請求項4】
更に、下記一般式(2)で表される化合物を含有する請求項1から3のいずれか一項に記載の水面浮遊型農薬組成物用拡展剤。
H−G−O−R−O−G−H (2)
(式中、Rは炭素原子数6〜14のアルキレン基であり、Gは−(OR−で表される2価の基であり、Rは炭素原子数2又は3のアルキレン基であり、tは1〜10の整数であり、tが2以上の場合、−(OR−におけるRは全て同一であっても、異なっていてもよく、Gは−(RO)−で表される2価の基であり、Rは炭素原子数2又は3のアルキレン基であり、uは1〜10の整数であり、uが2以上の場合、−(RO)−におけるRは全て同一であっても、異なっていてもよい。)
【請求項5】
前記一般式(1)で表される化合物及び前記一般式(2)で表される化合物の含有割合は、これらの化合物の含有量の合計を100質量%とした場合に、前記一般式(1)で表される化合物が40〜99質量%であり、前記一般式(2)で表される化合物が1〜60質量%である請求項4に記載の水面浮遊型農薬組成物用拡展剤。
【請求項6】
農薬活性成分と、請求項1から5のいずれか一項に記載の水面浮遊型農薬組成物用拡展剤とを含有することを特徴とする水面浮遊型農薬組成物。
【請求項7】
更に、増量剤を含有する請求項6に記載の水面浮遊型農薬組成物。
【請求項8】
前記農薬活性成分、前記水面浮遊型農薬組成物用拡展剤及び前記増量剤の含有割合は、これらの成分の含有量の合計を100質量%とした場合に、前記農薬活性成分が0.1〜80質量%であり、前記水面浮遊型農薬組成物用拡展剤が0.1〜10質量%であり、前記増量剤10〜97質量%である請求項7に記載の水面浮遊型農薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農薬活性成分(農薬有効成分)とともに併含され、農地の水面に施用される粒状の農薬組成物を与え、水面において農薬活性成分を十分に拡展させる水面浮遊型農薬組成物用拡展剤に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、水田に撒いた農薬の十分な効果を得るために、即ち、撒いた農薬を局在化させずに水田の全体に分散させるために、農薬活性成分を、拡展剤と併用した粒状物の農薬(農薬組成物)が広く用いられている。拡展剤には、水に接触した後、拡展距離が長く、拡展速度が高いことが求められている。
【0003】
特許文献1には、農薬有効成分と、焼成バーミキュライト、発泡パーライト、発泡シラス及びコルクより選ばれる1種又は2種以上を含有する水面浮遊性粒核と、アセチレンアルコール及びアセチレンジオール並びにそれらにアルキレンオキサイドを付加した界面活性剤より選ばれる1種又は2種以上の水面拡展剤とを含有する水面浮遊性の農薬固形剤を、拡展性水溶紙に分包とした、有効成分が水中に分散又は溶解する水田投げ込み用農薬製剤が開示されている。
特許文献2には、(RCOO)X(OH)(R:炭素数6〜9の脂肪族炭化水素基、X:炭素数2〜8の1〜4価の脂肪族ヒドロキシ化合物から全ての水酸基を除いた残基、mは1〜3の整数、nは0又は1〜3の整数であって、1≦m+n≦4を満足する整数)及びそのリン酸エステル塩又は硫酸エステル塩から選ばれる少なくとも一つ又は二つ以上からなる水面浮遊型農薬組成物用拡展剤が開示されている。
特許文献3には、炭素数6〜14のアルカンジオール及びHO−A−O−R−O−A−OH(R:炭素数6〜14のアルカンジオールから全ての水酸基を除いた残基、A,A:合計1〜7個の炭素数2〜4のオキシアルキレン単位で構成された(ポリ)オキシアルキレン基を有する(ポリ)アルキレングリコールから全ての水酸基を除いた残基)で示されるアルカンジオール誘導体から選ばれる一つ又は二つ以上から成ることを特徴とする水面浮遊型農薬組成物用拡展剤が開示されている。
特許文献4には、農薬活性成分と、HO−(A−O)−X−(O−A−OH(Xは炭素数6〜14の2価の飽和炭化水素基を示し、A及びAは、各々炭素数2〜4のアルキレン基を示し、m及びnは各々が整数を示す。mとnとの合計は1〜7の整数の何れかであり、mが2以上の整数である場合、各々のAは同一又は相異なり、nが2以上の整数である場合、各々のAは同一又は相異なる)で表されるアルカンジオール誘導体と、縮合リン酸又はその塩と、浮遊助剤及び増量剤とを含有する水面浮遊性農薬粒状組成物が開示されている。
また、特許文献5には、RCOO−(AO)−R(R:炭素数6〜9の直鎖のアルキル基又は炭素数6〜9の分岐のアルキル基、AO:炭素数2のオキシアルキレン基、n:3〜4の整数、R:炭素数1〜2の直鎖のアルキル基。)で示されるエステル化合物から成ることを特徴とする水面浮遊型農薬組成物用拡展剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−336403号公報
【特許文献2】特開2003−238307号公報
【特許文献3】特開2007−39344号公報
【特許文献4】特開2009−114102号公報
【特許文献5】特開2018−100261号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、農薬活性成分とともに併含させて、例えば、粒状の農薬組成物を好適に与え、農地の水面に施用してその水面において農薬活性成分を十分に拡展することができる添加剤としての水面浮遊型農薬組成物用拡展剤を提供することである。また、本発明の他の目的は、農地の水面に施用され、施用後の水面において農薬活性成分の拡展性に優れる水面浮遊型農薬組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、鋭意研究した結果、農薬活性成分と、特定のジオール化合物とを併用して作製した粒状物を水面に撒いた際に、農薬活性成分が十分に拡展したことを見い出した。
本発明は、以下に示される。
【0007】
本発明の水面浮遊型農薬組成物用拡展剤は、下記一般式(1)で表される化合物を含有することを特徴とする。
HO−R−O−G−H (1)
(式中、Rは炭素原子数が6〜14のアルキレン基であり、Gは−(RO)−で表される2価の基であり、Rは炭素原子数が2又は3のアルキレン基であり、sは1〜10の整数であり、sが2以上の場合、−(RO)−におけるRは全て同一であっても、異なっていてもよい。)
本発明の水面浮遊型農薬組成物用拡展剤は、更に、下記一般式(2)で表される化合物を含有することができる。
H−G−O−R−O−G−H (2)
(式中、Rは炭素原子数6〜14のアルキレン基であり、Gは−(OR−で表される2価の基であり、Rは炭素原子数2又は3のアルキレン基であり、tは1〜10の整数であり、tが2以上の場合、−(OR−におけるRは全て同一であっても、異なっていてもよく、Gは−(RO)−で表される2価の基であり、Rは炭素原子数2又は3のアルキレン基であり、uは1〜10の整数であり、uが2以上の場合、−(RO)−におけるRは全て同一であっても、異なっていてもよい。)
【0008】
本発明の水面浮遊型農薬組成物は、農薬活性成分と、上記本発明の水面浮遊型農薬組成物用拡展剤とを含有することを特徴とする。
本発明の水面浮遊型農薬組成物は、更に、増量剤を含有することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、水面浮遊型農薬組成物用拡展剤を農薬活性成分と併用して作製した造粒物(水面浮遊型農薬組成物)を水面に撒くと、農薬活性成分が十分に拡展する効果が得られる。従って、本発明の水面浮遊型農薬組成物は、水面を有する農地への施用に有用である。また、本発明の水面浮遊型農薬組成物用拡展剤は、農薬活性成分の造粒性に優れるため、粒状の水面浮遊型農薬組成物を容易に水面に施用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】〔実施例〕における農薬組成物の拡展性評価に用いた容器の概略図である。
図2】〔実施例〕における農薬組成物の拡展性評価を説明する概略図である。
図3】〔実施例〕における農薬組成物の拡展性評価において、農薬組成物を水面に投入した様子を説明する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の水面浮遊型農薬組成物用拡展剤は、下記一般式(1)で表される化合物(以下、「ジオール化合物(A)」という)を含有する。
HO−R−O−G−H (1)
(式中、Rは炭素原子数が6〜14のアルキレン基であり、Gは−(RO)−で表される2価の基であり、Rは炭素原子数が2又は3のアルキレン基であり、sは1〜10の整数であり、sが2以上の場合、−(RO)−におけるRは全て同一であっても、異なっていてもよい。)
【0012】
上記一般式(1)において、アルキレン基Rの構造は、特に限定されず、直鎖状及び分岐状のいずれでもよい。Rにおけるアルキレン基の炭素原子数は6〜14であり、好ましくは8〜12、更に好ましくは8〜9である。アルキレン基Rは、水面拡展性の観点から、炭素原子数8〜12の分岐状アルキレン基であることが好ましい。好ましいRの具体例は、以下に示される。
【化1】
【0013】
また、上記一般式(1)において、Gを構成するアルキレン基Rは、炭素原子数2又は3のアルキレン基、即ち、エチレン基又は直鎖状若しくは分岐状のプロピレン基である。従って、Gはオキシエチレン基(−CO−)又はオキシプロピレン基(−CO−)を含む。
上記ジオール化合物(A)において、オキシエチレン基又はオキシプロピレン基の合計数であるsは、1〜10であり、好ましくは2〜8、より好ましくは3〜8である。sが2以上の場合、−(RO)−におけるRは全て同一であっても、異なっていてもよいが、オキシエチレン基及びオキシプロピレン基の両方を含む場合、これらの基が規則的あるいは不規則的に連なって結合した構造を有する。
【0014】
本発明の水面浮遊型農薬組成物用拡展剤に含有されるジオール化合物(A)は、1種のみであってよいし、2種以上であってもよい。
【0015】
上記ジオール化合物(A)を製造する方法は、特に限定されない。好ましい製造方法は、触媒の存在下、炭素原子数が6〜14のアルカンジオールと、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドから選ばれた少なくとも一方とを反応させる工程(以下、「反応工程」という)を備える方法である。以下、この製造方法について、説明する。
【0016】
上記アルカンジオールとしては、ヘキサンジオール、ヘプタンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、デカンジオール、ウンデカンジオール、ドデカンジオール、トリデカンジオール、テトラデカンジオール等の直鎖アルカンジオール;2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2,4−ジエチル−1,3−ペンタンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール等の分岐アルカンジオール等が挙げられる。上記反応工程で用いるアルカンジオールは、1種のみであってよいし、2種以上であってもよい。
【0017】
上記反応工程では、触媒が用いられる。この触媒は、特に限定されないが、所望の生成物が効率よく得られることから、好ましくは塩基性化合物である。この塩基性化合物は、無機化合物及び有機化合物のいずれでもよく、無機化合物としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸リチウム等が挙げられる。有機化合物としては、CHONa、CONa、CHOLi、COLi、CHOK、COK等が挙げられる。上記触媒の使用量は、上記アルカンジオール1モルに対して、好ましくは0.1〜10ミリモル当量である。
【0018】
上記反応工程は、オートクレーブ等の圧力反応器内において、反応系の温度を、好ましくは100℃〜170℃、より好ましくは130℃〜150℃として、原料を撹拌しながら進められる。エチレンオキサイド又はプロピレンオキサイドは、所望の構造を有するジオール化合物とするために、順序、割合等を変化させながら添加することができる。
【0019】
上記製造方法において、反応工程の後に、必要に応じて、精製工程を備えることができる。この精製工程は、一般的な有機化合物の合成で行われる、従来、公知の、クロマト分離、濃縮等の操作を含むことができる。
【0020】
本発明の水面浮遊型農薬組成物用拡展剤は、更に、拡展性を向上させるために、下記一般式(2)で表される化合物(以下、「ジオール化合物(B)」という)を含有することができる。
H−G−O−R−O−G−H (2)
(式中、Rは炭素原子数6〜14のアルキレン基であり、Gは−(OR−で表される2価の基であり、Rは炭素原子数2又は3のアルキレン基であり、tは1〜10の整数であり、tが2以上の場合、−(OR−におけるRは全て同一であっても、異なっていてもよく、Gは−(RO)−で表される2価の基であり、Rは炭素原子数2又は3のアルキレン基であり、uは1〜10の整数であり、uが2以上の場合、−(RO)−におけるRは全て同一であっても、異なっていてもよい。)
【0021】
上記一般式(2)において、アルキレン基Rの構造は、特に限定されず、直鎖状及び分岐状のいずれでもよい。Rにおけるアルキレン基の炭素原子数は6〜14であり、好ましくは8〜12である。アルキレン基Rは、水面拡展性の観点から、炭素原子数8〜12の分岐状アルキレン基であることが好ましい。好ましいRの具体例は、以下に示される。
【化2】
【0022】
また、上記一般式(2)において、Gを構成するアルキレン基Rは、炭素原子数2又は3のアルキレン基、即ち、エチレン基又は直鎖状若しくは分岐状のプロピレン基である。従って、Gはオキシエチレン基(−OC−)又はオキシプロピレン基(−OC−)を含む。
上記ジオール化合物(B)において、オキシエチレン基又はオキシプロピレン基の合計数であるtは、1〜10であり、好ましくは2〜6、より好ましくは3〜5である。tが2以上の場合、−(OR−におけるRは全て同一であっても、異なっていてもよいが、オキシエチレン基及びオキシプロピレン基の両方を含む場合、これらの基が規則的あるいは不規則的に連なって結合した構造を有する。
【0023】
また、上記一般式(2)において、Gを構成するアルキレン基Rは、炭素原子数2又は3のアルキレン基、即ち、エチレン基又は直鎖状若しくは分岐状のプロピレン基である。従って、Gはオキシエチレン基(−CO−)又はオキシプロピレン基(−CO−)を含む。
上記ジオール化合物(B)において、オキシエチレン基又はオキシプロピレン基の合計数であるuは、1〜10であり、好ましくは2〜6、より好ましくは3〜5である。uが2以上の場合、−(RO)−におけるRは全て同一であっても、異なっていてもよいが、オキシエチレン基及びオキシプロピレン基の両方を含む場合、これらの基が規則的あるいは不規則的に連なって結合した構造を有する。
【0024】
上記ジオール化合物(B)の製造方法は、特に限定されない。好ましい製造方法は、塩基性化合物からなる触媒の存在下に、炭素原子数6〜14のアルカンジオールと、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドから選ばれた少なくとも一方とを反応させる工程を備える製造方法である。この場合、触媒の使用量は、アルカンジオール1モルに対して、好ましくは10〜100ミリモル当量、より好ましくは15〜50ミリモル当量である。
【0025】
本発明の水面浮遊型農薬組成物用拡展剤が上記ジオール化合物(B)を含有する場合、ジオール化合物(A)及びジオール化合物(B)の含有割合は、これらの合計を100質量%とした場合に、それぞれ、好ましくは40〜99質量%及び1〜60質量%であり、より好ましくは60〜98質量%及び2〜40質量%であり、更に好ましくは80〜98質量%及び2〜20質量%である。
【0026】
また、本発明の水面浮遊型農薬組成物用拡展剤は、必要に応じて、更に、結合剤、崩壊促進剤、分散剤、乳化剤、液状媒体(水、グリコール、パラフィンオイル等)、安定剤等の他の成分を含有することができる。
【0027】
本発明の水面浮遊型農薬組成物用拡展剤は、農地の水面に施用され、施用後の水面において農薬活性成分の拡展性に優れる粒状の水面浮遊型農薬組成物の製造原料として好適である。
【0028】
本発明の水面浮遊型農薬組成物は、農薬活性成分と、上記本発明の拡展剤とを含有することを特徴とする。
上記農薬活性成分は、水との共存で活性が損なわれないものであれば、特に限定されない。例えば、除草剤、殺虫剤、殺ダニ剤、殺線虫剤、抗ウイルス剤、植物成長調節剤、殺菌剤、誘引剤、忌避剤等が挙げられる。これらの農薬活性成分は、水溶性及び水不溶性のいずれでもよい。また、本発明の水面浮遊型農薬組成物に含まれる農薬活性成分は、1種のみであってよいし、2種以上であってもよい。
上記農薬活性成分及び拡展剤の含有割合は、特に限定されない。
【0029】
本発明の水面浮遊型農薬組成物は、更に、増量剤、結合剤、崩壊促進剤、分散剤、乳化剤、液状媒体(水、グリコール、パラフィンオイル等)、安定剤等の他の成分を含有することができる。
【0030】
本発明の水面浮遊型農薬組成物は、他の成分として、増量剤を含有することが好ましい。増量剤としては、クレー、珪石、タルク、白土、珪藻土、シリカ、ベントナイト、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、でんぷん、乳糖、塩化カリウム、尿素、中空ガラス、ホワイトカーボン、木粉、コルク粉、発泡性シラス、マイクロスフィア、カルボキシメチルセルロース等の粉末又は粒子を用いることができる。
【0031】
本発明の水面浮遊型農薬組成物が増量剤を含有する場合、農薬活性成分、上記本発明の拡展剤(上記ジオール化合物(A)の合計量、又は、ジオール化合物(A)及びジオール化合物(B)の合計量)及び増量剤の含有割合は、これらの合計を100質量%とした場合に、それぞれ、好ましくは0.1〜80質量%、0.1〜10質量%及び10〜97質量%、より好ましくは0.2〜70質量%、0.5〜8質量%及び20〜95質量%である。
【0032】
本発明の水面浮遊型農薬組成物は、各成分がそのままの性状で混合されてなる、形状を有さない混合物(以下、「第1農薬組成物」という)であってよいし、この第1農薬組成物を用いて得られた粒状の成形物(造粒物)であってもよい。造粒物の場合、液状媒体は含有されていてよいし、含有されていなくてもよい。
本発明の水面浮遊型農薬組成物を農地の水面に施用する場合には、造粒物であることが好ましい。
【0033】
本発明の水面浮遊型農薬組成物は、通常の農薬粒剤と同様、手播き散布、機械散布、振込散布のような方法で散布できるが、畦や畔等から散布する所謂額縁散布をすることもでき、また水溶紙に分包して畦や畔等から投げ込み施用することもできる。投げ込み施用に用いる水溶紙は、水中での溶解性又は分散性を有するフィルム又はシートであり、例えば、ポリビニルアルコール又はその誘導体、プルラン、カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩、セルロース、ポリエチレンオキサイドまたはその誘導体から成形されたフィルムまたはシート等が挙げられるが、なかでもポリビニルアルコール又はその誘導体から成形されたフィルム又はシートが好ましい。
【0034】
上記造粒物を製造する場合、第1農薬組成物を、例えば、押出成形機、スクリュー型成形機、ロール型成形機、ブレード型成形機等を用いて加工することができる。上記本発明の拡展剤は、造粒物の形成性及び形状安定性にも優れるため、得られる粒状の水面浮遊型農薬組成物は、取り扱いが容易である。
【実施例】
【0035】
以下、本発明を実施例によって具体的に説明する。尚、下記の記載において、「部」は、特に断らない限り、質量基準である。
【0036】
1.水面浮遊型農薬組成物用拡展剤の原料
1−1.ジオール化合物(A)
以下の合成例1〜29で得られた化合物A−1〜A−25及びa−1〜a−4を用いた。
【0037】
合成例1
2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール160.3g(1モル)をオートクレーブに仕込み、触媒として水酸化カリウム粉末0.3g(原料に対して6ミリモル当量)を加えた後、オートクレーブ内を窒素ガスにより十分に置換した。次いで、これらを撹拌しながら、反応系の温度を130℃〜150℃に維持しつつ、エチレンオキサイド176g(4モル)を圧入して付加重合反応を開始した。そして、同温度で1時間熟成させて付加重合反応を終了した。その後、反応系の触媒をリン酸で中和し、次いで、液体クロマトグラフにより反応生成物を分離回収した。得られた反応生成物をLC−MS分析に供したところ、下記式で表される化合物であることが分かった。以下、この化合物をA−1として示す(表1参照)。
ESI−MS:m/z=337(M+H)
【化3】
【0038】
合成例2
エチレンオキサイド4モルに代えて、プロピレンオキサイド4モルを用いた以外は、合成例1と同様の操作を行い、化合物A−2を得た(表1参照)。
【0039】
合成例3
エチレンオキサイド4モルのみに代えて、エチレンオキサイド2モル及びプロピレンオキサイド2モルの混合物を用いた以外は、合成例1と同様の操作を行い、化合物A−3を得た(表1参照)。
【0040】
合成例4
2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール160.3g(1モル)をオートクレーブに仕込み、触媒として水酸化カリウム粉末0.3g(原料に対して6ミリモル当量)を加えた後、オートクレーブ内を窒素ガスにより十分に置換した。次いで、これらを撹拌しながら、反応系の温度を130℃〜150℃に維持しつつ、エチレンオキサイド2モルを圧入して、同温度で1時間熟成させた後、130℃〜150℃にてプロピレンオキサイド2モルを圧入して、同温度で1時間熟成させて付加重合反応を終了した。反応終了以降は合成例1と同様の操作を行い、化合物A−4を得た(表1参照)。
【0041】
合成例5
圧入するエチレンオキサイド(2モル)及びプロピレンオキサイド(2モル)の順序を逆にした以外は、合成例4と同様の操作を行い、化合物A−5を得た(表1参照)。
【0042】
合成例6
エチレンオキサイドの使用量を4モルから8モルに変更した以外は、合成例1と同様の操作を行い、化合物A−6を得た(表1参照)。
【0043】
合成例7
2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールに代えて、2,4−ジエチル−1,3−ペンタンジオールを用い、エチレンオキサイドの使用量を4モルから6モルに変更した以外は、合成例1と同様の操作を行い、化合物A−7を得た(表1参照)。
【0044】
合成例8
2,4−ジエチル−1,3−ペンタンジオール1モル、及び、触媒として水酸化カリウム粉末0.3g(原料に対して6ミリモル当量)を加えた後、オートクレーブ内を窒素ガスにより十分に置換した。次いで、これらを撹拌しながら、反応系の温度を130℃〜150℃に維持しつつ、プロピレンオキサイド1モルを圧入して、同温度で1時間熟成させた後、130℃〜150℃にてエチレンオキサイド1モルを圧入して、同温度で1時間熟成させて付加重合反応を終了した。反応終了以降は合成例1と同様の操作を行い、化合物A−8を得た(表1参照)。
【0045】
合成例9
2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールに代えて、2−メチル−1,8−オクタンジオールを用い、エチレンオキサイドの使用量を4モルから5モルに変更した以外は、合成例1と同様の操作を行い、化合物A−9を得た(表1参照)。
【0046】
合成例10
2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールに代えて、2−メチル−1,8−オクタンジオールを用い、4モルのエチレンオキサイドに代えて、7モルのプロピレンオキサイドを用いた以外は、合成例1と同様の操作を行い、化合物A−10を得た(表1参照)。
【0047】
合成例11
エチレンオキサイドの使用量を4モルから6モルに変更した以外は、合成例1と同様の操作を行い、化合物A−11を得た(表1参照)。
【0048】
合成例12
4モルのエチレンオキサイドに代えて、6モルのプロピレンオキサイドを用いた以外は、合成例1と同様の操作を行い、化合物A−12を得た(表1参照)
【0049】
合成例13
2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールに代えて、2−エチル−1,3−ヘキサンジオールを用い、エチレンオキサイドの使用量を4モルから5モルに変更した以外は、合成例1と同様の操作を行い、化合物A−13を得た(表1参照)。
【0050】
合成例14
2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールに代えて、1,8−オクタンジオールを用い、エチレンオキサイド4モルのみに代えて、エチレンオキサイド3モル及びプロピレンオキサイド5モルの混合物を用いた以外は、合成例1と同様の操作を行い、化合物A−14を得た(表1参照)。
【0051】
合成例15
2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールに代えて、1,9−ノナンジオールを用い、エチレンオキサイドの使用量を4モルから5モルに変更した以外は、合成例1と同様の操作を行い、化合物A−15を得た(表1参照)。
【0052】
合成例16
エチレンオキサイドの使用量を4モルから9モルに変更した以外は、合成例1と同様の操作を行い、化合物A−16を得た(表1参照)。
【0053】
合成例17
エチレンオキサイドの使用量を4モルとし、プロピレンオキサイドの使用量を5モルとした以外は、合成例4と同様の操作を行い、化合物A−17を得た(表1参照)。
【0054】
合成例18
エチレンオキサイドの使用量を4モルから1モルに変更した以外は、合成例1と同様の操作を行い、化合物A−18を得た(表1参照)。
【0055】
合成例19
2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールに代えて、1,10−デカンジオールを用い、エチレンオキサイド4モルのみに代えて、エチレンオキサイド4モル及びプロピレンオキサイド1モルの混合物を用いた以外は、合成例1と同様の操作を行い、化合物A−19を得た(表1参照)。
【0056】
合成例20
2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールに代えて、1,12−ドデカンジオールを用い、エチレンオキサイドの使用量を4モルから8モルに変更した以外は、合成例1と同様の操作を行い、化合物A−20を得た(表1参照)。
【0057】
合成例21
2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールに代えて、1,6−ヘキサンジオールを用いた以外は、合成例1と同様の操作を行い、化合物A−21を得た(表1参照)。
【0058】
合成例22
1,10−デカンジオール1モル、及び、触媒として水酸化カリウム粉末0.3g(原料に対して6ミリモル当量)を加えた後、オートクレーブ内を窒素ガスにより十分に置換した。次いで、これらを撹拌しながら、反応系の温度を130℃〜150℃に維持しつつ、エチレンオキサイド5モルを圧入して、同温度で1時間熟成させた後、130℃〜150℃にてプロピレンオキサイド4モルを圧入して、同温度で1時間熟成させて付加重合反応を終了した。反応終了以降は合成例1と同様の操作を行い、化合物A−22を得た(表1参照)。
【0059】
合成例23
1,2−テトラデカンジオール1モル、及び、触媒として水酸化カリウム粉末0.3g(原料に対して6ミリモル当量)を加えた後、オートクレーブ内を窒素ガスにより十分に置換した。次いで、これらを撹拌しながら、反応系の温度を130℃〜150℃に維持しつつ、プロピレンオキサイド2モルを圧入して、同温度で1時間熟成させた後、130℃〜150℃にてエチレンオキサイド4モルを圧入して、同温度で1時間熟成させて付加重合反応を終了した。反応終了以降は合成例1と同様の操作を行い、化合物A−23を得た(表1参照)。
【0060】
合成例24
2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールに代えて、1,2−テトラデカンジオールを用い、エチレンオキサイドの使用量を4モルから10モルに変更した以外は、合成例1と同様の操作を行い、化合物A−24を得た(表1参照)。
【0061】
合成例25
2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールに代えて、1,6−ヘキサンジオールを用い、4モルのエチレンオキサイドに代えて、1モルのプロピレンオキサイドを用いた以外は、合成例1と同様の操作を行い、化合物A−25を得た(表1参照)。
【0062】
合成例26
エチレンオキサイド4モルのみに代えて、エチレンオキサイド6モル及びプロピレンオキサイド6モルの混合物を用いた以外は、合成例1と同様の操作を行い、化合物a−1を得た(表1参照)。
【0063】
合成例27
2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールに代えて、2−エチル−1,3−ヘキサンジオールを用い、エチレンオキサイドの使用量を4モルから14モルに変更した以外は、合成例1と同様の操作を行い、化合物a−2を得た(表1参照)。
【0064】
合成例28
2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールに代えて、1,4−ブタンジオールを用い、エチレンオキサイドの使用量を4モルから6モルに変更した以外は、合成例1と同様の操作を行い、化合物a−3を得た(表1参照)。
【0065】
合成例29
2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールに代えて、1,2−ヘキサデカンジオールを用いた以外は、合成例1と同様の操作を行い、化合物a−4を得た(表1参照)。
【0066】
【表1】
【0067】
1−2.ジオール化合物(B)
以下の合成例30〜33で得られた化合物B−1〜B−4を用いた。
【0068】
合成例30
2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール160.3g(1モル)をオートクレーブに仕込み、触媒として水酸化カリウム粉末0.9g(原料に対して18ミリモル当量)を加えた後、オートクレーブ内を窒素ガスにより十分に置換した。次いで、撹拌下に反応温度を130℃〜150℃に維持しつつ、エチレンオキサイド176g(4モル)を圧入して付加重合反応をさせ、同温度で1時間熟成させて付加重合反応を終了した。その後、触媒をリン酸で中和し、次いで、副生物を液体クロマトグラフィにより分離し、下記式で表されるジオール化合物B−1を得た(表2参照)。
【化4】
【0069】
合成例31
2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールに代えて、2,4−ジエチル−1,3−ペンタンジオールを用い、エチレンオキサイドの使用量を4モルから6モルに変更した以外は、合成例30と同様の操作を行い、ジオール化合物B−2を得た(表2参照)。
【0070】
合成例32
2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールに代えて、2−メチル−1,8−オクタンジオールを用い、エチレンオキサイド4モルに代えて、プロピレンオキサイド8モルを用いた以外は、合成例30と同様の操作を行い、ジオール化合物B−3を得た(表2参照)。
【0071】
合成例33
エチレンオキサイドの使用量を4モルから10モルに変更した以外は、合成例30と同様の操作を行い、ジオール化合物B−4を得た(表2参照)。
【0072】
【表2】
【0073】
2.水面浮遊型農薬組成物用拡展剤の調製
実施例1−1〜1−31及び比較例1−1〜1−8
上記で得られたジオール化合物(A)のみ、又は、ジオール化合物(A)及び(B)を用いて、水面浮遊型農薬組成物用拡展剤を得た(表3参照)。実施例1−1〜1−31で得られたものを、水面浮遊型農薬組成物用拡展剤C−1〜C−31とし、比較例1−1〜1−8で得られたものを、水面浮遊型農薬組成物用拡展剤c−1〜c−8とした。
【0074】
【表3】
【0075】
3.水面浮遊型農薬組成物の製造及び評価
上記で得られた水面浮遊型農薬組成物用拡展剤と、下記の農薬活性成分及び増量剤と、少量の水とを用いて、粒状の水面浮遊型農薬組成物を製造した。そして、水面を有する農地への施用を想定した評価を行った。
(農薬活性成分)
Z−1:カフェンストロール
Z−2:ベンスルフロンメチル
Z−3:ダイムロン
Z−4:プレチラクロール
Z−5:ダイアジノン
Z−6:トリシクラゾール
(増量剤)
J−1:クレー粉末
J−2:炭酸カルシウム粉末
J−3:塩化カリウム粉末
J−4:タルク粉末
J−5:ベントナイト粉末
J−6:珪藻土粉末
J−7:ラクトース粉末
J−8:スターチ粉末
J−9:ホワイトカーボン粉末
J−10:中空性ガラス粒子
J−11:木粉
J−12:コルク粉
J−13:発泡性シラス粉末
J−14:マイクロスフィア
J−15:カルボキシメチルセルロース粉末
【0076】
実施例2−1
20部のカフェンストロール(Z−1)と、31部のクレー(J−1)と、10部のベントナイト(J−5)と、35部の中空性ガラス(J−10)とを均一混合した後、この混合物と、4部の拡展剤(C−1)と、少量の水とを十分に混練した。次いで、得られた混練物を、目開き1.0mmのスクリーンを装着したバスケット型造粒器(筒井理化学器械社製「KAR−75」)を用いて押出成形に供した。その後、成形物を恒温器にて50℃で乾燥させ、長さ2〜4mmに整粒して、円柱形粒状の水面浮遊型農薬組成物を製造した(表4参照)。
【0077】
製造直後の水面浮遊型農薬組成物、及び、54℃で4週間保存後の水面浮遊型農薬組成物のいずれも0.2gを試料とし、図1に示す容器に収容した水道水(深さ2cm)の中に投入し、拡展距離、拡展速度、拡展性及び崩壊状態を以下の方法で評価した。尚、図1の容器1は、縦20cm、横100cm及び深さ4cmのステンレス製であり、内部を二分するように一端側から90cmに相当する長さの分だけ仕切り部3を備える。
【0078】
(1)拡展距離
試料を図2及び図3の×印に投入してから、粒状物が水面を浮遊して2分間で移動した距離(図2及び図3の△印で折り返した場合、最大で200cm)を測定した。この操作を5回行い、距離の平均値から、下記の基準で評価した。
(評価基準)
◎:170cm以上
○:130cm以上、170cm未満
×:130cm未満
【0079】
(2)拡展速度
試料を図2及び図3の×印に投入してから、水面を浮遊する粒状物が△印まで拡展するまでの所要時間を測定した。測定は5回行い、その平均値から下記の計算式により拡展速度を算出し、下記の基準で評価した。
拡展速度(cm/秒)=100(cm)/所要時間(秒)
(評価基準)
◎:6cm/秒以上
○:4cm/秒以上6cm/秒未満
×:4cm/秒未満
【0080】
(3)拡展性
試料を図2及び図3の×印に投入した後、崩壊するときの様子を目視観察し、下記の基準で評価した。
(評価基準)
◎◎:不規則な動きで拡展、粒崩壊時に激しく回転した
◎:不規則な動きで拡展、粒崩壊時に回転した
○:不規則な動きで拡展、崩壊時に回転しなかった
×:直線的に拡展、崩壊時に回転しなかった
【0081】
(4)崩壊状態
試料を図2及び図3の×印に投入した後、崩壊して水中で分散した粉体の様子を上方から目視観察し、下記の基準で評価した。
(評価基準)
○:粉体の凝集がなく、水面全体で均一に分散した
△:一部の粉体の凝集が見られた、又は、粉体の偏在が一部見られた
×:大部分の粉体にて凝集が見られた、又は、粉体の偏在が顕著に見られた
【0082】
実施例2−2〜2−31及び比較例2−1〜2−16
表4〜表8に示す原料を用いて、実施例2−1と同様にして押出成形を行い、円柱形粒状の水面浮遊型農薬組成物を製造した。その後、各種評価を行った。その結果を表4〜表8に併記した。
【0083】
【表4】
【0084】
【表5】
【0085】
【表6】
【0086】
【表7】
【0087】
【表8】
【0088】
表4〜表6において、実施例2−1〜2−31は、本発明に係るジオール化合物(A)を含む水面浮遊型農薬組成物用拡展剤を含有する農薬組成物の例であり、拡展距離、拡展速度、拡展性及び崩壊状態のすべてにおいて、良好であった。これらのうち、特に実施例2−1〜2−13は、本発明に係るジオール化合物(A)として、上記式(1)におけるRが炭素原子数8又は9のアルキレン基であり、sが2〜8の整数である化合物を用いた例であり、上記性能がより高いレベルにあった。
一方、表7及び表8の比較例2−1〜2−8は、本発明に係るジオール化合物(A)を含まない水面浮遊型農薬組成物用拡展剤を含有する農薬組成物の例であり、十分な性能が得られなかった。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明の水面浮遊型農薬組成物用拡展剤は、農薬活性物質、増量剤等と併用して水面浮遊型農薬組成物からなる、例えば、造粒物を好適に形成する。そして、この造粒物を、水面を有する農地に撒くと、農薬活性成分を十分に拡展させることができる。従って、本発明の水面浮遊型農薬組成物は、水面を有する農地への施用に有用である。
【要約】
【課題】農薬活性成分と併用して調製した粒状の農薬組成物を水面施用したときに優れた拡展性が得られ、水面全体に崩壊する水面浮遊型農薬組成物を与える水面浮遊型農薬組成物用拡展剤を提供する。
【解決手段】本発明の水面浮遊型農薬組成物用拡展剤は、HO−R−O−G−H(式中、Rは炭素原子数が6〜14のアルキレン基であり、Gは−(RO)−で表される2価の基であり、Rは炭素原子数が2又は3のアルキレン基であり、sは1〜10の整数であり、sが2以上の場合、−(RO)−におけるRは全て同一であっても、異なっていてもよい。)で表される化合物を含有する。
【選択図】なし
図1
図2
図3