【実施例】
【0035】
以下、本発明を実施例によって具体的に説明する。尚、下記の記載において、「部」は、特に断らない限り、質量基準である。
【0036】
1.水面浮遊型農薬組成物用拡展剤の原料
1−1.ジオール化合物(A)
以下の合成例1〜29で得られた化合物A−1〜A−25及びa−1〜a−4を用いた。
【0037】
合成例1
2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール160.3g(1モル)をオートクレーブに仕込み、触媒として水酸化カリウム粉末0.3g(原料に対して6ミリモル当量)を加えた後、オートクレーブ内を窒素ガスにより十分に置換した。次いで、これらを撹拌しながら、反応系の温度を130℃〜150℃に維持しつつ、エチレンオキサイド176g(4モル)を圧入して付加重合反応を開始した。そして、同温度で1時間熟成させて付加重合反応を終了した。その後、反応系の触媒をリン酸で中和し、次いで、液体クロマトグラフにより反応生成物を分離回収した。得られた反応生成物をLC−MS分析に供したところ、下記式で表される化合物であることが分かった。以下、この化合物をA−1として示す(表1参照)。
ESI−MS:m/z=337(M+H)
+
【化3】
【0038】
合成例2
エチレンオキサイド4モルに代えて、プロピレンオキサイド4モルを用いた以外は、合成例1と同様の操作を行い、化合物A−2を得た(表1参照)。
【0039】
合成例3
エチレンオキサイド4モルのみに代えて、エチレンオキサイド2モル及びプロピレンオキサイド2モルの混合物を用いた以外は、合成例1と同様の操作を行い、化合物A−3を得た(表1参照)。
【0040】
合成例4
2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール160.3g(1モル)をオートクレーブに仕込み、触媒として水酸化カリウム粉末0.3g(原料に対して6ミリモル当量)を加えた後、オートクレーブ内を窒素ガスにより十分に置換した。次いで、これらを撹拌しながら、反応系の温度を130℃〜150℃に維持しつつ、エチレンオキサイド2モルを圧入して、同温度で1時間熟成させた後、130℃〜150℃にてプロピレンオキサイド2モルを圧入して、同温度で1時間熟成させて付加重合反応を終了した。反応終了以降は合成例1と同様の操作を行い、化合物A−4を得た(表1参照)。
【0041】
合成例5
圧入するエチレンオキサイド(2モル)及びプロピレンオキサイド(2モル)の順序を逆にした以外は、合成例4と同様の操作を行い、化合物A−5を得た(表1参照)。
【0042】
合成例6
エチレンオキサイドの使用量を4モルから8モルに変更した以外は、合成例1と同様の操作を行い、化合物A−6を得た(表1参照)。
【0043】
合成例7
2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールに代えて、2,4−ジエチル−1,3−ペンタンジオールを用い、エチレンオキサイドの使用量を4モルから6モルに変更した以外は、合成例1と同様の操作を行い、化合物A−7を得た(表1参照)。
【0044】
合成例8
2,4−ジエチル−1,3−ペンタンジオール1モル、及び、触媒として水酸化カリウム粉末0.3g(原料に対して6ミリモル当量)を加えた後、オートクレーブ内を窒素ガスにより十分に置換した。次いで、これらを撹拌しながら、反応系の温度を130℃〜150℃に維持しつつ、プロピレンオキサイド1モルを圧入して、同温度で1時間熟成させた後、130℃〜150℃にてエチレンオキサイド1モルを圧入して、同温度で1時間熟成させて付加重合反応を終了した。反応終了以降は合成例1と同様の操作を行い、化合物A−8を得た(表1参照)。
【0045】
合成例9
2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールに代えて、2−メチル−1,8−オクタンジオールを用い、エチレンオキサイドの使用量を4モルから5モルに変更した以外は、合成例1と同様の操作を行い、化合物A−9を得た(表1参照)。
【0046】
合成例10
2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールに代えて、2−メチル−1,8−オクタンジオールを用い、4モルのエチレンオキサイドに代えて、7モルのプロピレンオキサイドを用いた以外は、合成例1と同様の操作を行い、化合物A−10を得た(表1参照)。
【0047】
合成例11
エチレンオキサイドの使用量を4モルから6モルに変更した以外は、合成例1と同様の操作を行い、化合物A−11を得た(表1参照)。
【0048】
合成例12
4モルのエチレンオキサイドに代えて、6モルのプロピレンオキサイドを用いた以外は、合成例1と同様の操作を行い、化合物A−12を得た(表1参照)
【0049】
合成例13
2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールに代えて、2−エチル−1,3−ヘキサンジオールを用い、エチレンオキサイドの使用量を4モルから5モルに変更した以外は、合成例1と同様の操作を行い、化合物A−13を得た(表1参照)。
【0050】
合成例14
2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールに代えて、1,8−オクタンジオールを用い、エチレンオキサイド4モルのみに代えて、エチレンオキサイド3モル及びプロピレンオキサイド5モルの混合物を用いた以外は、合成例1と同様の操作を行い、化合物A−14を得た(表1参照)。
【0051】
合成例15
2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールに代えて、1,9−ノナンジオールを用い、エチレンオキサイドの使用量を4モルから5モルに変更した以外は、合成例1と同様の操作を行い、化合物A−15を得た(表1参照)。
【0052】
合成例16
エチレンオキサイドの使用量を4モルから9モルに変更した以外は、合成例1と同様の操作を行い、化合物A−16を得た(表1参照)。
【0053】
合成例17
エチレンオキサイドの使用量を4モルとし、プロピレンオキサイドの使用量を5モルとした以外は、合成例4と同様の操作を行い、化合物A−17を得た(表1参照)。
【0054】
合成例18
エチレンオキサイドの使用量を4モルから1モルに変更した以外は、合成例1と同様の操作を行い、化合物A−18を得た(表1参照)。
【0055】
合成例19
2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールに代えて、1,10−デカンジオールを用い、エチレンオキサイド4モルのみに代えて、エチレンオキサイド4モル及びプロピレンオキサイド1モルの混合物を用いた以外は、合成例1と同様の操作を行い、化合物A−19を得た(表1参照)。
【0056】
合成例20
2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールに代えて、1,12−ドデカンジオールを用い、エチレンオキサイドの使用量を4モルから8モルに変更した以外は、合成例1と同様の操作を行い、化合物A−20を得た(表1参照)。
【0057】
合成例21
2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールに代えて、1,6−ヘキサンジオールを用いた以外は、合成例1と同様の操作を行い、化合物A−21を得た(表1参照)。
【0058】
合成例22
1,10−デカンジオール1モル、及び、触媒として水酸化カリウム粉末0.3g(原料に対して6ミリモル当量)を加えた後、オートクレーブ内を窒素ガスにより十分に置換した。次いで、これらを撹拌しながら、反応系の温度を130℃〜150℃に維持しつつ、エチレンオキサイド5モルを圧入して、同温度で1時間熟成させた後、130℃〜150℃にてプロピレンオキサイド4モルを圧入して、同温度で1時間熟成させて付加重合反応を終了した。反応終了以降は合成例1と同様の操作を行い、化合物A−22を得た(表1参照)。
【0059】
合成例23
1,2−テトラデカンジオール1モル、及び、触媒として水酸化カリウム粉末0.3g(原料に対して6ミリモル当量)を加えた後、オートクレーブ内を窒素ガスにより十分に置換した。次いで、これらを撹拌しながら、反応系の温度を130℃〜150℃に維持しつつ、プロピレンオキサイド2モルを圧入して、同温度で1時間熟成させた後、130℃〜150℃にてエチレンオキサイド4モルを圧入して、同温度で1時間熟成させて付加重合反応を終了した。反応終了以降は合成例1と同様の操作を行い、化合物A−23を得た(表1参照)。
【0060】
合成例24
2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールに代えて、1,2−テトラデカンジオールを用い、エチレンオキサイドの使用量を4モルから10モルに変更した以外は、合成例1と同様の操作を行い、化合物A−24を得た(表1参照)。
【0061】
合成例25
2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールに代えて、1,6−ヘキサンジオールを用い、4モルのエチレンオキサイドに代えて、1モルのプロピレンオキサイドを用いた以外は、合成例1と同様の操作を行い、化合物A−25を得た(表1参照)。
【0062】
合成例26
エチレンオキサイド4モルのみに代えて、エチレンオキサイド6モル及びプロピレンオキサイド6モルの混合物を用いた以外は、合成例1と同様の操作を行い、化合物a−1を得た(表1参照)。
【0063】
合成例27
2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールに代えて、2−エチル−1,3−ヘキサンジオールを用い、エチレンオキサイドの使用量を4モルから14モルに変更した以外は、合成例1と同様の操作を行い、化合物a−2を得た(表1参照)。
【0064】
合成例28
2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールに代えて、1,4−ブタンジオールを用い、エチレンオキサイドの使用量を4モルから6モルに変更した以外は、合成例1と同様の操作を行い、化合物a−3を得た(表1参照)。
【0065】
合成例29
2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールに代えて、1,2−ヘキサデカンジオールを用いた以外は、合成例1と同様の操作を行い、化合物a−4を得た(表1参照)。
【0066】
【表1】
【0067】
1−2.ジオール化合物(B)
以下の合成例30〜33で得られた化合物B−1〜B−4を用いた。
【0068】
合成例30
2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール160.3g(1モル)をオートクレーブに仕込み、触媒として水酸化カリウム粉末0.9g(原料に対して18ミリモル当量)を加えた後、オートクレーブ内を窒素ガスにより十分に置換した。次いで、撹拌下に反応温度を130℃〜150℃に維持しつつ、エチレンオキサイド176g(4モル)を圧入して付加重合反応をさせ、同温度で1時間熟成させて付加重合反応を終了した。その後、触媒をリン酸で中和し、次いで、副生物を液体クロマトグラフィにより分離し、下記式で表されるジオール化合物B−1を得た(表2参照)。
【化4】
【0069】
合成例31
2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールに代えて、2,4−ジエチル−1,3−ペンタンジオールを用い、エチレンオキサイドの使用量を4モルから6モルに変更した以外は、合成例30と同様の操作を行い、ジオール化合物B−2を得た(表2参照)。
【0070】
合成例32
2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールに代えて、2−メチル−1,8−オクタンジオールを用い、エチレンオキサイド4モルに代えて、プロピレンオキサイド8モルを用いた以外は、合成例30と同様の操作を行い、ジオール化合物B−3を得た(表2参照)。
【0071】
合成例33
エチレンオキサイドの使用量を4モルから10モルに変更した以外は、合成例30と同様の操作を行い、ジオール化合物B−4を得た(表2参照)。
【0072】
【表2】
【0073】
2.水面浮遊型農薬組成物用拡展剤の調製
実施例1−1〜1−31及び比較例1−1〜1−8
上記で得られたジオール化合物(A)のみ、又は、ジオール化合物(A)及び(B)を用いて、水面浮遊型農薬組成物用拡展剤を得た(表3参照)。実施例1−1〜1−31で得られたものを、水面浮遊型農薬組成物用拡展剤C−1〜C−31とし、比較例1−1〜1−8で得られたものを、水面浮遊型農薬組成物用拡展剤c−1〜c−8とした。
【0074】
【表3】
【0075】
3.水面浮遊型農薬組成物の製造及び評価
上記で得られた水面浮遊型農薬組成物用拡展剤と、下記の農薬活性成分及び増量剤と、少量の水とを用いて、粒状の水面浮遊型農薬組成物を製造した。そして、水面を有する農地への施用を想定した評価を行った。
(農薬活性成分)
Z−1:カフェンストロール
Z−2:ベンスルフロンメチル
Z−3:ダイムロン
Z−4:プレチラクロール
Z−5:ダイアジノン
Z−6:トリシクラゾール
(増量剤)
J−1:クレー粉末
J−2:炭酸カルシウム粉末
J−3:塩化カリウム粉末
J−4:タルク粉末
J−5:ベントナイト粉末
J−6:珪藻土粉末
J−7:ラクトース粉末
J−8:スターチ粉末
J−9:ホワイトカーボン粉末
J−10:中空性ガラス粒子
J−11:木粉
J−12:コルク粉
J−13:発泡性シラス粉末
J−14:マイクロスフィア
J−15:カルボキシメチルセルロース粉末
【0076】
実施例2−1
20部のカフェンストロール(Z−1)と、31部のクレー(J−1)と、10部のベントナイト(J−5)と、35部の中空性ガラス(J−10)とを均一混合した後、この混合物と、4部の拡展剤(C−1)と、少量の水とを十分に混練した。次いで、得られた混練物を、目開き1.0mmのスクリーンを装着したバスケット型造粒器(筒井理化学器械社製「KAR−75」)を用いて押出成形に供した。その後、成形物を恒温器にて50℃で乾燥させ、長さ2〜4mmに整粒して、円柱形粒状の水面浮遊型農薬組成物を製造した(表4参照)。
【0077】
製造直後の水面浮遊型農薬組成物、及び、54℃で4週間保存後の水面浮遊型農薬組成物のいずれも0.2gを試料とし、
図1に示す容器に収容した水道水(深さ2cm)の中に投入し、拡展距離、拡展速度、拡展性及び崩壊状態を以下の方法で評価した。尚、
図1の容器1は、縦20cm、横100cm及び深さ4cmのステンレス製であり、内部を二分するように一端側から90cmに相当する長さの分だけ仕切り部3を備える。
【0078】
(1)拡展距離
試料を
図2及び
図3の×印に投入してから、粒状物が水面を浮遊して2分間で移動した距離(
図2及び
図3の△印で折り返した場合、最大で200cm)を測定した。この操作を5回行い、距離の平均値から、下記の基準で評価した。
(評価基準)
◎:170cm以上
○:130cm以上、170cm未満
×:130cm未満
【0079】
(2)拡展速度
試料を
図2及び
図3の×印に投入してから、水面を浮遊する粒状物が△印まで拡展するまでの所要時間を測定した。測定は5回行い、その平均値から下記の計算式により拡展速度を算出し、下記の基準で評価した。
拡展速度(cm/秒)=100(cm)/所要時間(秒)
(評価基準)
◎:6cm/秒以上
○:4cm/秒以上6cm/秒未満
×:4cm/秒未満
【0080】
(3)拡展性
試料を
図2及び
図3の×印に投入した後、崩壊するときの様子を目視観察し、下記の基準で評価した。
(評価基準)
◎◎:不規則な動きで拡展、粒崩壊時に激しく回転した
◎:不規則な動きで拡展、粒崩壊時に回転した
○:不規則な動きで拡展、崩壊時に回転しなかった
×:直線的に拡展、崩壊時に回転しなかった
【0081】
(4)崩壊状態
試料を
図2及び
図3の×印に投入した後、崩壊して水中で分散した粉体の様子を上方から目視観察し、下記の基準で評価した。
(評価基準)
○:粉体の凝集がなく、水面全体で均一に分散した
△:一部の粉体の凝集が見られた、又は、粉体の偏在が一部見られた
×:大部分の粉体にて凝集が見られた、又は、粉体の偏在が顕著に見られた
【0082】
実施例2−2〜2−31及び比較例2−1〜2−16
表4〜表8に示す原料を用いて、実施例2−1と同様にして押出成形を行い、円柱形粒状の水面浮遊型農薬組成物を製造した。その後、各種評価を行った。その結果を表4〜表8に併記した。
【0083】
【表4】
【0084】
【表5】
【0085】
【表6】
【0086】
【表7】
【0087】
【表8】
【0088】
表4〜表6において、実施例2−1〜2−31は、本発明に係るジオール化合物(A)を含む水面浮遊型農薬組成物用拡展剤を含有する農薬組成物の例であり、拡展距離、拡展速度、拡展性及び崩壊状態のすべてにおいて、良好であった。これらのうち、特に実施例2−1〜2−13は、本発明に係るジオール化合物(A)として、上記式(1)におけるR
1が炭素原子数8又は9のアルキレン基であり、sが2〜8の整数である化合物を用いた例であり、上記性能がより高いレベルにあった。
一方、表7及び表8の比較例2−1〜2−8は、本発明に係るジオール化合物(A)を含まない水面浮遊型農薬組成物用拡展剤を含有する農薬組成物の例であり、十分な性能が得られなかった。