(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
一般に、透析治療を行うための血液浄化装置は、患者の血液を体外循環させるための血液回路を構成する動脈側血液回路及び静脈側血液回路と、血液回路にて体外循環する血液を浄化するための血液浄化器と、血液回路及び血液浄化器にて血液浄化治療させるための血液ポンプ等の種々の治療手段が配設された装置本体とを具備している。動脈側血液回路及び静脈側血液回路の先端には、それぞれ動脈側穿刺針及び静脈側穿刺針が取り付け可能とされている。
【0003】
そして、動脈側穿刺針及び静脈側穿刺針を患者に穿刺した後、血液ポンプを駆動させることにより、患者の患者が動脈側血液回路及び静脈側血液回路を流動することとなり、その流動過程において血液浄化器にて血液浄化されるようになっている。また、透析治療においては、血液浄化器に透析液を導入するための透析液導入チューブと、血液浄化器から透析液を導出するための透析液導出チューブとがそれぞれ血液浄化器に接続されている。
【0004】
ところで、血液ポンプや透析液を血液浄化器に導入又は導出させるためのポンプとして、通常、流体の流通方向にローラが回転してしごくことにより送液させ得るしごき型ポンプが用いられている。かかるしごき型ポンプは、回転するローラによって流路をしごき送液するので、当該しごき部にて静電気が生じてしまい、流路の液体を帯電させ易くなっている。
【0005】
しかして、治療中、液体が帯電してしまうと、その電荷を帯びた血液が例えば穿刺針を介して患者に至ってしまい、治療中に得られる患者の心電図等に悪影響を及ぼしてしまう虞がある。このような不具合を回避すべく、従来より、液体の流路に帯電防止具を取り付けて電気的に接地(アース)させることにより、心電図等に対する悪影響を回避するものが提案されている。
【0006】
従来の帯電防止具は、例えば特許文献1にて開示されているように、透析液を流通させ得る一方の可撓性チューブの先端と他方の可撓性チューブの基端とを接続する導電性部材(チューブジョイント)から成り、これら可撓性チューブの接続部を流れる透析液に接液しつつ血液浄化装置側に取り付けられた接地手段(アース手段)と接触することにより、可撓性チューブに生じた電荷を外部に放散可能とされていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記従来の帯電防止具においては、一方の可撓性チューブの先端と他方の可撓性チューブの基端とを接続する導電性部材から成るので、何れかの可撓性チューブに不用意な力がかかった場合、接続部が外れてしまう虞があるとともに、可撓性チューブを流れる液体(透析液等)が接続部から外部に漏れる可能性が高くなってしまうという問題があった。なお、このような問題は、治療時に血液を流通させ得る血液回路や種々流体を流通させ得る他の流路においても、同様に生じる虞がある。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、流路の液体に帯びた電荷を良好且つ確実に外部に放散し得るとともに、流路が外れてしまうのを回避しつつ液漏れを抑制することができる帯電防止具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1記載の発明は、
透析液が流通し得る可撓性チューブから成る流路に取り付けられ、所定部位が前記
透析液に接液可能とされるとともに、電気的に接地させる接地手段と接触することにより前記流路の
透析液に帯びた電荷を外部に放散可能な帯電防止具において、前記流路に形成された
開口から成る挿通孔に
圧入状態で挿通されて前記
透析液に接液可能な
突起状の接液部と、前記接地手段と接触して接地可能とされ、前記流路の
透析液に帯びた電荷を外部に放散させ得る接地部とが一体形成された導電性部材を有するとともに、前記導電性部材は、前記流路
を成す可撓性チューブを挿通して前記流路の外周面と接着する内周面を有する貫通孔が形成され、且つ、前記接液部の突端は、前記流路
を成す可撓性チューブの内周面に対して連続した形状とされたことを特徴とする
。
【0011】
請求項
2記載の発明は、請求項
1記載の帯電防止具において、前記流路は
、透析液の流通方向にローラが回転して流路をしごくことにより送液させ得るしごき型ポンプが配設されたことを特徴とする。
【0012】
請求項
3記載の発明は、請求項1
又は請求項2記載の帯電防止具において、前記接液部は、その突端に前記流路の挿通孔より大径とされた大径部を有し、当該大径部にて接液可能とされたことを特徴とする。
【0013】
請求項
4記載の発明は、請求項1〜
3の何れか1つに記載の帯電防止具において、前記接地部における前記接地手段との接触部は、略平坦な面から成ることを特徴とする。
【0016】
請求項
5記載の発明は、請求項1〜
4の何れか1つに記載の帯電防止具を有することを特徴とする医療用回路である。
【0017】
請求項
6記載の発明は、請求項1〜
4の何れか1つに記載の帯電防止具を有することを特徴とする血液浄化装置である。
【発明の効果】
【0018】
請求項1の発明によれば、流路に形成された
開口から成る挿通孔に
圧入状態で挿通されて
透析液に接液可能な
突起状の接液部と、接地手段と接触して接地可能とされ、流路の
透析液に帯びた電荷を外部に放散させ得る接地部とが一体形成された導電性部材を有するので、流路の
透析液に帯びた電荷を良好且つ確実に外部に放散し得るとともに、導電性部材の取り付け部において流路が外れてしまうのを回避しつつ液漏れを抑制することができる
。
【0019】
請求項
2の発明によれば、流路は
、透析液の流通方向にローラが回転して流路をしごくことにより送液させ得るしごき型ポンプが配設されたので、しごき型ポンプのローラの回転によって流路の
透析液に帯びた電荷を良好且つ確実に外部に放散することができる。
【0020】
請求項
3の発明によれば、接液部は、その突端に流路の挿通孔より大径とされた大径部を有し、当該大径部にて接液可能とされたので、導電性部材の導電率が低くても、流路の
透析液に帯びた電荷を良好且つ確実に外部に放散することができる。
【0021】
請求項
4の発明によれば、接地部における接地手段との接触部は、略平坦な面から成るので、接地部と接地手段との接触を面接触として確実に行わせることができ、流路の
透析液に帯びた電荷をより良好且つ確実に外部に放散することができる。
【0024】
請求項
5の発明によれば、請求項1〜
4の発明の効果を有した医療用回路を提供することができる。
【0025】
請求項
6の発明によれば、請求項1〜
4の発明の効果を有した血液浄化装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら具体的に説明する。
本実施形態に係る帯電防止具は、液体が流通し得る流路に取り付けられ、当該流路の液体に帯びた電荷を放散可能とされたもので、
図1で示す血液浄化装置に適用されたものである。かかる血液浄化装置は、
図1〜3に示すように、患者の血液を体外循環させつつ浄化するための透析装置に適用されたもので、血液回路1と、血液浄化器としてのダイアライザ2と、モニタM(
図2、3参照)を具備した透析装置本体Aとを有して構成されている。
【0028】
ダイアライザ2は、微小孔(ポア)が形成された複数の中空糸を筐体部に収容して成るものであり、その筐体部に、血液導入ポート2a、血液導出ポート2b、透析液導入ポート2c及び透析液導出ポート2dが形成されている。また、血液回路1は、先端に動脈側穿刺針が取り付け可能とされた動脈側血液回路1aと、先端に静脈側穿刺針が取り付け可能とされた静脈側血液回路1bとを有した可撓性チューブから構成されたもので、動脈側血液回路1aの基端がダイアライザ2の血液導入ポート2aに接続されるとともに、静脈側血液回路1bの基端がダイアライザ2の血液導出ポート2bに接続されている。
【0029】
さらに、本透析装置には、ダイアライザ2に透析液を導入する透析液導入チューブL1と、ダイアライザ2から透析液(排液)を導出する透析液導出チューブL2とを取り付け可能とされており、透析液導入チューブL1の先端がダイアライザ2の透析液導入ポート2cに接続されるとともに、透析液導出チューブL2の先端がダイアライザ2の透析液導出ポート2dに接続されている。また、本実施形態においては、透析液導入チューブL1と静脈側血液回路1bとを接続する補液導入チューブL3が形成されている。なお、血液回路1を構成する動脈側血液回路1a及び静脈側血液回路1b、透析液導入チューブL1、透析液導出チューブL2並びに補液導入チューブL3は、何れも液体が流通し得る可撓性チューブから成るものである。
【0030】
またさらに、動脈側血液回路1aの途中には、血液ポンプP1が配設されている。かかる血液ポンプP1は、ケースCが取り付けられる部位(
図3参照)に配設されたもので、
図4に示すように、ステータSの内周面Sa内で回転するロータRと、ロータRに形成された一対のローラRaとを具備して構成されており、液体の流通方向にロータRが回転して動脈側血液回路1aに接続された被しごき用可撓性チューブD1を一対のローラRaがそれぞれしごくことにより送液可能とされたしごき型ポンプから成る。
【0031】
また、
図1、3に示すように、被しごき用可撓性チューブD2は、透析液導入チューブL1の途中に接続されるとともに、被しごき用可撓性チューブD3は、補液導入チューブL3の途中に接続され、本透析装置に配設されたしごき型ポンプP2、P3にそれぞれ取り付けられる。さらに、被しごき用可撓性チューブD4は、透析液導出チューブL2の途中に接続され、本透析装置に配設されたしごき型ポンプP4に取り付けられる。なお、被しごき用可撓性チューブD5は、しごき型ポンプP5に取り付けられ、重量計4で重量測定後に駆動によって収容バッグB2に溜まった液を系外に排出するものである。
【0032】
しごき型ポンプP2〜P5は、血液ポンプP1と同様、ケースCが取り付けられる部位(
図3参照)に配設されたもので、ステータの内周面内で回転するロータと、ロータに形成された一対のローラとを具備して構成されており、液体の流通方向にロータが回転して流路に接続された被しごき用可撓性チューブ(D2〜D5)を一対のローラがそれぞれしごくことにより送液可能とされたものである。なお、しごき型ポンプP2〜P5の具体的な構成については、血液ポンプP1と同様であるため、詳細な説明を省略する。
【0033】
このように、本透析装置には、血液ポンプP1及びしごき型ポンプ(P2〜P5)が配設されるとともに、ケースCには、各流路が接続された状態の被しごき用可撓性チューブ(D1〜D5)が形成されており、本透析装置にケースCを取り付けると、被しごき用可撓性チューブD1が血液ポンプP1に対してセット状態とされるとともに、被しごき用可撓性チューブ(D2〜D5)がしごき型ポンプP2〜P5に対してそれぞれセット状態とされるようになっている。
【0034】
しかして、ケースCを本透析装置における血液ポンプP1及びしごき型ポンプP2〜P5が配設された部位(ステータ)に嵌合して取り付け(
図2、3参照)、カバーHを閉じることにより、被しごき用可撓性チューブ(D1〜D5)が血液ポンプP1及びしごき型ポンプ(P2〜P5)に一括して取り付けられるようになっている。そして、動脈側穿刺針及び静脈側穿刺針を患者に穿刺した後、血液ポンプP1(血液ポンプ)を駆動させると、動脈側血液回路1a及び静脈側血液回路1bにおいて患者の血液を体外循環させ得るようになっている。
【0035】
一方、透析液導入チューブL1の基端には、ダイアライザ2に供給するための透析液を収容した収容バッグB1が接続されるとともに、透析液導出チューブL2の基端には、ダイアライザ2から排出された透析液(排液)を収容する収容バッグB2が接続されるようになっている。なお、透析液導入チューブL1の途中には、透析液を加温するための加温バッグ(不図示)等が接続されており、収容バッグB2には、しごき型ポンプP5にて送液可能な可撓性チューブ(不図示)が接続されている。
【0036】
そして、しごき型ポンプP2を駆動させると、収容バッグB1の透析液がダイアライザ2に向かって流れるとともに、しごき型ポンプP4を駆動させると、ダイアライザ2の透析液(排液)が収容バッグB2に向かって流れることとなる。収容バッグB1、B2は、本透析装置に形成されたフックFにそれぞれ引っ掛けられるとともに、重量計3、4にてリアルタイムに重量が計測されるよう構成されている。これにより、設定された流量にて透析液をダイアライザ2に供給し、当該ダイアライザ2から透析液を排出させることができる。
【0037】
なお、本実施形態においては、透析液導入チューブL1から分岐した補液導入チューブL3に被しごき用可撓性チューブD3が接続されており、この被しごき用可撓性チューブD3がしごき型ポンプP3に取り付けられている。そして、しごき型ポンプP2、P3を駆動させることにより、収容バッグB1の透析液を静脈側血液回路1bに供給して補液することができるようになっている。補液導入チューブL3の先端を動脈側血液回路1aに接続し、当該動脈側血液回路1aに透析液を供給して補液するようにしてもよい。
【0038】
ここで、血液ポンプP1やしごき型ポンプP2〜P5を駆動させると、そのローラが被しごき用可撓性チューブ(D1〜D5)を逐次しごくこととなるので、そのしごきによって流路に静電気が生じて帯電しまうことから、本実施形態においては、当該帯電に伴う電荷を外部に放散(接地)すべく、透析液導出チューブL2の途中(ダイアライザ2としごき型ポンプP4との間)に帯電防止具5が接続されている。
【0039】
第1の実施形態に係る帯電防止具5は、透析液(導電性の液体)が流通し得る流路(透析液導出チューブL2)に取り付けられ、所定部位が透析液に接液可能とされるとともに、電気的に接地させる接地手段(アース手段)と接触することにより流路の液体に帯びた電荷を外部に放散可能なもので、
図5〜10に示すように、略円筒状に形成された導電性部材6にて構成されている。
【0040】
より具体的には、本実施形態に係る帯電防止具5は、例えばカーボンナノチューブを含有するポリカーボネート又はカーボンブラックを含有するポリ塩化ビニル等、可撓性チューブと接着や熱溶着が容易な導電材料を射出成形等することにより得られるもので、貫通孔6aと、接液部6bと、接地部6cとが一体形成された導電性部材6を有して構成されている。なお、導電性部材6は、その表面抵抗が10
2〜10
12Ω程度のものが好ましい。また、本実施形態に係る接地部6cは、略円筒状に形成されているが、略平坦な形状等、他の形状であってもよい。
【0041】
貫通孔6aは、導電性部材6の中央を長手方向に延びて形成された孔から成り、その内径が取り付ける流路(透析液導出チューブL2)の外径と略等しく設定されているとともに、内周面における所定位置には、突起状に形成された接液部6bが形成されている。この接液部6bは、透析液導出チューブL2の所定位置に形成された挿通孔L2aに挿通されて透析液(透析液導出チューブL2を流通する液体)に接液可能な部位から成る。
【0042】
挿通孔L2aは、透析液導出チューブL2の途中に形成され、液体の流路を外部に臨ませた円形状の開口から成る。また、接液部6bの外径は、挿通孔L2aの内径より若干大きく設定されており、当該接液部6bを挿通孔L2aに圧入させつつ貫通孔6aの内周面と透析液導出チューブL2の外周面とを接着させることにより、導電性部材6を透析液導出チューブL2に取り付けるようになっている。なお、挿通孔L2aの開口形状及び接液部6bの断面形状は、円形に限定されるものではなく、例えば楕円形や矩形等であってもよい。
【0043】
このように、挿通孔L2に接液部6bを挿通させつつ導電性部材6を透析液導出チューブL2に取り付けた状態とすることにより、
図10に示すように、接液部6bの先端を透析液導出チューブL2の内部に臨ませることができ、透析液導出チューブL2を流れる液体(透析液を含む排液)に接液することとなる。なお、接液部6bが挿通孔L2に圧入され、且つ、貫通孔6aの内周面と透析液導出チューブL2の外周面とが接着されているので、透析液導出チューブL2内を流通する液体が挿通孔L2aを介して外部に漏れてしまうのを抑制することができる。
【0044】
接地部6cは、導電性部材6の外周面の一部から成り、カバーHに取り付けられた接地手段E(
図2参照)と接触して接地可能とされ、透析液導出チューブL2及びそれに接続された流路の液体に帯びた電荷を外部に放散させ得るものである。本実施形態に係る接地手段Eは、本透析装置に取り付けられたカバーHに形成されたもので、カバーHを閉じた状態において、導電性部材6の外周面の一部である接地部6cと接触することにより、接地(アース)し得るよう構成されている。
【0045】
すなわち、カバーHを閉じることにより、被しごき用可撓性チューブ(D1〜D5)が血液ポンプP1及びしごき型ポンプ(P2〜P5)に一括して取り付けられるとともに、接地手段Eが導電性部材6の接地部6cと接触するので、透析液導出チューブL2及びそれに接続された流路の液体に帯びた電荷を外部に放散することができるのである。これにより、血液ポンプP1及びしごき型ポンプ(P2〜P5)に対する被しごき用可撓性チューブ(D1〜D5)の取り付け作業と、透析液導出チューブL2及びそれに接続された流路のアース作業とを同時に行わせることができ、作業性を向上させることができる。
【0046】
なお、上記実施形態においては、帯電防止具5が透析液導出チューブL2の途中に取り付けられているが、他の流路(動脈側血液回路1a、静脈側血液回路1b、透析液導入チューブL1、補液導入チューブL3等)の途中に取り付けるようにしてもよい。但し、帯電防止具5の取り付け位置は、静電気に伴って生じた電荷を効率よく外部に放散するために、血液ポンプP1やしごき型ポンプ(P2〜P5)が配設された位置の間とするのが好ましい。また、帯電防止具5の取り付け位置には、挿通孔L2aの如き接液部6bを挿通し得る挿通孔を形成する必要がある。
【0047】
本実施形態によれば、透析液導出チューブL2に形成された挿通孔L2aに挿通されて液体に接液可能な接液部6bと、接地手段Eと接触して接地可能とされ、流路の液体に帯びた電荷を外部に放散させ得る接地部6cとが一体形成された導電性部材6を有するので、流路の液体に帯びた電荷を良好且つ確実に外部に放散し得るとともに、導電性部材6の取り付け部において流路が外れてしまうのを回避しつつ液漏れを抑制することができる。
【0048】
また、導電性部材6が取り付けられる流路は、可撓性チューブから成るとともに、液体の流通方向にローラが回転して流路をしごくことにより送液させ得るしごき型ポンプP2が配設されたので、しごき型ポンプP2のローラの回転によって流路の液体に帯びた電荷を良好且つ確実に外部に放散することができる。これにより、治療時に並行して得られる患者の心電図にノイズが入り込んでしまう等の悪影響を抑制することができる。
【0049】
次に、本発明に係る第2の実施形態について説明する。
本実施形態に係る帯電防止具は、第1の実施形態と同様、透析液(導電性の液体)が流通し得る流路(透析液導出チューブL2)に取り付けられ、所定部位が透析液に接液可能とされるとともに、電気的に接地させる接地手段(アース手段)と接触することにより流路の液体に帯びた電荷を外部に放散可能なもので、
図11〜15に示すように、円筒形状を半割状にした半割形状の導電性部材7にて構成されている。
【0050】
より具体的には、本実施形態に係る帯電防止具は、例えばカーボンナノチューブを含有するポリカーボネート又はカーボンブラックを含有するポリ塩化ビニル等、可撓性チューブと接着や熱溶着が容易な導電材料を成形等することにより得られるもので、内周面7aと、接液部7bと、接地部7cとが一体形成された導電性部材7を有して構成されている。なお、導電性部材7は、第1の実施形態と同様、その表面抵抗が10
2〜10
12Ω程度のものが好ましい。
【0051】
内周面7aは、円弧状の面から成り、取り付ける流路(透析液導出チューブL2)の外周面に倣った形状とされているとともに、所定位置には、突起状に形成された接液部7bが形成されている。この接液部7bは、透析液導出チューブL2の所定位置に形成された挿通孔L2aに挿通されて透析液(透析液導出チューブL2を流通する液体)に接液可能な部位から成る。特に、本実施形態に係る接液部7bは、その突端に挿通孔L2aより大径とされた大径部7baを有しており、当該大径部7baにて接液可能とされている。
【0052】
また、接液部7bの大径部7ba以外の外径は、挿通孔L2aの内径と略同一寸法とされており、透析液導出チューブL2を成形する際、導電性部材7も同時に成形することにより、
図15で示すように、接液部7bの大径部7ba以外の部位が挿通孔L2a内に位置し、且つ、大径部7baが透析液導出チューブL2の内周面上に位置しつつ接地部7cが透析液導出チューブL2の外周面上に位置して導電性部材7が形成されることとなる。
【0053】
接地部7cは、導電性部材7の外周面の一部から成り、カバーHに取り付けられた接地手段E(
図2参照)と接触して接地可能とされ、透析液導出チューブL2及びそれに接続された流路の液体に帯びた電荷を外部に放散させ得るものである。すなわち、第1の実施形態と同様、カバーHを閉じることにより、被しごき用可撓性チューブ(D1〜D5)が血液ポンプP1及びしごき型ポンプ(P2〜P5)に一括して取り付けられるとともに、接地手段Eが導電性部材7の接地部7cと接触するので、透析液導出チューブL2及びそれに接続された流路の液体に帯びた電荷を外部に放散することができるのである。
【0054】
本実施形態によれば、接液部7bは、その突端に流路(透析液導出チューブL2)の挿通孔L2aより大径とされた大径部7baを有し、当該大径部7baにて接液可能とされたので、例えば汎用の金属等から成る導電性部材の導電率が低くても、流路の液体に帯びた電荷を良好且つ確実に外部に放散することができる。また、導電性部材7が取り付けられる流路は、可撓性チューブから成るとともに、液体の流通方向にローラが回転して流路をしごくことにより送液させ得るしごき型ポンプP2が配設されたので、しごき型ポンプP2のローラの回転によって流路の液体に帯びた電荷を良好且つ確実に外部に放散することができる。これにより、治療時に並行して得られる患者の心電図にノイズが入り込んでしまう等の悪影響を抑制することができる。
【0055】
次に、本発明に係る第3の実施形態について説明する。
本実施形態に係る帯電防止具は、第1、2の実施形態と同様、透析液(導電性の液体)が流通し得る流路(透析液導出チューブL2)に取り付けられ、所定部位が透析液に接液可能とされるとともに、電気的に接地させる接地手段(アース手段)と接触することにより流路の液体に帯びた電荷を外部に放散可能なもので、
図16〜23に示すように、透析液導出チューブL2の端部を接続可能とされた絶縁部材(例えば樹脂等)から成る接続部8bを有するとともに、当該接続部8bは、導電性部材9を合致させて位置決め固定し得る固定部8baが形成されている。なお、導電性部材9及びその周辺構成部は、圧力モニタチャンバ8への液体の流入側に限らず、流出側へ設置してもよい。
【0056】
接続部8bは、透析液導出チューブL2に接続された圧力モニタチャンバ8(任意部品)に形成された流出口から成る。かかる圧力モニタチャンバ8は、液体をチャンバ部8cの内部に流入させる流入口8aと、チャンバ部8cの内部の液体を流出させる流出口から成る接続部8bが形成されており、チャンバ部8cの内部には、
図19に示すように、流入口8a及び接続部8bと連通した液室S1と、図示しない液圧センサと接続口8eを介して連通した気室S2と、これら液室S1と気室S2とを画成するダイアフラム8dとを有して構成されている。
【0057】
しかして、透析液導出チューブL2を流通する液体が圧力モニタチャンバ8に至った後、流入口8aから接続部8bに向かって流れると、気室S2の圧力が液室S1の圧力と等しくなるまでダイアフラム8dが変形して気室S2の容量を変化させる。このとき、気室S2の圧力を図示しない液圧センサにて計測することにより、液室S1内の液体の圧力(すなわち、透析液導出チューブL2内の液圧)を検出することができるのである。
【0058】
接続部8b及び流入口8aは、チャンバ部8cから一体的に突出形成されたポート状部位から成り、透析液導出チューブL2の端部が接続されるとともに、接続部8bの一部が切欠かれて、導電性部材9を合致させて位置決め固定し得る固定部8baを形成している。すなわち、固定部8baには、受け面8bbが形成されており、当該受け面8bbに導電性部材9の下面を合致することにより位置決め可能とされているのである。
【0059】
導電性部材9は、例えばカーボンナノチューブを含有するポリカーボネート又はカーボンブラックを含有するポリ塩化ビニル等、可撓性チューブと接着や熱溶着が容易な導電材料を成形等することにより得られるもので、
図22、23に示すように、円筒形状を半割状にした半割形状の部材から成り、内周面9aと、接液部9bと、接地部9c及び合致部9dとが一体形成されて構成されている。なお、導電性部材9は、第1、2の実施形態と同様、その表面抵抗が10
2〜10
12Ω程度のものが好ましい。
【0060】
内周面9aは、円弧状の面から成り、取り付ける流路(接続部8bに接続された透析液導出チューブL2)の外周面に倣った形状とされているとともに、所定位置には、突起状に形成された接液部9bが形成されている。この接液部9bは、透析液導出チューブL2の所定位置に形成された挿通孔L2aに挿通されて透析液(透析液導出チューブL2を流通する液体)に接液可能な部位から成る。
【0061】
合致部9dは、導電性部材9の縁面から成り、固定部8baの受け面8bbに合致し得るようになっている。そして、合致部9dを固定部8baの受け面8bbに合致させると、接液部9bが透析液導出チューブL2の挿通孔L2aに合致する位置とされるので、
図17に示すように、当該接液部9bを挿通孔L2aに挿通させつつ内周面9aを透析液導出チューブL2の外周面に接着等させて固定することができる。
【0062】
接地部9cは、導電性部材9の外周面の一部から成り、カバーHに取り付けられた接地手段E(
図2参照)と接触して接地可能とされ、透析液導出チューブL2及びそれに接続された流路の液体に帯びた電荷を外部に放散させ得るものである。特に、本実施形態においては、接地部9cにおける接地手段Eとの接触部が略平坦な面から成り、その略平坦な面が接地手段Eに面接触し得るよう構成されている。
【0063】
すなわち、第1、2の実施形態と同様、カバーHを閉じると、被しごき用可撓性チューブ(D1〜D5)が血液ポンプP1及びしごき型ポンプ(P2〜P5)に一括して取り付けられるとともに、
図18に示すように、接地手段Eが導電性部材9の接地部9cと接触するので、透析液導出チューブL2及びそれに接続された流路の液体に帯びた電荷を外部に放散することができるのである。
【0064】
本実施形態によれば、接地部9cにおける接地手段Eとの接触部は、略平坦な面から成るので、接地部9cと接地手段Eとの接触を面接触として確実に行わせることができ、流路(透析液導出チューブL2及びそれに接続された流路)に帯びた電荷をより良好且つ確実に外部に放散することができる。また、本実施形態によれば、透析液導出チューブL2の端部を接続可能とされた絶縁部材から成る接続部8bを有するとともに、当該接続部8bは、導電性部材9を合致させて位置決め固定し得る固定部8baが形成されたので、透析液導出チューブL2に対して導電性部材9を精度よく安定して取り付けることができる。
【0065】
さらに、本実施形態に係る接続部8bは、透析液導出チューブL2(流路)に接続された任意部品(本実施形態においては圧力モニタチャンバ8)に形成されたので、その任意部品の一部に透析液導出チューブL2を接続させる接続機能と、導電性部材9を位置決め固定する固定機能とを兼ね備えることができる。なお、本実施形態においては、圧力モニタチャンバ8に接続部8bが形成されているが、流路(透析液導出チューブL2又は他の流路)に接続された他の任意部品(液圧を計測するものの他、流路を流れる液体に対して他のパラメータを計測するもの、或いはポンプ等の液体を流路にて送液させるもの等)であってもよい。また、上記実施形態の帯電防止具による効果を有した医療用回路又は血液浄化装置を提供することができる。
【0066】
以上、本実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されず、例えば帯電防止具を構成する導電性部材(6、7、9)は、カーボンナノチューブを含有するポリカーボネート又はカーボンブラックを含有するポリ塩化ビニルに限定されず、他の汎用的な導電材料(金属等)としてもよい。また、帯電防止具の接地位置は、透析液導出チューブL2に限定されず、透析液導入チューブL1、動脈側血液回路1a、静脈側血液回路1bの途中であって、血液ポンプP1やしごき型ポンプ(P2〜P5)が配設された位置の間、或いは血液ポンプP1の上流側(患者側)等であってもよい。
【0067】
さらに、本実施形態においては、接地手段EがカバーHに形成されているが、他の部位に形成して導電性部材の接地部に接触させるものであってもよい。なお、ダイアライザ2に代えて他の血液浄化器(ヘモフィルタ、血漿分離器、血液吸着器等)としてもよく、或いは血液回路1に代えて体外循環させない血液流路(例えば、輸液や輸血等の流路)に適用してもよい。また、適用される血液浄化治療は、透析治療に限定されず、患者の血液を体外循環させつつ浄化する他の治療のための血液浄化装置であってもよい。