(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記公報のプレス機械における制御では、設定ミス検出位置よりも上方の減速開始位置で、ミスが検出される前にスライドの速度が減速されるため、その減速に伴い生産性が低下するという問題がある。
【0006】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、ワークの搬送に関する異常が有った場合にはスライドを強制停止させながらも、生産性の低下を抑制できるプレス機械を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るプレス機械は、ワークを搬送してプレスするプレス機械であって、スライドと、駆動部と、検出部と、速度制御部と、停止判定演算部とを備える。スライドは、ワークをプレスする際に昇降動作する。駆動部は、スライドを駆動する。検出部は、スライドの位置情報を検出する。速度制御部は、スライドの動作を規定するモーション情報に基づき駆動部によるスライドの速度を制御する。停止判定演算部は、モーション情報およびスライドを強制停止させる設定地点に基づいてスライドの減速を開始するための減速開始点を設定する。速度制御部は、検出部が検出したスライドの位置情報に基づいて、スライドが減速開始点に到達した場合に、ワークの搬送に関する異常信号の入力の有無を判断し、異常信号の入力が有ると判断した場合には設定地点にスライドが停止するようにスライドの減速制御を実行する。
【0008】
本発明に従えば、速度制御部は、減速開始点において、異常信号の入力の有無を判断して異常信号の入力が有ると判断した場合には、設定地点にスライドが停止するように減速制御する。このためワークの搬送に関する異常信号の入力が有った場合には、スライドを強制的に停止することができる。
【0009】
また、減速開始点において、異常信号の入力が判断されるため、異常信号の入力が無いと速度制御部が判断した場合には、減速制御は行われずプレス動作が続行される。このような減速制御は行われないため、生産性の低下を抑制することができる。
【0010】
上記より、ワークの搬送に関する異常が有った場合にはスライドを強制停止させながらも、生産性の低下を抑制することが可能となる。
【0011】
好ましくは、プレス機械は、設定された減速開始点を表示する表示部をさらに備える。
本発明に従えば、表示部に減速開始点が表示されるため操作者は容易に当該減速開始点を確認することが可能である。
【0012】
好ましくは、停止判定演算部は、スライドを強制停止させる設定地点の入力を受け付ける。
【0013】
本発明に従えば、設定地点を入力することが可能であるため任意の地点でスライドを強制停止させることが可能である。
【0014】
好ましくは、速度制御部は、異常信号の入力が有ると判断した場合に異常信号の入力が無くなるか否かを判断し、異常信号の入力が無くなったと判断した場合には、モーション情報に基づく駆動部によるスライドの加速制御を実行する。
【0015】
本発明に従えば、異常信号の入力が無くなったと判断した場合には、スライドの減速制御を中止して加速制御によるプレス加工が実行される。これにより生産性の低下を抑制することができる。
【0016】
好ましくは、プレス機械は、設定地点にスライドが停止している期間をカウントするカウント部と、カウント部のカウント結果に基づいてスライドが所定期間以上停止している場合には、電源からの電力供給を停止させる停止処理部とを備える。
【0017】
本発明に従えば、スライドが設定地点に所定期間以上停止している場合には、電源からの電力供給を停止することにより異常状態における安全性を強化することが可能である。
【0018】
本発明に係るプレス機械は、ワークを搬送してプレスするプレス機械であって、スライドと、駆動部と、検出部と、速度制御部とを備える。スライドは、ワークをプレスする際に昇降動作する。駆動部は、スライドを駆動する。検出部は、スライドの位置情報を検出する。速度制御部は、スライドの動作を規定するモーション情報に基づき駆動部によるスライドの速度を制御する。速度制御部は、ワークの搬送に関する異常信号の入力に応じてスライドを設定地点に強制停止するように減速制御し、異常信号の入力が無くなった場合には、設定地点からモーション情報に基づき駆動部によるスライドの速度の制御を再開する。
【0019】
本発明に従えば、ワークの搬送に関する異常信号の入力が有った場合には、スライドを強制的に停止させることができる。また、異常信号の入力が無くなった場合には、スライドの速度の制御が再開されるためプレス加工が継続される。これによりワークの搬送に関する異常が有った場合にはスライドを強制停止させながらも、生産性の低下を抑制することが可能となる。
【0020】
好ましくは、プレス機械は、停止判定部をさらに備える。停止判定部は、モーション情報およびスライドを強制停止させる設定地点に基づいてスライドの減速を開始するための減速開始点を設定する。速度制御部は、検出部が検出したスライドの位置情報に基づいて、スライドが減速開始点に到達した場合に、異常信号の入力の有無を判断し、異常信号の入力が有ると判断した場合に設定地点にスライドが停止するようにスライドの減速制御を実行する。
【0021】
本発明に従えば、速度制御部は、減速開始点において、異常信号の入力の有無を判断して異常信号の入力が有ると判断した場合には、設定地点にスライドが停止するように減速制御する。このためワークの搬送に関する異常信号の入力が有った場合には、スライドを強制的に停止することが可能である。
【0022】
また、減速開始点において異常信号の入力が判断されるため、異常信号の入力が無いと速度制御部が判断した場合には、減速制御は行われずプレス動作が続行される。このように減速制御が行われないため、生産性の低下を抑制することが可能である。
【0023】
好ましくは、プレス機械は、設定された減速開始点を表示する表示部をさらに備える。
本発明に従えば、表示部に減速開始点が表示されるため操作者は容易に当該減速開始点を確認することが可能である。
【0024】
好ましくは、停止判定演算部は、スライドを強制停止させる設定地点の入力を受け付ける。
【0025】
本発明に従えば、設定地点を入力することが可能であるため任意の地点でスライドを強制停止させることが可能である。
【0026】
好ましくは、速度制御部は、設定地点にスライドが停止している場合に異常信号の入力が無くなるか否かを判断し、異常信号の入力が無くなったと判断した場合には、設定地点からモーション情報に基づく駆動部によるスライドの加速制御を実行する。
【0027】
本発明に従えば、異常信号の入力が無くなったと判断した場合には、設定地点から加速制御によるプレス加工が実行される。これにより生産性の低下を抑制することができる。
【0028】
好ましくは、プレス機械は、設定地点にスライドが停止している期間をカウントするカウント部と、カウント部のカウント結果に基づいてスライドが所定期間以上停止している場合には、電源からの電力供給を停止させる停止処理部とをさらに備える。
【0029】
本発明に従えば、スライドが設定地点に所定期間以上停止している場合には、電源からの電力供給を停止することにより異常状態における安全性を強化することが可能である。
【発明の効果】
【0030】
本発明のプレス機械は、ワークの搬送に関する異常が有った場合にはスライドを強制停止させながらも、生産性の低下を抑制することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付し、その説明は繰り返さない。
【0033】
本例においては、サーボモータを搭載したサーボプレス(プレス機械)を例に挙げて説明する。
【0034】
<全体構成>
図1は、本実施形態に基づくサーボプレス1の斜視図である。
【0035】
図1に示されるように、一例としてプランジャが設けられていないタイプのサーボプレス1が示されている。
【0036】
サーボプレス1は、本体フレーム2と、スライド3と、ベッド4と、ボルスタ5と、コントロールパネル6と、制御装置40とを備える。
【0037】
サーボプレス1の本体フレーム2の略中央部には、スライド3が上下動自在に支承されている。スライド3に対する下方には、ベッド4上に取り付けられたボルスタ5が配置されている。本体フレーム2の前方には、コントロールパネル6が設けられている。本体フレーム2の側方には、コントロールパネル6が接続された制御装置40が設けられている。
【0038】
図2は、サーボプレス1の要部を示す側断面図である。
図3は、サーボプレス1の別の要部を示す一部断面の平面図である。
【0039】
図2に示されるように、サーボプレス1は、サーボモータ21と、球面孔3Aと、ねじ軸7と、球体部7Aと、ねじ部7Bと、コンロッド本体8と、雌ねじ部8Aと、コンロッド9と、メインシャフト10と、エキセン部10Aと、サイドフレーム11と、軸受部12〜14と、メインギア15と、動力伝達軸16と、伝達ギア16Aと、軸受部17,18と、プーリ19とをさらに有する。
【0040】
サーボプレス1では、サーボモータ21によりスライド3を駆動している。スライド3の上部に形成された球面孔3A内には、ダイハイト調整用のねじ軸7の下端に設けられた球体部7Aが抜け止めされた状態で回動自在に挿入されている。球面孔3Aおよび球体部7Aにより、球状継手が構成されている。ねじ軸7のねじ部7Bは、上方に向けてスライド3から露出し、ねじ軸7の上方に設けたコンロッド本体8の雌ねじ部8Aに螺合している。ねじ軸7およびコンロッド本体8により、伸縮自在なコンロッド9が構成されている。
【0041】
なお、ダイハイトとは、スライド3を下死点にしたときのスライド下面からボルスタ上面の距離をいう。
【0042】
コンロッド9の上部は、メインシャフト10に設けられたクランク状のエキセン部10Aに回動自在に連結されている。メインシャフト10は、本体フレーム2を構成する左右一対の厚板状のサイドフレーム11間において、前後3箇所の軸受部12,13,14で支承されている。メインシャフト10の後部側には、メインギア15が取り付けられている。
【0043】
メインギア15は、その下方に設けられた動力伝達軸16の伝達ギア16Aと噛合している。動力伝達軸16は、サイドフレーム11間において、前後2箇所の軸受部17,18で支承されている。動力伝達軸16の後端には、従動側のプーリ19が取り付けられている。プーリ19は、その下方に配置されたサーボモータ21で駆動される。
【0044】
サーボプレス1は、ブラケット22と、出力軸21Aと、プーリ23と、ベルト24と、ブラケット25と、位置検出器26と、ロッド27と、位置センサ28と、補助フレーム29と、ボルト31,32とをさらに有する。
【0045】
サーボモータ21は、略L字形状のブラケット22を介してサイドフレーム11間に支持されている。サーボモータ21の出力軸21Aは、サーボプレス1の前後方向に沿って突出しており、出力軸21Aに設けられた駆動側のプーリ23と従動側のプーリ19に巻回されたベルト24により動力が伝達される。
【0046】
また、スライド3の背面側には、上下2箇所からサイドフレーム11間に向けて後方に突出した一対のブラケット25が取り付けられている。上下のブラケット25間には、リニアスケール等の位置検出器26を構成するロッド27が取り付けられている。このロッド27には、スライド3の上下位置を検出するためのスケールが設けられており、同じく位置検出器26を構成する位置センサ28に上下動自在に嵌挿されている。位置センサ28は、一方のサイドフレーム11に設けられた補助フレーム29に固定されている。
【0047】
補助フレーム29は、上下方向に縦長に形成されており、下部がボルト31によりサイドフレーム11に取り付けられ、上部が上下方向に長い長孔内に挿入されたボルト32により上下方向に摺動自在に支持されている。このように補助フレーム29は、上下いずれか一方側(本実施形態では下側)のみがサイドフレーム11に固定され、他方側が上下動自在に支持されているため、サイドフレーム11の温度変化による伸縮の影響を受けないようになっている。これにより、位置センサ28は、サイドフレーム11のそのような伸縮の影響を受けずに、スライド位置およびダイハイト位置を正確に検出可能としている。
【0048】
一方、スライド3のスライド位置およびダイハイトは、スライド3内に設けられたスライド位置調整機構33によって調整される。スライド位置調整機構33は、
図3にも示すように、ねじ軸7の球体部7Aの外周にピン7Cを介して取り付けられたウォームホイール34と、ウォームホイール34と噛合するウォームギア35と、ウォームギア35の端部に取り付けられた入力ギア36と、入力ギア36に噛合する出力ギア37を有したインダクションモータ38とで構成される。インダクションモータ38は、軸方向長さが短いフラット形状とされ、コンパクトに構成されている。インダクションモータ38の回転動をウォームホイール34を介してねじ軸7を回動させることによって調整している。
【0049】
コントロールパネル6は、スライドのモーション制御を設定するための各種データを入力するものであり、モーションデータを入力するためのスイッチやテンキー、およびこれらの入力データや設定完了し登録された設定データ等を表示する表示器を有している。
【0050】
表示器としては、透明タッチスイッチパネルを液晶表示器やプラズマ表示器等のグラフィック表示器を前面に装着した、プログラマブル表示器が採用されている。
【0051】
なお、このコントロールパネル6は、予め設定されたモーションデータを記憶したICカード等の外部記憶媒体からのデータ入力装置、または無線や通信回線を介してデータを送受信する通信装置を備えていてもよい。
【0052】
本実施形態のコントロールパネル6では、成形条件に合った加工パターン、すなわちスライドの制御パターンとして、回転パターン、回転往復パターン、振子パターンおよび反転パターン等を選択し、設定可能となっている。また、加工パターンに応じてスライド3の高さ位置を位置検出器26の実際の検出値で表示させるか、後述する演算によって算出された値を表示させるかが、モーションデータとして指定される。
【0053】
制御パターン中の「回転」パターンとは、メインシャフト10を正回転側にのみに回転させることで実現するものであり、ワークに対する1ショットの動きについて、スライド3を上死点から始動させ、下死点を通過させて再び上死点まで到達させるモーションである。
【0054】
「回転往復」パターンとは、ワークに対する1ショットの動きについて、スライド3を上死点から正回転側へ始動させ、下死点手前の加工終了位置で停止させた後、この位置から逆回転側に回転させて上死点まで戻し、次のワークに対する1ショットの動きについて、スライド3を上死点から逆回転側へ始動させ、下死点手前の加工終了位置で停止させた後、この位置から正回転側に回転させて上死点まで戻すモーションである。つまり、メインシャフト10は、ワーク毎に正逆回転を交互に繰り返す。
【0055】
「振子」パターンとは、ワークに対する1ショットの動きについて、スライド3を上死点あるいは上死点より低い位置の上限点から正回転側へ始動させ、下死点点を通過して、上死点あるいは上死点手前の上限点まで行き停止させる。その後、次のワークに対するショットに移り、逆回転側へ始動させ、下死点を通過して上死点あるいは元の上限点まで行き停止させるモーションである。つまり、メインシャフト10は、ワーク毎に正逆回転を交互に繰り返す。
【0056】
「反転」パターンとは、ワークに対する1ショットの動きについて、スライド3を上死点あるいは上死点より低い位置の上限点から正回転側へ始動させ、下死点手前の加工終了位置で停止させた後、この位置から逆回転側に回転させて上死点あるいは上限点まで戻すモーションである。つまり、メインシャフト10は、1ショット内において正逆回転を実行する。
【0057】
なお、スライド3、サーボプレス1は、それぞれ本発明の「スライド」、「プレス機械」の一例である。
【0058】
<システム構成>
図4は、本実施形態に基づくプレスシステムの構成を説明する図である。
【0059】
図4に示されるように、プレスシステムは、コイルホルダ100と、レベラーフィーダー110と、サーボプレス1と、フィーダー120とを含む。
【0060】
コイルホルダ100には、コイルが巻き付けられておりレベラーフィーダー110を介してサーボプレス1にコイルが搬送される。本例においては、ワーク(材料)としてコイルをプレス加工する場合について説明する。
【0061】
レベラーフィーダー110は、コイルホルダ100からサーボプレス1に搬送するコイルの送り高さの位置を調整するとともにサーボプレス1に対してコイルを所定タイミングで搬送する。具体的には、レベラーフィーダー110は、ローラ111と、モータ112と、コントローラ113とを含む。
【0062】
モータ112は、ローラ111を駆動し、コイルホルダ100からのコイルをサーボプレス1に搬送する。コントローラ113は、モータ112を制御し、コイルホルダ100からのコイルをサーボプレス1に供給するタイミングを制御する。
【0063】
サーボプレス1は、レベラーフィーダー110から搬送されたコイルに対して選択された成形条件に合った加工パターンに従ってプレス加工する。
【0064】
フィーダー120は、サーボプレス1にてプレス加工により成形したワークを搬送する。例えば、次のサーボプレスに搬送することも可能である。
【0065】
フィーダー120は、ローラ121と、モータ122と、コントローラ123とを含む。
【0066】
モータ122は、ローラ121を駆動し、サーボプレス1で成形されたワークを搬送する。コントローラ123は、モータ122を制御し、サーボプレス1で成形されたワークを搬送するタイミングを制御する。
【0067】
プレスシステムの各部は同期しており、一連の作業が順次連続して実行される。コイルホルダ100からコイルがレベラーフィーダー110を介してサーボプレス1に搬送される。そして、サーボプレス1でプレス加工され、加工されたワークはフィーダー120により搬送される。上記一連の処理が繰り返される。
【0068】
また、レベラーフィーダー110は、ワークの搬送に関する異常を検知する機能を有している。
【0069】
具体的には、コントローラ113は、モータ112によりローラ111を駆動してコイルを搬送する際、コイルが正しく搬送されるか否かを判断し、搬送が適正でない場合には搬送エラーを示す異常信号をサーボプレス1に出力する。例えば、コントローラ113は、コイルホルダ100からのコイルの供給が遅れて適正な長さのコイルが搬送されていないことを検出した場合には異常信号をサーボプレス1に出力する。また、コントローラ113は、異常状態が解消された場合には、サーボプレス1への異常信号の出力を停止する。
【0070】
サーボプレス1は、コントローラ113からの異常信号の入力を受けて異常停止制御を実行する。
【0071】
同様に、フィーダー120は、ワークの搬送に関する異常を検知する機能を有している。
【0072】
具体的には、コントローラ123は、モータ122によりローラ121を駆動してサーボプレス1からワークが正しく搬送されているか否かを判断し、搬送が適正でない場合には搬送エラーを示す異常信号をサーボプレス1に出力する。例えば、コントローラ123は、前回のワークが適正に搬送されていないことを検出した場合には異常信号をサーボプレス1に出力する。また、コントローラ123は、異常状態が解消された場合には、サーボプレス1への異常信号の出力を停止する。
【0073】
<サーボプレスの機能構成>
次に、コントロールパネル6と接続される制御装置40について説明する。
【0074】
上記で説明したスライドの制御パターンおよび各種設定情報は、一例としてコントロールパネル6を操作することにより入力される。
【0075】
図5は、制御装置40の主要な構成を示すブロック図である。
図5において、制御装置40は、スライド3を駆動するサーボモータ21をフィードバック制御により制御する装置であって、詳細図示による説明は省略するが、CPUや高速数値演算プロセッサ等を主体に構成され、決められた手順に従って入力データの算術・論理演算を行うコンピュータ装置と、指令電流を出力する出力インタフェースとを備えて構成されている。
【0076】
本実施形態での制御装置40は、モーション設定部42と、スライド速度指令演算部43と、停止判定演算部44と、異常信号受付部45と、スライド減速指令演算部46と、停止処理部47と、カウント部48とを含む。
【0077】
また、制御装置40は、ROM、RAM等の適宜な記憶媒体で構成された記憶部50と接続されている。記憶部50は、制御装置40が各種の機能を実現するためのプログラムやモーションデータを記憶するモーションデータ記憶部62が設けられている。なお、記憶部50は、各種演算処理を実行するためのワーク領域としても用いられる。
【0078】
また、制御装置40には、コントロールパネル6の他、スライド3の高さ位置を検出する位置検出器26、メインシャフト10の回転角度を検出するクランクエンコーダ等の角度検出器52が接続される。これにより制御装置40は、スライド3の高さに関する位置あるいは角度を取得することが可能である。また、サーボモータ21は、サーボアンプ53を介して制御装置40と接続されている。
【0079】
制御装置40のモーション設定部42は、コントロールパネル6により選択、設定された制御パターンと、この制御パターンに対応する記憶部50に格納されているモーションデータとに基づき、制御実行用のモーションデータ(モーション情報)を決定する。そして、決定したモーションデータをスライド速度指令演算部43、停止判定演算部44、スライド減速指令演算部46に出力する。
【0080】
スライド速度指令演算部43は、モーション設定部42で決定したモーションデータに基づいて、メインシャフト10の正回転時および逆回転時、すなわちサーボモータ21の正回転時等のそれぞれのモーションに沿ってスライド3が正確に移動するように、所定のサーボ演算周期時間毎のスライド位置の目標値をモーションに基づき演算により求める。そして、求めたスライド位置の目標値が、位置検出器26により検出したスライド位置との偏差を小さくするように、当該偏差に基づきサーボモータ21用のモータ速度指令を演算し、サーボアンプ53に出力する。なお、本例においては位置検出器26により検出したスライド位置との偏差を小さくするように制御する方式について説明するが、角度検出器52により検出したスライド位置に応じたメインシャフト10の角度との偏差を小さくするように制御するようにすることも可能である。
【0081】
当該処理によりサーボモータ21を適正に駆動しスライド3が目標速度となるように速度制御する。
【0082】
停止判定演算部44は、モーションデータおよび設定地点に基づいてスライド3の減速を開始するための減速開始点を設定する。減速開始点の設定については後述する。
【0083】
異常信号受付部45は、外部からの異常信号の入力を受け付けてスライド減速指令演算部46に出力する。異常信号は、ワークの搬送の異常に関する信号である。本例においては、レベラーフィーダー110において、ワークの搬送の異常を検知した場合にはコントローラ113からサーボプレス1に異常信号が出力される。また、フィーダー120において、ワークの搬送の異常を検知した場合には、コントローラ123からサーボプレス1に異常信号が出力される。
【0084】
スライド減速指令演算部46は、スライド3が減速開始点に到達した場合に、異常信号受付部45で異常信号が受け付けられているか否かを判断し、異常信号が受け付けられている場合には、スライド速度指令演算部43に指示してスライド速度指令演算部43からのモータ速度指令の出力を中止する。また、スライド減速指令演算部46は、スライド3を減速制御するためにサーボアンプ53に対してモータ速度指令を出力する。具体的には、スライド減速指令演算部46は、強制停止させる設定地点にスライド3が停止するように減速制御(異常停止制御)する。
【0085】
当該処理により、ワークの搬送に関する異常信号の入力が有った場合には、スライド3を強制的に設定地点に停止することができる。また、減速開始点において、異常信号の入力が判断されるため、異常信号の入力が無いと判断した場合には、スライド減速指令演算部46による減速制御は行われずに、スライド速度指令演算部43による通常のプレス動作が続行される。したがって、減速制御は行われないため、生産性の低下を抑制することが可能である。
【0086】
スライド減速指令演算部46は、スライド3が設定地点に強制停止した場合にカウント部48に指示して設定地点に停止している期間をカウントする。スライド減速指令演算部46は、カウント部48でカウントしたカウント結果に基づいてスライド3が設定地点に停止している期間が所定期間以上である場合には、停止処理部47に運転の停止を指示する。
【0087】
停止処理部47は、スライド減速指令演算部46の指示に従ってサーボプレス1全体の動作を停止させる。例えば、停止処理部47は、サーボプレス1全体の動作を停止させるために電源からの電力供給を遮断するようにしても良い。電源からの電力供給を停止することにより異常状態におけるサーボプレス1の安全性を強化することが可能である。
【0088】
スライド減速指令演算部46は、スライド3が減速開始点に到達した場合に、異常信号受付部45を介して異常信号の入力の有無を判断し、異常信号の入力が有った場合でも異常信号の入力が無くなった場合にはスライド3の減速制御を中止して、モーションデータに基づくスライド3の制御を実行する。当該処理により、加速制御によるプレス加工が実行されるため生産性の低下を抑制することが可能である。
【0089】
また、スライド3が設定地点に停止していて異常信号の入力が無くなった場合にもスライド3の停止を終了する。そして、スライド減速指令演算部46は、モーションデータに基づいて設定地点からスライド3の制御を再開する。当該処理により、ワークの搬送に関する異常が有った場合にはスライド3を強制停止させながらも、異常信号の入力が無くなった場合には復帰してプレス加工が継続されるため、生産性の低下を抑制することが可能となる。
【0090】
なお、サーボモータ21、位置検出器26あるいは角度検出器52、スライド減速指令演算部46、停止判定演算部44、コントロールパネル6、カウント部48、停止処理部47は、それぞれ本発明の「駆動部」、「検出部」、「速度制御部」、「停止判定演算部」、「表示部」、「カウント部」、「停止処理部」の一例である。
【0091】
<スライドの速度制御>
図6は、実施形態に基づくスライド3の速度制御を説明する図である。
【0092】
図6(A)は、モーションデータに基づく速度制御によりスライド3の位置が変化する場合を説明する図である。
【0093】
図6(B)は、モーションデータに基づく速度制御によりスライド3の速度が変化する場合を説明する図である。
【0094】
本例においては、地点P0は下死点である。地点P1は設定地点である。地点P2は減速開始点である。
【0095】
本実施形態においては、減速開始点P2において、異常信号の入力の有無を判断する。具体的には、スライド減速指令演算部46は、スライド3が減速開始点P2に到達した場合に異常信号受付部45を介する異常信号の入力が有るか否かを判断する。
【0096】
そして、当該減速開始点P2において、異常信号の入力が有る場合には、スライド減速指令演算部46は、減速制御を実行する。スライド減速指令演算部46は、減速開始点P2において異常信号の入力が有ると判断した場合には、設定地点P1にスライド3が強制停止するように制御する(ラインRstp)。
【0097】
スライド減速指令演算部46は、時刻T1においてスライド3の速度が速度V2である場合に減速を開始し、時刻T2においてスライド3の速度が速度V0(0)となるように制御する場合が示されている。そして、時刻T2において設定地点P1に強制停止される場合が示されている。
【0098】
スライド減速指令演算部46は、減速開始点P2において、異常信号の入力が無い場合には、スライド速度指令演算部43に対して速度制御の停止を指示しない。これにより、スライド速度指令演算部43は、一定の速度V2に従ってワークに対してプレス加工する。
【0099】
図7は、実施形態に基づく停止判定演算部44における処理について説明するフロー図である。
【0100】
図7に示されるように、停止判定演算部44は、設定地点の入力が有るかどうかを判断する(ステップS2)。具体的には、コントロールパネル6を介して操作者からの設定地点に関する入力指示が有るかどうかを判断する。設定地点は、ワークの搬送に関する異常が発生した場合にスライド3を強制停止させる地点であり、当該設定地点を設定することにより当該異常が発生した場合に金型損傷を防止することが可能である。
【0101】
図8は、実施形態に基づくコントロールパネル6に表示される表示画面を説明する図である。
【0102】
図8(A)には、設定地点の入力画面が示されている。操作者は、当該入力画面において、設定地点として、強制停止する位置あるいは角度を入力することが可能である。角度は、ロータリの回転角を入力することが可能である。一例として位置に対する角度を規定する相関テーブルに基づいて、一方を入力することにより、他方を計算により算出することが可能である。
【0103】
再び、
図7を参照して、ステップS2において、停止判定演算部44は、設定地点の入力が有ると判断した場合(ステップS2においてYES)には、設定地点の入力として角度/位置のいずれの入力をしたかどうかを判断する(ステップS4)。一方、ステップS2において、停止判定演算部44は、設定地点の入力が無いと判断した場合(ステップS2においてNO)には、ステップS2の状態を維持する。
【0104】
ステップS4において、停止判定演算部44は、設定地点の入力として角度を入力した場合(ステップS4において角度)には、入力された角度から設定地点の位置を算出する(ステップS6)。具体的には、相関テーブルに基づいて入力された角度から設定地点の位置を算出する。
【0105】
一方、ステップS4において、停止判定演算部44は、位置を入力した場合(ステップS4において位置)には、位置から角度を算出する(ステップS8)。具体的には、相関テーブルに基づいて入力された位置から設定地点の角度を算出する。
【0106】
そして、停止判定演算部44は、モーションデータを取得する(ステップS10)。停止判定演算部44は、モーション設定部42で設定されたモーションデータを取得する。
【0107】
次に、停止判定演算部44は、入力された設定地点およびモーションデータに基づいて減速開始点を計算する(ステップS12)。具体的には、停止判定演算部44は、減速開始点として設定地点を示す角度に基づいて減速開始角度を計算する。また、減速開始点として設定地点を示す位置に基づいて減速開始位置を計算する。
【0108】
一例として、速度Vの場合に等加速度aで減速を開始して停止する距離は、V
2/2aとして算出することが可能である。一例として設定地点P1からV
2/2a分上方の地点を減速開始点に設定するようにしても良い。ここで、速度Vおよび等加速度aは、モーションデータから取得するものとする。なお、速度Vおよび等加速度aは、モーションに応じて可変に設定可能である。また、本例においては、一例として、等加速度aで減速を開始する場合における減速開始点を設定する場合について説明したが、特に等加速度に限られずモーションデータに応じて可変に加速度が変更する場合についても同様に計算可能である。
【0109】
次に、停止判定演算部44は、計算された減速開始点を表示する(ステップS14)。具体的には、停止判定演算部44は、コントロールパネル6に計算された減速開始点に関する情報を出力する。
【0110】
図8(B)には、減速開始点の確認画面が示されている。
本例においては、入力された設定地点の設定角度および設定位置とともに、計算された減速開始点として減速開始角度および減速開始位置が示されている。
【0111】
再び
図7を参照して、停止判定演算部44は、計算された減速開始点を設定する(ステップS16)。
【0112】
そして、処理を終了する(エンド)。
これにより、入力された設定地点およびモーションデータに基づいてスライド3の減速を開始するための減速開始点を算出することが可能である。
【0113】
図9は、制御装置40におけるスライド3の速度を制御する処理を説明するフロー図である。ここでは、主にスライド減速指令演算部46の処理について説明する。
【0114】
図9に示されるように、スライド減速指令演算部46は、角度検出器52から入力される角度あるいは位置検出器26から入力される位置を取得する(ステップS20)。本例においては、スライドの位置情報として角度検出器52あるいは位置検出器26からの角度あるいは位置により検出する。
【0115】
次に、スライド減速指令演算部46は、取得した角度あるいは位置に基づいてスライドが設定された減速開始点に到達したかどうかを判断する(ステップS22)。
【0116】
具体的には、取得した角度が減速開始角度に到達したかどうかを判断する。あるいは、取得した位置が減速開始位置に到達したかどうかを判断する。
【0117】
ステップS22において、スライド減速指令演算部46は、スライドが減速開始点に到達したと判断した場合(ステップS22においてYES)には、異常信号の入力の有無を判断する(ステップS24)。具体的には、スライド減速指令演算部46は、異常信号受付部45を介して異常信号の入力を受け付けているかどうかを判断する。
【0118】
ステップS24において、スライド減速指令演算部46は、異常信号の入力が有ると判断した場合(ステップS24においてYES)には、減速制御を実行する(ステップS26)。具体的には、スライド減速指令演算部46は、
図6で説明したようにスライドが設定地点で停止するように速度を減速させる減速制御を実行する。すなわち、減速制御は、異常信号の入力有無が判断されるまでは実行されない。
【0119】
次に、スライド減速指令演算部46は、異常が終了したかどうかを判断する(ステップS28)。具体的には、スライド減速指令演算部46は、異常信号受付部45を介する異常信号の入力が終了したかどうかを判断する。
【0120】
ステップS28において、スライド減速指令演算部46は、異常が終了したと判断した場合(ステップS28においてYES)には、ステップS40に進む。
【0121】
一方、ステップS28において、スライド減速指令演算部46は、異常が終了していないと判断した場合(ステップS28においてNO)には、スライドが設定地点に到達したかどうかを判断する(ステップS30)。
【0122】
ステップS30において、スライド減速指令演算部46は、スライドが設定地点に到達したと判断した場合(ステップS30においてYES)には、ステップS32に進む。
【0123】
一方、ステップS30において、スライド減速指令演算部46は、スライドが設定地点に到達していないと判断した場合(ステップS30においてNO)には、ステップS26に戻り、減速制御を継続する。当該処理により設定地点にスライド3が到達するまで処理を繰り返す。
【0124】
次に、ステップS30において、スライド減速指令演算部46は、スライドが設定地点に到達したと判断した場合(ステップS30においてYES)には、設定地点にスライドが待機している待機時間をカウントする(ステップS32)。具体的には、スライド減速指令演算部46は、カウント部48に指示して、カウント部48は、カウントを開始する。
【0125】
次に、スライド減速指令演算部46は、異常が終了したかどうかを判断する(ステップS34)。具体的には、スライド減速指令演算部46は、異常信号受付部45を介する異常信号の入力が終了したかどうかを判断する。
【0126】
ステップS34において、スライド減速指令演算部46は、異常が終了したと判断した場合(ステップS34においてYES)には、ステップS40に進む。
【0127】
一方、ステップS34において、スライド減速指令演算部46は、異常が終了していないと判断した場合(ステップS34においてNO)には、所定の待機時間が経過したかどうかを判断する(ステップS36)。具体的には、スライド減速指令演算部46は、カウント部のカウント結果に基づいてスライドが設定位置で停止してから所定の待機時間が経過しているか否かを判断する。
【0128】
ステップS36において、スライド減速指令演算部46は、所定の待機時間が経過したと判断した場合(ステップS36においてYES)には、停止処理を実行する(ステップS38)。具体的には、スライド減速指令演算部46は、停止処理部47に指示する。停止処理部47は、スライド減速指令演算部46の指示に従ってサーボプレス1全体の動作を停止させる。
【0129】
そして、処理を終了する(エンド)。
一方、ステップS36において、スライド減速指令演算部46は、所定の待機時間が経過していないと判断した場合(ステップS36においてNO)には、ステップS32に戻り待機時間をカウントして上記の処理を繰り返す。
【0130】
一方で、ステップS28あるいはステップS34において、スライド減速指令演算部46は、異常が終了したと判断した場合(ステップS28あるいはステップS34においてYES)、モーションデータに応じた速度に制御されているかどうかを判断する(ステップS40)。
【0131】
ステップS40において、スライド減速指令演算部46は、モーションデータに応じた速度に制御されていないと判断した場合(ステップS40においてNO)には、加速処理を実行する(ステップS42)。
【0132】
そして、ステップS40に戻り、スライド減速指令演算部46は、モーションデータに応じた速度となるまで上記加速処理を繰り返す。
【0133】
そして、ステップS40において、スライド減速指令演算部46は、モーションデータに応じた速度に制御されたと判断した場合(ステップS40においてYES)には、通常制御を指示する(ステップS44)。具体的には、スライド減速指令演算部46は、スライド速度指令演算部43に指示して、スライド速度指令演算部43によりモーションデータに応じたスライドの速度制御を実行する。
【0134】
そして、処理を終了する(エンド)。
したがって、スライド減速指令演算部46は、減速開始点において異常信号受付部45を介する異常信号の入力の有無を判断し、異常信号の入力が有る場合には、設定地点に停止するように減速制御する。また、異常信号の入力があった場合でも設定地点に到達するまでの間に異常信号の入力が無くなった場合にはスライド3の減速制御を中止して、モーションデータに基づくスライド3の制御を実行する。また、スライド3が設定地点に停止していて、所定の待機時間の間に異常信号の入力が無くなった場合にはスライド3の停止を終了して、モーションデータに基づいて設定地点からスライド3の制御を再開する。
【0135】
図10は、スライドの位置と異常信号との関係を説明する図である。
図10に示されるように、スライドが減速開始点に到達した場合に、異常信号の入力が有る場合には、スライド減速指令演算部46によりスライド3が減速制御される。これによりスライド3は、設定地点に停止する。
【0136】
スライド3が設定地点に停止している場合において、異常が解除された場合には、スライド3は、復帰動作を開始する。具体的には、スライド減速指令演算部46は、異常信号受付部45を介する異常信号の入力が無くなったと判断した場合には、設定地点からモーションデータに応じた速度にスライドを制御する。そして、スライド3が下死点に到達した後、再び、上昇して通常の処理を繰り返す。
【0137】
本実施形態においては、設定地点にスライド3が停止した後、異常が解除された場合には、復帰してプレス加工を実行することが可能である。従来においては、異常が検知された場合には、停止処理となり、例えば電源からの電力供給が遮断されてサーボプレス1全体の制御が停止していたが、本実施形態においては、異常が解除された場合には、復帰制御により処理を継続させることが可能である。
【0138】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。