特許第6739147号(P6739147)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6739147
(24)【登録日】2020年7月27日
(45)【発行日】2020年8月12日
(54)【発明の名称】オフセットされたカテーテル固定装置
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/02 20060101AFI20200730BHJP
【FI】
   A61M25/02 502
【請求項の数】13
【外国語出願】
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-50209(P2015-50209)
(22)【出願日】2015年3月13日
(65)【公開番号】特開2015-173988(P2015-173988A)
(43)【公開日】2015年10月5日
【審査請求日】2018年1月22日
(31)【優先権主張番号】14/209,113
(32)【優先日】2014年3月13日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517149379
【氏名又は名称】ティーアイディーアイ プロダクツ エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】TIDI Products, LLC
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】カート キヴィク
(72)【発明者】
【氏名】アーサー パークハースト
(72)【発明者】
【氏名】ブライアン ウィリアム タイト
【審査官】 今関 雅子
(56)【参考文献】
【文献】 特表平09−509869(JP,A)
【文献】 韓国公開特許第10−2010−0096690(KR,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0021997(US,A1)
【文献】 特開2014−045874(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
遠位チューブ部材を備える、人の皮膚を経て静脈内に挿入されるカテーテルのカテーテルハブ又は筐体部材と組み合わさった単一のチューブ部材又は複数のチューブである、人の皮膚を経て静脈内に挿入されるカテーテルを固定するために、患者の皮膚に接着によって取り付けられるように適合された、人の皮膚を経て静脈内に挿入されるカテーテルのカテーテル固定装置であって、
前記装置は、
近位端と、遠位端と、中央部とを備え、前記近位端と、前記遠位端と、一組の末端とによって画定される周縁を有する、可撓性の薄いシート状の基部材と、
固定末端と、解放可能な末端と、近位端と、遠位端とを備え、前記近位端と、前記遠位端と、前記解放可能な末端と、前記固定末端とによって画定される周縁を有する、解放可能な可撓性の薄いシート状の保持部材であって、前記固定末端は前記基部材に付着され、前記解放可能な末端は前記基部材に解放可能に付着され、前記カテーテルが前記基部材上に配置される場合、前記保持部材の前記遠位端の一部分が、前記遠位チューブ部材を越えて延在する、保持部材とを備え、
前記保持部材の前記遠位端は、前記基部材の前記遠位端からオフセットされ
前記保持部材の前記近位端は、前記カテーテルが前記基部材上に配置されてカテーテル固定装置が使用中である場合にカテーテルの軸方向に略平行な横軸の中央線上において、前記基部材の前記近位端と同位置に配置された
カテーテル固定装置。
【請求項2】
記保持部材の前記遠位端は、前記横軸の中央線において、前記基部材の前記遠位端からオフセットされる、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記横軸の中央線が、前記基部材上に横方向に中央に配置される、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
カテーテル固定装置が使用中である場合に、前記保持部材の前記遠位端が、前記基部材の前記中央部に配置される引き上げる力の集中領域を画定する、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記引き上げる力の集中領域が、前記基部材の中央50%に配置される、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記保持部材の前記遠位端が、前記基部材の前記横軸の中央線に沿って前記基部材の前記中央部に配置される引き上げる力の集中領域を画定する、請求項2に記載の装置。
【請求項7】
前記保持部材が前記基部材よりも小さい、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
患者の皮膚に接着によって取り付けられるように適合された、人の皮膚を経て静脈内に挿入されるカテーテルのカテーテル固定装置と、遠位チューブ部材を備える、人の皮膚を経て静脈内に挿入されるカテーテルのカテーテルハブ又は筐体部材と組み合わさった単一のチューブ部材又は複数のチューブである、人の皮膚を経て静脈内に挿入されるカテーテルの組合せであって、
前記組合せは、
近位端と、遠位端と、中央部とを備え、前記近位端と、前記遠位端と、一組の末端とによって画定される周縁を有する、可撓性の薄いシート状の基部材と、
固定末端と、解放可能な末端と、近位端と、遠位端とを備え、前記近位端と、前記遠位端と、前記解放可能な末端と、前記固定末端とによって画定される周縁を有する、解放可能な可撓性の薄いシート状の保持部材であって、前記固定末端が前記基部材に付着され、前記解放可能な末端が前記基部材に解放可能に付着され、前記カテーテルが前記基部材上に配置される場合、前記保持部材の前記遠位端の一部分が、前記遠位チューブ部材を越えて延在し、前記保持部材の前記遠位端の前記一部分が、前記基部材の前記遠位端からオフセットされ、前記保持部材の前記近位端は、前記カテーテルが前記基部材上に配置されてカテーテル固定装置が使用中である場合にカテーテルの軸方向に略平行な横軸の中央線上において、前記基部材の前記近位端と同位置に配置されるように、前記保持部材が前記カテーテルを越えて解放可能に固定可能である、保持部材とを備え、
前記遠位チューブ部材を越えて延在する前記保持部材の前記遠位端の前記一部分が、前記基部材の前記遠位端からオフセットされ、前記保持部材の前記近位端は、前記カテーテルが前記基部材上に配置されてカテーテル固定装置が使用中である場合にカテーテルの軸方向に略平行な横軸の中央線上において、前記基部材の前記近位端と同位置にされ、それにより、上向きの力が前記遠位チューブ部材に加えられる場合、引き上げる力の集中領域が、保持部材の前記遠位端の前記一部分によって画定され、前記引き上げる力の集中領域が前記基部材の前記中央部に配置されるように、前記遠位チューブ部材が前記保持部材の前記遠位端の前記一部分によって抑制される
組合せ。
【請求項9】
前記保持部材の前記遠位端が湾曲している、請求項8に記載の組合せ。
【請求項10】
前記保持部材が前記基部材よりも小さい、請求項8に記載の組合せ。
【請求項11】
前記基部材及び前記保持部材が犬用の骨の形状の、請求項10に記載の組合せ。
【請求項12】
前記基部材上の前記カテーテルの位置が、横軸の中央線を画定し、前記引き上げる力の集中領域が、前記横軸の中央線上に配置される、請求項8に記載の組合せ。
【請求項13】
前記引き上げる力の集中領域が、前記基部材の中央50%に配置される、請求項8に記載の組合せ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に、カテーテル固定装置という医療機器の分野に関する。カテーテルは、本明細書中で、血液、食塩水、薬剤等の液体を供給又は排出するために、人の皮膚を経て静脈内に挿入される小径の可撓性チューブを含む又は備えると定義され、複数の遠位チューブが、挿入位置から通ずる単一のチューブと流体的に連通し得るように、結合部材として働くカテーテルハブ又は筐体をしばしば備える。カテーテル筐体は、単一の遠位導管チューブが提供される場合、より容易に固定するために、より大きい本体を提供するためにも使用されてもよい。カテーテル固定装置は、典型的には、患者の皮膚に接着によって付着される可撓性のシート状の部材を備え、カテーテルが意図せずに患者から引き抜かれにくくするように、比較的安定した方法で、カテーテル管類又はカテーテル筐体を抑制及び固定するためのクランプ状、フラップ状、又はストラップ状部材を有する。カテーテル管類又は筐体は、圧力、接着剤、及び凹部材等によって固定装置内に固定されてもよい。
【背景技術】
【0002】
カテーテル固定装置は、典型的には、カテーテル管類の近位部の長さが比較的短くなるように、挿入位置から短い距離のところに配置される。一方、遠位カテーテルチューブ(一つ又は複数)は、比較的長くてもよい。既知の設計のカテーテル固定装置が直面する問題は、任意の引き上げる力が、遠位導管チューブ、つまり、カテーテル固定装置を隔てて、挿入位置から通ずる近位導管チューブとは反対側にある、カテーテルハブの向こうに延在するチューブに対して意図して又は意図せずに加えられることにより、カテーテル固定装置に対して望ましくない端部を引き上げる力がもたらされて、カテーテル固定装置が患者の皮膚から引き抜かれ又は剥離され、カテーテルが取り外される可能性があるということである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の一目的は、皮膚表面に略直角な方向に遠位チューブ(複数可)を引っ張ることによって生じる任意の引き上げる力の上向きの力の集中点を、カテーテル固定装置の端部から離れたところの中央部、特に、遠位端から離れた、患者の皮膚に付着される基部材の中央部に移動させる構造設計を提供することによって、カテーテル固定装置が意図せずに取り外される可能性を低減させるカテーテル固定装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、患者の皮膚に接着によって付着されるように適合されたカテーテル固定装置である。装置は、可撓性の薄いシート状の基部材と、基部材の下面に配置された下方の接着層と、基部材の上面に取り付けられる、解放可能な薄い可撓性のシート状、フラップ状又はストラップ状の、カテーテル保持部材とを備える。解放可能な保持部材は、固定末端と、解放可能な自由末端とを有する。固定装置は、使用中にカテーテルチューブ又は筐体が配置される、中央に配置された横軸の中央線を有する。チューブ又は筐体は、基部材及び保持部材の横軸の中央線が、カテーテルによって画定される軸と略縦一直線に並ぶように配置される。感圧接着剤、及び面ファスナ機構等の解放可能な締結機構が、カテーテルを越えて配置された場合、保持部材を基部材に確実に固定し、カテーテルが望ましくない移動をすることを防止するために提供される。保持部材及び基部材は、保持部材がオフセットされて基部材と重なり、横軸の中央線上の保持部材の遠位端が基部材の中央部上に位置する、つまり、基部材が、少なくとも保持部材の一部分よりも遠位方向により遠くに延在するように配置される。
【0005】
基部材は、好ましくは、横軸の中央線の寸法よりも長い縦軸の中央線の寸法を有するように構成され、さらに好ましくは、横軸の中央線の両側に隣接する基部材の横軸の幅が、横軸の中央線から離れるにつれて累進的に増大し、基部材の末端が丸みをおびている点に至るように、「犬用の骨」又は「蝶ネクタイ」の形状に設けられる。好ましくは、保持部材は、同様に構成されるが、全体的により小さい。保持部材の横軸の中央線の幅は、基部材の横軸の中央線の幅よりも小さく、保持部材は基部材に対してオフセットされて付着されて、それにより保持部材の遠位端は、横軸の中央線に沿って基部材の中央部又は内部に配置される。このオフセットによって、引き上げる力の中心又は引き上げる力の集中領域が、基部材の中央部に画定され、これにより、遠位チューブを引っ張ることによって、従来のカテーテル固定装置に見られるような端部を引き上げる力の集中をもたらすことなく、基部材全体に放散している引き上げる力を360度拡散又は分散させることになる。
【0006】
「犬用の骨」の形状が、上向きの力を適切に分散させるために有益であることが分かっているが、引き上げる力の中心が基部材の中央部内に配置され、それにより力が基部材の周りに放射状に拡散するように、横軸の中央線に位置する保持部材の遠位端が、基部材の遠位端からオフセットされて配置される限りは、装置は、基部材及び保持部材について様々な形状を有してもよい。このようにして、遠位チューブに加えられる任意の引き上げる力は、基部材に対して、剥離効果ではなく、「テント状」又は「円錐状」に引き上げる効果をもたらし、患者の皮膚からの分離が起こる前に持ち堪えられる引張力を大幅に増大する。
【0007】
代替要約すると、本発明は、遠位チューブ部材を備えるカテーテルを固定するために、患者の皮膚に接着によって取り付けられるように適合されたカテーテル固定装置である。前記装置は、近位端と、遠位端と、中央部とを備える、可撓性の薄いシート状の基部材と、固定末端と、解放可能な末端と、近位端と、湾曲した遠位端とを備える、解放可能な可撓性の薄いシート状の保持部材とを備える。前記固定末端は前記基部材に付着され、前記解放可能な末端は前記基部材に解放可能に付着される。前記保持部材の前記湾曲した遠位端は、前記保持部材の前記遠位端が、前記基部材の前記中央部の中央50%に配置される引き上げる力の集中領域を画定するように、前記基部材の前記遠位端からオフセットされる。装置は、横軸の中央線をさらに備えてもよい。前記保持部材の前記遠位端は、前記横軸の中央線に位置する、前記基部材の前記遠位端からオフセットされ、前記横軸の中央線は、前記基部材上に横方向に中央に配置され、及び/又は、前記保持部材は前記基部材よりも小さく、前記基部材及び前記保持部材は犬用の骨の形状である。
【0008】
さらに代替として、本発明は、患者の皮膚に接着によって取り付けられるように適合されたカテーテル固定装置と、遠位チューブ部材を備えるカテーテルとの組合せとして特徴としてもよい。前記組合せは、近位端と、遠位端と、中央部とを備える、可撓性の薄いシート状の基部材と、固定末端と、解放可能な末端と、近位端と、遠位端とを備える、解放可能な可撓性の薄いシート状の保持部材とを備える。前記固定末端は前記基部材に付着され、前記解放可能な末端は前記基部材に解放可能に付着される。前記保持部材は、前記カテーテルが前記基部材上に配置される場合、前記保持部材の前記遠位端の一部分が、前記遠位チューブ部材を越えて延在するように、前記カテーテルを越えて解放可能に固定可能である。前記保持部材の前記遠位端の前記一部分は、前記基部材の前記遠位端からオフセットされる。前記遠位チューブ部材を越えて延在する前記保持部材の前記遠位端の前記一部分は、前記基部材の前記遠位端からオフセットされ、これにより、前記遠位チューブ部材は、前記遠位チューブ部材に上向きの力が加えられる場合、引き上げる力の集中領域が保持部材の前記遠位端の前記一部分によって画定されるように、前記遠位チューブ部材の前記遠位端の前記一部分によって抑制され、前記引き上げる力の集中領域は前記基部材の前記中央部に配置される。組合せは、前記保持部材の前記遠位端が湾曲しており、前記保持部材が前記基部材よりも小さく、前記基部材及び前記保持部材が犬用の骨の形状であり、前記基部材上の前記カテーテルの位置が横軸の中央線を画定し、前記引き上げる力の集中領域が前記横軸の中央線上に配置され、及び/又は、前記引き上げる力の集中領域が前記基部材の中央50%に配置されることを特徴としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】開いた状態の先行技術のカテーテル固定装置の図である。
図2】カテーテルを固定している閉じた状態の、図1の先行技術のカテーテル装置の図である。
図3】開いた状態の本発明のオフセットされたカテーテル固定装置の実施形態の図である。
図4】カテーテルを固定している閉じた状態の、図3のオフセットされたカテーテル固定装置の図である。
図5】基部材の端部に集中する引き上げる力を示す、図2の先行技術のカテーテル装置の縦断面図である。
図6】基部材の中央部に集中する引き上げる力を示す、図4の実施形態の縦断面図である。
図7】基部材が患者の皮膚から分離するような剥離効果をもたらす、基部材の端部に集中する引き上げる力を示す、図2の先行技術のカテーテル装置の縦断面図である。
図8】基部材が患者の皮膚から分離しないようなテント状に引き上げる効果をもたらす、基部材の中央部に集中する引き上げる力を示す、図4の先行技術のカテーテル装置の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に図面を参照しながら、本発明の最良の形態及び好ましい実施形態について詳細に記載する。一般的に、本発明は、硬膜外カテーテル又は同様の小さい可撓性チューブ部材を経皮的に挿入された患者の皮膚に付着するカテーテル固定装置であって、この固定装置は、カテーテルの挿入位置近傍での移動又は意図しない取り外しを防止又は低減するために、カテーテルチューブ又は筐体を固定及び抑制するように働く。固定装置は、一般的に、患者の皮膚に付着可能な可撓性の薄いシート状の基部材と、カテーテルを基部材に固定する解放可能な可撓性の薄いシート状の保持部材とを有し、保持部材はオフセットされて基部材に取り付けられる。
【0011】
本明細書中で、「カテーテル」という用語は、カテーテルハブ又は筐体部材と組み合わさった単一のチューブ部材又は複数のチューブを含む。「近位」という用語は、カテーテル固定装置からカテーテルの挿入位置に向かう方向を表し、「遠位」という用語は、挿入位置とは反対側でカテーテル固定部材から離れる方向を表すので、例えば、「近位チューブ」という用語は、挿入位置と固定位置との間に延在するチューブを表し、「遠位チューブ」という用語は、挿入位置とは反対側で固定装置から延在するチューブを表す。「近位端」という用語は、カテーテル固定装置のうち挿入位置に面する側を表し、「遠位端」という用語は、カテーテル固定装置のうち挿入位置から離れるほうの側を表す。装置が使用中である場合、固定装置に対するカテーテルの位置は、一般的に、カテーテルの「軸」又は「軸方向」を画定し、「横軸の」という用語は、軸方向に略平行な方向、つまり、装置の幅を画定し、「縦軸の」という用語は、横軸の方向に直角な方向を画定する。「横軸の中央線」という用語は、装置が使用中である場合、カテーテルの軸と略平行及び略縦一直線に配置される線を画定し、好ましくは、寸法的に正確に中心に配置される基部材及び保持部材の中央線として配置される。「中央部」又は「内部」という用語は、基部材の外縁から離れた位置を表す。「引き上げる力の集中領域」という用語は、患者の皮膚と直角をなす方向に(つまり、垂直に)遠位チューブを引っ張ることで生じる引き上げる力が、最初に集中する又はカテーテル固定装置の基部材に伝達する点又は狭い領域を表す。
【0012】
先行技術のカテーテル固定装置110の例示的な実施形態が、図1、2、5、及び7に示されており、これらは、カテーテル固定装置110が、基部材111と、解放可能な保持部材121とを備えることを示している。基部材111は、可撓性の薄いシート状の部材であって、粘着性の裏面を有し、好ましくは全体的に「犬用の骨」の形状に延びており、近位端112と遠位端113とを有し、どちらも好ましくは凹状であり、さらに二つの末端114を有し、これらの端部は好ましくは丸みをおびている。基部材111及び保持部材121は、横軸の方向のほうが縦軸の方向よりも短い。保持部材121は、可撓性の薄いシート状のストラップ状又はフラップ状部材であって、基部材111に固定される固定末端124と、自由末端125とを有し、保持部材121はまた、凹状の近位端122と遠位端123とを有する「犬用の骨」の形状として示されている。解放可能な締結機構又はシステム151が提供され、適切な面ファスナのフック部152とループ部153とを備えるように示されている。任意の接着層154が、カテーテル130をより確実に固定するために、示されているように、基部材111の上面及び/又は保持部材の下面に設けられてもよい。図示されているように、カテーテル130は、近位(挿入)チューブ部材132と複数の遠位(付属的な接続)チューブ部材133とを有する筐体又はハブ131として実施される。横軸の中央線142が、横方向に中央に配置されて示されている。引き上げる力の集中領域141が、基部材111に対する保持部材121の緩みのなさに応じて、保持部材の遠位端123に位置する又はその近傍の点又は領域に生じ、引き上げる力143が遠位チューブ部材133に加えられる。基部材111の横軸の幅が、保持部材121の横軸の幅と実質的に等しいため、横軸の中央線142に位置する遠位端113及び123が並ぶ。これによって、図2及び5に示されているように、引き上げる力の集中領域141が基部材111の遠位端113に位置する又は隣接する位置においても生じ、図7に示されているように、引き上げる力143が遠位チューブ部材133に加えられる場合、遠位端113を引き上げることになり、これにより剥離効果が生じ、基部材111が患者の皮膚143から剥離されやすくなる。
【0013】
[実施例]
図3、4、6及び8の実施形態に示されているように、カテーテル筐体31と、近位チューブ部材32と、複数の遠位チューブ部材33とを備えるカテーテル30を患者の皮膚43に固定するための改良されたカテーテル固定装置10を提供することによって、本発明はこの問題を解決する。図示されているように、カテーテル固定装置10は、患者の皮膚43に接着によって付着されるように適合されており、装置は、薄い可撓性のシート状の基部材11であって、上面16と下面17とを有し、基部材11を患者の皮膚43に直接付着させるために、基部材11の下面17上に既知の方法で下方の接着層54が配置される基部材11と、解放可能な薄い可撓性のシート状のカテーテル保持部材21であって、フラップ又はストラップの形式であり、基部材11の上面16に取り付けられ、固定末端24と解放可能な自由末端25とを有する解放可能な保持部材21とを備える。或いは、好ましくはないが、保持部材21の両末端部が、基部材11に解放可能に付着され得る。固定末端24は、接着、縫い合わせ、溶融接着、及び面ファスナ等の適切な既知の方法で基部材11の上面16に固定される。保持部材21がカテーテル30を超えて緩みなく引っ張られる場合、保持部材21を基部材11上に確実に保持し、カテーテル30が望ましくない移動をすることを防止するために、感圧接着剤、及び面ファスナ機構等の解放可能な締結機構又は系51が提供される。この実施形態に示されているように、解放可能な締結機構51は、フック部52とループ部53との解放可能な組合せを備える面ファスナである。
【0014】
基部材11は、近位端12と、遠位端13と、一組の末端14と、(最も好ましくは横方向に中央に配置される)横軸の中央線42aとを備える。基部材11は、近位端12と、遠位端13と、一組の末端14とによって画定される周縁15を有する。保持部材21は、近位端22と、遠位端23と、横軸の中央線42bとを備えており、それらは、保持部材21がカテーテル30上で閉じられ、基部材11に固定されたとき、横軸の中央線42aと42bとが重なり、略縦一直線に並ぶようになっている。保持部材21も、近位端22と、遠位端23と、自由末端25と、固定末端24とによって画定される周縁27を有する。見て分かるように、例えば、図4では、基部材11の周縁15は、保持部材21の周縁27よりも大きい。保持部材21の遠位端23は、好ましくは固定装置10の縦の全長にわたって、ただし少なくとも遠位チューブ部材33の位置に対応する領域、つまり、カテーテル30の位置によって画定される横軸の中央線42の領域において、基部材11の遠位端13からオフセットされて配置される。横軸の中央線42は、使用中、カテーテル30の軸の位置によって配置及び画定される。固定装置及びカテーテル30は、保持部材21がカテーテル30を越えて固定される場合、基部材の横軸の中央線42a及び保持部材の横軸の中央線42bが、カテーテル30の軸の位置によって画定される主要な横軸の中央線42と略縦一直線に並ぶように配置される。好ましくは、保持部材21及び基部材11は、より小さい保持部材21がより大きい基部材21に対してオフセットされて重なり、それにより、少なくとも横軸の中央線42上の保持部材21の遠位端23の一部分が、基部材11の中央部28にわたって又は基部材11の内部に配置され、基部材11の遠位端13から離間されるような大きさに作られ及び配置され、それにより基部材11の遠位端13が、保持部材21よりも遠位方向により遠くに延在する。
【0015】
基部材11は、好ましくは、横軸の中央線の寸法よりも長い縦軸の中央線の寸法を有するように構成され、さらに好ましくは、横軸の中央線42aの両側に隣接する基部材11の横軸の幅が、横軸の中央線42aから離れるにつれて累進的に増大し、基部材11の末端14が丸みをおびている点に至り、凹状の近位端22及び遠位端23を形成するように、「犬用の骨」又は「蝶ネクタイ」の形状に設けられる。好ましくは、保持部材21は、同様に構成されるが、全体的により小さい。基部材11の周縁15及び保持部材21の周縁27は、他の形状でもあり得る。例えば、代替として、横軸の中央線42b上に位置する又は隣接する保持部材21の遠位端23の短い区分、つまり、使用中に遠位チューブ部材33上に存在する区分は、凹状であったり、V字に切込みを入れてあったり、ギザギザに切込みを入れてあったりしてもよい一方で、遠位端23の残りの部分が基部材11の遠位端13に向かって又はそこまで延在する。
【0016】
横軸の中央線42bの領域に位置する保持部材21の遠位端23の位置は、遠位チューブ部材33が、固定装置10及び患者の皮膚43から略直角に引っ張られる場合、引き上げる力45の集中点を表す引き上げる力の集中領域41を画定する。遠位チューブ部材33を引き上げる力45は、保持部材21の遠位端23によって妨げられて制限され、それにより、引き上げる力45は、この引き上げる力の集中領域41に位置する基部材11及び患者の皮膚43へと下方に伝達される。図5及び7に示されているように、保持部材121の遠位端123が、基部材111の遠位端113に隣接する又は重なる先行技術の装置では、引き上げる力の集中領域141は、基部材111の遠位端113の位置又は隣接した位置にある。この状況では、遠位チューブ部材133が上向きに引っ張られる場合、引き上げる力143は、剥離効果を生じる、遠位端113に集中する端部を引き上げる力143になる。端部を引き上げる力143が、基部材の接着力を上回る場合、基部材111は患者の皮膚143から剥離される。
【0017】
図6及び8に示されているように、保持部材の遠位端23を基部材の遠位端13からオフセットさせることによって、引き上げる力の集中領域41は、基部材11の中央部28又は内部に移動し、これにより遠位チューブ部材33を引っ張ると、基部材11にわたる及びその内部の引き上げる力45は360度分散される。この構成によって、引き上げる力45は、基部材11及び下にある皮膚43をテント状又は円錐状に引き上げる効果をもたらし、基部材11の内部において皮膚43から基部材11を分離するためには、その端部において皮膚から基部材11を剥離する場合よりも、かなり大きな力45が必要になるため、基部材11を脱接着する可能性が大幅に低減する。
【0018】
上記のように、「犬用の骨」の形状が、実際には優れた結果をもたらすことが分かっているが、引き上げる力の集中領域41が基部材11の中央部28内に配置され、それにより引き上げる力45が基部材11の中央部28の周りに放射状に分散するように、横軸の中央線42に位置する保持部材21の遠位端23が、基部材11の遠位端13からオフセットされて配置される限りは、装置は、基部材11及び保持部材21について様々な形状を有し得る。このようにして、遠位チューブ部材33に加えられる任意の引き上げる力45は、基部材11に対して、剥離効果ではなく、「テント状」又は「円錐状」に引き上げる効果をもたらし、患者の皮膚43からの分離が起こる前に持ち堪えられる引張力を大幅に増大する。
【0019】
個々の寸法は様々でもよいが、装置の構成要素は、引き上げる力の集中領域41が、横軸の中央線42に沿って基部材11の中央50%において中央に配置されるように、つまり、横軸の中央線42の幅が2インチの基部材11では、横軸の中央線42上の保持部材の遠位端23は、基部材の遠位端13から、約1/4インチから約3/4インチ離れた位置に配置されるように構成される及びそのような大きさに作られることが好ましい。より好ましくは、引き上げる力の集中領域41は、さらに中央に配置され、上記の2インチ幅の例では、保持部材の遠位端23は、基部材の遠位端13から、約1/4インチから約1/2インチ離れた位置に配置される。カテーテル30が、カテーテル固定装置10内によりしっかりと固定される、つまり、保持部材21が基部材11により緩みなく固定されるほど、引き上げる力の集中領域41の真ん中は、保持部材21の遠位端23により近づく。より緩く固定すると、引き上げる力の集中領域41の真ん中は、遠位端23から少し移動する。
【0020】
上記の構成要素及び構成の均等物及び変更例は、特許性のために必要でない限り限定を意図せず、当業者にとって自明であり、よって本発明の真の範囲及び定義が下記の特許請求の範囲に定められることが理解される。
【符号の説明】
【0021】
10 カテーテル固定装置
11 基部材
12 近位端
13 遠位端
14 端部
15 周縁
16 上面
17 下面
21 保持部材
22 近位端
23 遠位端
24 固定端
25 自由端
28 中央部
30 カテーテル
31 カテーテル筐体
32 近位チューブ部材
33 遠位チューブ部材
42 中央線
51 締結機構
52 フック部
53 ループ部
54 接着層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8