特許第6739160号(P6739160)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6739160インピーダンス測定装置およびインピーダンス測定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6739160
(24)【登録日】2020年7月27日
(45)【発行日】2020年8月12日
(54)【発明の名称】インピーダンス測定装置およびインピーダンス測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01R 27/02 20060101AFI20200730BHJP
【FI】
   G01R27/02 A
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-214019(P2015-214019)
(22)【出願日】2015年10月30日
(65)【公開番号】特開2017-83379(P2017-83379A)
(43)【公開日】2017年5月18日
【審査請求日】2018年9月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000227180
【氏名又は名称】日置電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000121
【氏名又は名称】アイアット国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】飯島 淳司
【審査官】 小川 浩史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−6144(JP,A)
【文献】 特開2012−150025(JP,A)
【文献】 特開平7−111605(JP,A)
【文献】 特開平1−214214(JP,A)
【文献】 特開平11−194156(JP,A)
【文献】 特開2007−132806(JP,A)
【文献】 特開2008−175687(JP,A)
【文献】 特許第6616987(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 27/00−27/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象の試料に所定周波数の測定信号を供給する交流供給部と、
前記測定信号に同期する基準信号を生成する基準信号生成部と、
前記試料に現れる検出信号を前記基準信号で同期検波する同期検波部と、
前記同期検波部の出力に並列に接続された応答速度および減衰量が異なる複数のローパスフィルタと、
前記複数のローパスフィルタのうちのいずれか一つを選択する選択手段と、
前記選択手段の出力により測定値を算出する演算手段と
を備え、
前記選択手段は、応答速度が速く減衰量が小さい前記ローパスフィルタから順に選択し、
前記演算手段は、選択した前記ローパスフィルタの出力による測定値が安定していない場合は、次の前記ローパスフィルタに切り替え、測定値が安定している場合は、測定を終了させる手段を備える
ことを特徴とするインピーダンス測定装置。
【請求項2】
測定対象の試料に所定周波数の測定信号を供給し、前記試料に現れる検出信号を同期検波部で前記測定信号に同期する基準信号で同期検波し、同期検波された信号の直流成分をローパスフィルタによって抽出して前記試料の交流インピーダンスを測定するインピーダンス測定方法であって、
測定対象の試料に所定周波数の測定信号を供給するステップと、
前記測定信号に同期する基準信号を生成するステップと、
前記試料に現れる検出信号を前記基準信号で同期検波するステップと
記同期検波された信号を並列に接続された応答速度および減衰量が異なる複数のローパスフィルタを通過させるステップと、
前記複数のローパスフィルタのうちのいずれか一つを選択するステップと、
前記選択するステップにより選択された前記ローパスフィルタの出力により測定値を算出する演算ステップと
を有し、
前記選択ステップは、応答速度が速く減衰量が小さい前記ローパスフィルタから順に選択し、
前記演算ステップは、選択した前記ローパスフィルタの出力による測定値が安定していない場合は、次の前記ローパスフィルタに切り替え、測定値が安定している場合は、測定を終了させる
ことを特徴とするインピーダンス測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インピーダンス測定装置およびインピーダンス測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電気回路を構成する素子がもつ内部インピーダンスを測定する方法として、測定対象である試料に交流信号を与えてその電気応答を測定する交流インピーダンス測定法がある。この方法では、試料がもつ抵抗成分、キャパシタンス成分、インダクタンス成分の大きさを調べることができる。また、それらの成分が試料内でどのような等価回路を構成しているか、あるいは、その等価回路のパラメータを求めることができる。
【0003】
このようなインピーダンス測定法として、定電流源から試料に正弦波の測定交流電流を供給し、試料に現れる電圧信号を、供給する測定交流電流に同期する同一周波数の基準信号(または参照信号ともいう)で同期検波することで、試料に現れるノイズ成分の影響を小さくする同期検波を用いたインピーダンス測定方法がある。
同期検波によるインピーダンス測定装置については、以下の先行技術文献がある。
【0004】
以下同期検波によるインピーダンス測定を説明する。
測定交流電流は、定電流源から、試料(例えば、内部抵抗をもつ電池)に供給される。測定交流電流の電流値を検出するための検出用の抵抗(電流検出用抵抗)は、定電流源、試料に直列に挿入されている。測定交流電流に応じて試料に現れた検出信号(電圧信号)を増幅する第1増幅器と、電流検出用抵抗で検出された電圧信号を増幅する第2増幅器を備え、第1増幅器で増幅された電圧検出信号は、測定周波数を通過させるバンドパスフィルタ(Band Pass Filter:BPF)を通して同期検波器に入力される。また、測定交流電流に同期する基準信号は第2増幅器で増幅され同期検波器に入力される。同期検波器は、電圧検出信号を基準信号で同期検波し、その検波出力は、交流成分を除去するためのローパスフィルタ(Low−Pass Filter:LPF)に入力され交流成分が除去されて、アナログデジタルコンバータ(Analog to Digital Converter:ADC)に入力される。アナログデジタルコンバータは、同期検波出力をデジタル信号に変換する。変換されたデジタル信号は、演算装置に入力され、試料の交流インピーダンス値、等価回路のパラメメータ等が演算され、これらの値は表示装置等に表示され、あるいはプリントされて出力される。
【0005】
このように、試料の両端の電圧検出信号を測定交流電流と同位相の基準信号で同期検波し、ローパスフィルタにより交流成分を除去することにより、直流成分のみが抽出されるので、電池など純抵抗以外の成分を含む測定対象の試料の実効インピーダンスを求めることができる。また、同期検波で現れた交流成分はローパスフィルタで除去されるため、交流であるノイズの影響を除去でき、ノイズに埋もれた微小信号を取り出すことが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−132806号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
測定対象となる試料は、電気回路を構成する要素であるため、ノイズが重畳されるものがあり、そのノイズがインピーダンス測定に影響を与える。例えば、UPS(無停電電源装置:Uninterruptible Power Supply)に装備されているバッテリを測定試料とする場合である。UPSは、常時稼働している必要があるため、インバータやコンバータが稼働して充電あるいは放電を行っている。このため、インバータやコンバータから生ずるノイズがバッテリに印加されていることが多い。また、負荷が接続されているため、負荷側からもノイズが入り込むことが多い。このように、UPSのバッテリを試料としてインピーダンス測定しようとすると、測定交流電流が印加された試料からノイズ成分を検出することになる。
【0008】
しかしながら、測定交流電流と同位相の基準信号を用いて同期検波を行い、ローパスフィルタで交流成分を除去してもノイズを取りきることができない場合がある。
【0009】
例えば、図5に示すような周波数特性を有するローパスフィルタでは、X(Hz)以上の周波数についてはノイズを取り除くことができるが、XHz未満の周波数はほとんど除去できない。
このように、ノイズが測定周波数(例えば図5ではX(Hz))に近い周波数のノイズである場合には、その周波数に対する減衰量がほとんどないような減衰特性を有するローパスフィルタでは、すべてのノイズを除去することは難しい。
【0010】
このため、ノイズが検出信号に入り込むと測定誤差が生じ、また、測定したインピーダンス値もばらつきが生ずるので、測定値が安定しないという問題が生ずる。
【0011】
本発明は、ノイズがいかなる周波数成分を有していたとしてもノイズ成分から生ずる影響を抑制して、安定した測定値をより速く取得できるインピーダンス測定装置および測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明の第1の観点によると、測定対象の試料に所定周波数の測定信号を供給する交流供給部と、測定信号に同期する基準信号を生成する基準信号生成部と、試料に現れる検出信号を基準信号で同期検波する同期検波部と、同期検波部の出力に並列に接続された応答速度および減衰量が異なる複数のローパスフィルタと、複数のローパスフィルタのうちのいずれか一つを選択する選択手段と、選択手段の出力により測定値を算出する演算手段とを備え、選択手段は、応答速度が速く減衰量が小さい前記ローパスフィルタから順に選択し、演算手段は、選択したローパスフィルタの出力による測定値が安定していない場合は、次のローパスフィルタに切り替え、測定値が安定している場合は、測定を終了させる手段を備えることを特徴とするインピーダンス測定装置が提供される。
【0015】
本発明の他の観点によると、測定対象の試料に所定周波数の測定信号を供給し、試料に現れる検出信号を同期検波部で測定信号に同期する基準信号で同期検波し、同期検波された信号の直流成分をローパスフィルタによって抽出して試料の交流インピーダンスを測定するインピーダンス測定方法であって、測定対象の試料に所定周波数の測定信号を供給するステップと、測定信号に同期する基準信号を生成するステップと、試料に現れる検出信号を基準信号で同期検波するステップと、同期検波された信号を並列に接続された応答速度および減衰量が異なる複数のローパスフィルタを通過させるステップと、複数のローパスフィルタのうちのいずれか一つを選択するステップと、選択するステップにより選択されたローパスフィルタの出力により測定値を算出する演算ステップとを有し、選択ステップは、応答速度が速く減衰量が小さいローパスフィルタから順に選択し、演算ステップは、選択したローパスフィルタの出力による測定値が安定していない場合は、次のローパスフィルタに切り替え、測定値が安定している場合は、測定を終了させることを特徴とするインピーダンス測定方法が提供される。
【発明の効果】
【0017】
ノイズがいかなる周波数成分を有していたとしてもノイズ成分から生ずる影響を抑制して、安定した測定値をより速く取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施の形態に係る同期検波によるインピーダンス測定装置の構成を示す図である。
図2】3種類のローパスフィルタ(LPF)の応答特性を示した図である。
図3】3種類のローパスフィルタ(LPF)の減衰特性を示した図である。
図4】選択処理によりノイズに影響されない範囲が広がる効果を説明するための図である。
図5】ローパスフィルタの周波数特性例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。図1は、本発明の一実施の形態に係る同期検波によるインピーダンス測定装置の構成を示す図である。インピーダンス測定装置1は、定電流源10、増幅器15,16、バンドパスフィルタ(BPF)17、同期検波器20、複数のローパスフィルタ(LPF)22−1,22−2,・・・22−n、アナログデジタルコンバータ(ADC)23を備えて構成されている。なお、定電流源10は請求項1の交流供給部に相当し、同期検波器20は請求項1の同期検波部に相当する。
【0020】
定電流源10は一対の出力端子(図示せず)を介して測定対象の試料(DUT)11に接続されている。本実施の形態では、試料11は、電池であり、内部抵抗としてRをもつ。定電流源10と試料11の間には電流検出用抵抗Rが挿入(接続)され、試料11の検出信号は、増幅器15を介して測定周波数を通過させるバンドパスフィルタ(BPF)17に入力される。なお、電流検出用抵抗Rは請求項1の基準信号生成部に相当する。
【0021】
増幅器15は定電流源10から供給される測定交流電流iに応じて試料11に現れた検出信号(電圧信号)を増幅し、増幅器16は電流検出用抵抗Rsで検出された電圧信号を増幅する。増幅器15で増幅された電圧検出信号vは、測定周波数を通過させるバンドパスフィルタ(BPF)17を介して同期検波器20に入力される。また、測定交流電流iに同期する基準信号vは増幅器16で増幅され同期検波器20に入力される。
【0022】
バンドパスフィルタ(BPF)17の出力部は、同期検波器20の入力部に接続され、バンドパスフィルタ(BPF)17の出力は同期検波器20に入力される。電流検出用抵抗Rsは、増幅器16に接続され、増幅器16の出力部は、同期検波器20の入力部に接続され、増幅器16の出力は同期検波器20に入力される。
【0023】
同期検波器20の出力部はローパスフィルタ(LPF)22−1,22−2,・・・22−nの入力部に接続される。同期検波器20は、電圧検出信号vを基準信号vで同期検波し、その検波出力は、交流成分を除去するためのローパスフィルタ(LPF)22−1,22−2,・・・22−nに入力される。
【0024】
ローパスフィルタ22−1,22−2,・・・22−nの出力部は、SW1を介してアナログデジタルコンバータ(ADC)23に接続され、ローパスフィルタ22−1,22−2,・・・22−nの出力VAD1,VAD2,・・・VADnは、SW1を介してアナログデジタルコンバータ(ADC)23に入力される。なお、ローパスフィルタ22−1,22−2,・・・22−nは互いに並列に接続されている。なお、SW1は請求項1の選択手段に相当する。
【0025】
各ローパスフィルタ(LPF)22−1,22−2,・・・22−nにおいてフィルタ処理(交流成分除去)は並列で行われ、その出力は後述する所定のルールに基づいて選択出力され、選択された出力はアナログデジタルコンバータ(ADC)23に入力される。アナログデジタルコンバータ23は、同期検波出力をデジタル信号に変換する。変換されたデジタル信号は、図示されない演算装置に入力され、試料11の交流インピーダンス値、等価回路のパラメータ等が演算され、これらの値は、図示されない表示装置等に表示され、あるいはプリントされて出力される。
【0026】
ここで、ローパスフィルタ(LPF)22−1,22−2,・・・22−nは、それぞれ応答特性、減衰特性が異なっている。応答特性とはローパスフィルタ(LPF)22−1,22−2,・・・22−nに入力を与えた場合,その時間的変化に応じ,指針の振れなどの出力が時間的に変化する性質をいう。例えば応答特性がよいとは、出力が100%になるまでの応答時間が短い場合をいう。減衰特性とはカットオフ周波数よりも低い周波数を通し、それより高い周波数を通さないという性質をいう。後述する図3の示すように減衰傾度が減衰特性を表す。
【0027】
次に図1のインピーダンス測定装置におけるインピーダンス測定動作を説明する。定電流源10からは、測定交流電流として、i=Isin(ωt)の正弦波が試料11に印加される。試料11の両端には、電池の内部抵抗Rに対応した電圧が発生し、その電圧は増幅器15で増幅されてv=iRとして出力される。また、増幅器16からは、電流検出用抵抗Rに対応したv=iRsが出力され、同期検波器20で同期検波される。ここで、v、vは、
=Vsin(ωt)=IRsin(ωt)
=iRs=IRsin(ωt)=ksin(ωt)
である。なお、kは定数とする(IとRsは一定であるとする)
【0028】
同期検波出力は、
×v=kIRsin(ωt)sin(ωt)
=1/2・kIR[cos(0)−cos(2ωt)]
となる。
【0029】
この同期検波出力は、減衰特性(カットオフ周波数、減衰量)、応答特性(応答時間)の異なるローパスフィルタ(LPF)22−1,22−2,・・・22−nに入力される。最初は、スイッチSW1によってローパスフィルタ(LPF)22−1が選択される。即ち、スイッチSW1でローパスフィルタ(LPF)22−1の出力VAD1が選択され、所定の交流成分が遮断された出力がアナログデジタルコンバータ23に入力される。
【0030】
アナログデジタルコンバータ23の入力は、
AD=1/2・kIRcos(0)=1/2・kIR
となり、これにより、測定値である試料の内部抵抗の抵抗値Rxは、
=2/k・(VAD/I)
により求めることができる。
【0031】
ここで、求めた測定値がノイズの影響で安定しない場合には、スイッチSW1でローパスフィルタ(LPF)22−2に切り換える。それでもノイズの影響で測定値が安定しない場合には、スイッチSW1でローパスフィルタ(LPF)22−3に切り換える。このように測定値が安定するまでスイッチSW1でローパスフィルタ(LPF)を順に切り換える。そして、順次、定電流源10からの測定周波数を変え、上記した処理を繰り返す。
【0032】
次に、図2及び図3を参照してローパスフィルタ(LPF)の切り換え動作について詳細に説明する。測定値の算出において、測定値の出力が安定し、しかも測定時間を短くするために上記したローパスフィルタ(LPF)の選択(切り換え)をどのように行うのかについて図2及び図3を参照して具体的に説明する。図2は3種類のローパスフィルタ(LPF)の応答特性を示した図である。図3は3種類のローパスフィルタ(LPF)の減衰特性を示した図である。
【0033】
ローパスフィルタ(1),(2),(3)の応答特性については、図2に示すようにローパスフィルタ(1)の応答時間が一番速く、ローパスフィルタ(3)の応答時間が一番遅い。ローパスフィルタ(1),(2),(3)の減衰特性については、図3に示すようにローパスフィルタ(1)の減衰量が一番小さく、ローパスフィルタ(3)の減衰量が一番大きい。本実施の形態では、このような特性を有するローパスフィルタを3種類用意した。
【0034】
最初に所定の測定周波数を選び、スイッチSW1でローパスフィルタ(1)を選択する。ローパスフィルタ(1)は図2及び図3に示すように応答速度が最も速く、減衰量が最も小さいローパスフィルタである。そして得られた測定値が安定していた場合にはここでその測定周波数におけるインピーダンス測定は終了する。
【0035】
しかし、得られた測定値が安定していない場合には、スイッチSW1でローパスフィルタ(2)を選択(切り換え)する。ローパスフィルタ(2)は図2及び図3に示すように応答速度がローパスフィルタ(1)よりも遅く、減衰量もローパスフィルタ(1)よりも大きい。そして得られた測定値が安定していた場合にはここでその測定周波数におけるインピーダンス測定は終了する。
しかし、得られた測定値が安定していない場合には、スイッチSW1でローパスフィルタ(3)を選択(切り換え)する。ローパスフィルタ(3)は図2及び図3に示すように応答速度がローパスフィルタ(2)よりも遅く、減衰量もローパスフィルタ(2)よりも大きい。そして得られた測定値が安定していた場合にはここでその測定周波数におけるインピーダンス測定は終了する。
【0036】
上記した例では3種類のローパスフィルタを用いた例であるが、さらに異なる特性をもつローパスフィルタを用意して行えば、3種類の場合に比較してより安定した測定値をできる限り速く算出することができる。なお、ローパスフィルタの数は、安定性と測定時間のバランスを考慮して決定するのが好ましい。
【0037】
また、ローパスフィルタの選択(切り換え)については、上記した実施の形態ではローパスフィルタ(1),(2),(3)の順に切り替えたが、図示されない演算装置内のメモリに記憶された順番にしたがって行うこともできるし、図示されない表示装置に表示された測定値に応じて手動で切り換えるようにしてもよい。
【0038】
(本発明による効果)
本発明では、複数の異なる特性(応答特性、減衰特性)を有するローパスフィルタを並列に動作させた上で、ローパスフィルタの切り換えを、ノイズの影響が最も受けにくく、かつ応答速度が最も速いローパスフィルタが見つかるまで行っているので、最もノイズの影響のない安定した測定値が速くに得られる。例えば、負荷電流や充電電流が流れていない電池のようにノイズの影響が少ないような場合には、上記した図2及び図3の例でいうとローパスフィルタ(1)が選択され測定後に実施した測定周波数におけるインピーダンス測定は終了する。
【0039】
つまり、ノイズの影響の少ない試料であってもノイズの影響の大きい試料、例えばUPSのバッテリなど、検出信号にノイズが重畳しているような試料における測定であっても、最も早い応答速度で、かつ減衰量の最も少ないローパスフィルタが選択されるので、ノイズの影響の少ない安定的なインピーダンスの測定値がより速く求められる。
【0040】
また、図4を参照して本発明による他の効果について述べる。所定の測定周波数が例えばY(Hz)であって図4に示すようなノイズが現れており、Y(Hz)の測定周波数でインピーダンス測定をする場合に、ノイズの影響を受ける範囲はその測定周波数から左右a(Hz)までの範囲である。この場合左右a(Hz)までの範囲にあるノイズは上記した選択(切り換え)処理によって減衰するので、ノイズに影響されない範囲を広げることができる(ノイズに影響されない範囲が広がる)。
【0041】
上記した実施の形態は、定電流源10から試料11に交流定電流を供給してインピーダンスを測定する例で説明したが、電圧によるインピーダンス測定も可能である。たとえば、電圧源から試料に交流定電圧を供給して同期検波によりインピーダンスを測定するものでもよい。測定対象が電池の場合には、定電流によりインピーダンス測定を行うことが好ましいが、例えば、電気回路に組み込まれてノイズが現れる可能性のあるコンデンサの場合には、交流定電圧によるインピーダンス測定でもよい。
【0042】
以上、本発明の一実施の形態について説明したが、本発明は上記した実施の形態に限定されることはなく、これ以外にも種々変形可能である。
【符号の説明】
【0043】
10 定電流源
11 試料(DUT)
15、16 増幅器
17 バンドパスフィルタ(BPF)
20 同期検波器
22-1、22−2、・・・・、22−n ローパスフィルタ(LPF)
23 アナログデジタルコンバータ(ADC)
Rs 電流検出用抵抗
SW1 スイッチ
図1
図2
図3
図4
図5