特許第6739162号(P6739162)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6739162
(24)【登録日】2020年7月27日
(45)【発行日】2020年8月12日
(54)【発明の名称】切断装置
(51)【国際特許分類】
   B23D 15/04 20060101AFI20200730BHJP
   B23D 33/00 20060101ALI20200730BHJP
   B26D 1/08 20060101ALN20200730BHJP
【FI】
   B23D15/04
   B23D33/00 A
   !B26D1/08
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-224485(P2015-224485)
(22)【出願日】2015年11月17日
(65)【公開番号】特開2017-87397(P2017-87397A)
(43)【公開日】2017年5月25日
【審査請求日】2018年10月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】502182008
【氏名又は名称】エムエスシー製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090413
【弁理士】
【氏名又は名称】梶原 康稔
(74)【代理人】
【識別番号】100195028
【弁理士】
【氏名又は名称】高久 由紀子
(72)【発明者】
【氏名】徳勝 賢治
【審査官】 村上 哲
(56)【参考文献】
【文献】 実開平02−097595(JP,U)
【文献】 特開2007−125666(JP,A)
【文献】 実開平04−128117(JP,U)
【文献】 特開昭63−229215(JP,A)
【文献】 特開2011−079133(JP,A)
【文献】 独国特許出願公開第102010034023(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23D 15/04
B23D 33/00
B26D 1/08
WPI
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースフレームとサブフレームの間に、該ベースフレーム及びサブフレームに対して摺動かつ搖動可能にラムが配置されており、前記ベースフレームに固定された固定刃と、前記ラムに固定された動刃との間に対象物を挟んで切断する切断装置であって、
前記ベースフレームの上端側に前記固定刃が埋め込み固定されており、
前記ラム及び前記サブフレームは、前記ベースフレームの上端よりも上方に突出した部分を有するとともに、前記対象物を通すための開口部がそれぞれ設けられており、
該ラムの開口部の上端側であって、前記ベースフレーム側に、前記動刃が埋め込み固定されており、
前記サブフレームには、前記ラムの開口部と連通する開口部が設けられており、
前記固定刃と、前記動刃の駆動機構を前記対象物の下方に配置することで、
前記対象物の切断位置を、前記動刃の上方から目視可能としたことを特徴とする切断装置。
【請求項2】
前記対象物を挟んで、前記動刃とその駆動機構を反対側に配置したことを特徴とする請求項1記載の切断装置。
【請求項3】
前記ラムを摺動かつ揺動しても、該ラムの上端が前記ベースフレームの上端を越えないように、前記ラムの上端を設定したことを特徴とする請求項1又は2記載の切断装置。
【請求項4】
前記固定刃と動刃による対象物の切断位置に、該対象物以外のものの侵入を防止する保護手段を設けたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の切断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、フープ材や銘板用のプレートなどを切断するための切断装置に関し、更に具体的には、切断位置の可視化に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、スクラップフープ材を切断するための装置としては、例えば、下記特許文献1に記載の技術がある。当該特許文献1は、ベースフレームとサブフレームとの間を摺動しつつ往復動するラムに固定した動刃と、ベースフレームに固定した固定刃との間にてフープ材を切断するものであって、前記ベースフレームとサブフレームとの間にラムが摺動しうる間隔を保つスペーサを設けた構造となっている。このように、動刃が固定刃に対して搖動的に駆動するウェイビングカットは、材厚によるクリアランス調整が不要であり、上述したフープ材のほか、薄い紙等も容易に切断でき、その切断面もなめらかである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−79133号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した背景技術では、例えば、同文献の第1図に示すように、切断対象(フープ材6)に対して動刃8が搖動的に下降して切断するが、該動刃8を駆動するための駆動機構(駆動軸4やその駆動源)が動刃8の上方に配置されている。すなわち、切断対象に対して、動刃8とその駆動機構が双方ともに上方に配置されており、固定刃10と動刃8との切断位置を確認しながら切断することができない。また、仮に、前記背景技術において、動刃とその駆動機構を切断対象の下方に配置し、固定刃を上方に配置したとすると、切断対象によって動刃が隠れてしまい、また、動刃の動きによって切断対象の位置がずれてしまうため、切断位置を正確に定めることができない。このため、銘板やネームプレートなどのように、決まった位置で切断したい対象物については、適用が困難であるという課題がある。
【0005】
本発明は、以上のような点に着目したもので、固定刃と動刃による対象物の切断位置を確認しながら、所望の位置で対象物を切断可能な切断装置を提供することを、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ベースフレームとサブフレームの間に、該ベースフレーム及びサブフレームに対して摺動かつ搖動可能にラムが配置されており、前記ベースフレームに固定された固定刃と、前記ラムに固定された動刃との間に対象物を挟んで切断する切断装置であって、
前記ベースフレームの上端側に前記固定刃が埋め込み固定されており、
前記ラム及び前記サブフレームは、前記ベースフレームの上端よりも上方に突出した部分を有するとともに、前記対象物を通すための開口部がそれぞれ設けられており、
該ラムの開口部の上端側であって、前記ベースフレーム側に、前記動刃が埋め込み固定されており、
前記サブフレームには、前記ラムの開口部と連通する開口部が設けられており、
前記固定刃と、前記動刃の駆動機構を前記対象物の下方に配置することで、
前記対象物の切断位置を、前記動刃の上方から目視可能としたことを特徴とする。
【0007】
主要な形態の一つは、前記対象物を挟んで、前記動刃とその駆動機構を反対側に配置したことを特徴とする。
【0008】
他の形態の一つは、前記ラムを摺動かつ揺動しても、該ラムの上端が前記ベースフレームの上端を越えないように、前記ラムの上端を設定したことを特徴とする。
【0009】
更に他の形態の一つは、前記固定刃と動刃による対象物の切断位置に、該対象物以外のもの侵入を防止する保護手段を設けたことを特徴とする。本発明の前記及び他の目的,特徴,利点は、以下の詳細な説明及び添付図面から明瞭になろう。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ベースフレームに固定された固定刃と、該固定刃に対して搖動的に進退するラムに固定された動刃との間に対象物を挟んで切断する切断装置において、前記ラムに設けた開口部に前記動刃を設けるとともに、この動刃とその駆動機構と、前記対象物を挟んで反対側に配置することとしたので、動刃の進退方向から切断位置を目視により確認することができる。特に、前記動刃を対象物の上方に配置し、該動刃の駆動機構と固定刃を、前記対象物の下方に配置することで、切断位置を確認しながらの切断が可能となり、見栄えもよく、装置の安定性も増すという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施例1の断面図である。
図2】前記実施例1の装置本体部を示す図であり、(A)は前記図1を矢印F1a方向から見た背面図,(B)は前記図1を矢印F1b方向から見た正面図である。
図3】本実施例と比較例の作用を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための最良の形態を、実施例に基づいて詳細に説明する。
【実施例1】
【0013】
最初に、図1図3を参照しながら本発明の実施例1を説明する。図1は、本実施例の断面図である。図2は、本実施例の装置本体部を示す図であり、(A)は前記図1を矢印F1a方向から見た背面図,(B)は前記図1を矢印1b方向から見た正面図である。図3は、本実施例と比較例の作用を示す説明図である。本発明の切断装置は、銘板やネームプレート用の金属板の切断のほか、紙片,金属箔,スクラップ材等の切断に広く用いられるものである。これらの切断対象物を、以下「対象物」という。
【0014】
図1図3に示すように、本実施例の切断装置10は、ベースフレーム20と、サブフレーム50と、ラム100とからなる装置本体部12が、図示しない固定ベースに固定されている。前記ベースフレーム20は、図1及び図2(B)に示すように、長方形の一辺側を略半円状にした形状となっており、上端22に沿って固定刃24が設けられている。該固定刃24は、刃部が上方を向くように、ボルト26によって埋め込み固定されている。また、前記ベースフレーム20の上端22には、対象物Wを載せるためのガイド板28が正面側に取り付けられている。
【0015】
また、前記ガイド板28の両端側には、図3に示すように、一対の取付板32A,32Bが取り付けられている。該取付板32A,32Bには、保護カバー34の両端側が取り付けられる。前記保護カバー34としては、前記固定刃24と後述する動刃106による切断位置を正面側からも目視できるように、例えば、透明のアクリル板等が用いられる。更に、前記ガイド板28の側端(図3(A)の例では、左端)には、切断する寸法や位置を確認するための目盛35が設けられている。該目盛35は必要に応じて設けるようにすればよい。
【0016】
前記ベースフレーム20には、図2(B)に示すように、前記固定刃24の下方に、上下方向に長い長穴36が形成されており、該長穴36に設けたガイドピン38によって、後述するラム100が連結される。なお、前記長穴36は、前記ガイドピン38が、前記ラム100の上下方向への移動量に応じて該長穴36内をスライド可能な寸法に設定されている。前記長穴36は、図示しないカバーによって覆われている。また、前記ベースフレーム20の正面側には、後述するカムシャフト86の先端が突出している。
【0017】
次に、サブフレーム50について説明する。サブフレーム50は、前記ベースフレーム20との間にラム100を挟むものである。また、本実施例では、該サブフレーム50は、前記ラム100が前記ベースフレーム20とサブフレーム50との間で摺動するための隙間を形成するためのスペーサも兼ねている。図2(A)及び(B)に示すように、サブフレーム50は、長方形の一辺側を略半円状にした形状であって、前記ベースフレーム20と重ねたときに、該ベースフレーム20よりも上方に突出するように形成されている。そして、図1及び図2(B)に示すように、外周に沿って、スペーサ部68が形成されている。また、略中央部に、前記スペーサ部68と同方向に突出した突出部70が設けられている。そして、該突出部70と前記ベースフレーム20が適宜手段で固定される。前記スペーサ部68と突出部70の高さは、後述するラム100の厚さよりも若干高くなるように設定されており、ベースフレーム20とサブフレーム50の間で、ラム100が円滑に摺動できる隙間が保たれる。このようなサブフレーム50は、適宜手段で、前記図示しない固定ベースに固定される。
【0018】
また、前記サブフレーム50の上部には、開口部54が形成されている。該開口部54は、前記固定刃24と動刃106によって切断した対象物Wの出口となるもので、図1に示すように、切断後の対象物Wの排出をガイドするための斜面56が取り付けられている。
【0019】
前記サブフレーム50の背面側の下方には、前記ラム100を搖動的に進退させるためのモータ80と減速機82が配置されている。前記減速機82の駆動軸84の外周には、図2(A)に示すように、キー84Aが設けられており、該キー84Aを介して、図1に示すようにカムシャフト86が駆動軸84に嵌合している。
【0020】
前記カムシャフト86は、図1に示すように、偏心カム88の両端部90,92が、前記駆動軸84の軸方向に伸びている。一方の端部90は、軸受94Aを介してサブフレーム50の下方に回転可能に嵌合し、前記偏心カム88は、軸受94Bを介してラム100の下方に嵌合し、他方の端部92は、軸受94Cを介してベースフレーム20の下方に回転可能に嵌合している。
【0021】
前記モータ80の駆動により、駆動軸84及びカムシャフト86を回転させると、前記偏心カム88が嵌合されたラム100が、前記ベースフレーム20とサブフレーム50に挟まされた状態で偏心駆動する。その際、前記ラム100と前記ベースフレーム20が、前記ガイドピン38によって連結され、かつ、該ガイドピン38が前記ベースフレーム20に設けた長穴36内を上下方向にスライド可能に係合している。このため、ラム100は、ガイドピン38を支点とする搖動と、前記長穴36に沿った進退が可能となり、ラム100が搖動的に進退する構成となっている。
【0022】
次に、ラム100について説明する。ラム100は、前記ベースフレーム20とサブフレーム50の間に摺動可能に設けられており、図2(B)に示すように、長方形の一端側を略半円状にした形状であって、前記ベースフレーム20と重ねたときに、該ベースフレーム20よりも上方に突出している。また、前記ラム100は、前記サブフレーム50のスペーサ部68の内側に所定の間隔(図2(B)の隙間112参照)をおいて収容可能な形状及び寸法に設定されている。図1及び図2(B)に示すように、前記ラム100の中央よりも上側には、開口104が形成されている。該開口104は、前記対象物Wをベースフレーム20側からサブフレーム50側へ通すためのものであり、前記固定刃24に対応する位置に、該固定刃24よりも若干大きく形成されている。そして、前記開口104の上方に、刃部が下方を向くように、動刃106がボルト108によって埋め込み固定される。
【0023】
このようなラム100は、前記偏心カム88の回転によって搖動的に進退可能となるように、前記ベースフレーム50のスペーサ部68との間に隙間112を有している。また、前記サブフレーム50の突出部70を通すための開口114も、図1に示すように、前記突出部70よりも大きく形成されており、偏心駆動が可能となっている。偏心カムを利用したラムの搖動的な進退動作については、例えば、上述した背景技術に示す通り公知であるため、詳細は省略する。なお、本実施例では、前記サブフレーム50とラム100が、ベースフレーム20の上端22よりも突出しているが、固定刃24と動刃106による切断位置が上方から確認できるように、突出部分の高さは適宜設定されている。
【0024】
次に、図3も参照しながら、本実施例の作用を説明する。図3(A)及び(B)に示すように、対象物Wをガイド板28に載せ、カバー34の下からラム100の開口104に対象物Wを差し込み、ラム100の上方から位置を見て調節する。そして、モータ80を駆動して偏心カム88を回転させると、その偏心作動によりラム100が搖動的に進退し、前記動刃106が固定刃24に対して搖動的に接離して、対象物Wを切断する。このとき、例えば、背景技術のように動刃の駆動機構(モータ80A等)が対象物Wの上方にあると、図3(D)に示すように、固定刃24Aと動刃106Aによる切断位置を真上から見ることができず、所望の位置で切断することができない。また、仮に、背景技術の構造を上下反転し、動刃の駆動機構を対象物Wの下側に配置したとすると、図3(C)に示すように、対象物Wによって動刃106Aが隠れてしまい、正確な位置での切断が困難である。また、対象物Wの材質によっては、動刃106Aの駆動により位置がずれてしまい、やはり正確な位置での切断が困難である。
【0025】
これに対し、本発明では、動刃106とその駆動機構(モータ80,駆動軸84,カムシャフト86等)が、対象物Wを挟んで反対側に配置されているため、動刃106の進退方向から切断位置を目視可能である。そして、本実施例では、動刃106を対象物Wの上方に配置し、前記駆動機構を対象物Wの下側に配置し、ダウンカットとしたため、対象物Wによって動刃106が隠れることもなく、また、動刃106の駆動により対象物Wが位置ずれすることもなく、正確な位置での切断が可能となる。切断された対象物Wは、斜面56を介して図示しないワーク受け口に排出される。
【0026】
このように、実施例1によれば、次のような効果がある。
(1)ベースフレーム20に固定された固定刃24と、該固定刃24に対して搖動的に進退可能なラム100に固定された動刃106との間に対象物Wを挟んで切断する切断装置10において、前記動刃106とその駆動機構を、前記対象物Wを挟んで反対側に配置することとした。このため、動刃106の進退方向から切断位置を目視により確認することができる。
(2)前記動刃106を対象物Wの上方に配置し、該動刃106の駆動機構と前記固定刃24を前記対象物Wの下方に配置し、ダウンカットすることとしたので、切断位置を上方から確認しながら所望の位置で切断が可能となる。また、重心が下方にあるため、見栄えがよく、切断装置10の安定性も増す。
【0027】
なお、本発明は、上述した実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることができる。例えば、以下のものも含まれる。
(1)前記実施例で示した形状,寸法,材質は一例であり、必要に応じて適宜変更してよい。
(2)前記実施例では、対象物Wを押える手段を設けなかったが、必要に応じて設けることを妨げるものではない。
(3)前記実施例で示した動刃106の駆動機構も一例であり、前記実施例では、偏心カム88を用いた機構としたが、他の公知の各種の搖動機構を用いるようにしてもよい。
(4)前記実施例では、切断の対象として、金属プレート等を例に挙げて説明したが、これも一例であり、本発明は、箔やラップ材など、他の公知の各種の材料の切断に適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明によれば、ベースフレームに固定された固定刃と、該固定刃に対して搖動的に進退可能なラムの開口部に固定された動刃との間に対象物を挟んで切断する際に、前記動刃とその駆動機構とを、前記対象物を挟んで反対側に配置することとした。このため、切断位置を前記動刃の進退方向から目視により確認できるため、切断装置の用途に適用できる。特に、銘板やネームプレートのように所定の位置や寸法での切断を行うための切断装置の用途に好適である。

【符号の説明】
【0029】
10:切断装置
12:装置本体部
20:ベースフレーム
22:上端
24,24A:固定刃
26:ボルト
28:ガイド板
32A,32B:取付板
34:カバー
35:目盛
36:長穴
38:ガイドピン
50:サブフレーム
54:開口部
56:斜面
68:スペーサ部
70:突出部
80,80A:モータ
82:減速機
84:駆動軸
84A:キー
86:カムシャフト
88:偏心カム
90,92:端部
94A〜94C:軸受
100:ラム
104:開口
106,106A:動刃
108:ボルト
112:隙間
114:開口部
W:対象物
図1
図2
図3