特許第6739166号(P6739166)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6739166
(24)【登録日】2020年7月27日
(45)【発行日】2020年8月12日
(54)【発明の名称】接合バリヤショットキー整流器
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/872 20060101AFI20200730BHJP
   H01L 29/861 20060101ALI20200730BHJP
   H01L 29/868 20060101ALI20200730BHJP
   H01L 29/47 20060101ALI20200730BHJP
   H01L 21/28 20060101ALI20200730BHJP
【FI】
   H01L29/86 301F
   H01L29/91 K
   H01L29/48 F
   H01L29/48 D
   H01L21/28 301B
   H01L29/86 301D
   H01L29/91 F
【請求項の数】8
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-249508(P2015-249508)
(22)【出願日】2015年12月22日
(65)【公開番号】特開2016-122842(P2016-122842A)
(43)【公開日】2016年7月7日
【審査請求日】2018年12月17日
(31)【優先権主張番号】14200282.3
(32)【優先日】2014年12月24日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】505056845
【氏名又は名称】アーベーベー・シュバイツ・アーゲー
【氏名又は名称原語表記】ABB Schweiz AG
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フリートヘルム・バウアー
(72)【発明者】
【氏名】アンドレイ・ミハイラ
【審査官】 柴垣 宙央
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−281231(JP,A)
【文献】 特開2012−182404(JP,A)
【文献】 特開2014−060460(JP,A)
【文献】 特開2013−021358(JP,A)
【文献】 特開2009−158519(JP,A)
【文献】 特開平07−226521(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/872
H01L 21/28
H01L 29/47
H01L 29/861
H01L 29/868
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
接合バリヤショットキー整流器であって、
第1の導電型を有する基板層(1)と、
第1の導電型を有するドリフト層(132A,132B)とを備え、前記ドリフト層(132A,132B)は、前記基板層(1)上にあり、前記基板層(1)よりも低いピーク総ドーピング濃度を有し、接合バリヤショットキー整流器はさらに、
前記接合バリヤショットキー整流器の第1の主側面(4)に隣接する前記ドリフト層(132A,132B)内の複数のエミッター領域(133)を備え、各エミッター領域(133)は前記第1の導電型とは異なる第2の導電型を有し、接合バリヤショットキー整流器はさらに、
前記接合バリヤショットキー整流器の前記第1の主側面(4)上のドリフト層(132A,132B)とのショットキー接触および前記エミッター領域(133)の各々とのオーミック接触を形成する第1の金属接触層(5)と、
前記第1の主側面(4)とは反対側の前記接合バリヤショットキー整流器の第2の主側面(7)上での基板層(1)とのオーミック接触を形成する第2の金属接触層(6)とを備え、
前記ドリフト層(132A,132B)は、第1のドリフト層セクション(132A)と第2のドリフト層セクション(132B)とを含み、前記第1のドリフト層セクション(132A)のピーク総ドーピング濃度は、前記第2のドリフト層セクション(132B)の最小総ドーピング濃度よりも少なくとも2倍低く、
各エミッター領域(133)について、前記第1のドリフト層セクション(132A)は、前記それぞれのエミッター領域と接触して前記第1のドリフト層セクションと前記それぞれのエミッター領域(133)との間にpn接合を形成する層セクションを含み、前記第1のドリフト層セクション(132A)と前記それぞれのエミッター領域(133)との間の界面に対して垂直な方向におけるこの層セクションの厚さは少なくとも0.1μmであり、
前記エミッター領域(133)の各々は、第1のエミッターセクション(133A)と第2のエミッターセクション(133B)とを含み、前記第2のエミッターセクション(133B)のピーク総ドーピング濃度は、前記第1のエミッターセクション(133A)のピーク総ドーピング濃度よりも少なくとも2倍高く、
各エミッター領域(133)において、前記第2のエミッターセクション(133B)は、前記第2のドリフト層セクション(132B)へ延在し、前記第1のエミッターセクション(133A)は、前記第1のドリフト層セクション(132A)によって前記第2のドリフト層セクション(132B)から分離される、接合バリヤショットキー整流器。
【請求項2】
前記第1のドリフト層セクション(132A)は、前記第1の金属接触層(5)との前記ショットキー接触を形成し、前記第1の金属接触層(5)を前記第2のドリフト層セクション(132B)から分離する、請求項1に記載の接合バリヤショットキー整流器。
【請求項3】
各エミッター領域(133)における前記第1のエミッターセクション(133A)の横側面は、前記第2のエミッターセクション(133B)によって覆われる、請求項1または2に記載の接合バリヤショットキー整流器。
【請求項4】
前記ドリフト層(132A,132B)における総ドーピング濃度は、1×1017cm−3以下、または5×1016cm−3以下、または1×1016cm−3以下である、請求項1から3のいずれか1項に記載の接合バリヤショットキー整流器。
【請求項5】
総ドーピング濃度は、前記第1のドリフト層セクション(132A)と前記第2のドリフト層セクション(132B)とを接続する薄い領域において、少なくとも20nmax(1)/μmまたは少なくとも40nmax(1)/μmの急勾配で、前記第1のドリフト層セクション(132A)における総ドーピング濃度から前記第2のドリフト層セクション(132B)における総ドーピング濃度へ増加し、nmax(1)は前記第1のドリフト層セクション(132A)におけるピークドーピング濃度である、請求項1から4のいずれか1項に記載の接合バリヤショットキー整流器。
【請求項6】
前記第1の主側面(4)から前記接合バリヤショットキー整流器の前記第2の主側面(7)へ向けた方向における前記第1の金属接触層(5)との前記界面からの前記ドリフト層(132A,132B)の深さは、5μmと500μmとの間の範囲、5μmと100μmとの間の範囲、または5μmと40μmとの間の範囲にある、請求項1から5のいずれか1項に記載の接合バリヤショットキー整流器。
【請求項7】
前記第1のドリフト層セクション(132A)における前記ピーク総ドーピング濃度は、1×1016cm−3以下、5×1015cm−3以下、または1×1015cm−3以下である、請求項1から6のいずれか1項に記載の接合バリヤショットキー整流器。
【請求項8】
前記第1のドリフト層セクション(132A)および前記第2のドリフト層セクション(132B)における総ドーピング濃度はそれぞれ実質的に一定であり、前記第1のドリフト層セクション(132A)と前記第2のドリフト層セクション(132B)との間の境界におけるドーピング濃度プロフィールは段階状である、請求項1から7のいずれか1項に記載の接合バリヤショットキー整流器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、請求項1の前段部分に係る接合バリヤショットキー(JBS)整流器に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
米国特許出願公開第2006/022292号A1より、基板と2つ以上のエピタキシャル層とを有し、エピタキシャル層が少なくとも薄く軽度にドーピングされたN型上部エピタキシャル層と最上エピタキシャル層が設けられるN型エピタキシャル層とを含む、接合バリヤショットキー(JBS)ダイオードが知られている。複数のエピタキシャル層は、ダイオードの阻止電圧を支持し、複数のエピタキシャル層の各々は、阻止電圧の相当部分を支持する。少なくとも上部の2つのエピタキシャル層の厚さおよびドーパント濃度を最適化することにより、順電圧およびオン抵抗に対する影響を低く保ちながら静電容量およびスイッチングロスが減少する。
【0003】
米国特許出願公開第2009/160008号A1より、n型半導体基板と半導体基板の上面に形成された上部電極とを含む半導体装置、およびその半導体装置を製造する方法が知られている。p型半導体領域は、半導体基板の上面で露出されるように、半導体基板において基板面に対して平行な少なくとも1つの方向に繰り返し形成される。上部電極は、金属電極部分と、半導体基板のバンドギャップよりも狭いバンドギャップを有する半導体材料からなる半導体電極部分とを含む。半導体電極部分は、半導体基板の上面において露出した各p型半導体領域上に設けられる。金属電極部分は、半導体基板の上面において露出したn型半導体基板領域とショットキー接触し、半導体電極部分とオーミック接触する。
【0004】
特開平7−2265521号Aより、2セクションエミッター領域を有する接合バリヤショットキー(JBS)ダイオードが知られている。エミッター領域の2つのセクションは、異なるドーピング濃度を有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
接合バリヤショットキー(JBS)整流器は、ショットキーおよびpinダイオード構造を1つの装置に組み合わせたハイブリッド電力装置であり、両方の構造の利点を用いる。これは、低いオン抵抗および高い阻止能力を有する。炭化珪素(SiC)をベースとしたJBS整流器は、高い阻止電圧のために珪素(Si)をベースとしたpinダイオードに代わる候補である。SiC材料の特性により、装置は、Siと比して高い定格電圧および高い運転温度を有することになる。
【0006】
一般的なSiCをベースとしたJBS整流器は、図1に示される。これは、高度にドーピングされたn型炭化珪素からなる基板層1を含む。装置のドリフト層2である低度にドーピングされたn型炭化珪素層は、基板層1上に形成される。基板層1の反対側のJBS整流器の第1の主側面4上のドリフト層の表面に隣接して、複数のp型エミッター領域3が形成される。装置のアノード側であるJBS整流器の第1の主側面4は、第1の金属接触層5で覆われている。第1の金属接触層5は、第1の金属接触層5がn型ドリフト層2に接触する場所にショットキーバリヤを形成し、第1の金属接触層5がp型エミッター領域3に接触する場所にオーミック接触を形成する。典型的に、ドリフト層2は、基板層1として使用される高度にドーピングされたn型SiC基板ウエハ上にエピタキシャルに成長する。
【0007】
アノードとカソードとの間の電圧の電気的極性に応じて、ショットキー接触は、電流を阻止する、または多数キャリヤ(n型にドーピングされた半導体材料における電子)の通過を可能にする。これらの2つのモードは、正常運転条件下におけるJBS整流器およびオン状態動作に対応する。
【0008】
JBS整流器の阻止能力は、主にn型にドーピングされたドリフト層の厚さおよびドーピング密度によって与えられる。しかしながら、ショットキー接触の性質により、高い阻止電圧での高い電界レベルにおいて鏡像力が低下することにより、電子のバリヤが収縮する。pドープ領域を有さない純粋なショットキーバリヤダイオードは、高い逆バイアスにおいて漏洩電流のレベルを高めやすい。比較的大きな数のキャリヤは、インパクトイオン化時において強いペアを生成しやすい。結果として、純粋なショットキーバリヤダイオードは、比較的高い漏洩電流および低い耐圧を示す。JBS整流器において、p型エミッター領域は、この状況を改善するのに役立つ。逆バイアス下において、空乏層は、pinダイオードと同じ方法でp型エミッター領域3とn型ドリフト層2との間のpn接合にわたって進展する。pドープエミッター領域3の周りの個別の空乏ゾーンは、最終的に互いに接続し合い、ショットキー接触の下方の2つの隣接するエミッター領域3の間に閉じ込められる。この方法において、ショットキー接触は、高い電界ピークから効果的に保護される。ショットキー接触とpドープエミッター領域3との組み合わせにより、漏洩電流が減少するとともに、純粋なショットキーバリヤダイオードと比してかなり高い耐圧に達し得る。
【0009】
単極電力装置のオン状態電力が大きく落ちると仮定すると、JBS整流器は、サージ電流状態を適切に処理することができることも最も重要な条件である。このような故障モード動作において、JBS整流器における順電流密度は、1000A/cmから2000A/cm(正常運転におけるオン状態電流密度の約10倍から20倍)に増加し得る。過剰な電力損失の発生により、このレベルはショットキーダイオード部分単体によって失敗なく処理することはできない。この点において、JBS整流器におけるpinダイオードセクションは、順バイアスが約3Vから4Vを超えると処理を開始する。二極性レジームには、電子および孔からなるキャリヤプラズマの生成が伴う。JBS整流器におけるpinダイオード部分は、装置の熱的制限を超えることなくサージ電流状況を安全に処理するのに役立つ。この目的を達成するには、JBSアノード表面におけるpドープエミッター領域3に追加の異なる要件が課される。ショットキー接触の表面電界を制御して耐圧を高めることは、比較的狭いpドープエミッター領域3を用いて実現され得て、ここで数ミクロンを超える分離は耐圧を損ない得る。サージ電流状況を処理する要件は、pドープエミッター領域3の強い二極性エミッター動作を引き起こすこととなる。この要求を満たすための最も簡易な方法は、広く高度にドーピングされたエミッター領域3である。このような広いエミッター領域3には、ショットキー接触に利用可能なアノード面積を減少させ、高いオン抵抗を生じるという問題がある。
【0010】
図5から図10において、異なるJBS整流器についての電流電圧特性が示される。「従来のドリフト層」と称される曲線は、p型エミッター領域3における異なるドーピング濃度およびエミッター領域3の異なる幅での、上記の一般的なJBS整流器の順電流電圧特性である。図5において、エミッター領域の幅は6μmであり、エミッター領域のドーピング濃度は2×1018cm-3である。図6において、エミッター領域の幅は14μmであり、エミッター領域におけるドーピング濃度は2×1018cm−3である。図7において、エミッター領域の幅は6μmであり、エミッター領域におけるドーピング濃度は2×1019cm−3である。図8において、エミッター領域の幅は14μmであり、エミッター領域におけるドーピング濃度は2×1019cm−3である。図9において、エミッター領域の幅は6μmであり、エミッター領域におけるドーピング濃度は2×1020cm−3である。図10において、エミッター領域の幅は14μmであり、エミッター領域におけるドーピング濃度は2×1020cm−3である。
【0011】
図5から図10から分かり得るように、全ての一般的なJBS整流器は、低い順電流において、電流が主にショットキーバリヤーダイオード部分を通じて運ばれる(単極伝導モード)正の微分抵抗を有する領域を示す。高い順電流においては、電流は主にpinダイオード部分を通じて運ばれる(双極伝導モード)。単極伝導モードから双極伝導モードへの移行において、電流電圧特性は、負の微分抵抗を有する領域を示す。この移行は、狭短絡pエミッター、たとえばエミッター短絡絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)については、装置のオン時におけるスナップバック現象として知られる。
【0012】
JBS整流器の寿命およびサージ電流状況下における堅牢さを高めるためには、スナップバック現象を無くすもしくは最小とすること、および可能な限り低い順バイアスで単極伝導モードから双極伝導モードへの移行を行なうことが好ましい。
【課題を解決するための手段】
【0013】
発明の概要
上記に鑑み、本発明の目的は、サージ電流を処理する向上した能力を有するJBS整流器を提供することにある。特に、本発明の目的は、スナップバック減少を無くすもしくは最小とし、単極伝導モードから双極伝導モードへの移行を低い順バイアスで行なうJBS整流器を提供することにある。
【0014】
この目的は、請求項1に係るJBS整流器によって達成される。さらに、本発明の発展形は従属請求項に規定される。
【0015】
請求項1に係る接合バリヤショットキー整流器において、第1および第2のドリフト層セクションを有するドリフト層であって、第1のドリフト層セクションのピーク総ドーピング濃度が少なくとも第2のドリフト層セクションの最小総ドーピング濃度よりも少なくとも2倍低く、第1のドリフト層セクションがエミッター領域の各々に接触するドリフト層を使用することにより、静電力の低下によって単極伝導モードから双極伝導モードへの移行が低い順バイアスで行なわれ、それ以外の場合には順バイアス条件下においてエミッター領域への電子の移送が損なわれる。同時に、2セクションドリフト層は、JBS整流器におけるスナップバック減少を最小化することができる。
【0016】
例示的な実施形態において、第1のドリフト層セクションは、金属接触層とショットキー接触を形成し、第1の金属接触層を第2のドリフト層セクションから分離する。例示的な実施形態において、所与の逆バイアスについてのドリフト層とエミッター領域との間のpn接合の空乏ゾーンの幅は、ショットキー接触に隣接する領域において増加する。これにより、ショットキー接触は、高い電界ピークからより効果的に保護され得る。これにより、漏洩電流が減少する。
【0017】
例示的な実施形態において、第1の金属接触層は、エミッター領域の各々に形成された溝もしくは孔に延在する。例示的な実施形態において、エミッター特性が向上する。
【0018】
請求項1に係る装置において、エミッター領域の各々は、第1のエミッターセクションと第2のエミッターセクションとを含み、第2のエミッター領域のピーク総ドーピング濃度は、第1のエミッターセクションのピーク総ドーピング濃度よりも少なくとも2倍高い。このような構成により、オン状態特性を損なうことなく阻止特性が向上し得る。特に、耐圧が上昇し、漏洩電流が低下し得る。最良の阻止特性は、各エミッター領域の第1のエミッターセクションの横側面が第2のエミッターセクションによって覆われる構成において得られ得る。各エミッター領域において、第2のエミッターセクションは、第2のエミッターセクション上に形成された酸化物層によって第1の金属接触層から分離され、エミッター縁部領域におけるエミッター注入効率が向上し得る。
【0019】
請求項1に係る装置において、各エミッター領域において、第2のエミッターセクションは、第2のドリフト層セクションに延在し、第1のエミッターセクションは第1のドリフト層セクションによって第2のドリフト層セクションから分離される。請求項1の構成により、ショットキー接触が高い電界ピークから特に効果的に保護される。
【0020】
本発明の実施形態についての詳細は、添付の図面を参照して以下で説明される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】一般的な接合バリヤショットキー(JBS)整流器を示す部分断面図である。
図2】第1の比較例に係るJBS整流器を示す部分断面図である。
図3】第2の比較例に係るJBS整流器を示す部分断面図である。
図4】第3の比較例に係るJBS整流器を示す部分断面図である。
図5】エミッター領域の幅が6μmであり、エミッター領域におけるドーピング濃度が2×1018cm−3である、第1の比較例に係るJBS整流器、第2の比較例に係るJBS整流器、および図1に示される一般的なJBS整流器の電流電圧特性を示す図である。
図6】エミッター領域の幅が14μmであり、エミッター領域におけるドーピング濃度が2×1018cm−3である、第1の比較例に係るJBS整流器、第2の比較例に係るJBS整流器、および図1に示される一般的なJBS整流器の電流電圧特性を示す図である。
図7】エミッター領域の幅が6μmであり、エミッター領域におけるドーピング濃度が2×1019cm−3である、第1の比較例に係るJBS整流器、第2の比較例に係るJBS整流器、および図1に示される一般的なJBS整流器の電流電圧特性を示す図である。
図8】エミッター領域の幅が14μmであり、エミッター領域におけるドーピング濃度が2×1019cm−3である、第1の比較例に係るJBS整流器、第2の比較例に係るJBS整流器、および図1に示される一般的なJBS整流器の電流電圧特性を示す図である。
図9】エミッター領域の幅が6μmであり、エミッター領域におけるドーピング濃度が2×1020cm−3である、第1の比較例に係るJBS整流器、第2の比較例に係るJBS整流器、および図1に示される一般的なJBS整流器の電流電圧特性を示す図である。
図10】エミッター領域の幅が14μmであり、エミッター領域におけるドーピング濃度が2×1020cm−3である、第1の比較例に係るJBS整流器、第2の比較例に係るJBS整流器、および図1に示される一般的なJBS整流器の電流電圧特性を示す図である。
図11】第4の比較例に係るJBS整流器を示す部分断面図である。
図12】第5の比較例に係るJBS整流器を示す部分断面図である。
図13】請求項に記載の発明の実施形態に係るJBS整流器を示す部分断面図である。
図14】第6の比較例に係るJBS整流器を示す部分断面図である。
図15】第7の比較例に係るJBS整流器を示す部分断面図である。
図16】第8の比較例に係るJBS整流器を示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図面において使用される参照符号およびそれらの意味は、参照符号の一覧にまとめられている。概して、同様の要素は明細書を通じて同じ参照符号を有する。記載される実施形態は例示を意味しており、本発明の範囲を限定するものではない。
【0023】
例示的な実施形態の詳細な説明
以下では、第1から第8の比較例および請求項に記載された発明の実施形態が記載される。比較例自体は請求項の範囲に入らないが、請求項に記載された発明についてのより良好な理解に役立つ。
【0024】
図2において、第1の比較例に係るJBS整流器が示される。これは、高度にドーピングされたn型炭化珪素からなる基板層1を含む。装置のドリフト層である低度にドーピングされたn型炭化珪素層は、基板層1上に形成される。ドリフト層は、第1のドリフト層セクション22Aと第2のドリフト層セクション22Bとを含む。基板層の総ドーピング濃度は、ドリフト層の総ドーピング濃度よりも高く、基板層上におけるオーミック接触の形成を可能にする。ドリフト層の総ドーピング濃度は、例示的に1.0×1012cm−3から1.0×1017cm−3の範囲、例示的に1.0×1013cm−3から1.0×1016cm−3の範囲、または例示的に1.0×1014cm−3から1.0×1016cm−3の範囲にある。第1のドリフト層セクション22Aにおけるピーク総ドーピング濃度nmax(1)は、例示的に1×1016cm−3以下、例示的に5×1015cm−3以下、または例示的に1×1015cm−3以下である。
【0025】
ピーク総ドーピング濃度nmax(1)、すなわち、第1のドリフト層セクション22Aの最大ドーピング濃度は、第2のドリフト層セクション22Bの最小総ドーピング濃度nmin(2)よりも、少なくとも2倍、例示的に少なくとも3倍、または例示的に少なくとも4倍低い。例示的に、第2のドリフト層セクション22Bの全体のドーピング濃度は、実質的に一定である。ドーピングプロフィールは、平均ドーピング濃度から10%までの変化の場合においては依然として一定であると考えられる。第1のドリフト層セクション22Aと第2のドリフト層セクション22Bとの境界において、総ドーピング濃度は、第1のドリフト層セクション22Aにおける総ドーピング濃度から第2のドリフト層セクション22Bにおける総ドーピング濃度へ増加する段階状のプロフィールを有する。第1のドリフト層セクション22Aと第2のドリフト層セクション22Bとを接続する薄い移行領域において総ドーピング濃度が第1のドリフト層セクション22Aにおける総ドーピング濃度から第2のドリフト層セクション22Bにおける総ドーピング濃度へ少なくとも20nmax(1)/μm、例示的に少なくとも40nmax(1)μmの急勾配dn/dxで増加する場合、総ドーピング濃度のプロフィールは、段階状になると考えられる。
【0026】
基板層1の反対側のJBS整流器の第1の主側面4上のドリフト層22A,22Bの表面に隣接して、複数のp型エミッター領域3が形成される。p型エミッター領域3の各々は、ストリップとして形成される。明細書の全体にわたり、ストリップは層として理解され、典型的に互いに平行に配置される2つの長い側面を有することにより、その長手方向における一方向において、他の方向よりも長い延長部を有する。図2において、互いに隣接する3つのストリップ形状のエミッター領域3の長手軸に対して垂直な断面を見ることができる。図2の最も右側のエミッター領域3は、部分的にのみ示される。ストリップ形状のエミッター領域は、互いに長手軸が平行な状態で配置される。第1の主側面に対して平行であってエミッター領域3の長手軸に対して垂直な横方向における各ストリップ形状のエミッター領域3の幅は、例示的に0.1μmから100μmの範囲、例示的に0.1μmから20μmの範囲、または例示的に0.1μmから10μmの範囲にある。隣接するエミッター領域3の間の距離は、例示的に1μmから50μmの範囲、例示的に1μmから20μmの範囲、または例示的に1μmから10μmの範囲にある。例示的に、p型エミッター領域3のピーク総ドーピング濃度は、1×1016cm−3から1×1021cm−3の範囲、例示的に1×1017cm−3から5×1020cm−3の範囲、または例示的に5×1017cm−3から1×1020cm−3の範囲にある。
【0027】
装置のアノード側であるJBS整流器の第1の主側面4は、第1の金属接触層5で覆われており、第1の金属接触層5は、第1の金属接触層5がn型ドリフト層22A,22Bに接触する場所においてショットキーバリヤを形成するとともに、第1の金属接触層5がp型エミッター領域3に接触する場所においてp型エミッター領域3とオーミック接触を形成する。第2のドリフト層22Bセクションは、基板層1として使用される高度にドーピングされたn型SiC基板上でエピタキシャルに成長し得る。
【0028】
第1の比較例において、エミッター領域3は、第1の金属接触層5と接触する側面を除くエミッター領域3のすべての側面が第1のドリフト層セクション22Aによって覆われるように、第1のドリフト層セクション22Aによって囲まれる。言い換えると、第2のドリフト層セクション22Bは、第1のドリフト層セクション22Aによってエミッター領域3から分離される。各エミッター領域3について、第1のドリフト層セクション22Aは、それぞれのエミッター領域と接触して第1のドリフト層セクション22Aとそれぞれのエミッター領域3との間にpn接合を形成する層セクションを含み、第1のドリフト層セクション22Aとそれぞれのエミッター領域3との間の界面に対して垂直な方向におけるこの層セクションの厚さは少なくとも0.1μmである。これは、各エミッター領域3が、少なくとも0.1μm、例示的に少なくとも0.2μm、例示的に少なくとも0.5μmの厚さを有する第1のドリフト層セクション22Aの層で覆われることを意味する。
【0029】
JBS整流器の第1の主側面4から第1の主面4の反対側の第2の主側面7への方向におけるドリフト層厚さは、例示的に5μmから500μmの範囲、例示的に5μmから100μmの範囲、または例示的に5μmから40μmの範囲にある。第1の主側面4から第2の主側面7へ向かう方向においてエミッター領域3が第1の金属接触層5との界面から延在するエミッター領域3の深さは、例示的に0.1μmから20μmの範囲、例示的に0.1μmから3μmの範囲、または例示的に0.1μmから1μmの範囲にある。
【0030】
すべての比較例において、および請求項に記載された発明の実施形態において、エミッター領域3の深さは、ドリフト層22A,22Bの厚さよりも小さい。これは、エミッター領域が常に少なくとも第2のドリフト層セクション22Bによって基板層1から分離されていることを意味する。
【0031】
第1の主側面4の反対側のJBS整流器の第2の主側面7上において、第2の金属接触層6が基板層1上に形成され、基板層1とのオーミック接触を形成する。
【0032】
第2の比較例に係るJBS整流器が図3に示される。第1の比較例との多くの類似性に鑑み、第1の比較例との違いのみを以下に記載する。上記の第1の比較例においてはエミッターセクション3を囲う第1のドリフト層セクション22Aの部分は互いに接続されていないが、第2の比較例における第1のドリフト層セクション32Aは、第2のドリフト層セクション32Bを第1の金属接触層5から分離する連続層を形成する。これは、第2の比較例において、ショットキー接触が第1のドリフト層セクション32Aと第1の金属接触層5との間のみに形成され、第2のドリフト層セクション32Bと第1の金属接触層5との間には形成されないことを意味する。この第2の比較例において、所与の逆バイアスについてのドリフト層とエミッター領域との間のpn接合の空乏ゾーンの幅は、ショットキー接触に隣接する領域において増加し、これはこの領域における総ドーピング濃度が低いためである。このため、ショットキー接触は、高い電界ピークからより効果的に保護され得る。これにより、漏洩電流が減少する。
【0033】
図5から図10において、順バイアス条件下における異なる第1および第2の比較例に係るJBS整流器ならびに上記の一般的なJBS整流器の電流電圧特性が示される。これらの図において、「従来のドリフト層」の用語は、図1を用いて記載された、一定の総ドーピング濃度を伴うドリフト層を有する一般的なJBS整流器に関する。「補償されたpエミッター」の用語は、第1の比較例に係るJBS整流器に関し、「2セクションドリフト層」の用語は、第2の比較例に係るJBS整流器に関する。図5および図6において、エミッター領域3のピーク総ドーピング濃度が2×1018cm−3であるJBS整流器の電流電圧特性が示される。図7および図8において、ピーク総ドーピング濃度が2×1019cm−3であるJBS整流器の電流電圧特性が示され、図9および図10において、ピーク総ドーピング濃度が2×1020cm−3であるJBS整流器の電流電圧特性が示される。図5図7、および図9は、エミッター領域の幅が6μmであるJBS整流器の電流電圧特性を示し、図6図8、および図10は、エミッター領域の幅が14μmであるJBS整流器の電流電圧特性を示す。
【0034】
図5から図10から分かり得るように、電流電圧特性は、単極伝導モードから双極伝導モードへの移行において微分抵抗の変化を示す。特に、図5から図10において「従来のドリフト層」と称される一般的なJBS整流器は、単極伝導モードから双極伝導モードへの移行において、負の微分抵抗を有する明らかなスナップバック現象を示す。「補償されたpエミッター」と称される第1の比較例に係るJBS整流器および「2セクションドリフト層」と称される第2の比較例に係るJBS整流器は、負の微分抵抗を有するスナップバック現象を示さない、または一般的なJBS整流器と比較して少なくともかなり弱いスナップバック現象を示す。また、単極伝導モードから双極伝導モードへの移行が観察され得る順バイアスは、一般的なJBS整流器と比較して、第1および第2の比較例に係るJBS整流器については低い。このため、第1および第2の比較例に係るJBS整流器は、サージ電流状況を処理する高い能力を有しており、これは、図5から図10から明らかなように一般的なJBS整流器についてはサージ電流動作時における電力損失が最も高いためである。また、より高度にドーピングされたp領域(図9および図10)は、弱いpエミッターを有するJBS整流器(図5および図6)よりも強いスナップバック特性を生じる傾向にあることがさらに観察される。サージ電流条件下におけるJBS整流器の耐久性に関しては、電流スナップバック減少が最小であるもしくは起こらず、可能な限り低い順バイアスで双極伝導モードへ移行する形状が好ましい。第1および第2の比較例に係るJBS整流器は、中程度から弱い程度でドーピングされたエミッター領域を用いてこの目標を達成することができる。
【0035】
第3の比較例に係るJBS整流器が図4に示される。再び、第1の比較例との多くの類似性に鑑み、以下では第1の比較例との違いのみについて記載する。第1の比較例とは対照的に、第1のドリフト層セクション42Aは、JBS整流器の第1の主側面4とは反対側のエミッター領域3の下側面のみと直接接触してこれを覆う。エミッター領域の横側面は、第2のドリフト層領域42Bと直接接触してこれによって覆われる。この明細書の全体において、「横」の用語は、第1の主側面4に平行な方向である横方向における位置に関する。
【0036】
第4の比較例に係るJBS整流器が図11に示される。第2の比較例との多くの類似性に鑑み、以下では第2の比較例との違いのみについて記載する。第4の比較例に係るJBS整流器は、各p型エミッター領域113が第1のエミッターセクション113Aと第2のエミッターセクション113Bとを含み、第2のエミッター領域113Bのピーク総ドーピング濃度が第1のエミッターセクション113Aのピーク総ドーピング濃度よりも少なくとも2倍高い点において、第2の比較例に係るJBS整流器とは異なる。第1のエミッターセクション113Aと第2のエミッターセクション113Bとの間の境界は、境界における総ドーピング濃度が第1のエミッターセクション113Aのピーク総ドーピング濃度と第2のエミッターセクション113Bのピーク総ドーピング濃度との間の中間にあることで決定される。第2のエミッターセクションのピーク総ドーピング濃度は、例示的に1×1017cm−3から1×1021cm−3の範囲、例示的に1×1018cm−3から1×1021cm−3の範囲、または例示的に1×1019cm−3から1×1021cm−3の範囲にある。ストリップ形状のエミッター領域113の長手軸に対して垂直な横方向における第2のエミッターセクション113Bの幅は、例示的0.1μmから10μmの範囲、例示的に0.1μmから3μmの範囲、または例示的に0.1μmから1μmの範囲にある。
【0037】
第4の比較例において、各エミッター領域113における第1のエミッターセクション113Aの横側面は、第2のエミッターセクション113Bによって覆われる。例示的に、第2のエミッターセクション113Bは、第1のエミッターセクション113Aと同じ深さに延在する。また、例示的に、すべてのエミッターセクション113の第1および第2のエミッターセクション113A,113Bは、すべてが同じ深さに延在する。第2のエミッターセクション113Bの深さは、例示的に0.1μmから20μmの範囲、例示的に0.1μmから3μmの範囲、または例示的に0.1μmから1μmの範囲にある。第1のドリフト層セクション112Aは、第1のエミッターセクション113Aおよび第2のエミッターセクション113Bの両方と接触するが、第2のドリフト層セクション112Bは、第1のドリフト層セクション112Aによってエミッター領域113から分離される。第4の比較例にかかるJBS整流器では、サージ電流レジームを含むオン状態特性を損なうことなく阻止特性を向上させることができる。特に、耐圧が高まり、漏洩電圧が低下し得る。
【0038】
第5の実施形態に係るJBS整流器が図12に示される。第4の比較例との多くの類似性に鑑み、以下では第4の比較例との違いのみについて記載する。第5の比較例は、第2のエミッターセクション123Bが酸化物層128によって覆われ、酸化物層128によって第1の金属接触層5から分離される点のみが第4の比較例と異なる。第1のエミッターセクション123Aは、酸化物層128によって覆われておらず、第1の金属接触層5と接触する。第5の比較例の残りの特徴は第4の比較例のものと同一である。特に、図12における第1のドリフト層セクション122Aは、図11における第1のドリフト層セクション112Aに対応し、図12における第2のドリフト層セクション122Bは、図11における第2のドリフト層セクション112Bに対応する。
【0039】
請求項に記載の発明のJBS整流器の実施形態が図13に示される。第4の比較例との多くの類似性に鑑み、以下では第4の比較例との違いのみについて記載する。実施形態に係るJBS整流器は、エミッター領域133の第2のエミッターセクション133Bが第2のドリフト層セクション132Bに延在するが第1のエミッターセクション133Aが第1のドリフト層セクション132Aによって第2のドリフト層セクション132Bから分離されている点のみが第4の比較例に係るJBS整流器と異なっている。この実施形態において、ショットキー接触は、逆バイアス条件下において高い電界ピークから特に効果的に保護される。
【0040】
第6の比較例に係るJBS整流器が図14に示される。請求項に記載の発明の実施形態との多くの類似性に鑑み、以下では図13に示される実施形態との違いのみを記載する。第6の比較例に係るJBS整流器において、各エミッター領域143の第2のエミッターセクション143Bのみが第1の金属接触層と接触し、第1のエミッターセクション143Aは、第2の主側面7に向けた第2のエミッターセクション143Bの側面である第2のエミッターセクション143Bの下側面から第2のドリフト層セクション142Bへ延在する。第2のエミッターセクション143Bは、第1のドリフト層セクション142Aによって第2のドリフト層セクション142Bから分離される。この比較例により、エミッター領域143に必要な下方領域によるオン抵抗が低下し得る。
【0041】
第7の比較例に係るJBS整流器が図15に示される。第2の比較例との多くの類似性に鑑み、以下では第2の比較例との違いのみを記載する。第7の比較例に係るJBS整流器は、第7の比較例に係るJBS整流器において溝159がストリップ形状のエミッター領域153の長手軸に沿って各エミッター領域153に形成される点が第2の比較例に係るJBS整流器とは異なる。第1の金属接触層5は、エミッター領域153に形成されたこれらの溝159に延在する。第7の比較例の残りの特徴は、第2の比較例のものと同一である。特に、図15における第1のドリフト層セクション152Aは、図3における第1のドリフト層セクション32Aに対応し、図15における第2のドリフト層セクション152Bは、図3における第2のドリフト層セクション32Bに対応する。この比較例において、エミッター特性が向上し得る。
【0042】
第8の比較例に係るJBS整流器が図16に示される。第6の比較例との多くの類似性に鑑み、以下では第6の比較例との違いのみについて記載する。第8の比較例に係るJBS整流器は、 第8の比較例に係るJBS整流器においてストリップ形状のエミッター領域163の長手軸に沿って各エミッター領域163に溝169が形成される点において第6の比較例に係るJBS整流器とは異なる。各エミッター領域163において、溝169は、第1の主側面4から第1のエミッターセクション163Aを通って第2のエミッターセクション163Bに延在する。第1の金属接触層5は、第1のエミッターセクション163Aおよび第2のエミッターセクション163Bに接触するように形成されたこれらの溝169に延在する。第8の比較例の残りの特徴は、第6の比較例のものと同一である。特に、図16における第1のドリフト層セクション162Aは、図14における第1のドリフト層セクション142Aに対応し、図16における第2のドリフト層セクション162Bは、図14における第2のドリフト層セクション142Bに対応する。上記の第7の比較例と同様に、第8の比較例において、エミッター特性が第6の比較例と比較して向上する。
【0043】
なお、上記の実施形態の変更は添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の概念から逸脱することなく行うことが可能であることは当業者にとって明らかである。
【0044】
上記の実施形態および比較例において、エミッター領域の特定の表面を第1のドリフト層セクションを用いて覆うことが記載された。しかしながら、第1の金属接触層との接触を形成する表面以外のエミッター領域の表面の他の部分が第1のドリフト層セクションによって覆われ得る。例示的に、第1の金属接触層との接触を形成する表面を除く各エミッター領域の表面の表面積のうちの少なくとも50%が、低度にドーピングされた第1のドリフト層セクションによって覆われる。
【0045】
上記の実施形態および比較例において、第1および第2のドリフト層セクションの間の段階状の境界は、総ドーピング濃度の急勾配によって定義された。例示的な実施形態において、第1のドリフト層セクション22Aおよび第2のドリフト層セクション22Bは、エピタキシーによって形成され、第1のドリフト層セクション22Aのピーク総ドーピング濃度からの段階状の移行は、成長条件の急な変化によって得られる。
【0046】
上記の実施形態および比較例において、基板層、ドリフト層、およびエミッター領域は、すべてが炭化珪素で形成される。これは例示的な実施形態であるが、これらの層は、珪素などの他の半導体材料からも形成され得る。
【0047】
上記の実施形態および比較例において、エミッター領域は、平行に配置されたストリップ形状の領域として記載された。しかしながら、エミッター領域は、他の形状を有し得て、二次元ハニカムパターンに配置されたエミッター領域の六角形などの他のパターン、または任意の他の二次元パターンに配置された任意の他のアイランド状の形状を形成し得る。また、エミッター領域は、互いに接続され、グリッドのパターンに配置され得る。
【0048】
上記の実施形態および比較例は、特定の導電型で説明された。上記の実施形態における半導体層の導電型は入れ替えられ得て、p型層であると記載されたすべての層はn型層となり得て、n型層と記載されたすべての総はp型層となり得る。
【0049】
なお、「含む(comprising)」の用語は、他の要素もしくはステップを排除するものではなく、不定冠詞「a」もしくは「an」は、複数を排除するものではない。また、異なる実施形態に関連付けて記載された要素は、組み合わされ得る。
【符号の説明】
【0050】
1 基板層、2 ドリフト層、3 エミッター領域、4 第1の主側面、5 第1の金属接触層、6 第2の金属接触層、7 第2の主側面、22A 第1のドリフト層セクション、22B 第2のドリフト層セクション、32A 第1のドリフト層セクション、32B 第2のドリフト層セクション、42A 第1のドリフト層セクション、42B 第2のドリフト層セクション、112A 第1のドリフト層セクション、112B 第2のドリフト層セクション、113 エミッター領域、113A 第1のエミッターセクション、113B 第2のエミッターセクション、122A 第1のドリフト層セクション、122B 第2のドリフト層セクション、123 エミッター領域、123A 第1のエミッターセクション、123B 第2のエミッターセクション、128 酸化物層、132A 第1のドリフト層セクション、132B 第2のドリフト層セクション、133 エミッター領域、133A 第1のエミッターセクション、133B 第2のエミッターセクション、142A 第1のドリフト層セクション、142B 第2のドリフト層セクション、143 エミッター領域、143A 第1のエミッターセクション、143B 第2のエミッターセクション、152A 第1のドリフト層セクション、152B 第2のドリフト層セクション、153 エミッター領域、159 溝、162A 第1のドリフト層セクション、162B 第2のドリフト層セクション、163 エミッター領域、163A 第1のエミッターセクション、163B 第2のエミッターセクション、169 溝。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16