【実施例1】
【0023】
図1〜4に示す本発明の第1実施例の既存屋根の改修方法は、屋根面の裏面側に天井化粧板を兼ねる落下防止板1を配設する第1の工程と、屋根材5と固定具7とを分離する第2の工程と、既存屋根を撤去して新設屋根を敷設する第3の工程と、からなり、それぞれの工程を容易に行うことができる。
まず、
図1は、落下防止板1を配設する第1の工程を模式的に示すものであり、落下防止板1を配設した後の状態は
図2に示すとおりである。
また、
図3は、屋根材5と固定具7とを分離する第2の工程の途中の状態を示すものである。
なお、
図4は、第2の工程にて分離した屋根材を撤去して新設屋根8を敷設する第3の工程を模式的に示すものであり、新設屋根8は点線にて示している。
【0024】
まず、前述のように
図1に基づいて、第1の工程について説明する。
図1(a)に示すように、既存屋根に用いられる型鋼4は、縦方向に配されるウエブ41の両端(上下端)にフランジ43,42を有するリップ溝型鋼(C型鋼)であって、先端に上向きリップ421を備える下フランジ42は、図面右方へ延在している。なお、同図中に示される符号5は波形スレート板(屋根材)であり、6はその下面側に配設される木毛セメント板、7は前記屋根材5を固定する固定具(フックボルト)であって、この固定具7は、下端が型鋼4の上フランジ43の下向きリップ431に係合状に取り付けられ、上端にナット7bが屋根材5上に締着されている。
【0025】
前記既存屋根に対し、隣り合う型鋼4,4間に落下防止板1を配設するのであるが、この第1実施例では、それぞれの型鋼4に、補助材2を固定しておき、この補助材2と隣り合う型鋼4との間に落下防止板を係止状に取り付ける。
【0026】
前記型鋼4に取り付けられる補助材2は、型鋼4の長さ方向に連続する長尺状であって、
図1(b)に示すように取付状態において前記型鋼4のウエブ41にビス2bにて取り付けられる中央縦片部21と、該中央縦片部21の下端から前記下フランジ42とは逆方向に延在する横片部22と、を有する構成であって、それぞれの型鋼4に背中合わせ状に取り付けられる。即ち図では右向きに延在する前記型鋼4の下フランジ42に対し、この横片部22は左向きに延在する。
【0027】
また、この補助材2は、前記型鋼4と略対称状に形成され、即ち前記型鋼(リップ溝型鋼)4の上向きリップ421に相当する上向き片221を有し、該上向き片221の高さは上向きリップ421と略同等である。
前記中央縦片部21は、前述のように取付状態において型鋼4のウエブ41に沿うものであり、この第1実施例では鉛直状の縦片状に形成した。
前記横片部22は、前述のように中央縦片部21の下端から前記下フランジ42とは逆方向に延在する。
【0028】
隣り合う型鋼4,4間に配設される落下防止板1は、前述のようにこの第1実施例では厳密には補助材2と隣り合う型鋼4との間に配設するものであって、天井化粧材を兼ねるものであり、
図1(c)に示すように左右対称状に成形されたものであって、下面側が化粧面となる化粧面部11と、該化粧面部11の左右からそれぞれ下方へ延在して少なくとも取付状態では型鋼4の下フランジ42、補助材2の横片部22の上方に押し込まれる押し込み片部12,13と、該押し込み片部12,13の下端に設けられる嵌合部14,15と、を有する構成である。
なお、
図1(c)に示す落下防止板1は、取り付けられた状態(
図2)の落下防止板1を抜き出して示した分解断面図であるから、実際の配設以前の落下防止板1は、左右の押し込み片部12,13がもっと広く拡開している。即ち図中の拡開角度より大きく成形されている。
【0029】
前記化粧面部11は、側面視が略平坦状(略水平状)に成形されているが、その前端及び後端は、折り下げられ(折り下げ片111)た形状である。なお、この第1実施例では落下防止板1をパンチングメタル製の成形板としたが、パンチングメタルの孔部は部材等が通過しにくいものを用いているので、以降の第2の工程にて、固定具7を押し込む作業を行っても、この固定具7を確実に受支することができ、室内側が安全なものとなる。
【0030】
この落下防止板1の押し込み片部12,13は、前記化粧面部11を傾斜状に折り曲げた形状であって、その左方に位置する押し込み片部12は、取付状態では前記型鋼4の下フランジ42の上方に押し込まれる部位であり、その下端には嵌合部14が延設されている。また、この落下防止板1の右方に位置する押し込み片部13は、取付状態では前記補助材2の横片部22の上方に押し込まれる部位であり、その下端には嵌合部15が延設されている。
【0031】
前述のように配設以前の押し込み片部12,13は、この
図1(c)に示す拡開角度αより更に広く拡開して成形しているが、図中に白抜き矢印で示すようにこの落下防止板1を鉛直状に押し上げると、前記型鋼4の下フランジ42に押し込み片部12が接触することなく配設することはできないし、前記補助材2の横片部22に押し込み片部13が接触することなく配設することはできない。即ちこの落下防止板1(実際はもっと広く拡開している落下防止板1)を垂直方向に押し上げて取り付ける際に下フランジ42や横片部22の当接することにより、前記押し込み片部12,13がそれぞれ内側方向への弾性変形を受けることは明らかである。
【0032】
また、この落下防止板1の左側の押し込み片部12の下端に延設される嵌合部14は、リップ溝型鋼である型鋼4に応じて下フランジ42及び上向きリップ421に沿うL字状に形成した。同様にこの落下防止板1の右側の押し込み片部13の下端に延設される嵌合部15は、前記補助材2の構成に応じて横片部22及び上向き片221に沿うL字状に形成した。
【0033】
そして、前述のように配設以前の落下防止板1は、図示されている状態よりも左右の押し込み片部12,13がもっと広く拡開するように成形されているので、取り付けられた状態を示すこの
図1(c)の落下防止板1では、左右の押し込み片部12,13がもっと外側方向へ弾性回復しようとする応力が作用し、それらの下端に延設された嵌合部14,15にもそれぞれ外側方向へ応力が作用している。そのため、嵌合部14は下フランジ42の上向きリップ421に弾性係合(圧接)し、嵌合部15は横片部22の上向き片221に弾性係合(圧接)する。
【0034】
この落下防止板1を取り付けた状態を示す
図2の状態は、間隔を隔てて突き合わされた前記型鋼4の下フランジ42と前記補助材2の横片部22との間に、前記落下防止板1を弾性に抗して配設した構成であって、左方に位置する嵌合部14を前記型鋼4の下フランジ42(上向きリップ421)に、右方に位置する嵌合部15を前記補助材2の横片部22(上向き片221)にそれぞれ弾性的に嵌合させたものである。
このように、天井方向へ押し上げるという簡易な操作にて落下防止板1を容易に且つ確実に型鋼4及び補助材2に固定することができる。しかもこの第1実施例では、前述のように落下防止板1が左右対称状に成形されたものである。そのため、この落下防止板1の設計、成形を容易に行うことができ、またその取付作業に際しても、取付方向の誤りを生ずることがない。
また、この第1実施例では、前記化粧面部11の前端及び後端が折り下げられているので、化粧面部11の曲げ強度が高いものとなり、形状安定性も高いものとなった。さらに、前記落下防止板1には、嵌合部14,15の下端に下方へ延在する固定部14b,15bを設けてビス1bにて固定したので、嵌合部14,15の固定がより強固に且つ確実なものとなった。
【0035】
次に、前述のように
図3に基づいて、第2の工程について説明する。
図3は、前述のように屋根材5と固定具7とを分離する第2の工程の途中の状態を示し、屋根からの固定具7の延出部分をハンマー等を用いてハッチング矢印で示すように鉛直方向に押し込むことにより、屋根材5と固定具7とを分離する。なお、図中に点線にて示すように、固定具7の延出部分(=フックボルト7の上端とナット7b)を切除した後、鉛直方向に押し込むようにしてもよい。
【0036】
この
図3に示すように鉛直方向の下方へ押し込まれた固定具7は、上端が強制的に没入されると共に、下端が型鋼4の上フランジ43の下向きリップ431に係合していた状態から解除され、図中に点線で示すように全体的に下方へ移動する。
下方へ移動する固定具7の下端は、前記落下防止板1の化粧面部11や押し込み片部12,13に受支され、型鋼4の下フランジ42へと導かれる。
このように前記落下防止板1に受支された固定具4は、最終的には、型鋼4の下フランジ42上に受け止められる状態となるため、室内側への落下が生ずることがない。
【0037】
さらに、前述のように
図4に基づいて、第3の工程について説明する。
図4は、前記第2の工程にて分離した屋根材5を撤去すると共にその裏面側の木毛セメント板6をも撤去し、併せて固定具7も取り除いた後にその後に前述のように点線にて示す新設屋根8を敷設している。
この新設屋根8としてはどのような屋根を敷設してもよく、特に限定されるものではなく、例えば新たな屋根材5及び新たな木毛セメント板6、新たな固定具7を用いて
図2に示す既存屋根と全く同様に新設屋根8を構築してもよい。その際、例えば木毛セメント板6が老化していない場合にはそのまま新設屋根8に流用してもよい。
【0038】
このような第1〜第3の工程からなる本発明の既存屋根の改修方法は、それぞれの工程を容易に行うことができ、特に配設した落下防止板1により、屋根撤去時の部材落下を防ぐことができ、屋内側の使用制限を最小限にすると共に、撤去した部材の回収を容易に行うことができる。さらに、この第1実施例では、落下防止板1が天井化粧材を兼ねるので、新設屋根8の種類にかかわらずに裏面側(室内側)の意匠性を高めることができる。
【0039】
本発明の第1の工程については、
図5〜9に示す第2〜第6実施例のように行ってもよい。
【0040】
図5に示す第2実施例は、型鋼4,4間の配設間隔が広くなっているため、落下防止板1Eの化粧面部11eが前記第1実施例よりも長く形成され、その前端及び後端には前記折り下げ片(111)に代えて折り上げ片111eが設けられ、その左右端に形成される押し込み片部12e,13eも前記第1実施例よりも長く形成されている。
また、嵌合部14,15には、それぞれ側方から上方へ向くL字状片16,17が延設され、ビス1bを嵌合部14,15の縦片部(固定部14b,15b)に打ち込んでもその頭部をこのL字状片16,17が隠すことができる。
【0041】
さらに、この第2実施例における第1の工程に用いる補助材2Eは、前記中央縦片部21、前記横片部22を備える点では前記第1実施例と同様であるが、上下対称の部材であって、中央縦片部21の上端にも横片部22及び上向き片221に相当する上側横片部23及び下向き片231を有する構成である。
【0042】
図6に示す第3実施例における第1の工程では、落下防止板1Bの化粧面部11bが前記第2実施例よりも短く形成され、前記第2実施例より押し込み片部12b,13bの傾斜角度が大きく配設される。
また、この第3実施例では、前記第2実施例におけるL字状片16,17に代えて外向き片16b,17bが設けられている。
【0043】
図7に示す第4実施例における第1の工程では、前記第1〜3実施例における押し込み片部(12等,13等)が傾斜状に折り曲げた形状、即ち一つの傾斜面からなるのに対し、この第4実施例における押し込み片部12c,13cはそれぞれ三つの傾斜面から構成されるものである。
また、この第4実施例では、前記第2実施例におけるL字状片16,17に代えて外向き片16c,17cが設けられている。
【0044】
図8に示す第5実施例における第1の工程では、前記第4実施例と同様に押し込み片部12d,13dがそれぞれ三つの傾斜面から構成されるものである。
また、この第4実施例では、前記第2実施例におけるL字状片16,17に代えて外向き片16d,17dが設けられている。
【0045】
図9(a)に示す第6実施例における第1の工程では、前記第2実施例における落下防止板1E及び補助材2Eを室内側から被覆する化粧カバー9を配した例を示している。また、この第6実施例では、固定具7'であるフックボルトは、型鋼4のウエブ41の背面側に沿い、下フランジ42の上向きリップ421に係合状に取り付けられている。
【0046】
この第6実施例に用いられる化粧カバー9は、
図9(b)に示すように型鋼4の下フランジ42及び補助材2Eの横片部22を下方側から被覆する化粧面91を有するものであって、型鋼4の長さ方向に連続する長尺状に形成されている。
また、この化粧カバー9は、図示するように樋状に形成され、底面に相当する化粧面91の左右端を立ち上げて側面92,92とし、該側面92,92の上端をそれぞれ内側へ折曲して取付嵌合部93,93とした構成である。
【0047】
なお、前記第2実施例にて取り付けた落下防止板1Eには、前述のように嵌合部14,15にL字状片16,17が延設されているので、下方から天井方向へ押し上げるという簡易な操作にて化粧カバー9を前記L字状片16,17に弾性的に嵌合させて取り付けることができる(L字状片16,17の上端に取付嵌合部93,93が係合する)。即ち前記L字状片16,17は、取付嵌合受部として機能する。
そのため、この第6実施例では、化粧カバー9と前記落下防止板1Eとが相まって天井全体の美観向上が果たされる。
【0048】
また、本発明の第2の工程については、前記
図3に限らず、
図10に示す第7実施例のように行ってもよい。
なお、
図10に示す第7実施例では、落下防止板1や補助材2については、前記第1実施例と全く同様であり、化粧カバー9については、前記第6実施例と全く同様であるから、それぞれの構成、部位に同一符号を付記して説明を省略する。
【0049】
この第7実施例では、前記第6実施例と同様に固定具7'であるフックボルトが、型鋼4のウエブ41の背面側に沿い、下フランジ42の上向きリップ421に係合状に取り付けられ、更にビス固定されている。
そのため、この第7実施例における第2の工程では、固定具7'の延出部分(=フックボルト7'の上端とナット7b)を切除する方法を採用した。この固定具7'を下方から抜き出して取り出せるのであれば、そのようにしてもよいが、多くの場合には、延出部分を切除した固定具7'を前後方向に倒す方法が採られることが多い。