(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
[オレフィン重合用固体状触媒成分(A)]
本発明に用いるオレフィン重合用固体状触媒成分(A)としては、例えば周期表第3族ないし第12族から選ばれる遷移金属の化合物を含む固体状の触媒成分が好ましい。その具体例としては、周期表第4〜6族遷移金属化合物が粒子状担体に担持された担体担持型の遷移金属錯体系触媒成分、固体状チタン触媒成分と有機アルミニウム化合物とからなる固体状のチタン系触媒成分、三酸化クロムに酸化し得る任意のクロム化合物をシリカ等の無機酸化物固体に担持させたフィリップス触媒成分が挙げられる。
【0014】
中でも、担体担持型の遷移金属錯体系触媒成分に属する担体担持型のメタロセン系触媒成分が好ましく、以下の各成分(A−1)〜(A−3)からなる担体担持型のメタロセン系触媒成分がより好ましい。
(A−1)シクロペンタジエニル骨格を有する周期表第4族の遷移金属化合物、
(A−2)(a)有機金属化合物、
(b)有機アルミニウムオキシ化合物、および
(c)(A−1)と反応してイオン対を形成する化合物
から選ばれる少なくとも1種の化合物と、
(A−3)微粒子状担体
【0015】
担体担持型の遷移金属錯体系触媒成分に用いる周期表第4〜6族遷移金属化合物は、公知のオレフィン重合能を有する周期表第4〜6族遷移金属化合物であれば良く、例えば、周期表4〜6族の遷移金属ハロゲン化物、遷移金属アルキル化物、遷移金属アルコキシ化物、非架橋性または架橋性メタロセン化合物を使用できる。特に、周期表4族の遷移金属化合物が好ましい。具体例としては、四塩化チタン、ジメチルチタニウムジクロライド、テトラベンジルチタン、テトラベンジルジルコニウム、テトラブトキシチタンが挙げられる。さらに重合活性等の観点から、非架橋性または架橋性メタロセン化合物が特に好ましい。メタロセン化合物は、シクロペンタジエニル骨格を有する周期表第4族の遷移金属化合物であり、例えば下記一般式(II)で表される。
【0016】
ML
X ・・・(II)
(式(II)中、Mは周期表第4族の遷移金属(具体的にはジルコニウム、チタンまたはハフニウム)であり、Lは遷移金属に配位する配位子(基)であり、少なくとも1個のLはシクロペンタジエニル骨格を有する配位子であり、シクロペンタジエニル骨格を有する配位子以外のLは炭素数が1〜12の炭化水素基、アルコキシ基、アリーロキシ基、ハロゲン原子、トリアルキルシリル基、−SO
3R(Rはハロゲン等の置換基を有していてもよい炭素数1〜8の炭化水素基)または水素原子であり、xは遷移金属の原子価でありLの個数を示す。)
【0017】
シクロペンタジエニル骨格を有する配位子の具体例としては、シクロペンタジエニル基;メチルシクロペンタジエニル基、ジメチルシクロペンタジエニル基、トリメチルシクロペンタジエニル基、テトラメチルシクロペンタジエニル基、ペンタメチルシクロペンタジエニル基、エチルシクロペンタジエニル基、メチルエチルシクロペンタジエニル基、プロピルシクロペンタジエニル基、メチルプロピルシクロペンタジエニル基、ブチルシクロペンタジエニル基、メチルブチルシクロペンタジエニル基、ヘキシルシクロペンタジエニル基等のアルキル置換シクロペンタジエニル基;インデニル基;4,5,6,7−テトラヒドロインデニル基;フルオレニル基が挙げられる。これらの基はハロゲン原子、トリアルキルシリル基等の置換基を有してもよい。
【0018】
シクロペンタジエニル骨格を有する配位子としては、アルキル置換シクロペンタジエニル基が特に好ましい。一般式(II)で表される化合物が、シクロペンタジエニル骨格を有する基を2個以上含む場合、そのうち2個のシクロペンタジエニル骨格を有する基は、エチレン、プロピレン等のアルキレン基;イソプロピリデン、ジフェニルメチレン等のアルキリデン基;シリレン基;ジメチルシリレン基、ジフェニルシリレン基、メチルフェニルシリレン基等の置換シリレン基等を介して結合されていてもよい。また、2個以上のシクロペンタジエニル骨格を有する基は、同一であることが好ましい。
【0019】
シクロペンタジエニル骨格を有する配位子以外の配位子である炭素数が1〜12の炭化水素基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ペンチル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;フェニル基、トリル基等のアリール基;ベンジル基、ネオフィル基等のアラルキル基が挙げられる。アルコキシ基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基等が挙げられる。アリーロキシ基の具体例としては、フェノキシ基が挙げられる。ハロゲン原子の具体例としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられる。−SO
3Rの具体例としては、p−トルエンスルホナト基、メタンスルホナト基、トリフルオロメタンスルホナト基が挙げられる。
【0020】
一般式(II)で表される化合物は、例えば遷移金属の原子価が4である場合、より具体的には下記一般式(II')で表される。
【0021】
MR
aR
bR
cR
d ・・・(II')
(式(II')中、Mはジルコニウム、チタンまたはハフニウムであり、R
aはシクロペンタジエニル骨格を有する基であり、R
b、R
cおよびR
dは互いに同一でも異なっていてもよく、シクロペンタジエニル骨格を有する基、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシ基、アリーロキシ基、ハロゲン原子、トリアルキルシリル基、−SO
3R(Rはハロゲン等の置換基を有していてもよい炭素数1〜8の炭化水素基)または水素原子である)。
【0022】
特に成分(A−1)としては、一般式(II')においてR
b、R
cおよびR
dのうち1個がシクロペンタジエニル骨格を有する基である遷移金属化合物が好ましい。例えばR
aとR
bがシクロペンタジエニル骨格を有する基である場合、これらシクロペンタジエニル骨格を有する基は、アルキレン基、置換アルキレン基、アルキリデン基、シリレン基、置換シリレン基等を介して結合されていてもよい。なお、この場合のR
cおよびR
dは、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシ基、アリーロキシ基、ハロゲン原子、トリアルキルシリル基、−SO
3Rまたは水素原子である。
【0023】
以下に、Mがジルコニウムである遷移金属化合物について具体的な化合物を例示する。ビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(インデニル)ジルコニウムジブロミド、ビス(インデニル)ジルコニウムビス(p−トルエンスルホナト)、ビス(4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、エチレンビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド、エチレンビス(インデニル)ジルコニウムジブロミド、エチレンビス(インデニル)ジメチルジルコニウム、エチレンビス(インデニル)ジフェニルジルコニウム、エチレンビス(インデニル)メチルジルコニウムモノクロリド、エチレンビス(インデニル)ジルコニウムビス(メタンスルホナト)、エチレンビス(インデニル)ジルコニウムビス(p−トルエンスルホナト)、エチレンビス(インデニル)ジルコニウムビス(トリフルオロメタンスルホナト)、エチレンビス(4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリド、イソプロピリデン(シクロペンタジエニル−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、イソプロピリデン(シクロペンタジエニル−メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス(メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス(ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス(トリメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス(インデニル)ジルコニウムビス(トリフルオロメタンスルホナト)、rac−ジメチルシリレンビス{1−(2−メチル−4,5−アセナフトシクロペンタジエニル)}ジルコニウムジクロリド、rac−ジメチルシリレンビス{1−(2−メチル−4,5−ベンゾインデニル)}ジルコニウムジクロリド、rac−ジメチルシリレンビス{1−(2−メチル−4−イソプロピル−7−メチルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、rac−ジメチルシリレンビス{1−(2−メチル−4−フェニルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、rac−ジメチルシリレンビス{1−(2−メチルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス(4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルシリレンビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド、メチルフェニルシリレンビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジブロミド、ビス(シクロペンタジエニル)メチルジルコニウムモノクロリド、ビス(シクロペンタジエニル)エチルジルコニウムモノクロリド、ビス(シクロペンタジエニル)シクロヘキシルジルコニウムモノクロリド、ビス(シクロペンタジエニル)フェニルジルコニウムモノクロリド、ビス(シクロペンタジエニル)ベンジルジルコニウムモノクロリド、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムモノクロリドモノハイドライド、ビス(シクロペンタジエニル)メチルジルコニウムモノハイドライド、ビス(シクロペンタジエニル)ジメチルジルコニウム、ビス(シクロペンタジエニル)ジフェニルジルコニウム、ビス(シクロペンタジエニル)ジベンジルジルコニウム、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムメトキシクロリド、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムエトキシクロリド、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムビス(メタンスルホナト)、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムビス(p−トルエンスルホナト)、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムビス(トリフルオロメタンスルホナト)、ビス(メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムエトキシクロリド、ビス(ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムビス(トリフルオロメタンスルホナト)、ビス(エチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(メチルエチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(プロピルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(メチルプロピルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(メチルブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(メチルブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムビス(メタンスルホナト)、ビス(トリメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(テトラメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(ペンタメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(ヘキシルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(トリメチルシリルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド等。
【0024】
なお上記各例示において、シクロペンタジエニル環の二置換体は1,2−および1,3−置換体を含み、三置換体は1,2,3−および1,2,4−置換体を含む。またプロピル、ブチル等のアルキル基は、n−、i−、sec−、tert−等の異性体を含む。
【0025】
また、上記各ジルコニウム化合物において、ジルコニウム金属をチタン金属またはハフニウム金属に置換した遷移金属化合物を用いることもできる。また同様な立体構造を有するチタニウム化合物やハフニウム化合物、さらには臭化物、ヨウ化物等の他に、例えば特開平3−9913号公報、特開平2−131488号公報、特開平3−21607号公報、特開平3−106907号公報、特開平3−188092号公報、特開平4−69394号公報、特開平4−300887号公報、国際公開第2001/27124号等に記載されているような遷移金属化合物を挙げることができる。
【0026】
また遷移金属化合物として、特開平11−315109号公報に記載されているような下記一般式(IV)で表される遷移金属化合物も挙げられる。
【0028】
(式(III)中、Mは周期表第4〜6族の遷移金属原子を示し、mは1〜6の整数を示し、R
1〜R
6は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、ヘテロ環式化合物残基、酸素含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、イオウ含有基、リン含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、またはスズ含有基を示し、これらのうちの2個以上が互いに連結して環を形成していてもよく、またmが2以上の場合にはR
1〜R
6のうち2個の基が連結されていてもよく(但しR
1同士が結合されることはない)、nはMの価数を満たす数であり、Xは水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、酸素含有基、イオウ含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、アルミニウム含有基、リン含有基、ハロゲン含有基、ヘテロ環式化合物残基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、またはスズ含有基を示し、nが2以上の場合はXで示される複数の基は互いに同一でも異なっていてもよく、またXで示される複数の基は互いに結合して環を形成してもよい。)
【0029】
担体担持型の遷移金属錯体系触媒成分を構成する成分(A−2)は、有機金属化合物(a)、有機アルミニウムオキシ化合物(b)、および(A−1)と反応してイオン対を形成する化合物(c)から選ばれる少なくとも1種の化合物である。
【0030】
有機金属化合物(a)としては、例えば下記一般式(IV)、(V)、(VI)で表される周期表第1、2族および第12、13族の有機金属化合物を用いることができる。
【0031】
R
amAl(OR
b)
nH
pX
q ・・・(IV)
(式(IV)中、R
aおよびR
bは互いに同一でも異なっていてもよく、炭素数が1〜15、好ましくは1〜4の炭化水素基を示し、Xはハロゲン原子を示し、mは0<m≦3、nは0≦n<3、pは0≦p<3、qは0≦q<3の数であり、m+n+p+q=3である。)
で表される有機アルミニウム化合物。この化合物の具体例としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、ジイソブチルアルミニウムハイドライドが挙げられる。
【0032】
M
2AlR
a4 ・・・(V)
(式(V)中、M
2はLi、NaまたはKを示し、R
aは炭素数が1〜15、好ましくは1〜4の炭化水素基を示す。)
で表される周期表第1族金属とアルミニウムとの錯アルキル化物。この化合物の具体例としては、LiAl(C
2H
5)
4、LiAl(C
7H
15)
4が挙げられる。
【0033】
R
aR
bM
3 ・・・(VI)
(式(VI)中、R
aおよびR
bは互いに同一でも異なっていてもよく、炭素数が1〜15、好ましくは1〜4の炭化水素基を示し、M
3はMg、ZnまたはCdである。)
で表される周期表第2族または第12族金属のジアルキル化合物。
【0034】
上記の有機金属化合物の中では、有機アルミニウム化合物が好ましい。また、有機金属化合物は1種単独で用いても良いし、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0035】
有機アルミニウムオキシ化合物(b)としては、公知のアルミノキサンを用いることができる。具体的には、例えば下記一般式(VII)、(VIII)で表される化合物を用いることができる。
【0038】
(式(VII)および(VIII)中、Rは炭素数1〜10の炭化水素基、nは2以上の整数を示す。)
【0039】
有機アルミニウムオキシ化合物(b)としては、上記一般式(VII)および(VIII)において、Rがメチル基であるメチルアルミノキサンでnが3以上、好ましくは10以上のものが好適に利用される。これらアルミノキサン類には、若干の有機アルミニウム化合物が混入していても差し支えない。また特開平2−78687号公報に例示されているようなベンゼン不溶性の有機アルミニウムオキシ化合物であってもよい。特開平2−167305号公報に記載されている有機アルミニウムオキシ化合物、特開平2−24701号公報、特開平3−103407号公報に記載されている二種類以上のアルキル基を有するアルミノキサン等も好適に利用できる。
【0040】
このようなアルミノキサンは、例えば下記(1)〜(3)の方法によって製造でき、通常、炭化水素溶媒の溶液として得られる。
(1)吸着水を含有する化合物あるいは結晶水を含有する塩類、例えば塩化マグネシウム水和物、硫酸銅水和物、硫酸アルミニウム水和物、硫酸ニッケル水和物、塩化第1セリウム水和物等の炭化水素媒体懸濁液に、トリアルキルアルミニウム等の有機アルミニウム化合物を添加して、有機アルミニウム化合物と吸着水または結晶水とを反応させる方法。
(2)ベンゼン、トルエン、エチルエーテル、テトラヒドロフラン等の媒体中で、トリアルキルアルミニウム等の有機アルミニウム化合物に直接水や氷や水蒸気を作用させる方法。
(3)デカン、ベンゼン、トルエン等の媒体中でトリアルキルアルミニウム等の有機アルミニウム化合物に、ジメチルスズオキシド、ジブチルスズオキシド等の有機スズ酸化物を反応させる方法。
【0041】
アルミノキサンは、少量の有機金属成分を含有してもよい。また回収されたアルミノキサンの溶液から溶媒あるいは未反応有機アルミニウム化合物を蒸留して除去した後、溶媒に再溶解してもよい。
【0042】
アルミノキサンを調製する際に用いられる有機アルミニウム化合物の具体例としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリn−ブチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリsec−ブチルアルミニウム、トリtert−ブチルアルミニウム、トリペンチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、トリデシルアルミニウム等のトリアルキルアルミニウム;トリシクロヘキシルアルミニウム、トリシクロオクチルアルミニウム等のトリシクロアルキルアルミニウム;ジメチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムブロミド、ジイソブチルアルミニウムクロリド等のジアルキルアルミニウムハライド;ジエチルアルミニウムハイドライド、ジイソブチルアルミニウムハイドライド等のジアルキルアルミニウムハイドライド;ジメチルアルミニウムメトキシド、ジエチルアルミニウムエトキシド等のジアルキルアルミニウムアルコキシド;ジエチルアルミニウムフェノキシド等のジアルキルアルミニウムアリーロキシドが挙げられる。中でもトリアルキルアルミニウムおよびトリシクロアルキルアルミニウムが好ましい。
【0043】
さらに、有機アルミニウム化合物として下記一般式(IX)で表わされるイソプレニルアルミニウムを用いることもできる。
【0044】
(i−C
4H
9)
xAl
y(C
5H
10)
z ・・・(IX)
(式(IX)中、x、y、zは正の数であり、z≧2xである)
【0045】
有機アルミニウム化合物は1種単独で用いても良いし、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0046】
アルミノキサンの調製の際に用いられる溶媒の具体例としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、クメン、シメン等の芳香族炭化水素、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、ヘキサデカン、オクタデカン等の脂肪族炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロオクタン、メチルシクロペンタン等の脂環族炭化水素、ガソリン、灯油、軽油等の石油留分あるいは上記芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素のハロゲン化物、とりわけ塩素化物、臭素化物等の炭化水素溶媒が挙げられる。その他、エチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類を用いることもできる。中でも、芳香族炭化水素が好ましい。
【0047】
(A−1)と反応してイオン対を形成する化合物(c)(以下「イオン化イオン性化合物(c)」という)としては、例えば、特開平1−501950号公報、特開平1−502036号公報、特開平3−179005号公報、特開平3−179006号公報、特開平3−207703号公報、特開平3−207704号公報、米国特許5321106号等に記載されたルイス酸、イオン性化合物、ボラン化合物およびカルボラン化合物、さらにヘテロポリ化合物およびイソポリ化合物が挙げられる。イオン化イオン性化合物(c)は1種単独で用いても良いし、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0048】
以上、成分(A−2)として使用可能な成分である、有機金属化合物(a)、有機アルミニウムオキシ化合物(b)、イオン化イオン性化合物(c)を説明したが、特に、有機アルミニウムオキシ化合物(b)を成分(A−2)として用いることが好ましい。
【0049】
微粒子状担体(A−3)としては、例えば、SiO
2、Al
2O
3、MgO、ZrO
2、TiO
2、B
2O
3、CaO、ZnO、BaO、ThO
2、およびこれらを含む混合物(例えばSiO
2−MgO、SiO
2−Al
2O
3、SiO
2−TiO
2、SiO
2−V
2O
5、SiO
2−Cr
2O
3、SiO
2−TiO
2−MgO)等の無機酸化金属担体、MgCl
2、MgBr
2、MnCl
2、MnBr
2等の無機塩化物担体、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ1−ブテン、ポリ4−メチル−1−ペンテン、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体等の有機担体が挙げられる。また、粘土、その成分である粘土鉱物、イオン交換性層状化合物等を無機担体として用いることもできる。
【0050】
無機化合物を用いた担体の平均粒径は、好ましくは1〜300μm、より好ましくは3〜200μmである。このような担体は、必要に応じて100〜1000℃、好ましくは150〜700℃で焼成して使用される。
【0051】
無機塩化物は、そのまま用いてもよいし、ボールミル、振動ミルにより粉砕した後に用いてもよい。また、アルコール等の溶媒に無機塩化物を溶解させた後、析出剤によって微粒子状に析出させたものを用いることもできる。
【0052】
粘土を用いた担体は、通常粘土鉱物を主成分として構成される。また、イオン交換性層状化合物を用いた担体は、イオン結合等によって構成される面が互いに弱い結合力で平行に積み重なった結晶構造を有し、含有するイオンが交換可能なものである。大部分の粘土鉱物はイオン交換性層状化合物である。また、これらの粘土、粘土鉱物、イオン交換性層状化合物としては、天然産のものに限らず、人工合成物を使用することもできる。また、粘土、粘土鉱物またはイオン交換性層状化合物として、粘土、粘土鉱物、また、六方細密パッキング型、アンチモン型、CdCl
2型、CdI
2型等の層状の結晶構造を有するイオン結晶性化合物等を例示することができる。このような粘土、粘土鉱物としては、例えばカオリン、ベントナイト、木節粘土、ガイロメ粘土、アロフェン、ヒシンゲル石、パイロフィライト、ウンモ群、モンモリロナイト群、バーミキュライト、リョクデイ石群、パリゴルスカイト、カオリナイト、ナクライト、ディッカイト、ハロイサイト等が挙げられる。イオン交換性層状化合物としては、例えばα−Zr(HAsO
4)
2・H
2O、α−Zr(HPO
4)
2、α−Zr(KPO
4)
2・3H
2O、α−Ti(HPO
4)
2、α−Ti(HAsO
4)
2・H
2O、α−Sn(HPO
4)
2・H
2O、γ−Zr(HPO
4)
2、γ−Ti(HPO
4)
2、γ−Ti(NH
4PO
4)
2・H
2O等の多価金属の結晶性酸性塩等が挙げられる。粘土、粘土鉱物には、化学処理を施すことも好ましい。化学処理としては、表面に付着している不純物を除去する表面処理、粘土の結晶構造に影響を与える処理等、何れも使用できる。化学処理として具体的には、酸処理、アルカリ処理、塩類処理、有機物処理等が挙げられる。
【0053】
イオン交換性層状化合物は、イオン交換性を利用し、層間の交換性イオンを別の大きな嵩高いイオンと交換することにより、層間が拡大した状態の層状化合物であってもよい。このような嵩高いイオンは、層状構造を支える支柱的な役割を担っており、通常、ピラーと呼ばれる。また、このように層状化合物の層間に別の物質を導入することをインターカレーションという。インターカレーションするゲスト化合物としては、TiCl
4、ZrCl
4等の陽イオン性無機化合物、Ti(OR)
4、Zr(OR)
4、PO(OR)
3、B(OR)
3等の金属アルコキシド(Rは炭化水素基等)、[Al
13O
4(OH)
24]
7+、[Zr
4(OH)
14]
2+、[Fe
3O(OCOCH
3)
6]
+等の金属水酸化物イオン等が挙げられる。これらの化合物は単独でまたは2種以上組み合わせて用いられる。また、これらの化合物をインターカレーションする際に、Si(OR)
4、Al(OR)
3、Ge(OR)
4等の金属アルコキシド(Rは炭化水素基等)等を加水分解して得た重合物、SiO
2等のコロイド状無機化合物等を共存させることもできる。また、ピラーとしては、上記金属水酸化物イオンを層間にインターカレーションした後に加熱脱水することにより生成する酸化物等が挙げられる。これらのうち、好ましいものは粘土または粘土鉱物であり、特に好ましいものはモンモリロナイト、バーミキュライト、ペクトライト、テニオライトおよび合成雲母である。
【0054】
有機担体に用いる有機化合物としては、粒径が1〜300μmの範囲にある顆粒状ないしは微粒子状固体が挙られる。具体的には、先に例示したように、エチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン等の炭素数が2〜14のα−オレフィンを主成分として生成される(共)重合体またはビニルシクロヘキサン、スチレンを主成分として生成される(共)重合体、およびそれらの変成体が挙げられる。
【0055】
また、特開平11−140113号公報、特開2000−38410号公報、特開2000−95810号公報、国際公開第2010/55652号などに記載された方法で、先に説明した成分(A−2)を不溶化させて得られる固体成分を微粒子状担体(A−3)として用いることもできる。この場合、下記担体担持型のメタロセン系触媒成分の調製方法における、成分(A−2)との接触は必須ではない。
【0056】
オレフィン重合用固体状触媒成分(A)として好ましく用いられるものの一つである担体担持型のメタロセン系触媒成分の調製方法について説明する。担体担持型のメタロセン系触媒成分は、メタロセン系遷移金属化合物が担体に担持されてなる触媒成分であって、好ましくは先に説明した成分(A−1)と成分(A−2)[特に好ましくは成分(b)]と成分(A−3)とを含んでなる触媒成分である。この担体担持型のメタロセン系触媒は、例えば成分(A−1)、成分(A−2)および成分(A−3)を混合接触させることにより調製できる。各成分の接触順序は任意である。
【0057】
担体担持型のメタロセン系触媒成分の調製には、不活性炭化水素溶媒を用いることが好ましい。その具体的には、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、灯油等の脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン等の脂環族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;エチレンクロリド、クロルベンゼン、ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素あるいはこれらの混合物が挙げられる。
【0058】
担体担持型のメタロセン系触媒成分を調製するに際して、遷移金属化合物(A−1)は、遷移金属原子換算で微粒子状担体(A−3)1g当り通常0.001〜1.0ミリモル、好ましくは0.005〜0.5ミリモルの量で用いられる。有機アルミニウムオキシ化合物(b)は、アルミニウム原子換算で、通常0.1〜100ミリモル、好ましくは0.5〜20ミリモルの量で用いられる。有機アルミニウム化合物を用いる場合、その有機アルミニウム化合物は微粒子状担体(A−3)1g当り、通常0.001〜1000ミリモル、好ましくは2〜500ミリモルの量で用いられる。
【0059】
上記各成分を混合接触させる際の温度は、通常−50〜150℃、好ましくは−20〜120℃であり、接触時間は1〜1000分間、好ましくは5〜600分間である。
【0060】
このようにして得られる担体担持型のメタロセン系触媒成分には、微粒子状担体(A−3)1g当たり、遷移金属化合物(A−1)が遷移金属原子換算で約5×10
−6〜10
−3モル、好ましくは10
−5〜3×10
−4モルの量で担持され、有機アルミニウムオキシ化合物(b)がアルミニウム原子換算で約10
−3〜10
−1モル、好ましくは2×10
−3〜5×10
−2モルの量で担持されていることが望ましい。
【0061】
オレフィン重合用固体状触媒成分(A)は、オレフィンが予備重合された予備重合触媒成分であってもよい。予備重合触媒成分は、オレフィン重合用触媒と、必要に応じて予備重合により生成するオレフィン重合体とから形成されている。予備重合触媒は、遷移金属化合物(A−1)と、有機アルミニウムオキシ化合物(b)等の成分(A−2)と、微粒子状担体(A−3)とを含み、必要に応じて予備重合により生成するオレフィン重合体(D)を含む。予備重合触媒を調製する方法としては、例えば、成分(A−1)、(A−2)(A−3)を不活性炭化水素溶媒中またはオレフィン媒体中で混合接触させて得られる固体触媒成分に、少量のオレフィンを予備重合する方法がある。予備重合触媒の調製に用いられる不活性炭化水素溶媒の具体例としては、先に説明した担体担持型のメタロセン系触媒を調製する際に用いられる不活性炭化水素溶媒と同様のものが挙げられる。
【0062】
予備重合時に用いられるオレフィンは、エチレンを100〜0モル%、プロピレンを0〜49モル%および炭素数が4以上のオレフィンを0〜100モル%の範囲、好ましくはエチレンを100〜0モル%、プロピレンを0〜20モル%および炭素数が4以上のオレフィンを0〜100モル%の範囲、より好ましくはエチレンを100〜20モル%、プロピレンを0〜20モル%および炭素数が4以上のオレフィンを0〜80モル%の範囲、特に好ましくはエチレンを100〜20モル%および炭素数が4以上のオレフィンを0〜80モル%の範囲で含有していることが望ましい。
【0063】
炭素数が4以上のオレフィンとして具体的には、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセン等の炭素数が4〜20のα−オレフィンが挙げられる。さらに、シクロペンテン、シクロヘプテン、ノルボルネン、5−メチル−2−ノルボルネン、テトラシクロドデセン、2−メチル1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン、スチレン、ビニルシクロヘキサン、ジエン類等を用いることもできる。
【0064】
予備重合触媒を調製するに際して、遷移金属化合物(A−1)は、遷移金属原子換算で微粒子状担体(A−3)1g当り、通常0.001〜1.0ミリモル、好ましくは0.005〜0.5ミリモルの量で用いられる。有機アルミニウムオキシ化合物(b)は、アルミニウム原子換算で、通常0.1〜100ミリモル、好ましくは0.5〜20ミリモルの量で用いられる。
【0065】
上記のようにして得られる予備重合触媒には、微粒子状担体(A−3)1g当たり、遷移金属化合物(A−1)が遷移金属原子換算で約5×10
−6〜10
−3モル、好ましくは10
−5〜3×10
−4モルの量で担持され、有機アルミニウムオキシ化合物(b)がアルミニウム原子換算で約10
−3〜10
−1モル、好ましくは2×10
−3〜5×10
−2モルの量で担持され、予備重合により生成するオレフィン重合体(D)が、約0.1〜500g、好ましくは0.3〜300g、特に好ましくは1〜100gの量で担持されていることが望ましい。
【0066】
なお、オレフィン重合用固体状触媒成分(A)は、以上説明した各成分以外にも、重合に有用な他の成分を含むことができる。また、担体担持型のメタロセン系触媒成分には、必要に応じて有機アルミニウム化合物や界面活性剤を触媒合成時または予備重合時に任意に含んでいてもよい。
【0067】
[アミド化合物(B)]
本発明に用いるアミド化合物(B)は、下記一般式(I)で表されるアミド化合物である。このような特定のアミド化合物をオレフィン重合時の添加剤として用いることによって、オレフィン系重合体を高活性で製造できると共に、ファウリング等の諸問題の発生を抑制できる。具体的には、本発明に用いるアミド化合物(B)は従来の添加剤と比較して比較的少量で諸問題の発生を効果的に抑制できるので、添加剤の添加による重合活性の低下の度合いを少なくでき、その結果として、オレフィン系重合体を高活性で製造できるのである。
【0069】
(式(I)中、R
1およびR
2はそれぞれ炭素数1以上32以下の炭化水素基であり、互いに同一でも異なってもよく、R
3、R
4およびR
5は、水素原子、炭素数1以上18以下の炭化水素基、酸素含有炭化水素基または硫黄含有炭化水素基であり、互いに同一でも異なってもよく、aおよびbはそれぞれ0以上の整数であり、互いに同一でも異なってもよく、a+bは1以上である。)
【0070】
一般式(I)におけるR
1およびR
2(炭素数1以上32以下の炭化水素基)は、飽和でも不飽和でもよく、脂肪族でも芳香族でもよく、直鎖状でも分岐状でも環状でもよい。例えば、アルキル基やアルケニル基等の脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基の何れも用いることができる。好ましい具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、へキシル基、へプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ラウリル基、オレオイル基等のアルキル基またはアルケニル基が挙げられる。その他、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;フェニル基、トリル基等のアリール基;ベンジル基、ネオフィル基等のアラルキル基も挙げられる。特に、炭素数1以上18以下の炭化水素基が好ましく、炭素数1以上18以下のアルキル基およびアルケニル基がより好ましい。
【0071】
一般式(I)におけるR
3、R
4およびR
5が炭素数1以上18以下の炭化水素基の場合、その好ましい具体例としては、上記の炭化水素基と同様のものが挙げられる。R
3、R
4およびR
5が炭素数1以上18以下の酸素含有炭化水素基の場合、その具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、エタノール基、プロピオン酸基が挙げられる。炭素数1以上18以下の硫黄含有炭化水素基の場合、その具体例としては、メチルチオ基、メタンチオール基が挙げられる。R
3、R
4およびR
5としては、水素原子および炭素数1以上18以下の炭化水素基が好ましく、水素原子および炭素数1以上6以下のアルキル基がより好ましい。
【0072】
一般式(I)におけるaおよびbはそれぞれ0以上の整数であり、a+bは1以上であり、好ましくは1以上10以下であり、より好ましくは1以上5以下であり、最も好ましくは1(すなわちaおよびbの一方が1で他方が0)である。例えばa=1、b=0の場合は下記一般式(I−1)で表されるN−アシルサルコシン化合物(N−アシル−N−アルキルグリシン化合物)となり、a=0、b=1の場合は下記一般式(I−2)で表されるカルボン酸N−アルキルエタノールアミド化合物となる。何れも成分(B)として好適な化合物である。
【0075】
(式(I−1)および(I−2)中、R
1〜R
5は式(I)のR
1〜R
5と同じである。)
【0076】
一般式(I−1)および(I−1)におけるR
1およびR
2としては、炭素数1以上18以下の炭化水素基が好ましく、炭素数1以上18以下のアルキル基およびアルケニル基がより好ましい。さらに、R
2としては、炭素数1以上4以下のアルキル基が特に好ましく、メチル基が最も好ましい。R
3、R
4およびR
5としては、水素原子および炭素数1以上18以下の炭化水素基が好ましく、水素原子および炭素数1以上6以下のアルキル基がより好ましく、水素原子および炭素数1以上2以下のアルキル基が特に好ましく、水素原子が最も好ましい。
【0077】
一般式(I−1)で表される化合物の具体例としては、N−カプリロイルサルコシン、N−ラウロイルサルコシン、N−ミリストイルサルコシン、N−パルミトイルサルコシン、N−ステアロイルサルコシン、N−オレオイルサルコシン、N−ラウロイル−N−エチルグリシン、N−ラウロイル−N−プロピルグリシン、N−ラウロイル−N−ブチルグリシン、N−ラウロイル−N−シクロヘキシルグリシン、N−ラウロイル−N−フェニルグリシン、N−ラウロイル−N−ベンジルグリシン、N−ラウロイル−N−メチルアラニン、N−ラウロイル−N−メチルアスパラギン酸、N−ラウロイル−N−メチルシステイン、N−ラウロイル−N−メチルグルタミン酸、N−ラウロイル−N−メチルロイシン、N−ラウロイル−N−メチルイソロイシン、N−ラウロイル−N−メチルメチオニン、N−ラウロイル−N−メチルフェニルアラニン、N−ラウロイル−N−メチルセリン、N−ラウロイル−N−メチルトレオニン、N−ラウロイル−N−メチルチロシン、N−ラウロイル−N−メチルバリンが挙げられる。中でも、R
2がメチル基、R
3が水素原子である化合物が好ましく、特にN−ラウロイルサルコシン、N−オレオイルサルコシン、N−カプリロイルサルコシン、N−ミリストイルサルコシン、N−ステアロイルサルコシンがより好ましい。
【0078】
一般式(I−2)で表される化合物の具体例としては、カプリル酸N−メチルエタノールアミド、カプリン酸N−メチルエタノールアミド、ラウリン酸N−メチルエタノールアミド、ミリスチン酸N−メチルエタノールアミド、パルミチン酸N−メチルエタノールアミド、ステアリン酸N−メチルエタノールアミド、オレイン酸N−メチルエタノールアミド、リノール酸N−メチルエタノールアミド、リノレン酸N−メチルエタノールアミド、ヤシ油脂肪酸N−メチルエタノールアミド、ラウリン酸N−エチルエタノールアミド、ラウリン酸N−プロピルエタノールアミド、ラウリン酸N−ブチルエタノールアミド、ラウリン酸N−フェニルエタノールアミド、ラウリン酸N−ベンジルエタノールアミド、ラウリン酸N−メチルイソプロパノールアミド、ラウリン酸N−メチルイソブタノールアミドが挙げられる。中でも、R
2がメチル基、R
4およびR
5が水素原子である化合物が好ましく、特にヤシ油脂肪酸N−メチルエタノールアミド、ラウリン酸N−メチルエタノールアミド、ステアリン酸N−メチルエタノールアミド、オレイン酸N−メチルエタノールアミドがより好ましい。
【0079】
その他に、一般式(I)で表される化合物の具体例としては、エチレングリコールN−ラウロイルサルコシネート、ポリオキシエチレンN−ラウロイルサルコシネート、ポリオキシプロピレンN−ラウロイルサルコシネート、ポリオキシエチレンヤシ油脂肪酸N−メチルエタノールアミド、ポリオキシプロピレンヤシ油脂肪酸N−メチルエタノールアミドも挙げられる。
【0080】
[オレフィン重合体の製造]
本発明のオレフィン重合体の製造方法では、以上説明したオレフィン重合用固体状触媒成分(A)およびアミド化合物(B)の存在下、エチレンおよび炭素数3〜20のα−オレフィンよりなる群から選ばれる一種以上のオレフィンを重合器内で(共)重合する。本発明において「(共)重合」の語は、重合および共重合の両方を包含した意味で用いている。また本発明において「重合」および「重合体」は、単独重合および単独重合体だけでなく共重合および共重合体をも包含した意味で用いることがある。
【0081】
(共)重合の際の、オレフィン重合用固体状触媒成分(A)およびアミド化合物(B)の添加方法は任意であり、成分(A)を添加した後に成分(B)を添加してもよいし、成分(B)を添加した後に成分(A)を添加してもよいし、成分(A)と成分(B)とを混合接触させた後に添加してもよい。
【0082】
重合は、懸濁液中、溶液中または気相中の何れでも行うことができ、特に懸濁液中または気相中で、スラリー重合または気相重合により好適に行われる。スラリー重合において用いられる不活性炭化水素媒体としては、具体的には、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、灯油等の脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン等の脂環族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;エチレンクロリド、クロルベンゼン、ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素あるいはこれらの混合物が挙げられる。中でも、脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素が好ましい。
【0083】
重合温度は、スラリー重合の場合は通常−50〜150℃、好ましくは0〜100℃であり、気相重合の場合は通常0〜120℃、好ましくは20〜100℃である。重合圧力は、通常、常圧〜10MPaゲージ圧、好ましくは常圧〜5MPaゲージ圧である。重合反応は、回分式、半連続式、連続式の何れの方法でも行うことができる。
【0084】
重合を、反応条件の異なる2段以上に分けて行うことも可能である。得られるオレフィン重合体の分子量は、重合系に水素を存在させるか、または重合温度を変化させることによっても調節することができる。
【0085】
エチレンおよび炭素数3〜20のα−オレフィンの具体例としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセンが挙げられる。これらは1種単独で、また2種以上組み合わせて用いることができる。また、エチレンおよび炭素数3〜20のα−オレフィンに加えて、さらに他の共重合モノマーを併用して共重合してもよい。共重合モノマーとしては、例えばシクロペンテン、シクロヘプテン、ノルボルネン、5−メチル−2−ノルボルネン、テトラシクロドデセン、2−メチル−1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレンが挙げられる。さらにスチレン、ビニルシクロヘキサン、ジエンを用いることもできる。
【0086】
オレフィンとしては、エチレン単独またはエチレンと炭素数3以上20以下のα−オレフィンを用いることが好ましい。特に、エチレンを100〜0モル%、プロピレンを0〜49モル%および炭素数4以上のオレフィンを0〜100モル%の範囲内で用いることが好ましく、エチレンを100〜0モル%、プロピレンを0〜20モル%および炭素数4以上のα−オレフィンを0〜100モル%の範囲内で用いることがより好ましく、エチレンを100〜20モル%、プロピレンを0〜20モル%および炭素数4以上のα−オレフィンを0〜80モル%の範囲内で用いることが特に好ましく、エチレンを100〜20モル%および炭素数4以上のα−オレフィンを0〜80モル%の範囲内で用いることが最も好ましい。さらに本発明においては、エチレンを主モノマーとするエチレン系重合体を製造することが好ましく、エチレン系重合体としては、エチレン成分を50モル%以上含み、必要に応じて炭素数4ないし10のα−オレフィン成分を含む(共)重合体が好ましい。
【0087】
重合に際してオレフィン重合用触媒(A)は、遷移金属化合物(A−1)中の遷移金属原子に換算して重合容積1リットル当り、通常10
−8〜10
−3モル、好ましくは10
−7〜10
−4モルの量で用いることが望ましい。有機アルミニウムオキシ化合物(A−2)は、アルミニウム原子換算で遷移金属化合物(A−1)中の遷移金属原子1モル当り、通常10〜500モル、好ましくは20〜200モルの量で用いることが望ましい。アミド化合物(B)は、オレフィン重合体収量に対して0.1ppm以上500ppm以下の量で用いることが望ましい。アミド化合物(B)を0.1ppm以上の量で用いれば、ファウリング等の諸問題の発生の抑制効果が十分に得られる傾向がある。一方、500ppm以下の量で用いれば、重合溶媒およびガスの回収、精製処理への負荷増大や触媒性能低下を抑制できる傾向にある。アミド化合物(B)の使用量は、より好ましくは0.5ppm以上200ppm以下、特に好ましくは1ppm以上100ppm以下である。
【実施例】
【0088】
以下の実施例により本発明をさらに具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例の記載に限定されるものではない。
【0089】
[調製例1](固体触媒成分(X−1)の調製)
内容積270Lの攪拌機付き反応器を用い、窒素雰囲気下、シリカゲル(富士シリシア化学株式会社製、平均粒径70μm、比表面積340m
2/g、細孔容積1.3cm
3/g、250℃で10時間乾燥)10kgを77Lのトルエンに懸濁させ、その後0〜5℃に冷却した。系内温度を0〜5℃に保持しつつ、この懸濁液にメチルアルミノキサンのトルエン溶液(Al原子換算で3.5mol/L)19.4Lを30分間かけて滴下した。そして各添加成分を30分間接触させた後、系内温度を1.5時間かけて95℃まで昇温し、引き続き93〜97℃で4時間接触させた。その後、常温まで降温して、上澄み液をデカンテーションにより除去し、さらにトルエンで2回洗浄し、全量115Lの固体状担体のトルエンスラリーを得た。このスラリーの一部を採取し分析したところ、固体分濃度は123g/Lであった。
【0090】
得られたスラリーの内、12.2L(固体分として1.50kg)を内容積114Lの撹拌機付き反応器に窒素雰囲気下で装入し、さらに全量が28Lになるようトルエンを添加した。次に、ビス(1,3−n−ブチルメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド23.5g(Zr原子換算で54.2mmol)をトルエン5.0Lに溶解させた溶液を、上記反応器に圧送し、系内温度20〜25℃で1時間接触させた。上澄み液をデカンテーションにより除去し、ヘキサンを用いて3回洗浄した。その後さらにヘキサンを加えて全量を30Lとし、固体触媒成分(X−1)のヘキサンスラリーを得た。
【0091】
[調製例2](予備重合固体触媒成分(XP−1)の調製)
調製例1で得られた固体触媒成分のヘキサンスラリー30Lを10℃まで冷却し、これにジイソブチルアルミニウムヒドリド(DiBAl−H)2.89molを添加した。系内温度を10〜15℃に保持しつつ、常圧下でエチレンを系内に連続的に数分間供給し、次いで1−ヘキセン70mlを添加した。その後1.46kg/hでエチレン供給を開始し、系内温度32〜37℃にて予備重合を行った。予備重合を開始してから30分毎に計5回、1−ヘキセン70mlを添加し、予備重合開始から180分後にエチレン供給が4.37kgに到達したところで、エチレン供給を停止した。その後、上澄み液をデカンテーションにより除去し、ヘキサンを用いて4回洗浄した。その後さらにヘキサンを加えて全量を30Lとし、予備重合固体触媒成分(XP−1)のヘキサンスラリーを得た。
【0092】
次に、ヘキサンスラリーを、内容積43Lの撹拌機付き蒸発乾燥機に窒素雰囲気下で挿入し、約60分かけて−68kPaGまで減圧し、−68kPaGに到達したところで約4.3時間真空乾燥し、ヘキサンおよび予備重合触媒成分中の揮発分を除去した。さらに−100kPaGまで減圧し、−100kPaGに到達したところで8時間真空乾燥し、予備重合固体触媒成分(XP−1)6.20kgを得た。
【0093】
[実施例1]
(重合評価(i):重合時のオートクレーブ器壁状態評価)
充分に窒素置換した1Lのステンレス製オートクレーブにn−ヘプタン500mlを装入し、系内をエチレンで置換し、1−へキセン10ml、調製例2で得た予備重合固体触媒成分(XP−1)250mgを投入し、55℃まで昇温した。この予備重合固体触媒成分(XP−1)の添加から55℃になるまでには、約10分程度の時間がかかった。その後、成分(B)としてN−オレオイルサルコシン(和光純薬工業株式会社製)のトルエン溶液(10g/L)0.20ml(N−オレオイルサルコシンとして2.0mg)と予備重合固体触媒成分(XP−1)200mgを投入し、系内の温度を73℃に昇温した。次いで、エチレンを導入することにより重合を開始し、連続的にエチレンを供給しながら圧力を8.0kg/cm
2−Gに保ち、90分間重合を行った。重合終了後、脱圧し、ポリマーを除去し、オートクレーブの状況を確認したところ、オートクレーブの器壁や攪拌羽根へのポリマーの付着は認められなかった。
【0094】
(重合評価(ii):重合活性評価)
充分に窒素置換した1Lのステンレス製オートクレーブにn−ヘプタン500mlを装入し、系内をエチレンで置換し、1−へキセン20ml、トリイソブチルアルミニウムのデカン溶液(1.0mol/L)0.06mlを投入し、5分間室温で保持した。その後、成分(B)としてN−オレオイルサルコシン(和光純薬工業株式会社製)のトルエン溶液(10g/L)0.20ml(N−オレオイルサルコシンとして2.0mg)と予備重合固体触媒成分(XP−1)160mgを投入し、系内の温度を73℃に昇温した。次いで、エチレンを導入することにより重合を開始し、連続的にエチレンを供給しながら圧力を8.0kg/cm
2−Gに保ち、90分間重合を行った。重合終了後、脱圧し、ポリマーを濾過、洗浄し、減圧下80℃で10時間乾燥することによりポリマー98.7gを得た。
【0095】
[実施例2〜5]
成分(B)の化合物および添加量を表1に記載の条件に変更した以外は、実施例1と同様の方法で重合評価(i)ならびに重合評価(ii)を実施した。結果を表1に示す。
【0096】
[比較例1〜7]
成分(B)の化合物および添加量を表1に記載の条件に変更した以外は、実施例1と同様の方法で重合評価(i)ならびに重合評価(ii)を実施した。結果を表1に示す。
【0097】
【表1】
【0098】
実施例および比較例で使用した成分(B)の主化合物の化学式は以下の通りである。
【0099】
【化8】
【0100】
【化9】
【0101】
【化10】
【0102】
【化11】
【0103】
【化12】
【0104】
【化13】
【0105】
【化14】
【0106】
表1から明らかなように、実施例1〜5で用いた成分(B)は、比較的少ない添加量でオートクレーブの器壁や攪拌羽根へのポリマーの付着を抑制できた。したがって、高い重合活性でかつ安定的にオレフィン重合体を製造できることを理解できる。
【0107】
[調製例3](予備重合固体触媒成分(XP−2)の調製)
内容積200mlの攪拌機付き反応器に、窒素雰囲気下、調製例2で得た予備重合固体触媒成分(XP−1)10.0gを装入し、全量が50mlになるようヘキサンを添加した。次に、系内の温度を35℃に昇温し、その後成分(B)として、N−オレオイルサルコシン(和光純薬工業株式会社製)のヘキサン溶液(10g/L)5.0ml(N−オレオイルサルコシンとして50mg)投入し、引き続き32〜37℃で2時間接触させて、予備重合固体触媒成分(XP−2)のヘキサンスラリーを得た。このヘキサンスラリーを、内容積100mlのガラス製シュレンク管に移し、減圧下25℃にてヘキサンを減圧留去させて、予備重合固体触媒成分(XP−2)10.1gを得た。
【0108】
[実施例6]
(重合評価(i):重合時のオートクレーブ器壁状態評価)
充分に窒素置換した1Lのステンレス製オートクレーブにn−ヘプタン500mlを装入し、系内をエチレンで置換し、1−へキセン10ml、調製例3で得た予備重合固体触媒成分(XP−2)250mgを投入し、55℃まで昇温した。なお、予備重合固体触媒成分(XP−2)の添加から55℃になるまでには約10分程度の時間がかかった。その後、さらに予備重合固体触媒成分(XP−2)200mgを投入し、系内の温度を73℃に昇温した。次いで、エチレンを導入することにより重合を開始し、連続的にエチレンを供給しながら圧力を8.0kg/cm
2−Gに保ち、90分間重合を行った。重合終了後、脱圧し、ポリマーを除去し、オートクレーブの状況を確認したところ、オートクレーブの器壁や攪拌羽根へのポリマーの付着は認められなかった。
【0109】
(重合評価(ii):重合活性評価)
充分に窒素置換した1Lのステンレス製オートクレーブにn−ヘプタン500mlを装入し、系内をエチレンで置換し、1−へキセン20ml、トリイソブチルアルミニウムのデカン溶液(1.0mol/L)0.06mlを投入し、5分間室温で保持した。その後、予備重合固体触媒成分(XP−2)160mgを投入し、系内の温度を73℃に昇温した。次いで、エチレンを導入することにより重合を開始し、連続的にエチレンを供給しながら圧力を8.0kg/cm
2−Gに保ち、90分間重合を行った。重合終了後、脱圧し、ポリマーを濾過、洗浄し、減圧下80℃で10時間乾燥することにより、ポリマー93.6gを得た。
【0110】
[実施例7]
(重合評価(iii):気相重合による運転性評価)
気相流動床重合装置を用いて、エチレンと1−ヘキセンとの共重合を行った。重合圧力を1.7MPaG、重合温度を80℃とした。調製例2で調製した予備重合固体触媒成分(XP−1)を5.0g/hrで重合反応器中に供給した。循環ガスライン中に、成分(B)としてN−オレオイルサルコシン(和光純薬工業株式会社製)を重合体の質量に対して50wtppmの量で存在するように供給した。気相重合器内のガス組成は、エチレン分圧=1.0MPa、水素/エチレン=4.8×10
−4モル比、1−ヘキセン/エチレン=0.022モル比となるようにエチレン、水素、1−ヘキセンおよびイソペンタンを連続的に供給し、6.0kg/hrの割合で重合体を生成した。滞留時間は4時間であった。このときのポリマー密度は916kg/m
3、メルトフローレートは3.8g/10minであった。なお、メルトフローレートは、ASTMD1238−65Tに従い190℃、2.16kg加重の条件下で測定した。
【0111】
以上の条件で18時間運転を実施したが、重合器や配管等、全ての箇所にヒートスポットの発生はみられず、安定した重合が実施できた。
【0112】
[比較例8]
予備重合固体触媒成分(XP−1)の供給量を4.2g/hrとし、成分(B)を供給しなかったこと以外は実施例7と同様にして、6.0kg/hrの割合で重合体を生成した。この条件で運転した結果、重合器等にヒートスポットが発生し4時間で運転が継続できなくなった。