特許第6739196号(P6739196)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6739196
(24)【登録日】2020年7月27日
(45)【発行日】2020年8月12日
(54)【発明の名称】広口容器
(51)【国際特許分類】
   A45D 33/00 20060101AFI20200730BHJP
   A45D 34/04 20060101ALI20200730BHJP
【FI】
   A45D33/00 615F
   A45D33/00 650E
   A45D34/04 530
   A45D34/04 560
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-52427(P2016-52427)
(22)【出願日】2016年3月16日
(65)【公開番号】特開2017-164295(P2017-164295A)
(43)【公開日】2017年9月21日
【審査請求日】2019年1月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000158781
【氏名又は名称】紀伊産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079382
【弁理士】
【氏名又は名称】西藤 征彦
(74)【代理人】
【識別番号】100123928
【弁理士】
【氏名又は名称】井▲崎▼ 愛佳
(74)【代理人】
【識別番号】100136308
【弁理士】
【氏名又は名称】西藤 優子
(72)【発明者】
【氏名】小松 冨士夫
(72)【発明者】
【氏名】柴田 悟吏
【審査官】 遠藤 邦喜
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−188573(JP,A)
【文献】 実開平01−115418(JP,U)
【文献】 実開平01−072818(JP,U)
【文献】 特開平11−244038(JP,A)
【文献】 特表2017−519528(JP,A)
【文献】 特表2013−530252(JP,A)
【文献】 実開平01−062718(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0272400(US,A1)
【文献】 特開2009−153849(JP,A)
【文献】 特開2005−224398(JP,A)
【文献】 特開平07−265122(JP,A)
【文献】 特開2008−035877(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45D 33/00
A45D 34/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容物を収容するための凹部を有する容器本体と、上記容器本体の凹部内に嵌入され、上記凹部の内壁面に沿う外周面を有する筒状の多孔質弾性体と、上記筒状の多孔質弾性体の上面に載置される中蓋と、上記容器本体の上面を蓋する蓋体とを備えた広口容器であって、上記中蓋が、剛性を有する環状ガイドと、上記環状ガイドの片面に一体的に取り付けられる略板状の連続気泡多孔質弾性体とで構成され、上記略板状の連続気泡多孔質弾性体の外周形状は、上記容器本体の凹部の内周形状よりも大きく設定されており、上記略板状の連続気泡多孔質弾性体の連続気泡を経由して凹部内から内容物が取り出されるようになっていることを特徴とする広口容器。
【請求項2】
上記筒状の多孔質弾性体が、独立気泡多孔質弾性体である請求項1記載の広口容器。
【請求項3】
上記略板状の連続気泡多孔質弾性体が、乾式ウレタンスポンジ、湿式ウレタンスポンジ、ラテックススポンジのいずれかである請求項1または2記載の広口容器。
【請求項4】
上記略板状の連続気泡多孔質弾性体が、乾式ウレタンスポンジであり、その見かけ密度が20〜50kg/m3、伸び率が80%以上、セル数が10〜70個/25mmである請求項記載の広口容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液状やパウダー状の内容物を収容し、これを少しずつ取り出して使用することのできる広口容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
パウダー状の内容物を収容し、これを少しずつ取り出して使用する広口容器としては、例えば、その容器本体の開口内に、弾性脚を介して弾力的に上下動するメッシュ枠を設け、容器本体の開口の上方から、パフを上記メッシュ枠に押し付けて内側の化粧用パウダーを少しずつ取り出すようにしたパウダー容器が知られている(特許文献1を参照)。
【0003】
しかしながら、上記のように、パフをメッシュ枠に押し付けて内側の化粧用パウダーを取り出すものは、その押し付け時にメッシュ枠に無理な力がかかり、メッシュ枠が傾いたり、メッシュが枠体から外れて壊れたりするおそれがある。
【0004】
そこで、メッシュ枠を弾力的かつ安定的に支受する方法として、容器本体内に、スポンジ等の弾性体からなる筒状体を嵌入し、この筒状の弾性体によって、メッシュ枠を支受するようにしたものが、いくつか提案されている(特許文献2、3を参照)。
【0005】
例えば、上記特許文献2の化粧料容器は、図4(a)に示すように、ゲル状化粧料10を収容する容器本体1と、容器本体1の内壁に沿って設けられる弾性部材2と、上記弾性部材2の上に載置される、メッシュ3が取り付けられたメッシュ枠4とを備えている。5は、上記容器本体1の開口を蓋する中蓋であり、6は、その上面を蓋する蓋体である。
【0006】
この化粧料容器によれば、上記メッシュ枠4を支受する弾性部材2が、図4(b)に示すように、容器本体1の内壁に沿う円筒状であり、その上に載置されたメッシュ枠4を弾力的に支受するため、図4(c)に示すように、メッシュ3の上から、パフ7を下向きに押し付けると、メッシュ3に対しあまり負担をかけることなく、容器本体1内のゲル状化粧料10を、パフ7側にしみ込ませることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実公昭62−14973号公報
【特許文献2】特開2015−188573号公報
【特許文献3】特許第5188801号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このように、円筒状の弾性部材2を用いてメッシュ3への負担を軽減したものは、メッシュ3が損傷しにくいという利点を有する反面、パフ7の押し込み動作によっては、上記メッシュ3が、弾性部材2とともにゲル化粧料10に深く漬かり、メッシュ3の目の上にゲル化粧料が溢れて、押し込んだパフ7に、必要以上のゲル化粧料がべったり付くことがある。この場合は、パフ7を、容器本体1の開口縁に当てて液切りする等しなければならず、使い勝手の悪いものとなる。また、容器本体1の開口縁やその周辺がゲル化粧料で汚れやすい。さらに、パフ7がメッシュ3に引っ掛かったり巻き込まれたりしやすく、経時的に傷みやすいという問題もある。これらの問題は、内容物がパウダー状等である場合も、同様である。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、内容物を少しずつ均一に取り出すことができ使い勝手のよい、優れた広口容器の提供をその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するため、本発明は、内容物を収容するための凹部を有する容器本体と、上記容器本体の凹部内に嵌入され、上記凹部の内壁面に沿う外周面を有する筒状の多孔質弾性体と、上記筒状の多孔質弾性体の上面に載置される中蓋と、上記容器本体の上面を蓋する蓋体とを備えた広口容器であって、上記中蓋が、剛性を有する環状ガイドと、上記環状ガイドの片面に一体的に取り付けられる略板状の連続気泡多孔質弾性体とで構成され、上記略板状の連続気泡多孔質弾性体の外周形状は、上記容器本体の凹部の内周形状よりも大きく設定されており、上記略板状の連続気泡多孔質弾性体の連続気泡を経由して凹部内から内容物が取り出されるようになっている広口容器を第1の要旨とする。
【0011】
また、本発明は、そのなかでも、特に、上記筒状の多孔質弾性体が、独立気泡多孔質弾性体である広口容器を第の要旨とする。
【0012】
さらに、本発明は、それらのなかでも、特に、上記略板状の連続気泡多孔質弾性体が、乾式ウレタンスポンジ、湿式ウレタンスポンジ、ラテックススポンジのいずれかである広口容器を第の要旨とし、なかでも、特に、上記略板状の連続気泡多孔質弾性体が、乾式ウレタンスポンジであり、その見かけ密度が20〜50kg/m3、伸び率が80%以上、セル数が10〜70個/25mmである広口容器を第の要旨とする。
【0013】
なお、本発明において、「略板状」とは、厳密な板状の外、概ね板状であって部分的に厚みが異なる部分を有するもの、あるいは厚みが同じであっても湾曲しているものを含む趣旨である。
【発明の効果】
【0014】
すなわち、本発明の広口容器は、容器本体の凹部内に、上記凹部の内壁面に沿う筒状の多孔質弾性体が嵌入されているとともに、上記凹部の開口内に配置される中蓋が、剛性を有する環状ガイドと、上記環状ガイドの片面に一体的に取り付けられる略板状の連続気泡多孔質弾性体とで構成されているという特徴を有している。そして、上記略板状の連続気泡多孔質弾性体の連続気泡を経由して凹部内から内容物が取り出されるようになっている。
【0015】
この構成によれば、上記略板状の連続気泡多孔質弾性体が、それ自体保形性のある弾性体であって、その内部に分布する多数の連続気泡が、流動性ある液体やパウダー等の内容物の通り道となるため、この連続気泡を経由して、内容物を少しずつ均一に取り出すのに好都合である。
【0016】
しかも、上記略板状の連続気泡多孔質弾性体が、剛性を有する環状ガイドの片面に一体的に取り付けられているため、上記連続気泡多孔質弾性体を深く押し込んでも、上記環状ガイドが周方向に均等に、筒状の多孔質弾性体を押圧した状態でその位置が下がるようになっている。したがって、連続気泡多孔質弾性体が傾いて凹部内に落ち込むようなことがなく、繰り返し良好に使用することができる。そして、上記連続気泡多孔質弾性体の連続気泡内に、内容物を多く含むことができるため、これを深く押し込んでも、従来のメッシュのように、連続気泡多孔質弾性体の表面側に内容物が溢れて溜まるようなことがなく、必要以上の内容物がパフ等に付くことがない。
【0017】
さらに、内容物の量が減って、凹部内の底に少しだけになった場合も、上記筒状の多孔質弾性体に支受された連続気泡多孔質弾性体を大きく弾性変形させて、内容物を連続気泡に取り込むことができるため、内容物を最後まで、無駄なく使い切ることができる。
【0018】
そして、このような弾性変形を繰り返しても、連続気泡多孔質弾性体は、それ自体が型崩れしにくく、破れたりすることもないことと、クッション性のある筒状の多孔質弾性体の上面に載置されていることと相俟って、長期にわたって良好に使用することができる。コスト的にも、従来用いられてきたメッシュに比べて経済的であり、汎用性が高いという利点を有する。
【0019】
特に、本発明の広口容器、上記中蓋において、上記略板状の連続気泡多孔質弾性体の外周形状が、容器本体の凹部の内周形状よりも大きく設定されており、上記略板状の連続気泡多孔質弾性体の周縁部が、容器本体の凹部の内壁面に押圧された形で当接するため、凹部内における連続気泡多孔質弾性体の姿勢が、より安定したものとなっている。
【0020】
また、本発明の広口容器のなかでも、特に、上記筒状の多孔質弾性体が、独立気泡多孔質弾性体であるものは、上記筒状の多孔質弾性体の内部に、内容物が入り込まないため、筒状の多孔質弾性体と凹部の内壁面との間が内容物で汚れにくく、より見栄えのよいものとなる。
【0021】
さらに、本発明の広口容器のなかでも、特に、上記連続気泡多孔質弾性体が、乾式ウレタンスポンジ、湿式ウレタンスポンジ、ラテックススポンジのいずれかであるもの、そしてそのなかでも、特に、上記連続気泡多孔質弾性体が、乾式ウレタンスポンジであり、その見かけ密度が20〜50kg/m3、伸び率が80%以上、セル数が10〜70個/25mmであるものは、とりわけ、内容物を過不足なく均一に取り出すことができ、使い勝手のよいものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の一実施の形態を示す分解斜視図である。
図2】上記実施の形態の、拡大された縦断面図である。
図3】(a)は上記実施の形態に用いられる中蓋の正面図、(b)は(a)の底面図である。
図4】(a)は従来の広口容器の一例を示す部分的な縦断面図、(b)は上記広口容器に用いられる筒状の多孔質弾性体、(c)は上記広口容器の使用方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
つぎに、本発明の実施の形態を図面にもとづいて詳しく説明する。ただし、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではない。
【0024】
図1は、本発明の広口容器の一実施の形態を示す分解斜視図である。この広口容器は、リキッドファンデーション等の、粘性のある液体化粧料11(図2を参照)を収容するためのもので、比較的背の低いジャータイプの容器である。そして、液体化粧料11を収容するための凹部12を有する容器本体13と、この凹部12内に嵌入される筒状の多孔質弾性体(以下「筒状弾性体」という)14とを備えている。また、上記凹部12の開口内の、上記筒状弾性体14の上面には、略円板状の中蓋15が配置されている。
【0025】
より詳しく説明すると、上記容器本体13は、略有底円筒状の射出成形品からなり、その内側が、液体化粧料11を収容する凹部12になっている。そして、図2に示すように、容器本体13の周壁18において、その上部には、蓋体16とねじ係合するための雄ねじ部17が形成されている。また、上記雄ねじ部17の下の部分には、容器本体13の補強と見栄えの点から外筒壁19が設けられ、二重壁になっている。
【0026】
そして、上記容器本体13の内壁面に沿って、筒状弾性体14が嵌入されている。この筒状弾性体14は、筒状壁の厚みが5mmの円筒状で、独立気泡が分散形成された発泡ポリウレタンによって形成されている。上記筒状弾性体14の高さは、図2に示すように、液体化粧料11が満液の状態でその液面より高くなるよう設定される。したがって、凹部12内に収容される液体化粧料11は、実質的には、上記筒状弾性体14の内側の中空部に収容されている。
【0027】
上記筒状弾性体14の上面に配置される中蓋15は、その正面図である図3(a)とその底面図である図3(b)に示すように、剛性を有する環状ガイド15aと、その上面に一体的に取り付けられる円板状の連続気泡多孔質弾性体(以下「円板状弾性体」という)15bとで構成されている。
【0028】
上記環状ガイド15aは、厚み1mmのポリプロピレンシートの打ち抜き成形品で、その下面、すなわち上記筒状弾性体14の上面と接する面に、ごく浅い凹凸となる筋模様Sが設けられている。これは、筒状弾性体14の上面において、環状ガイド15a、すなわち中蓋15が動きにくいよう配慮したものである。
【0029】
そして、上記環状ガイド15aの上面に一体的に取り付けられる円板状弾性体15bは、厚み5mmの発泡ポリウレタンシート(連続気泡タイプ)を円板状に打ち抜き成形したものである。この円板状弾性体15bと、上記環状ガイド15aとを一体化する方法は、特に限定されないが、例えば、接着剤を用いた接着の他、超音波溶着、振動溶着、レーザ溶着等を用いることができる。さらに、環状ガイド15aを金型内に配置した状態で、円板状弾性体15bを成形するインサート成形によって、中蓋15を得るようにしてもよい。
【0030】
そして、上記中蓋15の上から容器本体13の上面を蓋する蓋体16には、図2に示すように、その内側の天井面に、液漏れを防ぐパッキン20が貼付されている。上記パッキン20は、厚み1mmの発泡ポリエチレンシートの打ち抜き成形品であり、蓋体16を容器本体13にねじ係合して締め込むと、上記パッキン20が、容器本体13の上端面に密着して、液密性が高められるようになっている。
【0031】
上記広口容器は、例えばつぎのようにして使用することができる。すなわち、まず、蓋体16を開き、容器本体13の開口内上部に配置された中蓋15を露出させる。そして、上記中蓋15の、円板状弾性体15bの中心側を、パフ等で下向きに押し込み、凹部12内の液体化粧料11を、円板状弾性体15bの連続気泡内に取り込む。そして、今度は、上記円板状弾性体15bを軽くパフ等でたたくようにして、必要な量の液体化粧料11をパフ等に保持させて、化粧に供することができる。
【0032】
このように、上記広口容器によれば、中蓋15に設けられた円板状弾性体15bが、それ自体保形性のある弾性体であって、その内部に分布する多数の連続気泡が、液体化粧料11の通り道となるため、この連続気泡を経由して、液体化粧料11を、少しずつ均一に取り出すことができる。
【0033】
また、液体化粧料11の量が少なくなって、凹部12内に押し込んだ円板状弾性体15bが凹部12内の液体化粧料11に充分に届かなくなったとしても、その押し込み動作と解除動作に伴う円板状弾性体15bの弾性変形によって、液体化粧料11が連続気泡に吸い込まれるようにして取り込まれるため、液体化粧料11を最後まで、無駄なく使い切ることができる。
【0034】
そして、このような弾性変形を繰り返しても、円板状弾性体15bは、環状ガイド15aにガイドされ、安定した状態で、クッション性のある筒状弾性体14の上に載置されているため、型崩れしたり、破れたりすることがなく、繰り返し良好に使用することができる。コスト的にも、従来用いられてきたメッシュ[図4(a)を参照]に比べて経済的であり、汎用性が高いという利点を有する。
【0035】
なお、本発明において、容器本体13内に嵌入される筒状弾性体14は、容器本体13の凹部12の内壁面に沿う外周面を有していれば、独立気泡多孔質弾性体であっても、連続気泡多孔質弾性体であってもよい。ただし、独立気泡多孔質弾性体である方が、容器本体13において、筒状弾性体14を通じて液体化粧料11が凹部12の周囲に漏れるおそれがなく、より使い勝手のよいものとなる。
【0036】
このような筒状弾性体14の材質としては、液体化粧料11等の内容物と接触しても変質せず、繰り返し圧縮されても弾性を失うことのないものが好適に用いられる。具体的には、ポリウレタンを主原料とする乾式ウレタンスポンジ(ポリエステルタイプ)、同じくポリウレタンを主原料とする湿式ウレタンスポンジ(ポリエステルタイプ、ポリエーテルタイプ)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)ラテックス、天然ゴム(NR)ラテックス、スチレンブタジエンゴム(SBR)ラテックス、イソプレンゴム(IR)ラテックス、クロロプレンゴム(CR)ラテックス等のラテックスを主原料とするラテックススポンジ等があげられる。なかでも、セルサイズの選択可能性、耐薬品性等の点から、乾式ウレタンスポンジが好適である。
【0037】
そして、上記乾式ウレタンスポンジのなかでも、特に、その見かけ密度が15〜90kg/m3、伸び率が70%以上、セル数が10〜70個/25mmの特性を有するものが、とりわけ優れたクッション性を備えており、好適である。ちなみに、このような特性を有する市販品として、カラーフォーム EMM(イノアックコーポレーション社製)やモルトプレン SF(イノアックコーポレーション社製)等があげられる。
【0038】
また、本発明において、上記中蓋15の環状ガイド15aは、上記の例のように、ポリプロピレンの打ち抜き成形品である必要はなく、各種の樹脂成形品を用いることができる。ただし、樹脂成形品の樹脂材料は、内容物である液体化粧料11等と接して変質、劣化しないものであることが望ましい。また、樹脂成形品に限らず、一定の剛性を備えるものであれば、特に限定されるものではなく、例えば、防水処理の施された厚紙や、ステンレス、ガラス、各種セラミックス成形品等を用いてもよい。
【0039】
そして、上記環状ガイド15aの剛性は、これに取り付けられる円板状弾性体15bの材質や、中蓋15を載置する筒状弾性体14の材質等に応じて、適宜の剛性に設定される。すなわち、使用時に、繰り返し円板状弾性体15bを下向きに押し付けて伸縮させても、環状ガイド15aが屈曲したり破断したりすることなく、環状の形状を保持する程度に剛性を有していることが望ましい。
【0040】
さらに、上記の例では、上記環状ガイド15aの下面に、ごく浅い凹凸となる筋模様S[図3(b)を参照]を設けて、この面と、筒状弾性体14の上面との摩擦係数を高めて、中蓋15が筒状弾性体14の上面からずれにくいようにしたが、同様の趣旨から、環状ガイド15aの下面に、筋模様ではなく適宜の配置で小突起を設けてもよい。ただし、環状ガイド15aの材質や、筒状弾性体14の材質等によっては、環状ガイド15aの下面を、必ずしもこのような凹凸面をする必要はない。
【0041】
一方、上記環状ガイド15aに取り付けられる円板状弾性体15bとしては、連続気泡を有し、液体化粧料11等の内容物と接触しても変質せず、繰り返し圧縮されても弾性を失うことのないものが好適に用いられる。具体的には、ポリウレタンを主原料とする乾式ウレタンスポンジ(ポリエステルタイプ)、同じくポリウレタンを主原料とする湿式ウレタンスポンジ(ポリエステルタイプ、ポリエーテルタイプ)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)ラテックス、天然ゴム(NR)ラテックス、スチレンブタジエンゴム(SBR)ラテックス、イソプレンゴム(IR)ラテックス、クロロプレンゴム(CR)ラテックス等のラテックスを主原料とするラテックススポンジ等があげられる。なかでも、セルサイズの選択可能性、耐薬品性等の点から、乾式ウレタンスポンジが好適である。
【0042】
そして、上記乾式ウレタンスポンジのなかでも、特に、その見かけ密度が20〜50kg/m3、伸び率が80%以上、セル数が10〜70個/25mmの特性を有するものが、とりわけ、液体化粧料11等の内容物に対する取り込み力と、圧縮解除時にその取り込んだ内容物をパフ等に付着させる作用に優れており、好適である。ちなみに、このような特性を有する乾式ウレタンスポンジの市販品として、モルトフィルター MF−20(イノアックコーポレーション社製)やモルトフィルター CFH−30(イノアックコーポレーション社製)等があげられる。
【0043】
また、上記円板状弾性体15bの厚み[図3(a)においてTで示す]は、容器の大きさや液体化粧料11の材質等に応じて適宜に設定されるが、一般に、容器本体13の凹部12内から液体化粧料11を取り出す動作のしやすさを考慮して、2〜20mm、なかでも2〜10mm程度に設定することが好適である。すなわち、円板状弾性体15bの厚みが薄すぎると、円板状弾性体15bの弾性変形が乏しいものとなって使い勝手が悪くなるおそれがあり、逆に、厚すぎると、内容物を取り出しにくくなるとともに、容器が嵩高くなりすぎて好ましくない。
【0044】
さらに、上記円板状弾性体15bは、全体が均一な厚みの円板状である必要はなく、例えば中央にいくほど厚みが厚くなった、膨らんだ形状になっていても差し支えない。そして、その膨出した部分が、環状ガイド15aに組み合わせた状態において、上向きになっていても下向きになっていてもよいが、環状ガイド15aの開口から下向きに膨出した形になっている方が、使い勝手の点で好ましい。
【0045】
そして、上記円板状弾性体15bの外周形状は、これを取り付ける環状ガイド15aの外周形状より一回り大きく、しかも、容器本体13の凹部12の内周形状よりも大きく設定されていることが必要である。すなわち、この構成によれば、環状ガイド15aから外側にはみだした円板状弾性体15bの周縁部が、容器本体13の凹部12内に押圧気味に嵌入されるため、中蓋15が凹部12の内壁面に沿って安定した状態で上下動するという利点を有するからである。
【0046】
なお、上記の例では、中蓋15を、環状ガイド15aの下面に円板状弾性体15bを取り付けた構成としたが、逆に、環状ガイド15aの上面に円板状弾性体15bを取り付けた構成にしてもよい。すなわち、この構成においても、円板状弾性体15bが筒状弾性体14の内側に落ち込むことなく、環状ガイド15aによって安定した状態で支受されるからである。
【0047】
また、本発明の広口容器は、凹部12内に筒状弾性体14が嵌入された容器本体13と、環状ガイド15aと円板状弾性体15bとを組み合わせた中蓋15と、容器本体13の上面を蓋する蓋体16とを備えたものであれば、その他の構成は、特に限定するものではない。例えば、上記の例では、容器本体13等の各パーツは射出成形品であり、容器本体13と蓋体16とが、ねじ係合によって開閉されるようになっているが、容器本体13と蓋体16とをヒンジによって連結した、いわゆるコンパクト容器タイプにしてもよい。あるいは、容器本体13と蓋体16とが、互いに水平方向にスライドして容器本体13の上面が開くようになっているものであってもよい。
【0048】
そして、本発明の広口容器は、上記の例のように、平面視が円形の容器である必要はなく、平面視が楕円状や多角形状等の容器であってもよい。その場合、筒状弾性体14や中蓋15の平面視形状も、容器本体13の平面視形状に応じて、適宜の形状に設定される。
【0049】
さらに、本発明の広口容器は、少量の化粧料サンプルを配布したりダイレクトメールで送付したりする、簡易なサンプル容器に適用することもできる。その場合は、各パーツを真空成形によって凹凸形状を付与した成形品とすることもできる。また、内容物も、液体化粧料11に限らず、ルースパウダー等のパウダー化粧料であってもよい。また、化粧料にかぎらず、各種の液状物やパウダーを収容する広口容器に適用することができる。
【0050】
上記内容物がパウダーである場合、上記円板状弾性体15bの上面にパフ等を押し付けながら容器を逆にして数回上下に振り、凹部12内からパウダーを、円板状弾性体15bの連続気泡を経由させてパフ等に振り出し、そのパフを用いて化粧等に供することができる。
【0051】
また、内容物がパウダーである場合、パウダーが凝集する等して、凹部12内から取り出しにくくなっても、パフ等を用いて上記円板状弾性体15bを凹部12内に押し込むと、上記円板状弾性体15bが弾性変形して内容物に接し、これを直接掻き取ることができる。そして、パウダー状の内容物が仮に塊状態で掻き取られても、弾性変形した円板状弾性体15bが元に戻る勢いで、上記内容物がほぐれながら連続気泡を通過するため、外に出てくるときには、内容物が細かくほぐれ、均一状態で取り出されるという利点を有する。したがって、取り出された内容物を、むらのない状態で良好に使用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、液状やパウダー状の内容物を収容し、これを少量ずつ取り出して使用することのできる広口容器として広く利用することができる。
【符号の説明】
【0053】
11 液体化粧料
12 凹部
13 容器本体
14 筒状弾性体
15 中蓋
15a 環状ガイド
15b 円板状弾性体
16 蓋体
図1
図2
図3
図4