(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示されたようなピン接合構造においては、柱101と基礎104との間に跨る鉄筋はせん断力に対抗することを目的としたせん断筋106である。すなわち、鉛直方向に作用する引張力に対して十分に抵抗できるように、コンクリート103及び基礎104に必ずしも定着されていない。したがって、地震時に例えば柱脚左側101aが浮き上がるような大きな力が柱101に作用した場合には、これに対抗できず、特に左側に位置するせん断筋106が柱101または基礎104から抜ける可能性がある。
【0007】
特許文献1の構造においては、芯鉄骨102は下端がアンカーボルト105により固定されている。しかし、上記のような柱脚左側101aが浮き上がるような力が作用した場合には、柱101は芯鉄骨102の下端を支点として回転するため、支点近傍に配設されたアンカーボルト105はこの力に十分に対抗することができない。
【0008】
すなわち、特許文献1の構造においては、大きな地震力が作用した場合に、柱101に対して作用する曲げモーメントに効果的に対抗することができない可能性がある。
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、曲げモーメントに効果的に対抗できる、基礎と鉄骨鉄筋コンクリート製の柱との接合構造及び該接合構造を備える建築構造物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を採用する。すなわち、本発明による基礎と鉄骨鉄筋コンクリート製の柱との接合構造は、前記柱の下端部は、下に向かって断面積が減少するように絞られており、前記柱の鉄筋の下端は、前記基礎に至る手前で終端し、前記柱の鉄骨の下端は、前記基礎に当接または近接し、前記基礎と前記柱間に鉛直方向に設けられて、両者を接合している軸方向筋を備え、前記軸方向筋は水平断面視上、前記鉄筋よりも内側で、かつ、前記鉄骨の外側に位置して、地震時の前記柱の傾斜に引張力で抵抗する。
このような構成によれば、柱の上方に横方向の大きな力が作用した場合には、柱の鉄骨の下端は基礎に当接または近接しているため、一方の柱脚部が浮き上がり、反対側の柱脚部が基礎中にめり込むように、鉄骨の下端を中心として柱が回転、傾斜しようとする。
ここで、基礎と柱間に鉛直方向に設けられて、両者を接合している軸方向筋が備えられている。周知のように、回転しようとする物体を停止する場合においては、回転を停止させる力を回転の中心から遠い場所に対して作用させるほど、効果的に停止させることができる。この場合においても同様に、軸方向筋の設置位置は、水平断面視上、支点となる鉄骨の外側に設けられているため、地震時の柱の傾斜に引張力で抵抗することが可能である。同時に、軸方向筋の設置位置は、水平断面視上、外周近傍に位置する柱の鉄筋よりも内側、すなわち支点となる鉄骨に近寄った位置に設けられており、柱の鉄筋の下端は、基礎に至る手前で終端しているため、鉄骨から遠く位置する柱の鉄筋を下方に延在させて基礎に定着させた、柱を剛に基礎に接合した場合に比べると、一方の柱脚の一定の浮き上がりを許容することができる。
更に、柱の下端部は、下に向かって断面積が減少するように絞られており、柱と基礎との接合面を小さくしているため、基礎にめり込むように移動する上記反対側の柱脚部の移動を妨げない。
上記の様々な要因により、柱と基礎とが半剛接合された構造になっており、これにより、地震エネルギーを吸収して曲げモーメントに効果的に対抗可能な接合構造を実現することが可能となる。
【0011】
本発明の一態様においては、前記鉄骨の下端には鋼板が接合され、前記軸方向筋の上端は前記鋼板に接合されている。
このような構成によれば、より強い引張力が作用した場合であっても、それに対抗する半剛接合を実現することができる。
【0012】
本発明の一態様においては、前記鉄骨の下端における幅は、上部における幅よりも短い。
このような構成によれば、上部における鉄骨の剛性を確保しつつ、鉄骨寄りに配される軸方向筋との干渉をなくすことができる。
【0013】
本発明の一態様においては、建築構造物の、水平断面視上、内側に位置する柱が、上記したような基礎と鉄骨鉄筋コンクリート製の柱との接合構造によって基礎に接合されている。
このような構成によれば、建築構造物の施工に際し、柱の上方に横方向の大きな力が作用した場合に、柱脚部により大きな引張力が作用する建築構造物の外側の柱を基礎と剛接合し、引張力が外側の柱よりも小さな内側の柱を上記したような半剛接合とした構造とするような構造を実現可能となり、より効果的に、曲げモーメントに対抗することが可能となる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、曲げモーメントに効果的に対抗できる、基礎と鉄骨鉄筋コンクリート製の柱との接合構造を提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0017】
図1(a)は、本発明の実施形態として示した基礎2と鉄骨鉄筋コンクリート製の柱3との接合構造1の側断面図、
図1(b)、(c)、(d)はそれぞれ、
図1(a)のA−A´断面図、B−B´断面図、C−C´断面図である。
【0018】
本実施形態は、本発明を、スタジアム、体育館、倉庫など中低層の建築構造物の、最下層の柱に適用した場合の例である。本実施形態においては、建築構造物の、水平断面視上外側に位置する柱が、基礎に剛接合されており、内側に位置する柱3が、
図1に示される、半剛接合を実現する接合構造1によって基礎2に接合されている。半剛接合とは、基礎及び一定断面積の柱の配筋を相互に貫通させてコンクリートに埋設する、いわゆる剛接合に比較して、接合部分の剛性が低い接合を示す。
【0019】
接合構造1において、柱3は、基礎2上に立設されている。柱3はSRC製であり、長さ方向、すなわち
図1(a)における高さ方向Zに延在する鉄骨5、鉄筋10を備えている。
【0020】
鉄骨5は、柱3の下端部3a近傍に位置する下側鉄骨6と、下側鉄骨6の上方に位置する上側鉄骨7を備えている。下側鉄骨6は、
図1(c)に示されるように、一枚のウェブ6bと、ウェブ6bの両側辺にウェブ6bに垂直に接合された2枚のフランジ6cを備えている。上側鉄骨7は、
図1(b)に示されるように、平断面視したときの断面形状が、例えば十字状をなしている。すなわち、上側鉄骨7は、平断面視した状態で、互いに直交する2枚のウェブ7bと、各ウェブ7bの両側辺にウェブ7bに垂直に接合された、計4枚のフランジ7cを備えている。
【0021】
下側鉄骨6の上端と、上側鉄骨7の下端の間には、接合鋼板8が、双方の鉄骨6、7のウェブ6b、7bやフランジ6c、7cと垂直に、すなわち水平になるように介在されて設けられている。下側鉄骨6、上側鉄骨7と接合鋼板8は、溶接により接合されている。接合鋼板8は、上側鉄骨7のウェブ7b、及び下側鉄骨6のウェブ6bの、各々の幅よりも大きな側辺を備える矩形形状をなしている。
【0022】
下側鉄骨6と上側鉄骨7は、各々の中心軸が平面視上同じ位置に在るように位置せしめられている。また、下側鉄骨6のウェブ6bの幅は、上側鉄骨7のウェブ7bの幅よりも、短く形成されている。これにより、鉄骨5の下端5aにおける幅、すなわち下側鉄骨6の下端6aの幅は、上部における幅、すなわち上側鉄骨7の幅よりも短くなっている。
【0023】
鉄骨5の下端5a、すなわち下側鉄骨6の下端6aには、鋼板9が、ウェブ6b、フランジ6cと垂直になるように、溶接により接合されている。鋼板9は、
図1(d)に示されるように、下側鉄骨6のウェブ6bの幅よりも大きな側辺を備える矩形形状をなしている。鉄骨5は、基礎2の上に鋼板9と略同等の面積を備えるように形成されたグラウト層13の更に上に、グラウト層13と鋼板9が接するように設けられている。これにより、柱3の鉄骨5の下端5aは、基礎2に近接して設けられている。
【0024】
鉄筋10は、鉄骨5の周囲で、かつ、柱3の外周近傍に、鉛直方向に延在して設けられている。柱3の鉄筋10の下端10aは、基礎2に至る手前で、すなわち基礎2の上方で終端している。
【0025】
鉄骨5と鉄筋10の外方には、これらを囲うように、複数のフープ筋11が設けられている。
【0026】
上記したような、鉄骨5、鉄筋10、及びフープ筋11等の各部材を埋設するように、コンクリートが打設されて、コンクリート部4が形成されている。本実施形態においては、柱3、すなわちコンクリート部4は矩形断面を備えている。
【0027】
コンクリート部4の下面4aは、コンクリート部4の外表面4dから内側に一定の位置から外側に向かって、漸次上方に傾斜するように形成された傾斜部4bを備えている。傾斜部4bの外側には、傾斜部4bの外側端辺とコンクリート部4の外表面4dの間に水平に延在する、外側水平部4cが形成されている。
【0028】
コンクリート部4の下面4aが上記のような形状を備えることにより、柱3の下端部3aは、下に向かって断面積が減少するように絞られており、柱3を基礎2上に、下端部3aを下にして設けた際においては、基礎2の上面2aと、コンクリート部4の傾斜部4b及び外側水平部4cとの間には、間隙14が形成されている。
【0029】
接合構造1は、更に、軸方向筋12を備えている。軸方向筋12は、基礎2と柱3間に鉛直方向に設けられて、上側が柱3のコンクリート部4を形成するコンクリートに、下側が基礎2を形成するコンクリートに、それぞれ定着されることにより、両者2、3を接合している。
図1(c)、(d)に示されるように、軸方向筋12は、水平断面視上、鉄筋10よりも内側で、かつ、下側鉄骨6の外側に位置している。
【0030】
軸方向筋12は、地震時の柱3の傾斜に引張力で抵抗できる程度の強度で接合されている。すなわち、地震が発生し、柱3が傾斜しようとしたときに、軸方向筋12が柱3のコンクリート部4や基礎2から抜けることがない程度に、十分な長さで柱3のコンクリート部4及び基礎2に定着されている。また、軸方向筋12は、柱3が傾斜しようとしたときに、一定量の柱3の傾斜を許容して一時的に弾性変形し伸びるように、材質、及び鉄骨5からの位置が決定されている。
【0031】
次に、上記した接合構造1の施工方法について説明する。
【0032】
まず、基礎2を施工する。このとき、軸方向筋12の下側を、予め基礎2に埋設させておく。
【0033】
その後、地組ヤードなどで下側鉄骨6、上側鉄骨7、接合鋼板8及び鋼板9を溶接して鉄骨5を製作し、鉄骨5の周囲に鉄筋10及びフープ筋11を配筋する。ここで製作された部材を、所定の位置に建方する。このとき、基礎2から上方に突出する軸方向筋12の上側が、下側鉄骨6の外側で、鉄筋10及びフープ筋11の内側に位置するように建方する。鋼板9と基礎2の上面2aの間にグラウトを充填してグラウト層13を形成する。
【0034】
更に、建方された鉄骨5、鉄筋10の周囲に型枠を配置する。このとき、
図1(a)に示される間隙14の形状、すなわち、コンクリート部4の傾斜部4b、外側水平部4c、基礎2の上面2a、及び外表面4dを下方に基礎2の上面2aまで延在させた仮想線により形成される台形形状と、同じ断面形状を備える、例えば発泡スチロール等により形成された断面台形形状の板材を、基礎2の上面2a上の、間隙14を形成する場所に設置する。
【0035】
その後、型枠内にコンクリートを打設し、養生硬化後に脱型して、コンクリート部4を製作する。
図1に示される本実施形態においては、間隙14の形成に用いた断面台形形状の板材は、撤去されているが、撤去せずに残しても構わない。
【0036】
次に、上記の実施形態として示した、基礎2と鉄骨鉄筋コンクリート製の柱3との接合構造1の作用、効果について、
図1、2を用いて説明する。
図2は、接合構造1の、地震時の挙動を示す説明図である。
図2においては、
図1に示される鉄筋10及びフープ筋11は省略されている。
【0037】
地震が発生して、
図1(a)に示される接合構造1に対し、柱3の上方に横方向、例えば右方向Xの大きな力が作用した場合を考える。このような場合においては、柱3の鉄骨5の下端5aは基礎2に近接しているため、
図2に示されるように、一方の柱脚部、この場合は図中左側に位置する左側柱脚3bが浮き上がり、反対側の柱脚部、すなわち図中右側に位置する右側柱脚3cが基礎2中にめり込むように、鉄骨5の下端5aを中心として柱3が右回りに回転、傾斜しようとする。
【0038】
ここで、基礎2と柱3間に鉛直方向に延在して、両者を接合する軸方向筋12は、上記のように柱3が傾斜しようとしたときに、一定量の柱3の傾斜を許容して一時的に弾性変形し伸びるように、材質、及び鉄骨5からの位置が決定されている。
【0039】
周知のように、回転しようとする物体を停止する場合においては、回転を停止させる力を回転の中心から遠い場所に対して作用させるほど、効果的に停止させることができる。すなわち、特に軸方向筋12の設置位置に関しては、軸方向筋12は水平断面視上、支点となる鉄骨5の外側に設けられているため、地震時の柱3の傾斜に引張力で抵抗することが可能である。
【0040】
同時に、軸方向筋12は、水平断面視上、柱3の外周近傍に位置する鉄筋10よりも内側、すなわち支点となる鉄骨5に近寄った位置に設けられており、また、
図1に示されるように、柱3の鉄筋10の下端10aは、基礎2に至る手前で終端している。このため、鉄骨5からより遠くに位置する鉄筋10を下方に延在させて基礎2に定着させて、柱3を基礎2に剛接合した場合ほど強固には、柱3は基礎2に固定されていない。これにより、軸方向筋12が弾性変形して左側柱脚3bの一定の浮き上がりを許容することができる。なお、
図2においては、軸方向筋12の、弾性変形して伸びた部分を、弾性変形部12aとして図示している。
【0041】
更に、柱3の下端部3aは、下に向かって断面積が減少するように絞られており、柱3と基礎2との接合面を小さくしているため、基礎2にめり込むように移動する反対側の柱脚部、すなわち右側柱脚3cの移動を妨げない。
【0042】
柱3が一旦、鉄骨5の下端5aを支点として回転移動して、
図2に示されるような状態に移行すると、基礎2にめり込んだ右側柱脚3cと基礎2との間に作用する摩擦力と、柱3の傾斜により引張力が作用して弾性変形している軸方向筋12の、特に弾性変形部12aにおけるせん断耐性で、柱3の横方向に移動しようとするせん断力に対抗する。
【0043】
上記のように、軸方向筋12は柱3が傾斜した際には弾性変形しているため、地震がおさまった後には、柱3が地震前の位置に戻るとともに、元の長さに戻るように変形する。
【0044】
以上で説明したように、上記の様々な要因により、柱3と基礎2とが半剛接合された構造になっており、これにより、接合構造1は、地震エネルギーを吸収して曲げモーメントに効果的に対抗可能な構造となっている。
【0045】
特に、鉄骨5の下端5aは基礎2に近接して位置しているため、鉄骨5の位置が明確に柱3の中心すなわち支点となり、柱3の回転運動時にはこの支点が水平方向にずれるのを防止する。これにより、より効果的に曲げモーメントに対抗可能となっている。
【0046】
また、本実施形態においては、建築構造物の、水平断面視上内側に位置する柱3が、接合構造1によって基礎2に接合されている。すなわち、建築構造物の施工に際し、柱3の上方に横方向の大きな力が作用した場合に、柱脚部により大きな引張力が作用する建築構造物の外側の柱3を基礎2と剛接合とし、引張力が外側の柱よりも小さな内側の柱3を上記したような半剛接合とすることにより、より効果的に、曲げモーメントに対抗することが可能となる。
【0047】
また、鉄骨5の下端5aにおける幅は、上部における幅よりも短いため、上部においては鉄骨5の剛性を確保しつつ、鉄骨5寄りに配される軸方向筋12との干渉をなくすことができる。
【0048】
更に、基礎2には柱3の鉄骨5が下方に延伸して貫入せず、鉄骨5の下端5aは基礎2に近接して位置しているため、基礎2を施工する際に鉄骨5の配置や取り合いを考慮せず、鉄筋コンクリート部材を施工する要領で製作することが可能である。
【0049】
これらの要因により、施工を容易に行うことが可能である。
【0050】
(実施形態の第1の変形例)
次に、
図3を用いて、上記実施形態として示した接合構造1の、第1の変形例を説明する。
図3(a)は、第1の変形例における接合構造20の側断面図、
図3(b)、(c)、(d)はそれぞれ、
図3(a)のD−D´断面図、E−E´断面図、F−F´断面図である。第1の変形例における接合構造20は、上記の接合構造1とは、軸方向筋22の上端22aが鋼板21に接合されている点が異なっている。
【0051】
より詳細には、本第1の変形例においては、軸方向筋22の下側は、基礎2を形成するコンクリートに定着されて、上端22aが基礎2の上面2aから突出している。下側鉄骨6の下端6aに接合された鋼板21には、下側鉄骨6の外側の位置に孔21aが開設されており、軸方向筋22の上端22aは、下方から孔21aに挿通されて、ナット23が螺着されている。
【0052】
接合構造20は、基本的に、接合構造1と同様に施工することが可能である。
図1に示される接合構造1においては、鉄骨5を、基礎2から上方に突出する軸方向筋12の上側が、下側鉄骨6の外側で、鉄筋10及びフープ筋11の内側に位置するように建方した。接合構造20においては、これに代えて、軸方向筋22の上端22aが、下側鉄骨6の外側で、鉄筋10及びフープ筋11の内側の位置において、鋼板21の孔21aを挿通するように位置せしめたうえで、ナット23を螺着する。
【0053】
本第1の変形例が、地震時に上記実施形態と同様に作用し、上記実施形態と同様な効果を奏することはいうまでもない。特に本第1の変形例における接合構造20は、軸方向筋22の上端22aが鋼板21を介して鉄骨5に緊結されているため、地震時の柱3の傾斜によって軸方向筋22に作用する引張力により強力に対抗することが可能である。
【0054】
(実施形態の第2の変形例)
次に、
図4を用いて、上記実施形態として示した接合構造1の、第2の変形例を説明する。
図4(a)は、第2の変形例における接合構造30の側断面図、
図4(b)、(c)、(d)はそれぞれ、
図4(a)のG−G´断面図、H−H´断面図、I−I´断面図である。第2の変形例における接合構造30は、上記の接合構造1と、第1の変形例における接合構造20を組み合わせたものである。
【0055】
すなわち、接合構造30は、外側の軸方向筋12と内側の軸方向筋22の、2種類の軸方向筋12、22を備えている。外側の軸方向筋12は、基礎2と柱3間に鉛直方向に設けられて、上側が柱3のコンクリート部4を形成するコンクリートに、下側が基礎2を形成するコンクリートに、それぞれ定着されることにより、両者2、3を接合している。
【0056】
内側の軸方向筋22は、外側の軸方向筋12の内側、かつ、下側鉄骨6の外側に設けられている。内側の軸方向筋22の下側は、基礎2を形成するコンクリートに定着されて、上端22aが基礎2の上面2aから突出している。下側鉄骨6の下端6aに接合された鋼板21には、下側鉄骨6の外側の位置に孔21aが開設されており、軸方向筋22の上端22aは、下方から孔21aに挿通されて、ナット23が螺着されている。
【0057】
本第2の変形例が、地震時に上記実施形態と同様に作用し、上記実施形態と同様な効果を奏することはいうまでもない。特に本第2の変形例における接合構造30は、外側の軸方向筋12と内側の軸方向筋22の、2種類の軸方向筋12、22によって、基礎2と柱3が接合されているため、地震時の柱3の傾斜によって軸方向筋12、22に作用する引張力により強力に対抗することが可能である。
【0058】
(実施形態の第3の変形例)
次に、
図5を用いて、上記実施形態として示した接合構造1の、第3の変形例を説明する。
図5は、第3の変形例における接合構造40の側断面図である。第3の変形例における接合構造40は、上記の接合構造1とは、鉄骨の下端における幅は、上部における幅よりも短くなっておらず、同等である点が異なっている。
【0059】
すなわち、上記実施形態における鉄骨5は、
図1に示されるように、幅の異なる2本の鉄骨6、7が、接合鋼板8を介して連結された構成となっていたが、本第3の変形例における鉄骨5は、一本の鉄骨41により構成された、長さ方向にわたって略同一の幅を備えるものである。鉄骨41の幅は、軸方向筋12と干渉せず、なおかつ、鉄骨41の建方時に軸力を保持できる程度以上の大きさとなっている。
【0060】
本第3の変形例における接合構造40は、鉄骨41が、下端部3aにおいて軸方向筋12と干渉しない幅を備えており、なおかつ、その幅が柱3全体にわたって鉄骨41の建方時に軸力を保持できる程度以上の大きさである場合に適用可能である。すなわち、本第3の変形例が、地震時に上記実施形態と同様に作用し、上記実施形態と同様な効果を奏することはいうまでもない。特に、上記した実施形態とは異なり、2種類の鉄骨を互いに接合する必要がないため、施工が更に容易となる。
【0061】
(実施形態の第4の変形例)
次に、
図6を用いて、上記実施形態として示した接合構造1の、第4の変形例を説明する。
図6は、第4の変形例における接合構造50の側断面図であり、コンクリート部4と鉄骨5のみを示したものである。第4の変形例における接合構造50は、上記の接合構造1とは、鉄骨5の下端5aは、鋼板9を介して、基礎2に当接している点が異なっている。
【0062】
すなわち、本第4の変形例においては、鋼板9の下に、
図1に示されるようなグラウト層13が設けられておらず、基礎2の上面2aの上に、鉄骨5を構成する鋼板9が直接接触して設けられている。
【0063】
本第4の変形例が、地震時に上記実施形態と同様に作用し、上記実施形態と同様な効果を奏することはいうまでもない。
【0064】
(実施形態の第5の変形例)
次に、
図7を用いて、上記実施形態として示した接合構造1の、第5の変形例を説明する。
図7は、第5の変形例における接合構造60の側断面図であり、コンクリート部4と鉄骨5のみを示したものである。第5の変形例における接合構造60は、上記の接合構造1とは、柱61はプレキャストコンクリート製であり、グラウト層63は、鉄骨5の鋼板9の下側だけでなく、コンクリート部62の下面62aの、間隙14に相当する部分を除いた全域に形成されている点が異なっている。
【0065】
柱61のコンクリート部62の下面62aは、内側水平部62e、傾斜部62b、及び外側水平部62cを備えている。内側水平部62eは、コンクリート部62の外表面62dから内側に一定の位置より更に内側において、平面状に形成されている。傾斜部62bは、内側水平部62eの外端から更に外側に向かって、漸次上方に傾斜するように形成されている。外側水平部62cは、傾斜部62bの外側に、傾斜部62bの外側端辺とコンクリート部62の外表面62dの間に延在するように形成されている。
【0066】
グラウト層63は、コンクリート部62の下面62aの、内側水平部62eの下側に、内側水平部62eの全域にわたって形成されている。
【0067】
図1に示される接合構造1においては、施工の際には、地組ヤードなどで下側鉄骨6、上側鉄骨7、接合鋼板8及び鋼板9を溶接して鉄骨5を製作し、これに鉄筋10及びフープ筋11を配筋した部材を建方して、鋼板9と基礎2の上面2aの間にグラウトを充填してグラウト層13を形成した。本接合構造60においては、工場でプレキャストコンクリート材として製作した柱61を建方するため、その基礎2に接合される部分である内側水平部62eの下に、グラウト層63が形成される。
【0068】
本第5の変形例が、地震時に上記実施形態と同様に作用し、上記実施形態と同様な効果を奏することはいうまでもない。
【0069】
なお、本発明の基礎と鉄骨鉄筋コンクリート製の柱との接合構造及び該接合構造を備える建築構造物は、図面を参照して説明した上述の実施形態及び各変形例に限定されるものではなく、その技術的範囲において他の様々な変形例が考えられる。
【0070】
例えば、上記実施形態においては、柱の断面形状は矩形であったが、円形など、他の形状であってもよい。鉄骨の下端に接合された鋼板の形状も、柱の断面形状に伴い他の形状を備えていてもよい。
【0071】
また、上記実施形態においては、2種類の幅が異なる鉄骨を、接合鋼板を介して接合することにより、鉄骨の下端部における幅と上部における幅を異なるものとしていたが、これに限られず、例えば、一本の鉄骨の幅が、下方に向かうに従い、漸次小さくなるような形状であってもよい。
【0072】
これ以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施の形態及び各変形例で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更したりすることが可能である。