(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0014】
(実施の形態1)
<画像形成装置の構成>
本発明の実施の形態1に係る画像形成装置S1の構成について、
図1を参照しながら、詳細に説明する。
【0015】
画像形成装置S1は、ここではレーザープリンタを例示する。画像形成装置S1は、感光ドラム1と、帯電ローラ2と、レーザー露光部3と、現像器4と、転写ローラ5と、クリーニングブレード8と、供給ローラ10と、カセット11と、定着装置12と、を有している。
【0016】
感光ドラム1は、帯電ローラ2により一様に帯電した状態となる。感光ドラム1には、レーザー露光部3からレーザー光が照射されることにより、表面に静電潜像が形成される。感光ドラム1は、回転することにより、表面に形成された静電潜像を現像器4へ搬送する。
【0017】
帯電ローラ2は、所定のバイアス電圧が印加され、回転中の感光ドラム1の表面と接触して回転することにより、感光ドラム1の表面を均一に帯電させる。
【0018】
レーザー露光部3は、感光ドラム1の帯電した表面に光ビームであるレーザー光を照射して感光ドラム1の表面に静電潜像を形成する。
【0019】
現像器4は、感光ドラム1の表面に形成された静電潜像にトナーを供給して、感光ドラム1に現像剤像であるトナー像を形成する。
【0020】
転写ローラ5は、感光ドラム1との対向部で記録材20を挟持して搬送すると共に、転写電圧が印加されることにより、感光ドラム1に形成されたトナー像を記録材20に転写する。
【0021】
ヒータユニット6は、転写ローラ5によりトナー像が転写された記録材20を加圧ローラ7との間で加熱加圧することにより、記録材20に転写されたトナー像を記録材20に定着させる。
【0022】
加圧ローラ7は、ヒータユニット6に対し所定のニップ圧で圧接して定着ニップを形成している。加圧ローラ7は、回転駆動することによりヒータユニット6を従動して回転させると共に、定着ニップに導入された記録材20を搬送する。
【0023】
クリーニングブレード8は、記録材20に対するトナー像の転写後に感光ドラム1の表面に残っているトナー又は紙粉を除去して、感光ドラム1の表面を清浄する。
【0024】
供給ローラ10は、カセット11に収容されている記録材20を感光ドラム1と転写ローラ5との対向部に搬送する。
【0025】
定着装置12は、フィルム加熱定着方式の定着装置であり、ヒータユニット6及び加圧ローラ7を備えている。定着装置12は、感光ドラム1と転写ローラ5との対向部から搬送されてきた表面にトナー像が形成された記録材20に対して、ヒータユニット6と加圧ローラ7との間で熱及び圧力を加えて、記録材20に形成されているトナー像を記録材20に定着させる。定着装置12は、トナー像を定着させた記録材20を画像形成装置S1の外部に向けて搬送する。
【0026】
<定着装置の構成>
本発明の実施の形態1に係る定着装置12の構成について、
図2及び
図3を参照しながら、詳細に説明する。
【0027】
定着装置12は、ヒータユニット6と、加圧ローラ7と、トライアック51と、トライアック52と、CPU100と、を有している。
【0028】
ヒータユニット6は、加圧ローラ7と圧接して定着ニップNを形成し、定着ニップNで記録材20を挟持及び搬送することで、記録材20上にトナー像を定着させる。
【0029】
具体的には、ヒータユニット6は、ヒータ600と、フィルム650と、フィルムガイド660と、補強板金670と、を備えている。
【0030】
ヒータ600は、記録材20の搬送方向に直交する幅方向が記録材20の幅に対応しており、定着領域である定着ニップNにおいて、表面に現像剤像が形成された記録材20に対して熱を与える。具体的には、ヒータ600は、セラミック基板601と、ガラスコート層605と、抵抗発熱体610と、電極615と、電極616と、電極617と、電極618と、を備えている。また、ヒータ600は、抵抗発熱体620と、サーミスタ630と、サーミスタ631と、サーミスタ632と、を備えている。
【0031】
セラミック基板601は、絶縁性及び耐熱性を有しており、低熱容量である。セラミック基板601の一方の面には、抵抗発熱体610及び抵抗発熱体620が設けられている。セラミック基板601の抵抗発熱体610及び抵抗発熱体620が設けられている面の反対側の面には、サーミスタ630、サーミスタ631及びサーミスタ632が当接して設けられている。
【0032】
ガラスコート層605は、抵抗発熱体610及び抵抗発熱体620を覆っていると共に、電極615、電極616、電極617及び電極618の一部を覆っている。ガラスコート層605は、フィルム650が回転した際にフィルム650と摺擦する。ガラスコート層605の厚さは、ここでは60μmを例示する。
【0033】
第1の加熱手段である抵抗発熱体610は、セラミック基板601に設けられている。抵抗発熱体610は、幅方向に沿って均一な幅に形成されている。抵抗発熱体610は、発熱した際に、記録材20の搬送方向に直交する幅方向(
図3(a)において左右方向)において発熱量が均一になると共に、定着ニップNの幅方向の端部よりも中央部の温度が高い温度分布となる。抵抗発熱体610の幅方向の長さは、ここでは320mmを例示する。抵抗発熱体610の幅は、ここでは2mmを例示する。
【0034】
電極615は、セラミック基板601に設けられ、電源30と抵抗発熱体610とを接続している。
【0035】
電極616は、セラミック基板601に設けられ、トライアック51と抵抗発熱体610とを接続している。電極615と電極616との間の抵抗値は、10Ωとなっている。
【0036】
電極617は、セラミック基板601に設けられ、トライアック52と抵抗発熱体620とを接続している。
【0037】
電極618は、セラミック基板601に設けられ、電源30と抵抗発熱体620とを接続している。電極617と電極618との間の抵抗値は、10Ωとなっている。
【0038】
第2の加熱手段である抵抗発熱体620は、幅方向の両端を絞った形状にすることにより、幅方向の両端の幅が中央部の幅よりも幅狭になるように形成されている。抵抗発熱体620は、発熱した際に、定着ニップNの幅方向の中央部よりも端部の温度が高い温度分布となる。
【0039】
サーミスタ630は、CPU100に接続している。
【0040】
サーミスタ631は、CPU100に接続している。
【0041】
サーミスタ632は、CPU100に接続している。
【0042】
フィルム650は、円筒形状の耐熱性フィルムである。フィルム650は、厚さ40μm程度のポリイミド又はステンレス(SUS)等の金属で形成されている。フィルム650は、外周面にPFA(テトラフルオロエチレンパーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)等をコーティング又はPFAチューブを被覆させた複合層フィルムとして構成されている。フィルム650は、加圧ローラ7に密着し、加圧ローラ7の回転に従動回転することによりフィルムガイド660の周囲を回転する。
【0043】
フィルムガイド660は、断面が半円弧桶形であり、抵抗発熱体610及び抵抗発熱体620を露出させた状態でセラミック基板601を固定している。
【0044】
補強板金670は、断面が逆U字形であり、ヒータユニット6が加圧ローラ7により加圧された際に変形しないように設けられている。
【0045】
加圧ローラ7は、図示しない加圧手段により所定の圧力でヒータユニット6を加圧しており、図示しない駆動手段により回転駆動して記録材20を搬送する。所定の圧力は、ここでは総圧9kgfを例示する。具体的には、加圧ローラ7は、芯金71と、シリコーンゴムにより形成されている弾性層72と、フッ素系の樹脂により形成されている表層73と、により構成されている。
【0046】
制御手段であるCPU100は、サーミスタ630、サーミスタ631及びサーミスタ632で検出した温度に応じて、トライアック51及びトライアック52の駆動制御を行う。これにより、CPU100は、電源30から抵抗発熱体610又は抵抗発熱体620に供給される電力の制御を行う。
【0047】
CPU100は、定着ニップNを記録材20が通過しない場合には、定着ニップNを記録材20が通過する場合に比べて、抵抗発熱体620の発熱量を低減させる。定着ニップNを記録材20が通過しない場合とは、典型的には定着ニップNを最初の記録材20が通過する前の定着装置12を温め始める印字動作の立上げ期間、又は、定着ニップNを記録材20が連続して通過する場合の紙間である。
【0048】
CPU100における抵抗発熱体620の発熱量を低減させる制御としては、典型的にはトライアック52を制御して電源30から抵抗発熱体620への給電を停止させる制御である。
【0049】
<定着処理>
本発明の実施の形態1に係る定着処理について、
図4から
図7を参照しながら、詳細に説明する。
【0050】
定着装置12における定着処理は、CPU100が印字動作の要求信号を受信することにより開始される。
【0051】
定着処理の開始後、まず、CPU100は、トライアック51の駆動制御を行い、電源30から抵抗発熱体610に対して給電させる(S1)。
【0052】
図5に示すように、ヒータ600の幅方向の中央部の温度L6は、定着ニップNを最初の記録材20が通過する前の定着装置12を温め始める印字動作の立上げ期間に、抵抗発熱体610にのみ給電するため、定着必要温度まで短時間で上昇していく。一方、ヒータ600の幅方向の端部の温度L7は、印字動作の立上げ期間に抵抗発熱体620に給電しないため、緩やかに上昇していく。
【0053】
次に、CPU100は、サーミスタ632で検出した温度が目標温度に到達したか否かを判定する(S2)。
【0054】
CPU100は、判定の結果、サーミスタ632で検出した温度が目標温度に到達していない場合(S2:No)、S2の処理を繰り返す。
【0055】
一方、CPU100は、判定の結果、サーミスタ632で検出した温度が目標温度に到達した場合(S2:Yes)、記録材20の給紙を開始させる(S3)。
【0056】
そして、CPU100は、サーミスタ632で検出した温度が目標温度を維持するようにトライアック51の駆動制御を行って電源30から抵抗発熱体610に対して給電させる(S4)。
【0057】
このように、記録材20の先端が定着ニップNに到達する前の印字動作の立上げ期間には、抵抗発熱体610のみに給電し、フィルム650の幅方向の端部において、フィルム650の表面が軟化する軟化温度以上の高温にならないように制御する。本実施の形態においては、フィルム650の外表面をPFAで被覆しているため、CPU100はフィルム650の表面が260℃を超えないように制御している。従って、記録材20が定着ニップNに進入した際に、フィルム650の表層削れを生じ難くすることができる。なお、フィルム650の幅方向の端部の許容到達温度は、フィルム650の表層の材質に応じて変更されることが好ましい。
【0058】
次に、CPU100は、記録材20の搬送方向の先端が定着ニップNに到達したか否かを判定する(S5)。
【0059】
CPU100は、判定の結果、記録材20の先端が定着ニップNに到達していない場合(S5:No)、S4の処理に戻る。
【0060】
一方、CPU100は、記録材20の先端が定着ニップNに到達した場合(S5:Yes)、トライアック52の駆動制御を行い、電源30から抵抗発熱体620に対して給電させる(S6)。
【0061】
このように、記録材20の先端が定着ニップNに到達した後の通紙期間において、電源30から抵抗発熱体610及び抵抗発熱体620の両方に給電する。これにより、ヒータ600の幅方向の端部の温度が高い温度分布にすることができ、記録材20の幅方向の端部の定着性を向上させることができる。この際のヒータ600の幅方向の端部の温度は、現像剤の定着に必要な温度以上であると共に定着に必要な温度よりも高温度である所定の温度以下である。所定の温度は、ここでは記録材20が定着ニップNに到達した際のヒータ600の幅方向の中央部の温度を例示する。
【0062】
一方、記録材20の先端が定着ニップNに到達した際のフィルム650の幅方向の端部の温度は、
図5に示すように、幅方向の中央部の温度よりも低い温度になっているため、記録材20の幅方向の端部(コバ)による表層削れを生じ難い。
【0063】
そして、CPU100は、通紙期間において、サーミスタ630、サーミスタ631及びサーミスタ632で検出した温度が目標温度を維持するように制御する(S7)。CPU100は、トライアック51及びトライアック52の駆動制御を行って電源30から抵抗発熱体610及び抵抗発熱体620に給電させることにより目標温度を維持するように制御する。
【0064】
図6は、抵抗発熱体610と抵抗発熱体620とが同じ通電比率(電源電圧波形2周期で40%)で制御された場合を示している。また、
図6は、抵抗発熱体610及び抵抗発熱体620の各々に100Vの電圧が印加された際に、抵抗発熱体610及び抵抗発熱体620の各々の消費電力が約400Wである場合の電圧波形を示している。
【0065】
電源30は、抵抗発熱体610に対して
図6(a)に示す電圧波形の電圧を印加し、抵抗発熱体620に対して
図6(b)に示す電圧波形の電圧を印加する。なお、
図6において、塗りつぶし部分は、電圧の印加が行われる領域である。
【0066】
CPU100は、抵抗発熱体610及び抵抗発熱体620に対して、1半波内の位相角でONとOFFとが切り替わる位相制御により給電するように制御している。また、CPU100は、抵抗発熱体610の電圧波形のONのタイミングと、抵抗発熱体620の電圧波形のONのタイミングと、が重なり合わないように、抵抗発熱体610及び抵抗発熱体620の両方に均等に給電されるように制御している。これにより、電気的なノイズが大きくならないようにすることができる。
【0067】
図7は、
図6の電圧波形の電圧が印加された際のヒータ600の幅方向(横軸方向)の温度分布(無負荷状態)を示している。
図7において、L1は抵抗発熱体610の温度分布を示しており、L2は抵抗発熱体620の温度分布を示しており、L3は抵抗発熱体610及び抵抗発熱体620の温度分布を合わせた温度分布を示している。
【0068】
図7より、抵抗発熱体610は、発熱した際に、定着ニップNの幅方向の端部よりも中央部の温度が高い温度分布となる。また、抵抗発熱体620は、発熱した際に、定着ニップNの幅方向の中央部よりも端部の温度が高い温度分布となる。
【0069】
このように、ヒータ600の幅方向において発熱分布の異なる2つの抵抗発熱体610及び抵抗発熱体620を用いることにより、抵抗発熱体610及び抵抗発熱体620の発熱分布を合わせた発熱分布を意図した分布に変化させることが可能となる。なお、
図7において、Aはサーミスタ630の配置位置を示し、Bはサーミスタ631の配置位置を示す、Cはサーミスタ632の配置位置を示している。
【0070】
図4に戻って、次に、CPU100は、記録材20の搬送方向の後端が定着ニップNを通過したか否かを判定する(S8)。
【0071】
CPU100は、判定の結果、記録材20の後端が定着ニップNを通過していない場合(S8:No)、S7の処理に戻る。
【0072】
一方、CPU100は、記録材20の後端が定着ニップNを通過した場合(S8:Yes)、定着動作を終了する。
【0073】
このように、本実施の形態における定着動作では、2つの抵抗発熱体610及び抵抗発熱体620の各々に供給する電力を独立して制御し、印字動作の立上げ時における記録材20の非通過部の温度が記録材20の通過部の温度よりも低くなるように制御する。
【0074】
図8は、本実施の形態に係る定着処理との比較として、定着処理を開始してから終了するまでの間に、抵抗発熱体610及び抵抗発熱体620に対して常に給電した場合の温度推移を示すものである。
【0075】
図8より、ヒータ600の幅方向の中央部の温度L4は、印字動作の立ち上げ期間において目標温度近傍で安定する。一方、ヒータ600の幅方向の端部の温度L5は、ヒータ600の幅方向の端部の定着性を向上させるために発熱量を上げているため、印字動作の立ち上げ期間において目標温度よりも高温になっている。従って、
図8の場合には、室温から目標温度まで立ち上げる場合に、記録材20の非通過部の温度が高くなるために非通過部の近傍のフィルムの表層が劣化し、通紙期間において記録材20が搬送された際にフィルム表層削れを生じ易くなる。
【0076】
図9に示すように、本実施の形態に係る定着装置12では、従来に比べて、ヒータ600の幅方向の端部の温度をQだけ低くすることができるので、フィルム650をUだけ長寿命にすることができる。
【0077】
このように、本実施の形態では、記録材20が定着領域に進入する際に、端部の温度が現像剤の定着に必要な温度以上であると共に定着に必要な温度よりも高温度である所定の温度以下となるように抵抗発熱体610及び抵抗発熱体620を制御する。これにより、記録材20の非通過部が必要以上に高温度にならないように制御してフィルムの表層の劣化を抑制することにより、フィルムの表層の削れを抑制することができ、フィルムを長寿命にすることができる。
【0078】
なお、本実施の形態において、電源30から抵抗発熱体620への給電を停止して抵抗発熱体620の発熱量を低減させたが、電源30から抵抗発熱体620への給電を継続した状態で抵抗発熱体620の発熱量を低減してもよい。
【0079】
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2に係る画像形成装置及び定着装置の構成は
図1から
図3と同一構成であるので、その説明を省略する。
【0080】
<定着処理>
本発明の実施の形態2に係る定着処理について、
図10から
図12を参照しながら、詳細に説明する。なお、本実施の形態では、
図1から
図3の符号を用いて説明する。
【0081】
定着装置12における定着処理は、CPU100が印字動作の要求信号を受信することにより開始される。
【0082】
定着処理の開始後、まず、CPU100は、トライアック51の駆動制御を行い、電源30から抵抗発熱体610に対して給電させる(S11)。
【0083】
図11に示すように、ヒータ600の幅方向の中央部の温度L16は、定着装置12を温め始める印字動作の立上げ期間に抵抗発熱体610にのみ給電するため、定着必要温度まで短時間で上昇していく。一方、ヒータ600の幅方向の端部の温度L17は、印字動作の立上げ期間に抵抗発熱体620に給電しないため、緩やかに上昇していく。
【0084】
次に、CPU100は、サーミスタ632で検出した温度が目標温度に到達したか否かを判定する(S12)。
【0085】
CPU100は、判定の結果、サーミスタ632で検出した温度が目標温度に到達していない場合(S12:No)、S12の処理を繰り返す。
【0086】
一方、CPU100は、判定の結果、サーミスタ632で検出した温度が目標温度に到達した場合(S12:Yes)、記録材20の給紙を開始させる(S13)。
【0087】
そして、CPU100は、サーミスタ632で検出した温度が目標温度を維持するようにトライアック51の駆動制御を行って電源30から抵抗発熱体610に対して給電させる(S14)。このように、ヒータ600の幅方向の端部及びフィルム650の幅方向の端部は、印字動作の立上げ期間に抵抗発熱体610のみに給電することにより高温にならない。従って、記録材20が定着ニップN内に進入した際に、フィルム650の表層削れを生じ難くすることができる。
【0088】
次に、CPU100は、記録材20の先端が定着ニップNに到達したか否かを判定する(S15)。
【0089】
CPU100は、判定の結果、記録材20の先端が定着ニップNに到達していない場合(S15:No)、S14の処理に戻る。
【0090】
一方、CPU100は、記録材20の先端が定着ニップNに到達した場合(S15:Yes)、トライアック52の駆動制御を行い、電源30から抵抗発熱体620に対して給電させる(S16)。
【0091】
このように、記録材20の先端が定着ニップNに到達した後の通紙期間において、電源30から抵抗発熱体610及び抵抗発熱体620の両方に給電する。これにより、ヒータ600の幅方向の端部の温度が高い温度分布にすることができ、記録材20の幅方向の端部の定着性を向上させることができる。この際のヒータ600の幅方向の端部の温度は、現像剤の定着に必要な温度以上であると共に定着に必要な温度よりも高温度である所定の温度以下である。
【0092】
一方、記録材20の先端が定着ニップNに到達した際のフィルム650の幅方向の端部の温度は、
図11に示すように、幅方向の中央部の温度よりも常に低い温度になっているため、記録材20の幅方向の端部による表層削れを生じ難い。
【0093】
そして、CPU100は、サーミスタ630、サーミスタ631及びサーミスタ632で検出した温度が目標温度を維持するように制御する(S17)。CPU100は、トライアック51及びトライアック52の駆動制御を行って電源30から抵抗発熱体610及び抵抗発熱体620に対して給電させることにより、目標温度を維持するように制御する。
【0094】
次に、CPU100は、記録材20の後端が定着ニップNを通過したか否かを判定する(S18)。
【0095】
CPU100は、判定の結果、記録材20の後端が定着ニップNを通過していない場合(S18:No)、S17の処理に戻る。
【0096】
一方、CPU100は、記録材20の後端が定着ニップNを通過した場合(S18:Yes)、トライアック52の駆動制御を停止して電源30から抵抗発熱体620に対する給電を停止させる(S19)。このように、目標温度到達後、記録材20の後端が定着ニップNを通過した後から、次の記録材20の先端が定着ニップNに到達するまでの紙間において、抵抗発熱体620への給電を停止して抵抗発熱体610のみに給電する。従って、ヒータ600の幅方向の端部及びフィルム650の幅方向の端部の温度上昇を防止し、記録材20が定着ニップNに進入する際にフィルム650の幅方向の端部を低い温度にすることができる。これにより、フィルム650の表層削れを生じ難くすることができる。
【0097】
次に、CPU100は、要求枚数の通紙を終了したか否かを判定する(S20)。
【0098】
CPU100は、判定の結果、要求枚数の通紙を終了していない場合(S20:No)、S14の処理に戻る。
【0099】
一方、CPU100は、要求枚数の通紙を終了した場合(S20:Yes)、定着処理を終了する。
【0100】
図12は、本実施の形態に係る定着処理との比較として、定着処理を開始してから終了するまでの間に、抵抗発熱体610及び抵抗発熱体620に対して常に給電した場合の温度推移を示すものである。
【0101】
図12より、ヒータ600の幅方向の中央部の温度L15は、定着ニップNを記録材20が通過中に記録材20によって奪われる温度と紙間で補充される温度とが釣り合っているため、一定の温度推移になっている。一方、ヒータ600の幅方向の端部の温度L14は、ヒータ600の幅方向の端部の定着性の向上のために発熱量を上げているため、ヒータ600の幅方向の中央部と比較して、定着ニップNを記録材20が通過中でもあまり温度が下がらない。そして、ヒータ600の幅方向の端部の温度L14は、紙間で熱が補充されるため、印字動作が続くと右肩上がりに上昇していく。
【0102】
このように、本実施の形態では、定着ニップNを記録材20が連続して通過する場合に、記録材20の非通過部が必要以上に高温度にならないように制御することにより、フィルムの表層の劣化を抑制する。これにより、定着ニップNを記録材20が連続して通過する場合であっても、フィルムの表層の削れを抑制することができる。
【0103】
なお、本実施の形態において、電源30から抵抗発熱体620への給電を停止して抵抗発熱体620の発熱量を低減させたが、電源30から抵抗発熱体620への給電を継続した状態で抵抗発熱体620の発熱量を低減してもよい。
【0104】
(実施の形態3)
本発明の実施の形態3に係る画像形成装置及び定着装置の構成は
図1から
図3と同一構成であるので、その説明を省略する。
【0105】
<定着処理>
本発明の実施の形態3に係る定着処理について、詳細に説明する。なお、本実施の形態では、
図1から
図3の符号を用いて説明する。
【0106】
図13において、横軸はヒータ600の幅方向である。また、
図13において、Aはサーミスタ630の配置位置、Bはサーミスタ631の配置位置、Cはサーミスタ632の配置位置を示している。本実施の形態において、サーミスタ630、サーミスタ631及びサーミスタ632の各々は、通紙領域の異なる記録材20が通過する場合に、通紙領域の異なる各記録材20の幅方向の端部の温度を検出できるように配置されている。
【0107】
具体的には、サーミスタ630は、通紙領域R1を通過する記録材20の幅方向の端部の温度を検出する。サーミスタ631は、通紙領域R2を通過する記録材20の幅方向の端部の温度を検出する。サーミスタ632は、通紙領域R3を通過する記録材20の幅方向の端部の温度を検出する。
【0108】
まず、通紙領域R1を通過する記録材20の定着処理について、
図14から
図17を参照しながら詳細に説明する。
【0109】
定着装置12における定着処理は、CPU100が印字動作の要求信号を受信することにより開始される。
【0110】
定着処理の開始後、まず、CPU100は、トライアック51の駆動制御を行い、電源30から抵抗発熱体610に対して給電させる(S31)。
【0111】
図15に示すように、記録材20の幅方向の中央部の温度L27は、定着装置12を温め始める印字動作の立上げ期間に抵抗発熱体610にのみ給電するため、定着必要温度まで短時間で上昇していく。一方、記録材20の幅方向の端部の温度L28は、印字動作の立上げ期間に抵抗発熱体620に給電しないため、緩やかに上昇していく。
【0112】
次に、CPU100は、サーミスタ632で検出した温度が目標温度に到達した場合に、記録材20の給紙を開始させる(S32)。
【0113】
次に、CPU100は、記録材20の先端が定着ニップNに到達した場合(S33)、トライアック52の駆動制御を行い、電源30から抵抗発熱体620に対して給電させる(S34)。
【0114】
このように、記録材20の先端が定着ニップNに到達した後の通紙期間において、電源30から抵抗発熱体610及び抵抗発熱体620の両方に給電する。これにより、ヒータ600の幅方向の端部の温度が高い温度分布にすることができ、記録材20の幅方向の端部の定着性を向上させることができる。この際のヒータ600の幅方向の端部の温度は、現像剤の定着に必要な温度以上であると共に定着に必要な温度よりも高温度である所定の温度以下である。
【0115】
一方、記録材20の先端が定着ニップNに到達した際のフィルム650の幅方向の端部の温度は、
図15に示すように、幅方向の中央部の温度よりも低い温度になっているため、記録材20の幅方向の端部による表層削れを生じ難い。
【0116】
そして、CPU100は、サーミスタ630、サーミスタ631及びサーミスタ632で検出した温度が目標温度を維持するように制御する(S35)。CPU100は、トライアック51及びトライアック52の駆動制御を行って電源30から抵抗発熱体610及び抵抗発熱体620に対して給電させることにより、通紙期間における目標温度を維持するように制御する。
【0117】
次に、CPU100は、記録材20の後端が定着ニップNを通過したか否かを判定する(S36)。
【0118】
CPU100は、判定の結果、記録材20の後端が定着ニップNを通過していない場合(S36:No)、S35の処理に戻る。
【0119】
一方、CPU100は、記録材20の後端が定着ニップNを通過した場合(S36:Yes)、トライアック51の駆動制御を停止して電源30から抵抗発熱体610への給電を停止させる。また、CPU100は、トライアック52の駆動制御を停止して電源30から抵抗発熱体620への給電を停止させる(S37)。
【0120】
次に、CPU100は、サーミスタ630で検出する温度をモニタする(S38)。
【0121】
次に、CPU100は、サーミスタ630で検出した温度より所定時間における温度勾配ΔTを求めて定着装置12の蓄熱状況を判断する(S39)。定着装置12が温まっていないときは、記録材20の幅方向の端部の温度低下が大きくなり、また、定着装置12が温まっているときは、記録材20の幅方向の端部の温度低下が緩やかになる。従って、温度勾配ΔTを求めることにより、定着装置12の蓄熱状況を精度よく予測することができる。
【0122】
次に、CPU100は、予め定めておいた温度勾配ΔTと通電比率とを対応付けた
図16に示すテーブルを参照して、求めた温度勾配ΔTに対応付けられている通電比率を決定する(S40)。かかる通電比率は、次の記録材20の先端が定着ニップNに進入するまでの抵抗発熱体610及び抵抗発熱体620の通電比率となる。
【0123】
ここで、CPU100は、
図17に示すように、記録材20の幅方向の端部の温度L10の立下がりの温度勾配が大きい場合、定着装置12の蓄熱状況が低いと判断できる。この場合には、CPU100は、大きい通電比率を決定するため、記録材20の幅方向の端部の温度を持ち上げ、記録材20の幅方向の端部の定着性の悪化を防止することができる。
【0124】
これにより、ヒータ600の温度のオーバーシュートを起こさない最適な通電比率で次の記録材20を定着させるための温度まで上昇させることができる。また、記録材20が定着ニップNに進入した後も、ヒータ600の幅方向の端部の温度が低すぎる状態を防止することが可能となり、記録材20のヒータ600の幅方向の端部の定着性を向上させることができる。
【0125】
次に、CPU100は、決定した通電比率で電源30から抵抗発熱体610及び抵抗発熱体620に給電させる(S41)。
【0126】
次に、CPU100は、記録材20の先端が定着ニップNに到達した場合(S42)、サーミスタ630、サーミスタ631及びサーミスタ632で検出した温度が目標温度を維持するように制御する(S43)。CPU100は、トライアック51及びトライアック52の駆動制御を行って電源30から抵抗発熱体610及び抵抗発熱体620に対して給電させることにより、目標温度を維持するように制御する。
【0127】
次に、CPU100は、記録材20の後端が定着ニップNを通過したか否かを判定する(S44)。
【0128】
CPU100は、判定の結果、記録材20の後端が定着ニップNを通過していない場合(S44:No)、S43の処理に戻る。
【0129】
一方、CPU100は、記録材20の後端が定着ニップNを通過した場合(S44:Yes)、指定枚数の通紙を終了したか否かを判定する(S45)。
【0130】
CPU100は、判定の結果、指定枚数の通紙を終了していない場合(S45:No)、S37の処理に戻る。
【0131】
一方、CPU100は、判定の結果、指定枚数の通紙を終了した場合(S45:Yes)、定着処理を終了する。
【0132】
このように、CPU100は、紙間中において抵抗発熱体610及び抵抗発熱体620の発熱を停止させ、且つ、その際のヒータ600の所定時間における立下りの温度勾配ΔTから定着装置12の蓄熱状況を予測する。そして、CPU100は、この予測結果に基づいて、オーバーシュートを生じない通電比率でヒータ600の温度を上昇させる。これにより、記録材20の定着ニップNへの進入時に、記録材20の幅方向の端部の温度が上昇することを防ぐことができ、記録材20の幅方向の端部によるフィルム650の表面の削れを防止することが可能となる。
【0133】
図18は、本実施の形態に係る定着処理との比較として、定着処理を開始してから終了するまでの間に、抵抗発熱体610及び抵抗発熱体620に対して常に給電した場合の温度推移を示すものである。
【0134】
図18より、記録材20の幅方向の中央部の温度L25は、定着ニップNを記録材20が通過中に記録材20によって奪われる温度と紙間で補充される温度とが釣り合っているため、一定の温度推移になっている。一方、記録材20の幅方向の端部の温度L24は、記録材20の幅方向の端部の定着性の向上のために発熱量を上げているため、記録材20の幅方向の中央部と比較して、定着ニップNを記録材20が通過中でもあまり温度が下がらない。そして、記録材20の幅方向の端部の温度L25は、紙間で熱が補充されるため、印字動作が続くと右肩上がりに上昇していく。
【0135】
これに対して、紙間を広げて放熱させたり、紙間で抵抗発熱体の通電比率を下げることで温度上昇を抑える等の対策を施した場合には、次の記録材20が定着ニップNに進入する際の定着性確保のため、再び抵抗発熱体の通電比率を上げなければならない。
【0136】
図19は、本実施の形態に係る定着処理との比較として、温度勾配ΔTを求めずに、記録材20の非通過部が昇温されたときに紙間を広げ、且つ、紙間の通電比率を下げた際の記録材20の幅方向の中央部と端部との温度推移を示すものである。
【0137】
図19より、記録材20の幅方向の中央部の温度L34は、定着ニップNを記録材20が通過中に記録材20によって奪われる温度と紙間で補充される温度とが釣り合っているため、一定の温度推移になっている。一方、記録材20の幅方向の端部の温度L35は、紙間で通電比率を下げることで温度の上昇を抑えているが、再び記録材20が定着ニップNに進入するタイミングに合わせて温度を上げていく。しかしながら、定着装置12が連続使用により温まりやすい状態になっている場合、記録材20の幅方向の端部の温度が持ち上がりすぎてしまい、その結果、フィルム650の表層の温度が高い状態で記録材20と接触することになってしまう。
【0138】
次に、通紙領域R2を通過する記録材20に対する定着処理について、
図20及び
図21を参照しながら詳細に説明する。
【0139】
なお、通紙領域R2を通過する記録材20に対する定着処理では、
図14のS38の処理でサーミスタ630の温度をモニタする代わりにサーミスタ631の温度をモニタする。また、通紙領域R2を通過する記録材20に対する定着処理では、
図14のS39の処理でサーミスタ630で検出した温度より温度勾配ΔTを求める代わりに、サーミスタ631で検出した温度より温度勾配ΔTを求める。通紙領域R2を通過する記録材20の定着処理における上記以外の処理は
図14と同一処理であるため、その説明を省略する。
【0140】
通紙領域R2を通過する記録材20に対する定着処理では、電力を供給していない間の記録材20の幅方向の端部の温度L42をサーミスタ631で検出し、その検出結果から記録材20の幅方向の端部の所定時間における温度勾配ΔTを求める。また、予め温度勾配と通電比率とを対応付けた
図21のテーブルを参照して、求めた温度勾配ΔTに対応付けられている通電比率を決定する。そして、次の記録材20が定着ニップNに進入してくるときに、記録材20の幅方向の端部の温度が高くならない決定した通電比率でヒータ600の温度を立ち上げていく。
【0141】
このように、通紙領域の幅方向の比較的短い幅の記録材20を連続して定着させた場合においても、ヒータ600の立下り温度勾配から定着装置12の蓄熱状況を予測し、オーバーシュートが起きない通電比率でヒータ温度を立ち上げていく。これにより、記録材20進入時に記録材20の幅方向の端部の温度が上昇することを防ぐことができ、記録材20の幅方向の端部によるフィルム650の表面の削れを防止することが可能となる。
【0142】
最後に、通紙領域R3を通過する記録材20に対する定着処理について、
図22から
図24を参照しながら詳細に説明する。
【0143】
定着装置12における定着処理は、CPU100が印字動作の要求信号を受信することにより開始される。
【0144】
定着処理の開始後、まず、CPU100は、トライアック51の駆動制御を行い、電源30から抵抗発熱体610に対して給電させる(S51)。
【0145】
図23に示すように、記録材20の幅方向の中央部の温度L53は、定着装置12を温め始める印字動作の立上げ期間に抵抗発熱体610にのみ給電するため、定着必要温度まで短時間で上昇していく。一方、記録材20の幅方向の端部の温度L54は、印字動作の立上げ期間に抵抗発熱体620に給電しないため、緩やかに上昇していく。
【0146】
次に、CPU100は、サーミスタ632で検出した温度が目標温度に到達した場合に、記録材20の給紙を開始させる(S52)。
【0147】
次に、CPU100は、記録材20が定着ニップNに到達した場合(S53)、サーミスタ630、サーミスタ631及びサーミスタ632で検出した温度が通紙期間における目標温度を維持するように制御する(S54)。CPU100は、トライアック51の駆動制御を行って電源30から抵抗発熱体610に対して給電させることにより、目標温度を維持するように制御する。
【0148】
次に、CPU100は、記録材20が定着ニップNを通過したか否かを判定する(S55)。
【0149】
CPU100は、判定の結果、記録材20が定着ニップNを通過していない場合(S55:No)、S54の処理に戻る。
【0150】
一方、CPU100は、記録材20が定着ニップNを通過した場合(S55:Yes)、トライアック51の駆動制御を停止して電源30から抵抗発熱体610への給電を停止させる(S56)。
【0151】
次に、CPU100は、サーミスタ632で検出する温度をモニタする(S57)。
【0152】
次に、CPU100は、サーミスタ632で検出した温度より所定時間における温度勾配ΔTを求めて定着装置12の蓄熱状況を判断する(S58)。定着装置12が温まっていないときは、記録材20の幅方向の端部の温度低下が大きくなり、また、定着装置12が温まっているときは、記録材20の幅方向の端部の温度低下が緩やかになる。従って、温度勾配ΔTを求めることにより、定着装置12の蓄熱状況を精度よく予測することができる。
【0153】
次に、CPU100は、予め定めておいた温度勾配ΔTと通電比率とを対応付けた
図24に示すテーブルを参照して、求めた温度勾配ΔTに対応付けられている通電比率を決定する(S59)。かかる通電比率は、次の記録材20の先端が定着ニップNに進入するまでの抵抗発熱体610の通電比率となる。
【0154】
次に、CPU100は、決定した通電比率で電源30から抵抗発熱体610に給電させる(S60)。
【0155】
次に、CPU100は、記録材20が定着ニップNに到達した場合(S61)、サーミスタ630、サーミスタ631及びサーミスタ632で検出した温度が目標温度を維持するように制御する(S62)。CPU100は、トライアック51の駆動制御を行って電源30から抵抗発熱体610に対して給電させることにより、目標温度を維持するように制御する。
【0156】
次に、CPU100は、記録材20が定着ニップNを通過したか否かを判定する(S63)。
【0157】
CPU100は、判定の結果、記録材20が定着ニップNを通過していない場合(S63:No)、S62の処理に戻る。
【0158】
一方、CPU100は、記録材20が定着ニップNを通過した場合(S63:Yes)、指定枚数の通紙を終了したか否かを判定する(S64)。
【0159】
CPU100は、判定の結果、指定枚数の通紙を終了していない場合(S64:No)、S56の処理に戻る。
【0160】
一方、CPU100は、判定の結果、指定枚数の通紙を終了した場合(S64:Yes)、定着処理を終了する。
【0161】
このように、通紙領域の幅方向の更に短い幅の記録材20を連続して定着させた場合においても、ヒータ600の所定時間における立下り温度勾配から定着装置12の蓄熱状況を予測し、オーバーシュートが起きない通電比率でヒータ温度を立ち上げる。これにより、記録材20進入時に記録材20の幅方向の端部の温度が上昇することを防ぐことができ、記録材20の幅方向の端部によるフィルム650の表面の削れを防止することが可能となる。
【0162】
定着ニップNを比較的短い幅の記録材20が連続して通過する際に、ヒータ600の記録材20の非通過部の温度がより高温になるため、その近傍のフィルム650の表層はより削れやすくなる。本実施の形態によれば、記録材20の幅に関わらずフィルムの表層の削れを抑制することができ、フィルムを長寿命にすることができる。
【0163】
なお、本実施の形態において、立上げ期間に電源30から抵抗発熱体620への給電を停止して抵抗発熱体620の発熱量を低減させたが、立上げ期間に電源30から抵抗発熱体620への給電を継続した状態で抵抗発熱体620の発熱量を低減してもよい。
【0164】
上記実施の形態1から実施の形態3において、抵抗発熱体610の抵抗値と抵抗発熱体620の抵抗値とを同一にしなくてもよい。例えば、定着ニップNの中心に対し記録材20の搬送方向の上流側の発熱量が大きくなるように、抵抗発熱体610の抵抗値と抵抗発熱体620の抵抗値とを異なる値に設定して定着性の向上を図ってもよい。
【0165】
また、上記実施の形態1から実施の形態3において、各抵抗発熱体は、必ずしも幅方向の全域に渡って発熱している必要はなく、幅方向の一部において発熱していてもよい。