特許第6739220号(P6739220)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三井金属アクト株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6739220-車両ドアラッチ装置 図000002
  • 特許6739220-車両ドアラッチ装置 図000003
  • 特許6739220-車両ドアラッチ装置 図000004
  • 特許6739220-車両ドアラッチ装置 図000005
  • 特許6739220-車両ドアラッチ装置 図000006
  • 特許6739220-車両ドアラッチ装置 図000007
  • 特許6739220-車両ドアラッチ装置 図000008
  • 特許6739220-車両ドアラッチ装置 図000009
  • 特許6739220-車両ドアラッチ装置 図000010
  • 特許6739220-車両ドアラッチ装置 図000011
  • 特許6739220-車両ドアラッチ装置 図000012
  • 特許6739220-車両ドアラッチ装置 図000013
  • 特許6739220-車両ドアラッチ装置 図000014
  • 特許6739220-車両ドアラッチ装置 図000015
  • 特許6739220-車両ドアラッチ装置 図000016
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6739220
(24)【登録日】2020年7月27日
(45)【発行日】2020年8月12日
(54)【発明の名称】車両ドアラッチ装置
(51)【国際特許分類】
   E05B 79/20 20140101AFI20200730BHJP
   E05B 79/22 20140101ALI20200730BHJP
   B60J 5/04 20060101ALI20200730BHJP
【FI】
   E05B79/20
   E05B79/22 A
   B60J5/04 H
   B60J5/04 Z
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-86022(P2016-86022)
(22)【出願日】2016年4月22日
(65)【公開番号】特開2017-193911(P2017-193911A)
(43)【公開日】2017年10月26日
【審査請求日】2018年10月3日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000148896
【氏名又は名称】三井金属アクト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089934
【弁理士】
【氏名又は名称】新関 淳一郎
(72)【発明者】
【氏名】長岡 智治
(72)【発明者】
【氏名】野澤 秀晶
【審査官】 秋山 斉昭
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−349116(JP,A)
【文献】 特開2009−287333(JP,A)
【文献】 特開平04−353181(JP,A)
【文献】 特開2011−184949(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0143942(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 79/20−79/22
B60J 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ストライカ(12)と係合することで車両ドア(51)をハーフラッチ状態またはフルラッチ状態に保持するラッチ(13)と、前記ラッチ(13)と係合して前記ストライカ(12)と前記ラッチ(13)との係合を保持するラチェット(14)と、外側開扉ハンドル(24)の開扉操作により開扉方向に変位すると前記ラチェット(14)を前記ラッチ(13)から開放させうるアウターレバー(26)とを有するラッチ部(10)と;
前記外側開扉ハンドル(24)の開扉操作を前記アウターレバー(26)に伝達するボーデンケーブル(25)とを備え;
前記ラッチ部(10)の室外側には前記ボーデンケーブル(25)を保持するケーブル係止部(62)を設け;
前記ケーブル係止部(62)は、前記ラッチ部(10)が固定される前記車両ドア(51)の車両幅方向に平行な連結ドアパネル(56)により閉塞されて前記ボーデンケーブル(25)の離脱が防止され得る構成とし
前記ボーデンケーブル(25)のアウターケーシング(60)の端部には、前記ケーブル係止部(62)から前記連結ドアパネル(56)側への離脱が規制されるように係合するケーブルキャップ(61)を設け、
前記ケーブルキャップ(61)は前記アウターケーシング(60)と共に回転させることで、前記ケーブル係止部(62)に対して前記連結ドアパネル(56)側への離脱が規制されるように係合する車両ドアラッチ装置。
【請求項2】
請求項において、前記ケーブルキャップ(61)には前記ケーブル係止部(62)より上方に位置する湾曲伸長部(74)を設け、前記湾曲伸長部(74)は上方に至るに従い前記連結ドアパネル(56)より離れる方向に湾曲させた車両ドアラッチ装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、前記ケーブル係止部(62)は前記アウターレバー(26)の上方に配置し、前記外側開扉ハンドル(24)の開扉操作により前記ボーデンケーブル(25)のインナーケーブル(58)が牽引されると、前記アウターレバー(26)の回動端は上方に牽引される構成とした車両ドアラッチ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両ドアラッチ装置に関するものであり、特に、外側開扉ハンドルの開扉操作をアウターレバーに伝達するボーデンケーブルの取付に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ストライカと係合することで車両ドアをハーフラッチ状態またはフルラッチ状態に保持するラッチと、前記ラッチと係合して前記ストライカと前記ラッチとの係合を保持するラチェットと、外側開扉ハンドルの開扉操作により開扉方向に変位すると前記ラチェットを前記ラッチから開放させうるアウターレバーとを有するラッチ部と;前記外側開扉ハンドルの開扉操作を前記アウターレバーに伝達するボーデンケーブルとを備え;前記ラッチ部には前記ボーデンケーブルを保持するケーブル係止部を設けた車両ドアラッチ装置は公知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5403159号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記従来装置では、ケーブル係止部をラッチ部の金属製バックプレートに形成し、ボーデンケーブルのアウターケーシングをケーブル係止部のU型リングに係止させた後、U型リングを圧嵌してアウターケーシングをケーブル係止部に固定していた。
このため、組立作業性が低下すると共に、圧嵌したボーデンケーブルは取り外しが難しく、メンテナンスにおいて不利が生じ、また、U型リングがバックプレートに形成されているため、金属部材が大きくなって重量が嵩む課題も生じていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
よって、本発明は、ストライカ12と係合することで車両ドア51をハーフラッチ状態またはフルラッチ状態に保持するラッチ13と、前記ラッチ13と係合して前記ストライカ12と前記ラッチ13との係合を保持するラチェット14と、外側開扉ハンドル24の開扉操作により開扉方向に変位すると前記ラチェット14を前記ラッチ13から開放させうるアウターレバー26とを有するラッチ部10と;前記外側開扉ハンドル24の開扉操作を前記アウターレバー26に伝達するボーデンケーブル25とを備え;前記ラッチ部10の室外側には前記ボーデンケーブル25を保持するケーブル係止部62を設け;前記ケーブル係止部62は、前記ラッチ部10が固定される前記車両ドア51の車両幅方向に平行な連結ドアパネル56により閉塞されて前記ボーデンケーブル25の離脱が防止され得る構成とし、前記ボーデンケーブル25のアウターケーシング60の端部には、前記ケーブル係止部62から前記連結ドアパネル56側への離脱が規制されるように係合するケーブルキャップ61を設け、前記ケーブルキャップ61は前記アウターケーシング60と共に回転させることで、前記ケーブル係止部62に対して前記連結ドアパネル56側への離脱が規制されるように係合する車両ドアラッチ装置の構成としたものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明の請求項1に係る発明では、ケーブル係止部62は車両ドア51の連結ドアパネル56により閉塞させることでボーデンケーブル25の離脱を防止できるので、構成が合理的であり、組立作業性も良好になる。また、前記ケーブル係止部62に対してケーブルキャップ61を仮止着するのが容易となる。
また、本発明の請求項に係る発明では、前記ケーブルキャップ61の湾曲伸長部74は上方に至るに従い前記連結ドアパネル56より離れる方向に湾曲させてあるので、ボーデンケーブル25を車両ドア51内で一回転させる配策がより自然に行え、ボーデンケーブル25を外側開扉ハンドル24に接続する作業性の更なる向上が見込まれる。
また、本発明の請求項に係る発明では、アウターレバー26は、その回動端に不慮の外力が作用すると、多くのケースにおいて下方に回動するため、このような不慮の外力による予期せぬ開扉が防止される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の車両ドアラッチ装置と車両ドアの取付状態を示す断面図。
図2】本発明の車両ドアラッチ装置の全体斜視図。
図3】前記車両ドアラッチ装置のラッチ部の車両後方に面する正面図。
図4】前記車両ドアラッチ装置のラッチボディの裏側に設けられる操作部の概要図。
図5】前記操作部を車両外側から見たアンロック状態における側面図。
図6】ロック状態における車両ドアラッチ装置のロックアクチュエータとロックレバーを車両外側から見た側面図。
図7】前記操作部のオープンリンクの拡大図。
図8】前記オープンリンクと前記ロックレバーの拡大斜視図。
図9】前記ラッチボディと前記車両ドアの連結ドアパネルとを示した車両上側から見た一部横断平面図。
図10】前記ラッチボディのケーブル係止部の拡大斜視図。
図11】前記ケーブル係止部に係止されるケーブルキャップの第1斜視図。
図12】前記ケーブルキャップの第2斜視図。
図13】前記ケーブルキャップの回転フックが前記ケーブル係止部に係合する前の状態を示した横断平面図。
図14】前記回転フックが前記ケーブル係止部に係合した状態を示した横断平面図。
図15】前記車両ドア内のボーデンケーブルの配策状態を示した略図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明に係る車両ドアラッチ装置の好適な実施形態を図面により説明する。本ドアラッチ装置50は、車両ドア51内に取り付けられる。車両ドア51は、金属製アウタードアパネル52と、金属製インナードアパネル53と、窓ガラス54と、ガラスガイドレール55とを備えている。インナードアパネル53の後部には、室外側に屈曲させてアウタードアパネル52に接続される連結ドアパネル56を形成し、ドアラッチ装置50は連結ドアパネル56に固定される。
【0009】
前記車両ドアラッチ装置50の一般的な構成は、ラッチ・ラチェット機構を備えたラッチ部10と、ラッチ部10に一体的若しくは別体的に接続される操作部11と、前記ラッチ部10に噛合することで車両ドア51を閉扉状態に維持するストライカ12(図3)とで構成される。操作部11とはオープン機構やロック機構等を含んでいる。ラッチ部10と操作部11とは、一体型の場合には上方視概略L型を呈することが多い。
【0010】
前記ラッチ部10は、図3のように、車両ドア51が閉じられるとストライカ12と係合するラッチ13と、ラッチ13とストライカ12との係合を保持するラチェット14とを有し、ラッチ13は、車両前後方向のラッチ軸15に軸止され、樹脂製のラッチボディ16の正面側(車両を基準にした後側)に形成された収納スペース17に収納され、また、前記ラチェット14はラチェット軸18に軸止され、収納スペース17に収納される。前記ラッチボディ16の正面には前記収納スペース17を塞ぐように金属製のカバープレート57が取り付けられる(図2図9参照)。
【0011】
前記ラッチ部10は、その正面に取り付けた前記カバープレート57が前記連結ドアパネル56に接面するように車両ドア51に取付けられる。このため、ラッチ部10の正面は、車体を基準とすると後方を向くことになる。
【0012】
前記ラッチ13はラッチバネ(図示なし)の弾力により図3において時計回転方向に付勢され、前記ラチェット14は、ラチェットバネ(図示なし)の弾力により反時計回転方向に付勢される。車両ドア51の閉扉移動により、ストライカ12がラッチボディ16のストライカ通路19内に進入し、図3に示したアンラッチ位置のラッチ13のU型溝20に当接すると、ラッチ13は反時計回転し、ラッチ13がハーフラッチ位置まで回転すると、前記ラチェット14の爪はラッチ13の第1ステップ21に係合してハーフラッチ状態となり、更に、ラッチ13が回転してフルラッチ位置になると、ラチェット14の爪はラッチ13の第2ステップ22に係合して、車両ドア51はフルラッチ状態に保持される。
【0013】
前記ラッチボディ16の背面側(車両を基準にした前側)には、図4のように、オープンレバー23が軸止される。オープンレバー23の左方近傍には、外側開扉ハンドル24にボーデンケーブル25を介して連結されるアウターレバー26が配設され、外側開扉ハンドル24の開扉操作は、アウターレバー26を介してオープンレバー23に伝達される。前記オープンレバー23の右端はオープンリンク27(図7)の下部に連結し、外側開扉ハンドル24が開扉操作されると、オープンリンク27は初期位置(待機位置)から上動する。
【0014】
図5は、操作部11の内部構造を車外側から示しており、各種レバー類は車幅方向の軸により支持されることになる。前記オープンリンク27の側方にはロックレバー28を配設する。オープンリンク27の上部には車外方向に膨出させた摺動突起29を形成し、摺動突起29はロックレバー28の裏面側(室内面側)に形成した上下方向の当接壁30に当接させる(図8参照)。オープンリンク27はアンチパニックバネ31の弾力により、図5において、反時計回転方向に付勢させ、この付勢力により摺動突起29は当接壁30に対して当接した状態に保たれる。
【0015】
前記ロックレバー28はロックレバー軸32に軸止され、図5のアンロック位置と図6のロック位置とに切り替わり、前記ロックレバー28がロック回転(時計回転)するときは、当接壁30と摺動突起29との当接により直接的にロックレバー28の回転がオープンリンク27に伝達されて、両者は連動して変位するが、ロックレバー28がアンロック回転(反時計回転)するときは、アンチパニックバネ31の弾力を介して回転力がオープンリンク27に伝達されることになる。
【0016】
図5のアンロック状態においては、前記オープンリンク27の中程に形成した開扉係合部33が前記ラチェット14のラチェットピン34に対して上下方向において対峙し、オープンレバー23の回転によりオープンリンク27が上動すると、開扉係合部33がラチェットピン34に下方から当接してラチェットピン34を押し上げ、もって、ラチェット14がラッチ13から離脱して開扉可能状態になる。しかし、ロックレバー28がロック回転(時計回転)してロック位置になると、オープンリンク27の開扉係合部33はラチェット14のラチェットピン34に対して側方に移動するため、オープンリンク27の上動による開扉操作は不能になる。
【0017】
前記アンチパニックバネ31は、ロックレバー28のアンロック回転をバネ弾力を介してオープンリンク27に伝達する。このため、オープンリンク27が所謂パニック状態になって、アンロック方向への変位が物理的に妨げられる事態になっても、ロックレバー28はアンチパニックバネ31を圧縮させながらアンロック位置への変位を完了することができ、これにより、アンロック操作のやり直しを回避できる。なお、パニック状態およびこれを回避するアンチパニック機構の詳細については、特開2004−44360号公報・特開2004−143864号公報の記載を参照できる。
【0018】
図5に示したように、前記オープンリンク27の下方にはインナーレバー35が配置され、インナーレバー35には連結具36を介して内側開扉ハンドル37が連結される。インナーレバー35には押圧片38が設けられ、内側開扉ハンドル37の開扉操作によりインナーレバー35が回転すると、押圧片38がオープンリンク27の下端に当接してオープンリンク27を押し上げる。これにより、アンロック状態であれば、ラチェット14がラッチ13から離脱して開扉可能状態になる。
【0019】
前記ロックレバー28の上方には、ロックレバー28をロック位置とアンロック位置とに変位させるロックアクチュエータ39が配設される。ロックアクチュエータ39は、モータ40と、モータ40の回転軸に固定された円筒ウォーム41と、円筒ウォーム41に噛合する出力ホイール42とを備えている。
【0020】
前記出力ホイール42はギア軸43に軸止され、一方側外周には円筒ウォーム41に噛合するギア部44が形成され、他方側には半径方向に突出する凸状連結部45を形成し、凸状連結部45は前記ロックレバー28に形成した凹状連結部46に凹凸係合させ、モータ40の動力が凹凸連結を介してロックレバー28に伝達されるように構成する。なお、凹凸関係は一方他方の関係となるから、凹状連結部46を出力ホイール42に、凸状連結部45をロックレバー28に形成することも可能である。
【0021】
前記出力ホイール42の他方側には一対の当接ストッパー47、48を形成する。図6のロック状態で出力ホイール42がアンロック方向(図において時計回転方向)に規定量回転し、ロックレバー28も規定量回転すると、アンロック用の当接ストッパー47が図5のようにロックレバー28の外周壁に当接し、反対に、図5のアンロック状態で出力ホイール42がロック方向(図5において反時計回転方向)に規定量回転し、ロックレバー28も規定量回転すると、ロック用の当接ストッパー48が図6のようにロックレバー28の外周壁に当接し、ロックアクチュエータ39はそれぞれ作動停止する。出力ホイール42の切替作動に必要な規定回転量(角度)は約40度である。
【0022】
前記ボーデンケーブル25のフレキシブルインナーケーブル58のラッチ部側の端部には、前記アウターレバー26に係止されるケーブルエンド59が固定され、同様に、インナーケーブル58の開扉ハンドル側の端部には、ハンドルレバー(図示なし)に係止されるケーブルエンド(図示なし)が固定される。
【0023】
前記インナーケーブル58の外皮となるアウターケーシング60の両端は、ラッチ部10側および外側開扉ハンドル24側の不動部材にそれぞれ取り付けられる。本願は、アウターケーシング60とラッチ部10との連結手段に大きな特徴があり、アウターケーシング60のラッチ部側の端部には、樹脂製ケーブルキャップ61が取り付けられ、ケーブルキャップ61はラッチボディ16の室外側側部に一体的に形成したケーブル係止部62に係止する。ケーブル係止部62を樹脂製のラッチボディ16に一体形成すると、ケーブル係止部を金属プレートに形成するものに比べて格段に軽量化が図れる。
【0024】
前記ケーブル係止部62には、平面視U字型の狭持部63が形成され、狭持部63にはケーブルキャップ61の小判状の断面(図9参照)を有する中央柱部64が差し込まれる。狭持部63は車両後方に向かって開口したU字状を呈しており、その先端側開口部の間口(車幅方向の間隔)は、中央柱部64の短径長に合わせて若干幅狭に形成する(図9参照)。これにより、車両前後方向に中央柱部64の長径軸が向く状態にケーブルキャップ61をセットして、ケーブルキャップ61を車両前方に向けてケーブル係止部62に差し込むと、細い短径幅の中央柱部64が狭持部63内に円滑に差し込まれ、その後、ケーブルキャップ61をアウターケーシング60毎、所定角度回転させると(好適には90度)、中央柱部64の長径部が狭持部63に対して適度の節動・抵抗を持って係合し、ケーブルキャップ61はケーブル係止部62に容易に仮止着される。
【0025】
また、前記ケーブル係止部62には、半円状の凹部65(図10)が形成される。凹部65には、ケーブルキャップ61の係合フランジ66が車両後方から車両前方に向けて差し込まれて係合する。凹部65と係合フランジ66との係合により、ケーブル係止部62に対するケーブルキャップ61の車両上下方向の動きは抑制され、ケーブルキャップ61とケーブル係止部62との仮止着がより確実に行われる。
【0026】
また、前記ケーブル係止部62には、上下方向に伸びる一対の係合凸部67、68が形成され、係合凸部67、68にはケーブルキャップ61の回転フック69を係合させる。係合凸部67、68は、互いに斜向かい、即ち、一方は奥側に他方は手前側に配置する。回転フック69は、それ自体は回転せずにケーブルキャップ61と一体成形され、ケーブルキャップ61(およびアウターケーシング60)と共に回転する。回転フック69は長方形の対角線上の一対の角部にそれぞれ徐々に径大となる円弧面70、71を備え、円弧面70、71の終端に半径方向の係合面を備えた爪部72、73を形成する。
【0027】
前述したように、中央柱部64の長径軸が車両前後方向に向く状態にケーブルキャップ61をセットして、ケーブルキャップ61を車両後方から車両前方に向けてケーブル係止部62に差し込むと、前記回転フック69は、図13のように、係合凸部67、68に接触することなく差し込まれ、その後、ケーブルキャップ61をアウターケーシング60毎、所定角度回転させると(図13において反時計回転)、徐々に径大になる円弧面70、71が係合凸部67、68に接触してこれらを押し広げ、ケーブルキャップ61を規定量回転させると(実施例では90度)、係合凸部67、68に爪部72、73がそれぞれ係合し、ケーブルキャップ61の逆転は防止抑制される。そして、ケーブルキャップ61に対して車両後方に向けての外力が作用しても、いずれか一方の爪部72、73は、常に、係合凸部67、68に対して抜け止め係合することになり、ケーブルキャップ61とケーブル係止部62との仮止着が更により確実に達成される。
【0028】
このように、ケーブルキャップ61はケーブル係止部62に複数の仮止着手段により取り付けられる。このため、ドアラッチ装置50(ラッチ部10)にボーデンケーブル25を取り付けた状態で、自動車組み立て工場に製品を出荷しても、長時間の運送による様々な外力によりボーデンケーブル25(のケーブルキャップ61)ラッチボディ16のケーブル係止部62から外れてしまうような事故を十分に抑制できる。
【0029】
また、ケーブル係止部62は全体としても平面視U字型で車両後方に向かって開口した形状を呈していて、ドアラッチ装置50を車両ドア51の連結ドアパネル56にボルト等で止着すると、図9に示したように、ケーブル係止部62の開口側は連結ドアパネル56で実質的に閉塞されるため、自動車組み立て工場でのドアへの組み付け完了後においては、ケーブルキャップ61はケーブル係止部62に対してより確実に保持される。
【0030】
なお、ケーブルキャップ61およびケーブル係止部62は、前記アウターレバー26の上方に配置し、外側開扉ハンドル24の開扉操作によりボーデンケーブル25のインナーケーブル58が牽引されると、アウターレバー26の回動端は、上方に牽引される構成にする。アウターレバー26は、その回動端に不慮の外力が作用すると、多くのケースにおいて下方に回動するため、このような不慮の外力による予期せぬ開扉が防止される。
【0031】
しかして、前記ケーブルキャップ61はアウターケーシング60の端部外周にインサート成形により一体的に成形され、成形時にはケーブル係止部62に係合させる下方部分以外にも、上方に伸びる湾曲伸長部74を一体的に形成する。湾曲伸長部74はボーデンケーブル25を車両ドア51の狭い内部空間内で円滑に配策できるように、二方向に湾曲させている。
【0032】
第一の方向は、図15から明らかなように、車両を基準にして湾曲伸長部74の上部の緩やかな前方への湾曲である。ボーデンケーブル25をラッチボディ16のケーブル係止部62に止着した状態でドアラッチ装置50を車両ドア51の連結ドアパネル56にボルト等で固定すると、湾曲伸長部74から上方に伸びるボーデンケーブル25(アウターケーシング60)は、緩やかに前方に湾曲する湾曲伸長部74に導かれて徐々に「山なり」になり、そのまま先端側を車両ドア51内で一回転させて、ボーデンケーブル25の先端側を外側開扉ハンドル24に連結する。このように、車両ドア51内でボーデンケーブル25を一回転させてから外側開扉ハンドル24に連結する構成にすると、ボーデンケーブル25を直線的に外側開扉ハンドル24に連結する場合に比べて、かえって製造ラインでの作業性が向上するため、多くの製造ラインではボーデンケーブル25を車両ドア51内で一回転させるような配策が行われている。このため、本実施例のように、湾曲伸長部74の上部を緩やかに前方に湾曲させると、ボーデンケーブル25を車両ドア51内で一回転させるのがより自然に行え、作業性の更なる向上が見込まれる。
【0033】
前記湾曲伸長部74の第二の湾曲方向は、図3から良く理解できるように、その上部側の室外側への湾曲である。図1に示したように、ラッチ部10の裏側には車両ドア51の窓ガラス54の移動軌跡が設定されるため、ボーデンケーブル25を室外側へ導くことで、互いの干渉を回避させている。
【0034】
前記ケーブルキャップ61は、上記のように、インサート成形によりアウターケーシング60の端部に成形する。成形時、アウターケーシング60は複数の押さえピンで所定の湾曲状態に保持されて、金型内に樹脂が射出され、ケーブルキャップ61が成形される。ケーブルキャップ61のパーティングラインには、厚めのリブ75を形成する。金型のキャビティにリブ75用の空間を設定することにより、押さえピンの周囲に良好に樹脂が流れ込み、成形性の安定が見込まれる。リブ75は湾曲伸長部74の湾曲形状を適切に保持する補強としても機能する。76は押さえピンにより形成されたピン孔である。
【符号の説明】
【0035】
10…ラッチ部、11…操作部、12…ストライカ、13…ラッチ、14…ラチェット、15…ラッチ軸、16…ラッチボディ、17…収納スペース、18…ラチェット軸、19…ストライカ通路、20…U型溝、21…第1ステップ、22…第2ステップ、23…オープンレバー、24…外側開扉ハンドル、25…ボーデンケーブル、26…アウターレバー、27…オープンリンク、28…ロックレバー、29…摺動突起、30…当接壁、31…アンチパニックバネ、32…ロックレバー軸、33…開扉係合部、34…ラチェットピン、35…インナーレバー、36…連結具、37…内側開扉ハンドル、38…押圧片、39…ロックアクチュエータ、40…モータ、41…円筒ウォーム、42…出力ホイール、43…ギア軸、44…ギア部、45…凸状連結部、46…凹状連結部、47…当接ストッパー、48…当接ストッパー、50…ドアラッチ装置、51…車両ドア、52…アウタードアパネル、53…インナードアパネル、54…窓ガラス、55…ガラスガイドレール、56…連結ドアパネル、57…カバープレート、58…インナーケーブル、59…ケーブルエンド、60…アウターケーシング、61…ケーブルキャップ、62…ケーブル係止部、63…狭持部、64…中央柱部、65…凹部、66…係合フランジ、67…係合凸部、68…係合凸部、69…回転フック、70…円弧面、71…円弧面、72…爪部、73…爪部、74…湾曲伸長部、75…リブ、76…ピン孔。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15