(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施形態における構成要素は適宜、既存の構成要素などとの置き換えが可能であり、また、他の既存の構成要素との組み合わせを含む様々なバリエーションが可能である。このため、以下の実施形態の記載をもって、特許請求の範囲に記載された発明の内容を限定するものではない。
【0012】
図1は、本発明の一実施形態に係るセンサ1のブロック図である。センサ1は、特徴量取得部10、計時部20、および状態判定部30を備えており、機器内の潤滑油の状態を判定する。特徴量取得部10は、潤滑油の誘電率および導電率を求める。計時部20は、機器に潤滑油が投入されてからの時間を計時する。状態判定部30は、特徴量取得部10により求められた誘電率および導電率と、計時部20により計時された時間と、に基づいて、潤滑油の状態を判定する。
【0013】
図2は、特徴量取得部10の概略構成図である。特徴量取得部10は、円柱状の基部11と、基部11に立設された一対の電極12、13と、電源部14と、取得部15と、を備える。
【0014】
電極12、13は、平板状の極板であり、互いに並行して配置されている。電源部14は、潤滑油の中に設置された電極12、13の間に交流電圧を印加する。取得部15は、電源部14により交流電圧が電極12、13の間に印加されている状態において、電極12、13の間の潤滑油の誘電率および導電率を求める。
【0015】
なお、本実施形態では、状態判定部30は、潤滑油の状態を、状態ST1からST9までの9つの状態の中から判定する。これら9つの状態について、
図3から
図13を用いて以下に説明する。なお、
図3から
図13において、横軸は、機器内に潤滑油が投入されてからの時間を示す。また、第1の縦軸は、機器内の潤滑油の誘電率を示し、第2の縦軸は、機器内の潤滑油の導電率を示す。
【0016】
(状態ST1)
図3は、機器に投入された潤滑油が正常に劣化した場合における、潤滑油の誘電率および導電率の時間推移を示すグラフである。この場合、単位時間当たりの誘電率の変化量(誘電率の傾き)Δεと、単位時間当たりの導電率の変化量(導電率の傾き)Δσと、は時間の経過によらず比較的小さいままである。この場合には、状態判定部30は、潤滑油が正常に劣化していると判断し、潤滑油の状態が状態ST1であると判定する。
なお、本実施形態において、潤滑油が正常に劣化している場合とは、潤滑油が一般的な劣化推移を示した場合、言い換えると
図4から
図13を用いて後述するいずれの異常も潤滑油に発生していない場合のことを示すものとする。
【0017】
(状態ST2)
図4は、機器に潤滑油を投入した後に、異物が潤滑油に混入したり、機器破損などによる異常摩耗が機器に生じたりした場合における、潤滑油の誘電率および導電率の時間推移を示すグラフである。この場合、単位時間当たりの誘電率の変化量Δεは、時間の経過によらず比較的小さいままである。一方、単位時間当たりの導電率の変化量Δσは、異物混入や異常摩耗が発生したタイミングを時刻Txとすると、時刻Txまでは時間の経過によらず比較的小さいままであるが、時刻Tx以降では時刻Txまでと比べて大きくなる。この場合には、状態判定部30は、機器への潤滑油の投入後に異物混入や異常摩耗が発生したと判断し、潤滑油の状態が状態ST2であると判定する。
【0018】
(状態ST3)
図5は、機器に潤滑油を投入した後に、酸化防止剤といった添加物の消耗や熱によって急激な酸化劣化が潤滑油に生じた場合における、潤滑油の誘電率および導電率の時間推移を示すグラフである。この場合、単位時間当たりの導電率の変化量Δσは、時間の経過によらず比較的小さいままである。一方、単位時間当たりの誘電率の変化量Δεは、急激な酸化劣化が始まったタイミングを時刻Txとすると、時刻Txまでは時間の経過によらず比較的小さいままであるが、時刻Tx以降では時刻Txまでと比べて大きくなる。この場合には、状態判定部30は、機器への潤滑油の投入後に急激な酸化劣化が生じたと判断し、潤滑油の状態が状態ST3であると判定する。
【0019】
(状態ST4)
図6は、機器に潤滑油を投入した後に、機器の故障などによってクーラントや水などが潤滑油に混入した場合における、潤滑油の誘電率および導電率の時間推移を示すグラフである。この場合、単位時間当たりの誘電率の変化量Δεおよび単位時間当たりの導電率の変化量Δσは、クーラントや水などが潤滑油に混入したタイミングをTxとすると、時刻Txまでは時間の経過によらず比較的小さいままであるが、時刻Tx以降では時刻Txまでと比べて大きくなる。この場合には、状態判定部30は、機器への潤滑油の投入後にクーラントや水などが潤滑油に混入したと判断し、潤滑油の状態が状態ST4であると判定する。
【0020】
なお、
図6では、単位時間当たりの誘電率の変化量Δεおよび単位時間当たりの導電率の変化量Δσは、時刻Txにおいて、すなわち同じタイミングで、変化している。しかし、
図7に示すように、時刻Txにおいて単位時間当たりの誘電率の変化量Δεが変化し、その後の時刻Tyにおいて単位時間当たりの導電率の変化量Δσが変化したり、
図8に示すように、時刻Txにおいて単位時間当たりの導電率の変化量Δσが変化し、その後の時刻Tzにおいて単位時間当たりの誘電率の変化量Δεが変化したりする可能性もある。
図7や
図8に示した場合でも、状態判定部30は、機器への潤滑油の投入後にクーラントや水などが潤滑油に混入したと判断し、潤滑油の状態が状態ST4であると判定する。
なお、時刻Txから時刻Tyまでの時間や、時刻Txから時刻Tzまでの時間は、潤滑油の種類や、機器の種類や、機器の稼働状況などに応じて適宜設定される。
【0021】
(状態ST5)
図9は、機器に潤滑油を投入した時点で既に、異物が潤滑油に混入したり、機器破損などによる異常摩耗が機器に生じたりしている場合における、潤滑油の誘電率および導電率の時間推移を示すグラフである。この場合、単位時間当たりの誘電率の変化量Δεは、時間の経過によらず比較的小さいままである。一方、単位時間当たりの導電率の変化量Δσは、機器に潤滑油が投入された直後から大きくなる。この場合には、状態判定部30は、機器への潤滑油の投入時において既に異物混入や異常摩耗が発生していたと判断し、潤滑油の状態が状態ST5であると判定する。
【0022】
(状態ST6)
図10は、機器に潤滑油を投入した時点で既に異物混入や異常摩耗が生じており、かつ、機器に潤滑油を投入した後に酸化防止剤といった添加物の消耗や熱によって急激な酸化劣化が潤滑油に生じた場合における、潤滑油の誘電率および導電率の時間推移を示すグラフである。この場合、単位時間当たりの導電率の変化量Δσは、機器に潤滑油が投入された直後から大きくなる。一方、単位時間当たりの誘電率の変化量Δεは、急激な酸化劣化が始まったタイミングを時刻Txとすると、時刻Txまでは時間の経過によらず比較的小さいままであるが、時刻Tx以降では時刻Txまでと比べて大きくなる。この場合には、状態判定部30は、機器への潤滑油の投入時において既に異物混入や異常摩耗が生じており、かつ、機器への潤滑油の投入後に急激な酸化劣化が生じたと判断し、潤滑油の状態が状態ST6であると判定する。
【0023】
(状態ST7)
図11は、機器に潤滑油を投入した時点で既に、機器に対するフラッシングが必要な状態である場合における、潤滑油の誘電率および導電率の時間推移を示すグラフである。この場合、単位時間当たりの導電率の変化量Δσは、時間の経過によらず比較的小さいままである。一方、単位時間当たりの誘電率の変化量Δεは、機器に潤滑油が投入された直後から大きくなる。この場合には、状態判定部30は、機器への潤滑油の投入時において既に機器に対するフラッシングが必要な状態であったと判断し、潤滑油の状態が状態ST7であると判定する。
なお、機器に対するフラッシングが必要な状態とは、例えばスラッジなどが機器内に多数存在している状態のことである。
【0024】
(状態ST8)
図12は、機器に潤滑油を投入した時点で既に機器に対するフラッシングが必要な状態であり、かつ、機器に潤滑油を投入した後に異物混入や異常摩耗が発生した場合における、潤滑油の誘電率および導電率の時間推移を示すグラフである。この場合、単位時間当たりの誘電率の変化量Δεは、機器に潤滑油が投入された直後から大きくなる。一方、単位時間当たりの導電率の変化量Δσは、異物混入や異常摩耗が発生したタイミングを時刻Txとすると、時刻Txまでは時間の経過によらず比較的小さいままであるが、時刻Tx以降では時刻Txまでと比べて大きくなる。この場合には、状態判定部30は、機器への潤滑油の投入時において既に機器に対するフラッシングが必要な状態であり、かつ、機器への潤滑油の投入後に異物混入や異常摩耗が発生したと判断し、潤滑油の状態が状態ST8であると判定する。
【0025】
(状態ST9)
図13は、機器に潤滑油を投入した時点で既に、機器に対するフラッシングが必要な状態であるとともに、クーラントや水などが潤滑油に混入している状態である場合における、潤滑油の誘電率および導電率の時間推移を示すグラフである。この場合、単位時間当たりの誘電率の変化量Δεおよび単位時間当たりの導電率の変化量Δσは、機器に潤滑油が投入された直後から大きくなる。この場合には、状態判定部30は、機器への潤滑油の投入時において既に、機器に対するフラッシングが必要な状態であり、かつ、クーラントや水などが潤滑油に混入していたと判断し、潤滑油の状態が状態ST9であると判定する。
【0026】
以上の特徴量取得部10、計時部20、および状態判定部30は、CPU、メモリ(RAM)、ハードディスクなどを用いて実現される。
【0027】
ハードディスクは、オペレーティングシステムや、潤滑油の状態を判定するための一連の処理を実行するためのプログラムなどを記憶する。なお、ハードディスクは、非一時的な記録媒体であればよく、例えば、EPROMやフラッシュメモリといった不揮発性のメモリ、CD−ROMなどであってもよい。
【0028】
CPUは、メモリを適宜利用して、ハードディスクに記憶されているデータやプログラムを適宜読み出して、演算や実行を適宜行う。
【0029】
図14から
図18は、センサ1のフローチャートである。
図14から
図18に示す処理は、予め定められた時間が経過するたびに、ステップS1から繰り返し実行される。
ステップS1において、センサ1は、特徴量取得部10により、機器内の潤滑油の誘電率および導電率を求め、ステップS2に処理を移す。
【0030】
ステップS2において、センサ1は、計時部20により、特徴量取得部10により誘電率および導電率を前回求めたタイミングから、予め定められたサンプリング時間Δt以上の時間が経過しているか否かを判別する。センサ1は、計時部20により、経過していると判別した場合にはステップS3に処理を移し、経過していないと判別した場合にはステップS2の処理を繰り返す。
なお、サンプリング時間Δtは、誘電率および導電率をそれぞれ2回求め、求めた結果に基づいて、単位時間当たりの誘電率の変化量Δεと、単位時間当たりの導電率の変化量Δσと、を算出するための時間である。このため、サンプリング時間Δtは、潤滑油の種類や、機器の種類や、機器の稼働状況などに応じて適宜設定される。
【0031】
ステップS3において、センサ1は、特徴量取得部10により、機器内の潤滑油の誘電率および導電率を求め、ステップS4に処理を移す。
【0032】
ステップS4において、センサ1は、状態判定部30により、特徴量取得部10により求めた直近2回の誘電率に基づいて、単位時間当たりの誘電率の変化量Δεを算出するとともに、特徴量取得部10により求めた直近2回の導電率に基づいて、単位時間当たりの導電率の変化量Δσを算出し、ステップS5に処理を移す。
【0033】
ステップS5において、センサ1は、計時部20により、機器内に潤滑油が投入されてからの時間Tを取得し、ステップS6に処理を移す。
【0034】
ステップS6において、センサ1は、状態判定部30により、単位時間当たりの誘電率の変化量Δεが閾値Δεth未満であるか否かを判別する。センサ1は、状態判定部30により、閾値Δεth未満であると判別した場合にはステップS7に処理を移し、閾値Δεth以上であると判別した場合にはステップS10に処理を移す。
なお、閾値Δεthは、
図3から
図13を用いて上述したように単位時間当たりの誘電率の変化量Δεの大小を判別するための値であり、潤滑油の種類や、機器の種類や、機器の稼働状況などに応じて適宜設定される。
【0035】
ステップS7において、センサ1は、状態判定部30により、単位時間当たりの導電率の変化量Δσが閾値Δσth未満であるか否かを判別する。センサ1は、状態判定部30により、閾値Δσth未満であると判別した場合にはステップS8に処理を移し、閾値Δσth以上であると判別した場合にはステップS9に処理を移す。
なお、閾値Δσthは、
図3から
図13を用いて上述したように単位時間当たりの導電率の変化量Δσの大小を判別するための値であり、潤滑油の種類や、機器の種類や、機器の稼働状況などに応じて適宜設定される。
【0036】
ステップS8において、センサ1は、状態判定部30により、機器内の潤滑油の状態が状態ST1であると判定し、ステップS2に処理を戻す。
【0037】
ステップS9において、センサ1は、状態判定部30により、ステップS5において取得した時間Tが閾値Tth未満であるか否かを判別する。センサ1は、状態判定部30により、閾値Tth未満であると判別した場合には
図15のステップS21に処理を移し、閾値Tth以上であると判別した場合には
図16のステップS31に処理を移す。
【0038】
なお、機器内の潤滑油に異常が発生するタイミングは、
図4から
図13を用いて上述したように、2つに分類することができる。
1つは、機器への潤滑油の投入時において既に、機器に異常が発生している場合である。この場合には、機器に潤滑油を投入した時点で、潤滑油に異常が発生することになる。
もう1つは、機器への潤滑油の投入後に、機器に異常が発生したり、潤滑油の劣化が一定レベル以上に進んでしまったりした場合である。この場合には、機器に潤滑油を投入した時点では、潤滑油に異常は発生しておらず、機器に異常が発生したり、潤滑油の劣化が一定レベル以上に進んでしまったりした時点で、潤滑油に異常が発生することになる。
閾値Tthは、
図4から
図13を用いて上述した異常が、機器への潤滑油の投入時において既に発生していたのか、それとも機器への潤滑油の投入後に発生したのか、を判別するための値である。この閾値Tthは、潤滑油の種類や、機器の種類や、機器の稼働状況などに応じて適宜設定される。
【0039】
ステップS10において、センサ1は、状態判定部30により、ステップS5において取得した時間Tが閾値Tth未満であるか否かを判別する。センサ1は、状態判定部30により、閾値Tth未満であると判別した場合には
図17のステップS41に処理を移し、閾値Tth以上であると判別した場合には
図18のステップS61に処理を移す。
【0040】
図15のステップS21において、センサ1は、状態判定部30により、単位時間当たりの誘電率の変化量Δεが閾値Δεth未満であるか否かを判別する。センサ1は、状態判定部30により、閾値Δεth未満であると判別した場合にはステップS22に処理を移し、閾値Δεth以上であると判別した場合にはステップS26に処理を移す。
【0041】
ステップS22において、センサ1は、状態判定部30により、機器内の潤滑油の状態が状態ST5であると判定し、ステップS23に処理を移す。
【0042】
ステップS23において、センサ1は、計時部20により、特徴量取得部10により誘電率を前回求めたタイミングから、サンプリング時間Δt以上の時間が経過しているか否かを判別する。センサ1は、計時部20により、経過していると判別した場合にはステップS24に処理を移し、経過していないと判別した場合にはステップS23の処理を繰り返す。
【0043】
ステップS24において、センサ1は、特徴量取得部10により、機器内の潤滑油の誘電率を求め、ステップS25に処理を移す。
【0044】
ステップS25において、センサ1は、状態判定部30により、特徴量取得部10により求めた直近2回の誘電率に基づいて、単位時間当たりの誘電率の変化量Δεを算出し、ステップS21に処理を戻す。
【0045】
ステップS26において、センサ1は、状態判定部30により、機器内の潤滑油の状態が状態ST6であると判定し、
図14から
図18に示す処理を終了する。
【0046】
図16のステップS31において、センサ1は、状態判定部30により、単位時間当たりの誘電率の変化量Δεが閾値Δεth未満であるか否かを判別する。センサ1は、状態判定部30により、閾値Δεth未満であると判別した場合にはステップS32に処理を移し、閾値Δεth以上であると判別した場合にはステップS36に処理を移す。
【0047】
ステップS32において、センサ1は、状態判定部30により、機器内の潤滑油の状態が状態ST2であると判定し、ステップS33に処理を移す。
【0048】
ステップS33において、センサ1は、計時部20により、特徴量取得部10により誘電率を前回求めたタイミングから、サンプリング時間Δt以上の時間が経過しているか否かを判別する。センサ1は、計時部20により、経過していると判別した場合にはステップS34に処理を移し、経過していないと判別した場合にはステップS33の処理を繰り返す。
【0049】
ステップS34において、センサ1は、特徴量取得部10により、機器内の潤滑油の誘電率を求め、ステップS35に処理を移す。
【0050】
ステップS35において、センサ1は、状態判定部30により、特徴量取得部10により求めた直近2回の誘電率に基づいて、単位時間当たりの誘電率の変化量Δεを算出し、ステップS31に処理を戻す。
【0051】
ステップS36において、センサ1は、状態判定部30により、機器内の潤滑油の状態が状態ST4であると判定し、
図14から
図18に示す処理を終了する。
【0052】
なお、状態ST4には、上述のように
図6から
図8の3種類の状態がある。ステップS36では、センサ1は、
図8に示した状態ST4だけでなく、
図6に示した状態ST4についても、判定することができる。ステップS36において、機器内の潤滑油の状態が
図6に示した状態ST4であると判定する場合について、以下に説明する。
【0053】
センサ1は、ステップS31において、単位時間当たりの誘電率の変化量Δεが閾値Δεth未満であるか否かによって、処理を変えている。このため、閾値Δεthの設定によっては、実際には
図6に示したように、単位時間当たりの誘電率の変化量Δεおよび単位時間当たりの導電率の変化量Δσが同じタイミングで変化しているにもかかわらず、単位時間当たりの導電率の変化量Δσが変化した後に、単位時間当たりの誘電率の変化量Δεが変化したと判別する可能性がある。この場合、センサ1は、ステップS32において状態ST2であると判定した後に、ステップS33からS35およびステップS31、S32を1回以上繰り返した後に、ステップS36において状態ST2から状態ST4に状態が遷移した判定することになる。
なお、
図6に示したように、単位時間当たりの誘電率の変化量Δεおよび単位時間当たりの導電率の変化量Δσが同じタイミングで変化するとともに、単位時間当たりの誘電率の変化量Δεおよび単位時間当たりの導電率の変化量Δσが同じタイミングで変化したとセンサ1が判定した場合には、
図14のステップS6において、ステップS10に処理が移される。このため、この場合には、詳細については
図18を用いて後述するが、
図18のステップS66において状態ST4であると判定される。
【0054】
図17のステップS41において、センサ1は、状態判定部30により、単位時間当たりの導電率の変化量Δσが閾値Δσth未満であるか否かを判別する。センサ1は、状態判定部30により、閾値Δσth未満であると判別した場合にはステップS42に処理を移し、閾値Δσth以上であると判別した場合にはステップS50に処理を移す。
【0055】
ステップS42において、センサ1は、状態判定部30により、ステップS5において取得した時間Tが閾値Tth未満であるか否かを判別する。センサ1は、状態判定部30により、閾値Tth以上であると判別した場合にはステップS43に処理を移し、閾値Tth未満であると判別した場合にはステップS42の処理を繰り返す。
【0056】
ステップS43において、センサ1は、特徴量取得部10により、機器内の潤滑油の導電率を求め、ステップS44に処理を移す。
【0057】
ステップS44において、センサ1は、計時部20により、特徴量取得部10により導電率を前回求めたタイミングから、サンプリング時間Δt以上の時間が経過しているか否かを判別する。センサ1は、計時部20により、経過していると判別した場合にはステップS45に処理を移し、経過していないと判別した場合にはステップS44の処理を繰り返す。
【0058】
ステップS45において、センサ1は、特徴量取得部10により、機器内の潤滑油の導電率を求め、ステップS46に処理を移す。
【0059】
ステップS46において、センサ1は、状態判定部30により、特徴量取得部10により求めた直近2回の導電率に基づいて、単位時間当たりの導電率の変化量Δσを算出し、ステップS47に処理を移す。
【0060】
ステップS47において、センサ1は、状態判定部30により、単位時間当たりの導電率の変化量Δσが閾値Δσth未満であるか否かを判別する。センサ1は、状態判定部30により、閾値Δσth未満であると判別した場合にはステップS48に処理を移し、閾値Δσth以上であると判別した場合にはステップS49に処理を移す。
【0061】
ステップS48において、センサ1は、状態判定部30により、機器内の潤滑油の状態が状態ST7であると判定し、ステップS44に処理を戻す。
【0062】
ステップS49において、センサ1は、状態判定部30により、機器内の潤滑油の状態が状態ST8であると判定し、
図14から
図18に示す処理を終了する。
【0063】
ステップS50において、センサ1は、状態判定部30により、機器内の潤滑油の状態が状態ST9であると判定し、
図14から
図18に示す処理を終了する。
【0064】
図18のステップS61において、センサ1は、状態判定部30により、単位時間当たりの導電率の変化量Δσが閾値Δσth未満であるか否かを判別する。センサ1は、状態判定部30により、閾値Δσth未満であると判別した場合にはステップS62に処理を移し、閾値Δσth以上であると判別した場合にはステップS66に処理を移す。
【0065】
ステップS62において、センサ1は、状態判定部30により、機器内の潤滑油の状態が状態ST3であると判定し、ステップS63に処理を移す。
【0066】
ステップS63において、センサ1は、計時部20により、特徴量取得部10により導電率を前回求めたタイミングから、サンプリング時間Δt以上の時間が経過しているか否かを判別する。センサ1は、計時部20により、経過していると判別した場合にはステップS64に処理を移し、経過していないと判別した場合にはステップS63の処理を繰り返す。
【0067】
ステップS64において、センサ1は、特徴量取得部10により、機器内の潤滑油の導電率を求め、ステップS65に処理を移す。
【0068】
ステップS65において、センサ1は、状態判定部30により、特徴量取得部10により求めた直近2回の導電率に基づいて、単位時間当たりの導電率の変化量Δσを算出し、ステップS61に処理を戻す。
【0069】
ステップS66において、センサ1は、状態判定部30により、機器内の潤滑油の状態が状態ST4であると判定し、
図14から
図18に示す処理を終了する。
【0070】
なお、状態ST4には、上述のように
図6から
図8の3種類の状態がある。ステップS66では、センサ1は、
図7に示した状態ST4だけでなく、
図6に示した状態ST4についても、判定することができる。ステップS66において、機器内の潤滑油の状態が
図6に示した状態ST4であると判定する場合について、以下に説明する。
【0071】
センサ1は、ステップS61において、単位時間当たりの導電率の変化量Δσが閾値Δσth未満であるか否かによって、処理を変えている。このため、閾値Δσthの設定によっては、実際には
図6に示したように、単位時間当たりの誘電率の変化量Δεおよび単位時間当たりの導電率の変化量Δσが同じタイミングで変化しているにもかかわらず、単位時間当たりの誘電率の変化量Δεが変化した後に、単位時間当たりの導電率の変化量Δσが変化したと判別する可能性がある。この場合、センサ1は、ステップS62において状態ST3であると判定した後に、ステップS63からS65およびステップS61、S62を1回以上繰り返した後に、ステップS66において状態ST3から状態ST4に状態が遷移した判定することになる。
また、
図6に示したように、単位時間当たりの誘電率の変化量Δεおよび単位時間当たりの導電率の変化量Δσが同じタイミングで変化するとともに、単位時間当たりの誘電率の変化量Δεおよび単位時間当たりの導電率の変化量Δσが同じタイミングで変化したとセンサ1が判定した場合には、状態ST3であると判定することなく、ステップS66において状態ST4であると判定することになる。
【0072】
センサ1は、特徴量取得部10により、潤滑油の誘電率および導電率を求め、計時部20により、機器に潤滑油が投入されてからの時間を計時する。また、状態判定部30により、特徴量取得部10により求められた誘電率および導電率と、計時部20により計時された時間と、に基づいて、潤滑油の状態を判定する。このため、潤滑油の誘電率および導電率に、機器に潤滑油が投入されてからの時間も組み合わせて、潤滑油の状態を判定することになる。したがって、潤滑油の状態をより詳細に判定することができる。
【0073】
また、潤滑油に異常が発生すると、潤滑油の誘電率と、潤滑油の導電率と、のうち少なくともいずれかが大きく変化する。このため、潤滑油に異常が発生すると、単位時間当たりの誘電率の変化量Δεと、単位時間当たりの導電率の変化量Δσと、のうち少なくともいずれかが大きく変化することになる。
そこで、センサ1は、状態判定部30により、特徴量取得部10により求められた誘電率に基づいて、単位時間当たりの誘電率の変化量Δεを求めるとともに、特徴量取得部10により求められた導電率に基づいて、単位時間当たりの導電率の変化量Δσを求める。また、状態判定部30により、求めた単位時間当たりの誘電率の変化量Δεと、求めた単位時間当たりの導電率の変化量Δσと、単位時間当たりの誘電率の変化量Δεおよび単位時間当たりの導電率の変化量Δσを求めた際において計時部20により計時された時間Tと、に基づいて、潤滑油の状態を判定する。このため、潤滑油に異常が発生したタイミングを適切に判定することができ、潤滑油の状態をより詳細に判定することができる。
【0074】
また、センサ1は、状態判定部30により、単位時間当たりの誘電率の変化量Δεが閾値Δεth以上になったタイミングと、単位時間当たりの導電率の変化量Δσが閾値Δσth以上になったタイミングと、を求め、これら2つのタイミングに基づいて、潤滑油の状態を判定する。このため、潤滑油に異常が発生したタイミングを適切に判定することができ、潤滑油の状態をより詳細に判定することができる。
【0075】
なお、本実施形態では、誘電率および導電率をそれぞれ2回求め、求めた結果に基づいて、単位時間当たりの誘電率の変化量Δεと、単位時間当たりの導電率の変化量Δσと、を算出した。しかし、これに限らず、誘電率および導電率をそれぞれ3回以上求めてもよい。この場合、例えば縦軸が誘電率で横軸が時間を示すグラフを想定すると、特徴量取得部10により求めた誘電率の各点の回帰直線の傾きを求め、単位時間当たりの誘電率の変化量Δεとしてもよい。また、単位時間当たりの導電率の変化量Δσについても、単位時間当たりの誘電率の変化量Δεと同様に、特徴量取得部10により求めた導電率の各点の回帰直線の傾きを求め、単位時間当たりの導電率の変化量Δσとしてもよい。
【0076】
また、本実施形態では、センサ1は、潤滑油の状態を検出したが、これに限らず、流体であれば状態を検出することができる。例えば、センサ1により、水の汚染度を検出したり、薬品や飲料の品質を検出したりすることもできる。
【0077】
また、本実施形態では、平板状の極板で電極12、13を形成し、これら電極12、13を互いに並行して配置した。しかし、これに限らず、例えば円柱状や楕円柱状の極板で電極12、13を形成してもよい。また、例えば同軸円筒型コンデンサーのように、内径が異なる2つの円筒状の極板で電極12、13を形成し、それぞれの中心軸が一致した状態で電極12、13のいずれか一方をいずれか他方の内部に配置してもよい。
【0078】
また、本実施形態では、センサ1は、
図14から
図18に示した処理を、予め定められた時間が経過するたびにステップS1から繰り返し実行して、単位時間当たりの誘電率の変化量Δεと、単位時間当たりの導電率の変化量Δσと、をそれぞれ繰り返し求める。そして、単位時間当たりの誘電率の変化量Δεと、単位時間当たりの導電率の変化量Δσと、機器内に潤滑油が投入されたタイミングから単位時間当たりの誘電率の変化量Δεを求めたタイミングまでの時間と、機器内に潤滑油が投入されたタイミングから単位時間当たりの導電率の変化量Δσを求めたタイミングまでの時間と、に基づいて、機器内の潤滑油の状態を判定した。
しかし、これに限らず、機器内に潤滑油が投入されてから時間T1が経過したタイミングと、機器内に潤滑油が投入されてから時間T2が経過したタイミングと、において、単位時間当たりの誘電率の変化量Δεおよび単位時間当たりの導電率の変化量Δσを求め、機器内に潤滑油が投入されてから時間T1が経過したタイミングで求めた単位時間当たりの誘電率の変化量Δεと、機器内に潤滑油が投入されてから時間T2が経過したタイミングで求めた単位時間当たりの誘電率の変化量Δεと、機器内に潤滑油が投入されてから時間T1が経過したタイミングで求めた単位時間当たりの導電率の変化量Δσと、機器内に潤滑油が投入されてから時間T2が経過したタイミングで求めた単位時間当たりの導電率の変化量Δσと、に基づいて、機器内の潤滑油の状態を判定してもよい。なお、時間T1は、閾値Tth以下の時間であり、潤滑油の種類や、機器の種類や、機器の稼働状況などに応じて適宜設定され、例えば数十時間程度であってもよい。また、時間T2は、閾値Tthよりも長い時間であり、潤滑油の種類や、機器の種類や、機器の稼働状況などに応じて適宜設定され、例えば数百時間程度であってもよい。この場合でも、本実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0079】
なお、時間T1、T2は、バスタブ曲線に応じて設定することができ、例えば機器内に投入された潤滑油の推奨交換時期が1年または3000時間である場合には、時間T2は、上述の推奨交換時期よりも短くなる。
また、単位時間当たりの誘電率の変化量Δεおよび単位時間当たりの導電率の変化量Δσを、機器内に潤滑油が投入されてから時間T1が経過してから、機器内に潤滑油が投入されてから時間T2が経過するまでの期間に、1回以上求めるようにしてもよい。また、単位時間当たりの誘電率の変化量Δεおよび単位時間当たりの導電率の変化量Δσを、機器内に潤滑油が投入されてから時間T2が経過した後の期間に、1回以上求めるようにしてもよい。ただし、機器内に潤滑油が投入されてから時間T1が経過してから、機器内に潤滑油が投入されてから時間T2が経過するまでの期間では、センサ1の故障発生の確率は比較的低い。このため、この期間に単位時間当たりの誘電率の変化量Δεおよび単位時間当たりの導電率の変化量Δσを求める必要性は低い。
【0080】
また、本実施形態において、センサ1は、
図15のステップS26の直前に、計時部20により、機器内に潤滑油が投入されてからの時間Tを取得するステップと、状態判定部30により、上述の取得した時間Tが閾値Tth未満であるか否かを判別するステップと、を実行するようにしてもよい。この場合、センサ1は、状態判定部30により、閾値Tth以上であると判別した場合にはステップS26に処理を移し、閾値Tth未満であると判別した場合には
図17のステップS50に処理を移せばよい。このようにすることで、単位時間当たりの誘電率の変化量Δεおよび単位時間当たりの導電率の変化量Δσが、互いに異なるタイミングであって、機器内に潤滑油が投入されてから閾値Tthが経過するよりも前のタイミングで、変化した場合でも、機器内の潤滑油の状態が状態ST9であると判定されることになる。
【0081】
以上、この発明の実施形態につき、図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計なども含まれる。
【0082】
なお、本発明は、例えば水圧機器に適用することもできる。