特許第6739223号(P6739223)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6739223
(24)【登録日】2020年7月27日
(45)【発行日】2020年8月12日
(54)【発明の名称】センサ
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/22 20060101AFI20200730BHJP
【FI】
   G01N27/22 B
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-89099(P2016-89099)
(22)【出願日】2016年4月27日
(65)【公開番号】特開2017-198530(P2017-198530A)
(43)【公開日】2017年11月2日
【審査請求日】2019年3月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】KYB株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122426
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 清志
(72)【発明者】
【氏名】吉田 尚弘
(72)【発明者】
【氏名】亀田 幸則
【審査官】 小澤 瞬
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−270787(JP,A)
【文献】 特表2003−526784(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0114060(US,A1)
【文献】 特開2014−214663(JP,A)
【文献】 特表2007−536518(JP,A)
【文献】 特表2008−536042(JP,A)
【文献】 特開平11−236831(JP,A)
【文献】 特表2006−503289(JP,A)
【文献】 特開平07−035719(JP,A)
【文献】 国際公開第03/029802(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01M 11/00 − F01M 13/06
G01N 27/00 − G01N 27/10
G01N 27/14 − G01N 27/24
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機器内の流体の状態を検出するセンサであって、
前記機器内の流体の特徴量を求める特徴量取得部と、
前記特徴量取得部により特徴量が求められた際における前記機器内の流体の温度を測定する温度測定部と、
予め求められた前記機器内の流体の特徴量と、前記機器内の流体の特徴量が予め求められた際に測定された前記機器内の流体の温度と、が関連づけて登録されたデータベースを格納する記憶部と、
前記特徴量取得部により求められた前記機器内の流体の特徴量を、前記温度測定部により測定された前記機器内の流体の温度と、前記データベースと、に基づいて補正する補正部と、を備え
前記補正部は、前記流体が前記機器に投入されてから予め定められた時間が経過するまでの期間において前記特徴量取得部により求められた前記機器内の流体の特徴量と、前記特徴量取得部により特徴量が求められた際に前記温度測定部により測定された前記機器内の流体の温度と、を関連づけて前記データベースに登録することを特徴とするセンサ。
【請求項2】
前記補正部は、前記特徴量取得部により求められた前記機器内の流体の特徴量を、前記特徴量取得部により特徴量が求められた際に前記温度測定部により測定された前記機器内の流体の温度と、前記データベースと、に基づいて、予め定められた基準温度における前記機器内の流体の特徴量に補正することを特徴とする請求項1に記載のセンサ。
【請求項3】
前記補正部は、
前記データベースを用いて、前記温度測定部により測定された温度から前記基準温度までにおける前記機器内の流体の特徴量の変化量の理論値を求め、
前記理論値を用いて、前記特徴量取得部により求められた前記機器内の流体の特徴量を、前記基準温度における前記機器内の流体の特徴量に補正することを特徴とする請求項2に記載のセンサ。
【請求項4】
前記補正部は、前記データベースに登録されている情報を用いて内挿または外挿により、前記温度測定部により測定された温度から前記基準温度までの前記機器内の流体の特徴量を求めることを特徴とする請求項3に記載のセンサ。
【請求項5】
前記補正部は、
内挿または外挿により求めた流体の特徴量を用いて、前記温度測定部により測定された温度から前記基準温度までにおける前記機器内の流体の特徴量と温度との関係を表す近似曲線を求め、
求めた近似曲線を前記データベースに登録するとともに、
求めた近似曲線を用いて、前記特徴量取得部により求められた前記機器内の流体の特徴量を、前記基準温度における前記機器内の流体の特徴量に補正することを特徴とする請求項4に記載のセンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサに関する。
【背景技術】
【0002】
流体の状態を検出する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1には、回転部や摺動部に循環供給され、これら各部品の摩耗を防いで円滑に動作させるためのオイルについて、劣化を判断するオイル劣化検出装置が示されている。このオイル劣化検出装置は、オイル流路に互いに並行して設置された2枚の極板を備えており、これら2枚の極板間に交流電圧を印加することによりオイルの導電率および誘電率を求め、導電率および誘電率に基づいてオイルの劣化を判断する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−2693号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
誘電率や導電率といった流体の特徴量は、流体の温度に応じて変化することがある。このため、流体の温度を考慮することなく、流体の特徴量に基づいて流体の状態を検出すると、流体の状態を適正に検出することができないおそれがあった。
【0006】
そこで、本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、流体の特徴量に対する流体の温度の影響を低減して、流体の状態を適正に検出するセンサを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の1またはそれ以上の実施形態は、機器内の流体の状態を検出するセンサであって、前記機器内の流体の特徴量を求める特徴量取得部と、前記特徴量取得部により特徴量が求められた際における前記機器内の流体の温度を測定する温度測定部と、予め求められた前記機器内の流体の特徴量と、前記機器内の流体の特徴量が予め求められた際に測定された前記機器内の流体の温度と、が関連づけて登録されたデータベースを格納する記憶部と、前記特徴量取得部により求められた前記機器内の流体の特徴量を、前記温度測定部により測定された前記機器内の流体の温度と、前記データベースと、に基づいて補正する補正部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の1またはそれ以上の実施形態によれば、流体の特徴量に対する流体の温度の影響を低減させて、流体の状態を適正に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係るセンサのブロック図である。
図2】本発明の一実施形態に係るセンサが備える特徴量取得部の概略構成図である。
図3】本発明の一実施形態に係るセンサが備える記憶部について説明するための図である。
図4】本発明の一実施形態に係るセンサが備える記憶部について説明するための図である。
図5】本発明の一実施形態に係るセンサが備える補正部について説明するための図である。
図6】本発明の一実施形態に係るセンサが備える補正部について説明するための図である。
図7】本発明の一実施形態に係るセンサが備える補正部について説明するための図である。
図8】本発明の一実施形態に係るセンサのフローチャートである。
図9】本発明の一実施形態に係るセンサのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施形態における構成要素は適宜、既存の構成要素などとの置き換えが可能であり、また、他の既存の構成要素との組み合わせを含む様々なバリエーションが可能である。このため、以下の実施形態の記載をもって、特許請求の範囲に記載された発明の内容を限定するものではない。
【0011】
図1は、本発明の一実施形態に係るセンサ1のブロック図である。センサ1は、特徴量取得部10、温度測定部20、記憶部30、補正部40、および検出部50を備えており、機器内の潤滑油の状態を検出する。特徴量取得部10は、機器内の潤滑油の誘電率を求める。温度測定部20は、特徴量取得部10により誘電率が求められた際における機器内の潤滑油の温度を測定する。記憶部30は、予め求められた機器内の潤滑油の誘電率と、機器内の潤滑油の誘電率が予め求められた際に測定された機器内の潤滑油の温度と、が関連づけて登録されたデータベースを格納する。補正部40は、特徴量取得部10により求められた機器内の潤滑油の誘電率を、温度測定部20により測定された機器内の潤滑油の温度と、記憶部30に格納されているデータベースと、に基づいて補正する。検出部50は、補正部40により補正された誘電率に基づいて、潤滑油の状態を検出する。
【0012】
図2は、特徴量取得部10の概略構成図である。特徴量取得部10は、円柱状の基部11と、基部11に立設された一対の電極12、13と、電源部14と、取得部15と、を備える。
【0013】
電極12、13は、平板状の極板であり、互いに並行して配置されている。電源部14は、潤滑油の中に設置された電極12、13の間に交流電圧を印加する。取得部15は、電源部14により交流電圧が電極12、13の間に印加されている状態において、電極12、13の間の潤滑油の誘電率を求める。
【0014】
記憶部30に格納されているデータベースについて、図3を用いて以下に説明する。図3において、縦軸は誘電率を示し、横軸は温度を示す。
図3では、機器内の潤滑油の誘電率と温度とを関連づけた情報が測定データPとして複数プロットされているとともに、これら複数の測定データPの近似曲線C0が示されている。
【0015】
データベースに登録される上述の、予め求められた機器内の潤滑油の誘電率と、機器内の潤滑油の誘電率が予め求められた際に測定された機器内の潤滑油の温度と、を関連づけた情報(測定データP)には、以下の2種類の情報が含まれる。
1つは、センサ1が製造された時点で既にデータベースに登録されている、機器内の潤滑油の誘電率と温度とを関連づけた情報のことである。
もう1つは、潤滑油が機器に投入されてから予め定められた時間が経過するまでの期間(以降では、単に「初期期間」と呼ぶ)において特徴量取得部10により求められた機器内の潤滑油の誘電率と、特徴量取得部10により誘電率が求められた際に温度測定部20により測定された機器内の潤滑油の温度と、を関連づけた情報のことである。
すなわち、上述のデータベースには、センサ1が製造された時点で既に機器内の潤滑油の誘電率と温度とを関連づけた情報が登録されており、初期期間において得られた機器内の潤滑油の誘電率と温度とを関連づけた情報が新たに登録される。
【0016】
また、上述のデータベースには、データベースに登録されている機器内の潤滑油の誘電率と温度とを関連づけた情報(測定データP)を用いて補正部40により求められた、機器内の誘電率と温度との関係を表す近似曲線の情報も、登録される。
なお、上述の近似曲線は、1次関数であってもよいし、n次関数(nは、n≧2を満たす任意の整数)であってもよいし、指数関数や累乗関数などであってもよい。
【0017】
データベースに測定データおよび近似曲線の情報を登録する例を、図4を用いて以下に説明する。図4において、縦軸は誘電率を示し、横軸は温度を示す。
なお、図4では、機器内の潤滑油について、誘電率と温度とを関連づけた情報は、センサ1が製造された時点ではデータベースに登録されていなかったものとする。
【0018】
図4には、初期期間において得られた3種類の測定データが示されている。黒丸は、初期期間であって潤滑油が機器に投入されてから初めてその機器を駆動させた際に得られた測定データ、言い換えると初期期間であって潤滑油が機器に投入されてから1回目の駆動時に得られた測定データを示す。菱形は、初期期間であって潤滑油が機器に投入されてから2回目の駆動時に得られた測定データを示す。三角は、初期期間であって潤滑油が機器に投入されてから3回目の駆動時に得られた測定データを示す。
【0019】
1回目の駆動時には、潤滑油の温度は温度T6までしか上昇しなかったため、温度T7、T8のそれぞれにおける潤滑油の誘電率は求められていない。また、温度T4から温度T6までの間で急激に潤滑油の温度が上昇したため、温度T5における潤滑油の誘電率が求められていない。
このため、1回目の駆動が終了した段階では、データベースに、温度T1からT4、T6のそれぞれにおける潤滑油の誘電率が測定データとして登録されていることになる。また、1回目の駆動時において得られた測定データを用いて、温度T0からT6までにおける近似曲線が求められ、この近似曲線の情報もデータベースに登録されていることになる。
【0020】
なお、温度T0からT6までにおける近似曲線を求める際に、補正部40は、後述の内挿により温度T5における潤滑油の誘電率を求めてもよい。この場合、1回目の駆動時において得られた温度T1からT4、T6のそれぞれにおける潤滑油の誘電率と、内挿により求めた温度T5における潤滑油の誘電率と、を用いて近似曲線を求めることができる。
【0021】
一方、2回目の駆動時には、温度T1からT5、T7、T8のそれぞれにおける潤滑油の誘電率が求められている。
このため、2回目の駆動が終了した段階では、データベースに、2回目の駆動時に得られた温度T1からT5、T7、T8のそれぞれにおける潤滑油の誘電率が、測定データとして新たに登録されていることになる。また、1回目の駆動時および2回目の駆動時においてそれぞれ得られた測定データを用いて、温度T0からT8までにおける近似曲線が求められ、データベースに登録される近似曲線の情報が、2回目の駆動が終了した段階で求められた近似曲線の情報に更新されていることになる。
【0022】
また、3回目の駆動時には、温度T1からT3、T5、T7、T8のそれぞれにおける潤滑油の誘電率が求められている。
このため、3回目の駆動が終了した段階では、データベースに、3回目の駆動時に得られた温度T1からT3、T5、T7、T8のそれぞれにおける潤滑油の誘電率が、測定データとして新たに登録されていることになる。また、1回目の駆動時、2回目の駆動時、および3回目の駆動時においてそれぞれ得られた測定データを用いて、温度T0からT8までにおける近似曲線が求められ、データベースに登録される近似曲線の情報が、3回目の駆動が終了した段階で求められた近似曲線の情報に更新されていることになる。
【0023】
補正部40は、上述のように近似曲線を求めることによって、初期期間における潤滑油の誘電率と温度との関係、言い換えると異物混入や劣化などによる状態の変化が生じていない段階における潤滑油の誘電率と温度との関係を、求めることができる。また、補正部40は、この近似曲線を用いて、特徴量取得部10により求められた潤滑油の誘電率を、予め定められた基準温度における潤滑油の誘電率に補正する。
【0024】
補正部40による潤滑油の誘電率の補正について、図5、6を用いて以下に説明する。図5、6において、縦軸は誘電率を示し、横軸は温度を示す。また、点P(y)は、補正部40による補正対象となる測定データ、すなわち特徴量取得部10により求められた機器内の潤滑油の誘電率εyと、特徴量取得部10により誘電率εyが求められた際に温度測定部20により測定された機器内の潤滑油の温度Tyと、を関連づけた情報がプロットされた点を示す。また、温度Txは、上述の基準温度を示す。
【0025】
点P(y)は、近似曲線C0上にない。これは、異物混入や劣化などにより潤滑油の状態が変化すると、潤滑油の誘電率も変化するからであり、誘電率εyおよび温度Tyが求められた時点の潤滑油の状態が、機器に投入された時点の潤滑油の状態から変化していることを表している。
【0026】
しかし、単位温度当たりの潤滑油の誘電率の変化量、すなわち潤滑油の誘電率と温度との関係を表す近似曲線の傾きは、同一の潤滑油であれば、潤滑油の状態が変化したとしても変わらない。
【0027】
そこで、温度Tyにおける誘電率εyを基準温度Txにおける誘電率に補正する場合、補正部40は、まず、図5に示すように、温度Tyにおいて近似曲線C0が取る誘電率の値ε1と、基準温度Txにおいて近似曲線C0が取る誘電率の値ε2と、を求める。次に、求めた2つの誘電率ε1、ε2を用いて、異物混入や劣化などによる状態の変化が生じていない段階における潤滑油の温度Tyから基準温度Txまでの誘電率の変化量、言い換えると温度Tyから基準温度Txまでにおける潤滑油の誘電率の変化量の理論値V0を求める。
次に、図6に示すように、理論値V0を、点P(y)における誘電率εy、すなわち特徴量取得部10により求められた機器内の潤滑油の誘電率εyに加算して、誘電率εxを求める。この誘電率εxが、温度Tyにおける潤滑油の誘電率εyを基準温度Txにおける潤滑油の誘電率に補正した結果となる。
【0028】
なお、補正部40は、データベースに登録されている測定データPを用いて内挿または外挿により、温度測定部20により測定された温度から基準温度Txまでの機器内の潤滑油の誘電率を求める。
内挿とは、ある既知の数値データ列を基にして、そのデータ列の各区間の範囲内を埋める数値を求めること、またはそのような関数を与えることであり、その手法のことを内挿法(補間法)という。また、外挿とは、ある既知の数値データを基にして、そのデータの範囲の外側で予想される数値を求めることであり、その手法を外挿法(補外法)という。
例えば補正部40による外挿について、図7を用いて以下に説明する。
【0029】
図7において、縦軸は誘電率を示し、横軸は温度を示す。図7では、温度T0から温度Taまでは、誘電率がデータベースに登録されるとともに、潤滑油の誘電率と温度との関係を表す近似曲線C0の情報が登録されているが、温度Taから温度Tbまでは、誘電率も近似曲線もデータベースに登録されていない。
【0030】
温度Tbにおける潤滑油の誘電率が特徴量取得部10により求められており、この誘電率を基準温度Txにおける潤滑油の誘電率に補正する場合、補正部40は、まず、データベースから、データベースに登録されている潤滑油の誘電率と温度とを関連づけた測定データPを読み出す。次に、読み出した測定データPを用いて外挿により、温度Tbから温度Taまでの間における潤滑油の誘電率を1つ以上求める。次に、データベースから読み出した測定データPと、外挿により求めた誘電率と温度との関係と、を用いて、温度Tbから温度T0までの近似曲線を算出する。次に、算出した近似曲線で、データベースに登録されている近似曲線C0の情報を更新する。次に、算出した近似曲線C0を用いて、特徴量取得部10により求められた潤滑油の誘電率を、予め定められた基準温度における潤滑油の誘電率に補正する。
【0031】
以上で説明した温度測定部20は、サーミスタといった温度を測定するための素子や機器を用いて実現される。一方、特徴量取得部10、記憶部30、補正部40、および検出部50は、CPU、メモリ(RAM)、ハードディスクなどを用いて実現される。
【0032】
ハードディスクは、オペレーティングシステムや、潤滑油の誘電率を求めて補正するための一連の処理を実行するためのプログラムなどを格納する。なお、ハードディスクは、非一時的な記録媒体であればよく、例えば、EPROMやフラッシュメモリといった不揮発性のメモリ、CD−ROMなどであってもよい。
【0033】
CPUは、メモリを適宜利用して、ハードディスクに格納されているデータやプログラムを適宜読み出して、演算や実行を適宜行う。
【0034】
図8、9は、センサ1のフローチャートである。センサ1は、予め定められたサンプリング時間が経過するたびに、図8、9に示すフローチャートの処理をステップS1から実行する。
【0035】
ステップS1において、センサ1は、特徴量取得部10により、機器内の潤滑油の誘電率を求め、ステップS2に処理を移す。
【0036】
ステップS2において、センサ1は、温度測定部20により、機器内の潤滑油の温度を測定し、ステップS3に処理を移す。
【0037】
ステップS3において、センサ1は、補正部40により、前回測定時と比べて潤滑油の温度に変動があったか否かを判別する。具体的には、ステップS2において前回測定した潤滑油の温度と、ステップS2において今回測定した潤滑油の温度と、の差分が、閾値以上であれば変動があったと判別し、閾値未満であれば変動がないと判別する。センサ1は、補正部40により、変動があると判別した場合にはステップS4に処理を移し、変動がないと判別した場合にはステップS8に処理を移す。
【0038】
ステップS4において、センサ1は、補正部40により、潤滑油が機器に投入されてから予め定められた時間が経過したか否か、すなわち初期期間が終了したか否かを判別する。センサ1は、補正部40により、初期期間が終了したと判別した場合には図9のステップS10に処理を移し、初期期間中であると判別した場合にはステップS5に処理を移す。
なお、センサ1は、補正部40により、潤滑油が機器に投入されてから予め定められた時間が経過したか否かを判別するために、潤滑油が機器に投入されてからの経過時間を計時している。例えば機器内の潤滑油が交換された際には、センサ1は、補正部40により、ユーザの操作に応じて、上述の計時していた経過時間をリセットし、ステップS1に処理を移す。
【0039】
ステップS5において、センサ1は、補正部40により、ステップS1において求めた潤滑油の誘電率と、ステップS2において測定した潤滑油の温度と、を関連づけて記憶部30に格納されているデータベースに登録し、ステップS6に処理を移す。
【0040】
ステップS6において、センサ1は、補正部40により、記憶部30に格納されているデータベースから、機器内の潤滑油の誘電率と温度とを関連づけた測定データPを読み出して近似曲線を算出し、ステップS7に処理を移す。
【0041】
ステップS7において、センサ1は、補正部40により、ステップS6において算出した近似曲線で、データベースに登録されている近似曲線の情報を更新し、ステップS8に処理を移す。
【0042】
ステップS8において、センサ1は、補正部40により、ステップS1において求めた潤滑油の誘電率を、ステップS6において算出した近似曲線を用いて基準温度Txにおける潤滑油の誘電率に補正し、ステップS9に処理を移す。
なお、ステップS3において変動がないと判別した場合には、ステップS6の処理を行うことなく、ステップS8に処理が移っていることになる。この場合、ステップS8では、センサ1は、補正部40により、ステップS1において求めた潤滑油の誘電率を、ステップS6の処理を前回行った際に算出した近似曲線を用いて基準温度Txにおける潤滑油の誘電率に補正し、ステップS9に処理を移す。
【0043】
ステップS9において、センサ1は、検出部50により、ステップS8において補正した誘電率に基づいて、潤滑油の状態を検出し、図8、9に示す処理を終了する。
【0044】
図9のステップS10において、センサ1は、補正部40により、記憶部30に格納されているデータベースに、ステップS2において測定した温度から基準温度Txまでにおける潤滑油の誘電率を表す近似曲線の情報が登録されているか否かを判別する。センサ1は、補正部40により、登録されていると判別した場合にはステップS11に処理を移し、登録されていないと判別した場合にはステップS14に処理を移す。
【0045】
ステップS11において、センサ1は、補正部40により、記憶部30に格納されているデータベースから近似曲線を読み出し、ステップS12に処理を移す。
【0046】
ステップS12において、センサ1は、補正部40により、ステップS1において求めた潤滑油の誘電率を、ステップS11において読み出した近似曲線を用いて基準温度Txにおける潤滑油の誘電率に補正し、ステップS13に処理を移す。
【0047】
ステップS13において、センサ1は、検出部50により、ステップS12において補正した誘電率に基づいて、潤滑油の状態を検出し、図8、9に示す処理を終了する。
【0048】
ステップS14において、センサ1は、補正部40により、記憶部30に格納されているデータベースから、機器内の潤滑油の誘電率と温度とを関連づけた測定データPを読み出し、ステップS15に処理を移す。
【0049】
ステップS15において、センサ1は、補正部40により、ステップS14において読み出した測定データPを用いて内挿または外挿により、ステップS2において測定した温度から基準温度Txまでにおける潤滑油の誘電率を求め、ステップS16に処理を移す。
【0050】
ステップS16において、センサ1は、補正部40により、ステップS15において求めた潤滑油の誘電率と温度との関係を用いて、ステップS2において測定した温度から基準温度Txまでにおける潤滑油の誘電率を表す近似曲線を算出し、ステップS17に処理を移す。
【0051】
ステップS17において、センサ1は、補正部40により、ステップS16において算出した近似曲線で、データベースに登録されている近似曲線の情報を更新し、ステップS18に処理を移す。
【0052】
ステップS18において、センサ1は、補正部40により、ステップS1において求めた潤滑油の誘電率を、ステップS16において算出した近似曲線を用いて基準温度Txにおける潤滑油の誘電率に補正し、ステップS19に処理を移す。
【0053】
ステップS19において、センサ1は、検出部50により、ステップS18において補正した誘電率に基づいて、潤滑油の状態を検出し、図8、9に示す処理を終了する。
【0054】
以上のように、センサ1は、特徴量取得部10により、機器内の潤滑油の誘電率を求め、温度測定部20により、特徴量取得部10により誘電率が求められた際における機器内の潤滑油の温度を測定する。また、記憶部30に、予め求められた機器内の潤滑油の誘電率と、機器内の潤滑油の誘電率が予め求められた際に測定された機器内の潤滑油の温度と、が関連づけて登録されたデータベースを格納する。また、補正部40により、特徴量取得部10により求められた潤滑油の誘電率を、温度測定部20により測定された潤滑油の温度と、記憶部30に格納されているデータベースと、に基づいて補正する。このため、潤滑油の温度を考慮した上で、潤滑油の誘電率を取得することができる。したがって、特徴量取得部10により求められた潤滑油の誘電率に対する潤滑油の温度の影響を低減させて、潤滑油の状態を適正に検出することができる。
【0055】
また、センサ1は、補正部40により、特徴量取得部10により求められた潤滑油の誘電率を、特徴量取得部10により誘電率が求められた際に温度測定部20により測定された潤滑油の温度と、記憶部30に格納されているデータベースと、に基づいて、基準温度Txにおける潤滑油の誘電率に補正する。このため、特徴量取得部10により求められた潤滑油の誘電率について、潤滑油の温度が基準温度Txであればいくつになるのかを、求めることができる。
【0056】
また、センサ1は、補正部40により、記憶部30に格納されているデータベースを用いて、温度測定部20により測定された温度から基準温度Txまでにおける潤滑油の誘電率の変化量の理論値を求め、この理論値を用いて、特徴量取得部10により求められた潤滑油の誘電率を、基準温度Txにおける潤滑油の誘電率に補正する。このため、状態の変化が生じていない段階における潤滑油の誘電率について、温度測定部20により測定された温度から基準温度Txまでにおける変化量を求め、求めた変化量を用いて、特徴量取得部10により求められた潤滑油の誘電率を補正することができる。したがって、温度測定部20により測定された温度と、基準温度Txと、の差分により潤滑油の誘電率に生じる影響を適切に求めて、特徴量取得部10により求められた潤滑油の誘電率を適切に補正することができる。
【0057】
また、センサ1は、補正部40により、データベースに登録されている測定データPを用いて内挿または外挿により、温度測定部20により測定された温度から基準温度Txまでの機器内の潤滑油の誘電率を求める。このため、初期期間の終了後において補正部40による補正に必要な情報がデータベースに登録されていない場合であっても、その情報を補間または補外して、補正部40による補正を行うことができる。
【0058】
また、データベースに情報が登録されている潤滑油の誘電率が、例えば夏場など暑い環境において求められたものである場合には、潤滑油の温度が低い状態での潤滑油の誘電率がデータベースに登録されていない可能性がある。このため、例えば冬場など寒い環境に変化した場合には、補正部40による補正に必要な情報がデータベースに登録されていないおそれがある。
そこで、センサ1は、上述のように、補正部40により、データベースに登録されている測定データPを用いて内挿または外挿により、温度測定部20により測定された温度から基準温度Txまでの機器内の潤滑油の誘電率を求める。このため、環境が変化した場合でも、補正部40による補正に必要な情報を新たに求めてデータベースに登録し、潤滑油の状態を適正に検出することができる。
【0059】
また、センサ1は、補正部40により、特徴量取得部10により求められた潤滑油の誘電率と、特徴量取得部10により誘電率が求められた際に温度測定部20により測定された潤滑油の温度と、を関連づけて、記憶部30に格納されているデータベースに登録する。このため、機器に投入された潤滑油の誘電率と温度との関係がデータベースに予め登録されていない場合であっても、特徴量取得部10および温度測定部20によりそれら関係を求めて、データベースに新たに登録することができる。したがって、誘電率と温度との関係がデータベースに予め登録されていない潤滑油であっても、潤滑油の温度の影響を低減させることができる。
【0060】
また、潤滑油が機器に投入されてから時間が経過するに従って、異物混入や劣化などにより潤滑油の状態が変化し、潤滑油の誘電率も変化する。
そこで、センサ1は、上述の潤滑油の誘電率と温度とを関連づけてデータベースに登録する処理を、初期期間において特徴量取得部10により求められた潤滑油の誘電率に対して行う。このため、異物混入や劣化などによる状態の変化が生じていない段階における潤滑油について、誘電率と温度との関係をデータベースに登録することができる。
【0061】
また、センサ1は、例えば機器内の潤滑油が交換された際に、補正部40により、ユーザの操作に応じて、潤滑油が機器に投入されてから計時していた経過時間をリセットし、ステップS1に処理を戻す。このため、交換の前後で潤滑油の種類が変わった場合でも、交換後の潤滑油について、誘電率と温度との関係を新たに求めてデータベースに登録し、状態を適正に検出することができる。
【0062】
また、機器内の潤滑油の交換の前後で潤滑油の種類が同一である場合でも、交換の際に行われる機器内の洗浄が不十分であれば、潤滑油の誘電率に影響が生じるおそれがある。
そこで、センサ1は、上述のように、補正部40により、例えば機器内の潤滑油が交換された際に、ユーザの操作に応じて経過時間をリセットし、ステップS1に処理を戻す。このため、交換後の潤滑油について、洗浄の影響を踏まえて誘電率と温度との関係を新たに求めてデータベースに登録し、状態を適正に検出することができる。
【0063】
なお、本実施形態では、センサ1は、図8のステップS5において、ステップS1において求めた潤滑油の誘電率と、ステップS2において測定した潤滑油の温度と、を関連づけて記憶部30に格納されているデータベースに登録した。すなわち、本実施形態では、センサ1は、初期期間において得られた潤滑油の誘電率と温度とを関連づけた情報を、データベースに新たに登録した。しかし、これに限らず、初期期間において得られた機器内の潤滑油の誘電率と温度とを関連づけた情報を、データベースに新たに登録しなくてもよい。
【0064】
また、本実施形態では、センサ1は、データベースに、センサ1が製造された時点で既に機器内の潤滑油の誘電率と温度とを関連づけた情報が登録されていた。しかし、これに限らず、データベースに、センサ1が製造された時点では機器内の潤滑油の誘電率と温度とを関連づけた情報が登録されていなくてもよい。この場合、初期期間において得られた機器内の潤滑油の誘電率と温度とを関連づけた情報を、データベースに新たに登録すればよい。
【0065】
また、本実施形態では、潤滑油の特徴量として、潤滑油の誘電率を用いた。しかし、これに限らず、潤滑油の導電率を用いたり、潤滑油の誘電率および導電率を用いたり、誘電率でも導電率でもない潤滑油の特徴量や、粘度などを用いたりしてもよい。
【0066】
また、本実施形態では、センサ1は、潤滑油の状態を検出したが、これに限らず、流体であれば状態を検出することができる。例えば、センサ1により、水の汚染度を検出したり、薬品や飲料の品質を検出したりすることもできる。
【0067】
また、本実施形態では、平板状の極板で電極12、13を形成し、これら電極12、13を互いに並行して配置した。しかし、これに限らず、例えば円柱状や楕円柱状の極板で電極12、13を形成してもよい。また、例えば同軸円筒型コンデンサーのように、内径が異なる2つの円筒状の極板で電極12、13を形成し、それぞれの中心軸が一致した状態で電極12、13のいずれか一方をいずれか他方の内部に配置してもよい。
【0068】
以上、この発明の実施形態につき、図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計なども含まれる。
【0069】
なお、本発明は、例えば水圧機器に適用することもできる。
【符号の説明】
【0070】
1 センサ
10 特徴量取得部
11 基部
12、13 電極
14 電源部
15 取得部
20 温度測定部
30 記憶部
40 補正部
50 検出部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9