(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特に、防火窓シャッターでは、軽量化やコスト削減の目的で、樹脂製部品が用いられることが多い。樹脂製部品は、発火温度に達すると、炎による直接的な着火とは別に樹脂部材自体が発火する。例えばシャッターカーテンを構成するスラットの屋内面に取り付けられた樹脂製部品は、シャッターカーテンが外部からの炎にさらされると、スラットからの熱伝達や輻射により発火温度に達することがある。そのため、隙間からの炎の進入がなくても室内側で火災が発生する場合がある。このような事象は、開閉体装置の防火構造を脆弱化させる要因の一つとなる。
【0005】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、その目的は、樹脂製の部品を具備した窓シャッターなどの開閉体装置において、火災時において樹脂製部品の直接的な着火ではない発火を防ぎ、防火窓シャッターとしての性能を確保できる開閉体装置の防火構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
次に、上記の課題を解決するための手段を、実施の形態に対応する図面を参照して説明する。
本発明の請求項1記載の開閉体装置の防火構造は、建造物の開口部13を開閉する開閉体11と、
前記開閉体11を構成する開閉体構成部材であって、前記開閉体11の操出先端に連結される座板21と、
前記座板21の屋内面側に形成される空間形成部57,59,63と、
前記空間形成部57,59,63を挟んで前記座板21に固定される錠装置29と、
前記空間形成部57,59,63の空間に収容され、所定温度に加熱されることにより膨張して前記座板21と前記錠装置29との間に断熱性を有し挟入状態となる加熱発泡材65と、
を具備するとともに、
前記座板21は、
前記開閉体11の開閉方向に直交する方向に錠バー33がスライド移動する第1空間形成溝57と、
前記第1空間形成溝57に平行に隣接し前記錠装置29を取り付けるための固定部材61が挿着される第2空間形成溝59と、
前記第2空間形成溝59を挟んで前記第1空間形成溝57の反対側に設けられ、前記座板21の上縁に形成され前記開閉体11と接続する連結部75と、前記第2空間形成溝59を画成する溝形成リブ69とで画成され、前記空間形成部である第3空間形成溝63と、
を備え、
前記加熱発泡材65が、前記第3空間形成溝63に収容されており、
前記錠装置29を構成する錠ケース31は、正面壁77の4辺に側壁79が起立した箱状に形成され、該正面壁77と4つの側壁79とにより、前記錠装置29を構成する樹脂部材が収容される収容空間部80を画成するとともに、
前記錠ケース31の上側の側壁79は、通常時において、前記第3空間形成溝63に収容された状態での前記加熱発泡材65の上端よりも上方に位置し、かつ、前記第3空間形成溝63の上端位置まで達しており、前記錠ケース31の下側の側壁79は前記第1空間形成溝57の下端位置まで達しており、前記収容空間部80が前記座板21に対面し、該収容空間部80の開放側が前記座板21にほぼ塞がれることを特徴とする。
【0007】
この開閉体装置の防火構造では、火災等により座板21の屋外面側が炎にさらされると、座板21が高温となる。座板21が高温になると、座板21の空間形成部である第3空間形成溝63に収容された加熱発泡材65が加熱される。加熱発泡材65は、所定温度(例えば300〜400℃)に達すると、体積が5〜40倍に膨張する。加熱発泡材65は、膨張することにより座板21と樹脂製部品である錠装置29との間に断熱層67を形成する。座板21と錠装置29との間には、空間が形成されている。すなわち、錠装置29は、本来、空気層により座板21と断熱されているが、火災等の高温においては、加熱された座板21からの熱伝達及び輻射により空気を介した熱の移動量は増大する。座板21は、この空間に加熱発泡材65による断熱層67が充填されることにより、空気による断熱よりも熱伝達及び輻射による熱の移動を抑制できる。これにより、開閉体装置の防火構造は、空気層のみが介在する場合に比べ、錠装置29が発火点に到達するまでの温度の上昇を遅延させることができる。
また、この開閉体装置の防火構造では、座板21が、開閉体11の操出先端に連結される構成となる。開閉体11は、上下に移動して開口部13を開閉する場合、操出先端である座板21が最下端となる。開閉体11は、この座板21に、戸当たり部材83や錠装置29等が取り付けられる。戸当たり部材83や錠装置29は、重量やコストを低減させるとともに、複雑な形状に形成できる樹脂を素材とする部品が多用される。従って、開閉体装置の防火構造は、座板21に設けられる錠装置29など多くの樹脂製部品83の発火を抑制することに寄与できる。
さらに、この開閉体装置の防火構造では、開閉体11が例えば上下に移動して開口部13を開閉する場合、座板21が最下端となる。開閉体11は、この座板21に錠装置29を設け、座板21をガイドレール19へロックすることが最も効果的な施錠構造となる。従って、開閉体装置の防火構造は、最も効果的な施錠構造に対し断熱を図ることができる。
また、この開閉体装置の防火構造では、座板21は、開閉体11の開閉方向に直交する方向に長い長尺材となる。ここで、座板21は、上記の開閉方向を幅方向とすると、幅方向の中央が第2空間形成溝59となる。錠装置29は、この座板21の幅方向中央にて固定するのが、少ない締結部材81で且つ安定的に固定が可能となる。また、開閉体11は、操出先端がガイドレール19にロックされることが効果的な施錠構造となる。そこで、第2空間形成溝59よりも操出先端側に、錠バー33をスライドする第1空間形成溝57が設けられる。第3空間形成溝63は、座板21の幅方向の寸法で、第1空間形成溝57と第2空間形成溝59を除いた錠装置座面部64となっている。開閉体装置の防火構造は、この錠装置座面部64となる第3空間形成溝63を有効利用して加熱発泡材65を収容することができる。
【0008】
本発明の請求項2記載の開閉体装置の防火構造は、請求項1記載の開閉体装置の防火構造であって、
前記錠ケース31の上側の側壁79と前記連結部75との間には、間隙76が形成されることを特徴とする。
【0009】
この開閉体装置の防火構造では、加熱発泡材65は、膨張することにより錠ケース31の収容空間部80に充満するとともに、膨張した加熱発泡材65は、連結部75と錠ケース31との間隙76や、短辺側の側壁79よりも外側に延在する第1空間形成溝57、第2空間形成溝59、及び第3空間形成溝63からも一部が錠ケース31の外側に膨出する。この膨出した加熱発泡材65による断熱層67は、錠ケース31の少なくとも側壁79の外周面を覆うことができる。すなわち、錠ケース31は、それぞれの側壁79の内外面が、起立先端から正面壁77に向かって断熱層67により覆われることになる。これにより、錠ケース31側は、座板21からの直接的な輻射熱をほぼ確実に遮断することができる。
【0010】
本発明の請求項3記載の開閉体装置の防火構造は、請求項1または2記載の開閉体装置の防火構造であって、
前記錠ケース31の下面は、前記第1空間形成溝57の下端側から屋内側に水平方向に延びる前記座板21の水平板27に当接して固定されることを特徴とする。
【0011】
この開閉体装置の防火構造では、錠ケース31の座板21への取付位置を水平板27に当接させることで、座板21に対する錠装置29の位置を決めることができる。
【0012】
本発明の請求項4記載の開閉体装置の防火構造は、請求項1〜3のいずれか1つに記載の開閉体装置の防火構造であって、
前記錠装置29は、前記錠ケース31と、該錠ケース31にスライド自在に収容されるスライドバー35,37、及び該スライドバー35,37と前記錠バー33とを連結する軸39,41とが樹脂部材であることを特徴とする。
【0013】
この開閉体装置の防火構造では、加熱発泡材65は、膨張することにより錠ケース31の収容空間部80に充満する。錠装置29は、錠ケース31の収容空間部80に収容されている樹脂部材、すなわちスライドバー35,37、軸39,41が、膨張した加熱発泡材65の断熱層67に埋入された状態となる。これにより、錠ケース31側は、座板21からの直接的な輻射熱をほぼ確実に遮断することができる。
【0014】
本発明の請求項5記載の開閉体装置の防火構造は、請求項1〜4のいずれか1つに記載の開閉体装置の防火構造であって、
前記錠バー33を突出させる方向に付勢する付勢手段43が前記収容空間部80に収容されることを特徴とする。
【0015】
この開閉体装置の防火構造では、錠装置29を構成する各部材である錠ケース31やスライドバー35,37、軸39,41が樹脂部材であるが、これら以外の部材である付勢手段43は例えばコイルバネ43など金属製部品とされる。この付勢手段43は、加熱発泡材65の膨張により、錠ケース31内部で埋入状態となり、上記同様、座板21からの直接的な輻射熱をほぼ確実に遮断することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る請求項1記載の開閉体装置の防火構造によれば、樹脂製の部品を具備した窓シャッターなどの開閉体装置において、樹脂製部品である錠装置の直接的な着火ではない発火を防ぐことができ、窓シャッターとしての性能を確保できる。また、比較的多くの樹脂製部品が具備される座板での発火を抑制することが可能となる。さらに、錠装置が樹脂製であることで、金属製の錠装置を用いる場合に比べ、コストの増大を抑制でき、また軽量化や各部品形状の形成性を向上することができる。また、各空間形成溝により新たな専用スペースを確保することなく、錠装置を取り付けるための位置、錠バーの移動する位置をそれぞれに配置構成でき、そして見栄えよく加熱発泡材を取り付けることができる。
【0017】
本発明に係る請求項2記載の開閉体装置の防火構造によれば、膨張した加熱発泡材が、連結部と錠ケースとの隙間から外側に膨出することとなり、この膨出した加熱発泡材による断熱層が錠ケースの側壁の外周面を覆うことができる。これにより錠ケースの側壁の内外面が、起立先端から正面壁に向かって断熱層に覆われ、座板からの直接的な輻射熱を遮断することができる。
【0018】
本発明に係る請求項3記載の開閉体装置の防火構造によれば、錠ケースの座板への取付位置を水平板に当接させることで決めることができる。
【0019】
本発明に係る請求項4記載の開閉体装置の防火構造によれば、加熱発泡材が膨張することにより錠ケースの収容空間部に充満して、錠ケースの収容空間部に収容されている樹脂部材、すなわちスライドバー、軸が、膨張した加熱発泡材の断熱層に埋入された状態となり、これにより、錠ケース側は、座板からの直接的な輻射熱をほぼ確実に遮断することができる。
【0020】
本発明に係る請求項5記載の開閉体装置の防火構造によれば、錠装置を構成する樹脂部材以外の部材である金属製部品などの付勢手段が、加熱発泡材の膨張により、錠ケース内部で埋入状態となり、座板からの直接的な輻射熱を遮断することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係る実施形態を図面を参照して説明する。
なお、以下の実施形態において、発明に係る開閉体装置の防火構造は、窓シャッターの防火構造を例示して説明する。すなわち、開閉体装置は、窓シャッターである。
図1は本発明に係る防火構造を有する開閉体の斜視図である。
本実施形態に係る窓シャッターの防火構造は、窓シャッター100を構成する開閉体として、例えばスラット式のシャッターカーテン11とされる。シャッターカーテン11は、建造物の開口部13を開閉する。
【0023】
窓シャッター100は、住宅用窓サッシ15の設けられた建造物の開口部13の上部に収納ケース17が取り付けられる。窓シャッター100は、開口部13の左右に設けられたガイドレール19,19にて、収納ケース17に対しシャッターカーテン11が繰り出し・収納されるように昇降ガイドされる。ガイドレール19は、外枠20を介して開口部13に支持される。
【0024】
図2は
図1に示した座板を室内側から見た斜視図である。
シャッターカーテン11は、開閉体構成部材により構成される。シャッターカーテン11は、略短冊板状に形成されるスラット73が連結されて構成され、これらスラット73が開閉体構成部材とされる。また、この開閉体構成部材の一つとして、シャッターカーテン11の操出先端に連結される座板21を有する。座板21は、開口部13の間口方向に延在する。座板21は、例えばアルミ製の押出成形材からなり、本体部23の下部に水切り部25が垂設され、本体部23の背面下部には室内側に突出する水平板27が形成される。座板21は、シャッターカーテン11の閉鎖時に、開口部13の下縁に設けられる下枠30に当接する。
【0025】
図3は
図1の開閉体に取り付けられた錠装置を室内側から見た正面図である。
シャッターカーテン11は、座板21の屋内面側に、空間形成部が形成される。この空間形成部は、後述の第3空間形成溝63である。座板21には、この空間形成部を挟んで種々の樹脂製部品が固定される。本実施形態において、この樹脂製部品は、座板錠などの錠装置29である。
【0026】
錠装置29は、座板21の長手方向の略中途部に取り付けられる。錠装置29は、錠ケース31の下面が、座板21の水平板27に当接して固定される。錠装置29は、座板21の両側部から突出する後退可能な一対の錠バー33,33を有する。各錠バー33,33は、ガイドレール19内に設けた突起(図示略)に係止して、シャッターカーテン11の開放方向の上昇を規制する。つまり、シャッターカーテン11を施錠する。
【0027】
図4は錠装置の一部分を切り欠いた正面図である。
錠ケース31には、上下に離間して配設される一対の平行なスライドバー35,37が、座板21の長手方向に沿ってスライド自在に収容される。それぞれのスライドバー35,37は、軸39,41を具備し、これら軸39,41を介して左右の錠バー33,33と連結されている。各スライドバー35,37は、それぞれの軸39,41が接近する方向にスライドされることで、左右の錠バー33,33を後退させてガイドレール19内に設けた突起との係止を解除する。なお、軸39,41は、スライドバー35,37から突出するように設けられ、これら軸39,41が左右の錠バー33,33に穿設された孔(図示略)に係合することで連結する構成としているが、このスライドバー35,37と錠バー33,33との連結構造は、これに限定されない。
【0028】
各スライドバー35,37のそれぞれには、錠バー33,33が突出する方向にスライドバー35,37を付勢する付勢手段としてのコイルバネ43が張架されている。すなわち、通常時、一方のスライドバー35はコイルバネ43の付勢力により軸39が
図4の右方へ付勢され、他方のスライドバー37はコイルバネ43の付勢力により軸41が
図4の左方へ付勢される。
【0029】
錠ケース31の一端側には、操作部材45が回転自在に設けられている。操作部材45は、上下スライドバー35,37の離間方向中央部に回動中心軸47が位置する。操作部材45の板状基部49には、各スライドバー35,37をスライドする係合ピン51,53が回動中心軸47を挟んで設けられている。板状基部49には座板21に沿ってレバー55が延出形成される。操作部材45は、レバー55が
図4の一点鎖線で示すように、上方へ回転されることで、係合ピン51,53を介し、両錠バー33,33を後退させる方向に上下のスライドバー35,37をスライドする。
【0030】
ところで、
図2に示すように、座板21は、シャッターカーテン11の開閉方向に直交する方向に錠バー33がスライド移動する第1空間形成溝57を有する。また、座板21は、第1空間形成溝57に平行に隣接する第2空間形成溝59を有する。この第2空間形成溝59は、錠装置29を取り付けるための固定部材としてのナット61(
図5参照)が挿着される。さらに、座板21は、第2空間形成溝59を挟んで第1空間形成溝57の反対側に第3空間形成溝63を有する。この第3空間形成溝63は、上述した空間形成部である。第1空間形成溝、第2空間形成溝、及び第3空間形成溝は、空間形成部を構成する。
【0031】
この第3空間形成溝63には、加熱発泡材65が収容される。加熱発泡材65は、錠ケース31の背部に位置して設けられる。すなわち、加熱発泡材65は、通常は錠ケース31により見えない位置に隠れる。これにより、シャッターカーテン11を室内面側から見たときに美観を低下させることがない。
【0032】
加熱発泡材65は、座板21の面、すなわち、第3空間形成溝63の溝底面に密着して固定される。
【0033】
加熱発泡材65は、例えばフェルト状に形成される。加熱発泡材65は、第3空間形成溝63の空間に収容される。加熱発泡材65は、所定温度に加熱されることにより膨張し、断熱性を有する。加熱発泡材65は、通常の室温環境下では膨張することはなく、300〜400℃の熱により体積が5〜40倍に膨張し、断熱層67を形成する。加熱発泡材65は、膨張することにより座板21と錠装置29との間に挟入状態となる。加熱発泡材65は、例えばテープ状に形成され、両面粘着テープや接着剤等により第3空間形成溝内に貼り付け固定される。
【0034】
座板21の本体部23は、シャッターカーテン11の開閉方向に直交する方向に長く形成され、且つ表裏面がシャッターカーテン11の開閉方向と平行となる。第1空間形成溝57、第2空間形成溝59、及び第3空間形成溝63は、この本体部23の室内面側に設けられる。座板21は、シャッターカーテン11の開閉方向を幅方向(
図2の上下方向)とすると、幅方向である縦幅方向の中央が第2空間形成溝59となる。第2空間形成溝59は、座板21の長手方向に延在する一対の溝形成リブ69と溝形成リブ71とにより画成される。第1空間形成溝57は、水切り部25と溝形成リブ71とにより画成される。また、座板21の上縁には、シャッターカーテン11のスラット73と接続する連結部75が上縁に沿って形成される。第3空間形成溝63は、溝形成リブ69とこの連結部75とにより画成される。
【0035】
図5は
図3のA−A断面図である。
錠装置29は、付勢手段であるコイルバネ43を除き、錠ケース31、スライドバー35,37、軸39,41、操作部材45が樹脂部材となる。樹脂部材の素材としては、例えばAES樹脂やABS樹脂等が用いられる。錠ケース31は、正面壁77の4辺に側壁79が起立した平らな箱状に形成される。錠ケース31は、正面壁77と4つの側壁79とにより、上記の樹脂部材を収容する収容空間部80を画成する。この収容空間部80は、通常時において、上記樹脂部材が作動するための空間とされる。錠ケース31は、座板21の長手方向に沿って長い長方形で形成される。錠ケース31は、短辺に沿う方向の中央位置を、長辺に沿う方向の二箇所で、固定ビス81により座板21に固定する。第2空間形成溝59には、固定ビス81に螺合するナット61が回転不能、且つ脱落不能に挿入される。錠ケース31は、固定ビス81により締結されると、短辺側の側壁79の起立端面が、溝形成リブ69,71の突出先端面に当接して座板21に固定される。
【0036】
錠装置29は、固定ビス81により座板21に固定されると、収容空間部80が座板21に対面する。つまり、一側面が開放した箱状の収容空間部80は、座板21によって開放側がほぼ塞がれる。その結果、第3空間形成溝63に収容された加熱発泡材65は、錠ケース31の収容空間部80に対面することになる。
【0037】
図5に示すように、錠ケース31の上側の側壁79と連結部75との間には、間隙76が形成される。加熱発泡材65は、膨張することにより錠ケース31の収容空間部80に充満する。錠装置29は、錠ケース31の収容空間部80に収容されている上記の樹脂部材、すなわちスライドバー35,37、軸39,41、操作部材45が、膨張した加熱発泡材65の断熱層67に埋入された状態となる。また、膨張した加熱発泡材65は、連結部75と錠ケース31との間隙76や、短辺側の側壁79よりも外側に延在する第1空間形成溝57、第2空間形成溝59、及び第3空間形成溝63からも一部が錠ケース31の外側に膨出する。この膨出した加熱発泡材65による断熱層67は、錠ケース31の少なくとも側壁79の外周面を覆うことができる。すなわち、錠ケース31は、それぞれの側壁79の内外面が、起立先端から正面壁77に向かって断熱層67により覆われることになる。これにより、錠ケース31側は、座板21からの直接的な輻射熱をほぼ確実に遮断することができる。
【0038】
次に、上記した構成の作用を説明する。
図6は
図5の加熱発泡材の発泡時の断面図である。
本実施形態に係る開閉体装置の防火構造では、火災等により座板21の屋外面側が炎にさらされると、座板21が高温となる。座板21が高温になると、座板21の空間形成部である第3空間形成溝63に収容された加熱発泡材65が加熱される。
【0039】
加熱発泡材65は、所定温度、例えば300〜400℃に達すると、自身の体積が5〜40倍に膨張する。加熱発泡材65は、膨張することにより座板21と樹脂製部品である錠装置29との間に
図6に示す断熱層67を形成する。座板21と錠装置29との間には、空間が形成されている。すなわち、錠装置29は、本来、空気層により座板21と断熱されているが、火災等の高温においては、加熱された座板21からの熱伝達及び輻射により空気(自然対流)を介した熱の移動量は増大する。座板21は、この空間に膨張した加熱発泡材65による断熱層67が充填形成されることにより、空気による断熱よりも熱伝達及び輻射による熱の移動を抑制できる。
【0040】
これにより、錠装置29の各部品が通常時において作動するための空間に空気層のみが介在する場合に比べ、樹脂製部品である錠装置29が発火点に到達するまでの温度の上昇を遅延させることができる。すなわち、窓シャッターを耐火構造とすることができる。
【0041】
また、開閉体構成部材が、シャッターカーテン11の操出先端に連結される座板21となる。シャッターカーテン11は、上下に移動して開口部13を開閉する場合、操出先端である座板21が最下端となる。シャッターカーテン11は、この座板21に、錠装置29等が取り付けられる。錠装置29等の部品は、軽量化やコストを低減させるために樹脂製部品が多用される。従って、開閉体構成部材を座板21とすることにより、多くの樹脂製部品の発火を抑制することができる。
【0042】
また、シャッターカーテン11が例えば上下に移動して開口部13を開閉する場合、座板21が最下端となる。シャッターカーテン11は、この座板21に錠装置29を設け、座板21をガイドレール19へ係止(ロック)することが最も効果的な施錠構造となる。従って、開閉体装置の防火構造は、最も効果的な施錠構造に対し断熱を図ることができる。その結果、樹脂製の錠装置29を用いることができ、金属製の錠装置29を用いる場合に比べ、軽量化が可能となり、且つコストの増大を抑制でき、また形状の形成性の自由度等も向上する。
【0043】
また、座板21は、シャッターカーテン11の開閉方向に直交する方向に長い長尺材となる。ここで、座板21は、上記の開閉方向を幅方向とすると、すなわち開閉方向が上下方向なので縦幅方向である幅方向の中央が第2空間形成溝59となる。錠装置29は、この座板21の縦幅方向中央にて固定ビス81により固定する。これにより、錠装置29は、少ない締結部材となる固定ビス81で且つ安定的に固定が可能となる。また、シャッターカーテン11は、操出先端がガイドレール19にロックされることが効果的な施錠構造となる。そこで、第2空間形成溝59よりも操出先端側に、錠バー33をスライドする第1空間形成溝57が設けられる。第3空間形成溝63は、座板21の幅方向の寸法で、第1空間形成溝57と第2空間形成溝59を除いた錠装置座面部64、すなわち錠装置29の錠ケース31の一部を構成するように、この錠装置29の取付位置を構成するようになっている。開閉体装置の防火構造は、この錠装置座面部64となる第3空間形成溝63を有効利用して加熱発泡材65を収容することができる。その結果、新たな専用スペースを確保することなく、錠装置座面部64を有効利用し、見栄えよく加熱発泡材65を取り付けることができる。
【0044】
さらに、開閉体装置の防火構造では、加熱発泡材65が、座板21の屋内面側の面に密着して設けられる。従って、座板21の屋外面側から伝わる熱は、即座に加熱発泡材65に伝わることとなる。これにより、加熱発泡材65へ熱が伝わらずに、加熱発泡材65が膨張せず、錠装置29等の樹脂製部品が高温となることを回避できる。その結果、シャッターカーテン11の外部(屋外側)の炎により熱が座板21に伝わった際、その熱をほぼ同時に加熱発泡材65に伝えることができ、所定温度で加熱発泡材65を発泡、そして膨張させて、錠装置29等の樹脂製部品を的確に断熱できる。
【0045】
次に、上記した防火構造の変形例を説明する。
図7は
図2の座板に戸当たり部材を取り付けた側面図である。
樹脂製部品としては、上記した錠装置29の他に、窓シャッター100を構成する部材として種々の部材があるが、戸当たり部材83とすることができる。戸当たり部材83は、例えば座板21の長手方向の両端に設けられる。戸当たり部材83は、樹脂を素材とした樹脂部材からなり、固定ビス81を、第2空間形成溝59に挿入したナット61に螺合して座板21に固定される。戸当たり部材83は、板片85をくの字状に屈曲形成したストッパ部87を上部に有する。戸当たり部材83は、ストッパ部87を収納ケース17のカーテン挿入口(図示略)等に当てることで、シャッターカーテン11のそれ以上の巻き取りを規制する。
【0046】
ストッパ部87は、くの字状の凹部側が第3空間形成溝63に対面する。このストッパ部87の凹部89が対面する第3空間形成溝63には加熱発泡材65が収容されている。従って、この変形例に係る開閉体装置の防火構造によれば、火災等により座板21の屋外面側が炎にさらされると、加熱発泡材65が加熱され、加熱発泡材65が所定温度に達すると膨張する。加熱発泡材65は、膨張することにより座板21と戸当たり部材83との間に断熱層を形成する。これにより、開閉体装置の防火構造は、戸当たり部材83が発火点に到達するまでの温度の上昇を遅延させることができる。
【0047】
図8は形状が異なる変形例に係る座板の断面図である。
また、開閉体装置の防火構造は、第1空間形成溝57、第2空間形成溝59、及び第3空間形成溝63を有しないものであってもよい。この場合、例えば座板91は、水平板27に起立片93が形成される。また、座板91は、本体部23の上部に、水平板27と平行なリブ95が突設される。座板91は、水平板27とリブ95との間が幅広の溝部97となる。座板91は、起立片93と、リブ95の突出先端とで錠装置等の樹脂製部品90を支持固定することができる。座板91は、樹脂製部品90が取り付けられることにより溝部97が塞がれる。上記の加熱発泡材65は、この溝部97に、樹脂製部品90と対面するように設けることができる。なお、
図8に示すように、加熱発泡材65は、溝部97内において、溝部97の空間内全体に配置される大きさではなく、一部に配設されるような大きさで良く、また溝部97における位置はいずれの個所でも良いが、好ましくは本体部23の屋内面に取り付けられる。
【0048】
図9は
図8の変形例に係る座板の加熱発泡材の発泡時の断面図である。
この変形例に係る開閉体装置の防火構造は、シャッターカーテン11が閉鎖されると、座板91が下枠30に接触して開口部13を閉鎖する。火災等により座板91の屋外面側が炎にさらされると、加熱発泡材65が加熱され、加熱発泡材65が所定温度に達すると膨張する。膨張した加熱発泡材65は、溝部97に充満する。溝部97に充満した加熱発泡材65は、座板91と樹脂製部品90との間に断熱層67を形成する。これにより、開閉体装置の防火構造は、樹脂製部品90が発火点に到達するまでの温度の上昇を遅延させることができる。
【0049】
図10は窓シャッターのガイドレール構造の平断面図である。
窓シャッター100は、ガイドレール19等の枠部材がアルミ製とされる。ガイドレール19は、外枠20を介して建物躯体に固定される。その際、防火仕様とする場合、火災の熱による変形を抑えるために、ガイドレール19には、その内部にスチールの補強部材98が併用される。スチールの補強部材98は、平断面形状が、L字型またはコ字型に形成される。補強部材98は、L字型やコ字型ではガイドレール19の変形や消失を防ぐのみであり、スラット73が反ってガイドレール19から抜けてしまうことについてはほぼ効果がない。
【0050】
そこで、窓シャッターの防火構造では、補強部材98の平断面形状を、スラットフック101の抜け止めツメ103が引っ掛かる形状、すなわち溝幅を狭める形状としている。補強部材98は、奥方に角柱空間105を有する。補強部材98は、シャッターカーテン11の開閉方向に沿うスリット107により角柱空間105が開放される。スラットフック101は、スチール製など耐熱性、耐火性を備える素材とすることが好ましい。スラットフック101は、先端にツメ103を有したT字形状に形成される。ツメ103は、首部109によってスラット73の端部に接続される。スラット73は、スラットフック101のツメ103が角柱空間105に配置されることにより、補強部材98からの抜けが規制される。
【0051】
この窓シャッターの防火構造によれば、火災時の熱変形によるスラット73の抜け出し防止に役立つと同時に、ガイドレール19等枠部材もスラットフック101により変形が抑えられる。これにより、枠部材自体の変形防止効果も上がり、従来よりも補強を簡素化できる。この窓シャッターの防火構造によれば、外観を変えず窓シャッターの総合的な防火性能をさらに向上させることができる。
【0052】
図11は窓シャッターの枠補強構造の斜視図である。
また、窓シャッター100は、アルミ製のガイドレール19の変形を抑えるため、L字型の補強部材99を併用した場合、スチール製の補強部材99とアルミ製のガイドレール19とが複数箇所でビス等の締結部材111により締結される。この場合、それぞれの素材による熱膨張の差から、ガイドレール19と補強部材99に反りが発生して、逆にガイドレール19の変形を助長してしまうことがある。
【0053】
そこで、窓シャッターの防火構造は、ガイドレール19と補強部材99の締結部分について、その締結穴のどちらか一方を長穴113としている。より具体的には、ガイドレール19は、外枠20に固定され、補強部材99はガイドレール19の出隅部分を覆い、外枠20に固定される。この場合、長穴113は、図示のように補強部材99に設けることができ、この長穴113を貫通して締結部材111が外枠20に螺着固定される。長穴113は、素材の熱膨張の差により生じる伸びの差を逃がし、反りによる変形を抑制できる。
【0054】
この窓シャッターの防火構造によれば、火災の熱によるガイドレール19、外枠20、補強部材99の変形を効果的に抑える枠構造を作ることができる。その結果、この窓シャッターの防火構造によれば、窓シャッターの総合的な防火性能をさらに向上させることができる。
【0055】
なお、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、例えば上記の構成例では、錠装置29が座板錠である場合を説明したが、本発明の構成は、錠装置を座板以外のシャッターカーテン11の部位、例えばシャッターカーテン11の操出方向中間位置に設けることもできる。また、加熱発泡材65としてフェルト状のものを説明したが、本発明の構成は、加熱発泡材がコーキング材のようなものであってもよく、開閉体構成部材である座板21等の空間形成部に塗布形成するように構成してもよい。
【0056】
また、上記の開閉体装置の防火構造では、加熱発泡材を座板に用いる場合を説明したが、加熱発泡材は、座板以外の例えばスラットに取り付けられる樹脂製部品に対しても適用することができる。
【0057】
従って、本実施形態に係る開閉体装置の防火構造によれば、比較的コストのかからない樹脂製部品を用いて、窓シャッターとしての性能を確保できる。