特許第6739239号(P6739239)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6739239ドレイン排水溝部材、及びドレイン排水溝部材を施工する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6739239
(24)【登録日】2020年7月27日
(45)【発行日】2020年8月12日
(54)【発明の名称】ドレイン排水溝部材、及びドレイン排水溝部材を施工する方法
(51)【国際特許分類】
   E04D 13/04 20060101AFI20200730BHJP
【FI】
   E04D13/04 Z
   E04D13/04 J
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-109046(P2016-109046)
(22)【出願日】2016年5月31日
(65)【公開番号】特開2017-214767(P2017-214767A)
(43)【公開日】2017年12月7日
【審査請求日】2018年12月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000284
【氏名又は名称】大阪瓦斯株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000145471
【氏名又は名称】株式会社十川ゴム
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】井川 一久
(72)【発明者】
【氏名】齋 智也
(72)【発明者】
【氏名】堂谷 厚子
【審査官】 園田 かれん
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−289459(JP,A)
【文献】 特開2010−107169(JP,A)
【文献】 特開2007−315121(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04D 13/04
F24H 9/16
E03C 1/12−1/33
F23L 17/14
E04D 15/00
E04D 15/18
F24F 1/0007
F24F 13/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドレイン水を排水するための長手方向に延びる排水路を有する通水部材と、該排水路の上方を覆う着脱自在な蓋部材とを備えるドレイン排水溝部材において、
前記通水部材は、前記排水路の外側に、長手方向に延びる縦溝を有し、
前記縦溝の内側に突出し且つ長手方向に延びるリブが、前記縦溝の両側壁に設けられており、2つの前記リブは、上下方向から所定の荷重が与えられることによってその間の距離が離間するように弾性変形可能であり、
前記蓋部材は、下方に突出し且つ長手方向に延びる突条部を裏面に有し、該突条部は基端側及び先端側のそれぞれに小径部及び大径部を有し、前記突条部が前記縦溝の中に収容されているときに、前記小径部と前記大径部とがなす段部に前記2つのリブが当接しており、
前記縦溝の側壁及び底面のうちの少なくともいずれか一方と、前記大径部との間に隙間が設けられていることを特徴とするドレイン排水溝部材。
【請求項2】
ドレイン水を排水するための長手方向に延びる排水路を有する通水部材と、該排水路の上方を覆う着脱自在な蓋部材とを備えるドレイン排水溝部材において、
前記通水部材は、前記排水路の外側に、長手方向に延びる縦溝を有し、
前記縦溝の内側に突出し且つ長手方向に延びるリブが、前記縦溝の両側壁に設けられており、2つの前記リブは、上下方向から所定の荷重が与えられることによってその間の距離が離間するように弾性変形可能であり、
前記蓋部材は、下方に突出し且つ長手方向に延びる突条部を裏面に有し、該突条部は基端側及び先端側のそれぞれに小径部及び大径部を有し、前記突条部が前記縦溝の中に収容されているときに、前記小径部と前記大径部とがなす段部に前記2つのリブが当接しており
前記2つのリブのうち少なくとも一つの上面が、前記縦溝の内側に向けて傾斜していることを特徴とするドレイン排水溝部材。
【請求項3】
ドレインチューブ接続用部材が前記通水部材の一端に設けられて、前記排水路が閉塞されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のドレイン排水溝部材。
【請求項4】
請求項1〜のいずれか1項に記載のドレイン排水溝部材を施工する方法であって、
前記蓋部材の突条部を前記通水部材の2つのリブの間に圧入して、前記突条部の小径部と大径部とがなす段部に前記2つのリブを当接させることにより、前記蓋部材を前記通水部材に取り付ける工程を包含することを特徴とする、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、集合住宅等の給湯設備からのドレイン水を共用廊下の屋外床面に排水する際に使用されるドレイン排水溝部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のドレイン排水溝部材としては、例えば、以下の特許文献1に記載されるような、冷暖房機の外機からのドレイン水を排水する際に使用されるものが挙げられる。当該ドレイン排水溝部材は、ドレイン水を排水するための長手方向に延びる排水路を有する通水部材と、該排水路の上方を覆う蓋部材とを備え、排水路の両側壁に水平に形成された溝部にその両縁部を挿入した蓋部材を、通水部材に対して長手方向にスライドさせることによって蓋部材を脱着することができるように構成されている(例えば、特許文献1の図4及び図5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4818684号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
通常、給湯設備からは冷暖房機の外機よりも多くのドレイン水が排出される。例えば、風呂焚きや食器洗い等を同時に行っている場合、給湯設備からは約30mL/分という比較的多量のドレイン水が排出される。
【0005】
冷暖房機の外機から排出されるドレイン水量は給湯設備と比べて少量であるため、多量のドレイン水に対して基本的には対応し難い設計となっている。例えば、冬季において外気温が夜間に低下すると、給湯設備とドレイン排水溝部材とを連結するドレインチューブの中に残存するドレイン水が凍結する。そして、日中に気温が上昇して、凍結したドレイン水が給湯設備側から徐々に溶けてゆき最後に先端部分が溶けると、ドレイン排水溝部材に流れ込むドレイン水に大きな水圧がかかるようになる。その結果、ドレイン排水溝部材の内側から上下方向及び幅方向に水圧が作用することによって、蓋部材の両縁部と通水部材の溝部との間に隙間が生じ易くなり、その隙間からドレイン水が漏れ出す虞がある。
【0006】
従って本発明の目的は、排水路を有する通水部材と、該排水路の上方を覆う着脱自在な蓋部材とを備えるドレイン排水溝部材において、その水密性を向上させて、多量のドレイン水を排水する場合にも適用できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のドレイン排水溝部材に係る特徴構成は、ドレイン水を排水するための長手方向に延びる排水路を有する通水部材と、該排水路の上方を覆う着脱自在な蓋部材とを備えるドレイン排水溝部材において、前記通水部材は、前記排水路の外側に、長手方向に延びる縦溝を有し、前記縦溝の内側に突出し且つ長手方向に延びるリブが、前記縦溝の両側壁に設けられており、2つの前記リブは、上下方向から所定の荷重が与えられることによってその間の距離が離間するように弾性変形可能であり、前記蓋部材は、下方に突出し且つ長手方向に延びる突条部を裏面に有し、該突条部は基端側及び先端側のそれぞれに小径部及び大径部を有し、前記突条部が前記縦溝の中に収容されているときに、前記小径部と前記大径部とがなす段部に前記2つのリブが当接しており、
前記縦溝の側壁及び底面のうちの少なくともいずれか一方と、前記大径部との間に隙間が設けられている点にある。
【0008】
〔作用及び効果〕
本構成によれば、蓋部材における突条部の段部と、通水部材における2つのリブとの当接によって2重のシールが形成されるため、蓋部材と通水部材との間の水密性が高められる。即ち、ドレイン水が万一、縦溝における排水路に近い方の側壁に設けられているリブを乗り越えて漏れ出してしまった場合でも、もう一方のリブのシールによってドレイン水の漏れを防止することができる。
また仮に、大きな水圧がかかっているような大量のドレイン水が排水路に流れ込み、ドレイン排水溝部材の内側から上下方向及び幅方向のいずれの方向に水圧が作用したとしても、突条部の段部と通水部材の2つのリブとの密着度がますます強められる。即ち、上下方向の圧力に対しては、段部の横面とリブとの密着度が強くなり、幅方向の圧力に対しては、段部の縦面とリブとの密着度が強くなる。そのため、蓋部材と通水部材との間の水密性がさらに高められることとなり、ドレイン水が漏れることを確実に防止することができる。
一方、通水部材から蓋部材を取り外す際には、作業者が所定荷重以上の力で蓋部材を引き抜くようにするとリブが弾性変形して離間し、突条部の大径部が2つのリブの間を通過できるようになるため、蓋部材を取り外すことができる。
また本構成によれば、ドレイン水が万一、縦溝における排水路に近い方の側壁に設けられているリブを乗り越えて漏れ出してしまった場合でも、漏れ出したドレイン水を縦溝の中の隙間を通して排水することができる
【0011】
本発明のドレイン排水溝部材に係る特徴構成は、ドレイン水を排水するための長手方向に延びる排水路を有する通水部材と、該排水路の上方を覆う着脱自在な蓋部材とを備えるドレイン排水溝部材において、前記通水部材は、前記排水路の外側に、長手方向に延びる縦溝を有し、前記縦溝の内側に突出し且つ長手方向に延びるリブが、前記縦溝の両側壁に設けられており、2つの前記リブは、上下方向から所定の荷重が与えられることによってその間の距離が離間するように弾性変形可能であり、前記蓋部材は、下方に突出し且つ長手方向に延びる突条部を裏面に有し、該突条部は基端側及び先端側のそれぞれに小径部及び大径部を有し、前記突条部が前記縦溝の中に収容されているときに、前記小径部と前記大径部とがなす段部に前記2つのリブが当接しており、前記2つのリブのうち少なくとも一つの上面が、前記縦溝の内側に向けて傾斜している点にある。
【0012】
〔作用及び効果〕
本構成によれば、蓋部材における突条部の段部と、通水部材における2つのリブとの当接によって2重のシールが形成されるため、蓋部材と通水部材との間の水密性が高められる。即ち、ドレイン水が万一、縦溝における排水路に近い方の側壁に設けられているリブを乗り越えて漏れ出してしまった場合でも、もう一方のリブのシールによってドレイン水の漏れを防止することができる。
また仮に、大きな水圧がかかっているような大量のドレイン水が排水路に流れ込み、ドレイン排水溝部材の内側から上下方向及び幅方向のいずれの方向に水圧が作用したとしても、突条部の段部と通水部材の2つのリブとの密着度がますます強められる。即ち、上下方向の圧力に対しては、段部の横面とリブとの密着度が強くなり、幅方向の圧力に対しては、段部の縦面とリブとの密着度が強くなる。そのため、蓋部材と通水部材との間の水密性がさらに高められることとなり、ドレイン水が漏れることを確実に防止することができる。
一方、通水部材から蓋部材を取り外す際には、作業者が所定荷重以上の力で蓋部材を引き抜くようにするとリブが弾性変形して離間し、突条部の大径部が2つのリブの間を通過できるようになるため、蓋部材を取り外すことができる。
また本構成によれば、蓋部材を通水部材に取り付けるために蓋部材の突条部を2つのリブの間に圧入する際、2つのリブのうち少なくとも一つがガイドの機能を果たすため圧入し易くなる。
【0013】
特徴構成は、ドレインチューブ接続用部材が前記通水部材の一端に設けられて、前記排水路が閉塞されている点にある。
【0014】
〔作用及び効果〕
本構成によれば、ドレインチューブ接続用部材を取り付けた部分の排水路からドレイン水が漏れ出すことはないため、ドレイン水は常に排水路の他端の方から排水されることになる。
【0015】
本発明のドレイン排水溝部材を施工する方法に係る特徴構成は、上記特徴構成のいずれかに記載のドレイン排水溝部材を施工する方法であって、前記蓋部材の突条部を前記通水部材の2つのリブの間に圧入して、前記突条部の小径部と大径部とがなす段部に前記2つのリブを当接させることにより、前記蓋部材を前記通水部材に取り付ける工程を包含する点にある。
【0016】
〔作用及び効果〕
本構成によれば、例えばローラー等を使用して、蓋部材を上から押圧しながら蓋部材を通水部材に取り付けていくことができるため、施工性が良い。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明のドレイン排水溝部材を適用した屋外床面設備の一例を示す斜視図である。
図2】ドレイン排水溝部材の縦断面図である。
図3】蓋部材を通水部材に取り付ける前の蓋部材及び通水部材のそれぞれの一部分を拡大した図である。
図4】ドレイン排水溝部材におけるドレインチューブ接続用部材部分の縦断面図である。
図5】ドレインチューブ接続用部材の斜視図である。
図6】ドレインチューブ接続用部材の縦断面図である。
図7】蓋部材を通水部材に取り付ける様子を示す図である。
図8】蓋部材を通水部材に取り付ける際の通水部材のリブの動作を説明する図である。
図9】ドレインチューブ接続用部材を通水部材に取り付ける様子を示す図である。
図10】本発明のドレイン排水溝部材の別実施形態を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
(ドレイン排水溝部材)
図1に示されるように、本実施形態に係るドレイン排水溝部材1は、集合住宅等の共通廊下R(屋外床面設備の一例)に設けられている。ドレイン排水溝部材1は、ドレイン水を排水するための長手方向に延びる排水路5を有する通水部材2と、該排水路5の上方を覆う着脱自在な蓋部材11と、ドレインチューブ接続用部材16とを備えて構成されている。
【0019】
ドレイン排水溝部材1は、その長手方向において共通廊下Rの床面を横断し、その下流側端部が排水溝Hに臨むように配置されている。給湯設備Kとドレインチューブ接続用部材16とがドレインチューブ22を介して連結されており、給湯設備Kから排出されたドレイン水が、ドレインチューブ22の中を通ってドレインチューブ接続用部材16に流れ込み、さらにドレイン排水溝部材1の中の排水路5を通って排水溝Hに排水されるように構成されている。
【0020】
(通水部材)
通水部材2は、全体が細長い略板状の部材である。図2に示されるように、本実施形態の通水部材2は、外形をなす本体3と、排水路5を形成する排水路部材4とを備える。排水路部材4は断面が略C字状であり、本体3の幅方向中央部分に嵌め込まれている。
【0021】
図2に示されるように、排水路5は、通水部材2の幅方向中央部分に設けられている。排水路5の底面には、その幅方向の中央部分が最も浅くなるように、幅方向両側に傾斜する傾斜面が形成されている。これにより、給湯設備Kから少量のドレイン水が排出された場合であっても、傾斜面によって幅方向両側にドレイン水が集められるため流れ易くなる。
【0022】
排水路5の両側壁の上端部分には、排水路5の内側に突出し且つ長手方向に延びる排水路リブ6が設けられている。
【0023】
通水部材2の幅方向における排水路5の両外側のそれぞれに、長手方向に延びる縦溝7が設けられている。また、通水部材2の幅方向における縦溝7の外側には、長手方向に延びる丸底の溝8が複数設けられている。また通水部材2の裏面にも、長手方向に延びる丸底の溝8が複数設けられている。
【0024】
縦溝7における排水路5に近い方の側壁の上端部分に第1リブ9が設けられており、縦溝7のもう一方の側壁に第2リブ10が設けられている。第1リブ9及び第2リブ10はいずれも長手方向に延びており、且つ略相対峙するように縦溝7の内側に突出している。
【0025】
第1リブ9及び第2リブ10は、上下方向から所定の荷重が与えられることによってその間の距離L1が離間するように弾性変形可能に構成されている。尚、本明細書でいう所定の荷重とは、排水路5を流れるドレイン水にかかる水圧よりも大きい力を意味する。
【0026】
図3に示されるように、弾性変形する前の第1リブ9と第2リブ10との間の距離L1は、後述する蓋部材11の大径部14の最大外径L2よりも小さく、且つ小径部13の直径よりもわずかに大きい距離となるように設定されている。
【0027】
また、弾性変形する前の第1リブ9と第2リブ10は、縦溝7の内側に向けて傾斜している。これにより、蓋部材11を通水部材2に取り付けるために蓋部材11の突条部12を第1リブ9と第2リブ10との間に圧入する際、第1リブ9及び第2リブ10がガイドの機能を果たすため圧入し易くなる。尚、本実施形態では、第1リブ9及び第2リブ10の両方が、縦溝7の内側に向けて傾斜するように構成されているが、この構成に限定されるものではなく、傾斜は必要に応じて設けるようにしても良いし、あるいは第1リブ9及び第2リブ10のうちの少なくともいずれか一方が縦溝7の内側に向けて傾斜するように構成して良い。
【0028】
図2に示されるように、蓋部材11が通水部材2に取り付けられている状態において、蓋部材11における突条部12の段部15(図3参照)と、通水部材2における第1リブ9及び第2リブ10との当接によって2重のシールが形成される。即ち、ドレイン水が万一、第1リブ9を乗り越えて漏れ出してしまった場合でも、もう一方の第リブ10のシールによってドレイン水の漏れを防止することができるため、蓋部材11と通水部材2との間の水密性が高められている。
【0029】
また、蓋部材11の突条部12が縦溝7の中に収容されて蓋部材11が通水部材2に取り付けられている状態において、縦溝7の側壁及び底面と、蓋部材11の大径部14との間に隙間が生じるように構成されている。これにより、ドレイン水が万一第1リブ9を乗り越えて漏れ出してしまった場合でも、漏れ出したドレイン水を縦溝7の中の隙間を通して排水することができる。尚、本実施形態では、縦溝7の側壁及び底面の両方と、蓋部材11の大径部14との間に隙間を設けるように構成されているが、この構成に限定されるものではなく、隙間は必要に応じて設けるようにしても良いし、あるいは縦溝7の側壁及び底面のうちの少なくともいずれか一方との間に隙間を設けるように構成して良い。
【0030】
(蓋部材)
蓋部材11は、細長い略板状の部材である。図2及び図3に示されるように、蓋部材11の幅方向両端側のそれぞれの裏面には、下方に突出し且つ長手方向に延びる突条部12が設けられている。突条部12は基端側の小径部13と先端側の大径部14とからなり、小径部13は円柱状であって、大径部14はその最大外径L2が小径部13よりも大きく半球面を有する。小径部13の側面と大径部14の上面とによって略直角の段部15が形成されている。
【0031】
図2に示されるように、蓋部材11の突条部12が縦溝7の中に収容されて蓋部材11が通水部材2に取り付けられている状態において、通水部材2における第1リブ9及び第2リブ10が、突条部12の段部15に当接する。
【0032】
(ドレインチューブ接続用部材)
図4図6に示されるように、ドレインチューブ接続用部材16は、ドレインチューブ22を取り付けるための筒部と、板状部18と、通水部材2の排水路5を閉塞するための閉塞部19とを備える。板状部18の幅方向両端側のそれぞれの裏面に、上述の蓋部材11と同様の突条部12が設けられており、板状部18の裏面の幅方向中央部分に閉塞部19が設けられている。
【0033】
図6に示されるように、ドレインチューブ接続用部材16の内部には空洞が形成されており、筒部の上端の上部開口20と、ドレインチューブ接続用部材16の裏面に設けられている下部開口21とが連通している。図示しないが、ドレインチューブ接続用部材16が通水部材2に取り付けられている状態において、下部開口21が通水部材2の排水路5に通じるように構成されている。
【0034】
上述の通水部材2、蓋部材11、及びドレインチューブ接続用部材16の構成素材としては、特に限定されるものではないが、例えば、ポリ塩化ビニルが好適である。また、通水部材2と蓋部材11については、公知の押出成形法などによって製造することができ、ドレインチューブ接続用部材16については、公知の射出成形方法などによって製造することができる。
【0035】
(ドレイン排水溝部材の施工方法)
以下、上述のドレイン排水溝部材1の施工方法の一例について説明する。
先ず、共通廊下Rにおけるドレイン排水溝部材1の施工位置を決める。そして、通水部材2及び蓋部材11を廊下の幅の長さに合わせて切断する。このとき、蓋部材11については、通水部材2にドレインチューブ接続用部材16を取り付けられるようにするために、通水部材2よりも若干短めにする。
【0036】
施工位置となる廊下面に接着剤を塗布し、その上に通水部材2を貼りつけて固定する。
【0037】
次いで、蓋部材11の2つの突条部12が、通水部材2の2つ縦溝7の上にそれぞれ配置されるように位置を合わせる。そして、図7に示されるように、例えばローラーT等を使用して、蓋部材11を上から押圧しながら、蓋部材11を通水部材2に取り付けていく。
【0038】
このとき、図8に示されるように、通水部材2の第1リブ9と第2リブ10との間に所定の荷重で蓋部材11の突条部12を圧入すると、第1リブ9と第2リブ10が弾性変形して下に移動し、第1リブ9と第2リブ10との間の距離L1がさらに離間するため、突条部12の大径部14が入り込める状態となる。
【0039】
突条部12の大径部14が縦溝7の中に入り込み、突条部12の小径部13が、弾性変形する前の第1リブ9及び第2リブ10があった高さ位置まで来ると、第1リブ9及び第2リブ10は弾性復元力によって上に移動して、突条部12の小径部13と大径部14とがなす段部15に当接する。即ち、蓋部材11の突条部12が通水部材2の第1リブ9及び第2リブ10との間に嵌り込み、第1リブ9及び第2リブ10とが突条部12の抜け止めとなることによって、蓋部材11が通水部材2に取り付けられる。
【0040】
図2に示されるように、蓋部材11は、その幅方向両側部分が、通水部材2の第1リブ9、第2リブ10、及び排水路リブ6によって支持されるようにして取り付けられる。このとき、蓋部材11の幅方向両縁部は、通水部材2の縦溝7における第2リブ10側の側壁と隙間なく密着すると共に、蓋部材11の上面と通水部材2の上面とが略面一となる。尚、図2に示されるように、本実施形態のドレイン排水溝部材1全体の断面形状としては、なだらかに盛り上がる山状形状となる。
【0041】
次いで、図9に示されるように、通水部材2におけるドレインチューブ接続用部材16の取付部分(給湯設備K側に配置される通水部材2の端部分)の縦溝7の中に接着剤Sを入れ込む。さらに、図示しないが、ドレインチューブ接続用部材16の裏面全体に接着剤Sを塗布する。そして、ドレインチューブ接続用部材16の2つの突条部12が、接着剤を入れ込まれた通水部材2の2つ縦溝7の上にそれぞれ配置されるように位置を合わせて、蓋部材11の端部がドレインチューブ接続用部材16の板状部18の一部分の上に被さるようにしつつ、ドレインチューブ接続用部材16を上から押圧しながら通水部材2に取り付ける。
【0042】
このとき、図4に示されるように、通水部材2の縦溝7と蓋部材11の大径部14との間の隙間が接着剤Sによって閉塞されると共に、排水路5がドレインチューブ接続用部材16の閉塞部19と塗布された接着剤Sによって閉塞される。従って、ドレイン水は、ドレインチューブ接続用部材16を取り付けた部分の排水路5及び縦溝7から漏れ出すことはなく、常に廊下の排水溝Hの方に流れることになる。
【0043】
最後に、ドレインチューブ22の一端部分をドレインチューブ接続用部材16の筒部17に接続し、他端を給湯設備Kに接続する。
【0044】
一方、ドレイン排水溝部材1の排水路5内の掃除を行うために、蓋部材11を取り外す場合は、作業者が所定荷重以上の力で蓋部材11を引き抜くようにすると第1リブ9と第2リブ10が弾性変形して離間し、突条部12の大径部14が第1リブ9と第2リブ10との間を通過できるようになるため、蓋部材11を取り外すことができる。
【0045】
〔その他の実施形態〕
1.本発明のドレイン排水溝部材1は、給湯設備Kからのドレイン水の排水に限るものではなく、例えば、冷暖房機の外機からのドレイン水を排水する場合にも適用することができる。
2.本発明のドレイン排水溝部材1は、その他の屋外床面設備として、集合住宅等のベランダなどにも適用することができる。
3.上述の実施形態における通水部材2は、外形をなす本体3と、排水路5を形成する排水路部材4とを備えて構成されているが、この構成に限定されるものではなく、図10に示されるように本体3と排水路部材4とが一体であっても良い。
【実施例】
【0046】
上述の実施形態に係るドレイン排水溝部材について、以下の排水試験1、排水試験2、及び凍結性試験を実施した。
【0047】
(排水試験1)
長さ1.8mのドレイン排水溝部材を、廊下の排水溝に向かって1/100の下り勾配となるように設置した。そして、ドレインチューブに常温水を100mL/分で供給し、ドレイン排水溝部材の端部からの排水を確認した後、そのまま常温水を2分間供給した。その結果、ドレイン排水溝部材における水漏れはなく、水がスムーズに排水されたことが確認された。
【0048】
(排水試験2)
ドレインチューブとして高さ1mの硬質塩化ビニル縦管を使用し、長さ1.8mのドレイン排水溝部材を、廊下の排水溝に向かって1/100の下り勾配となるように設置した。そして、縦管の最頂部に常温水を100mL/分で供給し、ドレイン排水溝部材の端部からの排水を確認した後、そのまま常温水を2分間供給した。その結果、ドレイン排水溝部材における水漏れはなく、水がスムーズに排水されたことが確認された。
【0049】
(凍結性試験)
長さ900mmのドレイン排水溝部材を、1/100の下り勾配となるように設置した。そして、ドレインチューブに常温水を100mL/分で2分間供給した後、このドレインチューブ付きドレイン排水溝部材を低温型高温槽(−10℃±1℃)で30分間凍結させた。そして、当該ドレインチューブ付きドレイン排水溝部材を低温型高温槽からとり出して、速やかに常温水を再び100mL/分で2分間供給した。尚、試験室の温度は23±2℃であった。その結果、ドレイン排水溝部材における水漏れはなく、水がスムーズに排水されたことが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は、給湯設備や冷暖房機の外機等から排出されるドレイン水の排水に関わる産業分野において好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0051】
1 ドレイン排水溝部材
2 通水部材
3 本体
4 排水路部材
5 排水路
6 排水路リブ
7 縦溝
8 丸底の溝
9 第1リブ
10 第2リブ
11 蓋部材
12 突条部
13 小径部
14 大径部
15 段部
16 ドレインチューブ接続用部材
17 筒部
18 板状部
19 閉塞部
20 上部開口
21 下部開口
22 ドレインチューブ
L1 第1リブと第2リブとの間の距離
L2 大径部の最大外径
R 共通廊下
H 排水溝
K 給湯設備
T ローラ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10