特許第6739269号(P6739269)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6739269燃料電池システム及び燃料電池の生成水霧化装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6739269
(24)【登録日】2020年7月27日
(45)【発行日】2020年8月12日
(54)【発明の名称】燃料電池システム及び燃料電池の生成水霧化装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/06 20160101AFI20200730BHJP
【FI】
   H01M8/06
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-146157(P2016-146157)
(22)【出願日】2016年7月26日
(65)【公開番号】特開2018-18620(P2018-18620A)
(43)【公開日】2018年2月1日
【審査請求日】2018年12月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000116574
【氏名又は名称】愛三工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】特許業務法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 衛
(72)【発明者】
【氏名】竹田 雅史
(72)【発明者】
【氏名】米重 和裕
【審査官】 橋本 敏行
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−166229(JP,A)
【文献】 特開2001−176529(JP,A)
【文献】 特開平08−315843(JP,A)
【文献】 特開平05−054900(JP,A)
【文献】 特開2002−305013(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M8/00−8/2495
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料と酸化剤の供給を受けて発電を行う燃料電池と、
前記燃料電池に前記燃料を供給するための燃料供給手段と、
前記燃料電池に前記酸化剤を供給するための酸化剤供給手段と、
前記燃料電池にて発電に伴って生成された生成水を霧化して大気へ放出するための霧化手段と
を備えた燃料電池システムにおいて、
前記酸化剤供給手段は、前記酸化剤を前記燃料電池へ圧送するための酸化剤ポンプを含み、
前記霧化手段は、前記酸化剤ポンプから吐出される前記酸化剤を作動流体として利用して前記生成水を霧化するアスピレータを含み、
前記酸化剤供給手段は、前記酸化剤ポンプから吐出される前記酸化剤を冷却するためのインタークーラを含み、
前記アスピレータにて作動流体として利用される前記酸化剤は、前記インタークーラより上流から前記アスピレータに供給されるように構成される
ことを特徴とする燃料電池システム。
【請求項2】
前記燃料電池に前記酸化剤を供給するための酸化剤供給通路を更に備え、
前記酸化剤供給通路に前記酸化剤ポンプが設けられ、
前記酸化剤ポンプより下流の前記酸化剤供給通路には、前記酸化剤ポンプから前記燃料電池へ圧送される前記酸化剤の一部を前記作動流体として前記アスピレータに供給するための作動流体供給通路が接続される
ことを特徴とする請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項3】
燃料と酸化剤の供給を受けて発電を行う燃料電池と、
前記燃料電池に前記燃料を供給するための燃料供給通路と、
前記燃料電池に前記酸化剤を供給するための酸化剤供給通路と、
前記酸化剤供給通路に設けられ、前記酸化剤を前記燃料電池へ圧送するための酸化剤ポンプと、
前記燃料電池にて発電に伴って生成された生成水を霧化するためのアスピレータと、
前記燃料電池から前記アスピレータへ前記生成水を供給するための生成水供給通路と、
前記アスピレータに作動流体を供給するための作動流体供給通路と
を備えた燃料電池の生成水霧化装置において、
前記作動流体は、前記酸化剤供給通路から前記作動流体供給通路へ取り出される圧縮された酸化剤であり、
前記作動流体供給通路は、前記酸化剤ポンプより下流の前記酸化剤供給通路に接続され、
前記アスピレータは前記生成水を放出する出口を含み、前記出口には拡散部材が設けられ、
前記拡散部材は、複数の拡散管を含み、前記複数の拡散管は、その出口の側が末広がりとなるように形成され
前記酸化剤ポンプから吐出される前記酸化剤を冷却するためのインタークーラを含み、
前記アスピレータにて作動流体として利用される前記酸化剤は、前記インタークーラより上流から前記作動流体供給通路により前記アスピレータに供給されるように構成される
ことを特徴とする燃料電池の生成水霧化装置。
【請求項4】
燃料と酸化剤の供給を受けて発電を行う燃料電池と、
前記燃料電池に前記燃料を供給するための燃料供給手段と、
前記燃料電池に前記酸化剤を供給するための酸化剤供給手段と、
前記燃料電池にて発電に伴って生成された生成水を霧化して大気へ放出するための霧化手段と
を備えた燃料電池システムにおいて、
前記酸化剤供給手段は、前記燃料電池に前記酸化剤を供給するための酸化剤供給通路と、前記酸化剤供給通路に設けられ、前記酸化剤を前記燃料電池へ圧送するための酸化剤ポンプとを含み、
前記酸化剤ポンプから前記燃料電池へ圧送される前記酸化剤の一部を前記霧化手段に供給するための通路が前記酸化剤ポンプより下流の前記酸化剤供給通路に接続され
前記酸化剤供給手段は、前記酸化剤ポンプから吐出される前記酸化剤を冷却するためのインタークーラを更に含み、
前記霧化手段に供給される前記酸化剤は、前記インタークーラより上流から前記霧化手段に供給するための前記通路により前記霧化手段に供給されるように構成される
ことを特徴とする燃料電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、燃料電池に係り、その発電に伴って生成される生成水を、霧状に拡散して放出するように構成した燃料電池システム及び燃料電池の生成水霧化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、燃料電池では、その発電に伴って水が生成される。そのため、燃料電池が車両等に搭載された場合は、生成水を適宜処理する必要がある。一般に、生成水は、外部に放出されることで処理されるが、放出した生成水が、周囲の物体にかかることによる不都合を避ける必要がある。例えば、燃料電池が自動車に搭載された場合は、外部へ放出された生成水が後続車などにかかり、後続車の視界を妨げるおそれがある。これについては、既に種々の改善技術が提案されている。例えば、下記の特許文献1には、この種の技術に関する燃料電池システムが記載されている。このシステムは、車両に搭載された燃料電池と、燃料電池の発電に伴って生成された生成水を、霧化して排出できる排水手段と、特定の状態に応じて排水手段を制御する排水制御手段とを備える。ここで、排水手段として、気液分離器で分離された生成水を貯水タンクに貯め、モータを有するポンプでインジェクタへ圧送してインジェクタから路面へ向けて噴霧するように構成される。このシステムでは、生成水を霧化し路面へ向けて噴射することで、後続車への水滴の付着を回避するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−135006号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、特許文献1に記載のシステムでは、ポンプにより圧送された生成水をインジェクタから路面へ向けて噴霧するように構成されるので、生成水を霧化するために専用のポンプやインジェクタが必要になる。このため、生成水を霧化するだけの装置のためにモータ等の駆動源を有する部品が必要となり、装置が複雑化する傾向があった。一般に燃料電池システムでは、基本構成に多数の部品が使用されることから、排水手段等の付属設備のための部品や駆動源を減らし、構成を極力簡略化することが望まれるところである。
【0005】
この発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、比較的簡単な構成で生成水を霧化できるようにした燃料電池システム及び燃料電池の生成水霧化装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、燃料と酸化剤の供給を受けて発電を行う燃料電池と、 燃料電池に燃料を供給するための燃料供給手段と、燃料電池に酸化剤を供給するための酸化剤供給手段と、燃料電池にて発電に伴って生成された生成水を霧化して大気へ放出するための霧化手段とを備えた燃料電池システムにおいて、酸化剤供給手段は、酸化剤を燃料電池へ圧送するための酸化剤ポンプを含み、霧化手段は、酸化剤ポンプから吐出される酸化剤を作動流体として利用して生成水を霧化するアスピレータを含み、酸化剤供給手段は、酸化剤ポンプから吐出される酸化剤を冷却するためのインタークーラを含み、アスピレータにて作動流体として利用される酸化剤は、インタークーラより上流からアスピレータに供給されるように構成されることを趣旨とする。
【0007】
上記発明の構成によれば、燃料電池に酸化剤を供給するための酸化剤ポンプから吐出される酸化剤の一部が、霧化手段であるアスピレータの作動流体として利用され、アスピレータにより生成水が霧化される。また、酸化剤ポンプから吐出される酸化剤は、インタークーラで冷却されてから燃料電池に供給される。ここで、アスピレータにて作動流体として利用される酸化剤の一部は、インタークーラより上流からアスピレータに供給されるので、冷却される前の温度の高い酸化剤が作動流体としてアスピレータに供給される。
【0008】
上記目的を達成するために、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、燃料電池に酸化剤を供給するための酸化剤供給通路を更に備え、酸化剤供給通路に酸化剤ポンプが設けられ、酸化剤ポンプより下流の酸化剤供給通路には、酸化剤ポンプから燃料電池へ圧送される酸化剤の一部を作動流体としてアスピレータに供給するための作動流体供給通路が接続されることを趣旨とする。
【0011】
上記目的を達成するために、請求項に記載の発明は、燃料と酸化剤の供給を受けて発電を行う燃料電池と、燃料電池に燃料を供給するための燃料供給通路と、燃料電池に酸化剤を供給するための酸化剤供給通路と、酸化剤供給通路に設けられ、酸化剤を燃料電池へ圧送するための酸化剤ポンプと、燃料電池にて発電に伴って生成された生成水を霧化するためのアスピレータと、燃料電池からアスピレータへ生成水を供給するための生成水供給通路と、アスピレータに作動流体を供給するための作動流体供給通路とを備えた燃料電池の生成水霧化装置において、作動流体は、酸化剤供給通路から作動流体供給通路へ取り出される圧縮された酸化剤であり、作動流体供給通路は、酸化剤ポンプより下流の酸化剤供給通路に接続され、アスピレータは生成水を放出する出口を含み、出口には拡散部材が設けられ、拡散部材は、複数の拡散管を含み、複数の拡散管は、その出口の側が末広がりとなるように形成され、酸化剤ポンプから吐出される酸化剤を冷却するためのインタークーラを含み、アスピレータにて作動流体として利用される酸化剤は、インタークーラより上流から作動流体供給通路によりアスピレータに供給されるように構成されることを趣旨とする。
【0012】
上記発明の構成によれば、燃料電池にて生成された生成水が生成水供給通路を介してアスピレータに供給される。また、燃料電池に酸化剤を供給するために酸化剤ポンプから吐出される酸化剤の一部が、作動流体供給通路を介し作動流体としてアスピレータに供給され、アスピレータにより生成水が霧化される。
【0013】
上記目的を達成するために、請求項に記載の発明は、燃料と酸化剤の供給を受けて発電を行う燃料電池と、燃料電池に燃料を供給するための燃料供給手段と、燃料電池に酸化剤を供給するための酸化剤供給手段と、燃料電池にて発電に伴って生成された生成水を霧化して大気へ放出するための霧化手段とを備えた燃料電池システムにおいて、酸化剤供給手段は、燃料電池に酸化剤を供給するための酸化剤供給通路と、酸化剤供給通路に設けられ、酸化剤を燃料電池へ圧送するための酸化剤ポンプとを含み、酸化剤ポンプから燃料電池へ圧送される酸化剤の一部を霧化手段に供給するための通路が酸化剤ポンプより下流の酸化剤供給通路に接続され、酸化剤供給手段は、酸化剤ポンプから吐出される酸化剤を冷却するためのインタークーラを更に含み、霧化手段に供給される酸化剤は、インタークーラより上流から霧化手段に供給するための通路により霧化手段に供給されるように構成されることを趣旨とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に記載の発明によれば、アスピレータそのものに駆動源は必要がなく、アスピレータに作動流体を供給するための駆動源を有する専用の供給手段を別途設ける必要がなく、比較的簡単な構成で生成水を霧化することができる。また、作動流体の温度が高い分だけ生成水の霧化を促進することができる。
【0016】
請求項に記載の発明によれば、アスピレータそのものに駆動源は必要がなく、アスピレータに作動流体を供給するための駆動源を有する専用の供給手段を別途設ける必要がなく、比較的簡単な構成で生成水を霧化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】第1実施形態に係り、燃料電池システムを示す概略構成図。
図2】第1実施形態に係り、アスピレータを示す断面図。
図3】第2実施形態に係り、アスピレータを含む霧化装置の概略を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
<第1実施形態>
以下、本発明における燃料電池の生成水霧化装置を具体化した第1実施形態につき図面を参照して詳細に説明する。
【0020】
図1に、この実施形態における燃料電池システムを概略構成図により示す。この燃料電池システムは、電動自動車に搭載され、その駆動用モータ(図示略)に電力を供給するために使用される。燃料電池システムは、燃料としての水素ガスと酸化剤としての空気(エア)の供給を受けて発電を行う燃料電池(FC)1を備える。燃料電池1で発電した電力は、インバータ(図示略)を介して駆動用モータ(図示略)に供給されるようになっている。
【0021】
燃料電池1のアノード側には、燃料電池1に水素ガスを供給するための水素供給システム2が設けられる。水素供給システム2は、本発明の燃料供給手段の一例に相当し、複数の水素ボンベ11を備える。複数の水素ボンベ11には、水素充填口12から分流管13、水素充填通路14及び流路切替器15を介して水素ガスが充填されるようになっている。この水素供給システム2は、複数の水素ボンベ11から燃料電池1へ水素ガスを供給するための水素供給通路16と、燃料電池1から排出される水素オフガスを水素供給通路16へ還流するための水素排出通路17とを備える。上記した流路切替器15は、主止弁18を含む。この主止弁18は、電磁弁より構成され、水素ボンベ11から水素供給通路16への水素ガスの供給と遮断を切り替えるようになっている。水素供給通路16は、本発明の燃料供給通路の一例に相当する。
【0022】
流路切替器15より下流の水素供給通路16には、その上流側から順に、合流管19、1次圧センサ20、高圧レギュレータ21、中圧リリーフ弁22、2次圧センサ23、水素流量調節装置24、低圧リリーフ弁25及び3次圧センサ26が設けられる。燃料電池1には、各水素ボンベ11から、これら機器19〜26を介して水素ガスが供給される。1次圧センサ20は、水素ボンベ11から流出した水素ガスの圧力を1次圧力として検出するようになっている。高圧レギュレータ21は、その水素ガスの圧力を減圧するようになっている。中圧リリーフ弁22は、高圧レギュレータ21により減圧された水素ガスの圧力の過剰分を逃がすようになっている。2次圧センサ23は、中圧リリーフ弁22より下流の水素ガスの圧力を2次圧力として検出するようになっている。水素流量調節装置24は、デリバリパイプ27と複数のインジェクタ28を含み、燃料電池1に供給される水素ガス流量及び圧力を調節するようになっている。低圧リリーフ弁25は、水素流量調節装置24により調節された水素ガスの圧力の過剰分を、後述するエア排出通路42へ逃がすようになっている。3次圧センサ26は、低圧リリーフ弁25より下流の水素ガスの圧力を3次圧力として検出するようになっている。
【0023】
水素排出通路17には、気液分離器29と水素ポンプ30が設けられる。燃料電池1から排出される水素オフガスは、これら機器29,30を介して水素供給通路16へ戻される。気液分離器29は、水素排出通路17を流れる水素オフガスから生成水を分離するようになっている。気液分離器29の排水側には、排気排水弁31が設けられる。この排気排水弁31の出口は、後述する貯水タンク50に接続される。 排気排水弁31は、電動弁より構成され、開弁されることにより気液分離器29で分離された生成水を貯水タンク50へ流すようになっている。この生成水は、燃料電池1にて発電に伴って生成される水である。水素ポンプ30は、駆動源であるモータを有し、水素オフガスを水素供給通路16へ圧送するようになっている。
【0024】
一方、燃料電池1のカソード側には、燃料電池1にエアを供給するためのエア供給システム3が設けられる。エア供給システム3は、本発明の酸化剤供給手段の一例に相当し、燃料電池1にエアを供給するためのエア供給通路41と、燃料電池1から排出されるエアオフガスが流れるエア排出通路42と、エア供給通路41とエア排出通路42との間をバイパスするエアバイパス通路43とを備える。エア供給通路41には、その上流側から順に、エアクリーナ44、エアポンプ45、インタークーラ46、エア圧センサ47及びエア入口弁48が設けられる。外部のエアは、これら機器44〜48を介して燃料電池1に供給される。エアクリーナ44は、エア供給通路41へ吸入されるエアを浄化するようになっている。エアポンプ45は、駆動源であるモータを有し、本発明の酸化剤ポンプの一例に相当し、燃料電池1へ向けてエアを圧送するようになっている。インタークーラ46は、エアポンプ45から吐出されるエアを冷却するようになっている。エア圧センサ47は、エアポンプ45から吐出されるエアの圧力を検出するようになっている。エア入口弁48は、電磁弁より構成され、燃料電池1へ供給されるエアの流量を調節するようになっている。エア供給通路41は、本発明の酸化剤供給通路の一例に相当する。
【0025】
エア排出通路42には、その上流側から順に、エア出口弁49、貯水タンク50及びマフラ51が設けられる。燃料電池1からエア排出通路42へ流れるエアオフガスは、これら機器49〜51を介して外部へ排出されるようになっている。エア出口弁49は、電磁弁より構成され、燃料電池1から排出されるエアオフガスの流量を調節するようになっている。貯水タンク50は、燃料電池1で生成された生成水を貯めると共に、溢流した生成水をエア排出通路42へ流すようになっている。マフラ51は、エアオフガスの排気を減圧するようになっている。エアバイパス通路43には、エアバイパス弁52が設けられる。エアバイパス弁52は電磁弁により構成され、エアバイパス通路43を流れるエアの流量を調節するようになっている。
【0026】
上記構成において、水素ボンベ11から水素供給通路16へ流れ出た水素ガスは、高圧レギュレータ21で減圧され、水素流量調節装置24で流量と圧力が調節されてから燃料電池1に供給される。燃料電池1に供給された水素ガスは、同電池1にて発電に使用された後、同電池1から水素オフガスとして水素排出通路17へ導出され、気液分離器29及び水素ポンプ30を介して水素供給通路16へ戻される。
【0027】
また、上記構成において、エアポンプ45が動作することにより、エアクリーナ44からエア供給通路41へ吸入されたエアは、インタークーラ46で冷やされた後、エア入口弁48を介して燃料電池1に供給される。燃料電池1に供給されたエアは、同電池1にて発電に使用された後、同電池1からエアオフガスとしてエア排出通路42へ流れ、貯水タンク50及びマフラ51を介して外部へ排出される。このとき、貯水タンク50から溢流した生成水は、エアオフガスと共にエア排出通路42へ流れる。
【0028】
この燃料電池システムは、発電に伴って燃料電池1で生成された生成水を霧化して大気へ放出するための生成水霧化装置4を更に備える。生成水霧化装置4は、エア排出通路42に設けられた生成水トラップタンク61と、そのタンク61に貯まった生成水を吸引して霧化するためのアスピレータ62と、アスピレータ62にエアを作動流体(作動エア)として供給するための作動エア供給通路63と、同通路63に設けられた開閉弁64とを備える。この実施形態で、作動エア供給通路63の入口は、エアポンプ45より下流であってインタークーラ46より上流のエア供給通路41に接続される。生成水トラップタンク61は、貯水タンク50から溢流し、エアオフガスと共にエア排出通路42を流れる生成水を捕集して貯めるようになっている。生成水トラップタンク61は、生成水供給通路65を介してアスピレータ62に接続される。この実施形態において、アスピレータ62は、本発明の霧化手段の一例に相当し、エアポンプ45から吐出されるエアを作動エアとして利用して生成水を霧化するようになっている。すなわち、この実施形態では、アスピレータ62に作動エアを供給する専用ポンプは設けられず、エアポンプ45が作動エアを供給するポンプとして利用され、エア供給通路41を流れるエアがアスピレータ62の作動エアとして利用されるように構成される。作動エア供給通路63は、本発明の作動流体供給通路の一例に相当する。
【0029】
図2に、アスピレータ62を断面図により示す。アスピレータ62は、全体がT型管状をし、主管62aと、主管62aの中央に形成された絞り部62bと、絞り部62bにて主管62aと直角に交わる導入管62cとを含む。主管62aの一端の入口62dには、作動エア供給通路63が接続される。導入管62cの入口62eには、生成水供給通路65が接続される。そして、このアスピレータ62では、主管62aの入口62dに供給される作動エアが主管62aを流れることにより、絞り部62bにて作動エアの流速が増し、ベンチュリ効果によって負圧が発生する。そして、この負圧により導入管62cから絞り部62bへ生成水が吸入され、その生成水が作動エアに衝突することにより、生成水が霧化されて主管62aの他端の出口62fから大気へ拡散放出される。
【0030】
以上説明したこの実施形態における燃料電池の生成水霧化装置によれば、燃料電池1で生成されて生成水トラップタンク61に貯められた生成水が生成水供給通路65を介してアスピレータに供給される。また、燃料電池1にエアを供給するためにエアポンプ45から吐出されるエアの一部が、作動エア供給通路63を介してアスピレータ62に供給され、作動エアとして利用され、アスピレータ62により生成水が霧化される。従って、アスピレータ62そのものに駆動源は必要がなく、アスピレータ62にて作動エアを供給するためのモータを有する専用のポンプ等の供給手段を別途設ける必要がない。このため、比較的簡単な構成で生成水を霧化することができる。
【0031】
また、この実施形態の構成によれば、エアポンプ45から吐出されるエアは、インタークーラ46で冷却されてから燃料電池1に供給される。ここで、アスピレータ62にて作動エアとして利用されるエアは、インタークーラ46より上流から作動エア供給通路63を介してアスピレータ62に供給されるので、冷却される前の温度の高いエアが作動エアとしてアスピレータ62に供給される。このため、作動エアの温度が高い分だけ生成水の霧化を促進することができる。
【0032】
<第2実施形態>
次に、本発明における燃料電池の生成水霧化装置を具体化した第2実施形態につき図面を参照して詳細に説明する。
【0033】
この実施形態では、霧化手段の構成の点で第1実施形態と異なる。図3に、アスピレータ62を含む霧化装置66の概略を断面図により示す。この霧化装置66は、アスピレータ62の他に、アスピレータ62から放出される霧を、作動エアにより更に微粒化するための微粒化器67を含む。微粒化器67は、アスピレータ62の出口62fに設けられる拡散部材68と、アスピレータ62の入口62dに導入される作動エアOAの一部を拡散部材68へ案内するためのエア通路69とを含む。拡散部材68は、アスピレータ62の出口62fと対向する拡散板68aと、その拡散板68aの周りに配置された複数の拡散管68bとを含む。複数の拡散管68bは、その出口68cの側が末広がりとなるように形成される。エア通路69は、作動エア供給通路63から二股に分岐し、アスピレータ62を迂回して拡散板68aの近傍にて拡散部材68に導入されるように形成される。
【0034】
従って、作動エア供給通路63からアスピレータ62に導入される作動エアOAは、生成水供給通路65からアスピレータ62に導入される生成水を霧化し、その出口62fから放出する。そして、霧化された生成水は、拡散部材68の拡散板68aに衝突して更に微粒化される。これと同時に、エア通路69を流れる作動エアは、拡散板68aの近傍に導入され、微粒化された生成水(霧)を拡散管68bへ押し流す。これにより、拡散管68bの出口68cからは微粒化された生成水(霧)が放出される。このように、この霧化装置66では、アスピレータ62により霧化された生成水が、微粒化器67により更に細かく微粒化されて外部へ放出される。このため、生成水が霧化状態より更に微粒化されるので、微粒化された生成水(霧)の更なる微粒化によって生成水が拡散されるため、気化を促進することができる。
【0035】
なお、この発明は前記各実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱することのない範囲で構成の一部を適宜変更して実施することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0036】
この発明は、例えば、自動車に搭載される燃料電池システムに適用することができる。
【符号の説明】
【0037】
1 燃料電池
2 水素供給システム(燃料供給手段)
3 エア供給システム(酸化剤供給手段)
4 生成水霧化装置
16 水素供給通路(燃料供給通路)
41 エア供給通路(酸化剤供給通路)
45 エアポンプ(酸化剤ポンプ)
46 インタークーラ
61 生成水トラップタンク
62 アスピレータ(霧化手段)
63 作動エア供給通路(作動流体供給通路)
65 生成水供給通路
図1
図2
図3