(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6739282
(24)【登録日】2020年7月27日
(45)【発行日】2020年8月12日
(54)【発明の名称】二酸化塩素発生組成物
(51)【国際特許分類】
C01B 11/02 20060101AFI20200730BHJP
A61L 9/01 20060101ALI20200730BHJP
A61L 9/015 20060101ALI20200730BHJP
【FI】
C01B11/02 FZAB
A61L9/01 F
A61L9/015
【請求項の数】5
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-157750(P2016-157750)
(22)【出願日】2016年8月10日
(65)【公開番号】特開2018-24556(P2018-24556A)
(43)【公開日】2018年2月15日
【審査請求日】2019年6月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】391021226
【氏名又は名称】株式会社カーメイト
(72)【発明者】
【氏名】真子 義邦
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 信
【審査官】
壷内 信吾
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−256141(JP,A)
【文献】
特開2013−177282(JP,A)
【文献】
国際公開第2014/104119(WO,A1)
【文献】
特開2015−227320(JP,A)
【文献】
特開2011−152234(JP,A)
【文献】
特開2007−217239(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2009/0078911(US,A1)
【文献】
国際公開第2014/157484(WO,A1)
【文献】
特開2005−029430(JP,A)
【文献】
特開2015−174786(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B7/00−11/24
A61L9/00−9/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器に充填された亜塩素酸塩水ゲルと、
前記亜塩素酸塩水ゲルから隔離して保管されるタブレット状に加圧成型した活性化剤と、
よりなり、
使用時には前記亜塩素酸塩水ゲルの上面に、前記活性化剤を乗せて、二酸化塩素を発生させるように構成された二酸化塩素発生組成物において、
前記活性化剤は、
水への溶解度が25℃で0.4g/100ml以上2g/100ml未満の第1の酸性物質を85%〜100%の割合で配合され、
水への溶解度が25℃で2g/100ml以上の第2の酸性物質が15%〜0%の割合で配合されることを特徴とする二酸化塩素発生組成物。
【請求項2】
前記第1の酸性物質がフマル酸からなることを特徴とする請求項1記載の二酸化塩素発生組成物。
【請求項3】
前記第2の酸性物質がクエン酸からなることを特徴とする請求項1記載の二酸化塩素発生組成物。
【請求項4】
前記第1の酸性物質及び/又は前記第2の酸性物質が、複数の酸性物質を混合してなり、前記第1の酸性物質が複数の第1の酸性物質の混合物であり、前記第2の酸性物質が複数の第2の酸性物質の混合物であることを特徴とする請求項1記載の二酸化塩素発生組成物。
【請求項5】
前記亜塩素酸塩水ゲルおよび前記活性化剤から隔離して保管される香料を有し、使用時には前記香料が、前記亜塩素酸塩水ゲルおよび活性化剤と直接接しないように配置されることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項記載の二酸化塩素発生組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は二酸化塩素発生剤および二酸化塩素の発生方法、特に二酸化塩素ガスを長期間継続して発生させ、生活、作業その他の空間、環境の除菌、抗菌、防臭、徐カビ剤に有用な二酸化塩素発生組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の二酸化塩素発生組成物として、特許公開2009-256141号にはゲル状の安定化二酸化塩素の上面に粒状クエン酸を落下させることによって、安定化二酸化塩素と粒状クエン酸を接触させて二酸化塩素ガスを発生させる構成が開示されている。
【0003】
しかしながら、この従来技術では、水溶性および親水性が高いクエン酸を使用しているため、安定化二酸化塩素との反応が強く、安定して二酸化塩素を発生させることができないため、二酸化塩素を発生させたい時に手動操作または自動で適量のクエン酸を二酸化塩素に落下させる必要があった。
【0004】
また、他の、従来の二酸化塩素発生組成物として、特許公開2013-177282号には、亜塩素酸塩水溶液と、使用時に添加する粒状、又は錠剤状である酸性化剤とからなる二酸化塩素発生剤が開示されており、酸性化剤は疎水性ワックスで分散処理された酸性物質の剤形として、細粒状、顆粒状、丸粒状や錠剤状とすることができ、亜塩素酸塩水溶液への酸性物質の溶出を遅くしたければ単位重量あたりの表面積を小さくし、容量の大きい錠剤状の剤形が選択する技術が開示されている。
【0005】
しかしながら、この従来技術においては、酸性化剤を疎水性ワックスで分散処理し、親水性の低い活性化剤に加工しているため、特に疎水性ワックスが利いている初期の水溶液との反応が弱くなりすぎ、十分な二酸化塩素を発生できない為、酸性物質そのものもしくは、細粒状、顆粒状の酸性物質を併用する必要があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許公開2009−256141号公報
【特許文献2】特許公開2013−177282号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、適切な量の二酸化塩素を長期間安定して発生させることができる、二酸化塩素発生組成物を得ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の二酸化塩素発生組成物は、容器に充填された亜塩素酸塩水ゲルと、前記亜塩素酸塩水ゲルから隔離して保管されるタブレット状(立体的な加圧形状であれば良く、その形状は限定されない)に加圧成型した活性化剤と、よりなり、使用時には前記亜塩素酸塩水ゲルの上面に、前記活性化剤を乗せて、二酸化塩素を発生させるように構成された二酸化塩素
組成物において、前記活性化剤は、水への溶解度が25℃で0.4g/100ml以上2g/100ml未満の第1の酸性物質を
85%〜100%の割合で配合され、水への溶解度が25℃で2g/100ml以上の第2の酸性物質が15%〜0%の割合で配合されることを特徴とする。
【0009】
更に、前記第1の酸性物質がフマル酸からなることを特徴とする。
【0010】
更に、前記
第2の酸性物質がクエン酸からなることを特徴とする。
【0011】
更に、前記第1の酸性物質及び/又は前記第2の酸性物質が、複数の酸性物質を混合して
なり、前記第1の酸性物質が複数の第1の酸性物質の混合物であり、前記第2の酸性物質が複数の第2の酸性物質の混合物であることを特徴とする。
【0012】
更に、前記亜塩素酸塩水ゲルおよび前記活性化剤から隔離して保管される香料を有し、使用時には前記香料が、前記亜塩素酸塩水ゲルおよび活性化剤と直接接しないように配置されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の二酸化塩素発生組成物は、活性化剤として、水溶性の低い第1の酸性物質を用いることによって、徐々に水溶性の低い第1の酸性物質が亜塩素酸塩水ゲルと反応して二酸化塩素を発生させることによって、安定的に製品使用想定の実空間にて、約0.01ppmとなる様な水槽内10ppm程度の二酸化塩素を発生させる事が出来、更に、活性化剤をタブレット状に加圧成型することによって、各活性化剤の亜塩素酸塩水ゲルとの反応速度を抑えて、初期二酸化塩素の発生量を抑える、必要量の二酸化塩素を発生可能な期間を長期化させることができる効果を有する。
【0014】
更に、本発明の二酸化塩素発生組成物は、活性化剤として、水溶性の高い第2の酸性物質を適量加えることによって、初期段階では主として水溶性の高い第2の酸性物質が亜塩素酸塩水ゲルから二酸化塩素を発生させ、その後、徐々に水溶性の低い第1の酸性物質が亜塩素酸塩水ゲルと反応して二酸化塩素を発生させることによって、安定的に製品使用想定の実空間にて、約0.01ppmとなる様な水槽内10ppm程度の二酸化塩素を発生させる事が出来、更に、活性化剤をタブレット状に加圧成型することによって、各活性化剤の亜塩素酸塩水ゲルとの反応速度を抑えて、初期二酸化塩素の発生量を抑え、必要量の二酸化塩素を発生可能な期間を長期化させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明の第1実施例を図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0016】
本発明の各実施例においては、本発明の二酸化塩素発生組成物は、容器に充填され、シール材等によって外気と隔離される亜塩素酸塩水ゲルと、前記亜塩素酸塩水ゲルから隔離した防湿袋等に保管される活性化剤と、よりなり、使用時には亜塩素酸塩水ゲルの上面に、タブレット状に加圧成型した活性化剤を乗せて、二酸化塩素を発生させるように構成されている。
【0017】
本発明の前記活性化剤は、水への溶解度が25℃で0.4g/100ml以上2g/100ml未満の第1の酸性物質からなり、実施例における前記亜塩素酸塩水ゲルは亜塩素酸濃度が1.25%であるが、本発明の亜塩素酸塩水ゲルの亜塩素酸濃度は、本実施例の亜塩素酸濃度に限定されず、使用環境や用途に応じて、0.1〜10%の範囲内で配合することができるが、特に 亜塩素酸濃度を0.1%〜3%の範囲で配合すると良好な効果を得ることができる。
【0018】
実施例1において、前記活性化剤は、第1の酸性物質として、水への溶解度が0.63g/100mlの粉末状のフマル酸(扶桑化学製)0.779gを直径17.2mm、厚み2.7mmのタブレット状に加圧成型したものが使用される。
【0019】
表1は、本発明に係る二酸化塩素発生組成物の試験結果を示すものであり 本発明の実施例1と、実施例1の活性化剤を粒状クエン酸のみに変更した比較例1、実施例1の活性化剤を粉末フマル酸のみに変更した比較例2を、夫々容器に充填した亜塩素酸濃度が1.25%の前記亜塩素酸塩水ゲルの上面に乗せて、25℃の室内で揮発させ、18L水槽にて1日保管後に、二酸化塩素の濃度を測定したものである。
【表1】
【0020】
実施例1においては、活性化剤として、水溶性の低い第1の酸性物質であるフマル酸を用いることによって、徐々に水溶性の低い第1の酸性物質が亜塩素酸塩水ゲルと反応して二酸化塩素を発生させることによって、安定的に製品使用想定の実空間にて、約0.01ppmとなる様な水槽内10ppm程度の二酸化塩素を発生させる事が出来、更に、活性化剤をタブレット状に加圧成型することによって、各活性化剤の亜塩素酸塩水ゲルとの反応速度を抑えて、初期二酸化塩素の発生量を抑え、必要量の二酸化塩素を発生可能な期間を長期化させることができる。
【0021】
比較例1においては、活性化剤として、水溶性の高い第2の酸性物質であるクエン酸のみを使用するため、初期段階で急激に亜塩素酸塩水ゲルから二酸化塩素を発生するため、初期においては二酸化塩素の発生が過剰であるため、人体に悪影響を与える恐れがあり、その後の二酸化塩素の発生の減少が続き、試験開始20日後以降は、最も二酸化塩素の発生が少なくなり、必要量の二酸化塩素を発生可能な期間が短くなる。
【0022】
比較例2においては、活性化剤として、水溶性の低い第1の酸性物質であるフマル酸のみを使用するため、水溶性の高い第2の酸性物質であるクエン酸のみを使用した比較例1よりも初期の二酸化塩素の発生は抑えられるが、実施例1と比較すると水ゲルへの接触面積が高い為、初期の二酸化塩素を発生が多くなる。
【実施例2】
【0023】
本発明の実施例2においては、活性化剤として、実施例1のフマル酸の代わりに水への溶解度が0.4g/100ml以上2g/100ml未満の第1の酸性物質として、フタル酸(水への溶解度が26℃で0.72g/100ml)を用いて、直径17.2mm、厚み2.7mmのタブレット状に加圧成型したものが使用される。
【0024】
実施例2においては、活性化剤として、水溶性の低い第1の酸性物質であるフタル酸用いることによって、徐々に水溶性の低い第1の酸性物質が亜塩素酸塩水ゲルと反応して二酸化塩素を発生させることによって、安定的に製品使用想定の実空間にて、約0.01ppmとなる様な水槽内10ppm程度の二酸化塩素を発生させる事が出来、更に、活性化剤をタブレット状に加圧成型することによって、各活性化剤の亜塩素酸塩水ゲルとの反応速度を抑えて、初期二酸化塩素の発生量を抑え、必要量の二酸化塩素を発生可能な期間を長期化させることができる。
【0025】
比較例3においては、活性化剤の成分は実施例2と同一であるが、活性化剤をタブレット状に加圧成型していないため、比較例1および比較例2と同様に、初期の二酸化塩素の発生が多く、その後は、比較例1および比較例2と同様に、二酸化塩素の発生の減少が続き、必要量の二酸化塩素を発生可能な期間が短くなる。
【0026】
尚、本発明の第1の酸性物質として、フタル酸や、フマル酸の代わりに、例えば、シアヌル酸(水への溶解度が25℃で0.27g/100ml)、アジピン酸(水への溶解度が15℃で1.4g/100ml)等を用いることができ、更に複数の前記第1の酸性物質を混合して用いても良い。
【実施例3】
【0027】
本発明は、水への溶解度が25℃で0.4g/100ml以上2g/100ml未満の第1の酸性物質に加え、前記活性化剤に、水への溶解度が25℃で2g/100ml以上の第2の酸性物質が15%以下の割合で配合すると良く、本発明の実施例3においては、活性化剤として実施例1のフマル酸よりなる第1の酸性物質0.76gに、更に、第2の酸性物質として、水への溶解度が73g/100mlの粒状のクエン酸(小松屋製)0.076gが混合された状態で、タブレット状に加圧成型される。
【0028】
実施例3においては、活性化剤として、水溶性の低い第1の酸性物質であるフマル酸を主成分とし、水溶性の高い第2の酸性物質であるクエン酸を適量加えることによって、初期段階では主として水溶性の高い第2の酸性物質が亜塩素酸塩水ゲルから二酸化塩素を発生させ、その後、徐々に水溶性の低い第1の酸性物質が亜塩素酸塩水ゲルと反応して二酸化塩素を発生させることによって、安定的に製品使用想定の実空間にて、約0.01ppmとなる様な水槽内10ppm程度の二酸化塩素を発生させる事が出来、更に、活性化剤をタブレット状に加圧成型することによって、各活性化剤の亜塩素酸塩水ゲルとの反応速度を抑えて、初期二酸化塩素の発生量を抑え、必要量の二酸化塩素を発生可能な期間を長期化させることができる。
【0029】
比較例4においては、活性化剤の成分は実施例3と同一であるが、活性化剤をタブレット状に加圧成型していないため、比較例1〜比較例3と同様に、初期の二酸化塩素を発生が多く、その後は、比較例1〜比較例3と同様に、二酸化塩素の発生の減少が続き、必要量の二酸化塩素を発生可能な期間が短くなる。比較例5においては、実施例3と同様にタブレット状に加圧成型しているが、活性化剤としてフマル酸よりなる第1の酸性物質0.76gに、更に、第2の酸性物質として、20%の粒状のクエン酸(小松屋製)0.152gが混合しているため、比較例1〜比較例4と同様に、初期の二酸化塩素を発生が多く、その後は、比較例1〜比較例4と同様に、二酸化塩素の発生の減少が続き、必要量の二酸化塩素を発生可能な期間が短くなる。
【0030】
尚、本発明においては、第2の酸性物質として、前記クエン酸の代わりに水への溶解度が2g/100ml以上の第2の酸性物質として例えば、シュウ酸(水への溶解度が20℃で10.2g/100ml)、リンゴ酸(水への溶解度が20℃で55.8g/100ml)、マレイン酸(水への溶解度が25℃で79g/100ml)等を活性化剤全体量に対して、15%以下の割合で配合することができ、更に本発明においては複数の前記第2の酸性物質を混合して用いても良い。
【0031】
更に、本発明の二酸化塩素発生組成物は、香料を前記亜塩素酸塩水ゲルから隔離した防湿袋等に保管し、使用時には防湿袋等から取り出した香料を前記亜塩素酸塩水ゲルと直接触れない位置に配置するように構成することによって二酸化塩素発生を阻害せずに香りを発散させることができる。尚、香料は液体状でも良いが、香料を含浸させたケイ酸カルシウム成型体や、香料を吸収させたフェルト状吸収体など、既存の香料吸収技術を用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0032】
以上のように、本発明の二酸化塩素発生組成物は、適切な量の二酸化塩素を長期間安定して発生させることができ、家庭内や、工場、車内その他の空間、環境の除菌、抗菌、防臭、徐カビ剤として有用である。