(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6739284
(24)【登録日】2020年7月27日
(45)【発行日】2020年8月12日
(54)【発明の名称】流量センサ
(51)【国際特許分類】
G01F 1/115 20060101AFI20200730BHJP
【FI】
G01F1/115
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-163005(P2016-163005)
(22)【出願日】2016年8月23日
(65)【公開番号】特開2018-31625(P2018-31625A)
(43)【公開日】2018年3月1日
【審査請求日】2019年6月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000305
【氏名又は名称】特許業務法人青莪
(72)【発明者】
【氏名】古川 真也
【審査官】
森 雅之
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭63−174022(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01F1
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体が流れる筒状のセンサケース内に、流体の流れで回転する羽根車が設けられ、羽根車の羽根を磁化させて、センサケースの外部に設けた磁気検出器により羽根車の回転を検出するようにした流量センサであって、センサケースが配管部材内に装着され、配管部材に磁気検出器が取付けられるものにおいて、
羽根車は、軸方向に所定ストローク移動自在であって、センサケース内に上流側から下流側に向かう順方向に流体が流れる場合は、羽根車が流体の流れに押されて順方向のストローク端位置に移動し、センサケース内に下流側から上流側に向かう逆方向に流体が流れる場合は、羽根車が流体の流れに押されて逆方向のストローク端位置に移動するようにし、磁気検出器は、羽根車が順方向のストローク端位置に存する場合は、羽根の磁気を受けて羽根車の回転を検出するが、羽根車が逆方向のストローク端位置に存する場合は、羽根車の回転を検出できるほどには羽根の磁気を受けない軸方向箇所に配置され、
センサケースの軸方向一端側と他端側に、夫々流体の流れを旋回流とする旋回流発生手段が配置され、更に、羽根車が前記所定ストローク移動したときの羽根の軸方向中央部の移動範囲の中心位置は、センサケースの軸方向中心と同等位置に存することを特徴とする流量センサ。
【請求項2】
流体が流れる筒状のセンサケース内に、流体の流れで回転する羽根車が設けられ、羽根車の羽根を磁化させて、センサケースの外部に設けた磁気検出器により羽根車の回転を検出するようにした流量センサであって、センサケースが配管部材内に装着され、配管部材に磁気検出器が取付けられるものにおいて、
羽根車は、軸方向に所定ストローク移動自在であって、センサケース内に上流側から下流側に向かう順方向に流体が流れる場合は、羽根車が流体の流れに押されて順方向のストローク端位置に移動し、センサケース内に下流側から上流側に向かう逆方向に流体が流れる場合は、羽根車が流体の流れに押されて逆方向のストローク端位置に移動するようにし、磁気検出器は、羽根車が順方向のストローク端位置に存する場合は、羽根の磁気を受けて羽根車の回転を検出するが、羽根車が逆方向のストローク端位置に存する場合は、羽根車の回転を検出できるほどには羽根の磁気を受けない軸方向箇所に配置され、
羽根車の羽根は、軸方向に対し傾斜しており、更に、羽根車が前記所定ストローク移動したときの羽根の軸方向中央部の移動範囲の中心位置は、センサケースの軸方向中心と同等位置に存することを特徴とする流量センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として給湯器に用いられる流量センサ、より詳細には、流体が流れる筒状のセンサケース内に、流体の流れで回転する羽根車が設けられ、羽根車の羽根を磁化させて、センサケースの外部に設けた磁気検出器により羽根車の回転を検出するようにした流量センサに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に給湯器では、熱交換器に連なる給水路に流量センサを介設し、流量センサで検出される通水流量が所定の最小流量以上になったときに、熱交換器を加熱するバーナに着火させるようにしている。
【0003】
従来、このような給湯器に用いられる流量センサとして、上流側から下流側に向かう方向を順方向、下流側から上流側に向かう方向を逆方向として、センサケースの順方向側の端部に、羽根車の羽根に係合して羽根車の回転を抑止する突起を突設して成る回転抑止部材を回り止めした状態で軸方向に移動自在に組付けたものが知られている。このものでは、センサケース内に順方向に水(流体)が流れるときに、回転抑止部材が順方向に押し動かされて、突起による羽根車の回転抑止が解除され、羽根車が回転する。一方、水抜き等でセンサケース内に逆方向に水が流れるとき(水の逆流時)は、回転抑止部材が逆方向、即ち、羽根車に接近する方向に押し動かされて、突起により羽根車の回転が抑止される。これにより、水の逆流時にバーナに着火することを防止できる。
【0004】
ところで、回転抑止部材をセンサケースの逆方向側の端部に組付けたのでは、順方向に水が流れるときに羽根車の回転が抑止されてしまう。そこで、センサケースの順方向側の端部にのみ回転抑止部材を組付け可能として、センサケースの逆方向側の端部に回転抑止部材を組付ける誤組付けを防止できるようにした流量センサも知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
然し、回転抑止部材の誤組付け防止できても、回転抑止部材の組付け忘れを防止することはできない。そして、回転抑止部材を組付けし忘れた場合には、水の逆流時にも羽根車が回転して、バーナに着火することを防止できなくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−283804号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、以上の点に鑑み、回転抑止部材を用いずに、逆流時に流体の流れを検出不能とすることができようにした流量センサを提供することをその課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は、流体が流れる筒状のセンサケース内に、流体の流れで回転する羽根車が設けられ、羽根車の羽根を磁化させて、センサケースの外部に設けた磁気検出器により羽根車の回転を検出するようにした流量センサ
であって、センサケースが配管部材内に装着され、配管部材に磁気検出器が取付けられるものにおいて、羽根車は、軸方向に所定ストローク移動自在であって、センサケース内に上流側から下流側に向かう順方向に流体が流れる場合は、羽根車が流体の流れに押されて順方向のストローク端位置に移動し、センサケース内に下流側から上流側に向かう逆方向に流体が流れる場合は、羽根車が流体の流れに押されて逆方向のストローク端位置に移動するようにし、磁気検出器は、羽根車が順方向のストローク端位置に存する場合は、羽根の磁気を受けて羽根車の回転を検出するが、羽根車が逆方向のストローク端位置に存する場合は、羽根車の回転を検出できるほどには羽根の磁気を受けない軸方向箇所に配置され
、センサケースの軸方向一端側と他端側に、夫々流体の流れを旋回流とする旋回流発生手段を配置するか、又は、羽根車の羽根を軸方向に対し傾斜させ、更に、羽根車が前記所定ストローク移動したときの羽根の軸方向中央部の移動範囲の中心位置が、センサケースの軸方向中心と同等位置に存することを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、流体が逆方向に流れるときは、羽根車が逆方向のストローク端位置に移動し、この状態では磁気検出器が羽根車の回転を検出しなくなる。従って、回転抑止部材を用いずに、逆流時の流体の流れを検出不能とすることができる。そのため、回転抑止部材の組付け忘れで逆流時に流体の流れを検出してしまうようなことはない。
【0010】
また、本発明に
よれば、配管部材にセンサケースをその軸方向一端が下流側になる向きと上流側になる向きとの何れの向きで装着しても、流体の流れで羽根車が同様に回転し、更に、羽根車が順方向のストローク端位置に移動したときの羽根と磁気検出器との位置関係及び羽根車が逆方向のストローク端位置に移動したときの羽根と磁気検出器との位置関係は変化しない。従って、配管部材にセンサケースを方向性を気にせずに装着でき、組立作業性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態の流量センサの切断側面図。
【
図2】実施形態の流量センサの要部の分解状態の斜視図。
【
図3】配管部材に対するセンサケースの装着向きを変更した実施形態の流量センサの切断側面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1に示す本発明の実施形態の流量センサは、給湯器の熱交換器に連なる給水路に設けられるものであり、流量センサで検出した通水流量が所定の最低流量以上になったときに、熱交換器を加熱するバーナに着火される。
【0013】
流量センサは、筒状のセンサケース1と、センサケース1内に収納される羽根車2とを備えている。
図2も参照して、羽根車2は、軸方向に長手の筒状の胴体部21と、胴体部21に貫通固定させた回転軸22と、胴体部21の外周面に放射状に配置した、磁化された複数の羽根23とを有している。
【0014】
センサケース1の軸方向一端側と他端側には、羽根車2をセンサケース1内で回転自在に保持する第1と第2の一対の軸受部材11,12が設けられている。第1軸受部材11は、センサケース1のケース本体と一体成形されるもので、羽根車2の回転軸22の一端部が挿入される筒状の軸受部111と、軸受部111とセンサケース1の周壁部との間で放射状にのびる、軸方向に対し傾斜した旋回流発生手段たる複数の斜状案内羽根112とを有している。この斜状案内羽根112により、センサケース1内に軸方向一端側から流入する水(流体)の流れが旋回流となる。ここで、羽根車2の羽根23は軸方向に平行であるが、旋回流によって羽根車2に回転力が付与される。
【0015】
第2軸受部材12は、センサケース1のケース本体とは別体であって、羽根車2の回転軸22の他端部が挿入される筒状の軸受部121と、ケース本体の軸方向他端部に嵌合固定される環状のリム部123と、軸受部121とリム部123との間で放射状にのびる、軸方向に対し傾斜した旋回流発生手段たる複数の斜状案内羽根122とを有している。そして、この斜状案内羽根122により、センサケース1内に軸方向他端側から流入する水の流れが旋回流となる。
【0016】
また、羽根車2の軸部22は、第1と第2の各軸受部材11,12の軸受部111,121に摺動自在に挿入されている。両軸受部111,121には、夫々軸部22の軸方向一端面と他端面に対向する凸状の受座111a,121aが設けられている。両受座111a,121a間の距離は軸部22の軸長よりも長い。そのため、羽根車2は、軸方向に両受座111a,121a間の距離と軸部22の軸長との差に等しい所定ストロークだけ移動自在となる。そして、センサケース1内にその軸方向一端側から他端側に向けて水が流れる場合は、羽根車2が水の流れに押されて
図1に実線で示す軸方向他端側のストローク端位置(軸部22の軸方向他端面が第2軸受部材12の受座121aに当接する位置)に移動し、センサケース1内にその軸方向他端側から一端側に向けて水が流れる場合は、羽根車2が水の流れに押されて
図1に仮想線で示す軸方向一端側のストローク端位置(軸部22の軸方向一端面が第1軸受部材11の受座111aに当接する位置)に移動する。尚、羽根車2が所定ストローク移動したときの羽根23の軸方向中央部の移動範囲STの中心位置STOは、センサケース1の軸方向中心Oと同等位置に存する。
【0017】
センサケース1は、給水路に介設される、上流端の接続口31と下流端の接続口32とを有する配管部材3内に装着されている。センサケース1は、配管部材3の内面に形成した段部33と接続口31内に装着する押えリング34との間に挟まれて、軸方向に位置決めされる。また、センサケース1の外周面は、その周方向一部を平面状とした断面D形に形成されている。そして、配管部材3の内周面も断面D形に形成し、配管部材3内にセンサケース1が回り止めした状態で装着されるようにしている。
【0018】
配管部材3の外面には、磁気抵抗効果素子やホール素子等から成る磁気検出器4が取付けられている。磁気検出器4からは、羽根車2の各羽根23が磁気検出器4に対向する位置を通過する度にパルスが出力される。そして、単位時間当たりの出力パルス数をカウントして、通水流量を検出する。
【0019】
ここで、センサケース1内に上流側から下流側(
図1の下側から上側)に向かう順方向に水が流れる場合は、羽根車2が順方向のストローク端位置に移動し、センサケース1内に下流側から上流側(
図1の上側から下側)に向かう逆方向に水が流れる場合は、羽根車2が逆方向のストローク端位置に移動する。尚、配管部材3に、
図1に示す如くセンサケース1を軸方向一端側たる第1軸受部材11側が上流側になる向きで装着した場合、順方向のストローク端位置と逆方向のストローク端位置は、夫々軸方向他端側たる第2軸受部材12側のストローク端位置と第1軸受部材11側のストローク端位置となり、配管部材3に、
図3に示す如く、センサケース1を第1軸受部材11側が下流側になる向きで装着した場合、順方向のストローク端位置と逆方向のストローク端位置は、夫々第1軸受部材11側のストローク端位置と第2軸受部材12側のストローク端位置となる。
【0020】
ここで、水抜き等でセンサケース1内に逆方向に水が流れるとき(水の逆流時)に、バーナに着火することを防止するには、逆流時の水の流れを検出不能とする必要がある。そこで、本実施形態では、磁気検出器4を、羽根車2が順方向のストローク端位置に存する場合は、羽根23の磁気を受けて羽根車2の回転を検出するが、羽根車2が逆方向のストローク端位置に存する場合は、羽根車2の回転を検出できるほどには羽根23の磁気を受けない軸方向箇所に配置している。
【0021】
これによれば、水が逆方向に流れるときは、羽根車2が逆方向のストローク端位置に移動するため、磁気検出器4が羽根車2の回転を検出しなくなる。従って、上記従来例の如き回転抑止部材を用いずに、逆流時の水の流れを検出不能とすることができる。そのため、回転抑止部材の組付け忘れで逆流時に流体の流れを検出してしまうようなことはない。
【0022】
また、本実施形態では、配管部材3にセンサケース1を
図1に示す如く第1軸受部材11側が上流側になる向きで装着した場合、水が順方向に流れると、第1軸受部材11の斜状案内羽根112により水の流れが旋回流となって羽根車2が回転する。また、配管部材3にセンサケース1を
図3に示す如く第2軸受部材12側が下流側になる向きで装着した場合も、水が順方向に流れると、第2軸受部材12の斜状案内羽根122により水の流れが旋回流となって羽根車2が回転する。
【0023】
更に、本実施形態では、羽根車2が所定ストローク移動したときの羽根23の軸方向中央部の移動範囲STの中心位置STOがセンサケース1の軸方向中心Oと同等位置に存するため、配管部材3にセンサケース1を第1軸受部材11側が上流側になる向きで装着した場合における順方向のストローク端位置である第2軸受部材12側のストローク端位置に羽根車2が移動したときの羽根23の位置と、配管部材3にセンサケース1を第1軸受部材11側が下流側になる向きで装着した場合における羽根車2の順方向のストローク端位置である第1軸受部材11側のストローク端位置に羽根車2が移動したときの羽根23の位置とで磁気検出器4に対する位置関係は変化しない。同様に、配管部材3にセンサケース1を第1軸受部材11側が上流側になる向きで装着した場合における羽根車2の逆方向のストローク端位置である第1軸受部材11側のストローク端位置に羽根車2が移動したときの羽根23の位置と、配管部材3にセンサケース1を第1軸受部材11側が下流側になる向きで装着した場合における羽根車2の逆方向のストローク端位置である第2軸受部材12側のストローク端位置に羽根車2が移動したときの羽根23の位置とで磁気検出器4に対する位置関係は変化しない。そのため、配管部材3にセンサケース1を何れの向きで装着しても、順方向の水の流れのみを検出して、逆方向の水の流れは検出不能とすることができる。従って、配管部材3にセンサケース1を方向性を気にせずに装着でき、組立作業性が向上する。
【0024】
尚、羽根23の軸方向中央部の移動範囲STの中心位置STOがセンサケース1の軸方向中心Oから多少ずれていて、配管部材3にセンサケース1を第1軸受部材11側が上流側になる向きで装着した場合とこれとは逆向きで装着した場合とで羽根車2の順方向のストローク端位置における羽根23の位置及び羽根車2の逆方向のストローク端位置における羽根23の位置に夫々多少のずれを生じても、順方向のストローク端位置が磁気検出器4で羽根車2の回転を検出できる範囲内で、且つ、逆方向のストローク端位置が磁気検出器4で羽根車2の回転を検出できない範囲内にある場合は、「羽根23の軸方向中央部の移動範囲STの中心位置STOがセンサケース1の軸方向中心Oと同等位置に存する」に含まれる。
【0025】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、上記実施形態では、センサケース1の軸方向一端側と他端側に旋回流発生手段たる斜状案内羽根112,122を配置したが、羽根車2の羽根23を軸方向に対し傾斜させて、斜状案内羽根112,122を省略してもよい。即ち、羽根23を軸方向に対し傾斜させれば、流体の流れを旋回流にしなくても羽根車2が回転するため、斜状案内羽根112,122は不要になる。また、上記実施形態は、流体として水を流す給湯器用の流量センサに本発明を適用したものであるが、給湯器以外の機器で使用する流量センサにも同様に本発明を適用できる。
【符号の説明】
【0026】
1…センサケース、112,122…斜状案内羽根(旋回流発生手段)、2…羽根車、23…羽根、3…配管部材、4…磁気検出器、ST…羽根の軸方向中央部の移動範囲、STO…STの中心位置、O…センサケースの軸方向中心。