(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6739298
(24)【登録日】2020年7月27日
(45)【発行日】2020年8月12日
(54)【発明の名称】液切装置
(51)【国際特許分類】
E01C 19/02 20060101AFI20200730BHJP
B04B 3/00 20060101ALI20200730BHJP
B04B 11/08 20060101ALI20200730BHJP
B04B 11/02 20060101ALI20200730BHJP
B04B 15/06 20060101ALI20200730BHJP
【FI】
E01C19/02
B04B3/00 B
B04B3/00 D
B04B11/08
B04B11/02
B04B15/06
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-178355(P2016-178355)
(22)【出願日】2016年9月13日
(65)【公開番号】特開2018-44316(P2018-44316A)
(43)【公開日】2018年3月22日
【審査請求日】2019年6月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000142595
【氏名又は名称】株式会社栗本鐵工所
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100130177
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 弥一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100112575
【弁理士】
【氏名又は名称】田川 孝由
(74)【代理人】
【識別番号】100167380
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 隆
(72)【発明者】
【氏名】宮田 真吾
【審査官】
富士 春奈
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−225279(JP,A)
【文献】
特開2012−102519(JP,A)
【文献】
特開平09−049207(JP,A)
【文献】
実開平06−082107(JP,U)
【文献】
特開平11−036218(JP,A)
【文献】
特開平01−105806(JP,A)
【文献】
実開平02−117109(JP,U)
【文献】
特開2001−214408(JP,A)
【文献】
特開2015−113558(JP,A)
【文献】
米国特許第04262429(US,A)
【文献】
中国特許出願公開第105064172(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B04B1/00−15/12
E01C19/00−19/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒軸方向一端に被処理物の投入部(4)を筒軸方向他端に被処理物の排出部(5)を有する筒状のバスケット(1)と、
前記バスケット(1)の筒軸回りの壁面(6)に設けられ前記バスケット(1)内外の空間を結ぶ透孔(6a)と、
前記バスケット(1)を筒軸回りに回転させる回転装置(11,12)と、
前記バスケット(1)の壁面から筒軸に向かって内径方向へ立ち上がり前記バスケット(1)の空間を複数の処理室に分ける仕切板(2)と、
を備え、
前記処理室内の被処理物を筒軸方向他端側に隣接する他の前記処理室に送り出す送り出し装置(20)を備える液切装置。
【請求項2】
前記筒状のバスケット(1)は、筒軸方向一端から筒軸方向他端へ向かって拡がる円すい台状の前記壁面(6)をその筒軸方向の一部又は全部に備える
請求項1に記載の液切装置。
【請求項3】
前記処理室内の壁面(6)に被処理物を密着させる押圧装置(30)を備える
請求項1又は2に記載の液切装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、砂、採石等の各種骨材、鉱石、スラグ、その他各種固形物に付着した水等の液体を、その固形物から除去する液切装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
砂、採石等の各種骨材、あるいは、鉱石、スラグ、その他各種固形物に付着した水を、その固形物から除去するために、いわゆる液切装置(水切装置)が用いられる。この液切装置で処理される対象物を、以下、被処理物と称する。
【0003】
例えば、特許文献1、2には、モータ等の駆動装置により回転駆動される円錐台形のバスケットの側面に、多数の透孔を有するスクリーンを備えた遠心式の液切装置がある。
【0004】
バスケット内に供給された被処理物は、円錐台形を成すバスケットの大径部側へ移動する間に、その表面に付着した水が徐々に遠心力によって分離され、スクリーンの透孔をバスケット内からバスケット外へ通り抜けた水は、排出口から排出される。また、脱水を終えた被処理物は、バスケットの大径部端縁から機外に排出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−225279号公報
【特許文献2】特開2000−317228号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
例えば、被処理物が骨材である場合、水洗分級を行った後の骨材は、篩いを振動させる液切装置によって、付着した水の分離を行う場合が多い。しかし、振動による水切りのみでは水分の分離が不十分であるため、その後、1〜2日ほど静置状態で貯留(野積み等)することによって自然に水切りされるのを待っている。このような野積み等による水切りでは、骨材の表面に付着した水は分離されるものの、露出していない部分の水はその多くが残ったままとなる。このため、分級後の骨材をすぐに出荷できないという問題がある。
【0007】
この点、上記のような回転式の液切装置によると、振動式の液切装置よりも水の分離は促進される。しかし、バスケット内の被処理物が一箇所に滞留してしまい、スムーズに大径側端部に誘導されない場合がある。このような滞留が発生すると、一旦分離された水がスクリーンの透孔を通過する前に、バスケットの回転によって再度被処理物に混ざってしまうという問題がある。また、逆に、バスケット内の被処理物が早期に大径側端部に至ってしまい、遠心力による水の分離が充分に行われないまま、被処理物が排出されてしまう場合もある。
【0008】
そこで、この発明の課題は、被処理物に付着した液体を効率的に分離することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、この発明は、筒軸方向一端に被処理物の投入部を筒軸方向他端に被処理物の排出部を有する筒状のバスケットと、前記バスケットの筒軸回りの壁面に設けられ前記バスケット内外の空間を結ぶ透孔と、前記バスケットを筒軸回りに回転させる回転装置と、前記バスケットの壁面から筒軸に向かって内径方向へ立ち上がり前記バスケットの空間を複数の処理室に分ける仕切板と、を備える液切装置を採用した。
【0010】
ここで、前記筒状のバスケットは、筒軸方向一端から筒軸方向他端へ向かって拡がる円すい台状の前記壁面をその筒軸方向の一部又は全部に備える構成を採用することができる。
【0011】
これらの各態様において前記処理室内の被処理物を筒軸方向他端側に隣接する他の前記処理室に送り出す送り出し装置を備える構成を採用することができる。
【0012】
さらに、前記処理室内の壁面に被処理物を密着させる押圧装置を備える構成を採用することができる。
【発明の効果】
【0013】
この発明は、筒軸方向一端に被処理物の投入部を筒軸方向他端に被処理物の排出部を有する筒状のバスケットと、バスケットの筒軸回りの壁面に設けられバスケット内外の空間を結ぶ透孔と、バスケットを筒軸回りに回転させる回転装置と、バスケットの壁面から筒軸に向かって内径方向へ立ち上がりバスケットの空間を複数の処理室に分ける仕切板とを備える液切装置を採用したので、被処理物に付着した液体を効率的に分離することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図3】(a)は
図2のIII−III断面図、(b)は(a)の要部拡大図
【
図4】他の実施形態を示し、(a)は側面図、(b)は正面図
【発明を実施するための形態】
【0015】
この発明の実施形態を、図面に基づいて説明する。この実施形態の液切装置Mは、水洗分級機での処理を経た砕石や砂等の骨材から、水分を分離するために使用するものである。
【0016】
液切装置Mは、
図1に示すように、筒軸方向一端に被処理物の投入部4を有し、筒軸方向他端に被処理物の排出部5を有する筒状のバスケット1を備えている。
【0017】
この実施形態のバスケット1は、筒軸方向一端付近と筒軸方向他端付近の僅かな部分を除き、筒軸方向のほぼ全長に亘って円筒状の壁面6を備えている。
【0018】
バスケット1の筒軸方向一端の投入部4付近は、筒軸方向一端側から筒軸方向他端側へ向かって拡がる円すい台状の壁面6となっている。これにより、被処理物は、投入部4から筒軸方向他端側へ向かって送り出されやすくなっている。
【0019】
また、バスケット1の筒軸方向他端の排出部5付近も、筒軸方向一端側から筒軸方向他端側へ向かって拡がる円すい台状の壁面6となっている。これにより、被処理物は、筒軸方向他端の排出部5へ向かって送り出されやすくなっている。
【0020】
バスケット1の筒軸回りの壁面6には、バスケット1内の空間とバスケット1外の空間とを結ぶ多数の透孔6aが備えられている。この透孔6aは、投入部4付近と排出部5付近を除く円筒状の壁面6に設けられている。
【0021】
バスケット1は、フレーム10によってその筒軸回り回転可能に支持されている。フレーム10に設けた回転ローラ(回転装置)11が、バスケット1の円筒状の壁面6の外面に当接しており、回転ローラ11がモータ等の駆動力によって回転することによって、バスケット1が筒軸回りに回転する。
【0022】
また、フレーム10に設けた対の回転ローラ(回転装置)12が、バスケット1の筒軸方向一端に設けたフランジ部3の表裏両面に当接している。回転ローラ12は、フランジ部3の回転に伴って回転(空転)しながら、バスケット1の筒軸方向位置が移動しないように拘束している。なお、この回転ローラ12にも、モータ等の駆動力を伝達するようにしてもよい。
【0023】
なお、バスケット1を筒軸回りに回転させる回転装置としては、この実施形態の回転ローラ11,12を用いた構成以外にも、例えば、ギヤやベルト等を用いて駆動力を伝達する周知の駆動装置を採用することができる。
【0024】
バスケット1内には、壁面6から筒軸に向かって内径方向へ立ち上がる仕切板2が設けられている。この仕切板2によって、バスケット1の空間が、筒軸方向に沿って複数の処理室A,B,C,D・・・に分けられている。
【0025】
この実施形態では、バスケット1内の3箇所に仕切板2を設けており、バスケット1の空間が、4つの処理室A,B,C,Dに分けられているが、設置する仕切板2の数は、設置する処理室の数に合わせて適宜増減できる。
【0026】
仕切板2は、バスケット1の壁面6の内面から内径側に向かって立ち上がる環状の板状部材で構成される。仕切板2の環状の内縁よりも内径側は、隣接する処理室同士を結ぶ流通孔2aとなっている。この流通孔2aを通じて、被処理物は、バスケット1の筒軸方向一端側から筒軸方向他端側へと、処理室間を移送されていく。この間、バスケット1は筒軸回りに高速で回転するので、被処理物に付着している液体(水)は、壁面6の透孔6aからバスケット1外に排出される。
【0027】
ここで、排出部5に臨む末端の処理室D以外の処理室A,B,Cには、その処理室A,B,C内の被処理物を、筒軸方向他端側に隣接する他の処理室B,C,Dに送り出す送り出し装置20を備えている。
【0028】
送り出し装置20は、バスケット1内に筒軸方向沿って挿通される回転軸21と、その回転軸21に対して接続部21aを介して接続される送り出し部材22とを備える。回転軸21の軸心方向は、バスケット1の筒軸方向と並行であるか、あるいは、バスケット1の筒軸方向とほぼ並行になるように配置されている。
【0029】
送り出し部材22は、回転軸21に対して、その回転軸21の軸心から離れる方向へ向かって突出するように設けられる。回転軸21が、モータ等の駆動力によって軸回り回転することにより、送り出し部材22は、各処理室A,B,C内で回転する。
【0030】
送り出し部材22は板状部材で構成されて、その板状部材における回転軸21の軸心から遠い側の外縁22aは、バスケット1の壁部6の内面に沿う円弧状を成している。また、送り出し部材22の前面は、フラットな送り出し面22bとなっている。
【0031】
回転軸21とともに送り出し部材22が回転することにより、各処理室A,B,C内の底の方に溜まっている被処理物が持ち上げられて、その持ち上げられた被処理物が、仕切板2の内径側にある流通孔2aを通じて、他端側に隣接する別の処理室に移動する。このとき、処理室間は仕切板2で隔てられているので、筒軸方向一端側の処理室の水が、筒軸方向他端側の処理室に流入することが防止される。
【0032】
ここで、送り出し面22bの面方向は、
図1に示すように、筒軸方向に直交する方向に対して、やや傾斜した向きとなっている。その傾斜方向は、回転軸21の回転方向に沿って、その回転方向前方側(回転軸21の回転方向下流側)の縁が、回転方向後方側(回転軸21の回転方向上流側)の縁よりも、筒軸方向一端側に位置する方向である。この送り出し面22bの面方向の傾斜により、送り出し面22bは回転方向前方側を向くようになって、被処理物の送り出しが促進されるようになっている。
【0033】
また、回転軸21の回転方向、すなわち、送り出し部材22の回転方向は、バスケット1の筒軸回りの回転方向と逆方向となっている。この回転方向の設定により、被処理物の送り出しは、さらに促進されるようになっている。ここで、液切の遠心力を高めるため、バスケット1の回転は比較的高速に設定されることが望ましい。これに対して、回転軸21の回転は、バスケット1の回転よりも低速で充分である。
【0034】
なお、この実施形態の送り出し部材22は板状部材で構成されているが、この送り出し部材22をブロック状の部材や、あるいは、軸状の部材の集合等で構成してもよい。
【0035】
また、バスケット1内には、前記処理室内の壁面6に被処理物を密着させる押圧装置30を備えている。押圧装置30は、壁面6に余分に付着した被処理物を壁面6から分離して落下させる機能も発揮できる。
【0036】
押圧装置30は、バスケット1内に筒軸方向沿って挿通される回動軸31aと、同じく、バスケット1内に筒軸方向沿って挿通される軸状又は長手状の反力部材31bとを備える。回動軸31aには、スクレーパ32が取り付けられている。また、スクレーパ32と反力部材31bとの間には、弾性部材31cが設けられている。
【0037】
回動軸31aの軸心方向は、バスケット1の筒軸方向と並行であるか、あるいは、バスケット1の筒軸方向とほぼ並行になるように配置されている。また、反力部材31bの伸びる方向は、同じく、バスケット1の筒軸方向と並行であるか、あるいは、バスケット1の筒軸方向とほぼ並行になるように配置されている。
【0038】
スクレーパ32は、弾性部材31cの付勢力によって、その先端32aがバスケット1の壁面6の内面に押圧される。この押圧により、被処理物は壁面6に密着し、遠心力による水分の分離が円滑に行われるほか、壁面6に付着した余分な被処理物は、処理室内の底の方へ掻き落とされ、その後の被処理物の円滑な処理が促進される。
【0039】
この実施形態では、スクレーパ32は、全ての処理室A,B,C,Dに備えられているが、一部の必要な処理室にのみスクレーパ32を取り付けてもよい。
【0040】
他の実施形態を
図4に示す。この実施形態は、筒状のバスケット1の形状を、筒軸方向一端から筒軸方向他端へ向かって拡がる円すい台状としたものである。バスケット1の壁面6の内面及び外面は、投入部4側から排出部5側へ向かって拡がるテーパ状となっている。投入部4側ではバスケット1の半径が小さいので、被処理物に付着した水はその自重により下方へ排出され、被処理物は適宜に排出部5側へ移動していく。
【0041】
また、壁面6の透孔6aからバスケット1外に出た水は、バスケット1の下方に設けた排水部7から外部へ排出されるようになっている。
【0042】
ここでは、筒軸方向一端から筒軸方向他端までの全範囲を円すい台状としているが、筒軸方向一端から筒軸方向他端までの一部を円すい台状とした構成を採用することもできる。
【0043】
また、この実施形態では、仕切板2を2箇所とし、処理室をA,B,Cの3箇所としているが、設置する仕切板2の数は、設置する処理室の数に合わせて適宜増減できる点は同様である。
【0044】
送り出し装置20は、排出部5に臨む末端の処理室C以外の処理室A,Bに設けられている。押圧装置30は、その設置を省略しているが、必要に応じて一部の又は全部の処理室に押圧装置30のスクレーパ32を配置してもよい。
【0045】
上記の実施形態では、バスケット1は、その筒軸方向が水平になるように配置したが、バスケット1の筒軸方向を、投入部4側から排出部5側に向かって下り勾配になるように傾斜させて配置してもよい。特に、円筒状の壁面6を有するバスケット1を用いる場合は、このように筒軸を下り勾配とすることで、被処理物の処理及び排出を促進できる。
【0046】
また、上記の実施形態では、被処理物に付着した水を分離する液切装置(水切装置)を例に、この発明を説明したが、被処理物に付着した水以外の液体を分離する各種の液切装置にも、この発明を適用できる。
【符号の説明】
【0047】
1 バスケット
2 仕切板
3 フランジ部
4 投入部
5 排出部
6 壁面
6a 透孔
7 排水部
10 フレーム
11,12 ローラ
20 送り出し装置
21 回転軸
21a 接続部
22 送り出し部材
22a 外縁
22b 送り出し面
30 押圧装置
31a 回動軸
31b 反力部材
31c 弾性部材
32 スクレーパ
A,B,C,D 処理室