(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
鋼管軸心方向に隣り合わされた鋼管の互いに対向する鋼管端部どうしを、鋼管周方向に沿って設けられたキー溝部に配置したキー部材によって前記鋼管軸心方向に抜け止め状態に連結する鋼管連結機構であって、
前記キー溝部のうち前記鋼管周方向の少なくとも一部を外部空間に連通する開口部に、前記外部空間から前記開口部を介して前記キー溝部に配置された前記キー部材が、前記開口部を介して前記外部空間に抜け出ることを防止する蓋部材が取り付け可能であり、
少なくとも、前記蓋部材及び前記キー部材のうち前記開口部に対向する前記キー溝部に存在する部分と、前記開口部に対向する前記キー溝部と、のいずれかに、前記鋼管軸心方向に荷重を伝達しない非伝達機構が備えられている鋼管連結機構。
前記非伝達機構は、少なくとも、前記キー部材のうち前記開口部側の端部と、前記キー溝部のうち前記端部に対応する部分と、のいずれかにも備えられている請求項1に記載の鋼管連結機構。
前記非伝達機構は、前記蓋部材及び前記キー部材のうち前記開口部に対向する前記キー溝部に存在する部分と、前記開口部に対向する前記キー溝部と、の非伝達部隙間から構成され、
前記非伝達部隙間は、前記キー溝部のうち前記開口部と対向しない部分と、該部分に配置される前記キー部材との伝達部隙間よりも大きい請求項1又は2に記載の鋼管連結機構。
前記非伝達機構は、少なくとも、前記蓋部材及び前記キー部材のうち前記開口部に対向する前記キー溝部に存在する部分、又は、前記開口部に対向する前記キー溝部のいずれかの非伝達部剛性から構成され、
前記非伝達部剛性は、前記キー溝部のうち前記開口部と対向しない部分、及び、該部分に配置される前記キー部材の伝達部剛性よりも低い請求項1から3のいずれか一項に記載の鋼管連結機構。
前記鋼管軸心方向に隣り合わされた鋼管の互いに対向する鋼管端部の一方に設けられる筒状継手と、他方の鋼管端部に設けられ、前記筒状継手に嵌合可能な軸状継手と、を有し、
前記キー溝部は、前記筒状継手の筒状継手内周面に鋼管周方向に沿って備えられた内向き溝部と、前記筒状継手と前記軸状継手とが互いに嵌合させられた状態のときに、前記軸状継手の軸状継手外周面に前記鋼管周方向に沿って前記内向き溝部に対向するよう備えられた外向き溝部とから構成され、
前記開口部は、前記筒状継手に設けられている請求項1から4のいずれか一項に記載の鋼管連結機構。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来の接合構造は、鋼管周方向のうち開口部が備えられている部分は、該開口部が存在しているため鋼管軸心方向の剛性が低い。それにもかかわらず、各キーや、各キーの抜け止めを防止するピンによって、内向き周溝のうち開口部に対向する部分にも、内向き周溝のうち開口部が存在しない箇所において鋼管軸心方向の荷重を伝達するキーと同様に、鋼管軸心方向の荷重を伝達する構造となっているため、この部分において連携機構に変形を生じる虞があった。
【0005】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであって、鋼管周方向に変形を生じない鋼管連結機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の目的を達成するための、本発明の鋼管連結機構の特徴構成は、鋼管軸心方向に隣り合わされた鋼管の互いに対向する鋼管端部どうしを、鋼管周方向に沿って設けられたキー溝部に配置したキー部材によって前記鋼管軸心方向に抜け止め状態に連結する鋼管連結機構であって、前記キー溝部のうち前記鋼管周方向の少なくとも一部を外部空間に連通する開口部に、前記外部空間から前記開口部を介して前記キー溝部に配置された前記キー部材が、前記開口部を介して前記外部空間に抜け出ることを防止する蓋部材が取り付け可能であり、少なくとも、前記蓋部材及び前記キー部材のうち前記開口部に対向する前記キー溝部に存在する部分と、前記開口部に対向する前記キー溝部と、のいずれかに、前記鋼管軸心方向に荷重を伝達しない非伝達機構が備えられている点にある。
【0007】
少なくとも、蓋部材及びキー部材のうち開口部に対向するキー溝部に存在する部分と、開口部に対向するキー溝部と、のいずれか、すなわち、開口部が存在しているため鋼管周方向のうち剛性が低い箇所に対応する部分に、鋼管軸心方向の荷重を伝達しない非伝達機構を備えているため、鋼管軸心方向の荷重は該部分において伝達されず該部分に変形を生じる虞がない。
【0008】
本発明においては、前記非伝達機構は、少なくとも、前記キー部材のうち前記開口部側の端部と、前記キー溝部のうち前記端部に対応する部分と、のいずれかにも備えられていると好適である。
【0009】
キー溝部のうち開口部に対応する部分のみならず、開口部との境界周りも、その他の部分にくらべて、鋼管軸心方向の剛性が低い。そこで、少なくとも、キー部材のうち開口部側の端部と、キー溝部のうちキー部材の端部に対応する部分にも非伝達機構を備えているため、鋼管軸心方向の荷重は該部分において伝達されず該部分に変形を生じる虞がない。
【0010】
本発明においては、前記非伝達機構は、前記蓋部材及び前記キー部材のうち前記開口部に対向する前記キー溝部に存在する部分と、前記開口部に対向する前記キー溝部と、の非伝達部隙間から構成され、前記非伝達部隙間は、前記キー溝部のうち前記開口部と対向しない部分と、該部分に配置される前記キー部材との伝達部隙間よりも大きいと好適である。
【0011】
非伝達部隙間は伝達部隙間より大きいため、鋼管軸心方向に作用する荷重は、キー溝部のうち開口部と対向しない部分と該部分に配置されるキー部材との接触により伝達される。なお、非伝達部隙間及び伝達部隙間の大小は、蓋部材、キー部材及びキー溝部の形状を異ならせることによって実現される。
【0012】
本発明においては、前記非伝達機構は、少なくとも、前記蓋部材及び前記キー部材のうち前記開口部に対向する前記キー溝部に存在する部分、又は、前記開口部に対向する前記キー溝部のいずれかの非伝達部剛性から構成され、前記非伝達部剛性は、前記キー溝部のうち前記開口部と対向しない部分、及び、該部分に配置される前記キー部材の伝達部剛性よりも低いと好適である。
【0013】
非伝達部剛性は伝達部剛性よりも低い、すなわち伝達部剛性は非伝達部剛性よりも高いため、鋼管軸心方向に作用する荷重は、キー溝部のうち開口部と対向しない部分と、該部分に配置されるキー部材との接触により伝達される。なお、非伝達部剛性及び伝達部剛性の高低は、蓋部材、キー部材及びキー溝部の形状や、材質を異ならせることによって実現される。
【0014】
本発明においては、前記鋼管軸心方向に隣り合わされた鋼管の互いに対向する鋼管端部の一方に設けられる筒状継手と、他方の鋼管端部に設けられ、前記筒状継手に嵌合可能な軸状継手と、を有し、前記キー溝部は、前記筒状継手の筒状継手内周面に鋼管周方向に沿って備えられた内向き溝部と、前記筒状継手と前記軸状継手とが互いに嵌合させられた状態のときに、前記軸状継手の軸状継手外周面に前記鋼管周方向に沿って前記内向き溝部に対向するよう備えられた外向き溝部とから構成され、前記開口部は、前記筒状継手に設けられていると好適である。
【0015】
筒状継手と軸状継手とが互いに嵌合させられた状態のときに、上述のようにして分割キー部材がキー溝部に配置されることにより、軸状継手と筒状継手とが抜け止め状態に連結される。このとき、開口部が存在しているため鋼管周方向のうち剛性が低い箇所に対応する部分に、鋼管軸心方向の荷重を伝達しない非伝達機構を備えているため、鋼管軸心方向の荷重は該部分において伝達されず該部分に変形を生じる虞がない。
【0016】
本発明においては、前記鋼管軸心方向に隣り合わされた鋼管の互いに対向する鋼管端部の両方に設けられる軸状継手と、前記両軸状継手を隣り合わせた状態で、前記両軸状継手に周設可能な筒状継手と、を有し、前記キー溝部は、前記筒状継手の筒状継手内周面に鋼管周方向に沿って備えられた内向き溝部と、前記筒状継手と前記軸状継手とが互いに嵌合させられた状態のときに、前記軸状継手の軸状継手外周面に前記鋼管周方向に沿って前記内向き溝部に対向するよう備えられた外向き溝部とから構成され、前記開口部は、前記筒状継手に設けられていると好適である。
【0017】
筒状継手に両軸状継手が挿設させられた状態のときに、上述のようにして分割キー部材がキー溝部に配置されることにより、軸状継手と筒状継手とが抜け止め状態に連結される。このとき、開口部が存在しているため鋼管周方向のうち剛性が低い箇所に対応する部分に、鋼管軸心方向の荷重を伝達しない非伝達機構を備えているため、鋼管軸心方向の荷重は該部分において伝達されず該部分に変形を生じる虞がない。
【0018】
本発明においては、前記鋼管軸心方向に隣り合わされた鋼管の互いに対向する鋼管端部の両方に設けられる軸状継手と、前記両軸状継手を隣り合わせた状態で、前記両軸状継手に周設可能な筒状継手と、を有し、前記キー溝部は、前記筒状継手の筒状継手内周面に鋼管周方向に沿って備えられた内向き溝部と、前記筒状継手と前記軸状継手とが互いに嵌合させられた状態のときに、前記軸状継手の軸状継手外周面に前記鋼管周方向に沿って前記内向き溝部に対向するよう備えられた外向き溝部とから構成され、前記筒状継手は、前記鋼管周方向で複数個の周壁部材から構成され、前記開口部は、複数個の前記周壁部材のうち少なくとも一つの周壁部材に設けられていると好適である。
【0019】
両軸状継手に筒状継手が周設させられた状態のときに、上述のようにして分割キー部材がキー溝部に配置されることにより、軸状継手と筒状継手とが抜け止め状態に連結される。このとき、開口部が存在しているため鋼管周方向のうち剛性が低い箇所に対応する部分に、鋼管軸心方向の荷重を伝達しない非伝達機構を備えているため、鋼管軸心方向の荷重は該部分において伝達されず該部分に変形を生じる虞がない。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1には、オーガーで掘削しながら地中に回転圧入して沈設する中掘工法に使用される鋼管杭P(P1,P2)が示されている。
【0022】
鋼管杭P(P1,P2)は、スパイラル鋼管等の鋼管S(S1,S2)の一方の端部に筒状継手10が溶接連結されるともに、他方の端部に軸状継手20が溶接連結された円筒体である。
【0023】
鋼管軸心X方向に隣り合う鋼管杭P(P1,P2)の互いに対向する鋼管S(S1,S2)の鋼管端部どうしは、本発明に係る鋼管連結機構Jによって抜け止め状態で、かつ、回り止め状態で連結される。
【0024】
鋼管連結機構Jは、筒状継手10と、軸状継手20と、キー部材を構成する分割キー部材31と、回転抑止キー40とを備えている。
【0025】
筒状継手10は、鋼製の筒状体を加工することによって作成される。筒状継手10の下端側に突条11と、鋼管周方向に間隔を隔てて複数の筒側切欠凹部12が備えられている。筒状継手10の内周面13の上端側に溝部14が備えられている。本実施形態における内周面13が、本発明に係る筒状継手内周面である。内周面13に、鋼管周方向に沿って、二条の内向き溝部15が備えられている。
【0026】
筒状継手10に、その外周面から内向き溝部15に連通する開口部16が設けられている。本実施形態においては、開口部16の上下幅は内向き溝部15の上下幅よりも略同じか多少大きい。
【0027】
軸状継手20は、鋼製の筒状体を加工することによって作成される。軸状継手20の上端側に、筒状継手10に備えられた溝部14に嵌合可能な突条21が備えられている。
【0028】
筒状継手10と軸状継手20とが互いに嵌合させられた状態であるときに、筒状継手10に備えられた筒側切欠凹部12と対向する位置に軸側切欠凹部22が備えられている。筒側切欠凹部12と軸側切欠凹部22とによって、後述する回転抑止キー40のキー溝部が構成される。軸側切欠凹部22の中央部分に、回転抑止キー40を該キー溝部に固定するための固定ネジ41を螺着可能な雌ネジ26が備えられている。
【0029】
外周面23は、鋼管軸心X方向の長さが筒状継手10の内周面13の鋼管軸心X方向の長さと略同じで、外径が内周面13に嵌合可能な大きさに構成されている。本実施形態における外周面23が、本発明に係る軸状継手外周面である。外周面23の下端側に、筒状継手10に備えられた突条11が嵌合可能な溝部24が形成されている。
【0030】
外周面23に、鋼管周方向に沿って、二条の外向き溝部25が、筒状継手10と軸状継手20とが互いに嵌合させられた状態であるときに、内向き溝部15に対向するように備えられている。
【0031】
筒状継手10と軸状継手20とが互いに嵌合させられた状態であるときに、内向き溝部15と外向き溝部25とから構成される円環状の空間が分割キー部材31を配置するキー溝部Gを構成する。キー溝部Gのうち鋼管周方向の少なくとも一部が、開口部16を介して外部空間に連通されている。本実施形態においては、開口部16は、キー溝部Gのうち鋼管周方向の一部にのみ備えられているが、鋼管周方向の複数個所に備えられてもよい。
【0032】
筒状継手10と軸状継手20とが互いに嵌合させられた状態であるときに、軸状継手20の外向き溝部25のうち開口部16に対向する部分に、後述する蓋部材50を固定する雄ネジ51を螺合可能な雌ネジ52が備えられている
【0033】
分割キー部材31は、筒状継手10と軸状継手20とが互いに嵌合させられた際に、筒状継手10と軸状継手20とを抜け止め状態で連結するための部材である。外部空間から開口部16を介して、キー溝部Gに鋼管周方向に沿って複数の分割キー部材31が配置される。
【0034】
図2及び
図3に示すように、分割キー部材31に、横断面が矩形で、外向き溝部25の底面に対向するキー内周面が前記底面と略同じ曲率を有する円弧形状の部材であり、鋼製の長尺体を加工することによって作成される。
【0035】
上述のように構成された複数の分割キー部材31を用いて、筒状継手10と軸状継手20とが抜け止め状態に連結される。キー溝部Gに分割キー部材31が配置された後は、
図1、
図2及び
図3に示すように、蓋部材50によって開口部16が閉じられる。これにより、キー溝部Gに配置された分割キー部材31が、開口部16を介して外部空間に抜け出ることが防止される。
【0036】
図4に示すように、蓋部材50のうち開口部16に対向するキー溝部Gに存在する部分にテーパ面53が備えられている。テーパ面53が形成されている部分は、キー溝部Gにおいて鋼管軸心X方向の荷重を伝達する部分である分割キー部材31にくらべて、上下方向の寸法が小さくなっている。そのため、蓋部材50のテーパ面53はキー溝部Gに接触することはない。したがって、蓋部材50はテーパ面53において鋼管軸心X方向に荷重を伝達しない。その結果、鋼管軸心X方向の荷重により開口部16の部分に変形を生じる虞がない。
【0037】
さらに、本実施形態においては、複数の分割キー部材31のうち少なくとも、最も開口部16に近い位置に配置される分割キー部材31の開口部16側の端部にもテーパ面32が備えられている。
【0038】
テーパ面32が形成されている部分は、分割キー部材31のうちテーパ面32が形成されていない部分、すなわちキー溝部Gにおいて鋼管軸心X方向の荷重を伝達する部分にくらべて、上下方向の寸法が小さくなっている。そのため、分割キー部材31のテーパ面32はキー溝部Gに接触することはない。
【0039】
したがって、分割キー部材31はテーパ面32において鋼管軸心X方向に荷重を伝達しない。このように、分割キー部材31のうち、開口部16との境界周りに位置する部分にもテーパ面32を備えることによって、鋼管軸心X方向の荷重が作用することを回避することができる。なお、分割キー部材31にテーパ面32を備えていてなくてもよい。
【0040】
すなわち、本実施形態においては、蓋部材50に備えられたテーパ面53や、分割キー部材31に備えられたテーパ面32と、キー溝部Gとの隙間が、本発明に係る非伝達部隙間であり、これが非伝達機構を構成する。該非伝達部隙間は、キー溝部Gのうち開口部16と対向しない部分と、該部分に配置される分割キー部材31と、の隙間、すなわち伝達部隙間よりも大きい。
【0041】
蓋部材50に、テーパ面53に代えて、たとえば、
図6に示すように、蓋部材50のうち開口部16に対向するキー溝部Gに存在する部分に狭幅部54が備えられてもよい。狭幅部54が形成されている部分は、キー溝部Gにおいて鋼管軸心X方向の荷重を伝達する部分である分割キー部材31にくらべて、上下方向の寸法が小さくなっている。そのため、蓋部材50の狭幅部54はキー溝部Gに接触することはない。したがって、蓋部材50は狭幅部54において鋼管軸心X方向に荷重を伝達しない。その結果、鋼管軸心X方向の荷重により開口部16の部分に変形を生じる虞がない。
【0042】
さらに、複数の分割キー部材31のうち最も開口部16に近い位置に配置される分割キー部材31の開口部16側の端部に、テーパ面32に代えて、
図7に示すように、狭幅部33が備えられてもよい。テーパ面32が形成されている部分は、分割キー部材31のうちテーパ面32が形成されていない部分、すなわちキー溝部Gにおいて鋼管軸心X方向の荷重を伝達する部分にくらべて、上下方向の寸法が小さくなっている。そのため、分割キー部材31のテーパ面32はキー溝部Gに接触することはない。
【0043】
したがって、分割キー部材31は狭幅部33において鋼管軸心X方向に荷重を伝達しない。このように、分割キー部材31のうち、開口部16との境界周りに位置する部分にも狭幅部33を備えることによって、鋼管軸心X方向の荷重が作用することを回避することができる。
【0044】
以上のとおり、非伝達部隙間は、好ましくは、蓋部材50や分割キー部材31側に備えられたテーパ面53やテーパ面32、又は、狭幅部54や狭幅部33、とキー溝部Gとの隙間から構成される。しかし、非伝達部隙間はこれに限らない。たとえば、蓋部材50や分割キー部材31にテーパ面53やテーパ面32を備えることなく、テーパ面53やテーパ面32に対応する部分のキー溝部Gの鋼管軸心X方向の寸法を、その他の部分、すなわち鋼管軸心X方向の荷重を伝達する部分のキー溝部Gの寸法よりも長くすることによって構成されてもよい。
【0045】
また、上述の実施形態においては、非伝達部隙間から非伝達機構が構成される場合について説明したが、これに限らない。たとえば、
図8に示すように、蓋部材50のうち開口部16に対向するキー溝部Gに存在する部分に低剛性部55が備えられている。
【0046】
低剛性部55は、キー溝部Gにおいて鋼管軸心X方向の荷重を伝達する部分である分割キー部材31にくらべて、弾性係数が小さな材料、たとえば樹脂から形成されている。低剛性部55が形成されている部分は、キー溝部Gにおいて鋼管軸心X方向の荷重を伝達する分割キー部材31にくらべて、剛性が低くなっている。
【0047】
そのため、分割キー部材31は低剛性部34において鋼管軸心X方向に荷重を伝達しない。したがって、蓋部材50は低剛性部55において鋼管軸心X方向に荷重を伝達しない。その結果、鋼管軸心X方向の荷重により開口部16の部分に変形を生じる虞がない。なお、蓋部材50のすべてを分割キー部材31にくらべて、剛性が低い材料から構成してもよい。
【0048】
さらに、複数の分割キー部材31のうち少なくとも、最も開口部16に近い位置に配置される分割キー部材31の開口部16側の端部にも低剛性部34が備えられてもよい。この場合も、低剛性部34は、キー溝部Gにおいて鋼管軸心X方向の荷重を伝達する部分である分割キー部材31にくらべて、剛性が低い材料、たとえば樹脂から形成されている。
【0049】
低剛性部34が形成されている部分は、分割キー部材31のうち低剛性部34が形成されていない部分、すなわちキー溝部Gにおいて鋼管軸心X方向の荷重を伝達する部分にくらべて、剛性が低くなっている。
【0050】
したがって、分割キー部材31は低剛性部34において鋼管軸心X方向に荷重を伝達しない。このように、分割キー部材31のうち、開口部16との境界周りに位置する部分にも低剛性部34を備えることによって、鋼管軸心X方向の荷重が作用することを回避することができる。なお、分割キー部材31に低剛性部34を備えていてなくてもよい。
【0051】
すなわち、本実施形態においては、蓋部材50に備えられた低剛性部55や、分割キー部材31に備えられた低剛性部34の剛性が、本発明に係る非伝達部剛性であり、これが非伝達機構を構成する。
【0052】
なお、非伝達部剛性は、蓋部材50や分割キー部材31側に備えられた低剛性部55や低剛性部34から構成される場合に限らない。たとえば、蓋部材50や分割キー部材31に低剛性部55や低剛性部34を備えることなく、低剛性部55や低剛性部34に対応する部分のキー溝部Gの剛性を、その他の部分、すなわち鋼管軸心X方向の荷重を伝達する部分のキー溝部Gの剛性よりも低くすることによって構成されてもよい。
【0053】
さらに、非伝達部剛性は、低剛性部55や低剛性部34が、分割キー部材31の材料よりも剛性が低い材料から構成される場合に限らず、一部にくり抜きや切り欠きを備えた断面係数が小さな形状から構成されてもよい。
【0054】
また、上述の実施形態においては、鋼管連結機構Jは、鋼管軸心X方向に隣り合わされた鋼管S(S1,S2)の互いに対向する鋼管端部の一方に筒状継手10が設けられ、他方の鋼管端部に軸状継手20が設けられる場合について説明したが、これに限らない。
【0055】
たとえば、
図10に示すように、鋼管軸心X方向に隣り合わされた鋼管S(S1,S2)の互いに対向する鋼管端部の両方に軸状継手20が設けられ、両軸状継手20を隣り合わせた状態で、両軸状継手20に筒状継手10が周設される構成であってもよい。なお、
図1に示す構成と対応する構成について同じ符号を付している。
【0056】
この実施形態において、筒状継手10は、内周面に鋼管周方向に沿って、二条の内向き溝部15が備えられている。しかし、両軸状継手20には、それぞれ一条の外向き溝部25が備えられている。さらに、筒状継手10は、鋼管周方向に複数の周壁部材10a及び周壁部材10bから構成されている。なお、周壁部材10aにのみ開口部16が備えられている。
【0057】
このような筒状継手10及び軸状継手20の構成であっても、
図2に示すような分割キー部材31を用いて、筒状継手10と軸状継手20とを抜け止め状態に連結することができる。キー溝部Gに分割キー部材31が配置された後は、
図11に示すように、蓋部材50によって開口部16が閉じられる。
【0058】
なお、
図10における筒状継手10は、鋼管周方向に分割形成されていなくてもよく、一つの円筒状体のまま構成されていてもよい。すなわち、筒状継手10は、鋼管軸心X方向に隣り合わされた鋼管S(S1,S2)の互いに対向する鋼管端部の両方に設けられる軸状継手20が隣り合うように挿設可能であってもよい。なお、この場合、筒状継手10の内周面13の上端側に溝部14を備えたり、軸状継手20に筒状継手10に備えられた溝部14に嵌合可能な突条21を備えたりしていなくてもよい。
【0059】
この実施形態において、筒状継手10は、内周面に鋼管周方向に沿って、二条の内向き溝部15が備えられている。しかし、両軸状継手20には、それぞれ一条の外向き溝部25が備えられている。筒状継手10には、適当な位置に、その外周面から内向き溝部15に連通する一又は複数の開口部16が備えられている。
【0060】
このような筒状継手10及び軸状継手20の構成であっても、
図2に示すような分割キー部材31を用いて、筒状継手10と軸状継手20とを抜け止め状態に連結することができる。キー溝部Gに分割キー部材31が配置された後は、
図11に示すように、蓋部材50によって開口部16が閉じられる。
【0061】
さらに、本発明に係る鋼管連結機構は、特許第4632911号公報に開示されるような、二つの柱状体を略同一の軸心上で互いに抜き差し不能に接合する柱状体の接合構造であって、前記二つの柱状体のうち一方の柱状体に設けられた軸状継手部と、前記二つの柱状体のうち他方の柱状体に設けられ、前記軸状継手部に外嵌自在な筒状継手部と、前記軸状継手部の外周に前記軸心の周方向に沿って設けられた軸側キー溝と、前記筒状継手部の内周に前記周方向に沿って設けられるとともに、前記軸状継手部に前記筒状継手部を外嵌したときに前記軸側キー溝と対向する筒側キー溝と、前記軸側キー溝と前記筒側キー溝とにわたるように、前記筒状継手部の外側から前記軸心に直交する方向に沿って抜き差し自在なキーと、前記キーの抜き差し方向に直交する方向に沿って、前記軸状継手部及び筒状継手部のいずれか一方に形成された保持穴と、前記保持穴に対して回転させることなく抜き差し自在であって、前記キーの抜け出し側の端部に当接して前記キーの抜け出しを防止するピンと、を備えた柱状体の接合構造にも適用することもできる。
【0062】
すなわち、特許第4632911号公報の
図1に示されるようなヤットコにも適用することができ、この場合は、各キーや、各キーの抜け止めを防止するピンのうち開口部内に位置する部分に、鋼管軸心X方向に荷重を伝達しない非伝達機構が備えられていればよい。開口部が存在しているため鋼管周方向のうち剛性が低い箇所に対応する部分に、鋼管軸心方向の荷重を伝達しない非伝達機構を備えているため、鋼管軸心方向の荷重は該部分において伝達されず該部分に変形を生じる虞がない。
【0063】
上述した実施形態は、いずれも本発明の一例であり、該記載により本発明が限定されるものではなく、各部の具体的構成は本発明の作用効果が奏される範囲で適宜変更設計可能である。