特許第6739304号(P6739304)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6739304
(24)【登録日】2020年7月27日
(45)【発行日】2020年8月12日
(54)【発明の名称】燃料供給装置
(51)【国際特許分類】
   F04D 5/00 20060101AFI20200730BHJP
   F02M 37/08 20060101ALI20200730BHJP
【FI】
   F04D5/00 L
   F02M37/08 E
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-185473(P2016-185473)
(22)【出願日】2016年9月23日
(65)【公開番号】特開2018-48612(P2018-48612A)
(43)【公開日】2018年3月29日
【審査請求日】2019年3月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000141901
【氏名又は名称】株式会社ケーヒン
(74)【代理人】
【識別番号】110002192
【氏名又は名称】特許業務法人落合特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木村 洋介
【審査官】 冨永 達朗
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−035291(JP,A)
【文献】 特開平04−262053(JP,A)
【文献】 実開平01−118187(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 5/00
F02M 37/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インペラ(9)を有するウエスコポンプ(5)と、前記インペラ(9)に同軸かつ相対回転不能に連結される回転軸(25)に円筒状の磁極部材(24)が同軸に結合されて成るロータ(19)ならびに該ロータ(19)を同軸に囲繞するステータ(18)を有するブラシレスモータ(6)とが、円筒状のハウジング(7)内に収容され、前記ウエスコポンプ(5)の燃料送出ポート(33)から送出される燃料を流通させる燃料通路(35)が前記ロータ(19)および前記ステータ(18)間に形成される燃料供給装置において、
前記ステータ(18)の前記ウエスコポンプ(5)側の端部内に、前記燃料送出ポート(33)からの燃料を前記燃料通路(35)側に導く中継通路(40)が、横断面形状を環状としつつ前記ロータ(19)と同軸に形成され、その中継通路(40)の少なくとも前記ロータ(19)側の端部の外周直径(DA)が前記ロータ(19)の外径(DB)よりも小さく設定され
前記ステータ(18)が、ステータコア(15)と、そのステータコア(15)にボビン(17)を介して巻装されるコイル(16)と、そのコイル(16)を被覆する樹脂製の被覆部(21,22)とを有し、
前記中継通路(40)の外周を規定する円筒部(41a)を少なくとも有して前記被覆部(21,22)とは別部材として形成される樹脂製の通路形成部材(41)が、前記ステータ(18)の前記ウエスコポンプ(5)側の端部に嵌合されることを特徴とする燃料供給装置。
【請求項2】
インペラ(9)を有するウエスコポンプ(5)と、前記インペラ(9)に同軸かつ相対回転不能に連結される回転軸(25)に円筒状の磁極部材(24)が同軸に結合されて成るロータ(19)ならびに該ロータ(19)を同軸に囲繞するステータ(18)を有するブラシレスモータ(6)とが、円筒状のハウジング(7)内に収容され、前記ウエスコポンプ(5)の燃料送出ポート(33)から送出される燃料を流通させる燃料通路(35)が前記ロータ(19)および前記ステータ(18)間に形成される燃料供給装置において、
前記ステータ(18)の前記ウエスコポンプ(5)側の端部内に、前記燃料送出ポート(33)からの燃料を前記燃料通路(35)側に導く中継通路(40)が、横断面形状を環状としつつ前記ロータ(19)と同軸に形成され、その中継通路(40)の少なくとも前記ロータ(19)側の端部の外周直径(DA)が前記ロータ(19)の外径(DB)よりも小さく設定され、
前記中継通路(40)の外周直径が、前記ロータ(19)側に向かうにつれて次第に小さくなるように設定されることを特徴とする燃料供給装置。
【請求項3】
インペラ(9)を有するウエスコポンプ(5)と、前記インペラ(9)に同軸かつ相対回転不能に連結される回転軸(25)に円筒状の磁極部材(24)が同軸に結合されて成るロータ(19)ならびに該ロータ(19)を同軸に囲繞するステータ(18)を有するブラシレスモータ(6)とが、円筒状のハウジング(7)内に収容され、前記ウエスコポンプ(5)の燃料送出ポート(33)から送出される燃料を流通させる燃料通路(35)が前記ロータ(19)および前記ステータ(18)間に形成される燃料供給装置において、
前記ステータ(18)の前記ウエスコポンプ(5)側の端部内に、前記燃料送出ポート(33)からの燃料を前記燃料通路(35)側に導く中継通路(40)が、横断面形状を環状としつつ前記ロータ(19)と同軸に形成され、その中継通路(40)の少なくとも前記ロータ(19)側の端部の外周直径(DA)が前記ロータ(19)の外径(DB)よりも小さく設定され、
前記ロータ(19)の前記ウエスコポンプ(5)側の端面中央部に、環状凹部(42)が同軸に形成されることを特徴とする燃料供給装置。
【請求項4】
前記ロータ(19)の前記ウエスコポンプ(5)側の端面中央部に、環状凹部(42)が同軸に形成されることを特徴とする請求項1または2に記載の燃料供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インペラを有するウエスコポンプと、前記インペラに同軸かつ相対回転不能に連結される回転軸に円筒状の磁極部材が同軸に結合されて成るロータならびに該ロータを同軸に囲繞するステータを有するブラシレスモータとが、円筒状のハウジング内に収容され、前記ウエスコポンプの燃料送出ポートから送出される燃料を流通させる燃料通路が前記ロータおよび前記ステータ間に形成される燃料供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ウエスコポンプと、そのウエスコポンプを駆動するブラシレスモータとが円筒状のハウジング内に収容され、ブラシレスモータにおけるステータの内周およびロータの外周間に燃料通路が形成されるようにした燃料供給装置が、特許文献1で知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−116767号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1で開示されるもののように、ウエスコポンプから送出される燃料を流通させる燃料通路が、ブラシレスモータにおけるロータおよびステータ間に形成される構成の燃料供給装置では、ウエスコポンプから導かれる燃料に鉄粉が混入している場合には、ロータおよびステータ間の燃料通路に鉄粉が噛み込む可能性がある。そのような状態が生じるのを回避するために、ロータおよびステータ間の燃料通路の通路面積を拡げたり、ブラシレスモータの外周およびハウジングの内周間に燃料通路を形成しようとすると、ハウジングの直径が大きくなり、燃料供給装置の大型化を招いてしまう。
【0005】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、ハウジングの外径を大きくすることなく鉄粉がロータおよびステータ間の燃料通路に噛み込むことを抑制し得るようにした燃料供給装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、インペラを有するウエスコポンプと、前記インペラに同軸かつ相対回転不能に連結される回転軸に円筒状の磁極部材が同軸に結合されて成るロータならびに該ロータを同軸に囲繞するステータを有するブラシレスモータとが、円筒状のハウジング内に収容され、前記ウエスコポンプの燃料送出ポートから送出される燃料を流通させる燃料通路が前記ロータおよび前記ステータ間に形成される燃料供給装置において、前記ステータの前記ウエスコポンプ側の端部内に、前記燃料送出ポートからの燃料を前記燃料通路側に導く中継通路が、横断面形状を環状としつつ前記ロータと同軸に形成され、その中継通路の少なくとも前記ロータ側の端部の外周直径が前記ロータの外径よりも小さく設定され、前記ステータが、ステータコアと、そのステータコアにボビンを介して巻装されるコイルと、そのコイルを被覆する樹脂製の被覆部とを有し、前記中継通路の外周を規定する円筒部を少なくとも有して前記被覆部とは別部材として形成される樹脂製の通路形成部材が、前記ステータの前記ウエスコポンプ側の端部に嵌合されることを第1の特徴とする。
【0007】
また本発明は、インペラを有するウエスコポンプと、前記インペラに同軸かつ相対回転不能に連結される回転軸に円筒状の磁極部材が同軸に結合されて成るロータならびに該ロータを同軸に囲繞するステータを有するブラシレスモータとが、円筒状のハウジング内に収容され、前記ウエスコポンプの燃料送出ポートから送出される燃料を流通させる燃料通路が前記ロータおよび前記ステータ間に形成される燃料供給装置において、前記ステータの前記ウエスコポンプ側の端部内に、前記燃料送出ポートからの燃料を前記燃料通路側に導く中継通路が、横断面形状を環状としつつ前記ロータと同軸に形成され、その中継通路の少なくとも前記ロータ側の端部の外周直径が前記ロータの外径よりも小さく設定され、前記中継通路の外周直径が、前記ロータ側に向かうにつれて次第に小さくなるように設定されることを第2の特徴とする。
【0008】
本発明は、インペラを有するウエスコポンプと、前記インペラに同軸かつ相対回転不能に連結される回転軸に円筒状の磁極部材が同軸に結合されて成るロータならびに該ロータを同軸に囲繞するステータを有するブラシレスモータとが、円筒状のハウジング内に収容され、前記ウエスコポンプの燃料送出ポートから送出される燃料を流通させる燃料通路が前記ロータおよび前記ステータ間に形成される燃料供給装置において、前記ステータの前記ウエスコポンプ側の端部内に、前記燃料送出ポートからの燃料を前記燃料通路側に導く中継通路が、横断面形状を環状としつつ前記ロータと同軸に形成され、その中継通路の少なくとも前記ロータ側の端部の外周直径が前記ロータの外径よりも小さく設定され、前記ロータの前記ウエスコポンプ側の端面中央部に、環状凹部が同軸に形成されることを第3の特徴とする。
【0009】
さらに本発明は、第1またはの特徴の構成に加えて、前記ロータの前記ウエスコポンプ側の端面中央部に、環状凹部が同軸に形成されることを第4の特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の第1の特徴によれば、ロータの外周およびステータの内周間に燃料通路が形成され、ウエスコポンプの燃料送出ポートから送出される燃料を燃料通路側に導く中継通路が、横断面形状を環状としつつロータと同軸にしてステータのウエスコポンプ側の端部内に形成され、その中継通路の少なくともロータ側の端部の外周直径がロータの外径よりも小さいので、中継通路を流通する燃料はクランク状に屈曲した経路を経て燃料通路側に流れることになり、鉄粉が燃料に混入していたとしても、その鉄粉はロータのウエスコポンプ側の端面に当たるので、ロータの磁力を利用してロータのウエスコポンプ側の端面で鉄粉を捕集することが可能となる。このためロータの外周およびステータの内周間の燃料通路の流通面積を大きくするような冗長設計や、ブラシレスモータの外周およびハウジングの内周間に燃料通路を形成したりすることを不要とし、小型で効率のよい燃料供給装置を実現することができる。また、中継通路の外周を規定する円筒部を少なくとも有する樹脂製の通路形成部材が、ステータのウエスコポンプ側の端部に嵌合されるので、ステータにおける被覆部の内径が中継通路の外周を規定するようにしてロータの外径よりも小さくなることを不要として、前記被覆部の内周を型成形する際の型抜きを容易とすることができる。
【0012】
本発明の第の特徴によれば、中継通路の外周直径がロータ側に向かうにつれて次第に小さくなるので、中継通路を燃料が流通することによる圧力損失の増加を抑えることができる。
【0013】
さらに本発明の第3および第4の特徴によれば、ロータのウエスコポンプ側の端面中央部に形成される環状凹部内に、ロータの磁力を利用して捕集した鉄粉を溜めるようにして、鉄粉が燃料通路側に流れることを効果的に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】燃料供給装置の縦断面図である。
図2図1の要部拡大図である。
図3】磁極部材を型成形するための金型装置の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施の形態について図1図3を参照しながら説明すると、先ず図1において、この燃料供給装置は、ウエスコポンプ5と、そのウエスコポンプ5を駆動するブラシレスモータ6とが、中空の円筒状である共通のハウジング7に収容、結合されて成る。
【0016】
前記ウエスコポンプ5は、放射状の多数の溝8を外周に有するインペラ9と、そのインペラ9の外周を臨ませるようにして円弧状に延びるポンプ室10を有して前記インペラ9を回転可能に収納するポンプケース11とを備える。前記ポンプケース11は、外側ケース半体12と、内側ケース半体13とで分割構成されており、外側ケース半体12および内側ケース半体13間に前記インペラ9が介装されるとともに前記ポンプ室10が画成される。
【0017】
前記ポンプケース11は、軸方向外方に臨んで前記ハウジング7の内面に形成される環状段部7aと、前記ハウジング7の一端部に形成される第1のかしめ加工部7bとで挟持されるようにして、前記ハウジング7の一端部に収容される。
【0018】
前記ブラシレスモータ6は、ステータコア15ならびにボビン17を介して前記ステータコア15に巻装されるコイル16を備えるステータ18と、そのステータ18内に配置されるロータ19とを有し、前記ステータコア15は、複数枚の電磁鋼板14が積層状態で相互に結合されて成る。
【0019】
前記ステータ18の軸方向両端部は樹脂製である第1および第2の被覆部21,22で覆われており、前記ブラシレスモータ6は、前記ウエスコポンプ5の前記ポンプケース11と、前記第1の被覆部21との間に円盤状のスペーサ23を介在させて前記ハウジング7に挿入され、前記ハウジング7の他端部に形成される第2のかしめ加工部7cを第2の被覆部22に係合することで、前記ブラシレスモータ6が前記ハウジング7に内蔵される。
【0020】
前記ロータ19は、周方向に複数の磁極に着磁される円筒状の磁極部材24が回転軸25に同軸にかつ相対回転不能に連結されて成るものであり、樹脂および磁粉が混合されて成る混合材料製である前記磁極部材24が前記回転軸25のインサート成形で形成される。
【0021】
前記回転軸25の一端部は、前記ポンプケース11との間に第1の滑り軸受29を介在させて前記ポンプケース11内に突入される。前記ポンプケース11内で前記回転軸25にインペラ9が相対回転不能に連結されるものであり、この実施の形態では、前記インペラ9の中央部には非円形の取付け孔30が設けられ、前記インペラ9に対応する部分で前記回転軸25の一端部には、前記取付け孔30の断面形状に対応した断面形状の非円形部25aが設けられる。前記非円形部25aが前記取付け孔30に挿入されることで、前記インペラ9が前記回転軸25の多少の傾きを許す程度の遊びを持って前記回転軸25に相対回転不能に連結され、前記ポンプケース11の前記外側ケース半体12および前記内側ケース半体13で前記インペラ9の軸方向に沿う移動が阻止される。
【0022】
ところで前記磁極部材24は、複数枚の電磁鋼板14が積層状態で相互に結合されて成る前記ステータコア15に対して前記ウエスコポンプ5とは反対側に所定量オフセットされた位置で前記回転軸25に固定される。これにより、前記ロータ19には前記磁極部材24の磁力によって前記ステータコア15の軸方向中央部に戻ろうとする方向すなわち前記ウエスコポンプ5側に付勢されることになり、前記回転軸25の一端部は、前記ポンプケース11における前記外側ケース半体12の内面に摺接され、前記ロータ19の軸方向位置が定まることになる。
【0023】
前記ステータ18の軸方前記ステータす15前記ポンプケース11の前記内側ケース半体13には、前記回転軸25を同軸に囲繞する円筒状の軸受ハウジング13aが一体に設けられており、その軸受ハウジング13aおよび前記回転軸25間に、第1の滑り軸受29が介装される。また前記回転軸25の他端部は、第2の被覆部22に第2の滑り軸受31を介して回転自在に支持される。
【0024】
前記ポンプケース11における前記外側ケース半体12には、前記ポンプ室10の周方向一端部に通じる吸込ポート32が設けられ、前記内側ケース半体13には、前記ポンプ室10の周方向他端部に通じるとともに前記ブラシレスモータ6側に燃料を送出する燃料送出ポート33が設けられる。しかも外側ケース半体12には、前記吸込ポート32に直接連通する円筒状の吸込管12aが外向きに一体に突設されるとともに、ポンプケース11内でのポンプ作用に伴って生じた気泡を排出するための脱気孔34が形成される。
【0025】
前記ブラシレスモータ6における前記ロータ19の外周および前記ステータ18の内周間には、前記燃料送出ポート33に通じる燃料通路35が形成され、第2の被覆部22には、前記燃料通路35に通じるようにしつつ前記第2の滑り軸受31の周囲に配置される複数の通路孔36が設けられ、第2の被覆部22には、前記通路孔36に通じる燃料出口室37が形成される。しかも第2の被覆部22には、ポンプ作動時に高圧燃料を吐出するための円筒状の吐出管22aが一体に突設され、その吐出管22a内には、前記燃料出口室37から前記吐出管22aの先端の燃料吐出口38側へのみ燃料の流動を許容する逆流防止用のチェック弁39が収納される。
【0026】
ところで前記ロータ19の外周および前記ステータ18の内周間には、前記ウエスコポンプ5の燃料送出ポート33から送出される燃料を流通させる燃料通路35が形成されるのであるが、前記ステータ18の前記ウエスコポンプ5側の端部内には、前記ウエスコポンプ5の前記燃料送出ポート33からの燃料を前記燃料通路35側に導く中継通路40が、横断面形状を環状としつつ前記ロータ19と同軸に形成される。
【0027】
前記ステータ18の前記ウエスコポンプ5側の端部には、前記ステータ18における前記第1の被覆部21とは別部材として形成される樹脂製の通路形成部材41が嵌合され、前記中継通路40は、前記通路形成部材41と、前記ウエスコポンプ5における前記内側ケース半体13の軸受ハウジング13aとの間で環状に形成される。
【0028】
図2を併せて参照して、前記通路形成部材41は、前記中継通路40の外周を規定する円筒部41aを少なくとも有するように形成される。この実施の形態で前記通路形成部材41は、前記円筒部41aと、その円筒部41aの前記ウエスコポンプ5側の端部から半径方向外方に張り出す鍔部41bとを一体に有するように形成されており、前記円筒部41aが、前記ステータ18の前記ウエスコポンプ5側の端部に嵌合された状態で前記鍔部41bは、前記ステータ18における前記第1の被覆部21に前記ウエスコポンプ5側から当接、係合する。また前記円筒部41aの前記ウエスコポンプ5側の端部および前記鍔部41bの連設部の内周面には、燃料の流通を円滑化するための円弧状の湾曲部41cが形成される。
【0029】
ところで前記中継通路40の少なくとも前記ロータ19側の端部の外周直径DAが前記ロータ19の外径DBよりも小さく設定されるものであり、前記中継通路40の外周直径すなわち前記円筒部41aの内周直径は前記ロータ19側に向かうにつれて次第に小さくするように設定され、前記円筒部41aの内周面は、この実施の形態では前記ロータ19側を小径端としてテーパ状に形成されるが、漏斗状であってもよい。
【0030】
一方、前記ロータ19の前記ウエスコポンプ5側の端面中央部、すなわち前記ロータ19における磁極部材24の前記ウエスコポンプ5側の端面中央部に環状凹部42が同軸に形成され、その環状凹部42の形成によって、前記磁極部材24の前記ウエスコポンプ5側の端部外周には、前記環状凹部42の外周を規定する環状壁部24aが前記ウエスコポンプ5側に突出するように形成される。なお前述したようにロータ19は前記ステータコア15に対して前記ウエスコポンプ5とは反対側に所定量オフセットされているが、通電時に磁気を帯びるステータコア15に燃料流が直接当たることを回避するために、前記環状壁部24aは、前記ステータコア15の前記ウエスコポンプ5側の端部内周を半径方向内側から覆い隠すように形成されている。
【0031】
ところで前記磁極部材24は、図3で示すような金型装置43によって前記回転軸25のインサート成形で形成されるものであり、前記金型装置43は、前記磁極部材24に対応したキャビティ44を相互間に形成する第1および第2金型45,46を有しており、第1金型45は、前記磁極部材24の前記ウエスコポンプ5とは反対側の形状に応じた有底孔47を有するように形成され、第2金型46は、前記磁極部材24の前記ウエスコポンプ5側の端部を形成する形状を有して前記有底孔47に嵌合される嵌合突部48を有するように形成される。
【0032】
前記嵌合突部48は、前記磁極部材24における前記環状壁部24aの前記ウエスコポンプ5側の突出端面を形成するようにして前記有底孔41の開口部に嵌合されるようにした環状の嵌合部分48aと、前記環状凹部42に対応した形状を有して前記嵌合部分48aの中央部から突出する中央凸部分48bとを有するように形成される。
【0033】
第2金型46には、樹脂および磁粉が混合されて成るとともに加熱溶融された混合材料を前記キャビティ44内に射出するための複数の射出口49が設けられる。また第1金型45には、射出成形完了後に成形品を押し出すための複数のエジェクトピン50が軸方向移動可能に挿入される。このエジェクトピン50の外周および第1金型45間には、射出成形時に前記キャビティ44で生じる気泡を抜くための気泡抜き用の通路(エアベント)が構成されていることが望ましい。
【0034】
この金型装置によれば、第2金型46の前記嵌合突部48における嵌合部分48aの外周面が、前記有底孔47の内周面に接触する部分がパーティングライン51となり、そのパーティングライン51に起因するバリ(図示せず)は、前記磁極部材24の軸方向両端部のうち前記ウエスコポンプ5側の端部の外周から前記磁極部材24の外周面と面一として軸方向外方に突出することになる。
【0035】
次にこの実施の形態の作用について説明すると、ウエスコポンプ5の燃料送出ポート33から送出される燃料を流通させる燃料通路35がブラシレスモータ6のロータ19およびステータ18間に形成されるのであるが、ブラシレスモータ6におけるステータ15のウエスコポンプ5側の端部内に、燃料送出ポート33からの燃料を前記燃料通路35側に導く中継通路40が、横断面形状を環状としつつ前記ロータ19と同軸に形成され、その中継通路40の少なくとも前記ロータ19側の端部の外周直径DAが前記ロータ19の外径DBよりも小さく設定されるので、中継通路40を流通する燃料はクランク状に屈曲した経路を経て燃料通路35側に流れることになり、鉄粉が燃料に混入していたとしても、その鉄粉はロータ19のウエスコポンプ5側の端面に当たるので、ロータ19の磁力を利用してロータ19のウエスコポンプ5側の端面で鉄粉を捕集することが可能となる。このためロータ19の外周およびステータ18の内周間の燃料通路35の流通面積を大きくするような冗長設計や、ブラシレスモータ6の外周およびハウジング7の内周間に燃料通路を形成したりすることを不要とし、小型で効率のよい燃料供給装置を実現することができる。
【0036】
しかもロータ19の磁極部材24を型成形する際に図3で示すような金型装置43を用いることにより、パーティングライン51に起因するバリが磁極部材24の軸方向両端部のうちウエスコポンプ5側の端部の外周から前記磁極部材24の外周面と面一として軸方向外方に突出することになるので、前記バリが前記燃料通路35側にはみ出すことで燃料通路35の通路面積が減少してしまうことを防止することができ、燃料中の鉄粉をロータ19のウエスコポンプ5側の端面側に保持する機能を前記バリが果たすことになる。
【0037】
またステータ18が、ステータコア15と、そのステータコア15にボビン17を介して巻装されるコイル16と、そのコイル16を被覆する樹脂製の第1および第2の被覆部21,22とを有し、前記中継通路40の外周を規定する円筒部41aを少なくとも有して前記第1の被覆部21とは別部材として形成される樹脂製の通路形成部材41が、前記ステータ18の前記ウエスコポンプ5側の端部に嵌合されるので、ステータ18における第1の被覆部21の内径が中継通路40の外周を規定するようにしてロータ19の外径よりも小さくなることを不要として、前記第1の被覆部21の内周を型成形する際の型抜きを容易とすることができる。
【0038】
また前記中継通路40の外周直径が、前記ロータ19側に向かうにつれて次第に小さくなるように設定されるので、中継通路40を燃料が流通することによる圧力損失の増加を抑えることができる。
【0039】
さらに前記ロータ19の前記ウエスコポンプ5側の端面中央部に、環状凹部42が同軸に形成されるので、前記ロータ19の前記ウエスコポンプ5側の端面中央部に形成される環状凹部42内に、前記ロータ19の磁力を利用して捕集した鉄粉を溜めるようにして、鉄粉が前記燃料通路35側に流れることを効果的に防止することができる。
【0040】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明を逸脱することなく種々の設計変更を行うことが可能である。
【符号の説明】
【0041】
5・・・ウエスコポンプ
6・・・ブラシレスモータ
7・・・ハウジング
9・・・インペラ
15・・・ステータコア
16・・・コイル
17・・・ボビン
18・・・ステータ
19・・・ロータ
21,22・・・被覆部
24・・・磁極部材
25・・・回転軸
33・・・燃料送出ポート
35・・・燃料通路
40・・・中継通路
41・・・通路形成部材
41a・・・円筒部
42・・・環状凹部
DA・・・中継通路の少なくともロータ側の端部の外周直径
DB・・・ロータの外径
図1
図2
図3