特許第6739332号(P6739332)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6739332
(24)【登録日】2020年7月27日
(45)【発行日】2020年8月12日
(54)【発明の名称】吸入器
(51)【国際特許分類】
   A61M 15/00 20060101AFI20200730BHJP
【FI】
   A61M15/00 Z
【請求項の数】10
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-524821(P2016-524821)
(86)(22)【出願日】2014年7月10日
(65)【公表番号】特表2016-539677(P2016-539677A)
(43)【公表日】2016年12月22日
(86)【国際出願番号】EP2014064799
(87)【国際公開番号】WO2015004227
(87)【国際公開日】20150115
【審査請求日】2017年7月6日
(31)【優先権主張番号】PA201370395
(32)【優先日】2013年7月12日
(33)【優先権主張国】DK
(73)【特許権者】
【識別番号】516012324
【氏名又は名称】リイタ ホールディングス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(72)【発明者】
【氏名】オート マルティン
(72)【発明者】
【氏名】ポースティアン イェッペ
(72)【発明者】
【氏名】イェンセン ソレン ディリング
【審査官】 鈴木 洋昭
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第5699789(US,A)
【文献】 特開平5−103835(JP,A)
【文献】 特表2001−527442(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/076682(WO,A1)
【文献】 独国特許出願公開第102007053590(DE,A1)
【文献】 特表2008−510543(JP,A)
【文献】 特表2003−509172(JP,A)
【文献】 特開平9−322938(JP,A)
【文献】 米国特許第5161524(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向に使用者の口に挿入するための近位端(P)と、前記近位端(P)の反対側にある遠位端(D)とを有し、吸入器(1)が入口(4)と、前記近位端(P)に配置される出口(5)と、前記入口(4)から前記出口(5)まで延在する通気道(10、11、12、13)と、放出オリフィス(6)を通り前記通気道(10、11、12、13)と連通するリザーバ(8)であって、分散性物質を含有する前記リザーバ(8)とを備え、前記吸入器(1)が前記出口(5)を備える近位部分(2)と前記近位部分(2)に取り付けられた遠位部分(3)とを有し、前記近位部分(2)が、前記近位部分(2)が前記遠位部分(3)から展開される「開放」位置と、前記近位部分(2)が前記遠位部分(3)に向かって引き込まれる「閉鎖」位置との間で前記遠位部分(3)に対して前記軸方向(A)に沿って直線的に摺動可能であり、前記吸入器(1)が、入口弁部材(14)及び出口弁部材(15)を更に備え、
前記リザーバ(8)が前記近位部分(2)に配置され、
前記入口(4)が、前記近位部分(2)の周辺筐体壁部(20)に設けられた1つ以上の開口部であって、半径方向に外向きの、前記軸方向(A)から離れた前記1つ以上の開口部を備え、前記入口弁部材(14)が、前記近位部分(2)が前記「閉鎖」位置にあるときに前記開口部を塞ぐ前記遠位部分(3)の周辺筐体壁部(30)によって形成され、
前記出口(5)が軸方向に配向された開口部を備え、
前記出口弁部材(15)が前記遠位部分(3)に取り付けられたプラグとして形成され、前記プラグは、前記近位部分(2)が前記「閉鎖」位置にあるとき前記出口(5)を遮断し、
前記放出オリフィス(6)が前記軸方向(A)に配向し、
前記吸入器(1)が、リザーバ弁部材(16)をさらに備え、前記リザーバ弁部材(16)が、前記軸方向(A)に移動する栓として形成され、前記栓は、軸方向に延在する茎部を介して前記遠位部分(3)に固定され、前記栓は、前記近位部分(2)が前記「閉鎖」位置にあるとき、前記放出オリフィス(6)を遮断し、
前記入口弁部材(14)、出口弁部材(15)、及びリザーバ弁部材(16)が、前記近位部分(2)が前記「開放」位置から前記「閉鎖」位置まで前記軸方向に沿って前記遠位部分に向かって引き込まれるときに、前記入口(4)、前記出口(5)、及び前記放出オリフィス(6)を同時に閉鎖するように配置され、かつ前記近位部分(2)が前記「閉鎖」位置から前記「開放」位置まで前記軸方向に沿って前記遠位部分から展開されるときに前記入口(4)を同時に開放し、前記出口(5)を開放し、前記リザーバ(8)から前記放出オリフィス(6)を通り前記通気道(10、11、12、13)までいくらかの前記分散性物質を届けるように配置される、吸入器(1)。
【請求項2】
前記遠位部分(3)が、前記近位端(P)にある前記出口弁部材(15)から前記遠位端(D)まで前記軸方向(A)に延在する中心シャフト(31)を備え、前記軸方向(A)に沿って移動するためにリニア摺動ベアリング(24、25)によって前記近位部分(2)に繋がる、請求項1に記載の吸入器。
【請求項3】
前記栓が、第1の密封領域、投与ボリュームを画定する凹部(18、19)領域、及び第2の密封領域によって投与針として成形され、前記近位部分(2)が前記「閉鎖」位置にあるとき、前記第1の密封領域が前記放出オリフィス(6を遮断し、かつ前記凹部領域が前記リザーバ(8と連通し、そして、前記近位部分(2)が前記「開放」位置にあるとき、前記第2の密封領域が前記放出オリフィス(6を遮断し、かつ前記凹部領域が前記通気道(11)と連通する、請求項1または2に記載の吸入器。
【請求項4】
前記近位部分(2)が、更なるリザーバ(9)を備え、前記更なるリザーバ(9)が、前記近位部分(2)に配置され、前記軸方向(A)に配向する更なる放出オリフィス(7)を通り前記通気道(10、11、12、13)と連通し、前記更なるリザーバ(9)が更なる分散性物質を備え、かつ前記遠位部分(3)が、更なるリザーバ弁部材(17)を備え、前記更なるリザーバ弁部材(17)が、前記軸方向(A)に移動する栓として形成され、前記栓は、軸方向に延在する茎部を介して前記遠位部分(3)に固定され、前記栓は、前記近位部分(2)が前記「閉鎖」位置にあるとき、前記放出オリフィス(7)を遮断し、前記更なるリザーバ弁部材(17)が、前記入口弁部材(14)及び出口弁部材(15)と共に、前記近位部分(2)が前記「開放」位置から前記「閉鎖」位置まで前記軸方向に沿って前記遠位部分に向かって引き込まれるときに、前記入口(4)、前記出口(5)、及び前記更なる放出オリフィス(7)を同時に閉鎖するように配置され、かつ前記近位部分(2)が前記「閉鎖」位置から前記「開放」位置まで前記軸方向に沿って前記遠位部分から展開されるときに前記入口(4)を同時に開放し、前記出口(5)を開放し、前記更なるリザーバ(9)から前記更なる放出オリフィス(7)を通り前記通気道(11)までいくらかの前記更なる分散性物質を届けるように配置される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の吸入器。
【請求項5】
前記分散性物質が、ハロセラピーに好適な塩である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の吸入器。
【請求項6】
前記分散性物質が、ハロセラピーに好適な微粉化された塩である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の吸入器。
【請求項7】
前記分散性物質が、微粉化されたNaClである、請求項1〜6のいずれか一項に記載の吸入器。
【請求項8】
前記分散性物質が1μmと10μmとの間の範囲の粒径を有する個体粒子の粉末である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の吸入器。
【請求項9】
前記分散性物質が、1μmと5μmとの間の範囲の粒径を有する個体粒子の粉末である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の吸入器。
【請求項10】
前記中心シャフト(31)が、出口弁部材(15)と、サイドブランチにおいてリザーバ弁部材(16、17)とを携行する、請求項2に記載のまたは請求項2に従属するときの請求項3〜9のいずれか一項に記載の吸入器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸方向に使用者の口に挿入するための近位端と近位端の反対側にある遠位端とを有する吸入器であって、吸入器が入口と、近位端に配置された出口と、入口から出口まで延在する通気道と、放出オリフィスを通り通気道と車通するリザーバであって、分散性物質を含有するリザーバとを備える、吸入器に関する。使用者は、通気道を通じて呼吸をすることによって分散性物質を吸入し、分散性物質が、空気流に分散され、吸入可能なエアゾールを形成する。特定の態様において、本発明は、ハロセラピーのための吸入器に関する。
【背景技術】
【0002】
ハロセラピーは、呼吸状態の症状及び不快感を和らげるための薬物を用いない治療である。コアエレメントとして、ハロセラピーは、典型的に空気中の微粉化された塩分散されるエアゾールとして、使用者による塩粒子の吸入を含む。かかる治療は、相当な合併症を起こさずに適用され、従って、エンドユーザ/消費者市場での販売に好適であるが、かかる治療の広範囲にわたる使用は、「外出中の」ハロセラピーのユーザフレンドリーな投与のための安価に入手可能なパッケージの不足によって依然として妨げられている。更に、エンドユーザ/消費者市場での製品の容認は、通常、デザイン及び外観に非常に敏感である。吸入器の場合、市場により指示されるかかる制約は、容易かつ個別に投与することを可能にする技術的構成を意味する。医薬品の投与のための多数の吸入器が知られている。しかしながら、全てのこれらの吸入器は、通常、厳密な投与のために考案されており、複雑で、生産コストが高く、扱いにくいものである。同様に、公共スペースにおいて投与が望まれる場合がある個別使用は、通常、容易に可能ではない。従って、容易に個別に使用でき、エンドユーザ/消費者市場における商業化に好適である低コストの吸入器における必要性がある。
【発明の概要】
【0003】
本物体は、請求項1に記載の吸入器によって達成される。有利な実施形態は、従属請求項及び下記の説明に詳述されている。
【0004】
本発明の第1の態様は、軸方向に使用者の口に挿入するための近位端と、近位端の反対側にある遠位端とを有する吸入器に関し、吸入器が、入口と、近位端に配置された出口と、入口から出口まで延在する通気道と、放出オリフィスを通り通気道と車通するリザーバであって、分散性物質を含有するリザーバとを備え、吸入器が、出口を備える近位部分と近位部分に取り付けられた遠位部分とを有し、近位部分が「開放」位置と「閉鎖」位置との間の遠位部分に対して前記軸方向に摺動可能であり、吸入器が、入口弁部材、出口弁部材、及びリザーバ弁部材を更に備え、前記入口、出口、及びリザーバ弁部材が、近位部分が「開放」位置から「閉鎖」位置に移動されるときに入口、出口、及び放出オリフィスを同時に閉鎖するように配置され、かつ近位部分が「閉鎖」位置から「開放」位置に移動されるときに入口を同時に開放し、出口を開放し、リザーバから放出オリフィスを通り通気道までいくらかの分散性物質を届けるように配置される。
【0005】
「分散性物質」という用語は、エアゾールを形成するために、空気中の粒子として少なくとも分散性である物質を指す。エアゾールは、分散相であり、粒子を備え、分散相を、連続気相(本発明の場合は空気である)中に懸濁させる。粒子は、個体粒子又は液滴であってもよい。
【0006】
好ましくは、吸入器は、近位部分が遠位部分から展開されるときに「開放」位置にある。展開位置において、近位部分及び遠位部分は、互いから離れるようにシフトする。更なる好ましくは、吸入器は、近位部分が遠位部分に向かって引き込まれるときに「閉鎖」位置にある。引込位置において、近位部分及び遠位部分は、共に移動される。最も好ましくは、近位部分は、遠位部分に対して軸方向に沿って直線的に摺動可能である。即ち、近位部分は、軸方向に沿ってリニア摺動移動によって展開され、引き込まれる。
【0007】
吸入器は、使用者によって片手で保持されるように形成され、寸法設定されている。好ましくは、吸入器は、使用者の手のひらに合うサイズである。好ましくは、使用者は、遠位部分周辺で把持することによって、かつ近位部分上で静止する親指を用いて吸入器を保持する。ここで、使用者は、遠位部分から遠ざかる軸方向に近位部分を押すことによって近位部分を展開し得る。上記に示された方法で保持すると、この移動は、典型的には、親指で近位部分に対して、遠位部分から遠ざかる方向に押すことによって実行される。一旦近位部分が展開されると、入口及び出口が開放され、従って、吸入器を通る通気道が開かれる。同時に、いくらかの分散性物質が、通気道に届けられる。親指の単純な移動によって、こうして、通気道が遮断を解除され、いくらかの分散性物質が吸入のために通気道において利用可能になる「開放」位置に吸入器が切り替えられる。ここで、吸入器は、活性化された状態であり、使用者は、出口のある吸入器の近位端を口に当て、息を吸い、それによって、通気道を介して空気を吸い込むことができる。空気流は、通気道中で利用可能ないくらかの分散性物質を搭載し、分散し、エアゾールが形成され、これは、使用者への吸入投与のために出口を通り解放される。吸入が終わった後、近位部分は、軸方向に沿った単純な摺動移動によって遠位部分内に容易に引き込まれ、それによって、「閉鎖」位置に近位部分を移動させる。上記に示された方法で保持すると、この移動は、例えば、近位部分上で静止する親指の単純な移動によって容易に実行され得る。「閉鎖」位置において、外側への全ての開口部は、閉鎖され、それによって、通気道、リザーバ、投与メカニズム、及び分散性物質を含む吸入器の内側を、例えば、ポケット又はバッグ内で輸送されるときの湿気、埃及び/又は泥の侵入による汚染から保護する。それによって、吸入器は、片手操作で個別に使用者によって実行することができる単純な移動によって操作可能である。
【0008】
更に吸入器の一実施形態に従って、リザーバは、近位部分に配置される。使用中、遠位部分は、近位部分が移動される間、典型的に使用者の手によって固定され状態に保たれる。近位部分にリザーバを置くことによって、リザーバは、例えば、近位部分を展開するときに吸入器の操作の結果として自動的に撹拌される。分散性物質が、それによって撹拌され、それによってリザーバから放出オリフィスを通り通気道までの分散性物質の引き渡し/移転を向上させる。具体的には、分散性物質が、特に共に詰まる傾向にある個体粒子の粉末の形態であるとき、これは、有利である。或いは、目詰まりは、リザーバ内の物質保管から通気道への正しい移転を阻止し、使用者の肺の中の意図されたターゲット領域に到達するのに好適な吸入可能なエアゾールを形成するように空気中の正しい分散を更に阻止し得る。
【0009】
有利なことに本発明の一実施形態に従って、入口及び出口の両方が近位部分に配置される。
【0010】
更に、吸入器の一実施形態に従って、入口は、近位部分の周辺筐体壁部に設けられた1つ以上の開口部であって、半径方向に外向きの、軸方向から離れた1つ以上の開口部を備え、入口弁部材は、近位部分が「閉鎖」位置にあるとき、開口部を覆う遠位部分の周辺筐体壁部によって形成される。周壁によって「閉鎖」位置において入口開口部を囲むことによって、輸送又は保管中の入口の向上した保護が達成され、それによって、製品周辺の衛生状態を向上させる。半径方向に外向きの、軸方向から離れた入口開口部を持つ横向きの位置は、空気流の少なくとも1つの方向を暗示する。これは、流入する空気流から固体又は液体の粒子状汚染物質を収集する衝突偏向器/バッフルを提供することができます。更に、方向の変化は、分散性物質の分散を向上させる乱気流を生成する。結果的に、この実施形態は、エアゾールの形態/品質を向上させ得る。
【0011】
更に吸入器の一実施形態に従って、出口は、軸方向に配向された開口部を備え、出口弁部材は、軸方向に延在する茎部を介して遠位部分に取り付けられたプラグであり、プラグは、近位部分が「閉鎖」位置にあるとき、出口を遮断する。軸方向から見られるように、吸入器の近位端に出口弁を配置すると、吸入器の容易な操作が促進される。
【0012】
更に吸入器の一実施形態に従って、遠位部分は、近位端にある出口弁部材から遠位端まで軸方向に沿って延在する中心シャフトを備え、中心シャフトは、軸方向に沿った移動のためのリニア摺動ベアリングによって近位部分にリンクされている。中心シャフトは、構成の「支柱」を提供し、それによって、構成を強化し、近位部分と遠位部分との間のリニア摺動結合の信頼性を向上させる。
【0013】
好ましくは、一実施形態に従って、中心シャフトは、出口弁部材と、サイドブランチにおいてリザーバ弁部材とを携行する。それによって、単純で頑丈な構成は、出口及びリザーバ弁を同時に操作するために提供される。出口弁は、出口を通じて、空気/エアゾールの流れを制御するために、出口と連携する出口弁部材によって形成される。リザーバ弁は、リザーバから通気道への分散性物質の引き渡し/移転を制御するために、放出オリフィスと連携するリザーバ弁部材によって形成される。
【0014】
有利なことに、一実施形態に従って、遠位部分に対する近位部分の移動/偏位を制限する機械的端部止め具が提供される。一実施形態において、機械的止め具は、近位部分上で保持エレメントと連携する遠位部分の中心シャフトのサイドブランチによって提供される。
【0015】
有利なことに、一実施形態に従って、遠位部分及び近位部分は、吸入器が「閉鎖」されている引込位置において近位部分を守るための窪部/溝と連携する、留め具、弾性固定部材、周辺に位置する凸部/周縁などの(これらに限定されないが)、「閉鎖」位置で互いに係合するための連携施錠手段を有する。
【0016】
更に吸入器の一実施形態に従って、放出オリフィスは、軸方向に配向され、リザーバ弁部材は、軸方向に移動する栓であって、軸方向に延在する茎部を介して遠位部分に固定される栓であり、栓は、近位部分が「閉鎖」位置にあるとき、放出オリフィスを遮断する。それによって、単一のリニア移動によって入口及び出口弁で同時に操作され得るリザーバ弁の単純なデザインが達成される。使用中の吸入器の典型的な配向は、上向きの方向に向いている近位端位置の出口を有する(即ち、近位端は、重力に関して遠位端より高く位置する)ことにも留意されたい。従って、この実施形態における近位部分にリザーバを置くことは、放出オリフィスが下方に向いている(重力に関して)ことを暗示する。具体的には、分散性物質が通常、下方にしたたり落ち、従って、重力に関して確認されるようにリザーバの底部に蓄積する個体粉末であるとき、これは有利である。
【0017】
更に吸入器の一実施形態に従って、栓は、第1の密封領域、投与ボリュームを画定する凹部領域、及び第2の密封領域を持つ投与針として成形され、第1の密封領域は、放出オリフィスを遮断しかつ凹部領域は、近位部分が「閉鎖」位置にあるときにリザーバと車通し、第2の密封領域は、放出オリフィスを遮断しかつ凹部領域は、近位部分が「開放」位置にあるときに通気道と車通する。リザーバ弁部材は、「開放」位置及び「閉鎖」位置の両方において放出オリフィスを密封するように成形され、寸法設定される。リザーバ弁部材は、投与ボリュームを確定する投与凹部を更に設けられる。投与ボリュームは、近位部分が引き込まれるとき、リザーバの内側に位置し、近位部分が展開されるとき、通気道に位置する。従って、投与ボリュームは、近位部分が「閉鎖」位置から「開放」位置まで移動するとき、リザーバの内側から放出オリフィスを通り通気道まで移動する。移動中に、投与ボリュームは、リザーバの内側又は通気道のいずれか(しかし、両方ではない)と車通するに過ぎず、それによって、汚染を避けるためにその環境から密封されたリザーバ内での分散性物質の保管を維持する移転施錠を提供する一方で、気流の分散のために通気道へ定義されたいくらかの分散性物質を移転する。
【0018】
更に吸入器の一実施形態に従って、近位部分は、更なる放出オリフィスと共に更なるリザーバを備え、更なるリザーバは、更なる分散性物質を備え、遠位部分は、更なるリザーバ弁部材を備え、前記更なるリザーバ弁部材は、近位部分が「開放」位置から「閉鎖」位置へ移動されるとき、更なる放出オリフィスを閉鎖するように、かつ近位部分「閉鎖」位置から「開放」位置に移動されるとき、更なるリザーバから更なる放出オリフィスを通り通気道までいくらかの更なる分散性物質を届けるように配置される。追加のリザーバを提供することによって、いくつかの利点が達成される。第一に、向上したエアゾール形態は、2箇所で、別個の引き渡しメカニズムから空気流まで分散性物質を提供することによって達成される。
【0019】
この利点は、2つの空気流の逆流を生成することによって更に高められ、各々が、通気道内の異なる場所からのいくらかの分散性物質を搭載する。例えば、通気道の第1のブランチは、入口の第1の開口部から第1のリザーバと車通する共通混合チェンバまで引導され得、通気道の第2のブランチは、入口の第2の開口部から第2のリザーバと車通する共通混合チェンバまで引導され得る。従って、2つのブランチからの空気流が2つのリザーバからの分散性物質が提供される共通混合チェンバ内の逆流において互いに出会うように、通気道は、適合され得る。逆流の空気流は、乱気流を高め、従って、空気中の分散性物質の混合及び分散を高め、それによって、使用者に到達する前にエアゾール形態を向上させる。
【0020】
有利なことに、一実施形態に従って、吸入器は、4つの部分から組み立てられ得る。好ましくは、4つの部分は、射出成形プラスチックなどの成形材によるものである。
【0021】
有利なことに、一実施形態に従って、リザーバにおける分散性物質及び更なるリザーバにおける更なる分散性物質は、同じである。向上したエアゾール形態の上述の利点に加えて、吸入器の信頼性は、同じ分散性物質を有する2つの別個のリザーバを提供することによって向上する。リザーバ又は関連する分配メカニズムのうちの1つにおいて失敗した場合、依然として他のリザーバからの引き渡しがある。
【0022】
代替的に更なる実施形態に従って、リザーバ内の分散性物質及び更なるリザーバ内の更なる分散性物質は、異なる。異なる分散性物質が組み合わせにおいて管理されるべきときこれは有利であるが、例えば、投与前に共に保管される/混合されるときに2つの異なる分散性物質の間で起こり得る化学反応のために、又は混合物から分離するための異なる分散性物質の傾向のために、1つ以上のリザーバ内で異なる分散性物質の混合物を提供することは、望ましくない又は可能でないことさえある。別個のリザーバ内に異なる物質を保管し、空気流でそれらを混合するだけで、1つの組み合わされたエアゾール内の異なる物質の組み合わせ投与は、促進され、及び/又は組み合わせ治療のための吸入器パッケージの貯蔵寿命は、高められる。更に、異なる分散性物質の制御された混合比率で向上した/制御された混合が、達成される。
【0023】
有利なことに、一実施形態に従って、分散性物質は、個体粒子の粉末である。
【0024】
更に吸入器の一実施形態に従って、分散性物質は、ハロセラピー、好ましくは、微粉化された塩、最も好ましくは、微粉化されたNaClに適した塩である。微粉化された塩化ナトリウムは、ハロセラピーに好適な既知の活性物質である。上述の両実施形態のいずれかに従う吸入器は、低コストかつユーザフレンドリーなパッケージで本質的にどこでも吸入のために直接利用できる保護された輸送可能なパッケージにおいて微粉化された塩を保管する。それゆえ、上述の実施形態のいずれかに従う吸入器は、エンドユーザ/消費者市場における吸入された投与/ハロセラピーのために微粉化された塩の小売流通に特に大変適している。
【0025】
更に吸入器の一実施形態に従って、分散性物質は、1μm〜10μm、好ましくは1μm〜5μmの範囲の粒径を持つ個体粒子の粉末である。約1μm−5μmの粒径は、肺胞に到達することを目標にしており、一方で、5μmを超える粒径は典型的には、呼吸器の上部を目標にしている。
【0026】
本発明の更なる態様に従って、分散性物質は、揮発性液体である。揮発性液体は、例えば、繊維状マトリックス又は表面からの揮発性液体の蒸発を可能にする吸収材の毛細管力によってリザーバ内に保たれる。
【0027】
この実施形態において、分散性物質は、単に放出オリフィスの遮断を解除することによって(例えば、近位部分が展開されるとき、リザーバ弁部材を完全に引き込むことによって)、揮発性液体の蒸気が通気道に到達することと、空気中に分散され、吸入可能なエアゾールを形成することとを可能にするために、移転され得る。
【0028】
有利なことに、一実施形態に従って、揮発性液体は、芳香油である。
【0029】
複数のリザーバを持つ吸入器について、分散性物質及び更に異なる分散性物質の両方が揮発性液体であり得ると考えられる。しかしながら、液体形態の更なる分散性物質と組み合わされたときに吸湿性粉末を一塊にするなどといった、互いが空気中で正しく分散されることを妨げる物質を組み合わせないように注意を行うべきである。
【図面の簡単な説明】
【0030】
以下において、本発明を以下に示す添付の図面を参照しながら更により詳細に説明する。
【0031】
図1】「閉鎖」位置(図1a)及び「開放」位置(図1b)における一実施形態に従う吸入器の断面上面図。
図2】「閉鎖」位置(図2a)及び「開放」位置(図2b)における図1の吸入器の斜視側面図。
図3図1の吸入器の分解図。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図1a及び1bは、一実施形態に従う個体粉末の吸入のための吸入器を示す。吸入器1は、近位部分2及び遠位部分3を有する。近位部分2は、軸方向(破線A)に沿って遠位部分3に対して変異可能であり、近位部分2が図1aで示されるように引き込まれる「閉鎖」位置と、近位部分が図1bで示されるように展開される「開放」位置との間でシフトされ得る。
【0033】
近位部分2は、半径方向に外向きの側面上に中心軸Aから離れて位置する2つの入口4を持つ筐体部分20と、吸入器近位端Pに位置する出口5と、入口4から出口5まで延在する通気道10、11、12、13とを有する。近位部分2は、その中に分散性物質を伴う2つのリザーバ8、9を更に備え、これは、通気道内でリザーバ8、9からそれぞれの放出オリフィス6、7を通り共通混合チェンバ11まで移転され得る。放出オリフィス6、7は、リザーバ8、9を画定する分離壁内に、具体的には、吸入器1の遠位端Dに向かって軸方向に向かうそれらの部分内に配置される。混合チェンバ11に加えて、通気道は、入口4を混合チェンバ11に接続する上流セクション10と、軸方向Aに沿って、混合チェンバ11を出口5に接続する下流チャネル12、13とを備える。使用者は、口を出口に当て、呼吸をすることによって吸入する。使用者の吸引によって引き込まれると、空気は、入口4から吸入器1に流入し、入口4から上流セクション10を介して混合チェンバ11まで流れる。混合チェンバ11において、いくらかの分散性物質が、空気流に添加され、混合チェンバ内で起こる/生成された乱気流のために、空気流内で分散され、混合され、エアゾールを形成する。エアゾールは、混合チェンバ11から下流チャネルセクション12、13を通り出口5まで空気流の方向を更に追随し、そこから、空気流が口に流入して、最終的に使用者の肺に到達する。
【0034】
遠位部分3は、近位部分2が中で部分的に受容される筐体部分30を有し、遠位部分3の筐体部分30が、近位部分2が引き込まれるとき入口4を覆い、かつ近位部分2が展開されるとき、入口4の覆いを除く、周壁セクション14を有する。壁部セクション14は、こうして、入口4と連携して、通気道10への空気の取り込みを遮断する又は遮断を解除する入口弁部材を形成する。遠位部分3は、吸入器1の遠位端Dから近位端Pまで延在する中心シャフト31を更に備える。遠位端Dにおいて、中心シャフト31は、好適な取り付け手段32によって、例えば、接着剤によって又は容易なアセンブリを促進するスナップフィット係合部によって、筐体部分30の内側に固定される。近位端Pにおいて、中心シャフト31の弁茎部セクションは、出口弁部材15を携行する。出口弁部材15は、近位部分2が吸入器1の遠位部分3内に引き込まれるとき、内側から出口5の開口部内に押し込まれ、それによって、出口5を遮断する僅かに円錐形のプラグである。中心シャフト31は、側面ブランチ33、34の外側の端部において軸方向に延在する茎部セクションの延長部分の栓として成形されるリザーバ弁部材16、17を持つサイドブランチ33、34を更に携行する。栓は、「開放」位置及び「閉鎖」位置の両方における放出オリフィス6、7を密封するように成形され、寸法設定される。栓は、各々が投与ボリュームを画定する投与凹部18、19が更に提供される。投与凹部18は、近位部分2が「閉鎖」位置にあるとき、リザーバ8の内側に位置し、近位部分2が「開放」位置にあるとき、混合チェンバ11内に位置する。従って、投与凹部19は、近位部分が閉鎖位置から「OPEN」位置まで展開されるとき、リザーバ9の内側からオリフィス7を通り混合チェンバ11まで移動する。移動中に、投与凹部18、19は、それぞれのリザーバ8、9の内側又は混合チェンバ11のいずれか(しかし、両方ではない)と車通するに過ぎず、それによって、汚染を避けるためにその環境から密封されたリザーバ8、9内での分散性物質の保管を維持する移転施錠を提供する一方で、気流の分散のために混合チェンバ11へ定義されたいくらかの分散性物質を移転する。流入する空気流は、液滴の湿気を含んでいることがある。実施形態に示されるように、分散されるべき粉末状物質が一塊になることを避けるために、投与ボリュームを形成する凹部は、流入する気流から遠ざかる方向を向いている。それによって、投与ボリューム内の液滴堆積の危険、よって一塊になる危険がかなり軽減される。
【0035】
近位部分2及び遠位部分3は、ベアリング24、25が軸方向に延在する中心シャフト31の遠位及び近位セクションを包含する状態で、リニア摺動ベアリングによって共に結合される。更に摺動ベアリングは、放出オリフィス6、7内で軸方向に摺動する栓形リザーバ弁部材16、17によって提供され得る。側面ブランチ33、34の半径方向に延在する部分は、展開中に近位部分2の偏位を制限する移動止め具を提供し得る。これらの手段の一部又は全てによって、吸入器特別に硬く頑丈なデザインが、アセンブリを含む低コストの生産を容易にする単純な構成において達成される。
【0036】
図2は、「閉鎖」位置(図2a)及び「開放」位置(図2b)における図1の吸入器の斜視側面立面図を示す。吸入器1は、使用者(示されない)によって手のひらで、遠位部分3の周辺を把持し、親指を近位部分2上に静止させた状態で、保持されるように意図されている。有利には、近位部分2は、その外表面上に摩擦/把持手段29を備える。親指をこれらの摩擦/把持手段29に置いた状態で、使用者は、ここで、遠位部分3から遠ざかる方向に近位部分2を押すことによって近位部分2を展開し得る。好適な摩擦//把持手段29は、例えば、近位部分、凹み、波紋、又はこれらの組み合わせの筐体部分の外表面に適用される窪部、突起部、摩擦材であり得る。近位部分2が展開されると側面上の入口4が現れ、出口5が開放され、よって、通気道10、11、12、13が開かれる。「閉鎖」位置において、外側への全ての開口部4、5は、閉鎖され、それによって、例えば、ポケット又はバッグ内で輸送されるときに吸入器1の内側に埃及び泥が侵入するのを防ぐ。親指の単純な移動によって、吸入器1は、入口4及び出口5が同時に開放される「開放」位置に切り替えられ、同時にいくらかの分散性物質が通気道の混合チェンバ11に届けられる。ここで、吸入器1は、活性化された状態であり、使用者は、出口5のある吸入器1の近位端Pを口に当て、息を吸い、それによって、通気道を介して空気を吸い込むことができる。空気流は、混合チェンバ11中で利用可能ないくらかの分散性物質を搭載し、分散し、エアゾールが形成され、これは、使用者への吸入投与のために出口5を通り解放される。かかる使用の間、典型的な位置において、吸入器1の近位端Pは、上方向を向くであろうし、結果的に、吸入器の内側の放出オリフィス6、7は、(重力に関して)下方向を向くであろう。それによって、粉末状物質の引き渡しを高める/促進する。更に、遠位部分3を保持し、リザーバ8、9を含む近位部分2を摺動することによって、リザーバ8、9の内側の粉末状の物質は、更なる手段を用いることなく撹拌され、それによって、単純で低コストの構成の分散性物質の引き渡しを更に高める。
【0037】
図3は、上で説明される実施形態に従う吸入器のアセンブリの分解図を示す。そのアセンブリにおいて、吸入器は、射出成形などの成形技術によって生成され得る4つの部分を有する。遠位部分3は、単一片の筐体部分、一方の端部に出口弁部材15と反対側の端部に取り付け手段32とを持つ中心シャフト31を有する。中心シャフト31は、上で説明されるリザーバ弁部材16、17を携行するサイドブランチ33、34を有する。中心シャフト31は、取り付け手段32とのスナップフィット係合部によって、外側の筐体部分30の内側に取り付けられる。近位部分2は、頂部ハーフシェル20bの内側にある連携締結手段(非表示)を係合する底部ハーフシェル20aにおいて突出部22のスナップ施錠係合部によって互いに取り付けられた2つのハーフシェル20a、20bによって形成され、中心シャフト31が2つのハーフシェル20a、20bの間に挟まれる。一旦組み立てられると、中心シャフト31は、対応するハーフシェル24a/b、25a/bを用いて摺動ベアリングによって包含される。それによって、低コストの大量生産に好適な単純なアセンブリが、達成される。近位部分は、底部ハーフシェル20a内に設けられたリザーバ側壁を更に備え、頂部ハーフシェル20b内に設けられたエレメントを密封するリザーバと連携する。リザーバ側壁は、密封されたリザーバ8、9を提供する2つのハーフシェル20a、20bのアセンブリにあたり、互いに係合する。2つのハーフシェル20a、20bのアセンブリによってリザーバを密封する前に、リザーバは、微粉化された塩などの分散性物質で満たされる。密封されたリザーバ8、9は、軸方向に配向された栓形リザーバ弁部材16、17を包含する、放出オリフィス6、7によって貫通されるのみである。リザーバ弁部材16、17は、放出オリフィスと連携し、リザーバ8、9から通気道10、11、12、13の共通混合チェンバ11への分散性物質の移転を制御する。
【0038】
1 吸入器
2 近位部分
3 遠位部分
4 入口
5 出口
6、7 放出オリフィス
8、9 リザーバ
10、11、12、13 通気道
14、15、16、17 弁部材
18、19 投与凹部
20 筐体
22、23 係合手段
24、25 リニア摺動ベアリング
29 摩擦/把持手段
30 筐体
31 中心シャフト
32 係合手段
33、34 サイドブランチ
A 軸方向に沿った中心軸
D 遠位端
図1
図2
図3