(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6739339
(24)【登録日】2020年7月27日
(45)【発行日】2020年8月12日
(54)【発明の名称】カバーされた配列変換DNAおよび検出方法
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/6816 20180101AFI20200730BHJP
C12Q 1/6851 20180101ALI20200730BHJP
C12N 15/11 20060101ALI20200730BHJP
C12N 9/12 20060101ALI20200730BHJP
C12N 9/22 20060101ALI20200730BHJP
【FI】
C12Q1/6816 ZZNA
C12Q1/6851 Z
C12N15/11 Z
C12N9/12
C12N9/22
【請求項の数】43
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2016-538749(P2016-538749)
(86)(22)【出願日】2015年1月15日
(65)【公表番号】特表2017-502661(P2017-502661A)
(43)【公表日】2017年1月26日
(86)【国際出願番号】IB2015000726
(87)【国際公開番号】WO2015114469
(87)【国際公開日】20150806
【審査請求日】2018年1月12日
(31)【優先権主張番号】61/927,710
(32)【優先日】2014年1月15日
(33)【優先権主張国】US
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成24年度、独立行政法人科学技術振興機構、復興促進プログラム(A−STEP)、シーズ顕在化タイプ、がんの早期診断に向けた微量マイクロRNA検査システムの実用化、産業技術力強化法第19条の規定の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】391008788
【氏名又は名称】アボット・ラボラトリーズ
【氏名又は名称原語表記】ABBOTT LABORATORIES
(73)【特許権者】
【識別番号】304021417
【氏名又は名称】国立大学法人東京工業大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小宮 健
(72)【発明者】
【氏名】小森 誠
(72)【発明者】
【氏名】吉村 徹
【審査官】
北村 悠美子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2002−045192(JP,A)
【文献】
国際公開第2012/077819(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q 1/00−1/70
C12N 15/00−15/90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料中の標的核酸を検出する方法であって、
ヘアピンオリゴヌクレオチドであって、5’から3’方向に、第1の任意の配列、エンドヌクレアーゼが前記ヘアピンオリゴヌクレオチドに相補的な配列にニックを入れるように配向されたエンドヌクレアーゼ認識部位、第1の任意の配列と相補的な配列、標的核酸の3’末端と相補的な配列、および3’末端からの非特異的伸長反応を低減または防止する、核酸分解への抵抗性を与える、またはその両方である3’末端の修飾を含むヘアピンオリゴヌクレオチド、
ポリメラーゼ、および
ニッキング反応のためのエンドヌクレアーゼ
と試料を接触させて反応混合物を形成すること、
標的核酸を、標的核酸の3’末端と相補的な配列においてヘアピンオリゴヌクレオチドと結合させ、ここで、結合すると、標的核酸の3’末端が鎖置換複製を開始し、エンドヌクレアーゼ認識部位および第1の任意の配列に対する相補配列を含む伸長した標的核酸配列が生成され、および
エンドヌクレアーゼに前記伸長した標的核酸中にニックを生成させ、これによりさらなる鎖置換複製が引き起こされ、前記第1の任意の配列と相補的な配列を含むシグナルDNAが生成される条件下にて、前記反応混合物を維持すること、ならびに、
シグナルDNAを検出し、シグナルDNAの存在が試料中の標的核酸を検出することを含む、方法。
【請求項2】
定温で実行される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
20℃(+/−2℃または+/−5℃)から42℃(+/−2℃または+/−5℃)の温度で実行される、請求項1または2のいずれか一項に記載の方法。
【請求項4】
37℃(+/−2℃または+/−5℃)の温度で実行される、請求項1、2または3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
ポリメラーゼが鎖置換活性を有する、請求項1、2または3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
ポリメラーゼが3’→5’エキソヌクレアーゼ欠損、5’→3’エキソヌクレアーゼ欠損または両方である、請求項1、2または3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
ポリメラーゼが、E.コリ(E.coli)由来のDNAポリメラーゼIのKlenowフラグメント、バチルス・ステアロサーモフィルス(Bacillus stearothermophilus)由来の5’→3’エキソヌクレアーゼ欠損Bst DNAポリメラーゼおよびバチルス・カルドテナックス(Bacillus caldotenax)由来の5’→3’エキソヌクレアーゼ欠損Bca DNAポリメラーゼからなる群から選択されるDNAポリメラーゼを含む、請求項1、2または3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
エンドヌクレアーゼが、Nb.BbvCI、Nt.AlwI、Nt.BbvCIおよびNt.BsmAIからなる群から選択される酵素である、請求項1、2または3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
試料が、全血、血清、バフィーコート、尿、糞便、脳脊髄液、精液、唾液、組織および細胞培養からなる群から選択される、請求項1、2または3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
標的核酸がマイクロRNAである、請求項1、2または3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
標的核酸が、hsa−miR−24、hsa−miR−107、hsa−miR−221、hsa−miR−21、hsa−miR−500およびhsa−miR−106aからなる群から選択されるマイクロRNAである、請求項1、2または3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
標的核酸が感染性因子に由来する、請求項1、2または3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
標的核酸が、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、ヒト免疫不全症ウイルス、クラミジア・トラコマチス(Chlamydia trachomatis)、ナイセリア・ゴノロエエ(Neisseria gonorrhoeae)、インフルエンザA型ウイルス、インフルエンザB型ウイルスまたは呼吸器合胞体ウイルスに由来する、請求項1、2または3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
標的核酸が配列番号6、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29または配列番号30のいずれかの内の配列を含む、請求項1、2または3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
オリゴヌクレオチドが、5’末端における、エンドヌクレアーゼ認識部位における、または5’末端およびエンドヌクレアーゼ認識部位の両方における修飾をさらに含む、請求項1、2または3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
ヘアピン構造を有するオリゴヌクレオチドであって、5’から3’方向に、第1の任意の配列、エンドヌクレアーゼが前記ヘアピンオリゴヌクレオチドに相補的な配列にニックを入れるように配向されたエンドヌクレアーゼ認識部位、第1の任意の配列と相補的な配列、標的核酸の3’末端と相補的な配列、および3’末端からの非特異的伸長反応を低減または防止する、核酸分解への抵抗性を与える、またはその両方である3’末端の修飾を含み、第1の任意の配列の少なくとも一部、および第1の任意の配列と相補的な配列の少なくとも一部がハイブリダイズしてヘアピン構造を形成する、オリゴヌクレオチド。
【請求項17】
オリゴヌクレオチドであって、5’から3’方向に、第1の任意の配列、エンドヌクレアーゼが前記オリゴヌクレオチドに相補的な配列にニックを入れるように配向されたエンドヌクレアーゼ認識部位、第1の任意の配列と相補的な配列、標的核酸の3’末端と相補的な配列、および3’末端からの非特異的伸長反応を低減または防止する、核酸分解への抵抗性を与える、またはその両方である3’末端の修飾を含み、第1の任意の配列、および第1の任意の配列と相補的な配列がハイブリダイズしてヘアピン構造を形成し、エンドヌクレアーゼ認識部位がヘアピン構造のループに位置する、オリゴヌクレオチド。
【請求項18】
エンドヌクレアーゼ認識部位が、エンドヌクレアーゼによってニックを入れられる配列と相補的、または相補的かつ隣接している配列を含む、請求項16または17のいずれか一項に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項19】
標的核酸の3’末端と相補的な配列がマイクロRNAと相補的である、請求項16、17または18のいずれか一項に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項20】
標的核酸の3’末端と相補的な配列が、hsa−miR−24、hsa−miR−107、hsa−miR−221、hsa−miR−21、hsa−miR−500およびhsa−miR−106aからなる群から選択されるマイクロRNAと相補的である、請求項16、17または18のいずれか一項に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項21】
標的核酸が感染性因子に由来する、請求項16、17または18のいずれか一項に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項22】
標的核酸と相補的な配列が、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、ヒト免疫不全症ウイルス、クラミジア・トラコマチス、ナイセリア・ゴノロエエ、インフルエンザA型ウイルス、インフルエンザB型ウイルスまたは呼吸器合胞体ウイルスに由来する核酸と相補的である、請求項16、17または18のいずれか一項に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項23】
標的核酸と相補的な配列が、配列番号6、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29または配列番号30のいずれかの内の核酸配列と相補的である、請求項16、17または18のいずれか一項に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項24】
5’末端における、エンドヌクレアーゼ認識部位における、または5’末端およびエンドヌクレアーゼ認識部位の両方における修飾をさらに含む、請求項16、17または18のいずれか一項に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項25】
エンドヌクレアーゼ認識部位が、Nb.BbvCI、Nt.AlwI、Nt.BbvCIおよびNt.BsmAI認識部位からなる群から選択される、請求項16、17または18のいずれか一項に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項26】
試料中の標的核酸を検出する組成物であって、
ヘアピン構造を有するオリゴヌクレオチドであって、5’から3’方向に、第1の任意の配列、エンドヌクレアーゼが前記ヘアピンオリゴヌクレオチドに相補的な配列にニックを入れるように配向されたエンドヌクレアーゼ認識部位、第1の任意の配列と相補的な配列、標的核酸の3’末端と相補的な配列、および3’末端からの非特異的伸長反応を低減または防止する、核酸分解への抵抗性を与える、またはその両方である3’末端の修飾を含み、第1の任意の配列の少なくとも一部、および第1の任意の配列と相補的な配列の少なくとも一部がハイブリダイズしてヘアピン構造を形成する、オリゴヌクレオチド、
ポリメラーゼ、および
ニッキング反応のためのエンドヌクレアーゼ
を含む組成物。
【請求項27】
ポリメラーゼが、鎖置換活性を有するDNAポリメラーゼである、請求項26に記載の組成物。
【請求項28】
ポリメラーゼが3’→5’エキソヌクレアーゼ欠損、5→3’エキソヌクレアーゼ欠損または両方である、請求項26に記載の組成物。
【請求項29】
ポリメラーゼが、E.コリ由来のDNAポリメラーゼIのKlenowフラグメント、バチルス・ステアロサーモフィルス由来の5’→3’エキソヌクレアーゼ欠損Bst DNAポリメラーゼおよびバチルス・カルドテナックス由来の5’→3’エキソヌクレアーゼ欠損Bca DNAポリメラーゼからなる群から選択される、請求項26に記載の組成物。
【請求項30】
エンドヌクレアーゼが、Nb.BbvCI、Nt.AlwI、Nt.BbvCIおよびNt.BsmAIからなる群から選択される酵素である、請求項26に記載の組成物。
【請求項31】
標的核酸と相補的な配列がマイクロRNAと結合する、請求項26、27、28、29または30のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項32】
標的核酸と相補的な配列が、hsa−miR−24、hsa−miR−107、hsa−miR−221、hsa−miR−21、hsa−miR−500およびhsa−miR−106aからなる群から選択されるマイクロRNAと結合する、請求項26、27、28、29または30のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項33】
標的核酸と相補的な配列が、配列番号6、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29または配列番号30のいずれかの内の配列を含む標的核酸に結合する、請求項26、27、28、29または30のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項34】
オリゴヌクレオチドが、5’末端における、エンドヌクレアーゼ認識部位における、または5’末端およびエンドヌクレアーゼ認識部位の両方における修飾をさらに含む、請求項26、27、28、29または30のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項35】
試料中の標的核酸を検出するキットであって、
ヘアピン構造を有するオリゴヌクレオチドであって、5’から3’方向に、第1の任意の配列、エンドヌクレアーゼが前記ヘアピンオリゴヌクレオチドに相補的な配列にニックを入れるように配向されたエンドヌクレアーゼ認識部位、第1の任意の配列と相補的な配列、標的核酸の3’末端と相補的な配列、および3’末端からの非特異的伸長反応を低減または防止する、核酸分解への抵抗性を与える、またはその両方である3’末端の修飾を含み、第1の任意の配列の少なくとも一部、および第1の任意の配列と相補的な配列の少なくとも一部がハイブリダイズしてヘアピン構造を形成する、オリゴヌクレオチド、
ポリメラーゼ、および
ニッキング反応のためのエンドヌクレアーゼ
を含むキット。
【請求項36】
ポリメラーゼが、鎖置換活性を有するDNAポリメラーゼである、請求項35に記載のキット。
【請求項37】
ポリメラーゼが3’→5’エキソヌクレアーゼ欠損、5’→3’エキソヌクレアーゼ欠損または両方である、請求項35に記載のキット。
【請求項38】
ポリメラーゼが、E.コリ由来のDNAポリメラーゼIのKlenowフラグメント、バチルス・ステアロサーモフィルス由来の5’→3’エキソヌクレアーゼ欠損Bst DNAポリメラーゼおよびバチルス・カルドテナックス由来の5’→3’エキソヌクレアーゼ欠損Bca DNAポリメラーゼからなる群から選択される、請求項35に記載のキット。
【請求項39】
エンドヌクレアーゼが、Nb.BbvCI、Nt.AlwI、Nt.BbvCIおよびNt.BsmAIからなる群から選択される酵素である、請求項35に記載のキット。
【請求項40】
標的核酸と相補的な配列がマイクロRNAと結合する、請求項35、36、37、38または39のいずれか一項に記載のキット。
【請求項41】
標的核酸と相補的な配列が、hsa−miR−24、hsa−miR−107、hsa−miR−221、hsa−miR−21、hsa−miR−500およびhsa−miR−106aからなる群から選択されるマイクロRNAと結合する、請求項35、36、37、38または39のいずれか一項に記載のキット。
【請求項42】
標的核酸と相補的な配列が、配列番号6、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29または配列番号30のいずれかの内の配列を含む標的核酸に結合する、請求項35、36、37、38または39のいずれか一項に記載のキット。
【請求項43】
オリゴヌクレオチドが、5’末端における、エンドヌクレアーゼ認識部位におけるまたは5’末端およびエンドヌクレアーゼ認識部位の両方における修飾をさらに含む、請求項35、36、37、38または39のいずれか一項に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は2014年1月15日に出願された米国仮特許出願第61/927,710号の優先権を主張するものであり、その内容全体を参照により本明細書に組み込むものとする。
資金提供
本明細書で開示される研究の少なくとも一部は、日本政府機関である国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)の補助金による支援を受けた。
【背景技術】
【0002】
試験試料中の標的核酸の検出は、医学および生物学を含むさまざまな分野で重要である。多くの組成物および手順が、特定の核酸分子の検出に利用できる。一般的に、この技術は、標的核酸と、短いオリゴヌクレオチド(20塩基以下)から数キロ塩基(kb)までの長さに及ぶ場合がある核酸プローブとの間における配列依存的なハイブリダイゼーションに基づく。
【0003】
核酸配列の集団から特定の配列を増幅するために広く使われている方法の1つは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)である。一般的なPCR反応において、標的核酸は、3つの明確に区分されたステップ、二本鎖鋳型DNAの一本鎖への分離(変性)、一本鎖鋳型DNAへのプライマーのアニーリングおよび各プライマーからの相補鎖の合成(伸長)で増幅される。PCRの間、変性工程、アニーリング工程および伸長工程は、各々異なる温度で実行され、サーマルサイクラーを用いた異なる反応温度を介して繰り返し循環する。したがって、このような反応を実行するためには高価な温度サイクル制御機器が必要であり、このことが野外試験、ポイントオブケア(ベッドサイド)診断および安価な試験における日常の使用を妨げている。
【0004】
さらに、PCR反応が3つの異なる温度で実行されるので、反応は正確な温度を維持する難しさなどの課題を伴う可能性があり、時間損失は繰返し数に比例して増加する。さらに、二本鎖鋳型DNAの一本鎖への変性には高温の使用が必要であり、このため、反応は、限られた数の熱安定性DNAポリメラーゼを使って実行する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、以下の開示は、長さの短い核酸分子を低濃度で検出するのに十分な選択性と感度を維持しながら、PCRで用いられる反応条件ほど厳しくない反応条件下において、核酸(例えばDNAまたはRNA)を検出する代替の方法および組成物を提供する。本開示は、他にも態様はあるが、低温、等温条件下において試料中の標的核酸の検出限界を改善することが可能で、試料調製および自動化した検出方法を単純化または改善することが可能な新規方法および核酸分子を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(発明の要旨)
一態様において、本開示は、試料中の標的核酸を検出する方法に関するものであって、前記方法は、5’から3’方向に、第1の任意の配列、エンドヌクレアーゼ認識部位、前記第1の任意の配列と相補的な配列、標的核酸の3’末端と相補的な配列および3’末端の修飾を含むヘアピンオリゴヌクレオチド、ポリメラーゼ、ならびにニッキング反応のためのエンドヌクレアーゼと前記試料を接触させることを含む。本態様の実施形態において、本方法は、シグナルDNAの存在が試料中の標的核酸の存在を示す、シグナルDNAの有無を決定することも含む。
【0007】
本態様の実施形態において、ポリメラーゼは鎖置換活性を有してよい。さらなる実施形態において、ポリメラーゼは3’→5’エキソヌクレアーゼ欠損、5’→3’エキソヌクレアーゼ欠損、または3’→5’エキソヌクレアーゼ欠損および5’→3’エキソヌクレアーゼ欠損の両方であってよい。一部の実施形態において、ポリメラーゼはDNAポリメラーゼを含む。
【0008】
実施形態において、エンドヌクレアーゼは、オリゴヌクレオチドにニックを入れる反応に使用可能なニッキングエンドヌクレアーゼまたは制限エンドヌクレアーゼを含んでよい。
【0009】
本明細書に記載の方法に関する態様および実施形態は、等温条件下または実質的に定温下で実行されてよい。さらなる実施形態において、本方法は標準のPCR法で用いられる温度より低い温度で実行されてよい。一例として、本方法の一部の実施形態は、オリゴヌクレオチドのヘアピン構造の融解温度以下の温度で実行可能である(例えば、
図1の例示的な描写において図示されるCSC DNA)。一部の実施形態において、本方法は、標的核酸(T)および本明細書で開示されるオリゴヌクレオチド(例えば、CSC DNA)の計算された最適ハイブリダイゼーションもしくはアニーリング温度、または実験的に決定されたハイブリダイゼーションもしくはアニーリング温度以下の温度で実行されてよい。実施形態において、本方法は、本明細書で開示されるオリゴヌクレオチド(例えば、CSC DNA)に結合する標的核酸(T)の融解温度より低い温度で実行されてよい。さらに他の実施形態において、本方法は、ポリメラーゼおよび/またはエンドヌクレアーゼ活性を可能にする温度で実行されてよい。さらなる実施形態において、本方法は、試料中の標的核酸の検出のための反応混合物に存在するポリメラーゼおよび/またはエンドヌクレアーゼの最適反応温度またはこの付近の温度で実行されてよい。
【0010】
別の態様において、本開示は、ヘアピン構造を有するオリゴヌクレオチド(または、カバーされた配列変換DNAまたはCSC DNA)に関するものであって、オリゴヌクレオチドは、5’から3’方向に、第1の任意の配列、エンドヌクレアーゼ認識部位、前記第1の任意の配列と相補的な配列、標的核酸の3’末端と相補的な配列および3’末端の修飾を含み、前記第1の任意の配列の少なくとも一部、および前記第1の任意の配列と相補的な前記配列の少なくとも一部はハイブリダイズして前記ヘアピン構造を形成する。本態様の一部の実施形態において、エンドヌクレアーゼ認識部位は前記ヘアピン構造のループに位置する。一部の実施形態において、エンドヌクレアーゼ認識部位は、エンドヌクレアーゼによってニックを入れられる配列と相補的な配列を含む。他の実施形態において、エンドヌクレアーゼによってニックを入れられる配列は、エンドヌクレアーゼによって特異的に認識される配列に隣接(下流または上流)している。標的核酸配列は、目的とする任意のヌクレオチド配列でよく、一部の実施形態において、感染性因子またはマイクロRNAに由来する配列を含んでよい。他の実施形態において、標的核酸は、疾患または障害と関連している場合がある遺伝子由来の配列を含んでよい。
【0011】
さらなる態様において、本開示は、試料中の標的核酸を検出する組成物に関するものであって、前記組成物は、ヘアピン構造を含むオリゴヌクレオチドを含み、オリゴヌクレオチドは、5’から3’方向に、第1の任意の配列、エンドヌクレアーゼ認識部位、前記第1の任意の配列と相補的な配列、標的核酸の3’末端と相補的な配列および3’末端の修飾を含み、前記第1の任意の配列の少なくとも一部、および前記第1の任意の配列と相補的な前記配列の少なくとも一部はハイブリダイズして前記ヘアピン構造を形成する。組成物はポリメラーゼ、および/またはエンドヌクレアーゼ認識部位が二本鎖である場合、オリゴヌクレオチドのエンドヌクレアーゼ認識部位もしくはそれに隣接したところでニックを入れることができるエンドヌクレアーゼを含むこともできる。組成物は、反応緩衝液、デオキシリボヌクレオチドおよび例えば新規に合成されたDNAの蛍光検出のための蛍光体修飾プローブDNA(例えば、分子ビーコンプローブ)などのレポーター分子などの他の試薬を含むこともできる。
【0012】
さらに別の態様において、本開示は、試料中の標的核酸を検出するキットに関するものであって、前記キットは、ヘアピン構造を含むオリゴヌクレオチドを含み、オリゴヌクレオチドは、5’から3’方向に、第1の任意の配列、エンドヌクレアーゼ認識部位、前記第1の任意の配列と相補的な配列、標的核酸の3’末端と相補的な配列および3’末端の修飾を含み、前記第1の任意の配列の少なくとも一部、および前記第1の任意の配列と相補的な前記配列の少なくとも一部はハイブリダイズして前記ヘアピン構造を形成する。実施形態において、キットはポリメラーゼおよび/またはエンドヌクレアーゼ認識部位もしくはエンドヌクレアーゼ認識部位に隣接した部位にニックを入れることができるエンドヌクレアーゼをさらに含むことができる。キットは、反応緩衝液、デオキシリボヌクレオチド、および例え、シグナルDNAなど、新規に合成されたDNAの蛍光検出のための蛍光体修飾プローブDNA(例えば、分子ビーコンプローブ)などのレポーター分子などの試薬を含むこともできる。キットは、本明細書で開示される方法のいずれか一つの実施における使用説明書を含むこともできる。
【0013】
本明細書で開示される方法、オリゴヌクレオチド、組成物およびキットは、統合システムプラットホームと組み合わせて用いられてよい。例えば、本発明の方法、オリゴヌクレオチド、組成物およびキットは、AbbottのARCHITECTシステムと組み合わせて用いられてよい。本明細書で開示される方法、オリゴヌクレオチド、組成物およびキットは、例えばm2000sp試料調製システム(Abbott Diagnostics、Abbott Park、IL))などの試料調製システムプラットホームとともに用いられてよい。同様に、本明細書で開示される方法、オリゴヌクレオチド、組成物およびキットは、例えばAbbottのi−STATポイントオブケアシステム(Abbott Diagnostics、Abbott Park、IL)などのポイントオブケアシステムプラットホームとともに用いられてよい。さらに、本発明の方法、オリゴヌクレオチド、組成物およびキットは、例えば携帯蛍光検出器、マイクロpHメータ、マイクロ流体素子、マイクロアレイ、酵素検出システム、免疫クロマトグラフィーストリップおよび側方流動装置など、任意の数の他の機器、検定プラットホームおよび装置とともに用いることができる。
【0014】
本明細書で開示される方法、オリゴヌクレオチド、組成物およびキットは、非感染性および感染性疾患の診断を含む分子診断法の分野において用いられてよい。例えば、本発明の方法、オリゴヌクレオチド、組成物およびキットを用いてヒトの疾患と関連したマイクロRNA(miRNA)を検出することができる。miRNAの非限定的な例は、hsa−miR−24(配列番号26)、hsa−miR−107(配列番号27)、hsa−miR−21(配列番号23)、hsa−miR−500(配列番号29)、hsa−miR−106a(配列番号30)およびhsa−miR−221(配列番号28)を含む。同様に、本発明の方法、オリゴヌクレオチド、組成物およびキットを用いて、例えばB型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、ヒト免疫不全症ウイルス、クラミジア・トラコマチス(Chlamydia trachomatis)、ナイセリア・ゴノロエエ(Neisseria gonorrhoeae)、インフルエンザA型ウイルス、インフルエンザB型ウイルスおよび呼吸器合胞体ウイルスなどの感染性疾患に由来する標的核酸を検出することができる。
【0015】
本開示により提供された追加の態様、実施形態および利点は、後続の記載を見ると明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】試料中の標的核酸の検出のためのカバーされた配列変換DNA(CSC DNA)の非限定的な例を概略的に例示する図である。CSC DNAは、5’から3’方向に、任意の配列(A)、ニッキング反応において使用可能なエンドヌクレアーゼ認識部位(B)、任意の配列と相補的な配列(C)および標的核酸と相補的な配列(D)を含む。(A)から(C)の間の縦線は、2つの領域の間のある程度のハイブリダイゼーションを示す。
【
図2】試料中の標的核酸の検出のための典型的な反応の進行を概略的に例示する図である。配列(A)から(D)は
図1に記載され、配列(T)は標的配列を表し、配列(E)は伸長配列を表し、配列(E’)はニックを入れられた伸長配列を表しおよび配列(F)はシグナル配列を表している。
【
図3】異なる濃度(10nM、1nM、0.1nMおよび0.0nM)のヒトマイクロRNA hsa−miR−24標的DNA(配列番号6)を検出するために、CSC DNA #1(配列番号1)を用いた反応の結果を表す図である。
【
図4】異なる濃度(10nM、1nM、0.1nMおよび0.0nM)のヒトマイクロRNA hsa−miR−24標的DNA(配列番号6)を検出するために、カバーされていない配列変換DNA(USC DNA)#1(配列番号7)を用いた反応の結果を表す図である。
【
図5】異なる濃度(10nM、1nM、0.1nMおよび0.0nM)のヒトマイクロRNA hsa−miR−24標的DNA(配列番号6)を検出するために、CSC DNA #2(配列番号9)を用いた反応の結果を表す図である。
【
図6】異なる濃度(10nM、1nM、0.1nMおよび0.0nM)のヒトマイクロRNA hsa−miR−24標的DNA(配列番号6)を検出するために、CSC DNA #3(配列番号11)を用いた反応の結果を表す図である。
【
図7】異なる濃度(10nM、1nM、0.1nMおよび0.0nM)のヒトマイクロRNA hsa−miR−24標的DNA(配列番号6)を検出するために、CSC DNA #4(配列番号13)を用いた反応の結果を表す図である。
【
図8】異なる濃度(10nM、1nM、0.1nMおよび0.0nM)のヒトマイクロRNA hsa−miR−24標的DNA(配列番号6)を検出するために、CSC DNA #5(配列番号17)を用いた反応の結果を表す図である。
【
図9】異なる濃度(10nM、1nM、0.1nMおよび0.0nM)のヒトマイクロRNA hsa−miR−24標的DNA(配列番号6)を検出するために、CSC DNA #6(配列番号19)を用いた反応の結果を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
一般的に、本開示は試験試料中の標的核酸の検出に驚くほど効果的である核酸コンストラクトに関する。本明細書で開示されるコンストラクトは、標的核酸の存在下において生成されるシグナルDNAとコンストラクトとの間の相互作用または結合イベントを避けることが可能な構造をコンストラクトがとることができるようにする核酸配列を含む。本明細書で開示される方法および核酸コンストラクトは、有利なことに、低温および等温条件下における標的核酸の選択的および高感度な検出を可能にする。
【0018】
一態様において、本発明は試料中の標的核酸を検出する際に有用である新規オリゴヌクレオチドコンストラクト(本明細書ではカバーされた配列変換DNAまたはCSC DNAと称する。)に関する。
図1の例示的な実施形態によって表されるように、CSC DNAは、5’から3’方向に、任意の配列(A)、エンドヌクレアーゼ認識部位(B)、任意の配列(A)と相補的な配列(C)および標的核酸の3’末端と相補的な配列(D)を有するヘアピン構造(またはステムループ構造)を含むことができる。
【0019】
本明細書で開示されるCSC DNAは、任意の配列(A)を含む。CSC DNAの任意の配列(A)は、いかなる所望の核酸配列も含むことができ、いかなる特定の配列によっても制限されない。後でさらに詳細に論じられるように、任意の配列(A)は、シグナルDNA(例えば、
図2の(F))の鋳型の少なくとも一部となり、シグナルDNAの生成は標的核酸の存在を示す。また、本明細書で論じられるように、配列(A)は配列(C)に含まれる相補配列とハイブリダイズする場合がある配列の少なくとも一部となる。CSC DNAの任意の配列(A)は、長さによって制限されない。一部の実施形態において、CSC DNAの任意の配列(A)は、約5から約100の核酸塩基であり、5から100の間の全整数である。実施形態において、CSC DNAの任意の配列(A)は、約5から約30の核酸塩基であり、5から30の間の全整数である。一部の実施形態において、CSC DNAの任意の配列(A)は、約10から約30の核酸塩基であり、10から30の間の全整数である。さらにさらなる実施形態において、CSC DNAの任意の配列(A)は、約15から約30の核酸塩基であり、15から30の間の全整数である。
【0020】
CSC DNAは、エンドヌクレアーゼ認識部位(B)を含む。一本鎖型(例えば、
図1のヘアピン構造)において、エンドヌクレアーゼ認識部位(B)は、エンドヌクレアーゼによってニックを入れられる場合がある配列と相補的な配列を含んでよい。エンドヌクレアーゼによってニックを入れられる配列は、エンドヌクレアーゼによって認識される配列から下流または上流の範囲であってよい。適切に、二本鎖の場合、エンドヌクレアーゼ認識部位(B)は反応に存在するエンドヌクレアーゼによって認識されることが可能であり、エンドヌクレアーゼ認識部位(B)(またはエンドヌクレアーゼ認識部位(B)に隣接した配列)は二本鎖DNAの1本の鎖上でのみ切断される場合がある(すなわち、ニックを入れられる。)。後でさらに詳細に記載されるように、標的核酸のCSC DNAへの結合は、DNAポリメラーゼを介した複製を引き起こし、エンドヌクレアーゼの認識部位として働くことができるエンドヌクレアーゼ認識部位(B)の活性を有する二本鎖型を生成する。新しく生成された二本鎖エンドヌクレアーゼ部位(B)または新しく生成された二本鎖エンドヌクレアーゼ部位(B)に隣接した部位においてニックを入れるエンドヌクレアーゼは、次いでDNAポリメラーゼを介した複製を引き起こし、シグナルDNA(
図2参照)を生じる。
図2に図示されるように、エンドヌクレアーゼ認識部位(B)は、CSC DNAではなく、新しく複製された鎖がニックを入れられるような向きになっている。つまり、新しく複製された鎖が生成される際に、Bのエンドヌクレアーゼ認識部位の向きは新しく複製された鎖のエンドヌクレアーゼ活性(切断)を導く。このように、エンドヌクレアーゼ認識部位は、エンドヌクレアーゼによってニックを入れられる配列と相補的な配列を含むので、CSCオリゴヌクレオチドが反応を通して無傷のままであることが可能になる(すなわち、CSC DNAはニックを入れられないまたは切断されない。)。
【0021】
CSC DNAは、任意の配列(A)と相補的な配列(C)を含む。本明細書で開示されるように、配列(C)の少なくとも一部は、任意の配列(A)の相補的な領域の少なくとも一部とハイブリダイズして、ヘアピン(またはステムループ)構造を形成する。例えば、
図1参照。
図1の非限定的な実施形態で図示されるように、二本鎖ステムは、片側には、エンドヌクレアーゼ認識部位(B)を含む、塩基対を形成していないループ領域が隣接し、他方の末端には、標的核酸と相補的な配列(D)が隣接する。
【0022】
配列(C)は長さによって制限されず、約5から約100の核酸塩基である可能性があり、5から100の間の全整数である可能性がある。一部の実施形態において、配列(C)は、約5から約30の核酸塩基であり、5から30の間の全整数である。一部の実施形態において、CSC DNAの配列(C)は、約10から約30の核酸塩基であり、10から30の間の全整数である。さらにさらなる実施形態において、配列(C)は、約15から約30の核酸塩基であり、15から30の間の全整数である。配列(C)は、任意の配列(A)と同じ長さである必要もない。一部の実施形態において、配列(C)は任意の配列(A)と同じ長さである可能性があるまたはそれは任意の配列(A)より約1−20もしくは約1−10塩基短い可能性がある。CSC DNAのステム構造は、一般に長さ約3から約60の範囲の核酸塩基対の1本の二本鎖DNAを含んでよい。一部の実施形態において、ステムは、約5から約20の範囲の核酸塩基対の1本の二本鎖DNAを含み、5から20の間の全整数である。
【0023】
ステムはふくらみまたはミスマッチを含むこともでき、配列(C)は配列(A)と100%相補的である必要はない。一部の実施形態において、配列(C)は任意の配列(A)のすべてと、または一部と、100%相補的であってよい。例えば、配列(C)は約50%、60%、70%、80%または90%を超えて配列(A)と相補的である可能性がある。ミスマッチにもかかわらず、2つの配列には、一般に、適切な条件下において、互いに選択的にハイブリダイズする能力がある。一部の実施形態において、配列(A)と配列(C)の間の相補性の量は約80%から100%までであり、このことは、例えば本明細書で開示される条件のような厳しいまたは非常に厳しい条件下においてハイブリダイゼーションを可能にすることができる。
【0024】
一部の実施形態において、ステムループ構造の二本鎖ステム、例えばCSC DNAの配列(A)および(C)の一部は、約20%から約70%の範囲のGC含量を有することができ、20%から70%の間のいかなる割合も含む。
【0025】
一部の実施形態において、エンドヌクレアーゼ認識部位(B)の少なくとも一部は、ステムループ構造の一本鎖ループに位置する(例えば、
図1)。一部の実施形態において、エンドヌクレアーゼ認識部位(B)の全体は、ループ領域を含む配列に位置する。一般に、ステムループ構造のループは、約3から約30のヌクレオチド塩基である可能性があり、その間のいかなる数である可能性がある。一部の実施形態において、エンドヌクレアーゼ認識部位(B)は、長さが4から約10のヌクレオチド塩基であり、4から10の間の全整数である。
【0026】
CSC DNAの配列(D)(例えば、
図1参照)は、標的核酸の3’末端配列の少なくとも一部と相補的であり、約5から約100の核酸塩基の範囲の長さを有することができ、5から100の間のいかなる整数も含む。一部の実施形態において、配列(D)は、約5から約30の核酸塩基であり、5から30の間の全整数である。一部の実施形態において、CSC DNAの配列(D)は、長さが約10から約30の核酸塩基であり、10から30の間の全整数である。さらにさらなる実施形態において、CSC DNAの配列(D)は、長さが約15から約30の核酸塩基であり、15から30の間の全整数である。
【0027】
配列(D)は、標的核酸の3’末端配列と、100%相補的である可能性がある。一部の実施形態において、配列(D)は標的核酸の3’末端配列と100%未満で相補的である可能性があり、例えば、約50%から約99%の範囲で標的核酸の3’末端配列と相補的である可能性がある。さらに他の実施形態において、配列(D)は標的核酸の3’末端配列と約80%から100%(80%から100%の間のすべての割合を含む。)相補的である可能性がある。
【0028】
相補配列は水素結合相互作用を形成して、二本鎖核酸構造(例えば、核酸塩基対)を形成することができる。例えば、第1の配列と相補的である配列は、第1の配列とワトソン−クリック型の塩基対を形成することができる配列を含む。本明細書で使用されるように、「相補的である」という用語は、配列がこの相補鎖の全長にわたって相補的であることを要求せず、別の配列の一部と相補的である配列を含む。したがって、一部の実施形態において、相補配列は、配列の全長にわたってまたはそれらの一部に対して相補的である配列を含む。例えば、2つの配列は、約2から約100の連続する(隣接する)ヌクレオチドの範囲の長さにわたって互いに相補的である可能性があり、または2から100の間のいかなる整数である可能性がある。一部の実施形態において、2つの配列は、約15から約30の連続する(隣接する)ヌクレオチドの範囲の長さにわたって互いに相補的である可能性があり、または15から30の間のいかなる整数である可能性がある。本明細書で使用されるように、相補配列は、いくつかの配列ミスマッチがある配列を含むことができる。例えば、相補配列は、配列の長さの少なくとも約70%から100%、好ましくは95%超と相補的である配列を含むことができる。ある程度のミスマッチにもかかわらず、相補配列には一般に、例えば本明細書で記載された条件のような厳しいおよび非常に厳しい条件などの適切な条件下において、互いに選択的にハイブリダイズする能力がある。
【0029】
CSC DNAは、既知の方法によって合成されてよい。例えば、CSC DNAは、ホスホラミダイト法、ホスホトリエステル法、H−ホスホネート法またはチオホスホネート法を使用して合成することができる。
【0030】
CSC DNAは、一般に当技術分野で知られているような化学的修飾を含んでよい。一部の実施形態において、例えば、CSC DNAは、化学的修飾された核酸(例えば、2’−Oメチル誘導体、ホスホロチオネートなど)、3’末端修飾、5’末端修飾またはそれらのいかなる組合せでも含むことができる。一部の実施形態において、伸長反応がCSC DNAの3’末端から起こらないように(例えば、ポリメラーゼ伸長のための鋳型として働いてしまう可能性がある、(D)配列を越えたオーバーハングを有する標的配列または別の非標的配列に結合した際に)、CSC DNAの3’末端は修飾されてよい。
図2に図示されるように、シグナルDNAを生じるDNA複製を開始するのは、標的核酸の3’末端であってCSC DNAではない。CSC DNAの3’末端から開始されるどんな複製でも、結果として検出エラー(例えば、偽陽性)につながる場合がある。さらに、例えばCSC DNAと非標的配列の間の結合、誤った位置におけるCSC DNAと標的配列の間の結合、または非鋳型によるデノボもしくはアブイニシオDNA合成などのイベントから生じるCSC DNAの未修飾の3’末端からの非特異的伸長反応もまた、結果として検出エラーに導く場合がある。したがって、実施形態において、CSC DNAは、上述のような望ましくないあらゆる伸長反応の発生を減らすことができるまたは完全に避けることができる3’末端の修飾を含む。3’末端修飾の非限定的な例は、TAMRA、DABCYLおよびFAMを含む。修飾の他の非限定的な例は、例えば、ビオチン標識、フルオロクロム化、リン酸化、チオール化またはアミノ化を含む。
【0031】
別の態様において、本発明は試料中の標的核酸を検出する方法を含む。本方法は一般に、標的核酸の3’末端配列と相補的な配列(D)を含む、本明細書で開示されるCSC DNA、ポリメラーゼ、およびエンドヌクレアーゼと試料を接触させることを含む。
【0032】
本方法は、試料をエンドヌクレアーゼと接触させることを含む。エンドヌクレアーゼは、CSC DNAの範囲内でエンドヌクレアーゼ認識部位(B)と相補的な配列にニックを入れることができるまたはニックを入れる際に用いることができるニッキングエンドヌクレアーゼまたは制限エンドヌクレアーゼであってよい。一部の実施形態において、エンドヌクレアーゼは、二本鎖DNAニッキング反応を触媒することができるまたは触媒するために用いることができるニッキングエンドヌクレアーゼまたは制限エンドヌクレアーゼを含む。ニッキングエンドヌクレアーゼを提供する実施形態において、二本鎖DNAの1本の鎖のホスホジエステル結合は、切断されて切断部位の5’側にリン酸基を、3’側にヒドロキシル基を生成する場合がある。ニッキングエンドヌクレアーゼの非限定的な例は、Nb.BbvCI、Nt.AlwI、Nt.BbvCI、Nb.BsrDI、Nb.Btsl、Nt.BspQI、Nt.BstNBI、Nb.BsmI、Nt.CviPIIおよびNt.BsmAIを含む。
【0033】
一部の実施形態において、エンドヌクレアーゼは制限エンドヌクレアーゼであってよい。これらの実施形態において、制限エンドヌクレアーゼが二本鎖DNAの1本の鎖の上でだけホスホジエステル結合を切断し、二本鎖にニックを生成するように、制限エンドヌクレアーゼ認識部位は修飾される場合がある。例えば、制限酵素によって切断されない化学的修飾を、二本鎖の核酸の少なくとも1本の鎖に含めるなどの方法または方針を用いて、制限エンドヌクレアーゼの活性を修飾してもよい。このような修飾の1つの非限定的な例は、1本の鎖のホスホジエステル結合の酸素原子を硫黄原子と入れ替えることを含む。
【0034】
制限エンドヌクレアーゼを提供する実施形態において、二本鎖DNAの1本の鎖のホスホジエステル結合は、切断されて切断部位の5’側にリン酸基を、3’側にヒドロキシル基を生成する場合がある。制限エンドヌクレアーゼの非限定的な例は、Hinc II、Hind II、Ava I、Fnu4HI、Tth111IおよびNciIを含む。
【0035】
本方法は、試料をポリメラーゼと接触させることを含む。一部の実施形態において、ポリメラーゼは、鎖置換活性を有するDNAポリメラーゼであってよい。一部の実施形態において、ポリメラーゼは、5’−3’エキソヌクレアーゼ活性を欠く、3’−5’エキソヌクレアーゼ活性を欠くまたは5’−3’および3’−5’両方のエキソヌクレアーゼ活性を欠くポリメラーゼであってよい。ポリメラーゼは起源が真核生物、原核生物またはウイルスであってよく、遺伝子操作されていることも可能である。一部の実施形態において、ポリメラーゼは、周囲の(例えば、部屋)温度を含むより低い温度で働くものの中から選択される。DNAポリメラーゼの非限定的な例は、Klenowフラグメント、E.コリ(E.coli)由来のDNAポリメラーゼI、バチルス・ステアロサーモフィルス(Bacillus stearothermophilus)由来の5’→3’エキソヌクレアーゼ欠損Bst DNAポリメラーゼおよびバチルス・カルドテナックス(Bacillus caldotenax)由来の5’→3’エキソヌクレアーゼ欠損Bca DNAポリメラーゼを含む。
【0036】
本明細書で開示される方法の1つの非限定的な実施形態は、
図2に図示される。簡潔には、試料はDNAポリメラーゼおよび、エンドヌクレアーゼ認識部位(B)の二本鎖型(すなわち、相補配列)またはエンドヌクレアーゼ認識部位(B)の二本鎖型に隣接した部位にニックを入れることができるエンドヌクレアーゼの存在下においてCSC DNAと接触させられる。標的核酸(T)が試料中に存在するならば、標的核酸(T)の3’末端配列は、標的と相補的である配列(D)にハイブリダイズし、鎖置換複製(反応混合物に存在するDNAポリメラーゼによる。)を引き起こすまたは開始し、それによって、二本鎖エンドヌクレアーゼ認識部位(B)を含む二本鎖伸長配列(E)を生成する。新しく生成された二本鎖エンドヌクレアーゼ認識部位(B)の認識(反応混合物に存在するエンドヌクレアーゼによる。)および後続の新しく生成された鎖のニッキング(反応混合物に存在するエンドヌクレアーゼによる。)は、オリゴヌクレオチドシグナル配列(F)および伸長配列(E’)を生成する。ニックにおける配列(E’)の3’−OHは、鎖置換複製の以降の回のための開始部位として働くので、オリゴヌクレオチド(F)は、反応混合物中で(F)を複製し増幅し続けるDNAポリメラーゼによって、CSC DNAから取り除かれる。
【0037】
本発明による方法は、等温のまたは実質的に定温の条件下において実行されてよい。実質的に定温下で本方法を実行することに関する実施形態において、温度の若干の変動は許される。例えば、一部の実施形態において、実質的に定温は、所望のまたは確認された標的温度の範囲内で(例えば、約+/−2℃または約+/−5℃)変動してよい。実施形態において、実質的に定温は、熱サイクルを含まない温度を含んでよい。一部の実施形態において、本方法は等温または実質的に定温、例えば、(1)計算された/予測されたまたは実験的に決定された、CSC DNAのヘアピンループ構造の融解温度より低い温度、(2)およその計算された/予測されたまたは実験的に決定された、CSC DNAの配列(D)への標的核酸(T)の最適ハイブリダイゼーションまたはアニーリング温度以下の温度、(3)CSC DNAと結合する標的核酸(T)の融解温度以下の温度(一般的に、ハイブリダイゼーションまたはアニーリング温度は、融解温度よりわずかに下にある。)、または(4)反応混合物中に存在するポリメラーゼおよび/またはエンドヌクレアーゼのために計算された/予測されたまたは実験的に決定された最適反応温度またはおよその温度で実行可能である。
【0038】
本方法は、約20℃から約42℃の範囲内に下降するより低い温度を含む、約20℃から約70℃の範囲にわたる反応温度を含んでよい。一部の実施形態において、反応温度範囲は、35℃から40℃(例えば、35℃、36℃、37℃、38℃、39℃または40℃)である。他の実施形態において、反応温度は、約55℃、50℃、45℃、40℃または約30℃より低い温度を含む、65℃より低い温度である。さらに他の実施形態において、反応温度は約20℃、21℃、22℃、23℃、24℃、25℃、26℃、27℃、28℃、29℃、30℃、31℃、32℃、33℃、34℃、35℃、36℃、37℃、38℃、39℃、40℃、41℃、42℃、43℃、44℃、45℃、46℃、47℃、48℃、49℃、50℃、51℃、52℃、53℃、54℃、55℃、56℃、57℃、58℃、59℃、60℃、61℃、62℃、63℃、64℃、65℃、66℃、67℃、68℃、69℃または約70℃であってよい。
【0039】
本方法は、標的核酸の存在下において検出可能な量のシグナル配列の増幅を可能にするために十分な時間の間、実行されてよい。一部の実施形態において、反応時間は約10分から16時間までにわたってよい。さらに他の実施形態において、反応時間は約10分から120分までまたは約15分から60分までにわたってよい。
【0040】
明細書を通して、オリゴヌクレオチド(F)はシグナルDNAとも呼ばれる。シグナルDNA(F)は標的核酸(T)の存在下においてのみ生成されるので、本発明による方法は、シグナルDNA(F)の有無を検出することによって、試料中の標的核酸(T)の有無を検出する。シグナルDNAは配列によって制限されず、検出に適するいかなる配列であってもよい。シグナルDNAは、長さによって制限されることもない。好ましくは、シグナルDNAは、約5から約100の塩基であり、5から100の間のいかなる整数でもある可能性がある。一部の実施形態において、シグナルDNAは、約5から約30の核酸塩基であり、5から30の間の全整数である可能性がある。一部の実施形態において、シグナルDNAは、長さが約10から約30の塩基であり、10から30の間の全整数である可能性がある。さらにさらなる実施形態において、シグナルDNAは、長さが約15から約30の塩基であり、15から30の間の全整数である可能性がある。
【0041】
本開示による方法は、約4から約10まで、または約7から約9までのpH範囲を含む緩衝液条件下において実行されてよい。緩衝液は、約10mMから約500mMまで、または約50mMから150mMまでの塩濃度を含んでよい。一部の実施形態において、本方法は、標的核酸の存在下において、検出可能な量のシグナル配列の増幅を可能にする量のCSC DNAを用いて実行されてよい。一部の実施形態において、CSC DNA濃度は、約1nMから約100μMまで、約1nMから約150nMまで、約5nMから約50nMまでまたは約5nMから約25nMまでにわたってよい。
【0042】
シグナルDNAの存在は、当技術分野で知られている任意の方法によって検出することができる。例えば、ゲル電気泳動およびエチジウムブロマイドによる染色を用いることができる。また、シグナルDNAの存在は、蛍光偏光法、イムノアッセイ、蛍光共鳴エネルギー移動、酵素標識(例えばペルオキシダーゼまたはアルカリホスファターゼ)、蛍光標識(例えばフルオレセインまたはローダミン)、化学発光、生物発光、表面プラズモン共鳴(SPR)またはフルオロフォア修飾プローブDNA(例えば、TaqManプローブ)を用いて検出することができる。増幅産物は、例えば、ビオチンでラベルされた標識ヌクレオチドを用いて検出することもできる。このような場合、増幅産物中のビオチンは、例えば、蛍光標識アビジンまたは酵素標識アビジンを用いて検出することができる。増幅産物は、当業者に知られている酸化還元インターカレータを用いて、電極で検出することができる。増幅産物は、表面プラズモン共鳴(SPR)を用いるまたは水晶振動子マイクロバランス(QCM)を用いて検出することもできる。
【0043】
本発明による方法は、試料中の標的核酸(T)の有無を検出する。標的核酸(例えば、
図2の中の(T))は、いかなる核酸配列でも含むことができ、DNA、RNA、化学的修飾された核酸、非天然の核酸、核酸類縁体、またはそれらのいかなるハイブリッドもしくは組合せを含むことができる。したがって、一部の実施形態において、DNAはcDNA、ゲノムDNAおよび合成DNAを含んでよく、RNAは全RNA、mRNA、rRNA、siRNA、hnRNA、piRNA、aRNA、miRNAおよび合成RNAを含んでよい。一部の実施形態が特定の標的核酸配列に関するものである一方、いかなる核酸配列でも検出される標的核酸配列である可能性がある。核酸が短鎖核酸である場合でも、本開示によって、選択性と感度を伴う標的核酸の検出が可能となる。したがって、配列(D)と配列(T)の間の相補性の程度が、配列間の特異的なハイブリダイゼーションを可能にする(例えば、配列(D)および配列(T)中の相補的核酸の数は、所与の一連の反応条件下において、非特異的ハイブリダイゼーションを防ぐ。)。
【0044】
実施形態において、標的核酸配列は、例えば、ゲノムDNA、発現したmRNA、病原体(微生物、ウイルス)由来の核酸配列または治療的な核酸を含む任意の数の供給源からのものであっても、またはそれらに由来するものであってもよい。したがって、本明細書で開示されるCSC DNAおよび方法は、疾患(例えば、遺伝的原因および感染性の原因から生じる。)の診断と予後予測、汚染物質(例えば、食物性疾病、機器汚染)の同定、個別化医療(例えば、治療のモニタリングおよび/または予後予測)、などのために用いられてよい。例えば、分子診断試験は、次の感染症、B型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎(HCV)、HCV(遺伝子型1−6)、ヒト免疫不全症ウイルス1型(HIV−1)、クラミジア・トラコマチス、ナイセリア・ゴノロエエ、インフルエンザA型、インフルエンザB型、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)に関して実行することができる。
【0045】
一部の実施形態において、標的核酸は、マイクロRNA(miRNA)を含むことができる。マイクロRNAは、約22ヌクレオチドの非翻訳RNA小分子を含む。マイクロRNAは、遺伝子発現の転写および転写後調節において働く。マイクロRNAはメッセンジャーRNA(mRNA)の相補的領域と塩基対形成することによって働き、翻訳抑制または標的の分解を介して遺伝子サイレンシングをもたらす。
【0046】
miRNA機能障害と関連したヒトの疾患が多くあり、本発明による方法、組成物およびキットを診断目的のために用いることができる。例えば、miRNAは癌と関連しており、例えば、miRNA機能障害と関連していることが知られている疾患は慢性リンパ性白血病である。癌との関連がある癌マイクロRNAとして知られているいくつかの他のmiRNAがある。いくつかの例は、miR−17(配列番号21)、miR−19(配列番号22)、miR−21(配列番号23)、miR−155(配列番号24)およびmiR−569(配列番号25)を含む。さらに他のmiRNAは、ウイルス感染および細菌性の病原体に対する真核性反応と関連している。研究は、細胞外(ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori))または細胞内(サルモネラ・エンテリカ(Salmonella enterica))グラム陰性菌だけに感染後、ならびにグラム陽性(リステリア・モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes))および他の病原体(ミコバクテリウム属種(Mycobacterium)およびフランキセラ属種(Francisella))への反応の宿主マイクロRNA発現の変化を特徴づけた。(RNA Biol.、6月、9巻6号、742−50頁。)目的とする他のmiRNAは、限定するものではないが、hsa−miR−24(配列番号26)、hsa−miR−107(配列番号27)およびhsa−miR−221(配列番号28)を含む。
【0047】
標的核酸を含む場合がある試料の任意のタイプが、本明細書で開示される方法で使われてよい。このように、標的核酸を含んでいるまたは含んでいると推測される試料は、特に限定されず、例えば、全血、血清、バフィーコート、尿、糞便、脳脊髄液、精液、唾液、組織(例えば癌性組織またはリンパ節)、細胞培養(例えば哺乳動物細胞培養または細菌培養)などの生体由来の生体試料、ウイロイド、ウイルス、バクテリア、真菌、酵母、植物および動物などの核酸を含む試料、ウイルスまたはバクテリアなどの微生物を含むまたは汚染された場合がある試料(例えば食品および生物学的製剤)、および土、工業プロセスおよび製造機器、ならびに廃水などの生体物質を含む場合がある試料を含む。さらにまた、試料は本明細書で開示される方法で使われる核酸を含有する組成物を調製するために、どんな既知の方法によって加工されてもよい。このような調製の例は、細胞破砕(例えば、細胞可溶化物および抽出物)、試料分画、試料中の核酸およびmRNA濃縮試料のような特定の核酸分子群を含むことができる。本発明の標的核酸を検出する方法で用いられる試料は、上記のように生物学的製剤および天然物に由来するものに限られず、合成オリゴヌクレオチドを含む試料であってよい。
【0048】
本発明による方法は、Abbottのm2000sp試料調製システムと組み合わせて実行することができる。m2000spは、核酸を捕捉するために磁性粒子工学を用い、粒子を洗浄して非結合の試料成分を除去する。結合した核酸は溶出され、96ウエル深型プレートへ移される。Abbottのm2000spは、本技術による方法を実行するのに必要な任意の試薬を、96ウエル深型プレートに移された、洗浄された核酸と合わせることもできる。例えば、CSC DNA、ポリメラーゼ、エンドヌクレアーゼ、分子ビーコンおよび他のいかなる試薬(例えば、dNTP)も、必要に応じてまたは要望通りに添加することができる。
【0049】
本発明による方法は、ポイントオブケアプラットホームと連係させることもできる。例えば、伸長するDNA鎖へのデオキシリボヌクレオチド三リン酸(dNTP)の取り込みは、共有結合の形成および反応のpHに影響を及ぼすピロリン酸および正に荷電した水素イオンの放出を伴う。このように、本発明の方法によるシグナルDNAの合成は、例えば、ポイントオブケアマイクロpHメータを用いたpHの追跡変化によって検出することができる。例えば、Abbottのi−STATポイントオブケアシステムは、pHの分析のための、微細加工センサ、校正溶液、流体系および廃液容器を含む単回使用の使い捨てカートリッジとともに提供することができる。
【0050】
本明細書で開示される方法は、追加の試薬を含むことができる。核酸増幅反応で使用可能な他の試薬の一部の非限定的な例は、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、酢酸マグネシウムおよび硫酸マグネシウムなどの金属塩、dNTP混合物などの基質、およびトリス−HCl緩衝液、トリシン緩衝液、リン酸ナトリウム緩衝液およびリン酸カリウム緩衝液などの緩衝溶液を含む。さらに、ジメチルスルホキシドおよびベタイン(N、N、N−トリメチルグリシン)などの試薬、国際公開番号WO 99/54455に記載された酸性物質、および陽イオン複合体を用いることができる。
【0051】
本明細書で提供された方法および核酸構造は、シグナルDNAの指数関数的な増幅を可能とする方法で使用されてよい。例えば、シグナルDNAの指数関数的な増幅は、配列変換DNAを第2のシグナル増幅DNAと組み合わせて用いて達成された。2011年12月12日に出願され、その内容を参照により組み込む、米国特許出願第13/992,058号明細書として出願された国際出願PCT/JP2011/078717(小宮)を参照のこと。
【0052】
後続の実施例は、上述の態様および実施形態の実例となることを意図している。上記の開示も下記の実施例も、添付の特許請求の範囲の範囲を制限するものと考えてはならない。当業者は、本開示のさまざまな態様を記載および図示するために用いられる特定の用語によって本開示が制限されないことを認める。
【実施例】
【0053】
[実施例1]
標的DNAの存在および非存在におけるシグナルDNAの存在を検出するための反応は、配列番号1(CSC DNA #1)で表されるカバーされた配列変換DNA #1を用いて実行された。第2の反応は、配列番号7(USC DNA #1)で表されるカバーされていない配列変換DNA #1を用いて実行された。
【0054】
標的核酸は、ヒトマイクロRNA hsa−miR−24(配列番号6)であった。両反応は、最終濃度が10mM トリス−HCl、50mM NaCl、10mM MgCl2、1mM DTT、pH 7.9のNew England Biolabs(NEB)緩衝液2を含む25μLの反応体積で実行された。反応で使われたニッキングエンドヌクレアーゼは、0.1ユニット/μLの濃度のNt.AIw1であった。反応で使われたポリメラーゼは、0.08ユニット/μLの濃度のBst DNAポリメラーゼのラージフラグメントであった。dNTPは、各々200μMの最終濃度で存在した。CSC DNA #1およびUSC DNA #1は、100nMの最終濃度で反応に存在した。分子ビーコンプローブはシグナルDNAの存在を検出するために用いられ、100nMの最終濃度で存在した。
【0055】
CSC DNA #1は、次の配列、
【0056】
【化1】
を有する。
【0057】
CSC DNA #1は、任意の配列(A)(配列番号2)、ニッキング反応において使用可能なNt.AlwIエンドヌクレアーゼ認識部位(B)(配列番号3)、任意の配列(A)(配列番号2)と相補的な配列(C)(配列番号4)、および標的核酸ヒトマイクロRNA hsa−miR−24(配列番号6)と相補的な配列(D)(配列番号5)を含む。
【0058】
USC DNA #1は、次の配列、
【0059】
【化2】
を有する。
【0060】
USC DNA #1は、CSC DNA #1と共通で、同一の任意の配列(A)(配列番号2)、Nt.AlwIエンドヌクレアーゼ認識部位(B)(配列番号3)および標的核酸ヒトマイクロRNA hsa−miR−24(配列番号6)と相補的な配列(D)(配列番号5)を有する。USC DNA #1は、任意の配列(A)と相補的な配列(C)を有さず、したがって、
図1に図示されるヘアピンループ構造を形成しない。
【0061】
CSC DNA #1およびUSC DNA #1の両方は、核酸分解への抵抗性を与えるために3’反転チミジン修飾(idT)を有する。この修飾は、DNA複製の非特異的開始も防ぐ。
【0062】
標的核酸は、次の配列、
【0063】
【化3】
を有するヒトマイクロRNA hsa−miR−24に相当する。
【0064】
各々の反応においてシグナルDNAの存在を検出するために、次の分子ビーコン、
【0065】
【化4】
が使われた。
【0066】
異なる濃度(10nM、1nM、0.1nMおよび0.0nM)でヒトマイクロRNA hsa−miR−24標的DNAを検出するためのCSC DNA #1を用いた反応の結果を
図3に示す。異なる濃度(10nM、1nM、0.1nMおよび0.0nM)で存在する標的DNAを検出するためのUSC DNA #1を用いた反応の結果を
図4に示す。
図3および4において、縦軸は蛍光強度を、横軸は時間を分で示す。蛍光測定は、Bio−Rad PCRシステムCFX 96を用いて、1分間隔で120分間、37℃で実行された。
【0067】
[実施例2]
標的DNAの存在および非存在におけるシグナルDNAの存在を検出するための反応は、配列番号9(CSC DNA #2)で表されるカバーされた配列変換DNA #3を用いて実行された。標的核酸は、ヒトマイクロRNA hsa−miR−24(配列番号6)であった。
【0068】
反応は、最終濃度が10mM トリス−HCl、50mM NaCl、10mM MgCl2、1mM DTT、pH 7.9のNew England Biolabs(NEB)緩衝液2を含む25μLの反応体積で実行された。反応で使われたニッキングエンドヌクレアーゼは、0.1ユニット/μLの濃度で存在するNt.AIw1であった。反応で使われたポリメラーゼは、0.08ユニット/μLの濃度で存在するBst DNAポリメラーゼのラージフラグメントであった。dNTPは、各々200μMの最終濃度で存在した。 CSC DNA #2は、100nMの最終濃度で反応に存在した。分子ビーコンプローブはシグナルDNAの生成を検出するために用いられ、100nMの最終濃度で存在した。
【0069】
CSC DNA #2は、次の配列、
【0070】
【化5】
を有する。
【0071】
CSC DNA #2は、任意の配列(A)(配列番号2)、ニッキング反応において使用可能なNt.AlwIエンドヌクレアーゼ認識部位(B)(配列番号3)、任意の配列(A)(配列番号2)と相補的な配列(C)(配列番号10)、および標的核酸ヒトマイクロRNA hsa−miR−24(配列番号6)と相補的な配列(D)(配列番号5)を含む。CSC DNAは、3’末端反転チミジン修飾も有する。
【0072】
標的核酸は、次の配列、
5’ TGGCTCAGTTCAGCAGGAACAG 3’ (配列番号6)
を有するヒトマイクロRNA hsa−miR−24(配列番号6)に相当する。
【0073】
ヒトマイクロRNA hsa−miR−24標的DNA(配列番号6)がCSC DNA #2に結合した後に生成するシグナルDNAの存在を検出するために、次の分子ビーコン、
【0074】
【化6】
が使われた。
【0075】
異なる濃度(10nM、1nM、0.1nMおよび0.0nM)でヒトマイクロRNA hsa−miR−24標的DNA(配列番号6)を検出するためのCSC DNA #2を用いた反応の結果を
図5に示す。
図5において、縦軸は蛍光強度を、横軸は時間を分で示す。蛍光測定は、Bio−Rad PCRシステムCFX 96を用いて、1分間隔で120分間、37℃で実行された。
【0076】
[実施例3]
標的DNAの存在および非存在におけるシグナルDNAの存在を検出するための反応は、配列番号11(CSC DNA #3)で表されるカバーされた配列変換DNA #3を用いて実行された。標的核酸は、ヒトマイクロRNA hsa−miR−24(配列番号6)であった。
【0077】
反応は、最終濃度が10mM トリス−HCl、50mM NaCl、10mM MgCl2、1mM DTT、pH 7.9のNew England Biolabs(NEB)緩衝液2を含む25μLの反応体積で実行された。反応で使われたニッキングエンドヌクレアーゼは、0.1ユニット/μLの濃度で存在するNt.AIw1であった。反応で使われたポリメラーゼは、0.08ユニット/μLの濃度で存在するBst DNAポリメラーゼのラージフラグメントであった。dNTPは、各々200μMの最終濃度で存在した。CSC DNA #3は、100nMの最終濃度で反応に存在した。分子ビーコンプローブはシグナルDNAの生成を検出するために用いられ、100nMの最終濃度で存在した。
【0078】
CSC DNA #3は、次の配列、
【0079】
【化7】
を有する。
【0080】
CSC DNA #3は、任意の配列(A)(配列番号2)、ニッキング反応において使用可能なNt.AlwIエンドヌクレアーゼ認識部位(B)(配列番号3)、任意の配列(A)(配列番号2)と相補的な配列(C)(配列番号12)、および標的核酸ヒトマイクロRNA hsa−miR−24(配列番号6)と相補的な配列(D)(配列番号5)を含む。CSC DNA#3は、3’末端反転チミジン修飾も有する。
【0081】
ヒトマイクロRNA hsa−miR−24標的DNA(配列番号6)がCSC DNA #3に結合した後に生成するシグナルDNAの存在を検出するために、次の分子ビーコン、
【0082】
【化8】
が使われた。
【0083】
異なる濃度(10nM、1nM、0.1nMおよび0.0nM)で標的DNAを検出するためのCSC DNA #3を用いた反応の結果を
図6に示す。
図6において、縦軸は蛍光強度を、横軸は時間を分で示す。蛍光測定は、Bio−Rad PCRシステムCFX 96を用いて、1分間隔で120分間、37℃で実行された。
【0084】
[実施例4]
標的DNAの存在および非存在におけるシグナルDNAの存在を検出するための反応は、配列番号13(CSC DNA #4)で表されるカバーされた配列変換DNA #4を用いて実行された。標的核酸は、ヒトマイクロRNA hsa−miR−24(配列番号6)であった。
【0085】
反応は、最終濃度が10mM トリス−HCl、50mM NaCl、10mM MgCl2、1mM DTT、pH 7.9のNew England Biolabs(NEB)緩衝液2を含む25μLの反応体積で実行された。反応で使われたニッキングエンドヌクレアーゼはNb.BbvCIであり、Nb.BbvCIは0.1ユニット/μLの濃度で存在した。反応で使われたポリメラーゼはBst DNAポリメラーゼのラージフラグメントであり、Bst DNAポリメラーゼのラージフラグメントは0.08ユニット/μLの濃度で存在した。dNTPは、各々200μMの最終濃度で存在した。CSC DNA #4は、100nMの最終濃度で反応に存在した。100nMの最終濃度で存在する分子ビーコンプローブを用いてシグナルDNAの生成を検出した。
【0086】
CSC DNA #4は、次の配列、
【0087】
【化9】
を有する。
【0088】
CSC DNA #4は、任意の配列(A)(配列番号14)、ニッキング反応において使用可能なNb.BbvCIエンドヌクレアーゼ認識部位(B)(配列番号15)、任意の配列(A)(配列番号14)と相補的な配列(C)(配列番号16)、および標的核酸ヒトマイクロRNA hsa−miR−24(配列番号6)と相補的な配列(D)(配列番号5)を含む。CSC DNA#4は、3’末端反転チミジン修飾も有する。
【0089】
ヒトマイクロRNA hsa−miR−24標的DNA(配列番号6)がCSC DNA #4に結合した後に生成するシグナルDNAの存在を検出するために、次の分子ビーコン、
【0090】
【化10】
が使われた。
【0091】
異なる濃度(10nM、1nM、0.1nMおよび0.0nM)でヒトマイクロRNA hsa−miR−24(配列番号6)標的DNAを検出するためのCSC DNA #4を用いた反応の結果を
図7に示す。
図7において、縦軸は蛍光強度を、横軸は時間を分で示す。蛍光測定は、Bio−Rad PCRシステムCFX 96を用いて、1分間隔で120分間、37℃で実行された。
【0092】
[実施例5]
標的DNAの存在および非存在におけるシグナルDNAの存在を検出するための反応は、配列番号17(CSC DNA #5)で表されるカバーされた配列変換DNA #5を用いて実行された。標的核酸は、ヒトマイクロRNA hsa−miR−24(配列番号6)であった。
【0093】
反応は、最終濃度が10mM トリス−HCl、50mM NaCl、10mM MgCl2、1mM DTT、pH 7.9のNew England Biolabs(NEB)緩衝液2を含む25μLの反応体積で実行された。反応で使われたニッキングエンドヌクレアーゼはNb.BbvCIであり、Nb.BbvCIは0.1ユニット/μLの濃度で存在した。反応で使われたポリメラーゼはBst DNAポリメラーゼのラージフラグメントであり、Bst DNAポリメラーゼのラージフラグメントは0.08ユニット/μLの濃度で存在した。dNTPは、各々200μMの最終濃度で存在した。CSC DNA #5は、100nMの最終濃度で反応に存在した。100nMの最終濃度で存在する分子ビーコンプローブを用いてシグナルDNAの生成を検出した。
【0094】
CSC DNA #5は、次の配列、
【0095】
【化11】
を有する。
【0096】
CSC DNA #5は、任意の配列(A)(配列番号14)、ニッキング反応において使用可能なNb.BbvCIエンドヌクレアーゼ認識部位(B)(配列番号15)、任意の配列(A)(配列番号14)と相補的な配列(C)(配列番号18)、および標的核酸ヒトマイクロRNA hsa−miR−24(配列番号6)と相補的な配列(D)(配列番号5)を含む。CSC DNA #5は、3’末端反転チミジン修飾も有する。
【0097】
ヒトマイクロRNA hsa−miR−24標的DNA(配列番号6)がCSC DNA #5に結合した後に生成するシグナルDNAの存在を検出するために、次の分子ビーコン、
【0098】
【化12】
が使われた。
【0099】
異なる濃度(10nM、1nM、0.1nMおよび0.0nM)でヒトマイクロRNA hsa−miR−24(配列番号6)標的DNAを検出するためのCSC DNA #5を用いた反応の結果を
図8に示す。
図8において、縦軸は蛍光強度を、横軸は時間を分で示す。蛍光測定は、Bio−Rad PCRシステムCFX 96を用いて、1分間隔で120分間、37℃で実行された。
【0100】
[実施例6]
標的DNAの存在および非存在におけるシグナルDNAの存在を検出するための反応は、配列番号19(CSC DNA #6)で表されるカバーされた配列変換DNA #6を用いて実行された。標的核酸は、ヒトマイクロRNA hsa−miR−24(配列番号6)であった。
【0101】
反応は、最終濃度が10mM トリス−HCl、50mM NaCl、10mM MgCl2、1mM DTT、pH 7.9のNew England Biolabs(NEB)緩衝液2を含む25 μLの反応体積で実行された。反応で使われたニッキングエンドヌクレアーゼはNb.BbvCIであり、Nb.BbvCIは0.1ユニット/μLの濃度で存在した。反応で使われたポリメラーゼはBst DNAポリメラーゼのラージフラグメントであり、Bst DNAポリメラーゼのラージフラグメントは0.08ユニット/μLの濃度で存在した。dNTPは、各々200μMの最終濃度で存在した。 CSC DNA #6は、100nMの最終濃度で反応に存在した。100nMの最終濃度で存在する分子ビーコンプローブを用いてシグナルDNAの生成を検出した。
【0102】
CSC DNA #6は、次の配列、
【0103】
【化13】
を有する。
【0104】
CSC DNA #6(配列番号19)は、任意の配列(A)(配列番号14)、ニッキング反応において使用可能なNb.BbvCIエンドヌクレアーゼ認識部位(B)(配列番号15)、任意の配列(A)(配列番号14)と相補的な配列(C)(配列番号20)、および標的核酸ヒトマイクロRNA hsa−miR−24(配列番号6)と相補的な配列(D)(配列番号5)を含む。 CSC DNA #6は、3’末端反転チミジン修飾も有する。
【0105】
ヒトマイクロRNA hsa−miR−24標的DNA(配列番号6)がCSC DNA #6に結合した後に生成するシグナルDNAの存在を検出するために、次の分子ビーコン、
【0106】
【化14】
が使われた。
【0107】
異なる濃度(10nM、1nM、0.1nMおよび0.0nM)で存在する標的DNAを検出するためのCSC DNA #6を用いた反応の結果を
図9に示す。
図9において、縦軸は蛍光強度を、横軸は時間を分で示す。蛍光測定は、Bio−Rad PCRシステムCFX 96を用いて、1分間隔で120分間、37℃で実行された。
【0108】
[実施例7]
クラミジア属は、非運動性、グラム陰性、真核細胞の偏性細胞内寄生体である。本発明による方法を使って、生体試料のクラミジア属に由来する標的核酸の有無を検査することができる。例えば、標的核酸と相補的な配列(D)が、クラミジア属に由来する核酸と相補的である配列(D)を含む、本明細書に記載のCSC DNAが使用可能である。
【0109】
試料は、子宮頚内膜、膣、尿道から採取されるスワブ検体、または被験者の尿試料でありうる。試料調製は、検体から核酸の抽出を完全に自動化し、次いで96ウエルオプティカルリアクションプレートに抽出された核酸を分注するAbbottのm2000sp試料調製システムを使用して実行可能である。抽出された核酸に加えて、(1)クラミジア属に由来する核酸と相補的である配列(D)を有するCSC DNA、(2)ポリメラーゼ、および(3)CSC DNAのエンドヌクレアーゼ部位(B)にニックを入れるエンドヌクレアーゼも96ウエルプレートに分注することができる。さらに、反応緩衝液と他の試薬(例えば、dNTPおよび分子ビーコンプローブ)は、必要に応じて96ウエルプレートに分注することができる。
【0110】
[実施例8]
ナイセリア・ゴノロエエは、性感染症淋病の原因であるグラム陰性のコーヒー豆型の双球菌バクテリアの種である。本発明による方法を使って、生体試料のN.ゴノロエエに由来する標的核酸の有無を検査することができる。例えば、標的核酸と相補的な配列(D)が、N.ゴノロエエに由来する核酸と相補的である配列(D)を含む、本明細書に記載のCSC DNAが使用可能である。
【0111】
試料は、男性尿道、子宮頚内膜または膣から採取されるスワブ検体、または男性および女性の尿試料でありうる。試料調製は、検体から核酸の抽出を完全に自動化し、次いで96ウエルオプティカルリアクションプレートに抽出された核酸を分注するAbbottのm2000sp試料調製システムを使用して実行可能である。抽出された核酸に加えて、(1)N.ゴノロエエに由来する核酸と相補的である配列(D)を有するCSC DNA、(2)ポリメラーゼ、および(3)CSC DNAのエンドヌクレアーゼ部位(B)にニックを入れるエンドヌクレアーゼも96ウエルオプティカルリアクションプレートに分注することができる。さらに、反応緩衝液と他の試薬(例えば、dNTPおよび分子ビーコンプローブ)は、必要に応じて96ウエルプレートに分注することができる。
【0112】
[実施例9]
C型肝炎(HCV)ウイルスは、9,500ヌクレオチドのゲノムを有する一本鎖RNAウイルスである。本発明による方法を使って、生体試料のHCVに由来する標的核酸の有無を検査することができる。例えば、標的核酸と相補的な配列(D)が、HCVに由来する核酸と相補的である配列(D)を含む、本明細書に記載のCSC DNAが使用可能である。
【0113】
ヒト血清および血漿(EDTA)検体が使用可能である。試料調製は、検体から核酸の抽出を完全に自動化し、次いで96ウエルオプティカルリアクションプレートに抽出された核酸を分注するAbbottのm2000sp試料調製システムを使用して実行可能である。抽出された核酸に加えて、(1)HCVに由来する核酸と相補的である配列(D)を有するCSC DNA、(2)ポリメラーゼ、および(3)CSC DNAのエンドヌクレアーゼ部位(B)にニックを入れるエンドヌクレアーゼも96ウエルプレートに分注することができる。さらに、反応緩衝液と他の試薬(例えば、dNTPおよび分子ビーコンプローブ)は、必要に応じて96ウエルプレートに分注することができる。
【0114】
HCVの異なる遺伝子型は本発明による方法を用いて検出することもできる。例えば、標的核酸と相補的な配列(D)が、HCV遺伝子型IIに由来する核酸と相補的である配列(D)によって置き換えられている前述のCSC DNAが使用可能である。試料調製は、上述のように実行することができる。
【0115】
[実施例10]
HBVは、約3,200塩基対の小型、環状、部分的に二本鎖のDNAウイルスであり、本発明による方法を使って、試料中の標的HBV核酸の有無を検出することができる。例えば、標的核酸と相補的な配列(D)が、HBVに由来する核酸と相補的である配列(D)を含む、本明細書に記載のCSC DNAが使用可能である。
【0116】
ヒト血清および血漿(EDTA)検体が使用可能である。試料調製は、検体から核酸の抽出を完全に自動化し、次いで96ウエルオプティカルリアクションプレートに抽出された核酸を分注するAbbottのm2000sp試料調製システムを使用して実行可能である。抽出された核酸に加えて、(1)HBVに由来する核酸と相補的である配列(D)を有するCSC DNA、(2)ポリメラーゼ、および(3)CSC DNAのエンドヌクレアーゼ部位(B)にニックを入れるエンドヌクレアーゼも96ウエルプレートに分注することができる。さらに、反応緩衝液と他の試薬(例えば、dNTPおよび分子ビーコンプローブ)は、必要に応じて96ウエルプレートに分注することができる。
【0117】
[実施例11]
ヒト免疫不全症ウイルス1型(HIV−1)は、後天性免疫不全症候群(AIDS)を引き起こすレトロウイルスである。本発明による方法を使って、試料中のHIV−1核酸の存在を検出することができる。例えば、標的核酸と相補的な配列(D)が、HIV−1に由来する核酸と相補的である配列(D)を含む、本明細書に記載のCSC DNAが使用可能である。
【0118】
試料調製は、検体から核酸の抽出を完全に自動化し、次いで96ウエルオプティカルリアクションプレートに抽出された核酸を分注するAbbottのm2000sp試料調製システムを使用して実行可能である。抽出された核酸に加えて、(1)HIV−1に由来する核酸と相補的である配列(D)を有するCSC DNA、(2)ポリメラーゼ、および(3)CSC DNAのエンドヌクレアーゼ部位(B)にニックを入れるエンドヌクレアーゼも96ウエルプレートに分注することができる。さらに、反応緩衝液と他の試薬(例えば、dNTPおよび分子ビーコンプローブ)は、必要に応じて96ウエルプレートに分注することができる。
【0119】
応用例を特定の態様および実施形態に関して記載されているが、本明細書で提供された本開示に変更がなされてよいことは、当業者によって理解され、均等物は本開示の範囲を逸脱しない範囲で置き換えられてよい。したがって、応用例は開示された特定の態様および実施形態に限定されるべきではないが、添付の特許請求の範囲内に収まるすべての態様および実施形態を含むように理解され、認められなければならない。
【0120】
【表1】
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]