特許第6739342号(P6739342)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6739342
(24)【登録日】2020年7月27日
(45)【発行日】2020年8月12日
(54)【発明の名称】流体処理装置およびプロセス
(51)【国際特許分類】
   B01F 5/04 20060101AFI20200730BHJP
   B01F 3/04 20060101ALI20200730BHJP
   B01F 5/02 20060101ALI20200730BHJP
   B01J 19/26 20060101ALI20200730BHJP
   C22B 3/22 20060101ALI20200730BHJP
   C22B 11/00 20060101ALI20200730BHJP
【FI】
   B01F5/04
   B01F3/04 A
   B01F5/02 A
   B01J19/26
   C22B3/22
   C22B11/00 101
【請求項の数】11
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2016-548445(P2016-548445)
(86)(22)【出願日】2014年10月14日
(65)【公表番号】特表2016-534874(P2016-534874A)
(43)【公表日】2016年11月10日
(86)【国際出願番号】IB2014065286
(87)【国際公開番号】WO2015056159
(87)【国際公開日】20150423
【審査請求日】2017年9月1日
(31)【優先権主張番号】2013/07734
(32)【優先日】2013年10月17日
(33)【優先権主張国】ZA
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】516114617
【氏名又は名称】シング アショク エイドリアン
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】シング アショク エイドリアン
【審査官】 中村 泰三
(56)【参考文献】
【文献】 中国実用新案第203030423(CN,U)
【文献】 特開平07−241494(JP,A)
【文献】 特開平10−099728(JP,A)
【文献】 特開2011−161390(JP,A)
【文献】 特開平08−336755(JP,A)
【文献】 特開昭58−221240(JP,A)
【文献】 特表2010−502468(JP,A)
【文献】 特開2008−173628(JP,A)
【文献】 米国特許第07237574(US,B1)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0222744(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0186672(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0027100(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01F 3/04、5/02−04
B05B 1/00
B01J 19/26
C22B 3/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スラリ及び少なくとも1つのガスの成分が加わる物理または化学反応のような、前記スラリ及び前記ガスが接触する物理又は化学反応を実行するための流体処理装置であって、前記流体処理装置は、スラリが流れることができる、第1と第2チャンバである少なくとも2つのチャンバを備え、前記2つのチャンバは、前記第1チャンバ内に入り口を、前記第2チャンバ内に出口を有する、少なくとも1つのチョークノズルによって分離されていて、前記チョークノズルは、その入口における収束セクションと、スロートセクションと、前記スロートセクション直後の後方対向ステップと、前記第2チャンバ内で開放するその出口における出口セクションと、を含み、前記チョークノズルは、正常運転条件の下のチョーク流の結果、キャビテーションを促進するように構成されており、
前記流体処理装置は、前記後方対向ステップの上流側に設けられた1つ以上のガス入口であって、前記スラリの中でガスを拡散させる渦巻く動作が結果として生じるように、スラリの流れに対し一般に接線方向に横に延びる軸を有する1つ以上の前記ガス入口を含む流体処理装置。
【請求項2】
ミキシングノズルが、チョークノズルに入る前またはチョークノズルから出た後で、あるいはその両方で、流体を混合するために前記流体処理装置内に含まれ、ミキシングノズルが、その入口における収束セクションと、スロートトセクションと、スロートセクション直後の後方対向ステップと、下流チャンバ内に開放するその出口における出口セクションと、を有する、請求項1に記載の流体処理装置。
【請求項3】
ノズルの収束セクションが、1から35度の円錐角を有する、請求項1又は請求項2に記載の流体処理装置。
【請求項4】
前記円錐角が15から35度である、請求項3に記載の流体処理装置。
【請求項5】
チョークノズルの前記後方対向ステップが、前記スロートの直径の3から10%まで、スロートセクションを越えて放射状に外へ拡がる、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の流体処理装置。
【請求項6】
前記後方対向ステップが、前記スロートの直径の4から8%まで、前記スロートセクションを越えて放射状に外へ拡がる、請求項5に記載の流体処理装置。
【請求項7】
前記出口セクションが1から8度の円錐角で拡がる、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の流体処理装置。
【請求項8】
前記出口セクションが2から8度の円錐角で拡がる、請求項7に記載の流体処理装置。
【請求項9】
ノズルへ拡がる出口セクションが、更なる連続した後方対向ステップを前記出口セクションに沿って有する、請求項1から請求項8いずれか1項に記載の流体処理装置。
【請求項10】
少なくとも1つのガスの成分が、チョーク流を利用することによりサイズが低減されて混入された泡の形態の前記ガスを伴うスラリにおける少なくとも1つの成分との物理または化学反応に加わるよう、前記スラリ及び前記ガスが接触するプロセスで生じる化学または物理反応を高めるプロセスにおいて、前記プロセスは、前記スラリを、チョークノズルを通って、第1チャンバから第2チャンバへと通過させることを含み、前記チョークノズルは、収束セクションと、スロートセクションと、前記スロートセクション直後の後方対向ステップと、出口セクションと、を備え、前記出口セクションでは、前記スラリの方向性あるフロー、角速度、遠心加速度、および直線加速度は、前記チョークノズルを通るチョーク流の結果として生じるキャビテーションを提供する条件を形成する、プロセスであって、
前記プロセスは、前記スラリ内にガスを拡散すること、及び、前記スロートセクションを通して加速し、泡を内破させ多数のより小さな泡を形成させる前記スラリ内に泡を発生することを含み、前記後方対向ステップの上流側に設けられた1つ以上のガス入口であって、前記スラリの中でガスを拡散させる渦巻く動作が結果として生じるように、スラリの流れに対し一般に接線方向に横に延びる軸を有する1つ以上の前記ガス入口を介してガスが導入されることを特徴とするプロセス。
【請求項11】
前記プロセスが、鉱石から金と他の鉱物を分離するプロセスの一部を形成し、
低減されたシアン化合物消費および/または改善された金属浸出のために鉱石を十分に酸化させるように、および/または、鉱石からの金粒子の浮選を容易化するように、粉砕鉱石、水およびシアン化カルシウムあるいはシアン化ナトリウムのスラリ内に、酸素または空気が拡散される、請求項10に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[発明の分野]
本発明は、スラリまたはパルプを含む流体媒体を処理するための流体処理装置に関し、より詳細には、チョーク流を利用することにより、プロセスで生じる化学または物理反応を高める装置およびプロセスに関し、また関連する水圧キャビテーションを提供する。
【0002】
本発明の適用は、単一または多数の流体相で起こる反応およびプロセスのみでなく、流体および少なくとも1つのガスの成分が加わる物理または化学反応のプロセスのような、1つ以上の流体およびガスが接触するものも含む。従って、本発明の適用は、スラリまたはパルプおよび酸化ガスに混合され、チョーク流に晒される金を含む貴金属の抽出;廃棄物である処理溶液、パルプ、および、スラリ内の、より低いレベルの残余したシアン化合物へのシアン化合物破壊;処理溶液、パルプ、および、スラリからのヒ素の除去;等の化学的抽出プロセスにまで及ぶ。
【0003】
本発明によって提供されるようなチョーク流の利用から利益を得ることができるプロセスで生じる多くの他の化学および物理反応が、本発明の範囲以内に疑いなくある。
[発明の背景]
鉱石から金やその他の貴金属を抽出するために、シアン化合物は、リキシビアント(lixiviant)として一般に使用される。スラリまたはパルプを形成するために、粉砕鉱石は、水等の液体と混合され、その後、これにシアン化カルシウムまたはシアン化ナトリウムが加えられる。酸化剤は、金、その他の金属の溶解に必要であり、酸素ガスが時々使用されるものの、大気は、酸化剤として使用するための酸素ガスの慣習的な源である。
【0004】
しかし、鉱石から金の最大量を回収するように酸化を生じさせるために、酸素がスラリ内で十分拡散されることを確実にする場合に、問題が生じる。空気あるいは他の酸化化学物質と、50%の以上の固体の濃度を有するスラリとの混合に対しては、強い抵抗があり、その結果、泡の形態である空気の一部だけが、酸化のために供給するべきスラリ中に溶解してしまう。
【0005】
スラリへの酸素の注入に最も一般に用いられている方法は、攪拌機を含むタンクまたは容器内に空気または酸素を注入するランス/ノズルアレンジメントを使用することである。この時、撹拌によるせん断は、タンク内のガスを分散させるために使用される。しかしながら、この方法の欠点は、攪拌機の混合動作から発生したせん断とレイノルズ数が、比較的低いことである。その結果、すぐに引火する傾向がある大きな泡が形成され、低いガスホールドアップ、ガスの低い溶解レベル、および低い利用効率に帰着する。
【0006】
他の方法は、背圧によりパイプを通してスラリを吸い上げること、及び、パイプまたはランスを通してのガス注入と、スロットを通してのガス注入と、多孔性の媒体を通してのガス注入(それぞれの場合が、ガスを泡に分解するために、システム内の乱流に依存する)と、のうちの1つを含んでいる。
【0007】
これらのシステムは、一般に、撹拌されたタンク内へのガスの注入より良く機能するが、幾つかの欠点がある。例えば、相対的なガスホールドアップおよび利用効率は、まだ比較的低く;頻繁な外側の変更が必要となる高い摩耗があり;注入対象のガスは、システムの背圧を上回るように加圧されなければならない。
【0008】
別の方法は、ベンチュリまたは排出装置の使用を含み、これは、スラリ内にガスを引き込む吸引の手段を作る。しかしながら、欠点は、システムが圧力をかけられていないこと;引火の恐れのある更に大きな泡が作られること;また、ガスホールドアップおよびガス利用効率が比較的低いこと、である。
【0009】
従って、とりわけ、スラリ内へのガスの拡散を促進するための、あるいはプロセス流体中に水圧キャビテーションを発生するための、代替装置およびプロセスの必要がある。
本明細書では、流体は、パルプまたはスラリ等、固体材料を含んでも良い液体物質の他に、混入されたガス泡あるいは空気も含んでもよい液体物質を含むと見なされることになっている。液体は、水あるいは他の液体でもよく、固体材料は、粉砕または砕いた鉱石、重金属、水汚染物質、廃液、下水、セルロース等を含んでいてもよい。
[発明の概要]
本発明によれば、それによって流体が流れることができる、少なくとも第1及び第2チャンバの少なくとも2つのチャンバを含み、2つのチャンバは、第1チャンバ内に入り口を、第2チャンバ内に出口を有する少なくとも1つのチョークノズルによって分離され、そこにおいては、チョークノズルは、その入口における収束セクションと、スロートセクションと、スロートセクション直後の後方対向ステップと、第2チャンバ内に開放する出口における出口セクションと、を備える流体処理装置が提供される。
【0010】
チョークノズルは、各々、断面円形である、入り口、スロートセクション、および出口セクションを備えたベンチュリの一般的特徴を有し、出口セクションは好ましくは拡がっている。
【0011】
流体処理装置は、チョークノズルを通るチョーク流状態を許容するように特に構成される。チョークノズルのスロートセクションの直径は、正常運転状態の下で、チョークノズルを通って流れる流体の流れをチョークするように選択される。従って、チョークノズルの設計は、要求される体積流量、および、処理される液体の特性によって変化する。典型的には、より揮発性のある液体は、約5m/sものより低い線速度でチョークする一方、水および水中のスラリは、約25m/sの領域において、はるかに高い線速度でチョークする。
【0012】
チャンバは、第2チャンバの垂直方向上に第1チャンバを有した状態で配置されてもよく、そこにおいては、幾つかの追加チョークノズルあるいは混合ノズルを、任意に、入口内、又は、垂直に対立するものとして、一般的に水平な軸を備えた移動通路内に配置できる。
【0013】
流体処理装置は、チョークノズルに入る前に、あるいはチョークノズルを離れた後のいずれか、あるいはその両方において、プロセス流体内へ、流体、特にガスを混合するための混合ノズルを含んでいてもよく、そこにおいては、混合ノズルは、その入口における収束セクションと、スロートセクションと、スロートセクションの直後の後方対向ステップと、下流チャンバ内に開放する出口における出口セクションと、を備える。基礎流体としての水の実例では、混合ノズルを通る典型的な線速度は、典型的には3〜12m/sの間であり、最も好ましくは8〜10m/sの間である。
【0014】
各ノズルの収束セクションは、1〜35度、より好ましくは、15〜30度、そして最も好ましくは約30度の円錐角を有していてもよい。
後方対向ステップは、一般に、少なくともある程度まで、スロートの直径に依存する距離によって、スロートセクションを越えて放射状に外へ延びていてもよく、特にチョークノズルの場合には、スロートの直径の約3〜約10%、好ましくは、4〜8%、そして最も好ましくは4.5〜5%である。より小さな直径スロートについては、これは、約1〜4mm、例えば約2〜3mmのステップを意味する。
【0015】
出口セクションは、より好ましくは、ディフューザセクションとしての役目をするために拡がり、1〜8度、より好ましくは2〜8度、そして最も好ましくは4〜8度の円錐角を有していてもよい。さらにより好ましくは、円錐角は約4度である。
【0016】
装置は、(スラリまたはパルプを含む)流体中のガスの拡散のために整えられてもよく、その場合、第2チャンバは1つ以上のガス入口を含んでいてもよく、入口は、結果として渦巻く動作をするノズルに対して一般的に接線である流れの方へガスが促されてもよいように、それらの軸がノズルの軸に対して横に延びるように位置決めされている。
【0017】
ノズルへ拡がる出口セクションが、更なる連続した後方対向ステップを、出口セクションに沿って有していてもよい。
流体の1つ以上の構成物質を分離するか、浄化するか、浸出するか、酸化させるために、装置はリアクタと流体連結するように構成されてもよい。
【0018】
単一のチョークノズル、あるいは、上記のような1つより多いチョークノズルの列である第1アレンジメントが、第1チャンバの床から第2チャンバ内に延びる、少なくとも第1、第2、および第3チャンバと;第1チャンバ内へ通じる流体入口であって、当該流体入口は、チョークノズルを通る流体の流れの方向に対して横に位置決めされ;単一のチョークノズル、あるいは、上記のような1つより多いチョークノズルの列である第2アレンジメントは、第2チャンバの床から第3のチャンバ内に延び、そこにおいては、第2アレンジメント及び下流のアレンジメントのノズルの入口は、直ぐ上流のアレンジメントからのノズルの出口と直接一致し;第2と第3チャンバの各々へ通じるガスまたは流体の入口、各入口は、チョークノズルに対して横に、そして、ノズル出口と一致またはこの出口より少し下流に位置決めされ;単一のチョークまたはミキシングノズル、あるいは、上記のような1つより多いチョークまたはミキシングノズルの列であるアレンジメントによって相互に連結された、オプションである第4の更なるチャンバと、を備える装置をも、本発明は提供する。
【0019】
装置は、上記の連続チャンバの上または間に、追加チャンバを更に含んでいてもよく、その追加チャンバは、流体が流れることができる一般的な接線出口を有しており、その出口は、流体が、単一のチョークノズルまたは1つより多いチョークノズルの列を床内に有する下方のチャンバ内へと接線方向に戻されるように、概してU字型である。上記のようなチョークノズルの1つ以上のアレンジメントが、入口内に、好ましくは、入口が追加チャンバ下のチャンバに入る場所の近くに、位置決めされてもよい。ガスまたは流体入口は、入口のノズル出口の直ぐ下流の入口内に通じていてもよい。
【0020】
本発明は、また、チョーク流を利用することによりプロセスで生じる化学または物理反応を高めるプロセスを提供し、その方法は、流体をチョークノズルに通過させることを含み、チョークノズルは、収束セクションと、スロートセクションと、スロートセクション直後の後方対向ステップと、出口セクションと、を備え、出口セクションでは、流体の方向性ある流れ、角速度、遠心加速度、および直線加速度は、前記チョークノズルを通るチョーク流を提供する条件を形成する。
【0021】
本発明はさらに、流体内にガスを拡散させるプロセスを提供し、そのプロセスは、スロートセクションを通して加速する流体内に泡を発生させることと、その後、泡を内破させ、多数のより小さな泡を作ることと、を含む。泡の内破は、出口セクション、好ましくは広がるセクションである出口セクションで、またはチョークノズルの下流域で生じてもよい。プロセスは、流体吐出のポイントでノズルを出る流体の噴射内へ、あるいは上へ、ガスを横方向に、好ましくは概して接線方向に注入し、それにより流体内に注入されたガスを混入し、流体に渦巻く運動を与えるステップを更に含んでいてもよい。
【0022】
内破のプロセスによって形成される泡は、好ましくはサイズが50ミクロメートル未満であり;好ましくは1ミクロメートル未満;そしてより好ましくは1ナノメートル未満で、かつ流体の中で保持されるように十分に小さい。
【0023】
1つのノズルを出る流体の噴射は、直ぐ隣接するノズル等に向けられてもよく、それにより、泡の内破および一層のキャビテーションのプロセスにおいて機会が増す。
プロセスは、鉱石から金と他の鉱物を分離するプロセスの一部を形成していてもよく、より具体的には、そのプロセスは、低減されたシアン化合物の消費および/または改善された金属浸出のために鉱石を十分に酸化させるように、および/または、鉱石からの金粒子の浮選を容易化するように、粉砕鉱石、水およびシアン化カルシウムあるいはシアン化ナトリウムのスラリ内に酸素または空気が十分に拡散されることが、確実にされてもよい。
【0024】
本発明は、更に、シアン化合物を含む流体内のシアン化合物量を減らすためのプロセスを提供し、そのプロセスは、上記のような装置内の流体のpHおよびEh(mVで測定された酸素還元電位)を調整するステップと;カーボン触媒作用によって、流体内のシアン化合物を酸化させることと、を含む。
【0025】
SOと空気あるいは酸素との組み合わせ等のEh調整剤および硫酸銅等の触媒によって、pHおよびEhの調節が行なわれてもよい。過酸化物、二酸化マンガン、次亜塩素酸ナトリウム、過マンガン酸カリウム、重クロム酸カリウムあるいはオゾン等の、他のEh調整剤が使用されてもよい。シアン化合物酸化は、活性炭素または活性炭を使用して行なわれてもよい。プロセスは、単一の容器、あるいは2つ以上の容器内で行なわれてもよい。
【0026】
流体は、ヒ素あるいはその誘導体を含んでいてもよく、本発明のプロセスは、流体にヒ素を溶かし;その後、安定した形で、流体にて溶解したヒ素を析出することを目的としてもよい。ヒ素が析出させられた流体は、流体から価値のある金属を取り除くために一層の処理が行われてもよい。
【0027】
本発明の上記およびその他の特徴がより完全に理解されるように、発明の様々な実施例は、添付図面を参照しつつ以下に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の多数の異なる実施例で使用することができるチョークノズルの断面立面図である。
図2】本発明の多数の異なる実施例で使用することができる、スロートセクションより下流に、軸方向に間隔を有する複数の後方対向ステップを有するミキシングノズルの、同様の断面立面図である。
図3】流体内でのガス拡散を高めることを特に目的とする本発明による装置の1つの実施例の立面図であり、点線により、2つのチョークノズルおよび2つの同軸のミキシングノズルを示している。
図4】ラインII‐IIに沿った、図1に示される装置の断面図である。
図5】ノズルの追加アレンジメントを使用した、本発明による装置の代替実施例の概略断面立面図である。
図6図5に示される本発明による装置の実施例の、ラインVI‐VIに沿った概略断面平面図である。
図7】入口として単一軸のミキシングノズルを使用した、本発明による装置の代替実施例の概略断面立面図である。
図8】本発明による装置の代替的であり簡易化された実施例の、概略断面立面図である。
図9】周囲の液体の噴出を発生する固定表面に接近して内破するキャビテーションの泡の発達の概略図である。
図10】音ルミネセンスが左から右の方向にどのように進行するかを示す概略図である。
図11】断続的なガスの混入を示す低速ジェットを示す。
図12】チョークノズルを出る流体ジェット内の乱流を通して、および、チョークノズルを出るジェットを囲むせん断層を通して、ガスの封入がどのように生じ得るかを示す高速ジェットを示す。
図13】ガスの封入が、どのようにノズルの受け入れカップからの流体のスプラッシュ(跳ね)を通して生じ得るかを示す。
図14】ラバールノズルを通る流体の図を示し、温度(T)および圧力(P)に対する影響とともに、近似流速(v)を示している。
図15】流体の静止プールに入る小滴によるガス封入を示している。
図16】単一のタンクに関連して本発明の装置を使用するための、可能な2ステージプロセスのブロック図である。
図17】金の浸出に適用された本発明の効果の実証のための実地試験の結果を示すグラフである。
図18図17に基づくテストにおける、シアン化合物の消費の減少を示すグラフである。
図19】処理溶液からのヒ素の溶解に適用された本発明の効果を実証のための、実地試験の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
流体内でガスが分散される本発明のプロセスにおいて、微小泡が液体内で固体球体のように作用するが、結合も引火もしないように、好ましくは直径1ミクロメートル未満、より好ましくは、ピコメートルの直径の範囲の超微細泡が形成されるように、ガスが流体に吹き込まれる。
【0030】
超微細泡の生成は、流体内のガスホールドアップを増加させ;流体の中へのガスの物質移動を増加させ;化学反応を加速し;超微粒子の浮選を促進する。
本発明は、鉱石からの金を回収するため、および、粉砕鉱石、水およびシアン化合物のスラリまたはパルプ内に酸素を溶解させるために、ここに詳細に記載されているが、本発明には多くの他の応用が有り得ることは、当業者に明白である。これらは、鉱物パルプの予備酸化と;鉱物産業における様々な金属有価物、例えば、金、白金属および、銅、コバルト、ニッケル、亜鉛、マンガンおよび鉛等の卑金属の他にウラニウムの、加速された浸出とを含み;例えば難溶性金鉱石の処理における、様々な鉱物の部分的または全体的な硫化物酸化用;シアン化合物の破壊、および、金産業におけるヒ素改善用;酸性鉱山排水の処理用;水処理への適用;紙パルプ工業における適用;バイオディーゼル産業における適用;浮選産業における調整および超微細泡生成用;およびガス洗浄用に使用される。
【0031】
上記したように、液体または懸濁液にガスを吹き込む既存の方法が有する問題の1つは、これらのシステム特有の低い線速度(10m/s未満)であり、これは、せん断と混合、それ故に泡サイズをも制限する。
【0032】
10m/sの液体速度のために予測された泡サイズ(直径)は、80と100ミクロメートル(ミクロン)の間であると計算された。液体速度を25m/sに増加させることが可能であっても、泡サイズは、ほんの約50ミクロメートルである。
【0033】
本発明のプロセスは、他方で、50ミクロメートル未満、望ましくはナノメートルどころかピコメートル範囲で、泡の形成をもたらす。これは、せん断を通して50ミクロメートルサイズの範囲の泡を最初に生成し、続いて、キャビテーションのエネルギの利用により、ナノメートルまたはピコメートル範囲まで泡を内破することで、達成される。
【0034】
慣性キャビテーションは、液体内で空間または泡が急速に崩壊し、衝撃波(図9)を形成するプロセスである。キャビテーションによって形成された衝撃波は、可動部を著しく破損するほど強力なため、キャビテーションは、通常は望ましくない現象である。しかしながら、本発明では、キャビテーションにとって好ましい状態が意図的に作られ、また、キャビテーション中にリリースされたエネルギが利用され、ナノメートルまたはピコメートルサイズの泡(「ナノ泡」あるいは「ピコ泡」)を形成するために役立ち、ガスを溶かし、(空洞を作る泡の中に閉じ込められた蒸気の分離によるプロセス中に遊離基が発生されるため)、ほかの状態では生じない、或いは、非常にゆっくり生じる化学反応を促進する。
【0035】
流体力学的キャビテーションは、気化、泡形成、および、圧力の低下とその後の上昇の結果、流動液体にて生じる泡の内破のプロセスについて記載する。圧力が液体の飽和蒸気圧力より下に低下すれば、キャビテーションのみが生じる。配管システムにおいて、(領域の圧縮を通じた)運動エネルギの増加、あるいは、パイプの高さの上昇のいずれかの結果として、キャビテーションが典型的に生じる。
【0036】
流体力学的キャビテーションは、圧縮された通路を特定の速度で流れる流体、または、流体内における力学的な回転により生じ得る。本発明では、圧縮された通路、および、システムの特定形状は、局部圧縮より下流の流体力学キャビテーション空洞が高エネルギキャビテーション泡を生成することを可能にする、圧力と運動エネルギとの組み合わせを作る。
【0037】
泡生成、後の成長、およびキャビテーション泡の崩壊のプロセスは、非常に高いエネルギ密度を招き、非常に短時間で、泡表面が高温かつ高圧になる。従って、全面的な液体媒体環境は、周囲状態のままである。
【0038】
本発明は、図1に示される種類のうちのチョークノズルを通して流体を加速することによって流体内でガス泡が形成される、種々様々の異なるチョークノズルおよびミキシングノズルを使用して、実行されてもよい。チョークノズル(1)は、液体入口(2)と、収束入口コーン(3)と、収束入口コーンの狭い端部でチョークノズルの横断面が最小となるスロートセクション(4)と、スロートセクションの直ぐ下流の後方対向ステップ(5)と、若干拡がる出口コーン、または、流体出口(7)を備えたディフューザセクション(6)と、を有する。入口コーンは、約10〜約40度の角度を形成し、より具体的には、約15〜約35度、特に約25〜約35度まで、最も具体的には約30度である。
【0039】
スロートセクションの直径は、流体中の泡の速度がスロートセクションにおいて音速になるように、流体の流れを細めるよう選択されてもよい。後方対向ステップ(5)は、hがスロートの直径の約4.5から5%の範囲以内にある、より小さな直径のスロートの実例において、約1〜約4mm、より具体的には約2〜約4mmの段差高さを有することができる。ディフューザーセクション(6)は、約1〜約9度の、より具体的には約2〜8度、更により具体的には約4〜8度であって、特に約4度であることが優先される、開先角度をつけた傾斜壁を有する。チョークノズル表面は、荒くまたは窪みがあってもよい。チョークノズルは、溶解または反応接着したSiSiC、アルミナ、HDPE、ポリウレタンあるいはゴム等の耐摩耗性材料で覆うことができ、ライナは番号(8)に示されている。
【0040】
使用中、混入されたガスは、後方対向ステップ(5)を超えて加速され、それは流体の噴射内で高速渦および乱流を作り、後の内破を伴う、通気された気泡形成をもたらす。ノズルの直径が増加する際にチョークノズル内の局所的な(静的な)圧力を増加させるディフューザセクション(6)の拡がり角によって、泡の内破は更に支援される。そのガスは、最も高い圧縮箇所において、ガスに応じて、位相を変更し液化してもよい。
【0041】
一方、図面の図2は、非常に細長いミキシングノズルを図解し、各ミキシングノズルの入口コーン(11)は、上記した通りである。入口コーンは、非常に長いスロートセクション(12)に接続し、スロートセクションの長さは、スロートセクションの直径の約3から約15倍、より具体的には約7〜約15倍に等しい。スロートセクションの直ぐ下流には、約2〜約25mm、より具体的には4〜約25mm範囲のステップ高さ有する、第1後方対向ステップ(段)(13)がある。それに続く後方対向ステップが多く有り得、本実例では、更なる後方対向ステップ(14および15)の2つであり、先行する後方対向ステップの直径の約1〜約10倍、より具体的には、約3〜約10倍の間隔で軸方向に配置される。後方対向ステップは、典型的には、約2〜約30度、より具体的には約4〜約30度の開先角度を有するディフューザセクションを作る。ミキシングノズルのスロート内の流体速度は、3〜12m/s、最も好ましくは8〜10m/s間でもよい。上記したように、ミキシングノズルはライニングを有し、包み込まれていてもよい。
【0042】
各実例において、空気あるいは他のガス、あるいは液体さえも、(流体の流れによって生成されたわずかな真空によって支援された)ノズルからの液体吐出ポイント等、様々なポイントで流体内に注入することができ、そこでは、さらに空間に通気し、ノズルより下流の高乱流領域の空間の内破によって小さな泡に分解される。流体分解は、流体とガスとの間の接触面積を大幅に増加させ、流体内の酸素の溶解を更に促進させる。ガス注入は接線方向であってもよく、その後、ガス注入は流体の旋回動作をもたらし、従って混合を援助し遠心加速を発生させる。試薬も、混合および反応を最大限確保するために、この時点で流体内に注入されてもよい。
【0043】
上記チョークノズルを通して流体を加速することによって、流体の角速度は約240000rpmになり得、遠心加速度は、チョークノズルの出口の中心(中心から約1mm)に近い箇所では約60000g(gは重力加速度)となり得る。これは、チョークノズルを通して直線加速(10000g)と結び付き、(直線加速に起因する)外部円周から(遠心加速に起因する)内核まで広がる、通気された気泡を有するチョークノズル内に、極度なキャビテーション状態を作り出す。
【0044】
従って、瞬間圧力を流体の蒸気圧未満に落とすために流体を加速し、気泡を形成し;気泡にガスを通気し;サイズが増加した多数の小さい泡を形成するため、流体の蒸気圧を超えるように瞬間圧力を増加させることにより、気泡を内破させることで、真空の泡を作り出し、これにより、ナノメートルおよびピコメートルサイズの泡さえも発生させることができる。
【0045】
この加速度は、約10000g(gは重力加速度)を発生するための、約0.4m/sから約25m/sまででチョークノズルを通る直線加速と;チョークノズルの中心近く(中心から約1mm)の箇所で約60000gを発生する、約240000rpmの角速度を有する遠心加速度と;チョークノズルの後方対向ステップによって形成された渦の結果である、約60000gの遠心加速度と;高さの差(測地学の高さ)による重力加速度と、のうちの1つ以上によって達成される。
【0046】
加速度は、通気され、内破される空間を形成するために、液体内で穴を「裂く」効果を有する。空間は、流体内の疎水性の粒子、または液体中の既存の微小空間、またはキャビテーションの前縁を提供する固体表面の表面凹凸上に、種を落とすことができる。
【0047】
チョークノズルを通って移動する流体の全面的影響は、その遠心加速度からもその直線加速度からも空間を作る、超高速渦を有する超高速旋回噴射によるものである。
1つのノズルからの自由噴射が、受け入れカップ、または、ノズル下の入口コーンセクションへ突入する時、流体噴射内の乱流もまた、ガスの混入を促進するための重要な要因である。
【0048】
図12を参照すると、チョークノズル内に引き出される時、ガスの速度は音速以下であるが、圧縮され、最も狭い直径の箇所を通過する時、それは音速になる。直径が急に増加する後方対向ステップの領域を通る時、ガスは膨張して超音速に加速し、流体の噴射内に衝撃波(音波)を生成する。この音波は、噴射の中にさらにキャビテーションを引き起こし、そして、極端なケースでは、周囲ガスとの最大接触のための表面積を大きく増加させるために、流体を粗い噴霧へとさらに解体する効果がある。ガスが液体の流れにより混入されて運ばれる時、より多くのガスが、吸引効果を作る流体内に引かれる。
【0049】
加圧されたガスの混入が生じることは、必ずしも要求されないが、流体内のより高い合成のガス速度と、ノズルを通して超音速のガスの流れを発生する可能性と、によることが好ましい。
【0050】
超音速に達するガス、および、ノズルのディフューザセクション内の慣性のキャビテーションによって発生された衝撃波のために、音ルミネセンスが、本発明の過程で生じてもよい。図10は、左から右にかけて、泡の上層部において、ゆっくりした膨張、次に迅速で急な収縮が続き、次に光の放射が連続しているのを示す。
【0051】
ここで本発明の実際的な実施に戻ると、図3および4は、一連の軸方向に間隔をおかれたノズル(21,22,23,24)が、管状装置(25)内に同軸で取り付けられている1つの配置を示す。第1ノズルは、軸方向に間隔をおかれた連続する2つのチョークノズル(22および23)と最終ミキシングノズル(24)とが後続する、ミキシングノズル(21)である。この実例では、第1ミキシングノズル(21)のスロート内に4つの接線のガス入口(26)と、ミキシングノズル(21)からの出口(28)でも、接線方向に配置される付加的なガス入口(27)とがある。
【0052】
2つのチョークノズル(22および23)は、各々、空気または他の流体を各チョークノズルのスロート(30)内へ供給するために、接線方向に配置された4つの入口(29)を有する。図4は、ガス入口の接線の特質を明白に示している。
【0053】
図5および6は、より複雑な装置における本発明による、ノズルの別の配置を示す。この配置では、装置は、第1チャンバ(32)内へ導かれる、T形状の入口管(31)を有する。入口管は、圧力測定と、ガスおよび/または液体注入(図示せず)と、のための1つ以上のポイントを有していてもよい。第1チャンバ(32)は、典型的に、垂直の円筒状パイプであり、長さは約0.3mから約1mまで、より詳細には約0.4mから約1mまで、さらにより詳細には約0.6mから約1mまでである。第1チャンバ(32)および入口管(31)は、HDPE、ゴムで覆われた鋼、ポリウレタンあるいは他の適切な材料から製造できる。
【0054】
第1チャンバ(32)の屋根セクション(33)は、メンテナンス目的の取り外しを可能とするため、フランジを付けることができる。少なくとも1つのチョークノズル、そしてこの実例において、図1に示されるタイプの2つのチョークノズル(34)は、第1チャンバに類似の第2チャンバ(36)に至る、チャンバの床(35)に位置する。チョークノズル(37)の同様の配置は、上流のチョークノズル(34)の中心線上にその軸を有した状態で、第2チャンバの床内に配置され、そして、上流ノズルの出口と下流ノズルの上方部分との間の距離が、上流ノズルの出口の直径約1から3倍、より詳細には2から3倍になるように、間隔を開けて配置される。
【0055】
チョークノズルあるいはミキシングノズルを備えた付加的なチャンバは、他のノズルの下に位置する状態で、上記したノズルの下に、連続して同様に配置されてもよい。各チャンバの壁には、各ノズルの出口ポイントに並んで、あるいはわずかに下方に、少なくとも1つの入口が典型的にはあり、この入口は、チャンバへ、好ましくは渦巻く結果になる方向へ、1つ以上のガスあるいは液体を追加するためのものである。
【0056】
約0.4mから約1mまで、より詳細には約0.6mから約1mまでの高さを有する更なるチャンバ(41)は、一連のノズルの最後から流体を受け取る。更なるチャンバ(41)は、その底部で閉鎖されているが、側壁内に位置する一組の向かい合う接線出口(42)を有する。それらの接線出口(42)は、さらに、第1および第2チャンバから側方にずれている導管(45)、および、上記と同タイプのチョークノズル(47)を有していてもよいリターン接線入口(46)を介して、更なるラインチャンバ(44)に導く。チョークノズル(47)は、典型的には、ラインチャンバ(44)にできるだけ近接してリターン入口(46)内に位置している。推奨される流量に応じて、平行に配置された複数のチョークノズルがあってもよい。
【0057】
入口(46)の壁において、ノズル(47)の出口が位置するポイントまたは周辺に、1種以上のガスあるいは液体を追加する少なくとも1つの入口(48)が、典型的にある。ラインチャンバ(44)の高さは、約0.4mから約1mまで、より詳細には約0.8mから約1mまでであり得る。ラインチャンバ(44)は、閉鎖した屋根を有しており、その床上には上記タイプのチョークノズル(51)を有し、さらに、更なるチャンバに至っている。一連のチャンバ(52)は、上記のように、チョークノズルの出口で、必要に応じて、提供されるガス入口(53)と共に続いてもよい。ノズルの最終セットは、図2を参照して説明した延長した種類のミキシングノズルでもよい。それらは、上流チョークノズルの出口から、ノズル出口の直径の約2〜約10倍、より詳細には約3〜約10倍離れて位置していてもよい。
【0058】
ミキシングノズルは、出口導管(55)が延びる前のチャンバと比較して、かなり大きなチャンバ(54)内に流れ込む。出口導管の長さは、典型的に、約0.4mから約1mまで、より詳細には約0.5mから約1mまでである。出口導管は、底部に吐出出口(57)を有する出口チャンバ(56)内に、接線方向に、または、T形状で、供給してもよい。
【0059】
ゴム製蛇腹または象ホース(図示せず)は、本発明の装置に流体を供給し、また流体を装置から吐出する配管の間のいかなる接合部分に取り付けられていてもよい。ゴム製蛇腹は、望まれない振動を吸収し、従って、溶接または接合の完全性の、および、装置の堅固性の保護を支援する。
【0060】
使用時、粉砕鉱石、水およびシアン化カルシウムまたはシアン化ナトリウムの流体は、入口管(31)によって第1チャンバ(32)に供給されてもよい。チャンバ内へのその入口での流体速度は、約1.5m/sから約25m/sまでの範囲内、より詳細には、約2.5m/sから約25m/sまでの範囲内にあるべきである。入口ポイントの直前ポイントでは、流体の背圧は、約3から約10バール、より詳細には、約5から約10バールであるべきである。ガスまたは他の液体は、上記された入口ポイントを通るこのポイントで、またはそのポイント近くで、流体に注入することができる。ガスまたは液体は、約5から約20バールに、より詳細には、約10から20バールの圧力に加圧されるべきであり、流体内へ直接、またはノズルアレンジメントを介して注入することができる。
【0061】
下流に導入されたガスまたは液体もまた、約5から約20バール、より詳細には約10から20バールの圧力に加圧されるべきであり、流体内へ直接、またはノズルアレンジメントを介して注入することができ、或は、ノズルを通って流れる流体によって生成された真空によって、自己吸引することができる。
【0062】
ガスの封入が、次のメカニズムの1つ以上を介して、すなわち、ノズル(図12)を出る噴射内の乱流を通して;ノズル(図12)を出る噴射を取り巻くせん断層を通して;ノズルを出る噴射と、その下に位置するノズルの受け入れプール内の液体/懸濁液間の、再循環する渦を通して;噴射の下に位置するノズルの受け入れカップの壁と、受け入れノズルのカップ内の液体/懸濁液間で;受け入れプール(図13)からの液体/懸濁液がはねることによって;ノズル内に、またはそのノズル間に生じる場合がある。
【0063】
本発明の他の実施例が、図7および8に示される。図7は、よりコンパクトな設計用に、図5に図示されるような複数のチョークノズルのみを組込む、本発明の簡易化された実施例を示す。図7は、さらにミキシングノズル(62)が取り付けられる同軸入口(61)を示す。入口チャンバ(63)は、図5を参照すると、接線出口(64)および接線入口(65)の配置と直接連通している。チョークノズルは、数字(66)によって示されている。
【0064】
図8は、T字管の入口(68)とT字管の出口(69)との間に、単に3つのチョークノズル(67)の層がある、より簡易化された配置を示す。
本発明のプロセスおよび装置は、既知のプロセスと比較して、シアン化合物の破壊率が増加するように配置することができる。
【0065】
シアン化合物破壊の営利上容認されたプロセスは、シアン酸塩へシアン化合物を酸化させてシアン化合物を「破壊する」ために、よく撹拌されたタンク内で、CuSO触媒と共に、SOと空気の組み合わせを利用する。このプロセスの欠点の1つは、高い試薬消費である。幾つかの鉱物は更に、SOを競い、50ppmの容認された業界基準に対するシアン化合物の破壊の失敗に終わっている。
【0066】
本発明のリアクタは、次の2つのステージのプロセスにおいて使用することができる。即ち、第1ステージでは、SO/空気等のHh調整剤および硫酸銅等の触媒に加えて、pHおよびEh調節が(リアクタへ空気または酸素注入を伴う)リアクタを利用して実行される。過酸化物、二酸化マンガン、次亜塩素酸ナトリウム、過マンガン酸カリウム、重クロム酸カリウムあるいはオゾン等の他のEh調整剤も使用してよい。第2ステージでは、鉱石浸出プラント内の炭素で使用されるような、活性炭を利用する炭素触媒作用によるシアン化合物の酸化が実行される。
【0067】
その最も単純な形態では、上記2つのステージのメカニズムは、炭素がリアクタ内に入るのを防止するために利用される、適切な遮蔽技術を使用して、単一のタンク内で同時に行なうことができる。リアクタを通るカーボンの吸引は、不適当に増加した炭素の摩耗および破損という結果を生じ、潜在的に金を含有する炭素を廃物にしてしまう損失を伴うであろう。
【0068】
硫酸銅触媒を備えたSO/空気が、炭素の触媒作用によるシアン化合物の破壊のため、上記プロセス中で使用される場合、それは、(米国特許4,537,686に記載されているような)既知のINCOプロセスと、Maelgwynプロセス(米国公開番号2010/0307977)との間の混合を表わす。この混合プロセスは、INCOプロセスに必要とされるよりも(INCO試薬の10分の1もの)著しく少ない試薬を使用する。その混合プロセスは、さらに、2つの異なるメカニズム(SO/空気および活性炭触媒作用)を介してシアン化合物破壊を確実にするために、活性炭の触媒効果を使用する。そのプロセスは、Maelgwynプロセスで要求される滞留時間を、破壊の成功のための正のEh値で縮小することができ、また、炭素上への吸着によって、金等の貴金属の浸出および回収が同時に生じる結果となる。
【0069】
より重要なことは、上記のような混合プロセスは、Maelgwynプロセスに必要な多段階とは対照的に、単一の段階において行なうことができる。
図16は、本発明のリアクタが、浸出プラント内のカーボンへどのように統合されるかの略図を示す。本発明によるリアクタ(71)は、試薬消費を削減し、浸出の動力学を加速するために、2つの第1タンク(72)内に取り付けることができる。これは、シアン化合物破壊、並びに、ヒ素及び重金属除去ために利用される、最後の2つのタンクを解放することができる。浸出反応に触媒作用を及ぼすことに加えて、最後のタンク内の炭素は、可溶性の金の損失が最小限に維持されることも確実にするであろう。
【0070】
テストは、標準試薬追加(シアン化合物に対するSOの理論混合比2:1)を有する単一の60分のステージにおける、米国特許4,537,686に記載されるような、標準SO/空気シアン化合物破壊プロセスを使用して行なわれ(表1)、また、同期間に、上記したように、これは、本発明の混合プロセスと比較された(表2)。同様の弱酸性の分離可能なシアン化合物の開始値から、本発明のプロセスは、SO/空気プロセスより低い最終シアン化合物値に至り、SO/空気プロセス中で使用される試薬の10分の1だけを利用した。
【0071】
[表1]商用SO/空気プロセスを使用するシアン化合物破壊
【0072】
【表1】
【0073】
[表2]本発明のプロセスを使用するシアン化合物破壊
【0074】
【表2】
【0075】
これらのテストは同条件下で繰り返されたが、異なる鉱物学(表3および4)の供給材料を使用した。商用SO/空気プロセスは、シアン化合物の最終値を、廃水の排出の業界規制基準である50ppm未満にすることができなかった。
【0076】
[表3]商用SO/空気プロセスを使用するシアン化合物破壊
【0077】
【表3】
【0078】
[表4]本発明のプロセスを使用するシアン化合物破壊
【0079】
【表4】
【0080】
従って、本発明のプロセスは、既存技術に比べ、著しくコスト効率が良く、かつ、環境に優しい可能性を有するだけでなく、潜在的に技術的にも優れている。
続いて、工業規模のプラント試験が20日間にわたって実行され、最初の10日は、本発明のリアクタのスイッチが切られて行われ、次の10日間は、リアクタのスイッチが入れられて行われた。金の残留物の結果は図17に、シアン化合物の消費の結果は図18に示されている。0.32g/tの無価値残留物における金の残留物の低減という明瞭な改善、および、36%の低減という84g/tのシアン化合物の消費における改善がある。
【0081】
上述では、大部分は、流体内への酸化ガス等のガスの導入について説明している。しかしながら、ガスの導入が必要でない本発明の他の適用があり、これらうちの1つは、ヒ素除去の破壊において適用される。
【0082】
ヒ素は、水に溶けない安定した形で、地下岩中に自然に存在する。しかしながら、岩が採掘され、鉱石が地表に運ばれ、空気と接触すると、ヒ素は、水に容易に溶ける不安定な形に変換される。従って、採掘からの廃水は、しばしば高濃度のヒ素を含む。ヒ素は、人間と動物の両方に有毒であるので、廃水から地下水が汚染されるリスクを減らすための手順を得る必要があり、また、採掘からの廃水中のヒ素の国際的な最大許容量は、現在、0.1ppmに設定されている。より高いレベルのヒ素を含む廃水を生成する採鉱は、環境へのいかなる汚染をも防ぐために、一般に、尾鉱ダムをプラスチック層で覆うことを必要とする。これは非常に高価なだけでなく、有毒廃棄物の生成を防止したり低減することもしない。
【0083】
本発明のリアクタは、天然の採掘された鉱石から、数時間の比較的短い期間内で、ヒ素を浸出し溶解するために使用することができる。その後、溶解されたヒ素は、スコロダイト、つまり、水に溶解せず、従って、有毒でない安定した形のヒ素、または、スコロダイト状鉱物として、溶液から析出させることができる。
【0084】
ヒ素改善は、リアクタ(オゾンが使用されてもよい)内へ空気または酸素追加しながら、再循環上のリアクタを有する機械的に攪拌されたタンクを利用する金属抽出に先立つ初期工程として実行することができる。ヒ素の浸出を達成するために、次の試薬、即ち、メタ重亜硫酸ナトリウム(SMBS)あるいはカセイソーダ(NaOH);および塩酸(HCl)あるいは硫酸(HSO);が使用されてもよい。
【0085】
塩化鉄は、安定したスコロダイトあるいはスコロダイト状鉱物としてヒ素の析出を達成するために使用することができる。
2つのテストが、いずれもヒ素の不安定な形である、反応的なゲルスドルフ鉱および紅ヒニッケル鉱を含んでいる金鉱石上で行なわれた。
【0086】
第1テストは、コントロールまたは基本の事例として、以下の標準的な金浸出条件の下で行なわれた:浸出時間24時間;5kg/tのNaCN追加;10g/lのカーボン追加;固体40%;テストは撹拌された大桶で行なわれた。
【0087】
第2テストは第1と同じ侵出条件を利用したが、下記条件の下で行われる事前のヒ素浸出および析出ステージを有する:800g/tのSMBS;300g/tの硫酸銅;2kg/tのHCl;50g/tのリン酸;50g/tのミョウバン;300g/tの塩化鉄;滞留時間4時間;固体40%;酸素を追加しながら10のリアクタパス(1回のパスは、容器のボリュームのターンオーバ1回分に等しい);テストは撹拌された大桶内で行なわれた。
【0088】
これらのテストの結果が、表5に示される。JR691は、コントロール/基本テストであり、JR689は、本発明によるヒ素浸出および析出を組込んだテストである。
[表5]金浸出後のヒ素および残余金の値
【0089】
【表5】
【0090】
ヒ素浸出および析出ステップを組込んだプロセスは、侵出の終わりに、溶液中のヒ素の値は、0.1ppm未満のヒ素の検出を下回った。しかしながら、コントロール/基本テストは、侵出の終わりに、1.30ppmのヒ素を示した。コントロール/基本テストのヒ素値が環境規制に適合していないので、これは重大であるが、本発明のヒ素浸出および析出ステップを組込んだプロセスは、環境上適合している。
【0091】
加えて、ヒ素浸出および析出ステップを組込んだプロセスは、基本/コントロールテストより低い金の残留物0.38g/tを有したが、これは、金の生産レベルに、重要な経済的利益および価値のある促進を提供する。
【0092】
従って、本発明のリアクタは、鉱物からヒ素を浸出し、析出させるために使用でき、その結果、ヒ素をより安定した状態にし、そして、尾鉱貯蔵設備に堆積させられる際、ヒ素浸出が少量に留められるか、あるいはそれ以上侵出されない。これは、地下水のヒ素レベルおよび自然水路への吐出に関する規則に従って生じる。そのプロセスは、金回収の、より高いレベルも提供することができる。
【0093】
工業規模テストの結果が、4つの異なる条件に対して、即ち、図19に反映されるように、未処理条件と、塩化鉄およびメタ重亜硫酸ナトリウム(SMBS)の異なる追加をしながら4時間の期間、3つのリアクタパスに等しい本発明のプロセスを伴う4つの異なる条件と、に対して、図19に示されている。追加分は、2.5kg/tの塩化鉄および240g/tのSMBS;1.75kg/tの塩化鉄および2.23kg/tのSMBSと;1.00kg/tの塩化鉄および3.5kg/tのSMBSと;0.00kg/tの塩化鉄および5.5kg/tのSMBSと、であった。
【0094】
多数の他のプロセスが、本発明の装置およびプロセスを使用して疑いなく実行することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19