(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
電解液を外装ケース内に注液する際の電解液中の溶存窒素の量が80μg/ml以下である、請求項1から4のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施形態によるリチウムイオン二次電池の製造方法は、正極および負極がセパレータを介して配置され、電解液とともに、可撓性フィルムからなる外装ケースに収容されたリチウムイオン二次電池の製造方法であって、前記電解液を前記外装ケース内に注液する際の電解液中の溶存窒素の量が100μg/ml以下である。
【0016】
このような製造方法によれば、得られた電池の高温下での膨張を効果的に抑制することが可能となる。また、電池の製造において、電解液をセルに注液後、電極に電解液を真空含浸する際、電解液の発泡を抑制し、封止性を向上することが可能となる。
【0017】
上記の製造方法において、電解液を外装ケース内に注液する前に、電解液中の溶存窒素の量が100μg/ml以下となるように該電解液の減圧処理(脱気処理)を行い、該減圧処理された電解液を外装ケース内に注液することが好ましい。
【0018】
その際、電解液を外装ケース内に注液する際の電解液中の溶存窒素量は原理的には少なければ少ないほうが良い。しかしながら脱気工程を激しくすればするほど別の悪要因が出る可能性がある。具体的には真空脱気を行いすぎると、溶存窒素量としては減少して好ましいものの、同時に溶媒が蒸発して電解液の濃度や組成が変化して粘度が上昇し、電池性能が低下する虞がある。したがって目安として溶存窒素量は5μg/ml以上が好ましく、10μg/ml以上がより好ましい。
【0019】
また、電解液を外装ケース内に注液する際の電解液中の溶存窒素の量は100μg/ml以下であることが望ましいが、より十分な膨れ抑制効果や発泡抑制効果を得る点から、80μg/ml以下がより好ましく、75μg/ml以下がさらに好ましい。この溶存窒素の量は、より一層高い効果を得る点から、60μg/ml以下に設定でき、さらに50μg/ml以下に設定でき、さらに40μg/ml以下に設定することができる。
【0020】
したがって、製造されたリチウムイオン二次電池の電解液中の溶存酸素の量は、100μg/ml以下が好ましく、80μg/ml以下がより好ましく、75μg/ml以下がさらに好ましい。より高い効果が得られる点から、この溶存酸素の量は、60μg/ml以下に設定でき、さらに50μg/ml以下に設定でき、さらに40μg/ml以下に設定することができる。また、所望の電池性能を確保する点から5μg/ml以上が好ましく、10μg/ml以上がより好ましい。
【0021】
減圧処理は、減圧および開放を1サイクルとして、例えば1〜5サイクル、好ましくは1〜3サイクル行うことができる。電解液中の溶存窒素が多い場合は、減圧処理を複数サイクル行うことが好ましく、2〜5サイクルが好ましく、2〜3サイクルがより好ましい。減圧処理を複数サイクル行うことにより、1サイクル当たりの減圧時間を短くでき効率的に溶存窒素を除去することが可能になる。減圧処理のサイクルを多くしすぎると、電解液の成分が蒸発する傾向があるため、5サイクル以下が好ましく、3サイクル以下がより好ましい。
【0022】
減圧処理時の圧力は、例えば、大気圧基準で−70kPa〜−99kPa(大気圧より70〜99kPa低い状態)に設定できる。減圧度が低すぎると十分に溶存窒素を除去することができず、減圧度が高すぎると電解液中の成分が蒸発する傾向がある。十分に溶存窒素を除去する点から、−80kPa〜−99kPaが好ましく、−90kPa〜−99kPaがより好ましい。
【0023】
減圧処理において所定の減圧状態で維持する時間は、電解液の成分の蒸発を抑える点および処理効率の点から、例えば10分以下に設定することができ、5分以下が好ましく、2分以下がより好ましく、十分に溶存窒素を除去する点から、0.5分以上が好ましく、1分以上がより好ましい。
【0024】
減圧処理は、常温で行うことができ、例えば5〜35℃に設定でき、好ましくは10〜35℃、より好ましくは10〜30℃で行うことができる。電解液の温度が低いと溶存窒素が抜けにくくなるが電解液の成分の蒸発が抑えられる。電解液の温度が高いと溶存窒素が抜けやすくなるが電解液の成分が蒸発しやすくなる。
【0025】
一度の減圧処理で処理される電解液の量は、例えば200〜1000mlに設定できるが、処理装置の規模や性能に応じて1000ml以上の量であっても適宜設定することができる。
【0026】
減圧処理された電解液は、例えば、ドライエア(例えば露点−40℃以下)の雰囲気で外装ケース内に注液することができる。減圧処理の終了後から注液までの期間は、減圧処理された電解液の保存状態によるが、溶存窒素量の増加を抑える点から短いほど好ましく、例えば1週間以内が好ましい。注液まで期間、減圧処理された電解液は、密閉容器に保管されることが好ましい。その密閉容器内の電解液を除く空間部は少ない方が好ましく、その空間部の気体にはドライエアを用いることができる。
【0027】
上記の製造方法は、前記電解液を外装ケース内に注液した後、得られた電池を35℃以上60℃以下(好ましくは40℃以上60℃以下、より好ましくは50℃以上60℃以下)の温度下で、48時間以上480時間未満(あるいは480時間以下)の間、維持する工程を有することが好ましい。その際、所定の電圧を印加して充電状態とすることが好ましい。本実施形態によれば、このような高温エージング中のガス発生を抑えることができる。また、ガス抜き工程が簡略化され、あるいはガス抜き工程を省略することができる。
【0028】
上記の製造方法は、可撓性フィルムの厚さが5μm以上150μm以下の場合に特に効果的である。
【0029】
本発明の他の実施形態によるリチウムイオン二次電池は、正極および負極がセパレータを介して配置され、電解液とともに、可撓性フィルムからなる外装ケースに収容されたリチウムイオン二次電池であって、電解液中の溶存窒素の量が100μg/ml以下である。
【0030】
上記の可撓性フィルムの厚さは5μm以上150μm以下であることが好ましい。
【0031】
本実施形態のリチウムイオン二次電池は上記の製造方法により得ることができる。
【0032】
本実施形態によれば、可撓性フィルムからなる外装ケースを用いたリチウムイオン二次電池の課題である膨れを抑えることができ、特に高温環境下での膨れを抑えることができる。
【0033】
以下、本発明の実施形態についてさらに説明する。
【0034】
図1は、本発明の実施形態によるラミネート型リチウムイオン二次電池として、積層型リチウムイオン二次電池の構成の一例を模式的に示したものである。
【0035】
本発明の実施形態によるリチウムイオン二次電池100は、正極1と負極6とがセパレータ20を介して交互に複数層積層された電極積層体を備えており、この電極積層体は電解液と共に可撓性フィルムからなる外装ケース(容器)30に収納されている。前記電極積層体には正極端子11および負極端子16が電気的に接続されており、正極端子11および負極端子16の端部の一部または全部が外装ケース30の外部に引き出されている。
【0036】
正極1においては、正極集電体の表裏に、正極活物質を含むスラリーを塗布し乾燥した塗布部(正極活物質層)2とスラリーが塗布されない未塗布部がそれぞれ設けられている。負極においては、負極集電体8の表裏に、負極活物質を含むスラリーを塗布し乾燥した塗布部(負極活物質層)7とスラリーが塗布されない未塗布部がそれぞれ設けられている。
【0037】
正極集電体における正極活物質の未塗布部は正極端子11と接続するための正極タブ3とし、負極集電体における負極活物質の未塗布部は負極端子16と接続するための負極タブ8とする。複数の正極タブ3は正極端子11上にまとめられ、正極タブ3同士は正極端子11とともに超音波溶接等で互いに接続される。複数の負極タブ8は負極端子16上にまとめられ、負極タブ8同士は負極端子16とともに超音波溶接等で互いに接続される。正極タブ3と接続された正極端子11の一端は外装ケース30の外部に引き出され、負極タブ8と接続された負極端子16の一端は外装ケース30の外部に引き出されている。正極活物質2の塗布部と未塗布部の境界部4には、負極端子との短絡を防止するための絶縁部材が形成される。
【0038】
正極活物質としては、例えばLiCoO
2、LiNiO
2、LiNi
1−xCo
xO
2、LiNi
x(CoAl)
1−xO
2、Li
2MO
3−LiMO
2(Mは金属元素、例えばNi、Co、Mn)、LiNi
1/3Co
1/3Mn
1/3O
2などの層状酸化物系材料や、LiMn
2O
4、LiMn
1.5Ni
0.5O
4、LiMn
2−xM
xO
4(Mは金属元素、例えばNi、Co、Cr、Fe)などのスピネル系酸化物材料、LiMPO
4などのオリビン系材料(Mは、例えばNi、Co、Fe、Mn)、Li
2MPO
4F、Li
2MSiO
4Fなどのフッ化オリビン系材料(Mは、例えばNi、Co、Fe、Mn)、V
2O
5などの酸化バナジウム系材料などが挙げられる。これらの正極活物質は、1種を単独で又は2種以上を混合して使用できる。なお、上記の組成式中のxは任意の正の整数を示す。
【0039】
負極活物質としては黒鉛、非晶質炭素、ダイヤモンド状炭素、フラーレン、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーンなどの炭素材料や、リチウム金属材料、シリコンやスズなどのLiと合金を形成する金属系材料、Nb
2O
5やTiO
2などの酸化物系材料、あるいはこれらの複合物を用いることができる。
【0040】
正極活物質および負極活物質には結着剤や導電助剤等を適宜加えることができる。導電助剤としては、カーボンブラック、炭素繊維または黒鉛などが挙げられ、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。また、結着剤としてはポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、カルボキシメチルセルロース、変性アクリロニトリルゴム粒子などを用いることができる。
【0041】
正極集電体としては、アルミニウム、ステンレス鋼、ニッケル、チタンまたはこれらの合金等を用いることができ、特にアルミニウムが好ましい。負極集電体としては、銅、ステンレス鋼、ニッケル、チタンまたはこれらの合金を用いることができる。集電体の形状としては、箔、平板状、メッシュ状が挙げられる。
【0042】
電解液としては、リチウム塩を溶解させた非水系電解液を用いることができる。非水溶媒としては、特に制限されるものではないが、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ビニレンカーボネート、ブチレンカーボネート等の環状カーボネート類、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジプロピルカーボネート(DPC)等の鎖状カーボネート類;ギ酸メチル、酢酸メチル、プロピオン酸エチルなどの脂肪族カルボン酸エステル類;γ−ブチロラクトン等のγ−ラクトン類;1,2−エトキシエタン(DEE)、エトキシメトキシエタン(EME)などの鎖状エーテル類;テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフランなどの環状エーテル類が挙げられる。その他、非水溶媒として、ジメチルスルホキシド、1,3−ジオキソラン、ジオキソラン誘導体、ホルムアミド、アセトアミド、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、プロピオニトリル、ニトロメタン、エチルモノグライム、リン酸トリエステル、トリメトキシメタン、スルホラン、メチルスルホラン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、3−メチル−2−オキサゾリジノン、プロピレンカーボネート誘導体、テトラヒドロフラン誘導体、エチルエーテル、1,3−プロパンサルトン、アニソール、N−メチルピロリドンなどの非プロトン性有機溶媒を用いることもできる。非水溶媒は、一種を単独で又は二種以上を混合して使用することができる。
【0043】
非水溶媒に溶解させるリチウム塩としては、特に制限されるものではないが、例えばLiPF
6、LiAsF
6、LiAlCl
4、LiClO
4、LiBF
4、LiSbF
6、LiCF
3SO
3、LiCF
3CO
2、Li(CF
3SO
2)
2、LiN(CF
3SO
2)
2、リチウムビスオキサラトボレートが挙げられる。これらのリチウム塩は、一種を単独で又は二種以上を組み合わせて使用することができる。また、非水系電解質としてポリマー成分を含んでもよい。
【0044】
電解液には、添加剤を加えることができる。たとえばスルホ基を有する化合物、フルオロエチレンカーボネート等のフッ素化溶媒、ビニレンカーボネート等の不飽和環状炭酸エステル等を添加剤として用いることができる。添加剤は、特に減圧による影響が小さい揮発性の低いものが好ましい。
【0045】
セパレータとしては、多孔膜、織布、不織布等を用いることができる。セパレータを構成する材料としては、例えばポリプロピレンやポリエチレン等のポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、スチレン樹脂またはナイロン樹脂等が挙げられる。特にポリオレフィン系の微多孔膜は、イオン透過性および正極と負極との物理的な隔離性に優れているため好ましい。また、必要に応じて、セパレータには無機物粒子を含む層を形成してもよい。無機物粒子としては、絶縁性の酸化物、窒化物、硫化物、炭化物などを挙げることができ、なかでもTiO
2やAl
2O
3を含むことが好ましい。
【0046】
容器としては、可撓性フィルムからなる外装ケースや薄肉化された缶ケース等を用いることができる。電池の軽量化の観点からは可撓性フィルムからなる外装ケースを用いることが好ましい。可撓性フィルムの厚さは5μm以上150μm以下が好ましい。5μmよりも小さいと、外部からの衝撃や、ケース内の圧力上昇に耐えることが難しくなる。十分な強度や耐久性等を得る点から、その厚みは、10μm以上がより好ましく、50μm以上がさらに好ましい。また、その厚みが150μmを超える場合、ケース内の圧力上昇による膨張を抑える点では有利であるが、軽量化の観点からは不利になる。可撓性フィルムは、基材となる金属層の表裏面に樹脂層が設けられたものを用いることができる。金属層には電解液の漏出や外部からの水分の侵入を防止する等のバリア性を有するものを選択することができ、アルミニウム、ステンレス鋼などを用いることができ、アルミニウムが特に好ましい。金属層の少なくとも一方の面には変性ポリオレフィンなどの熱融着性の樹脂層を設けることが好ましい。可撓性フィルムの熱融着性の樹脂層同士が対向するように電極積層体を収容し、電極積層体を収容する部分の周囲を熱融着することで外装ケースを形成することができる。熱融着性の樹脂層が形成された面と反対側の面にはナイロンフィルム、ポリエステルフィルムなどの比較的耐熱性に優れる樹脂層を設けることができる。
【0047】
正極端子には、アルミニウムやアルミニウム合金で構成されたもの、負極端子には銅や銅合金あるいはそれらにニッケルメッキを施したもの等を用いることができる。正極端子及び負極端子において、外装ケースの外部に引き出された際に可撓性フィルムの熱溶着する部分に位置する箇所には熱融着性の樹脂をあらかじめ設けることができる。
【0048】
活物質の塗布部と未塗布部の境界部に形成する絶縁部材としては、ポリイミド、ガラス繊維、ポリエステル、ポリプロピレンあるいはこれらを構成中に含むものを用いることができ、テープ状の部材に熱を加えて境界部に溶着させたり、ゲル状の樹脂を境界部に塗布、乾燥させたりすることで絶縁部材を形成することができる。
【0049】
図2は、正極と負極とがセパレータを介して繰り返し積層された電池要素(電極積層体)を模式的に示したものである。正極タブ3同士は束ねられて正極端子11と接続され、負極タブ8同士は束ねられて負極端子16と接続されており、ぞれぞれの端子には外装ケースと接する部分に接着を強固にするための樹脂が形成されている。
【0050】
図3は、電池要素を収容するための外装ケースを模式的に示したものである。ここでは、電池要素の形状に合わせた凹部が形成された2枚のシートを貼り合わせて得られるタイプの外装ケースを示しているが、凹部はどちらか一方だけに形成してもよいし、1枚のシートを折り返して貼りあわせてもよい。
【0051】
図4Aに示すように、電池要素を可撓性フィルムに設けた凹部に収容し、その後、電極端子を引き出していない辺のうちのいずれか一辺、たとえば
図4Bにおける300aを残して周囲3辺を熱溶着する。ここで、融着しなかった一辺は電解液を注液するためのものである。この融着しなかった一辺において、注液可能な範囲を溶着しなければ、当該一辺の残りの部分は融着してしまっても構わない。
【0052】
電解液を注液した後は、融着せずに残しておいた部分も熱融着することで外装ケースが密閉される。
【0053】
なお、
図4A及び
図4Bに示す例では電極端子を対向する辺から取り出すように形成したが、
図5A及び
図5Bに示すように同じ辺から引き出す場合でも同様にして形成できる。
【0054】
続いて、得られた電池ついて、電極合材中に異物が存在する電池ではないか評価を行うことができる。このような評価を行い、電極合材中に異物が存在しているような電池を取り除くことで、耐熱性の優れた電池を提供することが可能になる。この評価においては、得られた電池に高温下で電圧を印加し、具体的には25℃以上60℃以下、好ましくは35℃以上60℃以下で、より好ましくは40℃以上60℃以下で電圧を印加し、例えば48時間以上480時間未満(あるいは480時間以下)の間、この状態を維持する。ここで、電極合材中に金属異物が存在するような電池は、金属異物の針状析出により、短絡が起きる。この短絡した電池は自己放電により、電圧が降下するため、電圧が降下した電池を判別し、取り除くことができる。
【0055】
ここで、温度が高いほど異物による電圧降下の検出が短時間で可能となる。また、そのような温度環境下でも電池が膨張しなければ、熱帯地方等の高温環境下でも良好に動作可能な電池であることが示される。
【実施例】
【0056】
(実施例1〜3)
正極活物質としてLiMn
2O
4とLiNi
0.8Co
0.1Al
0.1O
2との混合活物質を用い、導電助剤としてカーボンブラック、正極用の結着剤としてポリフッ化ビニリデン(PVdF)を用いた。正極活物質と導電助剤と結着剤を溶媒に分散させてスラリーを調製し、これをアルミニウムからなる正極集電体に塗布し、乾燥し、プレスし、所定のサイズの正極シートを得た。
【0057】
また、負極活物質として表面を非晶質で被覆した黒鉛を用い、負極用のバインダーとしてPVdFを用いた。負極活物質と結着剤を溶媒に分散させてスラリーを調製し、これを銅からなる負極集電体に塗布し、乾燥し、プレスし、所定のサイズの負極シートを得た。
【0058】
図1〜4を用いて説明した通り、得られた正極シート5と負極シート6とを厚さ25μmのポリプロピレンからなるセパレータを介して積層し、これに負極端子や正極端子を設け、可撓性のアルミラミネートフィルム(厚み約100μm)からなる外装ケースに収容し、電解液を注液し、封止することで、積層型のラミネート電池を得た。
【0059】
電解液は、エチレンカーボネート及びジエチルカーボネートを含むカーボネート系混合溶媒にリチウム塩(LiPF
6)と添加剤(ビニレンカーボネート)を添加したものを用いた。
【0060】
ここで、電解液を注液する前に、電解液の減圧処理として、真空ポンプを使用し、大気圧基準で−99kPaまで減圧した状態(大気圧より99kPa低い状態)で2分間放置し、その後、大気圧に開放するという工程を25℃で2回行った。大気開放時の気体はドライエア(露点−40度以下)を用いた。本例では、200〜1000mlの電解液の減圧処理を行った。
【0061】
この減圧処理により、電解液中1mlに溶存している窒素を5μgとした。
【0062】
また、真空引きの条件のうち減圧後放置時間(2回目の減圧後の大気開放後から注液までの時間)を変更することで、電解液中1mlに溶存している窒素を5μg(実施例1)、35μg(実施例2)、80μg(実施例3)、100μg(実施例4)とした。
【0063】
電解液中の溶存窒素の量は、ガスクロマトグラフィー(検出器:ICD)を用いて測定した。
【0064】
(比較例1)
実施例における真空引きの条件のうち、減圧後放置時間を変更することで、電解液中1mlに溶存している窒素を110μgとした以外は実施例と同様にしてリチウムイオン二次電池を作製した。
【0065】
(参考例1)
実施例における真空引きの条件のうち、減圧後放置時間を変更することで、電解液中1mlに溶存している窒素を3μgとした以外は実施例と同様にしてリチウムイオン二次電池を作製した。
【0066】
(評価)
これらの実施例、比較例及び参考例で得られた電池について、外装ケースの膨れ有無の評価およびサイクル特性の評価を行った。結果を表1に示す。
【0067】
外装ケースの膨れ有無の評価は、電池を所定の温度(30℃、45℃、60℃)で240時間保持し、外装ケースの膨れの有無をアルキメデス法で判断した。
【0068】
サイクル特性の評価は、45℃で、初期容量に対する500サイクル後の容量の維持率を求め、90%以上の場合を「○」とし、85%以上90%未満の場合を「△」とし、85%未満の場合を「×」とした。
【0069】
【表1】
【0070】
表1に示すように、N
2溶存量が100μg/ml以下の場合では、30〜45℃では膨れが生じなかった。N
2溶存量が5〜80μg/mlの場合(実施例1〜3)では、30〜45℃では膨れが生じず、サイクル特性も良好であった。N
2溶存量が5〜35μg/mlの場合(実施例1及び2)では、60℃においても膨れが生じず、サイクル特性も良好であった。
【0071】
N
2溶存量が3μg/mlの場合(参考例1)では膨れが生じなかったものの、サイクル特性の低下が見られた。この原因は定かではないが、電解液の溶媒が揮発することで電解液の粘度が増加し、抵抗が増加したこと等が考えられる。一方、N
2溶存量が110μg/mlの場合(比較例1)では、45℃以上でのエージングによって、外装ケースの膨れが生じ、またサイクル特性の低下が見られた。
【0072】
以上、実施の形態および実施例を参照して本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態および実施例に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明の範囲内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。