(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
電磁波発振器から出力された電磁波が入力される入力部分と、該入力部分に入力された電磁波を昇圧する共振構造からなる昇圧手段と、該昇圧手段の出力側に設けられた放電部を有する放電装置と、
前記電磁波発振器から出力された電磁波が入力される伝送路と、該伝送路により伝送された電磁波を燃焼室に放射するアンテナ部と有する電磁波放射装置と、を備え、
前記電磁波発振器の第1出力に対し、前記放電装置の入力部分が接続され、前記電磁波発振器の第2出力に対し、前記放電装置の入力部分とは別に設けられた前記電磁波放射装置の伝送路が接続され、前記第2出力をオフにして前記電磁波発振器から前記放電装置に電磁波が供給される状態から、前記第2出力をオンにして前記電磁波発振器から前記電磁波放射装置に電磁波が供給される状態に切り替えられる点火ユニット。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態は、好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【0015】
(第1実施形態)
−点火システム10の構成−
図1を参照して、本実施形態に係る点火システム10は、放電装置2、放射装置3、これらにマイクロ波を供給する電磁波発振器5と、電磁波発振器5を制御する制御装置6からなる。放電装置2は、詳しくは後述するが、出願人が開発した一種の点火プラグである。放射装置3は電磁波を放射する。本実施形態ではマイクロ波を放射するものとして説明するが、他の周波数帯域の電磁波を放射するものであってもよい。
【0016】
図2に示すように、放電装置2と放射装置3は、ケーシング4に収容され、一体化された点火ユニット1Aを構成する。点火ユニット1Aは、シリンダヘッドの取付口にケーシング4ごと挿入することができる。特に本実施形態の点火ユニット1Aは、ガソリンエンジンで広く用いられているスパークプラグに置き換わることを想定しているため、いわゆるM12のプラグホールに挿入可能な大きさである。つまり、放電装置2は直径が5ミリ程度、放射装置3も同じく直径が5ミリ程度である。なお、ケーシング4には、放電装置2と放射装置3をそれぞれ挿入するための挿入口が2つ設けられており、放電装置2と放射装置3の先端部分はエンジンの燃焼室内に露出するように、各挿入口の形状が設計される。また、ケーシング4の材料は、放電装置2、放射装置3の放熱を優先させるのであれば、熱伝導率の高い金属を採用するのが好ましい。一方、放電装置2と放射装置3の間の絶縁特性を優先させるのであれば、セラミック等の絶縁体を用いることが好ましい。但し、エンジンに用いられるのであるから耐熱性の高い材料を使用すべきであることは言うまでもない。
【0017】
なお、点火ユニット1Aは、レシプロエンジンに限らずロータリーエンジンに用いてもよい。ロータリーエンジンに使用する場合、放電装置2と放射装置3の先端部分が燃焼室に露出していると、ロータリーエンジンのロータが接触して危険であるから、放電装置2と放射装置3の先端部分は燃焼室内には露出しない構成とすべきである。
【0018】
放電装置2は、Microwave Discharge Igniter(MDI:登録商標)とも呼ばれ、外部(電磁波発振器5)から入力された2.45GHz帯のマイクロ波が共振する構造となっており、共振によりマイクロ波が昇圧されて先端部(放電部)が高電圧となることで放電が起きる構成となっている。この点で、通常のスパークプラグとは大きく相違する。
【0019】
図3を参照して、放電装置2の構成の詳細を説明する。放電装置2は、マイクロ波
が入力される入力部分2a、通常50Ω系で設計された電磁波発振器5やマイクロ波を伝送する同軸ケーブルと、放電装置2の共振構造部分とのインピーダンス整合を行うための部分である結合部分2b、及びマイクロ波共振構造で形成されマイクロ波の電圧の増幅を行う増幅部分2cからなる。また、増幅部分2cの先端部には放電電極26を有する。放電装置2は導電性の金属からなる筒状のケース21により内部の各部材が収容される。
【0020】
入力部分2aには、電磁波発振器5で生成されたマイクロ波を入力する入力端子22と、第1中心電極23が設けられる。第1中心電極23はマイクロ波を伝送する。第1中心電極23とケース21の間には誘電体29aが設けられる。誘電体29aは、例えばセラミック材料で形成される。
【0021】
結合部分2bは、第1中心電極23と、第2中心電極24が設けられる。この結合部分2bは、上述の通り、インピーダンス整合を行うために設けられている。第2中心電極24は、増幅部分2c側に底部を有する筒状構成であり、筒状部が第1中心電極23を囲む。棒状の第1中心電極23と筒状の第2中心電極24の筒部内壁は対向しており、この対向部分において第1中心電極23からのマイクロ波が容量結合により第2中心電極24へ伝送される。第2中心電極24の筒状部分には、セラミック等の誘電体29bが充填され、第2中心電極24とケース21の間にもセラミック等の誘電体29cが設けられる。
【0022】
増幅部分2cには、第3中心電極25が設けられる。第3中心電極25は、第2中心電極24と接続しており、第2中心電極24のマイクロ波が伝送される。放電電極26は、第3中心電極25の先端部に取付けられる。第3中心電極25とケーシング21の間にはセラミック等の誘電体29dが充填される。但し、後述のように、放電容量C3を調整する目的で、第3中心電極25とケーシング21の間には誘電体29dが充填されない空洞部27が設けられる。第3中心電極25はコイル成分を有しており、マイクロ波の電位は第3中心電極25を通過するに従い高くなる。その結果、放電電極26とケース21の間に数十KVの高電圧が発生し、放電電極26とケース21の間で放電が起きる。また、第3中心電極25の長さはおおよそマイクロ波の4分の1波長の長さである。但し、ここで4分の1波長とは、中心電極の屈折率等も加味した上での長さであり、単純にマイクロ波の波長の4分の1の長さという意味ではない。このような長さとした上で、一例として、第3中心電極25と第2中心電極24の境界部分にマイクロ波の節が来るように調整/設計すれば、放電電極26が存する第3中心電極25の先端部ではマイクロ波の腹が位置するので、この箇所で電圧を大きくなるようにすることができる。勿論、実際には、様々な要因があり、必ずしもこのような設計が好ましいとは限らないが、本実施形態では、基本的にはこのような考え方に基づいて設計がなされている。
【0023】
そして、放電電極26と、ケース27の間には環状の空間が形成されており、この空間で放電が生じる。つまり、放電が全方位で行われる。この点、放電電極と接地電極間でいわゆる一点放電を行うスパークプラグとは相違している。
【0024】
図4は、放電装置2の等価回路を示す図である。外部の発振回路(MW)から入力されるマイクロ波(電圧V1、周波数2.45GHz)は容量C1を介して、容量C3、リアクタンスL、容量C2からなる共振回路に接続される。また、容量C3と並列に放電が設けられる。
【0025】
ここで、C1は結合容量に相当し、主に第2中心電極24と第1中心電極23の位置関係(両電極間の距離や対向する面積)や電極間に充填される材料(本例ではセラミック構造の誘電体29b)により決まる。第1中心電極23は、インピーダンスの調整を容易にすべく、その軸芯方向に移動可能な構成としても良い。
【0026】
容量C2は、第2中心電極24とケース21によって形成される接地容量であり、第2中心電極24とケース21との距離や対向面積、及び誘電体29cの誘電率によって決まる。ケース21は導電性の金属で構成されており、接地電極としても機能する。
リアクタンスLは、第3中心電極25のコイル成分に相当する。
【0027】
容量C3は、第3中心電極25、放電電極26及びとケース21によって形成される放電容量である。これは、(1)放電電極26の形状、大きさ及びケース21との距離、(2)第3中心電極25とケース21との距離、(3)第3中心電極25とケース21の間に設けた間隙(空気層)27や誘電体29dの厚み、等で決まる。C2>>C3とすれば、容量C3の両端の電位差をV1よりも十分に大きくすることができ、その結果、放電電極26を高電位にすることができる。更にはC3を小さくすることができるから、コンデンサの面積も小さくて済む。なお、容量C3は実質的には、第3中心電極25とケース21のうち、誘電体29dを挟んで対向する部分によって決まる。逆に言えば、間隙(空気層)27の軸方向の長さを変えることで容量C3の調整を行うこともできる。
【0028】
結合容量C1が十分に小さいと看做せる場合、容量C3、リアクタンスL、容量C2は直列共振回路をなし、共振周波数fは数式1で表現できる。
【数1】
【0029】
つまり、f=2.45GHzとした場合に、放電容量C3、コイルリアクタンスL、及び接地容量C2が数式1の関係を満たすように放電装置2は設計される。
【0030】
上述のように放電装置2は、共振器による昇圧方式により、電源電圧(放電装置2に入力されるマイクロ波の電圧V1)よりも高い電圧Vc3を生成する。これにより、放
電電極26と接地電極(ケース21)間に放電が生じる。放電電圧が、その近辺のガス分子のブレークダウン電圧を超えると、ガス分子から電子が放出されて非平衡プラズマが生成され、燃料が点火する。
【0031】
また、2.45GHz帯の周波数を使用するため、コンデンサの容量が小さく済み、放電装置2は、小型化に有利である。このように小型化できるから、後述する放射装置3と組み合わせても、従来のスパークプラグと同等の大きさとすることができる。また、昇圧方式を採用する結果、放電装置2のうち、放電電極26の近傍のみが高電位となるので、アイソレーションの点でも優れる。
【0032】
更には、放電装置2はマイクロ波により駆動するから、制御装置6(
図1参照)が電磁波発振器5を制御することで間接的に放電装置2を自由に制御することができる。つまり、電磁波発振器5によるマイクロ波の生成タイミングを制御することにより、放電装置2の放電タイミングを自由に制御できる。リアクタンスの大きい点火コイルを使用する通常のスパークプラグでは、高速な応答は困難であり、連続的な放電を行うことが難しい。一方、放電装置2はマイクロ波により駆動するため高速な応答が可能であり、電磁波発振器5を自由に制御することにより、任意のタイミングで高周波の、あたかも連続的な放電を生じさせることができる。従って、様々な制御が可能である。
【0033】
以上のように、本実施形態の放電装置2は、従来のスパークプラグとは大きく相違する。
【0034】
次に
図5を参照して、放射装置3は、大きくは、マイクロ波を燃焼室に放射するアンテナ部35と、電磁波発振器5からのマイクロ波をアンテナ部35へ伝送する伝送路30とに分かれる。
【0035】
また、
図5では示されていないが、伝送路30からアンテナ部35へマイクロ波を供給する給電部を有しており、伝送路30は、給電部に対して着脱自在とすることもできる。なお、伝送路30は、同軸の伝送路であり、マイクロ波を伝送する中心導体31と、グラウンド(接地部)として機能すると共に、マイクロ波が外部に漏えいすることを防ぐための外側導体32が設けられている。また、中心導体31と外側導体32はセラミック等の絶縁体が充填され、また、外側導体32の外側には例えば弾性体からなる絶縁体により包まれている。
【0036】
アンテナ部35は、例えば
図6に示すように、セラミック基板上に渦巻き状の金属パターン35aを印刷等することにより形成することができる。
【0037】
なお、上記実施形態の放射装置3は、単なる一例に過ぎず、燃焼室にマイクロ波を放射することができるものであれば、上記の実施形態に限られない。
【0038】
−点火システム10による動作例−
次に、点火システム10による動作例を説明する。典型的には、まず初めに制御装置6は、電磁波発振器5から放電装置2に対してのみマイクロ波が供給されるように電磁波発振器5を制御する。電磁波発振器5は例えば2出力(2チャンネル)構成とし、一方のチャンネルAは放電装置2に接続し、他方のチャンネルBは放射装置3に接続する。つまり、制御装置6は、まずチャンネルAに対し制御を行う一方、チャンネルBの出力はオフになるよう制御する。そして、放電装置2による放電により、燃焼室の燃料が点火したら、次は火炎を拡大させる目的で、制御装置6は、電磁波発振器5のチャンネルBの出力をオンにするよう制御し、放射装置3からマイクロ波を放射させる。これにより火炎が拡大される。
【0039】
また、第2の例としては、運転状態に応じて、放射装置3の使用/不使用を切り替えることが考えられる。例えば、低負荷であるときの第1の運転条件を満たす間は、放電装置2による放電動作のみにより点火を行い、高負荷であるときの第2の運転条件を満たす場合は、放電装置2で点火したのち、放射装置3を用いて火炎を拡大させることもできる。
【0040】
第3の例として、
図13、
図14に示すように、アンテナ60(60A〜60D)をピストン27の頂面に配置するようにしてもよい。これらのアンテナ60はピストン27の外周側に配置され、放射装置3から出射されるマイクロ波を受信する。換言すれば、アンテナ60は、放射装置3から放射状に出射されるマイクロ波を誘導する、いわゆる2次アンテナとしての機能を果たす。つまり、アンテナ60により、放射装置3からのマイクロ波がより効果的に燃焼室の外周側に誘導されることとなる。これにより、放電装置2により点火した火炎の拡大を効果的に行うことができる。また、外周部分において未燃ガスが発生することを防ぐこともできる。
【0041】
図15(a)は、アンテナ60の構成例である。同図に示すように、アンテナ60は、セラミック材料で形成される矩形基板61上に、導体62が形成される。受信感度を最大化すべく、導体62の長さはマイクロ波の波長のおおよそ1/4とする。
【0042】
第4の例として、
図16、
図17に示すように、アンテナ60(60A〜60D)をシリンダヘッド21の底面(吸気バルブ24間、排気バルブ26間、又は吸排気バルブ間)に配置するようにしてもよい。このように配置しても、放射装置3からのマイクロ波を燃焼室の外周側に誘導することができ、外周部分において未燃ガスが発生することを防ぐこともできる。
【0043】
また、アンテナ60をピストン頂面にアレイ状に配置してもよい。これにより、仮に一部のアンテナがススの付着や熱による破損により動作不良となったとしても、残ったアンテナが正常に機能すれば放射装置3からのマイクロ波を外周側に誘導することができるためである。
【0044】
(第2の実施形態)
図7に示すように、放電装置2と放射装置3をそれぞれ傾けて配置させても良い。この配置にすれば、放射装置3から放射されるマイクロ波が放電装置2の先端部に照射されやすくなる。
【0045】
但し、これらを傾けた結果、それぞれの先端部分を燃焼室内に露出させることができない。そこで、本実施形態のケーシング4B内には、キャビティ41と、キャビティ41と燃焼室を連通させる通路42が設けられる。
【0046】
つまり、放電装置2により点火した(弱い)火花を、放射装置3から放射されたマイクロ波を用いて強めることにより、キャビティ41内が高圧となり、これにより火炎が通路42を介して燃焼室に押し出される。
【0047】
なお、プラグホールの直径が十分に大きい場合は、放電装置2と放射装置3をそれぞれ傾けて配置させても、これらの先端部分を燃焼室内に露出させることができるから、このようなキャビティ41、通路42を設ける必要はない。
【0048】
(第3の実施形態)
図8に示すように、本実施形態に係る点火ユニット1Cは、放電装置2と放射装置3を一体化させた構成である。点火ユニット1Cは、放電装置2Cの外周に筒状に放射装置3Cを形成している。
【0049】
ここで、放電装置2Cの構成は、ケーシング21の形状が第1実施形態の放電装置2と相違するが、それ以外については同じである。
【0050】
一方、放射装置3Cは、絶縁筒33、誘導筒31、絶縁筒34、導体筒35からなる。絶縁筒33は、導体であるケーシング21の外周を包囲し、例えば高絶縁性、耐熱耐食性を備えたアルミナ(AL
2O
3)等を基材とするセラミックス等で形成される。誘導筒31は絶縁筒33を包囲するように設けられる。誘導筒31は、後端部31b側から入力された電磁波発振器5からのマイクロ波を伝送し、先端部31aからマイクロ波を燃焼室に向けて放射する。誘導筒31は、金属等の導体で形成される。但し、先端部31aの近傍はアルミナ等の絶縁性、耐熱性の材料で形成されていてもよい。絶縁筒35は、誘導筒31の周囲を囲うように設けられ、絶縁筒33等と同様、絶縁性、耐熱性の材料で形成される。更に絶縁筒35の周囲には導体筒35が設けられる。この導体筒35は、誘導筒31を伝搬するマイクロ波が放射装置3Cの外部に漏えいするのを防止し、安全性と伝送効率を確保するために設けられる。
【0051】
点火ユニット1Cによれば、放電装置2と放射装置3を同軸状に一体化しているので、より小型化が実現できる。出願人は、一例として、直径が約5ミリの放電装置2の試作に成功している。よって、その放電装置2の外周に筒状の放射装置3Cを取り付けた構成である点火ユニット1Cの直径は10ミリ程度とすることも十分に可能である。従って、点火ユニット1Cは、ガソリンエンジン等のスパークプラグの取付口にそのまま挿入させることが可能であり、エンジンの形状や仕様を大きく変更することなく、点火ユニット1Cを利用することができる。
【0052】
(変形例)
図9は、第3実施形態に係る点火ユニット1Cの変形例である。誘導筒31の先端部分の外周側は、絶縁筒34、導体筒35に覆われない構成としてもよい。これにより、誘導筒31の先端部からはより効果的にマイクロ波を放射することができる。
【0053】
(第4の実施形態)
図10に示すように、本実施形態に係る点火ユニット1Dも、第3実施形態と同様、放電装置と放射装置を一体化させたものである。但し、点火ユニット1Fでは、放電装置2のケーシング21の外周側(絶縁筒33側)の表面にマイクロ波を伝播させる構成としている点で、第3実施形態と相違する。つまり、ケーシング21が第3実施形態の絶縁筒33の機能を兼ねている。
【0054】
この構成によれば、第3実施形態と比較して、点火ユニットの小径化を図ることができる。
【0055】
(第5の実施形態)
図11に示すように、本実施形態に係る点火ユニット1Eも、第3、第4実施形態と同様、放電装置と放射装置を一体化させたものである。但し、放電装置の構成が、他の実施形態とは異なる。
【0056】
本実施形態の放電装置7は、中心電極71、誘電体72、接地電極73、放電電極75等により構成される。中心電極71は、先端側に位置する第1部分71Aとその後ろ側に位置する第2部分71Bとに分かれる。中心電極71は金属等の導体で形成されその表面を電磁波が伝播する。第1部分71Aの表面には、アルミナ(AL
2O
3)等を基材とするセラミックス等からなる誘電体72が形成される。第1部分71Aの先端部には突起状の放電電極75が形成される。第1部分71A及び誘電体72の周囲には、筒状の接地電極73が空間を隔てて設けられる。
【0057】
放電装置7では、中心電極71、誘電体72、接地電極73がマイクロ波の周波数において共振する共振構造となっており、これにより入射したマイクロ波の電圧が放電電極75の近傍で最大になるように昇圧される。この結果、放電電極75と接地電極73の間で放電を生じさせることができる。これにより、第1実施形態の点火ユニット1Aの放電装置2と同様、放電装置の先端部分に非平衡プラズマを形成させることができ、燃料を点火させることができる。
【0058】
また、第1実施形態と同様、この放電装置7もマイクロ波により駆動するから、任意のタイミングで高速かつ継続的な放電を生じさせることができ、任意のタイミング大きさでプラズマを生成させることができる。
【0059】
放電装置7の周囲には、マイクロ波を放射する放射装置3Dが形成される。この放射装置3Dの構成は、第3実施形態の放射装置3Cと同様である。
【0060】
したがって、本実施形態の点火ユニット1Eによっても、まず放電装置7で燃料を点火させた後、放射装置3からマイクロ波を放射させることで点火した火炎を拡大させることができる。
【0061】
また、本実施形態の点火ユニット1Eも、第3実施形態の点火ユニット1Cと同様、直径10ミリ程度に形成できるから、ガソリンエンジン等のスパークプラグの取付口にそのまま挿入させることが可能である。
【0062】
(第6の実施形態)
本発明は、
図12に示すような点火ユニット一体型インジェクタ1Fにも適用できる。この一体型インジェクタ1Fは、第5実施形態の点火ユニット1Eの中心電極71をインジェクタ本体に置き変えたものである。つまり、燃料噴射管の表面に誘電体82を設けることでマイクロ波が共振する構造を形成し、マイクロ波の電圧を増幅させ、また、燃料噴射間の先端部に突起状の放電電極85を設け、放電電極85と接地電極83間で放電を生じさせることにより、燃料噴射管から噴射させる燃料を点火する。
【0063】
一方、放射装置3の構成は第3、第4実施形態とほぼ同じである。電磁波発振器5からのマイクロ波は、同軸ケーブル51aを経由して、燃料噴射管の中央部分81Bに一旦伝送される。中央部分81Bには、図示しないインピーダンス整合回路が形成される。このインピーダンス整合回路は同軸ケーブル(通常、50Ω系)と、マイクロ波共振構造部分間のインピーダンス整合を行うものである。なお、同軸ケーブル51aは、一例として、インジェクタ本体の内部に設けられた貫通孔に挿入される。
【0064】
また、電磁波発振器5からのマイクロ波は、同軸ケーブル51bを経由して、誘導筒34にも入射する。これにより、誘導筒34の先端部からはマイクロ波が放射する。本実施形態によっても、上記各実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0065】
また、近年、ディーゼルエンジンをCNG等の天然ガスにより動作させるエンジンの開発が行われているが、CNGは軽油よりも着火温度が高いので、ディーゼルエンジンの圧縮比を大幅に変えない限り、強制的な着火手段が必要である。この点火ユニット一体型インジェクタ1Fは、ディーゼルエンジンのディーゼルインジェクタの取付口に挿入可能な大きさであるから、ディーゼルエンジンを天然ガスで動作させる用途に特に適している。
【0066】
以上、本発明の実施形態について説明した。本発明の範囲はあくまでも特許請求の範囲に記載された発明に基づいて定められるものであり、上記実施形態に限定されるべきものではない。
【0067】
例えば、放電装置2は、上記のものに限らず、例えばコロナ放電プラグ(例えばボルグワーナー社のEcoFlash(米国登録商標))など他のタイプのものを用いても良い。但し、上記の実施形態で示した効果を奏するには、高い周波数での連続放電が可能なイグナイタが好ましい。
【0068】
また、放電装置2はマイクロ波により動作するものとし、放射装置3もマイクロ波を放射するものとしているが、他の帯域を有する電磁波により動作又は放射するものでも良い。
【0069】
また、放電装置2と放射装置3は、ケーシング4により一体化されているが、別体であってもよい。
【0070】
また、放電装置2は、電磁波発振器5からの入力電圧が低い場合、放電電極26での電圧が十分に高くならないので、放電電極26とケーシング21の間で放電が行われない場合がある。このとき、放電電極26からマイクロ波が放射する場合がある。このことを逆に利用すれば、放射装置4を省略することも可能となる。つまり、まず初めは、放電装置2が確実に放電を行いうるよう、電磁波発振器5の出力電圧を高くしておく。そして、燃料が点火した後は、敢えて電磁波発振器5の出力電圧を低くすることで、放電電極26の先端部からマイクロ波が放射するように制御することで、火炎を拡大することも可能であると考えられる。これにより、放射装置3自体を省略することができる。
【0071】
また、第3実施形態の点火ユニット1C等では、マイクロ波を放電装置2、放射装置3に対し、電磁波発振器5の別々のチャンネルか入力させることを想定しているが、同一のチャンネルから点火ユニット1Cにマイクロ波を供給(給電)し、点火ユニット1C内にマイクロ波の分配器を設け、放電装置2C、放射装置3Cにマイクロ波を供給するようにしてもよい。
【0072】
また、上述したアンテナ60は、火炎拡大以外の目的で使用されるものであってもよい。例えば排気ポートの近傍に配置し、受信アンテナではなく、送信アンテナとして機能させ、排気ガスの処理に使用してもよい。この場合、
図15(b)に示すように、排気ガスが流通できるよう、矩形基板61上に空洞部64を設けるようにしてもよい。