(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
マトリックスと、少なくとも1種の抗菌剤を含む又はそれから成る1組の微粒子とを含む固体材料の、前記材料の汚染及び/若しくは前記材料と接触している組成物の汚染を少なくとも所与の時間の間、防止、制限及び/若しくは除去するための、並びに/又は前記材料の表面上でのバイオフィルム形成を防止、抑制及び/若しくは遅延するための使用であって、前記抗菌剤が、少なくとも1つの正荷電金属イオンの酸化物であり、前記抗菌剤が、前記材料の外へ移行せず、前記微粒子が0.75以上の真球度係数を有する、使用。
前記微粒子が、酸化亜鉛(ZnO)を含む若しくは酸化亜鉛で構成されている、又は酸化マグネシウム(MgO)を含む若しくは酸化マグネシウムで構成されている、又は酸化マグネシウムと酸化亜鉛との混合物である、請求項1から6のいずれか一項に記載の使用。
前記微粒子が、ZnO微粒子、ナトリウム又はアルミニウムでドープされたZnOの微粒子、及びZnOを含むメソ構造の微粒子から選択される、請求項7に記載の使用。
マトリックスと、少なくとも1種の抗菌剤を含む又はそれから成る微粒子とを含む固体材料の、少なくとも1種の微生物汚染源と接触しやすい物品の製造のための使用であって、前記材料が、請求項1から12のいずれか一項で定義されたものである、使用。
マトリックスと、少なくとも1種の抗菌剤を含む又はそれから成る複数の微粒子とを含む固体材料から成る物品であって、前記材料が、請求項1から12のいずれか一項で定義されたものである、物品。
食物組成物、栄養組成物、化粧用組成物、皮膚科組成物又は医薬組成物用の、包装物、容器又は送出具の全体又は一部である、請求項14から16のいずれか一項に記載の物品。
瓶、ジャー、ポット、缶、樽、タンク、並びに食品、栄養製品、化粧料、皮膚科製品又は医薬製品を包装及び/又は貯蔵するために使用される種々の容器を密閉するための、ストッパ、シール、カプセル、リッド、プラグ及びタップから選択される、請求項14から17のいずれか一項に記載の物品。
瓶、フラスコ、ジャー、箱、缶、樽、タンク、並びに食品、栄養製品、化粧料、皮膚科製品又は医薬製品を包装及び/又は貯蔵するために使用される種々の容器の全体又は一部を形成する、請求項14から17のいずれか一項に記載の物品。
物品を作製する方法であって、マトリックスと、少なくとも1種の抗菌剤を含む又はそれから成る1組の微粒子とを含む固体材料を形成する工程を含み、前記固体材料が、請求項1から12のいずれか一項で定義されたものである、方法。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の第1の目的は、マトリックスと、少なくとも1種の抗菌剤を含む又はそれから成る1組の微粒子とを含む固体材料の、前記材料の汚染及び/若しくは前記材料と接触している組成物の汚染を少なくとも所与の時間の間、防止する、制限する及び/若しくは除去するための、且つ/又は前記材料の表面上でのバイオフィルム形成を、防止する、抑制及び/若しくは遅延するための使用であり、そこで該抗菌剤は、材料の外へ移行しない。
【0014】
本発明に従って使用される材料中へ組み込まれた1組の微粒子内の微粒子は、少なくとも1種の抗菌剤を含む又はそれから成る任意のタイプの微粒子であってもよい。好ましい選択は、球状の微粒子である。好ましい選択は、微粒子の全体が、マトリックス中に、具体的には汚染源と接触していることがある材料の表面レベルにて、均一に分配されている個別化された1組の微粒子で好ましくは形成されていることである。
【0015】
本発明はまた、材料の汚染及び/又はこの同一の材料と接触している組成物の汚染を少なくとも所与の時間の間、防止する、制限する及び/若しくは除去するための、且つ/又は前記材料の表面上でのバイオフィルム形成を防止する、抑制及び/若しくは遅延するための方法も目的とし、そこで前記方法は、マトリックス及び1組の微粒子を含む固体材料の導入又は使用を含み、そこで前記微粒子は、少なくとも1種の抗菌剤を含む又はそれから成る。特に、該材料は、前記抗菌剤が前記材料の外側へ移行することを可能にしない。
【0016】
本発明では、「抗菌剤」は、1種又は複数の微生物を、殺す、その増殖を遅延する、又はその増殖を阻止する物質を意味する。本発明では、「増殖」は、細胞中での体積の増加、細胞の分裂又は細胞の再生へと導く、任意の細胞の働きを意味する。本発明では、「微生物」は、病原性である又はヒト等の他の有機物へ寄生性である、任意の単細胞の又は多細胞の有機物を意味する。微生物としては、カビ、真菌、酵母菌、細菌及びウイルスが挙げられる。本発明による抗菌剤は、例えば抗生、殺真菌性、静真菌性、殺細菌性又は静細菌性である作用剤であってもよい。
【0017】
殺真菌性、静真菌性、殺細菌性及び静細菌性という用語は、それぞれ、少なくとも1種のカビ、真菌若しくは酵母菌を取り除く、少なくとも1種のカビ、真菌若しくは酵母菌の発現を遅延する、少なくとも1種の細菌を除去する、又は少なくとも1種の細菌の発現を遅延することができる作用剤を指す。本発明に従って使用される粒子中の、殺真菌剤、静真菌剤、殺細菌剤又は静細菌剤は、当業者によって、使用の条件、及び達成しようとする効果に応じて選択されてもよい。
【0018】
用語、細菌は、真正細菌及び古細菌を指す。真正細菌としては、ファーミキューテス、グラシリキューテス及びテネリキューテスが挙げられる。グラシリキューテスとしては、腸内細菌科等のグラム陰性の細菌が挙げられ、その例は、クレブシエラ属(例えば、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae))、及び大腸菌属(例えば、大腸菌(Escherichia coli))である。ファーミキューテスとしては、ミクロコッカス科等のグラム陽性の細菌が挙げられ、その例は、ブドウ球菌属(例えば、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus))、及び桿菌(バシラス科)を含む茎形成性内生胞子が挙げられ、例えば、バシラス・サークランス(Bacillus circulans)である。全てのこうした参照物は、Bergey’s Manual of Systematic Bacteriology、Williams & Wilkens、第1版、1〜4巻(1984年)に挙げられている。
【0019】
用語「カビ」は、本明細書では、真菌類及び酵母菌類を含む。
【0020】
用語「真菌」は、環境中に存在する任意の真菌又は真菌類を意味する。用語、真菌(真菌類)は、無鞭毛門(Amastigomycota)、例えば不完全菌類(Deuteromycotina)を含み、これは、不完全菌類(Deuteromycetes)を含む。不完全菌類(Deuteromycetes)は、アスペルギルス属(黒色コウジ菌(Aspergillus niger))及びカンジタ属(カンジダ・アルビカンス(Candida albicans))を含む。本発明では、用語、バイオフィルムは、互いに付着し且つ材料の表面へ付着し、且つ付着性の及び保護性のマトリックスの分泌によって特徴付けられる、多細胞の微生物(例えば細菌、真菌類、藻又は原虫)の群集を指す。
【0021】
一実施形態では、粒子は、正荷電金属イオン(M
n+、式中、nは、1から4の間の整数である)の酸化物(例えば一酸化物又は二酸化物)、特に二重正電荷(M
2+)の酸化物であって、より具体的には金属酸化物が銅の酸化物ではない粒子である。例えば酸化亜鉛、酸化マグネシウム若しくは二酸化チタンの粒子を使用してもよく、又はこうした粒子の混合物若しくはブレンドを使用してもよい。具体的には、粒子は、非晶質のシリカマトリックス等のマトリックス中で使用される、こうした酸化物のナノ粒子のマトリックスを構成する粒子であってもよい。
【0022】
特定の一実施形態では、酸化亜鉛(ZnO)を含有する若しくは酸化マグネシウム(MgO)を含む若しくはそれから成る粒子、又は酸化マグネシウムと酸化亜鉛との混合物を含む若しくはそれから成る粒子がある。本発明を実施する、より具体的な一態様では、粒子は、酸化亜鉛(ZnO)を含む又はそれから成る。
【0023】
酸化亜鉛若しくは酸化マグネシウム、又は双方の混合物を含有するこれらの粒子はまた、二酸化チタンも含有してもよい。二酸化チタンは、粒子の総質量に対して、最大割合10質量%まで、好ましくは最大5質量%まで、特定すると最大2質量%まで含まれうる。
【0024】
本発明に従って使用される、粒子、特に金属酸化物粒子は、ドーパントとして知られる少なくとも1種の化学元素でドープされうる。ドーパントは、好ましくは、金属酸化物の遅延性、及び/又は汚染菌の増殖を抑制性質、好ましくは殺真菌性、静真菌性、殺細菌性又は静細菌性を、増大及び/又は最適化させるのに好適であるべきである。例えば、酸化亜鉛粒子は、少なくとも1つの正荷電イオン(D
m+、式中、mは、1から4の間の整数である)、特にカルシウム、ナトリウム、マグネシウム、チタン及び/又はアルミニウムのイオンでドープすることができる。
【0025】
ドーパントは、最大濃度10質量%まで、好ましくは最大5質量%まで、特定すると最大2質量%まで含まれる。
【0026】
粒子は、抗菌性を有する物質に加え、特定の性質を有する別の化合物を含むことができる。例えば、粒子は、精油等の活性成分を含んでもよい。
【0027】
一実施形態では、微粒子は、特定の性質、好ましくは抗菌の性質を有する化合物、例えば精油を任意選択でカプセル化しているメソポーラスな粒子である。一実施形態では、メソポーラスな微粒子は、上に定義した、精油等の化合物をカプセル化している、金属イオンの酸化物の粒子である。
【0028】
本発明に従って使用される材料中に含まれる粒子は、微粒子であり、つまり、それらの平均径(量として)は、0.1〜1000マイクロメートルの間である。本発明の特定の一態様では、粒子の平均径は、0.1〜5マイクロメートルの間、好ましくは0.4〜5マイクロメートルの間、特に0.5〜3マイクロメートルの間、又は0.5〜2マイクロメートルの間であり、特定すると、平均径は、約0.5マイクロメートルである。当業者であれば、本発明に従った、粒子の直径の値、又は粒子の凝集物の値を判定するのに使用されることになる正しい技法は、既知である。例えば、1組にある粒子の平均径、標準偏差及び粒度分布は、具体的には顕微鏡画像の統計的研究によって、例えば走査電子顕微鏡(SEM)又は透過電子顕微鏡(TEM)により生成されるものによって、判定されうる。
【0029】
本出願では、用語「約」は、それが数値に関して使用されるところでは、この同じ数値の中央にある中間値であって、その値の10%上からその値の10%下までの範囲を意味する。
【0030】
本発明では、個別化された1組の粒子は、粒子が凝集していないところの、つまり1組中の各粒子が、共有結合等の強い化学的結合の手段によって他の任意の粒子へ結合していない、1組の粒子を指す。
【0031】
本発明に従って使用される1組の粒子は、非凝集のための要件が粒子の総数の少なくとも50%の数に及ぶのであれば、特定の場に限り、この基準に合わない粒子を任意選択で含有してもよい。好ましくは、検討中の1組の粒子の、少なくとも60%の数、少なくとも70%の数、少なくとも80%の数、少なくとも90%の数及び少なくとも95%の数は、個別化されることになる。
【0032】
好ましくは、本発明に従って使用される粒子は、より小さい幾つかの粒子の凝集体で構成されてはいない。このことは、視覚的手段、例えば走査電子顕微鏡(SEM)又は透過電子顕微鏡(TEM)により明確に分析されうる。これは、本発明に従って使用される粒子の唯一可能な構成要素が、本発明に従って使用される粒子のものよりも有意に小さい粒径の結晶子であることを意味する。本発明に従って使用される粒子は、好ましくは少なくとも2つの結晶子で形成される。結晶子の材料は、単一の結晶と同一の構造を有するタイプの材料であり、つまりその構造の各原子面内に、点の欠損(挿入された若しくは置換された空格子点若しくは原子)又は直線状の欠損(転位)を除き、結晶秩序の大きな不連続がないタイプの材料である。
【0033】
好ましくは、本発明に従って使用される粒子は、個別化されており、変形しやすくない。また、他の粒子と接触している各粒子の表面は、一般に非常に弱い。一実施形態では、1組の2つの異なる粒子間の接触を形成するメニスカスの弯曲の半径は、特に本発明に従って使用されるマトリックス内では、2つの粒子のそれぞれの半径の、5%未満、好ましくは2%未満である。
【0034】
本発明に従って使用される粒子は、球状であり、具体的には、それらの真球度係数は、0.75以上である。好ましくは、真球度係数は、0.8以上、0.85以上、0.9以上又は0.95以上である。
【0035】
粒子の真球度の係数は、粒子の最小径の、その最大径に対する比である。完全な真球では、該比は1である。真球度係数は、例えば、画像の扱いに適合した任意のソフトウェアを使用してアスペクト比を測定することにより計算可能であり、それは、例えば顕微鏡、具体的には走査電子顕微鏡(SEM)又は透過電子顕微鏡(TEM)によって得られる画像である。
【0036】
本発明に従って使用される1組の粒子は、特定の場に限り、全ての粒子の平均(量での)真球度が本発明の部分として提示された基準に合う程度までは、求められる真球度の基準に合わない粒子を任意選択で含有してもよい。好ましくは、検討中の1組の粒子の、少なくとも50%の数、少なくとも60%の数、少なくとも70%の数、少なくとも80%の数、少なくとも90%の数及び少なくとも95%の数は、上に定義された真球度を有する。
【0037】
マイクロメートルの粒子、詳細には、上に定義された粒径による粒子は、より具体的には、比表面積が大きい。特定の一実施形態では、本発明の粒子の比表面積は、15m
2/g以上、好ましくは30m
2/g以上である。本発明による粒子の特定の比表面積は、700m
2/g又は600m
2/gまででありうる。当然ながら、該比表面積は、特に粒子の直径及び多孔度に応じて多様である。本発明の特定の一態様によれば、本発明による粒子の平均径は、0.2〜5マイクロメートルの間、好ましくは0.4〜3マイクロメートルの間であり、且つ比表面積15m
2/g以上、好ましくは30m
2/g以上を呈する。比表面積は、種々の方法によって測定されることが可能であり、特にブルナウアー・エメット・テラー(BET)法、又はベレット・ジョイナー・ハレンダ(BJH)法がある。上に付与された比表面積の値は、別段の指定がない限り、BET法に従って測定されている。
【0038】
特定の一実施形態では、粒子は、2014年5月7日に出願された仏国特許出願第1454141号、又は2015年5月7日に出願されたPCT特許出願のPCT/仏国特許第2015/051223号に記載されているものである。
【0039】
本発明に従って使用される個別化された粒子は、当業者に既知の任意の方法によって調製されてもよい。具体的には、それらは、2014年5月7日に出願された仏国特許出願第1454141号、又は2015年5月7日に出願されたPCT特許出願のPCT/仏国特許第2015/051223号に記載されている方法によって調製されうる。
【0040】
本出願は、「エアロゾル熱分解(又は噴霧熱分解)による」として知られるこうした1組の粒子を調製する方法を記載しており、該方法は、乾燥温度にて行われ、必ずしも熱分解温度にて行われるわけではない。具体的には、本方法は、以下の一連の工程を含む:
− (1)それから粒子が形成されることになる且つ溶液の液滴の噴霧液を得るために使用される、1種又は複数の無機材料への前駆体を含有する液体溶液を、溶媒中の所与の分子濃度にて噴霧化させる工程
− (2)該噴霧液を、溶媒の蒸発及び粒子の形成を確実にするのに十分な温度まで加熱する(乾燥すると称される)工程
− (3)該粒子を、前駆体を分解して無機材料を形成することを確実にするのに十分な温度まで加熱する(熱分解と称される)工程
− (4)任意選択で、該粒子を高密度化する工程
− (4a)任意選択で、該粒子をクエンチする工程、及び
− (5)こうして形成された粒子を回収する工程。
【0041】
より具体的には、本発明による1組の粒子を調製する方法は、通常、反応器中で実施される。こうして得た1組の粒子は、大量であってもよく、より具体的には、1日当たり得られる量は、100g超、500g超、1kg超、15kg超又は20kg超であってもよく、この量は、起こされる又は必要とされる反応器への溶液の供給速度に応じて様々である。したがって、創製される1組の粒子は、上に記載された粒子の特性を維持しながら大量に得られるという利点を有する。
【0042】
工程(1)の噴霧化は、好ましくは温度10℃〜40℃にて、且つ/又は好ましくは10秒以下、特定すると5秒以下の間、行われる。工程(1)では、液体溶液は、一般に水性若しくはヒドロアルコール性溶液の形態にあり、又はコロイド状のゾルの形態にある。より具体的には、工程(1)における液体溶液は、噴霧化によって、反応器中へと導入される。
【0043】
工程(2)の加熱(乾燥)工程は、好ましくは温度40℃〜120℃にて、且つ/又は好ましくは10秒以下、特定すると1秒から10秒の間、実施される。
【0044】
工程(3)の熱分解と称される工程は、好ましくは温度120℃〜400℃にて、且つ/又は好ましくは30秒以下、特定すると10秒から30秒の間、実施される。
【0045】
工程(4)の任意選択の高密度化は、広範囲の温度にわたり、特に200℃から1000℃の間にて行われてもよい。この工程は、特に、調製されることになる粒子が少なくとも部分的に結晶形態にあるときに、好ましくは温度400℃〜1000℃にて実施される。密集しているが結晶化されていない粒子、特に非晶質の粒子を得ようとするとき、高密度化の温度は、より低いものとすることができ、例えば、特に非晶質シリカでは、該温度は、およそ200℃〜300℃であってもよい。好ましくは、高密度化の工程は、30秒以下、特定すると20秒から30秒の間、実施される。
【0046】
工程(5)の粒子の回収は、好ましくは温度100℃未満にて、且つ/又は好ましくは10秒以下、特定すると5秒以下の間、実施される。工程(5)の粒子の回収は、好ましくは、反応器の出口での、粒子の、フィルター上の堆積によって実施される。
【0047】
各工程の温度は、上に付与された温度範囲の外であってもよい。所与の1組の粒子では、適用されることになる温度は、そこで滴及び粒子が反応器中で循環する流れ速度に依ることができる。滴及び粒子が反応器中で速く循環するほど、反応器中で同じ結果を達成するために必要とされるそれらの滞留時間はより短く、温度はより高い。
【0048】
好ましくは、工程(2)、(3)及び(4)は、同一の反応器中で実施される。詳細には、該方法における全ての工程(加工後の工程を除く)が、同一の反応器中で実施される。
【0049】
該方法における工程の全体、特に工程(2)、(3)及び(4)は、1工程ずつ、連続したシーケンスとして果たされる。反応器に適用される温度プロフィールは、これらの3工程が1工程ずつ起きるように、形成されることになる粒子の関数として適応される。好ましくは、反応器中の温度は、その温度が独立に設定されうる、少なくとも1つ、好ましくは3つの加熱要素の手段によって調整される。
【0050】
更に、本発明による1組の粒子を調製する方法は、そこで粒子をクエンチする工程(4a)を好ましくは含み、これは、工程(3)と粒子回収工程(5)との間、又は任意選択の工程である粒子高密度化(4)(それがある場合)と粒子回収工程(5)との間にくる。クエンチする工程(4a)は、急速な温度低下に相当する。より具体的には、粒子高密度化工程(4)が含まれる場合、クエンチする工程が好ましくは実施され、例えば15℃から50℃の間の温度を得るために少なくとも300℃/sの温度低下を有利には含む。より詳細には、粒子高密度化工程(4)が含まれない場合、クエンチする工程を行ってもよく、それを行う場合、それは、好ましくは少なくとも100℃/sの温度低下に相当する。クエンチする工程(4a)は、ガス、好ましくは冷気を、反応器の外周の全て又は一部へインプットすることによって好ましくは実施される。本発明では、ガスは、それが15℃から50℃の間、好ましくは15℃から30℃の間の温度であれば、冷えていると考えられる。一実施形態では、反応器に入るガスは、空気とは異なるガスである。詳細には、それは天然のガス(例えば窒素若しくはアルゴン)、還元ガス(例えば水素若しくは一酸化炭素)、又はこうしたガスの任意の混合物であってもよい。
【0051】
1組の粒子を調製する方法は、好ましくは、噴霧液を反応器の入口(例えば底にある)から運搬するガスの流れの不存在下で実施される。材料を、最高温度を有する領域中へ運ぶ層状流れは、反応器の吸引末端部(例えば頂部)のみによって最も良好に創製され、例えば数パスカル又は数十パスカルの桁の低下をもたらす。
【0052】
こうした実施形態は、その下部にガスの入口のない反応器の使用を可能にし、これは、方法の妨害及び損失を制限し、該方法の効率及び得られる粒子の粒度分布を最大化する。
【0053】
別の実施形態では、その中で該方法が実施される反応器はまた、噴霧液が形成されるところのレベルで、ガスの流入も含む。このレベルで反応器に入るガスは、好ましくは、空気、特定すると熱気、つまり温度80℃〜200℃にある熱気である。
【0054】
好ましくは、本発明に従った方法は、エアロゾル熱分解反応器内で実施されるものに加えて任意の更なる加熱工程を含むことはない。
【0055】
粒子を形成するのに使用できる無機材料の前駆体(特に正荷電イオンの金属酸化物、例えばZnO又はMgO)は、任意の起源のものであってもよい。該前駆体は、該方法の工程(1)において、液体溶液、特に、金属イオン(具体的には、選択された金属の有機塩又は無機塩)を含有する水性若しくはヒドロアルコール性溶液として、又は前駆体分子(例えばオルガノシラン)として、又はコロイド状のゾル(金属のナノ粒子のコロイド状の分散体、若しくは選択された金属の酸化物)の形態において、導入される。好ましくは、無機材料への前駆体は、該方法の工程(1)において、液体溶液、特に、金属イオン(例えば、選択された金属の有機塩又は無機塩)を含有する水性又はヒドロアルコール性溶液として、導入される。無機材料への前駆体は、形成されることになる粒子のタイプに応じて選択される。
【0056】
本発明に従って製造された材料は、マトリックス中へ組み込まれた粒子の濃度が低いにもかかわらず、高い抗汚染実効性を示した。抗汚染実効性は、特にISO規格22196(又はJIS Z 2801)に従って測定されることが可能であり、これは、プラスチック及び他の非多孔性表面のための抗細菌作用が評価されることを可能にする。そのため、特定の一態様では、本発明に従って製造された材料は、この規格を使用して試験され、抗細菌活性が、0CFU/cm
2から7CFU/cm
2の間、又は1CFU/cm
2から7CFU/cm
2の間、特定すれば2CFU/cm
2から7CFU/cm
2の間、より特定すれば4CFU/cm
2から5.3CFU/cm
2の間であることが見出された。当業者であれば、適用に応じた適当な抗菌活性の基準を選択することになる。
【0057】
粒子が低い濃度であることは、粒子が材料の外へ移行することを防ぐのに役立つことが知られている。抗汚染実効性と、本発明に従って製造された材料中での粒子放出の不在とが組み合わさると、特にこれらの材料と接触している食品及び/又は医薬製品、皮膚科製品又は化粧料において、使用される保存剤のレベルの低下が、又は組成物内でのその使用が不必要になることさえが可能になることがある。同一の細菌増殖率を達成するために、本発明に従って製造された材料を使用すると、幾つかの条件下で、プラスチックマトリックスと接触している組成物中の保存剤のレベルを4倍低下させることが可能になることが明示された。抗汚染実効性と、本発明に従って開発された材料中での粒子放出の不在とが組み合わさると、組成物の使用期限を遅延することさえが可能になることがある。本発明の材料特性はまた、これらの材料で作製された物品の脱汚染化及び/又は無菌化のために使用される放射線の量、例えばガンマ線の量を減らすためにも使用されうる。放射線による無菌化は欠点を有することが、周知の事実である。例えば、それは、脱色化の原因となるおそれがあり、且つ/又は包装物及び/若しくは化粧用組成物へ臭いを与えるおそれがある。
【0058】
本発明による材料を調製するのに使用されるマトリックスは、有利には液体マトリックスであり、その粘度がどうであれ、液体マトリックスは、本発明に従って使用されうる固体材料の形成、それに続くマトリックス中への微粒子全体の組込み、及びおそらくはそれに続く付加的な任意選択の工程、例えば乾燥工程を可能にする。マトリックスの特徴的な「液体」形態は、非液体マトリックスを処理することによって、例えばそれを加熱することによって、得られうる。マトリックス中への微粒子の組込みは、好ましくは、マトリックスが液体形態又は溶融形態にあるときに実施され、一旦、微粒子が組み込まれると、該マトリックスは、固体材料を創製するために固化される。
【0059】
好ましくは、マトリックスは、無機又は有機マトリックスであり、例えばポリマーマトリックス、特にプラスチック、ゴム、ニス、塗料、繊維、シリコーン、グルー、コーティング又はエラストマータイプのポリマーマトリックスである。特定の一態様では、ポリマーマトリックスは、熱可塑性ポリマーから成り、例えば、具体的には、アクリロニトリルブタジエンスチレンコポリマー、酢酸セルロース、ポリスチレン、特に発泡ポリスチレン、ポリアミド、ポリ(ブチレンテレフタレート)、ポリカーボネート、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(メタクリル酸メチル)、ポリホルムアルデヒド、ポリプロピレン、ポリ(酢酸ビニル)、ポリ(塩化ビニル)、ポリ(乳酸)(PLA)、ポリカプロラクトン、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)、多糖類、スチレン−アクリロニトリルコポリマー、又はこうしたポリマーの混合物から成る。
【0060】
本発明の特定の一態様では、ポリマーマトリックスは、バイオポリマーのマトリックスであり、つまり、バイオマスから誘導されるポリマー、即ち植物、藻類、動物又は真菌類等の生きている有機物によって生成される材料である。
【0061】
マトリックスはまた、塗料、インクであってもよく、又は繊維材料への前駆体、若しくは表面上にフィルム及び/又はコーティングを形成することが可能な任意の材料への前駆体であるマトリックスであってもよい。繊維材料としては、具体的には、衣類、カーペット、カーテン、ベッド用、及びバンドエイド等の医療繊維材料が挙げられる。
【0062】
材料中に分配された微粒子の割合は、粒子及びマトリックスの性質に応じて、且つ材料及び/又は物品の意図された使用に応じて、かなりの程度まで多様であってもよい。好ましくは、本発明の材料又は物品は、マトリックスに関して低濃度の粒子を含み、具体的には、総質量(マトリックス及び粒子の質量)に対して、0.1質量%〜10質量%、又は0.1質量%〜5質量%、より特定すると0.5質量%〜3質量%、又は1質量%〜3質量%の粒子を含む。きわめて好ましくは、本発明に従って使用される材料又は物品は、総質量(マトリックス及び粒子の質量)に対して、約0.2質量%〜2.5質量%の粒子を含有する。当業者であれば、所望の抗汚染効果、特に抗菌効果を達成し且つできるだけ低い放出率(粒子が材料の外へ移行することに関して)を維持するために、材料中の粒子の必要とされる割合を選択することができることになる。材料中の粒子の濃度が低いほど、粒子の放出率を低く維持することが容易になる。本発明に従って使用される材料は、存在する粒子の割合がかなりの抗菌効果を達成するのに十分でありながら、同時に、きわめて低い(又はゼロの)粒子移行レベルに相当する、きわめて低い(又はゼロの)放出率を維持できるという特性を有する。
【0063】
そのため、本発明に従って使用される材料は、汚染菌の増殖を抑制及び/又は遅延する性質を有する。これらの性質は、汚染されやすい組成物及び/又は対象物が前記材料と近く接触して置かれているところで、特に効果的である。具体的には、汚染されやすい組成物及び/又は対象物は、汚染菌の増殖を遅延する及び/又は抑制ために、該材料と接触して置かれる。
【0064】
実効性の点で、本発明に従ってマトリックス中に粒子を含ませることにより材料へ授けられた性質は、組成物及び/又は対象物への粒子の移動がない結果、衰えずに残り、又は経時的にわずかに衰えるのみである。例えば、酸化亜鉛粒子の殺細菌作用は、酸素反応形態の創製によって得られ、該作用は、粒子が空気中で酸素と接触しているときに細菌を殺す。酸化亜鉛粒子の消費はなく、空気からの、又は材料がその中にある環境からの、酸素の消費のみがある。
【0065】
本発明では、微粒子が材料の外へ移行しないという事実、詳細には、微粒子が、材料と接触している組成物中へ移動しないという事実は、微粒子を作り上げている主要な要素が、組成物1キログラム中に、1mg未満、好ましくは組成物1キログラム中にそれぞれ0.5mg未満、特定すると0.01mg未満、見出されることを意味する。微粒子を作り上げている主要な構成要素は、上に定義された金属酸化物、具体的には酸化マグネシウム及び/又は酸化亜鉛である。
【0066】
詳細には、この濃度は、欧州医薬方(例えば、ポリオレフィンについては3.1.3章、ポリエチレンについては3.1.5章、又はポリプロピレンについては3.1.6章)によって推奨されている以下の方法によって測定されることが可能であり、そこで試料材料は、最初に切片へカットされ、そこで任意の所与の最大側長は1cmである。本発明により開発され且つ調べられることになる材料100gを、ホウケイ酸ガラスの丸首コニカルフラスコ中へ導入する。0.1Mの塩酸20mLを加える。該混合物を、還流下で1時間、一定の撹拌をしながら加熱する。該溶液を、室温(即ち18℃から25℃の間)まで冷却して落ち着かせる。抽出分量を、原子吸収分光法によって測定する。該試験は、これらの試験条件下で、ポリプロピレンマトリックスで、≦1ppmの抽出分レベルの測定を可能にした(抽出分は、亜鉛であり、そこで微粒子はZnOに基づく)。
【0067】
したがって、本発明に従って使用される抗菌剤が微粒子の形態にある金属酸化物であるとき、「抗菌剤は前記材料の外へ移行しない」という句は、金属イオン移行率が、50ppm以下、25ppm以下、特定すると10ppm以下、又はより特定すると5ppm未満(下限は、一般に、金属イオンの0ppmから1ppmの間である)に相当することができる。その下でこれらの試験が実施される条件は、正規使用における材料が直面する典型的な条件よりも厳しい。
【0068】
当然ながら、この範囲外の移行レートが、きわめて特殊な状況において、特に材料が、分解を促進する条件、例えば高度に酸性の条件に置かれるときに観察されることがある。しかしながら、こうした条件は、一般に、食物、化粧品、皮膚科又は医薬の用途では見出されない。
【0069】
したがって、本発明に従って使用される材料は、汚染菌の増殖を抑制及び/又は遅延することを該材料に可能にさせる性質を、材料の外へ移行することがある抗菌剤を含有する材料と比べ、より長い時間、保持する。好ましくは、該材料は、これらの性質を、該材料と接触している組成物が貯蔵されることになる期間よりも長く保持する。具体的には、該材料は、これらの性質を、その寿命にわたって保持する。
【0070】
好ましくは、本発明に従って使用される材料と接触している組成物は、食物組成物、栄養組成物、化粧用組成物、皮膚科組成物又は医薬組成物である。好ましくは、それは、眼科用溶液等の液体、化粧用クリーム若しくは皮膚科用クリーム等のクリーム、ジェル、又は食品である。そのため、本発明の特定の一態様によれば、組成物は、哺乳動物に、特定するとヒトに生理的に受容される組成物であり、つまり、それは、前記哺乳動物において異常な反応又は機能を起こさせず、安全問題は、この生理的に許容される組成物では、検出されない。
【0071】
組成物が材料と接触している時間は、かなりの程度まで多様であってもよい。そのため、材料が化粧用ローションのための送出具を製造するのに使用されるとき、該組成物は、数週間、数か月間又は数年間さえ、材料と接触したままであってもよい。材料が、ダクトで運ぶ食物組成物を作製する又はコーティングするのに使用されるとき、該組成物は、分の桁、又は秒の桁、又は更に1秒未満というはるかに短い時間の間のみ、材料と接触したままであってもよい。
【0072】
本発明に従って開発された材料の使用は、本発明に従って開発された該材料で形成された物品中に含有されている組成物が清潔な状態で維持されることを可能にし、つまり、その起源が周囲空気及び/又は適用手段及び/又はそのために該組成物が意図されている体へのその曝露である、好ましくはその繰り返される曝露である、微生物汚染の一切の不在が維持されることを可能にする。
【0073】
用語「繰り返される曝露」は、物品が、組成物の少なくとも一部を供給するのに少なくとも2回使用され、したがって最初の使用後に組成物の一部が物品と接触したままであることを意味する。
【0074】
加えて、組成物を送出するためのオリフィス、例えばポンプ又はチューブの出口の末端部は、それが、周囲空気、適用手段及び/又は体と接触しているにもかかわらず、清潔なままである。そのため、先に提示した系、例えばそのオリフィスが汚染されうる膜系又は密閉キャップとは異なり、次に使用する間、このオリフィスを経て送出されることになる組成物の部分に汚染はない。
【0075】
食品の事例では、本発明に従って開発された容器の使用は、特に食品の表面上で微生物の増殖を制限すること、それによりその判定が細菌の増殖のリスクを通常考慮に入れている使用期限の必要性を遅延する又は除きさえすることを可能にする。
【0076】
本発明の他の目的は、上に定義したマトリックス及び微粒子を含む材料の、少なくとも1種の微生物汚染源と接触することになりうる物品を製造するための使用である。
【0077】
本発明では、「微生物汚染源」という句は、微生物を含有していることがあり、それらを本発明で定義している材料、組成物及び/又は物品へ伝染させうる、任意の部分を意味する。
【0078】
本発明を実施する一態様では、微生物汚染源は、周囲空気、ブラシ若しくはスパチュラ等の適用手段、又はヒト若しくは動物の体の起源のいずれかから起こる。
【0079】
本発明の別の目的は、少なくとも1種の微生物汚染源と接触することになりやすい物品の製造方法であり、該方法は、上に記載したもの等の、マトリックスと、少なくとも1種の抗菌剤を含む又はそれから成る微粒子とを含む固体材料を形成する段階を含む。
【0080】
該製造方法は、マトリックス中に微粒子を分散させる予備工程を含んでもよい。この分散は、単純な混合によって、又は任意選択で、機械的な若しくは磁気的な撹拌、若しくは超音波処理の使用によって達成されうる。
【0081】
そのため、該製造方法は、当業者に既知である且つマトリックス及び/又は材料を形成することを果たすよう設計された任意の技法を使用した、物品を形成する工程を含む。そのため、例えば、ポリマーマトリックスの事例では、形作る工程は、射出成型、射出延伸ブロー成型又は押出ブロー成型によって行われてもよい。
【0082】
本発明の更なる目的は、先に定義した、少なくとも1種の抗菌剤を含む又はそれから成る固体のマトリックス及び微粒子を含む固体材料で作製された物品であり、そこで該物品は、少なくとも1種の微生物汚染源と接触することがある。
【0083】
本発明を実施する一態様では、物品は、食物組成物、栄養組成物、化粧用組成物、皮膚科組成物又は医薬組成物の、包装物又は容器若しくはディスペンサーの全体又は一部を形成する。本発明に従って開発された物品は、単回使用又は複数回使用のいずれかであってもよい。
【0084】
本発明によって開発された物品は、具体的には以下の中から選択される傾向がある:瓶、ジャー、ポット、缶、樽、タンクを密閉するための、ストッパ、シール、カプセル、リッド、プラグ及びタップ、並びに食品、栄養製品、化粧料、皮膚科製品又は医薬製品の包装及び/又は貯蔵に使用される種々の容器。
【0085】
或いは、物品は、瓶、ジャー、ポット、缶、樽、タンク、並びに食品、栄養製品、化粧料、皮膚科製品又は医薬製品の包装及び/又は貯蔵に使用される種々の容器の全体又は一部であってもよい。
【0086】
好ましい実施形態では、物品は、組成物、特に眼科用溶液、例えば点眼剤又はコンタクトレンズ用製品を送出するための容器及び/又は装置である。有利には、それは、医薬使用のために設計された単回使用又は複数回使用の瓶である。例えば、当業者であれば、3部から成る眼科用製品分配装置に馴染みがあるであろう。該装置の1部分、2部分又は全3部分が、本発明による材料で製造されうる。
【0087】
医薬製品の貯蔵及び/又は分配に好適な物品の中では、スプーン(例えばシロップ用スプーン)、注射器(例えばシロップを投与するための注射器)、ストリップ包装材(例えば錠剤又はカプセルのストリップ包装材)、バッグ(例えば輸液バッグ)、チューブ、カニューレ、ポンプ及び瓶がある。
【0088】
食品の貯蔵及び/又は分配に好適な物品の中では、トレイ、シール及び包装用フィルムがある。
【0089】
汚染源と接触していることがある物品としては、具体的には、配管の表面、ダクト配管の表面及び被削面が挙げられる。
【0090】
食物組成物、栄養組成物、化粧用組成物、皮膚科組成物又は医薬組成物の、包装物、容器又は送出具の種々の形態が、当技術分野で周知である。例えば、溶液のために使用される送出具は、一般に、底、口又はカニューレ、及び上部に、再密封できる密閉物、特にねじ込みキャップを有する実質的に円筒型成形体(楕円体を含む)を含む。
【0091】
本発明による材料又は物品は、広範囲の使用及び分野において使用できる。例えば、こうした材料又は物品は、特に工場用地で、汚染されやすい成分を運ぶ導管を製造する及び/又はコーティングするのに使用できる。例えば、この材料又は物品は、食物加工プラントにおいて、食物又は食品を運搬するダクトを作製するのに使用できる。その場合、本発明による材料又は物品の使用は、バイオフィルムの形成、並びに細菌の発生及び/又は増殖を制限することを可能にする。これにより、ダクト洗浄の回避又は頻度低減が可能になるが、この洗浄には特殊な技法を伴うことが多く、且つプラントの生産性に影響を及ぼすおそれのある、相当な時間にわたるダクト同士の隔離を要する。加えて、本発明に従って製造された物品又は材料の使用は、所望の効果が、表面全体にわたって得られ、隠れた領域においてさえ、又は例えば洗浄の目的でのそこへのアクセスが難しい領域においてさえ得られることを可能にする。
【0092】
同様に、本発明に従って製造される物品及び/又は材料は、任意の汚染されやすい環境のための設備、例えば手術室、無菌室、外科用器具環境又は実験台を製造するのにも使用されうる。
【0093】
以下の実施例は、例証の目的でのみ挙げられており、本発明を限定するものではない。
【実施例】
【0094】
(実施例1)
本発明に従って製造した材料の抗細菌効果の評価
各種の細菌(大腸菌、黄色ブドウ球菌、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、リステリア・モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes)、サルモネラ・エンテリカ(Salmonella enterica)、表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)、肺炎レンサ球菌(Streptococcus pneumoniae)及びインフルエンザ菌(Haemophilus influenza))の増殖を、本発明に従って製造した材料の試料中で研究し、且つ等価の、粒子を含有しない試料について観察したものと比較した。該試験は、JIS規格Z 2801:2010年に従って行った。該試験は、3通りで行い、以下に示す結果は、3種の試料についての平均の結果に相当する。
【0095】
細菌株、リステリア・モノサイトゲネス及びサルモネラ・エンテリカは、食品中の細菌汚染の発現に、典型的に関連している。
【0096】
細菌株、表皮ブドウ球菌、肺炎レンサ球菌及びインフルエンザ菌は、鼻の領域における細菌の発現に典型的に関連しており、したがって、顔と接触する任意のアイテム上に存在しがちである。
【0097】
本発明に従って製造した材料の試料は、仏国特許出願第1454141号に記載の方法によって合成した、平均径が0.50μmで比表面積が約15m
2/gである、酸化亜鉛の球状粒子を含む一片の低密度ポリエチレン(Lyondelbasell company社により販売されているPurell PE 1840 H)である。酸化亜鉛の球状粒子の濃度は、2質量%である。
【0098】
対照試料もまた、一片の低密度ポリエチレンプレート(Lyondelbasell company社により販売されているPurell PE 1840 H)である。
【0099】
参照の細菌株は、大腸菌CIP 53126及び黄色ブドウ球菌CIP 53156である。
【0100】
試料片を、アルコールで処理した。次いで、試験を実施する前に、1組の試料片を、無菌の蒸留水ですすぎ、層状流れフード下で乾燥させた。
【0101】
カバーするフィルムは、ストマッカーバッグ(40mm×40mm)(AES)で作製した無菌フィルムである。
【0102】
懸濁液を、濃度1/500へ希釈したNutrient Broth溶液で調製した。回収溶液は、該規格が推奨するSCDLP溶液である。それに続く希釈を、PBS(リン酸緩衝食塩水)を使用して実施する。培養基は、トリプティカーゼ大豆寒天培地(Biomerieux社)である。
【0103】
量1.83×105CFU(コロニー形成単位)の堆積物を、試料片上で作製した。増殖を、堆積24時間後に、又は堆積1時間後に測定した(肺炎レンサ球菌及びインフルエンザ菌について)。
【0104】
結果を、以下のTable 1(表1)に示し、汚染値は、対照(粒子なし)試料について、1へ正規化した。
【0105】
【表1】
【0106】
本発明に従って製造した材料の試料上の増殖は、試験した全種の細菌に対して、粒子を含有しない試料の増殖よりも有意に低い。
【0107】
細菌の増殖を、大腸菌について、24時間の試験期間にわたって続けた。
図1は、本発明に従って製造した材料の試料及び対照試料についての、増殖速度の低下を示す。
【0108】
上に特定した球状粒子を含む他の低密度ポリエチレン試料(Lyondelbasell company社により販売されているPurell PE 1840 Hの)が、0.2質量%〜2.5質量%の範囲の粒子濃度で調製されうる。
【0109】
(実施例2)
本発明に従って製造した材料の、必要とされる保存剤の量についての影響の研究
ある量の栄養液(Nutrient Broth)を、本発明に従って製造した材料の試料上に、且つ実施例1で定義した対照試料上に、堆積させる。Nutrient Broth溶液中の保存剤(メチルパラベン)の投与量は、多様とし、大腸菌の増殖の後続速度を、試験6時間後と24時間後とで、種々の条件下で比較した。溶液中の保存剤の濃度は、質量%で表す。
【0110】
図2は、対照試料(a)及び本発明に従って製造した材料のサンプル(b)についての、保存剤の濃度に基づく細菌の増殖の進化を示す。
【0111】
図3は、保存剤の濃度を関数とした、対照試料と、本発明に従って製造した材料の試料との、抗細菌作用の比較を示す。
【0112】
等価の抗細菌活性を、0.1%の保存溶液を有する本発明に従って製造した試料材料について、且つ0.4%の保存溶液を有する対照試料について、得る。
【0113】
したがって、粒子を含有しない材料と接触している組成物と比較すると、本発明に従って製造した材料の使用は、それが同一の組成物と接触しているときに、必要とされる保存剤の量を4倍、減少させることができる。
【0114】
(実施例3)
逆行性汚染の研究
この実施例は、14日間にわたる模擬的使用、及びヒト起源の潜在的な汚染菌(黄色ブドウ球菌、緑膿菌及び枯草菌(Bacillus subtilis))の定期的な適用の後の、点眼薬等の製品の瓶の処理能力の評価に関する。
【0115】
材料及び方法
以下の株を使用する:黄色ブドウ球菌CIP 4.83、緑膿菌CIP 82118及び枯草菌(芽胞形態にある)CIP 52.62。該株の保存及び維持を、EN規格12353(2006年9月)に従って実施する。株細菌懸濁液を、欧州薬局方(第7版、2012年、2.6.12章)に従って作製する。ワーキング懸濁液を、株溶液から、9g/lのトリプトン−塩(1.10
2CFU/ml〜3.10
2CFU/mlの理論的調整に相当する)を含有する無菌懸濁液液体中で連続6回の10倍希釈液を調製することによって創製する。懸濁液を、プレーティング法を使用してカウントする。
【0116】
対照バイアルは、バイアル、末端部及びポリエチレンキャップ(Purell 1840H)を含む。試験バイアルは、本発明に従って作製された材料の、バイアル、末端部及びキャップ(平均径が500nmで比表面積が約15m
2/gのZnOの球状粒子を含有するタイプPurell 1840Hのポリエチレン)を含む。バイアル、末端部及びキャップは、2質量%のZnOの球状粒子を含有する。
【0117】
2種のバイアルを、1/500のNutrient Broth溶液9ml(3gの肉抽出物、10gのダイズペプトン、5gのNacl:1lのために十分な量を含有する)で満たす。pHは、6.8から7.2の間である。該プロトコールを、10の試験バイアル及び10の対照バイアルに適用した。
【0118】
2週間の間、8種の模擬実験を、両種のバイアル上で、1週間に4種の模擬実験という率にて行う。模擬実験の手順を、1日に2回繰り返す。
【0119】
模擬実験の手順の操作方法は、以下である:
− 上に記載した3種の微生物のワーキング懸濁液を調製する
− 体積の等しい3種の懸濁液を含有する10mlの即時混合物を調製する
− 無菌の綿棒を、この懸濁液に大量に浸す
− 正規の方法で、キャップを回して外し、製品の滴を取り除く
− 浸した綿棒を製品分配領域へ適用することによって、使用の模擬実験を行う
且つ、
− キャップを回して戻し、バイアルを、次の模擬実験まで室温にて貯蔵する。
【0120】
培養液中に存在する微生物の濃度を、7日後に分析し、再度14日後に分析する。14日後に、培養液の無菌度をまた、対照バイアル中でも調べる。
【0121】
カウントに関して、アッセイを、欧州薬局方2.6.12章の推奨に従って行った。バイアルの内容物をボルテックスによって均質化した後、体積2×100μLを、全ての真菌性フローラを付与する全ての有酸素フローラ及びサブロー(AES)を付与するトリプティカーゼ大豆寒天培地(Biomerieux社)の培養基へ加えた。プレートを、トリプティカーゼ大豆培養基では32.5±2.5℃にて3〜5日間、サブロー培養基では22.5±2.5℃にて5〜7日間、インキュベートした。
【0122】
無菌度の評価試験を、欧州薬局方2.6.1章の推奨に従って実施した。該試験は、本発明に従って作製された且つサンプリングの2つの態様に従って作製された材料のバイアル上でのみ実施した。
【0123】
1〜5の番号を付けたバイアルでは、最も好ましくない条件下でそれを試験するために、培養液を、末端部を通過させた後で回収した。
【0124】
6〜10の番号を付けたバイアルでは、末端部を回して外した後、培養液を、バイアルの内側から直接、回収した。
【0125】
異なるバイアル中に含有されている培養液全体(約8.5ml)を試料化し、次いでトリプティカーゼ大豆培養液(Biomerieux社)100ml中へ導入した。インキュベーションを、22.5±2.5℃にて14日間、実施した。汚染を観察すると、陽性の試験であることを示している。この事例においてのみ、汚染の確認を可能にするために隔離を実施した。
【0126】
2種の対照を製造した:
陰性の対照:
培養液9mlを含有しているポリエチレンバイアルを、模擬実験から14日後の無菌度を確認するために、試験において使用するバイアルと同一の環境条件中に置いた。
陽性の対照:
培養液9mlを含有しているポリエチレンバイアルに、3種の細菌を播種し(最終濃度、約3CFU/mlまで)、微生物の生存能力が模擬実験の14日間維持されていることを確認するために、試験で使用するのと同一の周囲条件下に置いた。
【0127】
結果
以下の表に提示している結果は、培養液100マイクロリットル当たりのCFUの単位で表している。
【0128】
カウント
以下のTable 2(表2)は、トリプティカーゼ大豆寒天培地の培養基上で7日及び14日にてカウントした結果を示す。本発明に従って製造した材料のバイアルは、「PE+ZnO」バイアルであり、他のバイアル(「PE」バイアル)は、対照のポリエチレンバイアルである。
【0129】
【表2】
【0130】
以下のTable 3(表3)は、サブロー培養基上での7日及び14日でのカウント結果を示す。本発明に従って製造した材料のバイアルは、「PE+ZnO」バイアルであり、他のバイアル(「PE」バイアル)は、対照のポリエチレンバイアルである。
【0131】
【表3】
【0132】
サブロー寒天培地上で観察した個体群は、ポリエチレンバイアルNo.6について以外では、主に、起源が細菌性(主に緑膿菌)であり、そこで、多数の細菌性フローラに加えて、カビの存在を検出した。
【0133】
模擬実験の7日後、PE+ZnOシリーズ(本発明に従って製造した材料のバイアル)において試験した10のうちのいずれのバイアルも、汚染の存在を示さなかった。同時に、PEシリーズ(対照バイアル)において試験した10のうち9のバイアルは汚染されており、その汚染レベルは、1CFU〜300CFUと検出されて異質であった。
【0134】
模擬実験の14日後、PE+ZnOシリーズ(本発明に従って製造した材料のバイアル)において試験した10のうち1つのバイアルが、緑膿菌の存在を示した。同時に、PEシリーズ(対照バイアル)における全てのバイアルは汚染されており、培養液100μl当たり300CFU超という高度の汚染を示した。
【0135】
無菌度の評価
以下のTable4(表4)で、本発明に従って製造したバイアルにとっての対照試料の、無菌度試験の結果をまとめており、その試料は、バイアルの内側から直接取った。
【0136】
【表4】
【0137】
この結果は、試料を容器の内側から直接回収した5種のバイアルについての培養液において、無菌条件が維持されていることを明示している。
【0138】
結論
本発明に従って製造した材料の、バイアル及び末端部のための使用は、試験条件下で、培養液の汚染リスク、即ちグラム陽性の細菌(黄色ブドウ球菌)、グラム陰性の細菌(緑膿菌)及び芽胞形態のグラム陰性の細菌(枯草菌)に伴う末端部の人工的な汚染リスクが制限されることを可能にする。
【0139】
同一条件下で、対照のポリエチレンバイアルの使用は、3種の汚染菌のうちの少なくとも1種の有意な増殖を伴う逆行性汚染によって特徴付けられる。
【0140】
本発明に従って製造した材料のバイアル上で実施した無菌対照は、包装物中に含有されている製品の逆行性汚染の不在を確実にする。
【0141】
(実施例4)
抗菌活性の研究
上の実施例中の全ての材料(無機及び有機の双方の材料、例えばプラスチック、ゴム、ニス、塗料、繊維、シリコーン、グルー、コーティング及びエラストマー)を、ISO規格22196に従って試験し、その結果は、大腸菌試料における抗細菌活性1CFU/cm
2から7CFU/cm
2の間に相当する。質量(マトリックス及び粒子を含む総質量)による粒子の濃度は、0.2質量%〜2質量%であり、粒子の比表面積は、平均粒子径0.50μmでは15m
2/g〜30m
2/gである。
【0142】
該規格が記載している試験は、分析されることになる各微生物について、3種の処理した試料(40mm×40mm)及び6種の未処理試料の使用を求めている。
A.試験されることになる微生物の既知の濃度での播種であり、試料表面上に均質に堆積される
B.生存可能な微生物の濃度の判定であり、播種直後に且つ培養物のインキュベーションから24時間後に、寒天培地の培養基に基づく方法を使用して行われる
C.これらのカウントの比較は、分析される表面上での抗菌活性値の判定を可能にする。
【0143】
試験器具を、アルコールで処理する。全ての試験器具を、試験前に、無菌の蒸留水ですすぎ、次いで層状流れフード下で乾燥させる。
【0144】
無菌フィルムを、ストマッカーバッグ(40mm×40mm)から作製する。
【0145】
試験の条件
・接触温度:36±1℃
・相対湿度:80%
・接触時間:24時間
【0146】
結果
MgO粒子について:
低密度RIBLENEのポリエチレンマトリックスを伴うMgO(ISO22196 E. coliに従った試験)
T0対照:1.38×10
5CFU
T0試料:1.44×10
5CFU
T24h対照:2.83×10
7CFU
T24h試料:60CFU
ZnO及びMgO粒子について(量:それぞれ0.5質量%及び0.2質量%):
Purell PE 1840 Hの低密度ポリエチレンマトリックスを伴うZnO/MgO(質量比2.5)(ISO22196 E. coliに従って実施した試験)
T0対照:1.67×10
5CFU
T0試料:1.72×10
5CFU
T24h対照:2.56×10
7CFU
T24h試料:196CFU