(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6739397
(24)【登録日】2020年7月27日
(45)【発行日】2020年8月12日
(54)【発明の名称】作業車
(51)【国際特許分類】
B62D 21/00 20060101AFI20200730BHJP
B62D 21/18 20060101ALI20200730BHJP
【FI】
B62D21/00 Z
B62D21/18 C
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-109384(P2017-109384)
(22)【出願日】2017年6月1日
(65)【公開番号】特開2018-202972(P2018-202972A)
(43)【公開日】2018年12月27日
【審査請求日】2019年6月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】小松 貴史
(72)【発明者】
【氏名】岡部 健介
(72)【発明者】
【氏名】中岡 裕貴
【審査官】
森本 哲也
(56)【参考文献】
【文献】
特開2017−013686(JP,A)
【文献】
特開2013−248982(JP,A)
【文献】
特開2015−193342(JP,A)
【文献】
実開昭58−188268(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 21/00
B62D 21/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体前後方向に延びる左右一対の支持フレームが備えられ、
左右の前記支持フレームは、夫々、角筒材にて構成され、且つ、前後方向に延びる前側部分と、前記前側部分の後部に連なり、後側に向かうほど機体内側に位置するように傾斜する状態で延びる中間傾斜部分と、前記中間傾斜部分の後部に連なり前後方向に延びる後側部分とを備え、
前記支持フレームにおける前記中間傾斜部分と前記後側部分とが連なる折れ曲がり箇所の近傍に、サスペンション機構を支持する支持ブラケットが取り付けられ、
前記支持ブラケットの下面側及び前記支持フレームにおける前記折れ曲がり箇所を含む領域の下面側を覆う状態で、補強板が連結され、
前記補強板は、前記折れ曲がり箇所に対応する位置に前記支持フレームの横幅よりも幅広の挿通孔が形成され、且つ、前記支持フレームにおける前記中間傾斜部分側に向けて延びる箇所が先細状に形成されている作業車。
【請求項2】
平面視において左右の前記支持フレーム夫々の前記前側部分同士の間に位置する状態でエンジンが備えられ、
左右の前記支持フレーム夫々の前記後側部分の横外方側に、前記サスペンション機構を介して左右の車輪が備えられている請求項1に記載の作業車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体前後方向に延びる左右一対の支持フレームが備えられた作業車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来では、車体後部に位置する原動部を下側から支持する左右一対の支持フレームが、角筒状のフレーム材にて構成されるとともに、エンジン及び無段変速装置が横並び状態で位置する前部側箇所が幅広に形成され、後部側箇所では、横外側方にサスペンション機構を介して後車輪を支持するために幅狭に形成されていた。そして、後部側箇所の前部側箇所は、支持フレームが平面視で略L字状に折れ曲がっており、しかも、サスペンション機構を支持するための支持ブラケットを支持する構成であり、大きな荷重が掛かるから、支持フレームの底面に平板で且つ略長方形状の補強部材が備えられていた(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017−13686号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来構成は、底面に備えられる補強部材が、平板で且つ略長方形状に設けられているから、次のような不利な面があった。
【0005】
角筒状のフレーム材にて構成される左右一対の支持フレームを、平面視で略L字状に折れ曲げる加工を行うときに、上下両側の側面が少し外方に膨出する場合がある。従来構成では、平板状の補強部材を支持フレームの底面に固定するとき、膨出に伴う凹凸形状に起因して補強部材との間の連結箇所に隙間が発生して、良好に連結が行われないおそれがあった。
【0006】
又、補強部材の前部側の端縁部は、支持フレームが斜め前方側に向けて延びる箇所に作用するが、従来の補強部材は、略長方形状であって、端縁部が直線状に延びる形状となっている。そして、この端縁部に応力がかかったときに、補強部材の横側端部に集中して応力がかかり、破損するおそれがあった。
【0007】
そこで、支持フレームと補強板との連結を良好に行えるとともに、耐久性に優れたフレーム連結構造を採用することが望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る作業車の特徴構成は、
車体前後方向に延びる左右一対の支持フレームが備えられ、
左右の前記支持フレームは、夫々、角筒材にて構成され、且つ、前後方向に延びる前側部分と、前記前側部分の後部に連なり、後側に向かうほど機体内側に位置するように傾斜する状態で延びる中間傾斜部分と、前記中間傾斜部分の後部に連なり前後方向に延びる後側部分とを備え、
前記支持フレームにおける前記中間傾斜部分と前記後側部分とが連なる折れ曲がり箇所の近傍に、サスペンション機構を支持する支持ブラケットが取り付けられ、
前記支持ブラケットの下面側及び前記支持フレームにおける前記折れ曲がり箇所を含む領域の下面側を覆う状態で、補強板が連結され、
前記補強板は、前記折れ曲がり箇所に対応する位置に前記支持フレームの横幅よりも幅広の挿通孔が形成され、且つ、前記支持フレームにおける前記中間傾斜部分側に向けて延びる箇所が先細状に形成されている点にある。
【0009】
本発明によれば、補強板によって、支持フレームにおける折れ曲がり箇所であって、サスペンション機構を支持する支持ブラケットが取り付けられる箇所の強度補強を行える。補強板には、挿通孔が形成されるので、支持フレームが折れ曲げ加工に伴って上下方向に膨出することがあっても、挿通孔によってその膨出箇所を回避して支持フレームの平坦な面に対して良好に連結を行える。又、補強板において、支持フレームが斜め前方に延びる箇所に対して補強作用する箇所では、先細状に形成されるので、応力が分散した状態でかかることになる。その結果、応力が集中して破損を招くおそれを少なくして耐久性に優れたものになる。
【0010】
従って、支持フレームと補強板との連結を良好に行えるとともに、耐久性に優れたフレーム連結構造を得ることができる。
【0011】
本発明においては、平面視において左右の前記支持フレーム夫々の前記前側部分同士の間に位置する状態でエンジンが備えられ、
左右の前記支持フレーム夫々の前記後側部分の横外方側に、前記サスペンション機構を介して左右の車輪が備えられていると好適である。
【0012】
本構成によれば、横幅方向の間隔が広い前側部分同士の間にエンジンが位置するので、エンジンを支持フレームの間に入り込ませて低い位置に設置して、低重心化を図ることが可能であり、又、横幅方向の間隔が狭い後側部分の外方側に左右の車輪を配備するようにしたから、車体の全幅をコンパクトにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図3】前後方向に延びるフレーム体を示す平面図である。
【
図4】後下フレームの支持構造を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の作業車にかかる実施形態の一例を図面の記載に基づいて説明する。
尚、本実施形態での説明における前後方向及び左右方向は、特段の説明がない限り、次のように記載している。つまり、
図1,2における矢印Fで示す方向が「前」、
図1,2における矢印Bで示す方向が「後」、
図2における矢印Rで示す方向が「右」、
図2における矢印Lで示す方向が「左」である。
【0015】
〔全体構成〕
図1,2に作業車の一例としての多目的車両が示されている。この多目的車両は、荷の運搬やレクリエーション等の多目的な用途に用いられる車両である。多目的車両には、操向可能且つ駆動可能な左右一対の前車輪1と、向き固定で駆動可能な左右一対の後車輪2とが備えられている。車体の前後中央部には、運転部3が備えられている。運転部3の後方には荷台4が備えられている。荷台4の下方には、原動部5が備えられている。運転部3の前方には、開閉可能なボンネット6が備えられている。
【0016】
左右一対の前車輪1及び左右一対の後車輪2は夫々、後述するサスペンション機構7を介して上下移動自在に車体フレーム20に支持されている。車体フレーム20は、全体構成については、詳述はしないが、前後方向に延びる複数のフレーム体、横方向に延びる複数のフレーム体、縦方向に延びる複数のフレーム体等からなる枠組み形状に構成されている。
【0017】
運転部3には、操縦者が着座する運転座席9、運転座席9に隣接して配置され、搭乗者が着座可能な補助席10、操舵操作を行うためのステアリングホイール11、変速操作を行うための変速レバー12等が備えられている。ステアリングホイール11、及び、変速レバー12は、運転座席9の前方に位置する運転パネル13に配置されている。
【0018】
荷台4は、荷を載置可能な載置状態と、荷を排出可能なダンプ状態と、に切り換え可能に構成されている。荷台4は、横向きの軸芯周りに揺動することにより、前端部を上昇させて、後端部側から荷を排出可能なダンプ状態とすることができる。荷台4の状態変更は、例えば、油圧式アクチュエータの駆動により行うことができる。
【0019】
図2,3に示されるように、原動部5には、水冷式のガソリンエンジン14(以下、エンジンと称する)、ベルト式無段変速機構15を収容する変速ケース16、ギヤ式変速機構17を収容するミッションケース18等が備えられている。
【0020】
図1,2に示されるように、エンジン14は、クランク軸が車体左右方向に沿うように、且つ、シリンダヘッド19が斜め後ろ傾斜姿勢となるように配置されている。エンジン14は、2気筒式に構成されている。変速ケース16は、エンジン14、及び、ミッションケース18の側部側に連結支持されている。ミッションケース18は、エンジン14の後部側に連結支持されている。エンジン14、ミッションケース18等は、車体フレーム20に支持されている。
【0021】
エンジン14の動力は、ベルト式無段変速機構15を介して、ギヤ式変速機構17に出力される。ギヤ式変速機構17は、変速レバー12の操作により、動力を前進2速、後進1速、中立状態の夫々に変速可能となっている。
図2,3に示すように、ギヤ式変速機構17の動力は、後車軸21に伝達され、後車軸21から左右の後車輪2に伝達される。また、ギヤ式変速機構17の動力は、動力取出軸22、推進軸23等を介して、前車軸24に伝達され、前車軸24から左右の前車輪1に伝達可能となっている。動力取出軸22は、エンジン14の下方に位置している。
【0022】
車体フレーム20における前後方向に延びる複数のフレーム体として、
図3に示すように、運転部3の下方に位置する前部フレーム25と、原動部5の下方に位置する後部側下部フレーム26(以下、後下フレームと称する)(支持フレームの一例)とが備えられている。左右一対の前部フレーム25と左右一対の後下フレーム26とは、前後方向に沿って連なるように、連結部材27を介して連結されている。
【0023】
図3,4に示すように、左右の後下フレーム26は、夫々、角筒材(角パイプ)にて構成され、且つ、前部フレーム25の後部に連なり前後方向に延びる前側部分26Aと、前側部分26Aの後部に連なり後側に向かうほど機体内側に位置するように傾斜する状態で延びる中間傾斜部分26Bと、中間傾斜部分26Bの後部に連なり前後方向に延びる後側部分26Cとを備えている。すなわち、左右一対の前側部分26Aは左右の前部フレーム25と同じ幅広の間隔を有する状態で備えられている。一方、左右一対の後側部分26Cは、それよりも幅狭の間隔を有する状態で備えられている。
【0024】
図4に示すように、左右の後下フレーム26における中間傾斜部分26Bと後側部分26Cとが連なる折れ曲がり箇所の近傍、及び、左右の後下フレーム26の後部側箇所に、ダブルウィッシュボーン式のサスペンション機構7を支持する支持ブラケット28,29が取り付けられている。前後の支持ブラケット28,29は夫々、平面視で略U字状に形成されている。
【0025】
サスペンション機構7は、平面視で略A字状に形成された揺動アーム30が上下一対備えられている。揺動アーム30の車体内側の端部に設けられた回動ボス部31が支持ブラケット28,29に入り込んだ状態で前後軸芯周りで揺動自在に枢支連結されている。図示していないが、揺動アーム30の車体外側の端部は、後車輪2の図示しない車軸ケースに枢支連結されている。
【0026】
前部側の支持ブラケット28は、上下の揺動アーム30を支持するのに必要な最小限の上下長さを有している。後部側の支持ブラケット29は、後下フレーム26の上方に位置する後部側上部フレーム(図示せず)にわたり上下方向に長く形成されている。つまり、後部側の支持ブラケット29は、後下フレーム26と後部側上部フレームとを縦向きに連結するものであり、車体フレーム20の一部を構成している。
【0027】
図4に示すように、左右両側の後下フレーム26における中間傾斜部分26Bと後側部分26Cとが連なる折れ曲がり箇所同士が、前部側横向きフレーム32により連結されている。又、左右両側の後下フレーム26における後側部分26Cの後部側箇所同士が、後部側横向きフレーム33により連結されている。
【0028】
そして、前部側の支持ブラケット28の下面側及び後下フレーム26における中間傾斜部分26Bと後側部分26Cとが連なる折れ曲がり箇所を含む領域の下面側を覆う状態で、補強板34が連結されている。
図4に示すように、補強板34は、平坦な板体からなり、前部側の支持ブラケット28を支持する箇所には、前部側の支持ブラケット28の略U字状の形状に沿わせて凹入部35(
図5参照)が形成されている。この凹入部35によって揺動アーム30の上下揺動を許容する構成となっている。
【0029】
図4,5に示すように、補強板34は、後下フレーム26における折れ曲がり箇所に対応する位置に後下フレーム26の横幅よりも幅広の挿通孔36が形成されている。角筒状の後下フレーム26が折れ曲げ加工に伴って上下方向に膨出変形することがあっても、挿通孔36によってその膨出箇所を回避して後下フレーム26の平坦な面に連結することができる。
【0030】
図5に示すように、補強板34のうち、後下フレーム26における中間傾斜部分26B側に向けて延びる箇所34aが先細状に形成されている。このように先細状に形成することにより、応力を分散させて応力集中による破損を防止し易くなっている。
【0031】
〔別実施形態〕
(1)上記実施形態では、後下フレーム26夫々の前側部分26A同士の間に位置する状態でエンジン14が備えられる構成としたが、この構成に代えて、エンジンに代えて、走行用電動モータ等の他の駆動装置を備える構成としてもよい。
【0032】
(2)上記実施形態では、動力源として、ガソリンエンジンを搭載する構成としたが、この構成に代えて、ディーゼルエンジンを搭載するものでもよく、エンジンと走行用電動モータとを備えるハイブリッド仕様でもよく、走行用電動モータだけを備える構成でもよい。
【0033】
(3)上記実施形態では、ベルト式無段変速機構15が備えられているものが例示されているが、この構成に代えて、例えば、ベルト式無段変速機構15に代えて、静油圧式無段変速装置が備えられていてもよい。
【0034】
(4)上記実施形態では、運転部に二人乗車可能な構成としたが、3人以上の人間が乗車可能な構成でもよい。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は、多目的作業車等のように、車体前後方向に延びる左右一対の支持フレームが備えられた作業車に適用できる。
【符号の説明】
【0036】
2 車輪
7 サスペンション機構
14 エンジン
26 支持フレーム
26A 前側部分
26B 中間傾斜部分
26C 後側部分
34 補強板
34a 延びる箇所
36 挿通孔