(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の開示】
【0006】
発明の概要
本発明は、例えばポリプロピレン(PP)のような半結晶性ポリオレフィンおよびポリ(スルホニルアジド)を含む発泡
用組成物、結果的に得られるフォームまたは二次加工品、そのような組成物およびその得られるフォームを製造する方法、およびそれらを使用する方法を実現する。
【0007】
本発明は、改善された溶融レオロジーおよび溶融強度を有するポリオレフィンポリプロピレン組成物に関する。その組成物は、低密度ポリプロピレン・フォームを生成するためのプロセスを含めた、要求される伸張粘度(elongational viscosity)要件を有するプロセス(方法)に適している。その組成物は、例えばポリプロピレンホモポリマーのような半結晶性ポリオレフィンをポリ(スルホニルアジド)とカップリング(結合)または反応させて、単一の押出し工程で発泡
用ポリマーを形成することによって、生成される。
【0008】
幾つかの実施形態において、発泡
用組成物は、少なくとも50%の結晶化度を有する半結晶性ポリオレフィンと、発泡
用組成物の全重量を基準にして少なくとも500ppmのポリ(スルホニルアジド)とを含んでいる。発泡
用組成物は、少なくとも20cNの溶融強度、および少なくとも100mm/sの溶融延伸性(引抜き性、引抜加工性、深絞り性)(melt drawability)を有する。その組成物は、適切な密度を有するフォームを製造するために使用することができる。例えば、その密度は、0.005g/cm
3乃至0.6g/cm
3(例えば、0.01g/cm
3乃至0.14g/cm
3または0.01g/cm
3乃至0.1g/cm
3)の範囲とすることができる。結果的に得られるフォームは、独立気泡(closed-cell:クローズドセル)または部分的連続気泡(partial open-cell:部分オープンセル)構造を有してもよい。
【0009】
半結晶性ポリオレフィンは、例えば少なくとも1.8g/10分(例えば、15g/10分乃至40g/10分または15g/10分乃至25g/10分の範囲)の高いメルトフロー・インデックスを有することができる、例えばポリプロピレンのようなホモポリマーとすることができる。半結晶性ポリオレフィンの結晶化度は、60%乃至90%(例えば、70%乃至80%)の範囲であり得る。ポリ(スルホニルアジド)の含有量は、幾つかの実施形態では、発泡
用組成物の総重量を基準にして、500ppm乃至3000ppm(例えば、1000ppm乃至2000ppm)の範囲である。
【0010】
発泡
用組成物は、幾つかの実施形態において、30cN乃至100cN(例えば、30cN乃至80cN)の範囲の溶融強度を有する。また、発泡
用組成物は、120mm/s乃至200mm/s(例えば、140mm/s乃至170mm/s)の範囲の溶融延伸性を有することができる。発泡
用組成物は、適切な融点または溶融温度(融解温度)(Tm)および適切な結晶化温度(Tc)を有することができる。例えば、そのような融点(Tm)は少なくとも140℃、例えば160℃乃至170℃の温度範囲とすることができる。そのようなTc温度は、少なくとも120℃(例えば、少なくとも130℃)とすることができる。
【0011】
また、本開示は、発泡
用組成物から得られるフォーム(発泡体)を提供する。結果的に得られるフォームは、少なくとも50%の結晶化度を有しかつ発泡
用組成物の総重量を基準にして少なくとも500ppmのポリ(スルホニルアジド)とカップリングされた半結晶性ポリオレフィンを含んでいる。ポリ(スルホニルアジド)とカップリングされた半結晶性ポリオレフィンは、少なくとも20cNの溶融強度と、少なくとも100mm/sの溶融延伸性とを有する。そのフォームは、0.005g/cm
3乃至0.6g/cm
3(例えば、0.01g/cm
3乃至0.14g/cm
3または0.01g/cm
3乃至0.1g/cm
3)の範囲の密度を有する低密度フォームである。ポリ(スルホニルアジド)とカップリングされた発泡
用組成物または半結晶性ポリオレフィンの組成は上述した。例えば、そのようなフォームにおいて、半結晶性ポリオレフィンは、適切なメルトフロー・インデックスを有する例えばポリプロピレンホモポリマーのようなホモポリマーである。幾つかの実施形態では、半結晶性ポリオレフィンは、70%乃至80%の範囲の結晶化度を有する。ポリ(スルホニルアジド)の含有量は、幾つかの実施形態では、発泡
用組成物の総重量を基準にして500ppm乃至3000ppm(例えば、1000ppm乃至2000ppm)の範囲であり得る。ポリ(スルホニルアジド)とカップリングされた半結晶性ポリオレフィンは、幾つかの実施形態では、30cN乃至100cN(例えば、30cN乃至80cN)の範囲の溶融強度、および少なくとも140℃(例えば、160℃乃至170℃の範囲)の溶融温度を有する。
【0012】
また、本開示は、上述の組成物およびフォームを製造する方法を実現する。幾つかの実施形態において、フォームを調製する方法は、第1のエチレンコモノマーおよび第2のC3−C12α−オレフィンコモノマーを含むコポリマー、または少なくとも50%の結晶化度を有する半結晶性ポリオレフィンを混合することを含んでいる。そのコポリマーまたは半結晶性ポリオレフィンのいずれかは、少なくとも500ppmのポリ(スルホニルアジド)と、単一の押出し工程によって、混合物される。そのような混合工程は、少なくとも20cNの溶融強度および少なくとも100mm/sの溶融延伸性を有する発泡
用組成物を生成する。そのような方法は、さらに、発泡
用組成物を冷却し固化または凝固させ、発泡
用組成物をペレット化する各工程を含んでもよい。任意に、ペレット化された組成物は、保存または貯蔵し、異なる位置に輸送することができる。次いで、発泡
用組成物および発泡剤を用いて、第2の単一の押出しプロセスにより、フォームを製造することができる。ペレット化された発泡
用組成物は、発泡剤を加える前に、上昇させた温度(高温)で溶融させることができる。その結果として得られるフォームは、0.005g/cm
3乃至0.6g/cm
3(例えば、0.01g/cm
3乃至0.14g/cm
3または0.01g/cm
3乃至0.1g/cm
3)の範囲の密度を有する低密度フォームである。その結果として得られるフォームは、独立気泡または連続気泡構造を有してもよい。
【0013】
フォームを製造する方法は、さらに、フォームを形成する工程の前に、ポリ(スルホニルアジド)を含有しない第2の半結晶性ポリオレフィンを、発泡
用組成物とブレンドすることを含むことができる。第2の半結晶性ポリオレフィンは、少なくとも50%の結晶化度を有する半結晶性ポリオレフィンと同じタイプ(種類)とすることができる。幾つかの実施形態において、その方法は、さらに、フォームを形成する工程の前に、コポリマーをブレンドすることを含んでいる。コポリマーは、第1のエチレンコモノマー、および第2のC3−C12α−オレフィンコモノマーを含むことができる。例えば、そのコポリマーは、75重量%乃至90重量%のインパクトコポリマープロピレン(ICP)組成物のポリプロピレン系のマトリックスと、8重量%乃至25重量%のICP組成物のエチレンプロピレンコポリマーゴム(EPR)相とを含むICP組成物とすることができる。ここで、EPR相は35重量%乃至45重量%のエチレンを含んでいる。
【0014】
また、本開示は、本発明で実現される組成物を使用する方法を実現する。別の態様(観点)では、本開示は、二次加工品、および上述の組成物を含む二次加工品を製造する方法を実現する。その組成物は、発泡された構造を有する。
【0015】
本発明で実現される組成物および二次加工品は、非限定的に、低密度の独立気泡の高い均一性、高い剛性、および高温耐性(耐熱性)を含む予想外の特性を示す。発泡
用組成物は、固化または凝固させることができ、任意にペレット化して保存または貯蔵し、輸送し、次いでそのような組成物を製造した後でいつでも発泡剤と共に再加熱して発泡させることができる。また、上述したフォームを製造する方法は、非限定的に、低製造コストおよび高効率を含む利点を有する。
【発明を実施するための形態】
【0016】
発明の詳細な説明
例示的な実施形態のこの説明は、図面との関係で読まれるよう意図されており、図面は本明細書全体の一部とみなされるべきである。この説明では、例えば、“下側”(lower)、“上側”(upper)、“水平な”(horizontal)、“垂直な”(vertical)、“の上”(above)、“の下”(below)、“上”(up)、“下”(down)、“頂部”(top)および“底部”(bottom)のような相対的な用語、並びにその派生語(例えば“水平に”(horizontally)、“下向きに”(downwardly)、“上向きに”(upwardly)、等)は、その際記載されまたは考察中の図に示されるような方位または方向を指すと解釈されるべきである。これらの相対的な用語は、説明の便宜のためのものであり、装置が特定の方位または方向に組み立てられまたは操作されることを必要としない。例えば“接続された”(connected)のような取り付け、結合、等に関する用語は、明示的に記載されない限り、構造が介在構造を介して直接的または間接的に共に可動または剛性の取り付けまたは関係のいずれかで互いに固着されまたは取り付けられる関係を指す。
【0017】
以下での説明のために、以下に記載する各実施形態は、代替的な変形例および実施形態を想定し得ることを理解すべきである。また、ここに記載された特定の物品、組成物および/またはプロセス(方法)は、例示的なものであり、限定的なものと見なされるべきではない、と理解されるべきである。
【0018】
本発明は、例えばポリプロピレン(PP)のような半結晶性ポリオレフィンおよびポリ(スルホニルアジド)を含む発泡
用組成物、結果的に得られるフォーム、そのような組成物およびそのようなフォームを製造する方法および使用する方法、および結果的に得られたフォームを含んで成るシートまたは二次加工品を実現する。
【0019】
発泡に適した半結晶性ポリプロピレンが開示されている。そのような組成物は、出発物質(原料)としてのポリプロピレンで形成された長鎖分枝材料である。しかし、分枝PPを生成するための製造方法は、ひどく高価で、資本集約的で、能力に制限がある。効率的な単一工程の反応押出しプロセスに基づく発泡に適したポリプロピレンを提供する必要性がある。
【0020】
ボレアリス社(Borealis Gmbh)に譲渡された米国特許第6204348号、米国特許第6433109号および欧州特許第08798301号には、ポリプロピレンと不飽和モノマーとの反応によって生成される改善された加工性の変性ポリプロピレンが開示されている。変性プロピレンホモポリマーは、230℃/2.16kg(条件)においてメルト・インデックス0.05乃至35g/10分を有するプロピレンホモポリマーと、例えばブタジエンのようなエチレン性不飽和多官能モノマーとから、連続法によって生成される。PP粉末を、最初に、連続ミキサにおいて高温で、ブタジエンガスと酸素の混合物と接触させる。次いで、その混合物を、押出機に供給し、一連の上昇させた温度で混合する。最後に、溶融混合物を一連の脱ガス工程で脱揮させる(de-volatilized)。しかし、この複数工程プロセスは、複数の脱揮ゾーンを有する特殊な反応押出機における押出しの前に、上昇させた温度でPP粉末をブタジエンガス混合物と接触させるための特殊反応器(連続ミキサ)の設置を必要とする。
【0021】
また、例えば電子ビームのような電離(イオン化)放射線を用いて発泡に適したレオロジー(流動特性、変形特性)を有する変性PPが生成される。しかし、これらのプロセスは、上昇させた温度で制御された量の酸素を含む不活性ガスに照射ポリマーを接触させるために、複数の容器と直列結合された資本集約型の電子ビーム装置を必要とする。従って、そのようなプロセスは、高価であり、製造できる変性ポリマーの量には制限がある。
【0022】
米国特許第6472473号には、カップリング剤としてのポリ(スルホニルアジド)と、エラストマ(弾性)相を有するプロピレン・インパクトコポリマーとの反応によって形成された被結合(カップリングされた)インパクトプロピレンポリマーを含む組成物が開示されている。プロピレン・インパクトコポリマーにおけるエラストマ相は、例えばエチレンのような別のモノマーを含むコポリマーまたはターポリマー(三元重合体)を含んでいる。各例に示されるように、非常に低い濃度(<1000ppm)のポリ(スルホニルアジド)が、非常に低いメルトフロー・レート(MFR<2)を有するインパクトプロピレンポリマーとカップリング(結合)される。低いMFRを有する出発材料は、溶融強度を増大させるようにカップリング(結合)されたときに、極めて高い溶融粘度と相関するより低いMFRを形成することが知られている。その極めて高い溶融粘度によって、この技術をフォーム押出しラインへ使用することが禁じられる。
【0023】
米国特許第8404324号には、(i)ポリプロピレンホモポリマーと衝撃改質剤(改良剤)との被結合ブレンド、(ii)組成物の重量を基準にして53重量%より多い少なくとも1種の鉱物充填剤、および(iii)発泡剤、を含む鉱物充填ポリプロピレン組成物が開示されている。結果的に得られる発泡ポリプロピレンは、パイプ適用例における複数層の中の1層として使用することができる。
【0024】
米国特許第6649666号には、フォームを調整する方法が開示されており、その方法は、(i)(a)プロピレンポリマーおよび(b)カップリング量のポリ(スルホニルアジド)を溶融処理装置中に導入して、プロピレンポリマー混和剤(材)を形成する工程と、(ii)溶融被結合(molten coupled)プロピレンポリマー組成物を形成するプロピレンポリマーのカップリングを得るのに充分な温度に、そのプロピレンポリマー混和剤をさらす工程と、(iii)溶融被結合プロピレンポリマー組成物において、発泡剤を維持する第1の圧力下で、プロピレンポリマーをカップリングする前に、その間中に、またはその後に、発泡剤を導入する工程と、(iv)発泡剤を含む溶融被結合プロピレンポリマー組成物を冷却する工程と、(v)発泡剤を含む溶融被結合プロピレンポリマー組成物を処理して、発泡剤が溶融被結合プロピレンポリマー組成物から漏れ出ることを可能にする第2の圧力を有するゾーン内へ供給する工程と、(vi)結果としてのフォームを形成する工程と、を含んでいる。発泡PPは単一のプロセスで製造された。そのプロセスにおいて、未変性PPがポリ(スルホニルアジド)と組み合わされ、次いで、発泡剤が溶融混合物に加えられて、単一工程で直接フォームが生成される。各例で示されるように、ポリプロピレン、ポリ(スルホニルアジド)および発泡剤は、混合物が冷却される前に単一の押出機上で共に加えられる。
【0025】
米国特許第6800669号の請求項に記載されたフォームに含まれるプロピレンコポリマー材料は、プロピレンから誘導された単位およびエチレン性不飽和コモノマーから誘導された単位を少なくとも50重量%含み、また、0.5乃至8g/10分の範囲のメルトフロー・レート、少なくとも5cNの溶融強度、および少なくとも20mm/sの溶融延伸性を有する。また、そのフォームは、50kg/m
3以下の密度を有し、35以下のアスカーC硬度計の硬度を示し、25%圧縮に対してASTM3575に従って測定された103kPa以下の圧縮強度を示す。
【0026】
しかし、例えば単一の反応押出し工程のようなより安価でより効率的なプロセスを使用して製造できる発泡に適した例えばポリプロピレンホモポリマーのような半結晶性ポリオレフィンに対するニーズ(必要性)が存在する。アジド結合ポリプロピレン組成物についても、低密度フォームを製造するのに適した単一成分または単相(即ち、エラストマー相のなし)半結晶性組成物に対するニーズ(必要性)が存在する。結果的に得られる発泡
用組成物は、高温で高い剛性を有する単一層(または均一に発泡した)構造を実現することに対するニーズ(必要性)が存在する。さらに、凝固され、任意にペレット化されて保存(貯蔵)され、輸送され、次いでポリマーの製造後の任意の時間に発泡剤と共に再加熱されて発泡させることができる被結合ポリオレフィンに対するニーズ(必要性)が存在する。発泡
用組成物および結果的に得られるフォームおよびそれを製造する方法は、これらのニーズ(必要性)を満たす。
【0027】
ここで使用される“ポリマー”という用語は、同じまたは異なる種類(タイプ)のものであるかに関係なくモノマーを重合することによって調製されるポリマー化合物を指す。従って、上位概念の用語のポリマーは、通常は1種類のモノマーのみから調製されたポリマーを指すのに使用される“ホモポリマー”、および2種類以上の異なるモノマーから調製されたポリマーを指す“コポリマー”を包含する。
【0028】
“ポリプロピレン”は、例えばポリプロピレンホモポリマーのようなプロピレンモノマーからなるポリマーを意味するものとする。“ポリプロピレン・ベース(系)の樹脂”または“ポリプロピレン・ベース(系)のポリマー”および“ポリプロピレン”は同義語として使用される。これらの用語は、ポリマーの重量を基準にして少なくとも50重量%のプロピレン単位を含むポリマーを意味するものとする。
【0029】
簡略的に表現するために、特に明示的に示さない限り、本開示における“スルホニルアジド”または“ポリ(スルホニルアジド)”への言及は、スルホニルアジド基(−SO
2N
3)の多重官能基を有する化合物を包含すると理解される。ポリ(スルホニルアジド)は、プロピレンポリマーとの反応性の少なくとも2つのスルホニルアジド基(−SO
2N
3)を有する任意の化合物である。好ましくは、ポリ(スルホニルアジド)は構造X−R−Xを有し、各XはSO
2N
3であり、Rは、非置換または不活性置換ヒドロカルビル、ヒドロカルビルエーテルまたはケイ素含有基を表し、好ましくは充分な炭素、酸素またはケイ素、好ましくは炭素、の原子を有していて、プロピレンポリマーとスルホニルアジドの間の容易な反応を可能にするのに充分にスルホニルアジド基相互間を分離し、より好ましくは少なくとも1つ、より好ましくは少なくとも2つ、最も好ましくは少なくとも3つの炭素、酸素またはケイ素、好ましく炭素、の原子を官能基相互間に有する。Rの長さには臨界的な限界がなく、一方、各Rは、X相互間に少なくとも1つの炭素またはケイ素の原子を利点として有し、好ましくは約50個未満、より好ましくは約20個未満、最も好ましくは約15個未満の炭素、酸素、ケイ素の原子を有する。ケイ素含有基には、シランおよびシロキサン、好ましくはシロキサン、が含まれる。
【0030】
“被結合ポリマー”(カップリングされたポリマー)は、カップリング反応から生じるレオロジー改質ポリマー(rheology modified polymer)である。また、被結合ポリマーは、ここでは“変性ポリマー” (modified polymer)または“レオロジー改質ポリマー”(またはレオロジー変性ポリマー)とも称される。
【0031】
幾つかの実施形態では、発泡
用組成物は、少なくとも50%の結晶化度を有する半結晶性ポリオレフィンと、発泡
用組成物の総重量を基準にして少なくとも500ppmのポリ(スルホニルアジド)とを含んでいる。発泡
用組成物は、少なくとも20cNの溶融強度、少なくとも100mm/sの溶融延伸性、約240000psiより高い曲げ弾性率(flexural modulus)、および例えば少なくとも140℃のような適切な融点(溶融温度)を有する。その組成物は、0.005g/cm
3乃至0.6g/cm
3(例えば、0.01g/cm
3乃至0.14g/cm
3または0.01g/cm
3乃至0.1g/cm
3)の範囲であり得る任意の適切な密度を有する低密度フォームを製造するために使用することができる。
【0032】
半結晶性ポリオレフィンはホモポリマーであり得る。適した半結晶性ポリオレフィンの例には、非限定的に、ポリプロピレンまたはポリエチレン、またはそれらの任意の組合せが含まれる。ポリプロピレンの例には、非限定的に、ポリプロピレンホモポリマーが含まれる。例えば、少なくとも1.8g/10分(例えば、15g/10分乃至40g/10分、または15g/10分乃至25g/10分の範囲)のメルト・インデックスを有するポリプロピレン(PP)ホモポリマー(HP)が、本開示において使用される。半結晶性ポリオレフィンの結晶化度は、60%乃至90%(例えば、70%乃至80%)の範囲とすることができる。ポリプロピレンホモポリマーは、チーグラー・ナッタ触媒作用(Ziegler-Natta catalysis)によって製造することができる。
【0033】
適したポリ(スルホニル)アジドの例には、非限定的に、1,5−ペンタンビス(スルホニルアジド)、1,8−オクタンビス(スルホニルアジド)、1,10−デカンビス(スルホニルアジド)、1,10−オクタデカンビス(スルホニルアジド)、1−オクチル−2,4,6−ベンゼントリス(スルホニルアジド)、4,4’−ジフェニルエーテルビス(スルホニルアジド)、1,6−ビス(4’−スルホナジドフェニル)ヘキサン、2,7−ナフタレンビス(スルホニルアジド)、および1分子当り平均1乃至8個の塩素原子および約2乃至5個のスルホニルアジド基を含む塩素化脂肪族炭化水素の混合スルホニルアジド、およびそれらの混合物、が含まれる。好ましいポリ(スルホニルアジド)には、オキシ−ビス(4−スルホニルアジドベンゼン)、2,7−ナフタレンビス(スルホニルアジド)、4,4’−ビス(スルホニルアジド)ビフェニル、4,4’−ジフェニルエーテルビス(スルホニルアジド)、およびビス(4−スルホニルアジドフェニル)メタン、それらの混合物または任意の組合せ、が含まれる。
【0034】
幾つかの実施形態において、ポリ(スルホニルアジド)の含有量は、発泡
用組成物の総重量を基準にして500ppm乃至3000ppm(例えば、1000ppm乃至2000ppm)の範囲である。ポリ(スルホニルアジド)は、例えば抗酸化剤のような他の成分との分子溶融物の形態で加えることができる。
【0035】
プロピレンポリマー、およびカップリング剤ポリ(スルホニルアジド)は、物理的に混合される。そのような物理的混合は、カップリング剤とプロピレンポリマーを混合する、例えばV型ブレンダ、リボンまたはパドル・ブレンダ、タンブリング・ドラム、または押出機のような任意の装置において、行うことができる。押出機という用語は、例えば、ペレットを押し出す装置および種々の物品に形成するための押出物を生成する押出機のような装置を含むように、最も広い意味で使用される。物理的混合は、例えば二軸押出機(twin-screw excruder)のような押出機の初期段階で行うことができる。幾つかの実施形態において、半結晶性ポリオレフィンおよびポリ(スルホニルアジド)は、例えば二軸押出機のような正規の混成(compounding)装置で、単一の押出しプロセスまたは単一の反応押出しプロセスによって、混合することができる。特に、プロピレンポリマーおよびカップリング剤ポリ(スルホニルアジド)の物理的混合は、プロピレンポリマー樹脂およびカップリング剤を、例えば主要供給ホッパまたは複数フィーダを通すなどして、押出機の供給部に同時に導入することによって、行うことができる。任意に、ポリスルホニルアジドをポリオレフィンと予備ブレンドしてマスターバッチを形成してもよく、そのマスターバッチをプロピレンポリマーと共に供給部の押出機に供給することによって、ポリスルホニルアジドを押出機に導入してもよい。代替形態として、ポリスルホニルアジドは、例えばサイド・フィーダ(側方供給器)を通すなどして、供給ゾーンの下流側の押出機に加えてもよい。押出し期間中、半結晶性ポリオレフィンとポリ(スルホニルアジド)の混合物は、ポリスルホニルアジドおよびポリオレフィンを化学反応させるのに充分な温度まで加熱される。温度は、任意の適切な温度、例えば、190℃乃至280℃の範囲とすることができる。反応温度での滞留時間は、例えば15秒乃至60秒の範囲のような任意の適した範囲とすることができる。発泡
用組成物は、冷却されてペレット化される。結果的に得られた発泡
用組成物は、加工のために再加熱され溶融されて、有用な物品を形成することができる。ペレット化された組成物は、貯蔵されて、フォームを製造するための生産現場に輸送することができる。ペレット、顆粒または任意の他の適切な固体形態では、発泡
用組成物は、発泡準備の前に異なる位置に輸送することができる。
【0036】
発泡
用組成物を製造するプロセスにおいて、ポリスルホニルアジドは、ポリマーまたはマスターバッチと共に、サイド・フィーダまたは主ホッパに加えることができる。
【0037】
一実施形態において、ポリスルホニルアジドが、サイド・フィーダを備えた押出機において、プロピレンポリマーと溶融混合され、それ(フィーダ)が、加熱された押出機バレル(胴部)にそのポリスルホニルアジドを直接供給する。プロピレンポリマーは、主ホッパを介して押出機に加えられ、押出しプロセスによって溶融される。そのポリスルホニルアジドは、押出機の下流に加えられる。任意に、そのポリスルホニルアジドは分子溶融物の形態である。そのポリスルホニルアジドまたは分子溶融物は、側方供給の前にプロピレンポリマーと乾式ブレンドされてもよい。
【0038】
別の実施形態では、ポリスルホニルアジドが、プロピレンホモポリマーと共に、主ホッパを介して押出機に供給される。そのポリスルホニルアジドは、プロピレンポリマーおよび任意に他の添加剤(これには、非限定的に、抗酸化剤および酸スカベンジャ(酸捕捉剤)が含まれる)と共に、主ホッパを介して押出機に加えられる。任意に、第2のプロピレンポリマーが押出機に加えられてもよい。その第2のポリマーは、プロピレンと、例えばエチレンまたはオクテンのようなα−オレフィンと、のコポリマーであってもよい。そのアジドは、プロピレンポリマーと乾式ブレンドされて、押出機に加える前に単一のフィーダに装填されてもよい。代替形態として、そのアジドおよびプロピレンポリマーは、別々のフィーダから加えられてもよい。
【0039】
好ましい実施形態において、ポリスルホニルアジドは、分子溶融物の形態のものである。その分子溶融物は、80〜95重量%の第1のプロピレンポリマー、および5〜20重量%の第2のプロピレンポリマー(これはプロピレンとα−オレフィンのコポリマーである)と共に押出機に加えられる。第2のプロピレンポリマーは、第1のプロピレンポリマーの融点よりも低い融点を有する。適した第2のプロピレンポリマーの例には、メタロセン触媒による(metallocene-catalyzed)エチレン−プロピレン共重合体(ポリマー)およびエチレン−オクテン重合体(ポリマー)が含まれる。
【0040】
別の実施形態において、スルホニルアジドまたは分子溶融物は、プロピレンポリマーの融点より低い融点を有するより低い融点の油、ワックスまたはポリマーと共に、主ホッパに供給される。
【0041】
別の実施形態において、ポリスルホニルアジドは、マスターバッチの形態でまたはマスターバッチと共に、主ホッパを介して押出機に加えられる。ポリスルホニルアジドまたは分子溶融物は、第1の押出し工程において、ポリスルホニルアジドの反応温度より低い温度で、プロピレンポリマーと溶融混合される。DPOBSAが使用されるとき、温度は180℃以下である。第2の工程において、結果的に得られたPPとスルホニルアジドとの混合物(マスターバッチと称される)が、プロピレンポリマーと共に、主ホッパを介して押出機に供給され、押出しプロセスによって溶融される。任意に、ポリスルホニルアジドのマスターバッチは、側方供給(サイドフィード)により押出機に下流で加えられてもよい。
【0042】
発泡
用組成物は、幾つかの実施形態において、30cN乃至100cN(例えば、30cN乃至80cN)の範囲の溶融強度を有する。また、発泡
用組成物は、少なくとも120mm/s(例えば、少なくとも、140mm/s、170mm/s、またはさらに200mm/s)の溶融延伸性を有することができる。発泡
用組成物は、160℃乃至170℃の範囲の融点または溶融温度(Tm)と、少なくとも120℃または少なくとも130℃の結晶化温度(Tc温度)とを有することができる。そのような発泡
用組成物、即ちポリ(スルホニルアジド)とカップリングされた半結晶性ポリオレフィンを使用して、フォームを製造することができる。上述のように、結果的に得られたフォームは、少なくとも50%の結晶化度を有し発泡
用組成物の総重量を基準にして少なくとも500ppmのポリ(スルホニルアジド)とカップリングされた半結晶性ポリオレフィンを含んでいる。例えば、ポリ(スルホニルアジド)とカップリングされた半結晶性ポリオレフィンは、少なくとも20cNの溶融強度、少なくとも100mm/sの溶融延伸性、および少なくとも160℃の融点を有する。そのフォームは、0.005g/cm
3乃至0.6g/cm
3(例えば、0.01g/cm
3乃至0.1g/cm
3)の範囲の密度を有する低密度フォームであり得る。結果的に得られるフォームは、独立気泡または連続気泡構造を有することができる。
【0043】
幾つかの実施形態において、使用される半結晶性ポリオレフィンは、例えば高いメルトフロー・インデックスを有するポリプロピレンホモポリマーのような、ホモポリマーである。幾つかの実施形態において、半結晶性ポリオレフィンは、70%乃至80%の範囲の結晶化度を有する。ポリ(スルホニルアジド)の含有量は、幾つかの実施形態において、発泡
用組成物の総重量を基準にして500ppm乃至3000ppm(例えば、1000ppm乃至2000ppm)の範囲とすることができる。
【0044】
幾つかの実施形態において、ポリ(スルホニルアジド)とカップリングされた半結晶性ポリオレフィンは、30cN乃至100cN(例えば、30cN乃至80cN)の範囲の溶融強度と、160℃乃至170℃の範囲の融点とを有する。
【0045】
フォームは、発泡
用組成物および発泡剤を用いて、第2の単一押出しプロセスによって製造することができる。ペレット化した発泡
用組成物は、発泡剤を加える前に、上昇させた温度で溶融することができる。そのような単一押出しまたは反応押出し工程は、例えば1つ以上の一軸押出機(single-screw extruders)または1つの二軸押出機のような押出機において実行することができる。一実施形態において、本発明による組成物は、第1の押出機において液化ブタンと組み合わせることができるであろう。任意に、例えばタルクのような、フォーム・セル核形成剤(成核剤)を加えることができるであろう。任意に、化学的発泡剤配合物、例えば商品名SAFOAM(サフォーム)、HYDROCEROL(ハイドロセロール)またはECOCELL(エコセル)で販売されているものを、加えることができるであろう。第1の押出機は、発泡
用組成物を溶融し、それを核形成剤および発泡剤と混合するであろう。次いで、結果的に得られた溶融混合物は、ダイ(die:型)を備えた(嵌合された)第2の押出機に直接供給され、それ(押出機、ダイ)を通してその混合物が押し出されるであろう。ダイから出るその組成物の融点は、150乃至175℃の範囲であり得るであろう。結果的に生じるダイでの圧力降下は、発泡剤の膨張を生じさせ、ポリマー組成物はフォームを形成するであろう。任意に、ダイの幾何学的形状は、発泡ストランド(撚糸、撚線)または発泡シートが生成されるように形成することができるであろう。環状ダイの場合、フォームは、マンドレル上に引き込まれ、次いで冷却されて切込みを入れられて(slit:スリット加工されて)発泡シートが形成されるようにすることができるであろう。別の実施形態において、発泡
用組成物は、第1の押出機において(任意に、セル核形成剤および/または化学的発泡剤と共に)液体CO
2とブレンドすることができるであろう。また、他の発泡剤ガス(窒素、他の炭化水素、CFS類、HFC類)を使用することもできるであろう。結果的に得られたフォームは、0.005g/cm
3乃至0.6g/cm
3(例えば、0.01g/cm
3乃至0.14g/cm
3、または0.01g/cm
3乃至0.1g/cm
3)の範囲の密度を有する低密度フォームである。結果的に得られたフォームは、低密度の高い均一性、高い剛性および高温耐性(耐熱性)を実現する。
【0046】
発泡工程の前に、発泡
用組成物は、ポリ(スルホニルアジド)を含有しない第2の半結晶性ポリオレフィンとブレンドすることができる。第2の半結晶性ポリオレフィンは、少なくとも50%の結晶化度を有する半結晶性ポリオレフィンと同じ種類(タイプ)であり得る。幾つかの実施形態において、第2の半結晶性ポリオレフィンはPPホモポリマーである。その方法は、さらに、フォームを形成する工程の前に、コポリマーをブレンドすることを含んでいる。幾つかの実施形態において、その方法は、さらに、フォームを形成する工程の前に、コポリマーをブレンドすること含んでいる。コポリマーは、第1のエチレンコモノマーおよび第2のC3〜C12α−オレフィンコモノマーを含むことができる。例えば、そのコポリマーは、75重量%乃至90重量%のICP組成物のポリプロピレン・ベース(系)のマトリックスと、8重量%乃至25重量%のICP組成物のエチレンプロピレンコポリマーゴム(EPR)相とを含むインパクトコポリマープロピレン(ICP)組成物であり得る。ここで、EPP相は35重量%乃至45重量%のエチレンを含んでいる。ICPは、アセトン沈殿によって測定して8重量%より多いキシレン可溶物(XS)含有量と、6.5dL/gより高い固有粘度(I.V.)とを有してもよく、ICP組成物は15乃至125g/10分のMFRを有する。
【0047】
結果的に得られた発泡構造を有する組成物を含むシートまたは二次加工品は、発泡工程の後に製造することができる。本発明において実現される組成物および二次加工品は、非限定的に、低密度の独立気泡(closed cells)の高い均一性、高い剛性および高温耐性を含む、予想外の特性を示す。
【0048】
本開示において実現される組成物は、任意に、充填剤、添加剤(例えば、核形成剤)または任意の他の適切な成分、またはそれらの組合せを、含むことができる。
【0049】
本発明の幾つかの他の実施形態において、発泡
用組成物は、1種以上のコポリマー(例えば、ポリプロピレンコポリマー、ポリプロピレンホモポリマー、ポリエチレン、またはそれらの混合物)とのブレンドされた組成物であり得る。本開示において実現されるブレンドされた組成物は、任意に、充填剤、添加剤(例えば、核形成剤)または任意の他の適切な成分、またはそれらの組合せを含むことができる。
【0050】
発泡工程の後で、結果的にフォーム構造を有するブレンドされた組成物を含むシートまたは二次加工品を製造することができる。本発明において実現されるブレンドされた組成物および二次加工品は、非限定的に、低密度独立気泡の高い均一性、高い剛性および高温耐性を含む、予想外の特性を示す。
【0051】
実験
二軸押出
PPとポリ(スルホニルアジド)の各混合物の全てが、表1に与えられた条件に従って二軸(スクリュー)押出しを用いて処理された。
【0052】
レオテンス溶融強度
溶融強度試験が、レオテンス(Rheotens)71.97装置を備えたゲットフェルト・レオテスタ(Goettfert Rheo-Tester)2000キャピラリ・レオメータを用いて、行われた。12mmキャピラリ・バレルがバレル温度190℃で使用された。溶融ポリマーが、試験前に試験温度で5分間ソーク(浸漬、加熱されて溶か)される。ポリマー・ストランドが、およそ86s
−1の外見上の壁剪断速度(apparent wall shear rate)で180°入射角で20mm/2mmL/Dキャピラリ・ダイ中に押し込まれた。次いで、ポリマー・ストランドは、レオテンス・ユニット中に供給され、2組の2つのホイール(車輪)で把持される。ホイール速度は、ポリマー・ストランドに対する作用力を約ゼロ(0)に減少させるように調整される。いったん定常状態に達すると、反対方向に回転するホイールの速度が、連続的に増大し、それによってポリマー・ストランドが破損および/またはスリップするまで変形される。変形に対するポリマー・ストランド抵抗力は、レオテンス・ユニットによって測定される。引抜き(drawing)プロセス期間中に記録されたピーク力は、“溶融強度”と称される。
【0053】
また、発泡
用組成物は、一定温度の溶融物を形成するためにキャピラリの内部でポリマーを加熱し、ピストンによって圧力を加えてポリマーを垂直キャピラリ・ダイを通して押し出し、回転ホイール(輪)を用いて押出物を下向きに増大する速度で引出して、溶融押出物に伸張力を加える。制御された速度で押出物を引出すのに必要な力が測定され、溶融ストランドが壊れるまで速度が増大される。ピークの引抜き力は、溶融強度として報告され、ピーク速度は溶融伸びとして報告される。
【0054】
他の試験方法
変性ポリプロピレンの溶融温度(融点)および結晶化温度が、示差走査熱量測定(Differential Scanning Calorimetry)(DSC)によって測定された。変性ポリプロピレンの百分率の結晶化度(%)が、融解ピークの熱の曲線の下の面積を、100J/gとされるPPの理論的最大値ΔHmで除算した比として測定された。
【0055】
示差走査熱量測定(DSC)が、制御された雰囲気中での温度および時間の関数として、材料中の遷移に関連する熱流を測定する技術である。非等温(non-isothermal)DSC掃引(sweep)が、TAインスツルメンツ社(TA Instruments)200機器を用いて行われた。試料は、200℃で5分間、平衡状態にされた。次いで、溶融物は、10℃/分の速度で−50℃に冷却された。融解結晶化発熱(exortherm)ピークのピーク温度は、結晶化温度またはTmcとして記録された。次いで、試料は、10℃/分の速度で200℃に再加熱され、融解吸熱(endotherm)のピークが融点またはTmとして記録された。
【0056】
ここで使用される“メルトフロー・レート”(MFR)または“メルト・インデックス”(g/10分またはdg/分の単位)は、ASTMD1238に従って、230℃で2.16kgの荷重を使用して、記述され測定される。
【0057】
ここで使用される“曲げ弾性率”(flexural modulus)は、ASTM D790に従って記述され測定される。
【0058】
ここで使用される“熱変形温度”(HDT)または“荷重下の熱変形温度”(DTUL)は、ASTMD−648に従って記述され測定される。
【0059】
ここで使用されるとき、引張(tensile)特性は、ASTM D638に従って記述され測定される。
【0060】
ここで使用されるとき、“溶融強度”(melt strength)、“延伸性”(drawability:引抜き性、引抜加工性、深絞り性)および“伸展性”(extensibility)は、ゲットフェルト・レオテスタ2000ユニット上で測定したポリオレフィン(例えば、ポリプロピレン)の特性およびダイ膨潤特性を記述するように、互換的に使用されてもよい。レオテン(Rheoten)71.87伸長テスタを使用して、ポリマー溶融物の伸長流(extensional flow)を特徴付ける。溶融強度(MS)は、ポリマーの溶融糸またはストランドが、加熱バレル・キャピラリ(毛細管)ダイ中を通って存在するときに、その破壊前での、選択された剪断条件下で或る直径およびギャップ距離の1対のレオテン(Rheoten)ホイール中を通して引き出される際の最大の力として定義される。溶融強度法は、製造された溶融ポリマー・フィラメントが破損するまで、種々の速度で一定の加速度で一軸方向に延伸すること、を意味する。その分析によって、所与の試験条件における、ポリマー溶融物の伸張または延伸(stretch)に対する耐性およびその伸展性(extensibility)を得ることが可能になる。また、溶融強度は、伸張に対するポリオレフィン溶融物の耐性(抵抗)として記述することができる。その機械はポリマー溶融物を破壊するのに必要な力を測定する。また、この分析は、ピーク力における溶融強度として知られている。
【0061】
例1〜6:発泡
用組成物としての変性ポリプロピレン組成物
【0062】
変性ポリプロピレン組成物は、次の複数の成分の二軸押出しによって発泡性組成物として生成または製造された。その成分は、チーグラー・ナッタ(Ziegler-Natta)触媒作用によって商業生産で製造されたメルトフロー・インデックス18dg/分を有するポリプロピレンホモポリマー、抗酸化剤IRGANOX(登録商標)(イルガノックス)1010中で粘液質化された(phlegmatized:減感された)4,4’−ジフェニルオキシドビス(スルホニルアジド)(DPOBSA)を含有する分子溶融物、別の安定化抗酸化剤IRGANOX(登録商標)B225またはIRGAFOS(登録商標)(イルガフォス)168、および添加されたステアリン酸カルシウム、である。IRGANOX(登録商標)B225は、バスフ社(BASF Corporation)より市販されている抗酸化剤または酸化防止剤である。IRGANOX(登録商標)B225は、50%のトリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスフィット(tris(2,4-ditert-butylphenyl)phosphite)と、50%のペンタエリスリトールテトラキス[3−[3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル]プロピオナート](pentaerythritol tetrakis[3-[3,5-di-tert-butyl-4-hydroxyphenyl]propionate])とのブレンドである。それは、基本的に、50%のIRGAFOSX(登録商標)168(トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスフィット)(Tris(2,4-di-tert-butylphenyl)phosphite)と、50%のIRGANOX(登録商標)1010テトラキス[メチレン(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナマート) ]メタン(Tetrakis [methylene (3,5-di-tert-butyl-4-hydroxyhydrocinnamate)] methane)とのブレンドである。例1〜6の配合が表1に示されている。
【0063】
例6において、チーグラー・ナッタ触媒作用によって製造されたメルトフロー・インデックス35dg/分を有するポリプロピレンホモポリマーが、エクソン・モービル・ケミカル社(Exxon Mobil Chemical Company)から入手可能なVISTAMAXX(登録商標)(ヴィスタマックス)7010FLとの組合せで、使用される。VISTAMAXX(登録商標)7010FLは、ランダムなエチレン分布(エチレン含有量17重量%)を有するアイソタクチックプロピレン繰返し(sotactic propylene repeat)単位で主に形成され、エクソン・モービル独自のメタロセン触媒技術を用いて製造される。VISTAMAXX(登録商標)7010FLは、190℃で荷重2.16kgを使用して、ASTM D1238に従って記述され測定された、メルト・インデックス1.3g/10分を有する。
【0064】
表において、“押出機タイプ”と表示された行は、二軸押出機(TSE)のスクリュー・サイズを特定する。融点は、ダイ付近の押出機バレルに挿入された熱電対によって記録された測定温度を指す。“滞留時間”は、溶融混合期間中にポリスルホニルアジドおよびポリオレフィンが接触した時間量として推定される。表3に示された市販の比較例1〜6の特性と比較した、例1〜6の特性が表2に示されている。
【0065】
比較例1は、DAPLOY(米国商標)(ダプロイ)WB140であり、これは、発泡に適し、ボレアリス社(Borealis)によって販売され、高い溶融強度を有するが低い剛性および低温耐性を有する。比較例2は、6025Nであり、これはブラスケム(Braskem)によって販売されている市販級のPPホモポリマーであり、これ(ホモポリマー)は、外部結晶核形成剤を含み、高い溶融強度を有さない。比較例3および4は、それぞれF006EC2およびF008NJであり、これらは、高い溶融強度および非常に低いメルトフロー・レートを有する直鎖等級のPPホモポリマーである。比較例5は、高い溶融強度を有するが低い剛性を有するブラスケムによって販売されている市販級のポリプロピレン・インパクトコポリマーであるINSPIRE(登録商標)114である。比較例6は、F020HC2であり、これは、ブラスケムによって市販されている高結晶性PPホモポリマーである。
【0066】
例1〜6は、市販の高溶融強度ポリプロピレン(HMS−PP)、DAPLOY(米国商標)WB140(比較例1)よりも高い結晶化度および曲げ弾性率を有することを実証している。さらに、例1〜6は、本発明によるポリマー組成物が、通常のポリプロピレン(比較例2〜4)よりもかなり高い溶融伸展性(extensibility)を高い溶融強度で示すことを、実証している。高い剛性は、ΔH、曲げ弾性率、および熱変形温度(荷重下での歪み温度)によって示される。
【0067】
高剛性、高溶融強度、および高伸展性(溶融延伸性)の固有の組合せは、例えば以下の例7〜9に示すような例外的な剛性を有する低密度フォームを形成する。
【0070】
【表3】
(分数(fractional)MFR:1.0未満のMFR)
【0071】
例7〜9:高い剛性を有する低密度および中密度の発泡シート
【0072】
表4には、例7〜9の配合および特性が、比較例7〜9との比較で示されている。例7〜9は、例1の発泡
用組成物で形成された。比較例7〜9は、比較例1で形成された。
【0073】
発泡シートの製造は、第1の直径2.5インチの一軸(スクリュー)押出機が第2の直径3.5インチの一軸(スクリュー)押出機に供給するよう構成されたタンデム型フォーム押出ラインにおいて、行われた。第2の押出機には、外部冷却リングを有する環状ダイが嵌め込まれた。第2の押出機のバレル温度およびダイ温度の制御は、オイル・ゾーン・ヒータと、冷却および温度制御用のダイ用の別個のオイル・ゾーンとを用いて、行われた。冷却マンドレル、ナイフ、およびワインダ(巻取機)が、第2の押出機の下流に配置されて、ダイを出る際に、ポリマーシートは、マンドレル上で冷却され、次いで切込みを入れられて(slit)1つのシートが形成され、1つのワインダによって複数のロール上に収集された。
【0074】
例1の本発明による変性ポリプロピレンは、重量測定フィーダのシステムによって、発泡を促進するための添加剤と共に、第1の押出機に供給された。結果的に得られた混和剤または混合物(admixture)は、加熱されて、押出機によって混合された。イソブタン液体が、ポリマーの良好な溶融および注入前における添加剤との混合を確実にするよう設計されたスクリュー要素の下流側で、第1の押出機に直接注入された。
【0075】
或る範囲の密度および厚さを有するフォームの生成は、押出機に注入されるガスの濃度を調節することによって、および環状ダイに入る溶融物の温度を制御するために押出機温度を調節することによって、行われた。
【0076】
SAFOAM(登録商標)FPE−50は、熱可塑性物質中にフォーム(発泡)構造を形成するための吸熱(熱吸収性)化学核形成剤および発泡剤のペレット濃縮物である。
【0077】
例7〜9は、本発明による発泡
用組成物によって実現される高い剛性、高い溶融強度および高い伸展性の組合せによって、結果的に例外的な剛性を有する低密度フォームおよび中密度フォームが得られることを、実証している。0.045乃至0.137g/cm
3の範囲の密度を有するフォームが実証されている。
【0079】
例10〜13:変性PPから得た低密度ストランド・フォーム
【0080】
表5および6に示された例10〜13は、本発明による組成物によって実現される剛性、高い溶融強度および高い伸展性の組合せが、0.10g/cm
3という低い密度のフォームを形成することを実証している。
【0081】
発泡性組成物の例10は、チーグラー・ナッタ触媒作用によって商業生産で製造されたメルトフロー・インデックス35dg/分を有するポリプロピレンホモポリマー粉末、抗酸化剤であるIRGANOX(登録商標)1010中で粘液質化された(phlegmatized)DPOBSAを含む6500ppmの分子溶融物、B225として市販されている1500ppmの抗酸化剤ブレンド、および酸スカベンジャとしての500ppmのステアリン酸カルシウム、の二軸押出しによって製造された。IRGANOX(登録商標)B225は、バスフ社(BASF Corporation)から市販されている抗酸化剤である。IRGANOX(登録商標)B225は、50%のトリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスフィットと、50%のペンタエリスリトールテトラキス[3−[3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル]プロピオナート]とのブレンドである。それは、基本的に、50%のIRGAFOX(登録商標)168と、50%のIRGANOX(登録商標)1010とのブレンドである。
【0082】
例10が使用されて、直径34mmの共回転二軸スクリューが直径40mmの一軸押出機に供給するよう構成されたタンデム型二軸(ツイン)/一軸(シングル)押出しシステムにおいて、低密度ストランド・フォーム(発泡体)(例12)が生成された。一軸押出機のバレル温度およびダイ温度の制御は、3つの別個のオイル・ゾーン・ヒータと、冷却および温度制御を達成するためのダイ用の別個のオイル・ゾーンとを用いて、行われた。冷却押出機の端部に二開口のロッド・ダイが取り付けられた。
【0083】
例10は、0.75重量%のミストロン(Mistron)のタルク(3ミクロン)と乾式ブレンドされ、固体容積計量フィーダ(供給器)を介して二軸押出機のホッパに供給された。液体CO
2発泡剤が、押出機の20L/Dの容積型(移送式)ポンプ(二重ピストンHPLCポンプ)を介して二軸押出機に注入された。
【0084】
第2の押出機の温度が調整されて、ダイを出るポリマー・ストランドの融点が調整されて、それ(融点)が、溶融物に挿入されたハンドヘルド(手持ち式)熱電対によって測定された。フォーム密度の測定は、それを小さいフォーム試料(長さ50〜60mm)に切断し、それらを分析天秤で秤量し、キャリパ(calipers)で測定された直径および長さを用いて体積を計算することによって、行われた。
【0085】
例11は、チーグラー・ナッタ触媒作用による商業生産で製造されたメルトフロー・インデックス35dg/分を有するポリプロピレンホモポリマー粉末と、抗酸化剤IRGANOX(登録商標)1010中で粘液質化された(phlegmatized)DPOBSAを含んで成る分子溶融物を6500ppmと、B225として市販されている抗酸化剤ブレンド(混合物)を1500ppmと、ステアリン酸カルシウムを500ppmと、GMS(グリセロールモノステアラート)を700ppmと、の二軸スクリュー押出しによって、製造された。
【0086】
例11が使用されて、例12に記載の手順を使用して、タンデム型二軸/一軸押出しシステムにおいて、低密度ストランド・フォーム(例13)が製造された。
【0089】
例14〜17:直鎖状の高い溶融強度のポリマーを含む変性PPのブレンドから得た低密度ストランドのフォーム
【0090】
例14〜17は、少なくとも1種の追加の非アジド変性ポリプロピレンとブレンドされた本発明による変性ポリプロピレン(アジド変性PP)を含む新規なブレンドが、低密度および独立気泡を有するフォームを形成することを示すこと、を実証している。第2のおよび任意に第3の非アジド変性PPは、ホモポリマー、プロピレンとエチレンのランダムなコポリマー、または、インパクトコポリマーとして一般的に知られているホモポリマーとエチレン−プロピレンゴムとの異相(heterophasic)ブレンド、であってもよい。
【0091】
第1の直径34mmの共同回転するライストリッツ社(Leistritz)の二軸押出機(混合押出機)が第2の直径40mmの一軸押出機(冷却押出機)に供給するよう構成されたタンデム型押出しラインを使用して、一連のフォーム押出し実証試験が行われた。ポリマー・ペレットは、0.75重量%のミストロンのタルク(3ミクロン)と乾式ブレンドされ、大型プラスチック・バッグ中で振盪することによってブレンドされ、固体容積型計量フィーダ(供給器)を介して二軸押出機のホッパへと供給された。発泡剤(液体CO
2)は、二軸押出機において、押出機の20L/Dの容積型ポンプ(二重ピストンHPLCポンプ)を介して射出され、材料の完全溶融が達成された後でCO
2を加えることを目標とした。二軸押出機の各スクリューは、ポリマーと発泡剤の良好な混合を確実にするよう特に構成されている。一軸(冷却)押出機のバレル温度およびダイ温度の制御は、3つの別個のオイル・ゾーン・ヒータと、適切な冷却および温度制御を達成するためのダイ用の別個のオイル・ゾーンとを用いて、行われた。冷却押出機の端部に二開口のロッド・ダイが取り付けられた。ダイの背圧、一次TSE押出機内の射出点における圧力、および(一次押出機と二次押出機の間の)クロスオーバ(交差)圧力のオンライン監視が行われた。これらの傾向は、各プロセス調整後に“定常状態条件”に達したこと、を示した。融点は、発泡押出物中に挿入されたハンドヘルド温度プローブを使用して、測定された。一次押出機および二次押出機は、複数のゾーンにわたる各オイル温度、およびスクリュー速度およびアンペア数引き込みを記録するために、機器を完全に備えていた。試料が定常状態条件下で収集された。それを小さい試料(50〜60mmの長さ)に切断し、それらを分析天秤で秤量し、キャリパで測定された直径および長さを用いて体積を計算することによって、密度が測定された。イソプロパノールおよび染料の溶液中にストランドの試料をソーク(浸漬)することによって、独立気泡(クローズドセル、閉細胞)含有量が定性的に評価された。アルコール/染料の溶液が発泡試料中に浸透しない場合、独立気泡が示される。
【0093】
例18〜19および結果的に得られたフォームが表8〜9に示されている。
【0096】
例20〜24:独立気泡を有する低密度フォーム
【0097】
例20〜24は、低密度および独立気泡を有するフォームを例示した。例6の発泡性組成物から発泡シートを製造するために、次の発泡押出しプロセスが使用された。
【0098】
ポリマー・ペレットが、供給ホッパを介して、フォーム・プロセス用に設計された一軸押出機のバレルに供給された。押出機は、混合および温度制御を実現する静止型ミキサに直接供給された。ニュージャージー州ロッカウェイのポリフィル社(POLYFIL Corporation)から市販されている化学発泡剤ECOCELL(登録商標)20Pが、セル(泡)核形成剤として作用するタルクと共に、フォーム押出機に供給された。物理的発泡剤(CO
2またはブタン)がフォーム押出機のバレルに直接注入された。溶融ポリマーと液体CO
2の混合物は、押出機を出て環状ダイを通ってフォームのチューブが生成され、これがマンドレル上で冷却されて切込みを入れられて(slit)発泡シートが供給された。発泡シート試料が定常状態条件下で収集された。
【0099】
例20〜24および比較例10〜11の結果が表10に示されている。密度および独立気泡含有量が、各方法を用いて、カンタクローム社(Quantachrome)のピクノメータ(pycnometer:比重瓶)上で測定された。セル数(計数値)は、光学顕微鏡写真における単位面積当りのセル数から計算によって求められた。
【0101】
任意に、充填剤、添加剤、または任意の他の適切な成分、またはそれらの組合せを、本発明による組成物中に混合することができる。
【0102】
別の態様(観点)では、本開示は、上述の組成物を含む二次加工品およびその二次加工品を製造するための方法を実現する。結果的に得られる物品の例には、非限定的に、熱成形可能な発泡フィルムおよびシート、軽量包装(パッケージ)トレー、ビーカーおよび容器、電子レンジ用食品包装(パッケージ)、自動車用途用の工業用(技術的)フォーム、例えば、ヘッドライナー、カーペット裏地(ライナー)、ドア・ライナー、小包棚、水シールド、フード下の音響パネル、クッションおよび保護パッケージ、および断熱および遮音材、および任意の他の適切な物品、またはそれらの組合せが含まれる。
【0103】
ICPは、アセトン沈殿によって測定して8重量%より多いキシレン可溶物(XS)含有量と、6.5dL/gより高い固有粘度(I.V.)とを有してもよく、ICP組成物は15乃至125g/10分のMFRを有する。
【0104】
構成をその特定の実施形態に関して説明したが、構成はそれに限定されない。むしろ、特許請求の範囲は、この分野の専門家によってなされ得る他の変形および実施形態を含むように広く解釈されるべきである。