【課題を解決するための手段】
【0013】
第1の態様では、本発明は、注射デバイス用の駆動機構に関する。注射デバイスは、典型的には注射によって、薬剤の可変サイズの複数の用量を設定および投薬するように動作可能である。注射デバイスの駆動機構は、液体の薬剤で充填されたカートリッジのピストンに遠位方向の推力をかけるために必要とされる機械的に相互係合する構成要素を含む。駆動機構は、注射デバイスのハウジング内に固定可能な内側本体を含む。内側本体は、少なくとも、軸方向(z)に延び外側ねじ山を有する細長い軸を含む。外側ねじ山は、螺旋状のねじ山であり、軸方向に一定のまたは変動するピッチを有する。内側本体は、ハウジング内に不動に固定可能である。したがって、内側本体は、注射デバイスの管状または円筒形状のハウジング内で軸方向ならびに回転方向に固定可能である。内側本体およびハウジングは、一体形成することもできる。したがって、内側本体は、ハウジングの一部分とすることができる。
【0014】
駆動機構は、内側本体の外側ねじ山に係合または嵌合する内側ねじ山を有する管状の表示部材をさらに含む。管状の表示部材は、螺旋状に回転するとき、内側本体に対して、特にその細長い軸に対して、軸方向に変位可能である。典型的には、表示部材および内側本体のねじ係合のピッチおよび摩擦は、表示部材が内側本体に対して軸方向の力の作用を受けたときに回転を開始するようになっている。
【0015】
加えて、駆動機構は、表示部材に対して用量設定位置(S)と用量投薬位置(D)との間で軸方向に変位可能な用量部材を含む。用量部材は、内側本体に対して回転可能とすることができる。用量部材はまた、内側本体に対して軸方向に変位可能とすることができる。典型的には、用量部材は、用量を設定するために、内側本体に対して螺旋状の経路に沿って回転可能である。さらに、用量部材は、用量を投薬するために、内側本体に対して回転しないで軸方向に変位可能とすることができる。用量部材および表示部材は、典型的にはクラッチによって、選択的に回転方向に係合させることができ、クラッチによって、用量部材と表示部材との間の回転方向の係合がロックまたは解放される。
【0016】
用量設定モードで、クラッチは典型的には閉鎖され、その結果、用量部材に印加されるトルクは表示部材に伝達され、次いで、表示部材が内側本体とねじ係合するとき、表示部材は、用量部材とともに内側本体に対して軸方向に変位する。用量投薬の場合、表示部材と用量部材との間のクラッチを解放することができ、その結果、表示部材は、その最初の位置に戻るときに回転することができ、用量部材は、純粋に並進方向の変位を受ける。したがって、用量投薬中、用量部材は、内側本体に回転方向にロックすることができ、表示部材は、内側本体、したがって用量部材に対して自由に回転する。
【0017】
駆動機構の特有の実施形態に応じて、回転する表示部材または並進方向に変位する用量部材のいずれかが、ピストンロッドに動作可能に係合して、用量投薬中にピストンロッドを遠位用量投薬方向に駆動し、カートリッジのピストンを遠位方向に変位させる。
【0018】
表示部材は、阻止位置(B)と解放位置(R)との間で軸方向に可動および/または可撓性である少なくとも1つの阻止部材をさらに含む。阻止部材は、内側本体の外周上に位置する阻止構造に係合可能である。典型的には、阻止構造は、内側本体の細長い軸の外周上に位置する。阻止構造の径方向の延長は、典型的には、細長い軸の外側ねじ山の径方向の延長に一致しまたは実質上等しい。他の実施形態では、阻止構造の径方向の延長は、外側ねじ山の径方向の延長を超過することもできる。
【0019】
阻止位置(B)にあるとき、阻止部材は、用量部材および阻止構造に軸方向に係合する。この阻止位置で、用量部材は、実際上阻止され、したがって用量設定位置から用量投薬位置の方へ内側本体または用量部材に対して軸方向に変位することができない。したがって、典型的には用量設定中のダイヤル設定または螺旋状の回転運動中に生じる表示部材の阻止部材と内側本体の阻止構造との係合のとき、阻止部材は、表示部材および/または本体もしくはハウジングに対する用量部材の軸方向の変位を実際上妨げることによって、用量部材のそれぞれの軸方向の変位を阻止する働きをする。この阻止状態で、用量部材と表示部材との間のクラッチは、閉鎖された構成で実際上ロックされ、その結果、駆動機構は用量設定モードのままであり、用量部材は表示部材に対して用量設定位置(S)に位置することを特徴とする。
【0020】
阻止部材および阻止構造の相互係合、具体的には阻止構造の幾何形状および延長に応じて、用量投薬は、所定の範囲の用量サイズに対して実際上阻止することができる。このようにして、どの用量投薬が実際上阻止および妨害されるかの間で、最小および最大閾値を規定することができる。最小閾値は、プライミング処置に対する最大用量値、たとえば2または3IUを規定することができる。最大閾値は、最小用量サイズ、したがってたとえば所望の治療的効果を得るために組み合わせた薬物のうちの1つの要素の十分な送達を確実にするために、少なくとも駆動機構によって投薬しなければならない用量サイズを規定することができる。
【0021】
阻止部材は、阻止構造との係合に応答して軸方向に屈曲することができる。さらに、軸方向に屈曲した阻止部材は、用量部材に対してかなり強く頑丈な軸方向の当接を提供するために、阻止構造によって支持しかつ機械的に補強することができる。別法として、阻止部材はまた、軸方向に屈曲することなく、阻止構造に軸方向に係合することができる。そのような屈曲していない状態では、阻止部材が阻止構造に対して軸方向に動くことが単に防止される。したがって、そのような屈曲していないが係合した構成でさえ、阻止構造に係合する阻止部材は、ハウジングに対して少なくとも1つの軸方向、典型的には遠位方向において、軸方向に束縛されまたは軸方向に固定される。阻止構造に係合したとき、阻止部材はまた、用量部材に軸方向に係合することができ、次いで用量部材はまた、ハウジングに対して軸方向に束縛されまたは軸方向に固定される。
【0022】
概して、阻止部材は、阻止構造の近位側に係合し、その結果、使用者が用量を投薬しようとした場合、阻止部材は、阻止構造に係合している間、用量部材によって遠位に屈曲させることができない。
【0023】
別の実施形態によれば、阻止構造は、内側本体の細長い軸上に阻止ねじ山(blocking thread)を含む。阻止ねじ山は、内側本体の外側ねじ山の渦巻き間に延びることができるが、軸上の外側ねじ山から軸方向に分離することもできる。阻止ねじ山および外側ねじ山は、同じピッチを有する。典型的には、阻止ねじ山、したがって阻止ねじ山の渦巻きは、内側本体、特にその細長い軸の外側ねじ山の隣接する渦巻き間の軸方向中間に位置することができる。阻止ねじ山および外側ねじ山が同じピッチを有し、阻止ねじ山および外側ねじ山が軸方向にずれているため、表示部材が用量ダイヤル設定動作中に内側本体に対して螺旋状の回転を受けたとき、阻止部材は、阻止ねじ山との係合中にその阻止位置に留まる。
【0024】
典型的には、阻止ねじ山の軸方向の延長は、外側ねじ山の全体的な軸方向の延長より短い。軸方向に見ると、阻止ねじ山は、外側ねじ山内に位置することができ、その結果、阻止ねじ山の近位端および遠位端はどちらも、外側ねじ山の近位端および遠位端によって制限された軸方向の領域内に位置する。代替実施形態では、阻止部材の軸方向位置に対する表示部材の内側ねじ山の軸方向位置に応じて、阻止ねじ山の近位端および/または遠位端が、外側ねじ山の近位端または遠位端を越えて位置することも考えられる。
【0025】
表示部材が内側本体に対して回転したとき、阻止部材は、阻止ねじ山の一方の端部に係合するため、軸方向に屈曲することができる。次いで、阻止部材は、阻止ねじ山に沿って摺動するため、屈曲したままでいることができ、阻止ねじ山の反対側の軸方向端を通ると、その解放位置に戻る。内側本体に対する表示部材の用量増分回転中に阻止部材が阻止ねじ山の近位端を通ったとき、阻止部材は、用量部材が用量を投薬するために軸方向に遠位に前進する作用を受けて、用量部材によって軸方向に屈曲することができる。この状態で、用量部材は、表示部材と用量部材との間のクラッチを解放するのに十分な距離だけ、表示部材に対して軸方向に自由に変位する。クラッチが解放されたとき、デバイスは、用量投薬モードに切り換えられ、用量投薬処置を開始することができる。
【0026】
さらなる実施形態によれば、阻止部材は、表示部材の円周に接線方向に延びる可撓性アームを含む。阻止部材の可撓性アームは、円弧形状とすることができ、表示部材の側壁の輪郭をたどることができる。表示部材に対する阻止部材の軸方向の屈曲または軸方向の変形を提供するために、阻止部材は、表示部材の軸方向端に配置され、または側壁の凹部内に位置し、この凹部内で、阻止部材は、自由に弾性的に曲がり、または軸方向に旋回する。可撓性アームは、管状の表示部材の軸方向に対して厳密に接線方向および直交方向に必ずしも延びなければならないとは限らない。概して、可撓性アームは、表示部材の接線方向または円周方向および軸方向に対して特定の角度で延びることが考えられる。
【0027】
典型的には、可撓性アームは、表示部材と一体形成される。可撓性アームは、阻止部材と一体形成されたベース部分を含むことができ、ベース部分から可撓性アームが自由端の方へ延びる。材料の可撓性および可撓性アームの幾何形状のため、特にその自由端が、その阻止位置とその解放位置との間で切り替わるために、軸方向に可撓性であり、旋回可能であり、または変位可能である。表示部材の外周と実質上一致する可撓性アームとして阻止部材を実施することは、かなり省スペースでありかつコスト効率的な解決策である。さらに、阻止部材と表示部材との一体的な実施は、駆動機構の1つの構成要素の修正のみを必要とし、追加の構成要素の組立ては必要としない。
【0028】
同じことが、阻止構造に関しても有効である。阻止構造は、別個の構成要素を提供する必要なしに、内側本体内に実施することができる。最小用量機能の概略的な機能および挙動は、適当に構成された阻止構造を使用することによって修正することができる。最小用量機能の修正は、第1の阻止構造を有する内側本体の構成要素を、代替の阻止構造を有する異なる内側本体と交換することのみを必要とする。
【0029】
別の実施形態では、阻止部材は、阻止構造に係合するように径方向内方に延びる突起を可撓性アームの自由端部に含む。このようにして、表示部材を修正して阻止部材を実施することは、表示部材の外周またはそれに沿って配置された注射デバイスまたは駆動機構の構成要素に影響を及ぼさない。さらに、径方向内方に延びる突起によって、阻止部材の可撓性アームの自由端は、阻止構造の阻止ねじ山に係合したときに軸方向に変位可能である。さらに、内方に延びる突起によって、阻止部材の自由端は、阻止構造に軸方向に当接または軸方向に係合したときに、軸方向に支持しかつ軸方向に束縛することができる。用量部材から表示部材へ伝達されるあらゆる遠位方向の力は、次いで、阻止構造と軸方向に当接しまたは軸方向に係合したとき、阻止部材の内方に延びる突起の軸方向の当接によって打ち消される。内側本体の外側ねじ山の勾配および幾何形状と比較した阻止構造の幾何形状または勾配に応じて、阻止部材の自由端の軸方向の変位または軸方向の屈曲の範囲を修正および制御することができる。
【0030】
別の実施形態によれば、阻止部材は、用量部材の対応する当接部に軸方向に当接するように、軸方向を向いている当接部をその自由端部に含む。典型的には、阻止部材の当接部は、用量部材のそれに対応した形状の遠位向き当接部に軸方向に当接するように、近位方向を向くことができる。用量部材の遠位当接部は、用量部材の遠位端に一致することができる。用量部材および表示部材は、やや渦巻き状または入れ子状に配置されることも考えられる。
【0031】
典型的な実施形態では、用量部材の用量設定位置は、表示部材に対する用量部材の近位端位置に一致する。用量部材を遠位方向に押し下げることで、用量部材を用量投薬位置に前進させる。そのような実施形態では、阻止部材の当接部は、典型的には、近位方向を向く。阻止部材が解放位置にあるとき、阻止部材の当接部と用量部材の対応する当接部との間にわずかな軸方向の間隙が存在することがある。解放位置で、用量部材は、表示部材に対する用量投薬位置に到達するように、遠位方向に自由に変位する。別法として、解放された構成にあるとき、阻止部材はまた、用量部材に軸方向に当接することができる。次いで、阻止部材および阻止構造を係合解除することができる。要約すると、解放された構成にあるとき、用量部材は、ハウジングに対して遠位に変位可能である。
【0032】
阻止部材は、内側本体の細長い軸の阻止構造に係合するとき、軸方向における変位または屈曲運動を必ずしも行わなければならないとは限らない。また、阻止部材および阻止構造が相互係合したとき、阻止部材は屈曲しないままであるが、遠位方向に屈曲するように抑制されることも考えられる。そのような実施形態では、阻止部材は、用量部材の当接部とさらに恒久的に軸方向に係合することができる。解放位置にあるとき、阻止部材は依然として、用量部材に軸方向に当接しているが、阻止構造からの解放のため、阻止部材は次いで、遠位方向に自由に屈曲または旋回し、その結果、用量部材は、用量の投薬を開始するために軸方向に変位可能になる。
【0033】
阻止構成にあるとき、用量部材は、阻止部材に軸方向に係合しかつ軸方向に当接し、阻止部材は、阻止構造にさらに軸方向に当接する。このようにして、用量部材にかけられるあらゆる遠位方向の力は打ち消され、阻止構造、したがってハウジングに伝達される。
【0034】
さらなる実施形態では、内側本体上の阻止構造の遠位端の軸方向位置は、プライミング処置に対する用量の最大サイズを規定する。阻止部材が阻止構造から軸方向に分離され、かつ阻止部材が阻止構造の遠位端から遠位に位置する限り、阻止部材は解放位置に留まる。これは、典型的には、表示部材、したがって駆動機構全体がゼロ設定用量構成にあるとき、または典型的にはプライミング処置を行うために投薬される2IUなどのわずかな用量だけが設定されているときに当てはまる。プライミング処置に対する用量の最大サイズに一致するこの下限閾値を超過する用量が設定されたとき、阻止部材は、阻止構造に係合する。次いで、阻止部材は、遠位方向に屈曲することが防止され、または実際には、用量部材の遠位方向の投薬変位を阻止するために、近位方向にわずかに屈曲する。
【0035】
さらなる実施形態では、内側本体の細長い軸上の阻止構造の近位端の軸方向位置は、治療用量の最小サイズを規定する。用量部材の前述の阻止は、阻止部材を係合解除および解放するために表示部材がさらにダイヤル設定されるまで継続する。表示部材が治療用量の最小サイズに一致するそのような最大閾値を上回るようにダイヤル設定されたとき、阻止部材および阻止構造の係合は解放され、その結果、用量部材は、遠位方向の変位を防止されなくなる。所定の最小サイズを超過する所望のサイズの治療用量が設定された後、駆動機構は、投薬処置を開始するために動作可能になる。
【0036】
さらなる実施形態によれば、阻止構造または阻止ねじ山の遠位端は面取りされている。このようにして、阻止部材、特に阻止ねじ山に直接機械的に係合する阻止部材の径方向内方に延びる突起は、阻止部材および阻止ねじ山が用量の設定中に相互に係合したとき、阻止ねじ山の面取りされた遠位端の角度に応じて、わずかな軸方向の変位を受けるようになる。
【0037】
面取りされた遠位端によって、阻止部材の径方向内方に延びる突起が阻止ねじ山の端部を越えるとき、阻止部材と阻止ねじ山との平滑で確実な係合を実現することができる。遠位端と同様に、阻止ねじ山の近位端もまた、用量の選択を取り消すために下方または用量減分方向にダイヤル設定するとき、阻止部材との平滑で確実な係合を提供するために面取りすることができる。
【0038】
さらなる実施形態では、表示部材を用量増分方向に回転させたとき、阻止部材の突起は、阻止ねじ山の遠位端の面取り部の上を摺動して、阻止部材の自由端部をその解放位置からその阻止位置の方へ屈曲させる。別法として、突起は、面取り部の上を摺動して、阻止ねじ山の近位向き縁部に軸方向に当接する。阻止部材の突起は、阻止ねじ山の面取りされた端部を越えるとき、阻止ねじ山の近位向き縁部に沿って摺動し、したがって、阻止ねじ山に軸方向に当接したままであり、それによって阻止ねじ山に対する阻止部材の遠位方向の変位を防止する。一実施形態では、阻止ねじ山と内側本体の細長い軸の外側ねじ山とが同じリードを有するため、阻止部材は屈曲したままであり、阻止ねじ山と近位方向で軸方向に当接したままである。
【0039】
このようにして、阻止部材は、阻止部材が阻止ねじ山に係合している限り、阻止ねじ山の近位縁部によって軸方向に支持される。たとえば用量部材によって誘起される、阻止部材に作用するあらゆる軸方向および遠位方向の力は、直接支持され、阻止ねじ山、したがって内側本体に伝達される。このようにして、用量部材と内側本体との間でかなり直接的な軸方向の力の伝達を提供することができ、用量部材の遠位方向の変位が実際に阻止されたというかなり直感的で直接的な機械的フィードバックを使用者にもたらすことができる。
【0040】
阻止状態において阻止ねじ山の近位向き縁部によって阻止部材に提供される軸方向支持の位置もまた、阻止部材の可撓性部材が大きい軸方向の力に耐えたりそれを打ち消したりしなくてよいことから有益である。したがって、阻止部材は、小さい投薬力のために所望の可撓性の範囲を実現することができるように、薄いまたは細い構造から設計することができる。
【0041】
阻止部材が阻止ねじ山の近位端から近位に位置するとき、阻止部材は次いで阻止構造に軸方向に係合しなくなるため、用量を投薬することができる。用量を投薬するために、用量部材は遠位方向に軸方向に変位し、それにより阻止部材を遠位方向に屈曲させ、用量部材と表示部材との間のクラッチの解放を可能にする。クラッチが解放されたとき、阻止部材が遠位方向に阻止ねじ山の近位端を越えると、表示部材が用量送達中に用量減分方向に回転するため、阻止部材の突起は、阻止ねじ山の遠位向き縁部を越えて遠位に摺動することができる。
【0042】
用量の送達中、阻止部材および阻止構造の幾何形状および設計は、阻止部材の自由端部の径方向内方に延びる突起が阻止ねじ山の遠位向き縁部に沿って摺動するようになっている。突起は、遠位縁部に沿って必ずしも摺動しなければならないとは限らない。突起は、阻止構造の遠位向き縁部から遠位に有益に分離することができる。しかし、突起は、阻止ねじ山の近位縁部から軸方向に分離される。用量投薬処置の初めに、阻止部材は、遠位に前進する用量部材の作用を受けて、遠位方向の変位または遠位方向の旋回を受ける。次いで、阻止部材の径方向内方に延びる突起は、阻止ねじ山の遠位向き縁部に沿って摺動するが、その近位向き縁部には係合しない。
【0043】
用量投薬中、阻止部材、特にその径方向内方に延びる突起は、遠位方向に内側本体の阻止構造の近位端を越える。次いで用量部材が解放されて投薬処置が突然中断された場合、阻止部材の突起は、阻止ねじ山の遠位向き縁部に軸方向に当接することができる。用量部材が解放された場合、阻止部材は、阻止ねじ山によって束縛されているため、元通り近位に屈曲することができない。したがって、用量部材が再び遠位に押されると、投薬を継続することができる。
【0044】
別の実施形態では、表示部材は、数字スリーブ(number sleeve)およびダイヤルスリーブを含む。少なくとも1つの阻止部材は、ダイヤルスリーブ上に位置し、または少なくとも1つの阻止部材は、ダイヤルスリーブと一体形成される。典型的には、数字スリーブおよびダイヤルスリーブは、互いに恒久的に回転方向および軸方向にロックされる。典型的には、表示部材の数字スリーブが、内側本体の外側ねじ山にねじ係合する。
【0045】
表示部材を2つの別個の構成要素、すなわち数字スリーブおよびダイヤルスリーブに分割することは、個々の構成要素を射出成形し、それらを駆動機構内で組み立てるのに有益である。数字スリーブは、表示部材のうち、実際に設定された用量のサイズを示す連続する数字または記号をその外周上に備える部材である。内側本体の外側ねじ山に関する螺旋状の運動または位置に応じて、注射デバイスのハウジングの外側本体内の窓のアパーチャ内に、数字スリーブ上のそれぞれの数字が現れる。
【0046】
ダイヤルスリーブは、数字スリーブとは異なる色とすることができる。さらに、ダイヤルスリーブは、数字スリーブと比較すると異なる射出成形可能なプラスチック材料から製造または構成することができる。したがって、阻止機構の少なくとも1つの阻止部材またはすべての阻止部材は、ダイヤルスリーブ上に位置することができ、またはダイヤルスリーブと一体形成することができる。ダイヤルスリーブは、用量を示す数字または印とともに印刷または被覆する必要がないため、より多くの材料の選択肢が利用可能である。
【0047】
たとえば、ダイヤルスリーブ、したがってダイヤルスリーブに取り付けられまたはダイヤルスリーブと一体形成された少なくとも1つの阻止部材は、ポリオキシメチレン(POM)などのプラスチック材料から作ることができる。そのようなプラスチック材料は、印刷するのが困難であるが、特に少なくとも1つの阻止部材に対して、耐久性、可撓性、および安定性の点で、所望の機械特性を提供する。したがって、表示部材を2つの別個のスリーブ、すなわち数字スリーブおよびダイヤルスリーブに分離し、ダイヤルスリーブ上の少なくとも1つまたはすべての阻止部材を提供することによって、ダイヤルスリーブおよびその阻止部材の製造に対して最適化されたプラスチック材料を選択することができる。このプラスチック材料は、いかなる印刷要件または制限も満たす必要がなく、少なくとも1つの阻止部材の機械的要求および要件に関して機械的に最適化することができる。
【0048】
別の実施形態によれば、内側本体は、第1および場合により第2の最大用量止め具(maximum dose stop)をその外周に含むことができ、第1および場合により第2の最大用量止め具は、それぞれ表示部材の第1および第2の径方向内方に延びる最大用量止め具に係合する。内側本体および表示部材の第1および場合により第2の最大用量止め具は、表示部材が最大用量位置に到達すると、相互に同時に係合する。最大用量位置は、単一の用量投薬動作によって注射される薬剤の量を制限する。典型的には、最大用量サイズは、たとえば60IU、80IU、120IUに制限することができる。内側本体および表示部材の相互に対応する最大用量止め具は、典型的には、軸方向および径方向に延びる。このようにして、接線方向を向いている止め面は、最大用量位置に到達するとすぐ、相互に係合しかつ相互に当接する。
【0049】
軸方向に分離された2対の最大用量止め具を提供することで、改善されて明確に画成された止め具機能を提供する。このようにして、用量部材が最大用量構成を越えて回転するのを抑制するための止め力を、軸方向の分離された2対の用量止め具に分割することができる。したがって、用量止め具の全体的な設計、特にそれらの寸法を低減させることができる。また、表示部材および内側本体の相互に係合する用量止め具間の機械的な負荷も、1対の用量止め具のみを使用する実施形態と比較して低減される。
【0050】
さらなる実施形態によれば、接線方向を向いている表示部材の最大用量止め具は、阻止部材の自由端部上に位置する。阻止部材の自由端部に位置する当接部は、近位方向を向くことができ、その結果、阻止部材の可撓性アームは、ややL字状の構造を含む。概して、表示部材の最大用量止め具、特に表示部材の近位に位置する最大用量止め具は、阻止部材の自由端部上に位置することが考えられる。典型的には、この最大用量止め具は、可撓性アームが表示部材に接合する阻止部材の可撓性アームのベース部分の方を向いている。このようにして、可撓性アームは、その最大止め具が内側本体のそれに対応する形状の最大止め具に係合したとき、接線方向の張力を受ける。張力は、可撓性アームのL字状の細長い部分に対して実質上平行に延びる。可撓性アームと表示部材の最大用量止め具との間で伝送されるいかなる止め力またはトルクも、可撓性アームの機械的な完全性を損なわない。可撓性アームの止め面の向きおよび位置のおかげで、アームは、かなり大きい張力および/またはトルクを伝送することを可能にしながら、比較的薄く可撓性の構造として設計することができる。
【0051】
さらなる実施形態では、阻止ねじ山は、阻止部材および/またはその径方向内方に延びる突起を受けるようなサイズを有する少なくとも1つの凹部、途切れ、または間隙を含む。このようにして、駆動機構は、固定用量駆動機構(fixed dose drive mechanism)として構成可能であり、固定用量駆動機構によって、所定のサイズの1つのみまたはいくつかの用量を投薬することができる。1つまたはそれ以上の間隙の円周方向または接線方向のサイズは、デバイスによって投薬することができる用量サイズを規定する。少なくとも1つの間隙の接線方向のサイズは、用量投薬処置を開始するときに阻止ねじ山内の間隙を実際に通過する阻止部材またはその径方向内方に延びる突起と少なくとも同じ大きさである。阻止ねじ山に沿って互いから接線方向および/または軸方向に分離されたいくつかの間隙が存在することができる。このとき、用量投薬は、それぞれの間隙の接線方向の位置が阻止部材またはその突起の実際の位置に重複しまたは軸方向に一致するときのみ可能である。
【0052】
本発明では、簡単に阻止構造または阻止ねじ山の特有の設計および幾何形状によって、駆動機構は、特有または個別のサイズの用量の設定および投薬のみを可能にするように構成することができる。
【0053】
さらなる実施形態によれば、駆動機構は、どちらも軸方向に延びるピストンロッドおよび管状の駆動部を含む。ピストンロッドは、典型的には、内側本体の内側ねじ山に係合する第1の外側ねじ山を含む。このようにして、投薬方向におけるピストンロッドの回転が、内側本体、したがって注射デバイスのハウジング内に軸方向に束縛されたカートリッジに対するピストンロッドの遠位方向の前進をもたらす。さらに、ピストンロッドは、第1の外側ねじ山と比較すると反対側の第2の外側ねじ山を含み、第2の外側ねじ山は、駆動部の内側ねじ山にねじ係合する。このようにして、遠位方向における駆動部の軸方向であるが回転方向でない変位が、ピストンロッドの回転を誘起し、ピストンロッドは、内側本体の内側ねじ山とのねじ係合のため、用量投薬中に内側ねじ山を遠位方向に前進させる。したがって、用量投薬中、駆動部は、回転運動ではなく、遠位方向の純粋な並進運動を受ける。用量投薬のため、駆動部は、典型的には、内側本体に回転方向にロックされる。駆動部は、内側本体内のスプラインに連結することができ、その結果、駆動部は、本体に対して回転することが防止され、用量投薬中に本体に対して自由に軸方向に変位する。
【0054】
用量設定構成では、駆動部は、内側本体に対する表示部材の螺旋状の運動をたどるように、表示部材に回転方向にロックしまたは回転方向に連結することができる。用量設定モードで、駆動部および内側本体のスプライン係合が無効にされまたは解放される。その代り、駆動部は、駆動部およびピストンロッドのねじ係合に一致する螺旋状の経路に応じて自由に回転し、その結果、駆動部は、内側本体およびピストンロッドに対して近位方向に軸方向に変位可能になる。ピストンロッドは、用量設定中、内側本体に対して静止している。
【0055】
反対側のピストンロッドの2つのねじ山によって、駆動部とピストンロッドとの間の遠位方向の変位の変位遷移比(displacement transition ratio)を実施することができる。したがって、かなり小さい投薬力を必要とするかなり大きい軸方向の変位を、かなり大きい投薬力を有するピストンロッドのかなり短い変位に移転することができる。
【0056】
別の実施形態によれば、用量部材は、駆動部に恒久的にスプライン連結される。駆動部は、用量部材を用量投薬位置に変位させることによって、内側本体に選択的に回転方向にロック可能である。用量部材が用量設定位置にあるとき、駆動部は、たとえばラチェットまたはクリッカ戻り止め係合によって、本体に回転方向にロックされなくなり、本体に対して自由に回転し、この戻り止め係合によって、本体に対する駆動部の回転が可聴および触覚クリック音をもたらし、それによって使用者に、後の個別の用量設定工程が実際に行われることを示す。
【0057】
駆動部および表示部材は、直接的に、または駆動部および表示部材の両方との用量部材の軸方向の係合を介して間接的に、軸方向に係合することができる。
【0058】
別の実施形態によれば、用量部材および表示部材は、クラッチを介して選択的に回転方向にロック可能かつ解放可能である。クラッチは、用量部材が用量設定位置にあるとき、用量部材および表示部材を回転方向に係合させる。したがって、用量設定位置にあるとき、用量部材の回転は、表示部材のそれぞれの回転に等しく伝わる。典型的には、用量部材または少なくともその一部分は、表示部材の近位端から近位に突出する。用量部材が用量増分方向に回転することで、用量部材および表示部材も同時に近位方向に変位し、内側本体または注射デバイスのハウジングから近位に延びる。
【0059】
表示部材と用量部材との間のクラッチは、用量部材がその投薬位置に切り換えられまたは押し下げられたときに解放される。投薬位置または投薬構成では、用量部材は、内側本体に対して回転しないで軸方向に遠位に変位可能である。同時に、用量部材、駆動部、および表示部材は、軸方向に係合する。したがって、用量部材を押し下げ、または遠位方向の投薬力を用量部材にかけることで、駆動部の遠位方向の並進運動とともに、表示部材の遠位方向の螺旋状の捩れ運動をもたらし、ピストンロッドに対する駆動トルクを誘起する。
【0060】
用量部材および駆動部は、恒久的に回転方向にロックされる。たとえば、用量部材および駆動部は、ともにスプライン連結することができ、その結果、駆動部が内側本体に回転方向にロックされることによって、用量部材が用量投薬中に回転することが防止される。
【0061】
別の態様では、本発明はさらに、薬剤の用量を設定および投薬する注射デバイスに関する。注射デバイスは、典型的には、ペン型注射器として構成される。注射デバイスは、上述した駆動機構を収納して受ける細長いハウジングと、ハウジング内に配置されて液体の薬剤で充填されたカートリッジとを含む。カートリッジは、典型的には、注射デバイスのハウジングの遠位部分を形成するカートリッジホルダによって配置および収納される。注射デバイスが使い捨てのデバイスとして実施されるとき、カートリッジホルダおよび近位ハウジング構成要素は、典型的には、恒久的に相互連結される。再利用可能なデバイスとして実施されるとき、カートリッジホルダは、カートリッジ交換のためのカートリッジへのアクセスを提供するため、ならびに駆動機構のリセット動作を有効にするために、近位ハウジング部材に解放可能に連結される。
【0062】
本文脈では、遠位方向は、投薬方向およびデバイスの方向を指し、好ましくは、薬剤の送達のために生物学的組織または患者の皮膚の中へ挿入される両頭針の注射針を有するニードルアセンブリが設けられる。
【0063】
近位端または近位方向は、デバイスまたはその構成要素のうち、投薬端から最も遠く離れた端部を示す。典型的には、注射デバイスの近位端には、用量の設定のために回転させられるように使用者によって直接動作可能であり、かつ用量の投薬のために遠位方向に押し下げられるように動作可能である作動部材が位置する。
【0064】
本明細書で使用する用語「薬物」または「薬剤」は、少なくとも1つの薬学的に活性な化合物を含む医薬製剤を意味し、
ここで、一実施形態において、薬学的に活性な化合物は、最大1500Daまでの分子量を有し、および/または、ペプチド、タンパク質、多糖類、ワクチン、DNA、RNA、酵素、抗体もしくはそのフラグメント、ホルモンもしくはオリゴヌクレオチド、または上述の薬学的に活性な化合物の混合物であり、
ここで、さらなる実施形態において、薬学的に活性な化合物は、糖尿病、または糖尿病性網膜症などの糖尿病関連の合併症、深部静脈血栓塞栓症または肺血栓塞栓症などの血栓塞栓症、急性冠症候群(ACS)、狭心症、心筋梗塞、がん、黄斑変性症、炎症、枯草熱、アテローム性動脈硬化症および/または関節リウマチの処置および/または予防に有用であり、
ここで、さらなる実施形態において、薬学的に活性な化合物は、糖尿病または糖尿病性網膜症などの糖尿病に関連する合併症の処置および/または予防のための少なくとも1つのペプチドを含み、
ここで、さらなる実施形態において、薬学的に活性な化合物は、少なくとも1つのヒトインスリンもしくはヒトインスリン類似体もしくは誘導体、グルカゴン様ペプチド(GLP−1)もしくはその類似体もしくは誘導体、またはエキセンジン−3もしくはエキセンジン−4もしくはエキセンジン−3もしくはエキセンジン−4の類似体もしくは誘導体を含む。
【0065】
インスリン類似体は、たとえば、Gly(A21),Arg(B31),Arg(B32)ヒトインスリン;Lys(B3),Glu(B29)ヒトインスリン;Lys(B28),Pro(B29)ヒトインスリン;Asp(B28)ヒトインスリン;B28位におけるプロリンがAsp、Lys、Leu、Val、またはAlaで置き換えられており、B29位において、LysがProで置き換えられていてもよいヒトインスリン;Ala(B26)ヒトインスリン;Des(B28−B30)ヒトインスリン;Des(B27)ヒトインスリン、およびDes(B30)ヒトインスリンである。
【0066】
インスリン誘導体は、たとえば、B29−N−ミリストイル−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−パルミトイル−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−ミリストイルヒトインスリン;B29−N−パルミトイルヒトインスリン;B28−N−ミリストイルLysB28ProB29ヒトインスリン;B28−N−パルミトイル−LysB28ProB29ヒトインスリン;B30−N−ミリストイル−ThrB29LysB30ヒトインスリン;B30−N−パルミトイル−ThrB29LysB30ヒトインスリン;B29−N−(N−パルミトイル−γ−グルタミル)−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−(N−リトコリル−γ−グルタミル)−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−(ω−カルボキシヘプタデカノイル)−des(B30)ヒトインスリン、およびB29−N−(ω−カルボキシヘプタデカノイル)ヒトインスリンである。
【0067】
エキセンジン−4は、たとえば、H−His−Gly−Glu−Gly−Thr−Phe−Thr−Ser−Asp−Leu−Ser−Lys−Gln−Met−Glu−Glu−Glu−Ala−Val−Arg−Leu−Phe−Ile−Glu−Trp−Leu−Lys−Asn−Gly−Gly−Pro−Ser−Ser−Gly−Ala−Pro−Pro−Pro−Ser−NH2配列のペプチドであるエキセンジン−4(1−39)を意味する。
【0068】
エキセンジン−4誘導体は、たとえば、以下のリストの化合物:
H−(Lys)4−desPro36,desPro37エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)5−desPro36,desPro37エキセンジン−4(1−39)−NH2、
desPro36エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,IsoAsp28]エキセンジン−(1−39)、
desPro36[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39);または
desPro36[Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,IsoAsp28]エキセンジン−(1−39)、
desPro36[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
(ここで、基−Lys6−NH2が、エキセンジン−4誘導体のC−末端に結合していてもよい);
【0069】
または、以下の配列のエキセンジン−4誘導体:
desPro36エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2(AVE0010)、
H−(Lys)6−desPro36[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2、
desAsp28Pro36,Pro37,Pro38エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−Asn−(Glu)5desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2、
H−desAsp28Pro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2、
desMet(O)14,Asp28Pro36,Pro37,Pro38エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2;
desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Asn−(Glu)5desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Lys6−desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2、
H−desAsp28,Pro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(S1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2;
または前述のいずれか1つのエキセンジン−4誘導体の薬学的に許容される塩もしくは溶媒和化合物
から選択される。
【0070】
ホルモンは、たとえば、ゴナドトロピン(フォリトロピン、ルトロピン、コリオンゴナドトロピン、メノトロピン)、ソマトロピン(ソマトロピン)、デスモプレシン、テルリプレシン、ゴナドレリン、トリプトレリン、ロイプロレリン、ブセレリン、ナファレリン、ゴセレリンなどの、Rote Liste、2008年版、50章に列挙されている脳下垂体ホルモンまたは視床下部ホルモンまたは調節性活性ペプチドおよびそれらのアンタゴニストである。
【0071】
多糖類としては、たとえば、グルコサミノグリカン、ヒアルロン酸、ヘパリン、低分子量ヘパリン、もしくは超低分子量ヘパリン、またはそれらの誘導体、または上述の多糖類の硫酸化形態、たとえば、ポリ硫酸化形態、および/または、薬学的に許容されるそれらの塩がある。ポリ硫酸化低分子量ヘパリンの薬学的に許容される塩の例としては、エノキサパリンナトリウムがある。
【0072】
抗体は、基本構造を共有する免疫グロブリンとしても知られている球状血漿タンパク質(約150kDa)である。これらは、アミノ酸残基に付加された糖鎖を有するので、糖タンパク質である。各抗体の基本的な機能単位は免疫グロブリン(Ig)単量体(1つのIg単位のみを含む)であり、分泌型抗体はまた、IgAなどの2つのIg単位を有する二量体、硬骨魚のIgMのような4つのIg単位を有する四量体、または哺乳動物のIgMのように5つのIg単位を有する五量体でもあり得る。
【0073】
Ig単量体は、4つのポリペプチド鎖、すなわち、システイン残基間のジスルフィド結合によって結合された2つの同一の重鎖および2本の同一の軽鎖から構成される「Y」字型の分子である。それぞれの重鎖は約440アミノ酸長であり、それぞれの軽鎖は約220アミノ酸長である。重鎖および軽鎖はそれぞれ、これらの折り畳み構造を安定化させる鎖内ジスルフィド結合を含む。それぞれの鎖は、Igドメインと呼ばれる構造ドメインから構成される。これらのドメインは約70〜110個のアミノ酸を含み、そのサイズおよび機能に基づいて異なるカテゴリー(たとえば、可変すなわちV、および定常すなわちC)に分類される。これらは、2つのβシートが、保存されたシステインと他の荷電アミノ酸との間の相互作用によって一緒に保持される「サンドイッチ」形状を作り出す特徴的な免疫グロブリン折り畳み構造を有する。
【0074】
α、δ、ε、γおよびμで表される5種類の哺乳類Ig重鎖が存在する。存在する重鎖の種類により抗体のアイソタイプが定義され、これらの鎖はそれぞれ、IgA、IgD、IgE、IgGおよびIgM抗体中に見出される。
【0075】
異なる重鎖はサイズおよび組成が異なり、αおよびγは約450個のアミノ酸を含み、δは約500個のアミノ酸を含み、μおよびεは約550個のアミノ酸を有する。各重鎖は、2つの領域、すなわち定常領域(C
H)と可変領域(V
H)を有する。1つの種において、定常領域は、同じアイソタイプのすべての抗体で本質的に同一であるが、異なるアイソタイプの抗体では異なる。重鎖γ、α、およびδは、3つのタンデム型のIgドメインと、可撓性を加えるためのヒンジ領域とから構成される定常領域を有し、重鎖μおよびεは、4つの免疫グロブリン・ドメインから構成される定常領域を有する。重鎖の可変領域は、異なるB細胞によって産生された抗体では異なるが、単一B細胞またはB細胞クローンによって産生された抗体すべてについては同じである。各重鎖の可変領域は、約110アミノ酸長であり、単一のIgドメインから構成される。
【0076】
哺乳類では、λおよびκで表される2種類の免疫グロブリン軽鎖がある。軽鎖は2つの連続するドメイン、すなわち1つの定常ドメイン(CL)および1つの可変ドメイン(VL)を有する。軽鎖のおおよその長さは、211〜217個のアミノ酸である。各抗体は、常に同一である2本の軽鎖を有し、哺乳類の各抗体につき、軽鎖κまたはλの1つのタイプのみが存在する。
【0077】
すべての抗体の一般的な構造は非常に類似しているが、所与の抗体の固有の特性は、上記で詳述したように、可変(V)領域によって決定される。より具体的には、各軽鎖(VL)について3つおよび重鎖(HV)に3つの可変ループが、抗原との結合、すなわちその抗原特異性に関与する。これらのループは、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる。VHドメインおよびVLドメインの両方からのCDRが抗原結合部位に寄与するので、最終的な抗原特異性を決定するのは重鎖と軽鎖の組合せであり、どちらか単独ではない。
【0078】
「抗体フラグメント」は、上記で定義した少なくとも1つの抗原結合フラグメントを含み、そのフラグメントが由来する完全抗体と本質的に同じ機能および特異性を示す。パパインによる限定的なタンパク質消化は、Igプロトタイプを3つのフラグメントに切断する。1つの完全なL鎖および約半分のH鎖をそれぞれが含む2つの同一のアミノ末端フラグメントが、抗原結合フラグメント(Fab)である。サイズが同等であるが、鎖間ジスルフィド結合を有する両方の重鎖の半分の位置でカルボキシル末端を含む第3のフラグメントは、結晶可能なフラグメント(Fc)である。Fcは、炭水化物、相補結合部位、およびFcR結合部位を含む。限定的なペプシン消化により、Fab片とH−H鎖間ジスルフィド結合を含むヒンジ領域の両方を含む単一のF(ab’)2フラグメントが得られる。F(ab’)2は、抗原結合に対して二価である。F(ab’)2のジスルフィド結合は、Fab’を得るために切断することができる。さらに、重鎖および軽鎖の可変領域は、縮合して単鎖可変フラグメント(scFv)を形成することもできる。
【0079】
薬学的に許容される塩は、たとえば、酸付加塩および塩基性塩である。酸付加塩としては、たとえば、HClまたはHBr塩がある。塩基性塩は、たとえば、アルカリまたはアルカリ土類、たとえば、Na+、またはK+、またはCa2+から選択されるカチオン、または、アンモニウムイオンN+(R1)(R2)(R3)(R4)(式中、R1〜R4は互いに独立に:水素、場合により置換されたC1〜C6アルキル基、場合により置換されたC2〜C6アルケニル基、場合により置換されたC6〜C10アリール基、または場合により置換されたC6〜C10ヘテロアリール基を意味する)を有する塩である。薬学的に許容される塩のさらなる例は、「Remington’s Pharmaceutical Sciences」17版、Alfonso R.Gennaro(編)、Mark Publishing Company、Easton、Pa.、U.S.A.、1985およびEncyclopedia of Pharmaceutical Technologyに記載されている。
【0080】
薬学的に許容される溶媒和物は、たとえば、水和物である。
【0081】
本発明の精神および範囲から逸脱することなく、本発明には様々な修正および変形を加えることができることが、当業者にはさらに明らかであろう。さらに、添付の特許請求の範囲内で使用されるあらゆる参照番号は、本発明の範囲を限定すると解釈されるべきでないことに留意されたい。
【0082】
以下、駆動機構および注射デバイスの実施形態について、図面を参照することによって詳細に記載する。