【課題を解決するための手段】
【0013】
一態様において、本発明は、薬剤の用量を設定し投薬するように動作可能な注射デバイスの駆動機構に関する。具体的には、駆動機構および注射デバイスは、可変サイズの用量を設定し引き続いてそれを投薬することをもたらすペン型注射器として構成される。駆動機構は、軸方向(z)に延びる管状のハウジング構成要素を含む。ハウジング構成要素は、典型的には内向きの側壁部分に配置される内側ねじ山を含む。ねじ山は、典型的には螺旋型のものである。
【0014】
駆動機構は、内側ねじ山に係合される外側ねじ山を有する管状のディスプレイ部材をさらに含む。したがって、ディスプレイ部材は、ハウジング構成要素内に配置され、ハウジング構成要素に対して用量増分方向、典型的には時計回り回転と一致する方向に回転することができ、さらに、ハウジング構成要素に対して用量減少方向、典型的には反時計回りの回転と一致する方向に回転することができる。さらに、ディスプレイ部材を、用量増分方向、したがって時計回りにダイヤル設定するまたは回転させることで、ディスプレイ部材は、ハウジング構成要素に対して、螺旋状、したがって回転と並進が組み合わされて動かされる。
【0015】
典型的には、ディスプレイ部材は、時計回りに回されると、近位軸方向に移動する。ディスプレイ部材は、その外周に、ハウジング構成要素とディスプレイ部材との間のねじ付きインターフェースのピッチに対応して配置される螺旋状に連続するアイテムまたは数字を有する。このようにして、ディスプレイ部材の外面にもたらされるアイテムまたは数字は、ハウジング構成要素の側壁部分にあるアパーチャを介して見ることができる。
【0016】
駆動機構は、用量設定位置(S)と用量投薬位置との間で、ディスプレイ部材に対して軸方向に変位可能な用量部材をさらに含む。近位用量設定位置と遠位用量投薬位置との間の軸方向変位は別として、用量部材は、ディスプレイ部材に対して軸方向に拘束されるまたは軸方向に連結される。用量部材は、典型的には、ディスプレイ部材の近位レセプタクル内に配置される。用量部材は、典型的には、駆動機構を用量設定モードから用量投薬モードに切り替えるときに遠位方向に押し下げられる用量ボタンとして実施される。
【0017】
ディスプレイ部材は、その外周に、ハウジング構成要素の内向きの側壁部分に配置される対応する形状の阻止(blocking)構造に軸方向に係合する少なくとも1つの阻止部材をさらに含む。阻止構造は、用量部材の用量設定位置(S)から用量投薬位置に向かう軸方向変位を阻止するように構成され設計される。
【0018】
ハウジング構成要素の阻止構造は、所定の軸方向位置に配置され、所定の軸方向延長部(extension)を含む。ディスプレイ部材は、用量設定の間、ハウジング構成要素に対して螺旋状に動かされるので、その阻止部材は、それぞれの軸方向変位を受ける。阻止部材およびディスプレイ部材は、同じ螺旋状の変位を受けることになる。したがって、阻止部材は、一体構成要素またはディスプレイ部材の一部分であってよい。阻止構成は、阻止部材が阻止構造の領域に入るときに常に得られる。しかし、阻止構成は、阻止部材が阻止構造を通過すると、解放される。したがって、阻止構成および用量投薬動作の開始の抑制は、阻止構造と阻止部材の互いの係合によって支配される。阻止構造の軸方向位置および軸方向延長部は、さらに、治療用途についての最小用量、ならびにプライミング手順についての最大用量を決定する。
【0019】
阻止部材は、用量部材に、直接的か、例えば駆動機構のクラッチスリーブまたは他の構成要素を介して間接的かのどちらかで恒久的に軸方向に係合される。阻止部材が阻止構造に係合すると、阻止部材の遠位方向変位が不可能になり、したがって妨げられる。その結果、阻止部材と用量部材の直接的または間接的な軸方向の当接により、やはりまた用量部材もその近位用量設定位置で阻止される。用量部材と阻止部材の軸方向当接および阻止部材と阻止構造の係合により、用量部材の遠位方向変位が防止される。
【0020】
阻止部材および阻止構造が、ハウジング部材に対するディスプレイ部材のさらなる軸方向変位により係合解除されると、阻止部材は、阻止構造から解放され、軸方向、典型的には遠位方向の変位がそれ以上妨げられなくなる。その結果、用量部材は、近位用量設定位置(S)から遠位方向に用量投薬位置の方に向かって変位可能になり、それによって、駆動機構が用量設定モードから用量投薬モードに切り替えられる。
【0021】
他の実施形態によれば、阻止構造は、阻止ねじ山を含む。阻止ねじ山は、ハウジング構成要素の内向きの側壁部分に配置され、ハウジング構成要素の内側ねじ山と同じピッチを含む。阻止ねじ山は、内側ねじ山と同じピッチまたはリードを有するので、阻止部材と阻止構造との間の軸方向係合は、阻止部材が、阻止構造が内部に配置される軸方向域を通って移動するときも維持される。阻止構造および内側ねじ山は、同じピッチを有するので、阻止部材は、阻止構造に係合された後、それが阻止ねじ山の上を移動するとき、いかなるさらなる相対運動も経験しない。
【0022】
さらなる一実施形態では、阻止ねじ山および内側ねじ山は、軸方向に分離される。阻止ねじ山は、管状ハウジング構成要素の遠位部分近くに配置され、その一方で内側ねじ山は、ハウジング構成要素の近位部分近くに配置される。さらに、阻止ねじ山および内側ねじ山が、互いに固定される異なるハウジング構成要素に設けられることも考えられる。さらに、内側ねじ山が、管状ハウジング構成要素内に軸方向かつ回転方向にロックされる管状インサートの内向きの側壁部分にもたらされ、その一方で、阻止ねじ山が、主ハウジング構成要素、したがって駆動機構または注射デバイスのハウジングの近位本体の内向きの側壁部分に設けられることも考えられる。
【0023】
さらに、阻止ねじ山および内側ねじ山が径方向にオフセットされることも考えられる。典型的には、内側ねじ山の直径は、阻止ねじ山の半径よりも若干小さくてよい。このようにして、ディスプレイ部材の外側ねじ山は、ハウジング構成要素の内側ねじ山だけに係合可能であり、ディスプレイ部材の軸方向伸長部全体は、用量設定および用量投薬についての軸方向の行程路をそれぞれ最大にするために、外側ねじ山を備えることができる。
【0024】
さらに、一般的に、内側ねじ山の軸方向延長部がさらに短く、ディスプレイ部材の外側ねじ山がディスプレイ部材の軸方向長さの概ね全長に沿って延びることが意図される。したがって、阻止構造、したがって阻止ねじ山は、ディスプレイ部材の遠位端にもたらされる阻止構造に選択的に係合するようにハウジング構成要素の内側ねじ山から遠位方向にオフセットして配置される。このようにして、阻止ねじ山と内側ねじ山の軸方向の分離により、阻止部材は、阻止構造だけに係合するがハウジング構成要素の内側ねじ山には係合しないように構成される。
【0025】
さらなる一実施形態では、駆動機構は、軸方向に延び阻止部材と用量部材との間に軸方向に位置するクラッチスリーブを含む。クラッチスリーブは、典型的には、阻止部材と用量部材との間に軸方向に配置される。クラッチスリーブは、用量部材と阻止部材との間の軸方向推力伝達手段として働く。阻止部材は、阻止構造と係合にあるとき、屈曲することができない、または遠位軸方向に動くことができない。用量部材に加えられるあらゆる遠位方向の力は、クラッチスリーブを介して、阻止部材に直接伝えられる。阻止構造との軸方向係合により、用量部材に及ぼされる遠位方向推力は、阻止構造によって直接的に反作用され、それによって、ディスプレイ部材に対する用量部材の遠位方向変位が防止される。
【0026】
クラッチスリーブは、典型的には、ディスプレイ部材を通って延びる。クラッチスリーブは、ディスプレイ部材に対して軸方向に変位可能であってよいが、駆動機構のピストンロッドに恒久的に回転方向に係合される。ピストンロッドは、典型的には、その遠位端に、カートリッジのピストンの近位方向推力受容(receiving)面に軸方向に係合し遠位方向に当接する圧力片または支承部を含む。クラッチスリーブは、典型的には、用量部材に恒久的に軸方向に係合され軸方向に連結される。クラッチスリーブは、何らかのばね手段によってディスプレイ部材に対して軸方向に付勢され、したがって、ディスプレイ部材およびクラッチスリーブは、それぞれのばね要素の作用に抗して、近位用量設定位置から遠位用量投薬位置の方へと変位可能である。
【0027】
さらなる一実施形態によれば、阻止部材は、ディスプレイ部材から径方向内方に延びる、クラッチスリーブに軸方向に係合する内側突起を含む。このようにして、クラッチスリーブは、クラッチスリーブと阻止部材との間、したがって用量部材と阻止部材との間に軸方向係合を確立するために、阻止部材の内側突起に軸方向に当接することができる。さらに、阻止部材の内側突起が、クラッチスリーブに恒久的に軸方向に係合することも考えられる。したがって、クラッチスリーブは、典型的には、少なくとも用量設定モードのとき、ディスプレイ部材に軸方向に係合される。そして、ハウジング構成要素に対するその近位方向変位を引き起こす用量部材の用量増分回転は、クラッチスリーブの対応するまたは同一の軸方向変位を引き起こす。
【0028】
しかし、駆動機構の用量設定モードから用量投薬モードへの切り替えのとき、クラッチスリーブは、少なくとも、用量部材に対する、典型的には遠位方向の小さいがはっきりした軸方向変位を受ける。さらに、クラッチスリーブおよび用量部材は、クラッチによって、選択的に回転方向に係合可能であってよい。クラッチが開く、すなわち解放されると、ディスプレイ部材は、クラッチスリーブに対して回転することができる。クラッチが閉じる、すなわち係合されると、ディスプレイ部材の回転は、クラッチスリーブの対応する回転に同様に伝えられる。
【0029】
阻止部材の内側突起は、ディスプレイ部材内に配置されるクラッチスリーブに軸方向に係合するのに特に有益なものである。径方向内方に延びる内側突起により、クラッチスリーブとの軸方向係合が簡単に確立可能になる。クラッチスリーブは、ディスプレイ部材の直径よりも小さい、したがって阻止部材の直径よりも小さい直径を有する。
【0030】
さらなる一実施形態では、クラッチスリーブは、ディスプレイ部材内に配置される。ディスプレイ部材およびクラッチスリーブは、典型的には、入れ子状または巻き込むように配置される。クラッチスリーブは、囲繞するディスプレイ部材によって完全に取り囲まれる。クラッチスリーブは、阻止部材の径方向内方に延びる内側突起に軸方向に係合するように動作可能な径方向外方に延びるフランジ部分をさらに含む。このようにして、阻止部材の内側突起とクラッチスリーブのフランジ部分の両方の径方向延長部は、最小まで減少される一方でそれでも十分な径方向オーバーラップをもたらす。クラッチスリーブのフランジ部分は、典型的には、ディスプレイ部材の遠位端から遠位方向に突出するクラッチスリーブの遠位端にもたらされる。フランジ部分が、阻止部材、具体的には阻止部材の内側突起に軸方向遠位当接するように構成されるので、阻止部材または少なくともその内側突起は、典型的には、クラッチスリーブのフランジ部分から遠位方向に配置される。
【0031】
したがって、さらなる一実施形態によれば、ディスプレイ部材の遠位端に配置される阻止部材は、接線方向および/または遠位方向に延びる可撓性アームをさらに含む。可撓性アームは、典型的には弓状であり、管状のディスプレイ部材の外周と一致する。軸方向に沿って駆動機構を見ていると、可撓性アームは、典型的には、ディスプレイ部材の外周の完全に内部に配置される。可撓性アームは、螺旋状構造を含むことができ、したがって、ディスプレイ部材の遠位端から遠位方向に延びることができる。可撓性アームは、典型的には、ディスプレイ部材に連結されるまたはそれと一体に形成される底部部分を含む。可撓性アームは、管状ディスプレイ部材の遠位端からある軸方向距離に配置される自由端を含む。
【0032】
典型的には、阻止部材、したがってその可撓性アームは、ディスプレイ部材と一体に形成され、したがって、阻止部材を設けるためには、既存のディスプレイ部材に対する修正が必要とされるだけである。したがって、阻止または最小用量機構を確立するのに追加能構成要素を実装し組み付ける必要がない。このようにして、最小用量機能の実施は、構成要素の製造およびデバイスのアセンブリの観点からさらに費用効率が高い。
【0033】
可撓性アームをもたらすことは、阻止部材の、特にクラッチスリーブを介した、用量部材との恒久的な軸方向係合を保つのに特に有益である。このようにして、阻止機能が活動状態にあるときに、使用者にさらに直接的な明確な阻止フィードバックがもたらされる。クラッチスリーブと阻止部材および用量部材との直接的かつ恒久的な軸方向係合は、使用者にほぼ怠ることなく力強い直接的な触覚フィードバックをもたらす。解放構成にあるとき、阻止部材したがってその可撓性アームは、遠位方向に自由に屈曲し、それによって、用量部材および/またはクラッチスリーブが遠位方向に変位可能になり、したがって、用量設定モードから用量投薬モードに切り替わる。
【0034】
さらなる一実施形態では、阻止部材は、ディスプレイ部材から径方向外方に延びる、阻止構造に軸方向に係合する外側突起を含む。外側突起により、阻止部材は、ハウジング構成要素の阻止構造に軸方向に係合可能であり、その一方で、阻止部材は、その内側突起によって、用量部材に、典型的には軸方向に延びるクラッチスリーブを介して軸方向に係合する。内側突起および外側突起の両方が可撓性アームの自由端に、またはその近くに、位置するまたは配置される場合、特に有益である。このようにして、用量部材の遠位方向変位を阻止する負荷経路(load path)は、可撓性アームを通って移動しないがその自由端だけを横切る。自由端は、阻止構造と用量部材との間、具体的には阻止構造の阻止ねじ山と、用量部材に恒久的に軸方向に当接するまたは軸方向に係合するクラッチスリーブの径方向外方に延びるフランジ部分との間に軸方向に挟まれる。
【0035】
さらなる一実施形態によれば、外側突起は、阻止構造、またはハウジングの内向きの側壁部分に摩擦係合する径方向外方向きの縁を含む。可撓性アーム、具体的にはその自由端は、軸方向だけでなく径方向にも偏向可能または屈曲可能である。特に、阻止構造またはハウジング構成要素の内向きの側壁部分に摩擦係合するように、阻止状態が生じると、外側突起は、さらに径方向外方に変位されることが意図される。
【0036】
この摩擦は、用量部材に作用する、よって最終的にはディスプレイ部材にも作用する、あらゆる軸方向および遠位方向の負荷がディスプレイ部材を用量減少方向に回転させようとすることができるので、特に有益である。阻止構造または内向きの側壁部分に摩擦係合する外側突起の径方向外方向きの縁によって、阻止構成の頑丈さおよび機械的な安定性がさらに向上される。
【0037】
さらなる一実施形態によれば、阻止構造は、阻止部材の外側突起の対応する遠位傾斜縁に係合する、近位方向に内方に傾斜する近位向きの近位縁を含む。阻止構造および外側突起のこれらの互いに対応する近位傾斜縁および遠位傾斜縁は、阻止構造またはハウジング構成要素の内向きの側壁部分に摩擦係合するように阻止部材の外側突起を径方向外方に変位させ付勢する働きをする。
【0038】
さらなる一実施形態によれば、ハウジング構成要素における阻止構造の遠位端の軸方向位置は、プライミング手順についての用量の最大サイズを定める(define)。阻止部材が阻止構造の遠位端から遠位方向に配置される限り、阻止部材は、用量投薬のために遠位方向に押し下げられる用量部材の結果として、遠位方向に自由に屈曲されるまたは変位される。プライミング能力、すなわち小さい用量の設定およびその後のその試験送達がもたらされなければならない場合、阻止構造の遠位端の軸方向位置は、例えば2国際単位(IU)または3IUよりも大きな用量が設定されると、阻止部材と一致するハウジング構成要素の軸方向位置に配置される。
【0039】
使用者が、用量部材を用量増分方向にさらに回転させると、阻止部材はハウジング構成要素の阻止構造に係合し、それによって、阻止部材、具体的にはその外側突起が、阻止構造に軸方向に当接しそれに沿って摺動する。阻止構造の遠位端は、面取り面を備えることができ、それによって阻止部材は、阻止ねじ山に係合するとき、何らかの近位方向の予張力または屈曲を経験する。ディスプレイ部材が阻止部材と一緒に用量増分方向にさらにダイヤル設定されると、阻止部材は、阻止構造の近位側縁、したがってその阻止ねじ山に対して遠位方向に屈曲されたままになる。
【0040】
阻止構造の近位端の軸方向位置は、典型的には、駆動機構によって設定され続いて投薬される、治療用量の最小サイズを定める。所定の最小用量と一致する阻止部材および阻止構造の係合解除のときだけ、阻止部材、したがってその可撓性アームは、用量部材および/またはクラッチスリーブの作用を受けて遠位方向に曲げられるまたは変位される。
【0041】
他の実施形態では、駆動機構は、カートリッジのピストンに軸方向に係合するピストンロッドをさらに含む。ピストンロッドは、ハウジング構成要素の内側ねじ山に係合される外側ねじ山を含む。ハウジング構成要素は、注射デバイスの主ハウジングまたは本体内に固定されるさらなるインサートとして構成される。やはりまた、ピストンロッドにねじ係合されるハウジング構成要素が、駆動機構または注射デバイスの主ハウジングまたは本体と一体形成されることも考えられる。駆動機構は、ピストンロッドに恒久的に回転方向にロックされ一方向ラチェットを介してハウジング構成要素に対して用量減少方向、例えば反時計回りだけに回転可能な駆動スリーブをさらに含む。
【0042】
一方向ラチェットによって、駆動スリーブは、ハウジングに対する用量増分方向における回転が阻止される。このようにして、ピストンロッドが、遠位方向のみに移動することができ反対の近位方向には決して移動しないことが保証される。駆動スリーブとピストンロッドの回転インターロックは、スプラインインターフェースを介して得られる。したがって、ピストンロッドは、駆動スリーブの径方向内方に延びる突起に係合される長手方向溝を含むことができる。それは別として、駆動スリーブは、少なくとも駆動機構が初期構成にあるとき、ピストンロッドをほぼ完全に取り囲む。駆動スリーブはまた、ハウジングに対して、軸方向に固定されるが自由に回転する。ピストンロッドは、駆動スリーブが投薬動作の間に回転しハウジングに対して軸方向に固定または軸方向に拘束されるので、遠位方向の並進運動変位を経験する。
【0043】
さらなる一実施形態では、クラッチスリーブは、クラッチスリーブ内に配置される駆動スリーブに恒久的に回転方向にロックされる。駆動スリーブは、さらに、クラッチスリーブとのスプライン係合にあってよい。駆動スリーブとクラッチスリーブとのスプライン係合は、恒久的なタイプのものであってよく、したがって、クラッチスリーブは、駆動スリーブに対して軸方向に自由に変位され、それによって駆動スリーブとクラッチスリーブとの間の回転インターロックが依然として維持される。クラッチスリーブと駆動スリーブの相互の軸方向位置または距離に関係なく、クラッチスリーブの用量減少回転は、ピストンロッドを遠位方向に前進させるために駆動スリーブに対して同様に伝えられる。駆動スリーブとのその恒久的な回転インターロックおよび回転係合ならびに駆動スリーブに対する一方向ラチェットにより、さらに、クラッチスリーブは、用量減少方向だけに回転することができ、決して用量増分方向には回転しなくなる。
【0044】
さらなる一実施形態によれば、クラッチスリーブは、ディスプレイ部材内に配置される。用量部材と軸方向に当接するクラッチスリーブは、さらに、ディスプレイ部材に対して近位方向に軸方向に付勢される。軸方向の付勢によって、クラッチスリーブとディスプレイ部材との間のクラッチは、開いたままになる、または解放されたままになり、したがって、ディスプレイ部材は、用量設定中、クラッチスリーブに対して自由に回転する。軸方向の付勢によって、ディスプレイ部材と用量部材との間に何らかの可撓性または力感知の軸方向連結がもたらされ、それによって、用量部材は、ディスプレイ部材が、用量設定手順の間、ハウジング構成要素に対する用量増分回転されるとき、ディスプレイ部材によって近位方向に引きずられるまたは押される。
【0045】
クラッチスリーブおよびディスプレイ部材は、クラッチによって、選択的に回転方向にロック可能である。クラッチは、ディスプレイ部材に対する遠位用量投薬方向のクラッチスリーブの変位によって係合可能である。典型的には、クラッチは、ディスプレイ部材の対応する形状の近位向きの歯状突起付き構造に係合する遠位向きの歯状突起付き構造を特徴とする、近位端の方に向かう径方向外方に延びるフランジ部分を含む。ディスプレイ部材に対するクラッチスリーブの遠位方向変位によって、クラッチは係合し、ディスプレイ部材によって引き起こされる用量減少回転が、同様に、クラッチスリーブに伝わる。クラッチスリーブと駆動スリーブのスプライン係合により、さらに、駆動スリーブは、用量減少方向に回転し始め、それによって、それとのさらなるスプライン係合により、ピストンロッドの対応する回転が引き起こされる。ピストンロッドとハウジング構成要素のねじ係合により、ピストンロッドは、遠位方向前進運動されることになる。
【0046】
クラッチスリーブとディスプレイ部材との間のクラッチは、さらに、用量部材に及ぼされダイヤルクリッカ部材へと伝えられる遠位方向の推力をディスプレイ部材へと伝えるように動作可能である。ディスプレイ部材は、遠位方向推力を受けると、ハウジング構成要素とのそのねじ係合の螺旋経路およびさらに大きなピッチにより、回転し始める。
【0047】
他の態様では、本発明は、さらに、薬剤の用量を設定し投薬する注射デバイスに関する。注射デバイスは、上述したような駆動機構を収容するハウジングを含み、ハウジング内に配置されるカートリッジをさらに含む。注射デバイスは、実際に、駆動機構を収容する。駆動機構は、ハウジング内に組み付けられる。駆動機構は、カートリッジに動作可能に係合可能である、または、すでに、注射デバイスの最終組み立てのときに、カートリッジに動作可能に係合させることができる。ハウジングは、近位本体と、遠位に配置されるカートリッジホルダとを含むことができる。本体は、駆動機構、したがって、デバイスの機械的に相互作用するすべての構成要素を収容するように構成され、その一方で、カートリッジホルダは、注射デバイスおよびその駆動機構によって投薬される液体薬剤が充填されるカートリッジの少なくとも遠位部分を受けるように構成される。
【0048】
本文脈において、遠位方向は、投薬の方向、したがって好ましくはニードルアセンブリがもたらされるデバイスの方向を指している。ニードルアセンブリは、両頭注射針を有し、一方の端部が、薬剤送達のために生物組織または患者の皮膚に挿入され、他方の端部が、薬剤を含むカートリッジに挿入される。
【0049】
近位端または近位方向は、デバイスまたはその構成要素の、投薬端から最も遠くにある端部を指している。典型的には、注射デバイスの近位端には、使用者によって直接動作可能であり、用量設定のために回転され、用量の投薬のために遠位方向に押し下げられるように動作可能な作動部材が配置される。
【0050】
本明細書で使用する用語「薬物」または「薬剤」は、少なくとも1つの薬学的に活性な化合物を含む医薬製剤を意味し、
ここで、一実施形態において、薬学的に活性な化合物は、最大1500Daまでの分子量を有し、および/または、ペプチド、タンパク質、多糖類、ワクチン、DNA、RNA、酵素、抗体もしくはそのフラグメント、ホルモンもしくはオリゴヌクレオチド、または上述の薬学的に活性な化合物の混合物であり、
ここで、さらなる実施形態において、薬学的に活性な化合物は、糖尿病、または糖尿病性網膜症などの糖尿病関連の合併症、深部静脈血栓塞栓症または肺血栓塞栓症などの血栓塞栓症、急性冠症候群(ACS)、狭心症、心筋梗塞、がん、黄斑変性症、炎症、枯草熱、アテローム性動脈硬化症および/または関節リウマチの処置および/または予防に有用であり、
ここで、さらなる実施形態において、薬学的に活性な化合物は、糖尿病または糖尿病性網膜症などの糖尿病に関連する合併症の処置および/または予防のための少なくとも1つのペプチドを含み、
ここで、さらなる実施形態において、薬学的に活性な化合物は、少なくとも1つのヒトインスリンもしくはヒトインスリン類似体もしくは誘導体、グルカゴン様ペプチド(GLP−1)もしくはその類似体もしくは誘導体、またはエキセンジン−3もしくはエキセンジン−4もしくはエキセンジン−3もしくはエキセンジン−4の類似体もしくは誘導体を含む。
【0051】
インスリン類似体は、例えば、Gly(A21),Arg(B31),Arg(B32)ヒトインスリン;Lys(B3),Glu(B29)ヒトインスリン;Lys(B28),Pro(B29)ヒトインスリン;Asp(B28)ヒトインスリン;B28位におけるプロリンがAsp、Lys、Leu、Val、またはAlaで置き換えられており、B29位において、LysがProで置き換えられていてもよいヒトインスリン;Ala(B26)ヒトインスリン;Des(B28−B30)ヒトインスリン;Des(B27)ヒトインスリン、およびDes(B30)ヒトインスリンである。
【0052】
インスリン誘導体は、例えば、B29−N−ミリストイル−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−パルミトイル−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−ミリストイルヒトインスリン;B29−N−パルミトイルヒトインスリン;B28−N−ミリストイルLysB28ProB29ヒトインスリン;B28−N−パルミトイル−LysB28ProB29ヒトインスリン;B30−N−ミリストイル−ThrB29LysB30ヒトインスリン;B30−N−パルミトイル−ThrB29LysB30ヒトインスリン;B29−N−(N−パルミトイル−γ−グルタミル)−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−(N−リトコリル−γ−グルタミル)−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−(ω−カルボキシヘプタデカノイル)−des(B30)ヒトインスリン、およびB29−N−(ω−カルボキシヘプタデカノイル)ヒトインスリンである。
【0053】
エキセンジン−4は、例えば、H−His−Gly−Glu−Gly−Thr−Phe−Thr−Ser−Asp−Leu−Ser−Lys−Gln−Met−Glu−Glu−Glu−Ala−Val−Arg−Leu−Phe−Ile−Glu−Trp−Leu−Lys−Asn−Gly−Gly−Pro−Ser−Ser−Gly−Ala−Pro−Pro−Pro−Ser−NH2配列のペプチドであるエキセンジン−4(1−39)を意味する。
【0054】
エキセンジン−4誘導体は、例えば、以下のリストの化合物:
H−(Lys)4−desPro36,desPro37エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)5−desPro36,desPro37エキセンジン−4(1−39)−NH2、
desPro36エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,IsoAsp28]エキセンジン−(1−39)、
desPro36[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39);または
desPro36[Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,IsoAsp28]エキセンジン−(1−39)、
desPro36[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
(ここで、基−Lys6−NH2が、エキセンジン−4誘導体のC−末端に結合していてもよい);
【0055】
または、以下の配列のエキセンジン−4誘導体:
desPro36エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2(AVE0010)、
H−(Lys)6−desPro36[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2、
desAsp28Pro36,Pro37,Pro38エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−Asn−(Glu)5desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2、
H−desAsp28Pro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2、
desMet(O)14,Asp28Pro36,Pro37,Pro38エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2;
desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Asn−(Glu)5desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Lys6−desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2、
H−desAsp28,Pro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(S1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2;
または前述のいずれか1つのエキセンジン−4誘導体の薬学的に許容される塩もしくは溶媒和化合物
から選択される。
【0056】
ホルモンは、例えば、ゴナドトロピン(フォリトロピン、ルトロピン、コリオンゴナドトロピン、メノトロピン)、ソマトロピン(ソマトロピン)、デスモプレシン、テルリプレシン、ゴナドレリン、トリプトレリン、ロイプロレリン、ブセレリン、ナファレリン、ゴセレリンなどの、Rote Liste、2008年版、50章に列挙されている脳下垂体ホルモンまたは視床下部ホルモンまたは調節性活性ペプチドおよびそれらのアンタゴニストである。
【0057】
多糖類としては、例えば、グルコサミノグリカン、ヒアルロン酸、ヘパリン、低分子量ヘパリン、もしくは超低分子量ヘパリン、またはそれらの誘導体、または上述の多糖類の硫酸化形態、例えば、ポリ硫酸化形態、および/または、薬学的に許容されるそれらの塩がある。ポリ硫酸化低分子量ヘパリンの薬学的に許容される塩の例としては、エノキサパリンナトリウムがある。
【0058】
抗体は、基本構造を共有する免疫グロブリンとしても知られている球状血漿タンパク質(約150kDa)である。これらは、アミノ酸残基に付加された糖鎖を有するので、糖タンパク質である。各抗体の基本的な機能単位は免疫グロブリン(Ig)単量体(1つのIg単位のみを含む)であり、分泌型抗体はまた、IgAなどの2つのIg単位を有する二量体、硬骨魚のIgMのような4つのIg単位を有する四量体、または哺乳動物のIgMのように5つのIg単位を有する五量体でもあり得る。
【0059】
Ig単量体は、4つのポリペプチド鎖、すなわち、システイン残基間のジスルフィド結合によって結合された2つの同一の重鎖および2本の同一の軽鎖から構成される「Y」字型の分子である。それぞれの重鎖は約440アミノ酸長であり、それぞれの軽鎖は約220アミノ酸長である。重鎖および軽鎖はそれぞれ、これらの折り畳み構造を安定化させる鎖内ジスルフィド結合を含む。それぞれの鎖は、Igドメインと呼ばれる構造ドメインから構成される。これらのドメインは約70〜110個のアミノ酸を含み、そのサイズおよび機能に基づいて異なるカテゴリー(例えば、可変すなわちV、および定常すなわちC)に分類される。これらは、2つのβシートが、保存されたシステインと他の荷電アミノ酸との間の相互作用によって一緒に保持される「サンドイッチ」形状を作り出す特徴的な免疫グロブリン折り畳み構造を有する。
【0060】
α、δ、ε、γおよびμで表される5種類の哺乳類Ig重鎖が存在する。存在する重鎖の種類により抗体のアイソタイプが定義され、これらの鎖はそれぞれ、IgA、IgD、IgE、IgGおよびIgM抗体中に見出される。
【0061】
異なる重鎖はサイズおよび組成が異なり、αおよびγは約450個のアミノ酸を含み、δは約500個のアミノ酸を含み、μおよびεは約550個のアミノ酸を有する。各重鎖は、2つの領域、すなわち定常領域(C
H)と可変領域(V
H)を有する。1つの種において、定常領域は、同じアイソタイプのすべての抗体で本質的に同一であるが、異なるアイソタイプの抗体では異なる。重鎖γ、α、およびδは、3つのタンデム型のIgドメインと、可撓性を加えるためのヒンジ領域とから構成される定常領域を有し、重鎖μおよびεは、4つの免疫グロブリン・ドメインから構成される定常領域を有する。重鎖の可変領域は、異なるB細胞によって産生された抗体では異なるが、単一B細胞またはB細胞クローンによって産生された抗体すべてについては同じである。各重鎖の可変領域は、約110アミノ酸長であり、単一のIgドメインから構成される。
【0062】
哺乳類では、λおよびκで表される2種類の免疫グロブリン軽鎖がある。軽鎖は2つの連続するドメイン、すなわち1つの定常ドメイン(CL)および1つの可変ドメイン(VL)を有する。軽鎖のおおよその長さは、211〜217個のアミノ酸である。各抗体は、常に同一である2本の軽鎖を有し、哺乳類の各抗体につき、軽鎖κまたはλの1つのタイプのみが存在する。
【0063】
すべての抗体の一般的な構造は非常に類似しているが、所与の抗体の固有の特性は、上記で詳述したように、可変(V)領域によって決定される。より具体的には、各軽鎖(VL)について3つおよび重鎖(HV)に3つの可変ループが、抗原との結合、すなわちその抗原特異性に関与する。これらのループは、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる。VHドメインおよびVLドメインの両方からのCDRが抗原結合部位に寄与するので、最終的な抗原特異性を決定するのは重鎖と軽鎖の組合せであり、どちらか単独ではない。
【0064】
「抗体フラグメント」は、上記で定義した少なくとも1つの抗原結合フラグメントを含み、そのフラグメントが由来する完全抗体と本質的に同じ機能および特異性を示す。パパインによる限定的なタンパク質消化は、Igプロトタイプを3つのフラグメントに切断する。1つの完全なL鎖および約半分のH鎖をそれぞれが含む2つの同一のアミノ末端フラグメントが、抗原結合フラグメント(Fab)である。サイズが同等であるが、鎖間ジスルフィド結合を有する両方の重鎖の半分の位置でカルボキシル末端を含む第3のフラグメントは、結晶可能なフラグメント(Fc)である。Fcは、炭水化物、相補結合部位、およびFcR結合部位を含む。限定的なペプシン消化により、Fab片とH−H鎖間ジスルフィド結合を含むヒンジ領域の両方を含む単一のF(ab’)2フラグメントが得られる。F(ab’)2は、抗原結合に対して二価である。F(ab’)2のジスルフィド結合は、Fab’を得るために切断することができる。さらに、重鎖および軽鎖の可変領域は、縮合して単鎖可変フラグメント(scFv)を形成することもできる。
【0065】
薬学的に許容される塩は、例えば、酸付加塩および塩基性塩である。酸付加塩としては、例えば、HClまたはHBr塩がある。塩基性塩は、例えば、アルカリまたはアルカリ土類、例えば、Na+、またはK+、またはCa2+から選択されるカチオン、または、アンモニウムイオンN+(R1)(R2)(R3)(R4)(式中、R1〜R4は互いに独立に:水素、場合により置換されたC1〜C6アルキル基、場合により置換されたC2〜C6アルケニル基、場合により置換されたC6〜C10アリール基、または場合により置換されたC6〜C10ヘテロアリール基を意味する)を有する塩である。薬学的に許容される塩のさらなる例は、「Remington’s Pharmaceutical Sciences」17版、Alfonso R.Gennaro(編)、Mark Publishing Company、Easton、Pa.、U.S.A.、1985およびEncyclopedia of Pharmaceutical Technologyに記載されている。
【0066】
薬学的に許容される溶媒和物は、例えば、水和物である。
【0067】
本発明の精神および範囲から逸脱することなく、本発明に様々な修正および変更を加えることができることが、当業者にはさらに明らかであろう。さらに、添付の特許請求の範囲で使用されるいかなる参照数字も、本発明の範囲を限定するものとしてみなすべきではないことに留意されたい。
【0068】
以下において、図面を参照して、駆動機構および注射デバイスの実施形態をより詳細に説明する。