【課題を解決するための手段】
【0026】
これらの目的は、請求項1に係るパワー半導体モジュールによって少なくとも部分的に達成される。本発明の好ましい実施形態は、従属項において定義される。
【0027】
本発明は、少なくとも2つのパワー半導体デバイスを備えるパワー半導体モジュールに関する。少なくとも2つのパワー半導体デバイスは、少なくとも1つのパワー半導体トランジスタおよび少なくとも1つのパワー半導体ダイオードを含む。少なくとも第1の基板が第1の平面においてパワー半導体トランジスタを担うために設けられており、第1の平面は基板の平面に対して平行である。パワー半導体ダイオードは第2の平面に設けられている。第1の平面は、第1の平面に対して垂直方向において、基板または基板の平面と第2の平面との間に位置している。第1の平面は、第1の平面に対して垂直方向において、第2の平面から間隔をおいて配置されている。
【0028】
そのようなパワー半導体モジュールは、容易に形成可能であり、動作中の浮遊インダクタンスが低くなり得る。特に、従来のプレーナ型パワー半導体パッケージ、および先行技術に示されているようなさらに複雑な積層パッケージと比べて利点を示し得る。
【0029】
したがって、パワー半導体モジュールは、少なくとも2つのパワー半導体デバイスを備える。実際、パワー半導体モジュールは、正確に2つのまたは3つ以上のパワー半導体デバイスを備え得る。これらのパワー半導体デバイスのうち、少なくとも1つのパワー半導体デバイスは半導体トランジスタであり、少なくとも1つのパワー半導体デバイスはパワー半導体ダイオードである。
【0030】
以下の記載は2つのパワー半導体デバイスのみに対して行なわれるが、3つ以上のパワー半導体デバイスまたはさらなる電子デバイスに対しても同様に有効である。たとえば、パワー半導体モジュールは、DC−DC、AC−DC、DC−AC、およびAC−ACパワーコンバータを形成することが可能である。このような場合、1つ以上のトランジスタまたはスイッチのそれぞれおよび1つ以上のダイオードに加えて、1つ以上のインダクタおよび1つ以上のキャパシタを設け得る。
【0031】
パワー半導体トランジスタがパワー用途のためのスイッチであることは有利である。当該技術において一般に知られているように、パワー半導体トランジスタは、とりわけMOSFETまたはIGBTなどを備え得る。同様に、パワー半導体ダイオードは当該技術で一般に知られている。そのようなパワー半導体モジュールは、たとえばPセル、Nセル、または、以下で詳細に説明するようにPセルとNセルとの双方を含むハーフブリッジ構成を形成し得る。
【0032】
それぞれのパワー半導体デバイスの位置に関して、少なくとも第1の基板が設けられ、第1の基板は基板金属被覆を有する。それ自体が一般に知られているように、基板金属被覆はパワー半導体トランジスタを担いまた電気接続するために役立つ。
【0033】
基板は、これらに制限されるわけではないが、アルミナ(Al
2O
3)、窒化アルミニウム(AlN)、もしくは酸化ベリリウム(BeO)などのセラミック材料から、または、当該技術で一般に知られているような別の材料から形成可能である。例示的に、金属被覆は、銅金属被覆または他の金属からなる金属被覆を含み得る。
【0034】
一例として、基板は、たとえば、一方の側がチップの取付けのために設けられ他方の側が基板の冷却器への接続のために設けられる、両側に金属被覆を有する、上記のように定義された基板材料から形成された主要層によって形成されている。基板主要層は機械的支持をもたらすために実現され得るのに対し、上部金属被覆は1つまたは複数の半導体デバイスに電気的接触し得、下部金属被覆は、該冷却器、たとえばベースプレートまたはインターポーザに接触し得る。
【0035】
また、上記のように定義された例の隣に、トランジスタを担うための基板を、たとえば銅板などのメタリック板として実現することも可能である。
【0036】
さらに、パワー半導体トランジスタが第1の平面に設けられ、第1の平面は、基板の平面に対して平行に位置している。言い換えると、基板が水平面に位置している状態で、トランジスタも水平面に位置し、この水平面は、第1の平面と定義される。この第1の平面はトランジスタを通過するいかなる平面でもよく、基板の平面までの規定された距離を有している。この距離は、垂直方向に定義される。たとえば、説明されている各平面は、それぞれのパワー半導体素子の底面または裏面を通過し、基板が水平面に位置決めされている場合、それ自体が取り付けられた金属被覆、および基板の上面の平面に直接隣り合っている。
【0037】
上記のように定義された第1の平面の隣に、パワー半導体ダイオードを第2の平面に設けることが可能である。第2の平面は、第1の平面に対して平行に配置されている。第1の平面に対して垂直方向において、第1の平面は、基板または基板平面と第2の平面との間で位置しており、第1の平面に対して垂直方向において、第1の平面は、第2の平面から間隔をおいて設けられている。言い換えると、基板平面が水平な状態で、ダイオードも水平面に位置し、この水平面は、第2の平面として定義される。第2の平面は基板平面までの規定された距離を有し、この距離は垂直方向において定義される。第2の平面の基板平面までの距離は、第1の平面の基板平面までの距離と比較して大きく、各々が、基板平面が水平面に位置している場合に、垂直方向にある。したがって、それぞれの平面の水平方向を参照して、トランジスタを通過する平面がダイオードの平面から間隔をおいて配置されている。これによって、垂直方向で、トランジスタおよびダイオードは互いに間隔をおいて配置されている。
【0038】
第1の平面と第2の平面とが水平方向に延在する場合のこれらの平面間の垂直距離は、基板材料が金属被覆間の電界に耐えることができるように選択可能であることが有利である、すなわち、この距離は、基板材料および定格電圧に関連する。ほとんどの場合、第1の平面と第2の平面との間の距離が10μメートル以上および10mm以下であることが有利であり得、100μm以上および1mm以下であることが好ましい。そのような距離は、第1の平面および第2の平面が水平に延在する場合において、第1の平面および第2の平面がそれぞれ、トランジスタの底面または裏面およびダイオードの底面または裏面を通る場合に、設けることが可能である。
【0039】
また、ダイオードは、基板、たとえば上述のようなセラミック基板上に設けることが可能である、または、以下で詳細に説明するように、さらなる支持体上に設けることが可能である。したがって、トランジスタを担うための基板は第1の基板と呼ばれるが、第2のまたは別の基板を設けてもよい。ただし、これは決して必須ではない。
【0040】
パワー半導体モジュールのそのような構成によって、複数の利点がもたらされる。
詳細には、上述のような構成または実装のそれぞれでは、従来のプレーナ実装と比較して、浮遊インダクタンスがきわめて低くなる。一例として、状況によっては、先行技術の解決策と比べて約5分の1に減少されるなど、モジュール基板の浮遊インダクタンスがきわめて低くなり得る。
【0041】
浮遊インダクタンスを低い値にするために、電流路を、基板が水平位置にある場合に水平方向において互いにのみ隣接するように配置する代わりに、垂直方向において少なくとも部分的に相互に積層する。垂直配置では、整流セルの面積は、電流路の垂直線間距離に概ね比例する。垂直線間距離はきわめて小さく(<1mm)なり得るため、この配置によって、ループサイズがはるかに小さくなる。さらに、垂直整流路は、通常モジュールの上部に設けられているゲート制御回路にほとんど干渉しない。
【0042】
したがって、低誘導整流セルは、相互に距離を有する異なる平面、たとえば底部基板の異なる層において、トランジスタとダイオードとの間に整流電流を垂直に積層することによって実現可能である。したがって、非常に改善されたスイッチング挙動が見込まれ、それによって、そのようなモジュールがスイッチングの速い半導体の実装にとって理想である。
【0043】
近年のパワー半導体のスイッチング時間の減少にしたがい、特にSiCおよびGaNなどの新規な半導体材料にとって、良好なスイッチング挙動を維持するために、パワーモジュールの浮遊インダクタンスを大幅に減らすことが必要になる。浮遊インダクタンスによって、スイッチング損失を増加させ半導体チップのディレーティングを必要とする電流のオーバーシュートが、スイッチング事象時に生じる。これは、上述のように浮遊インダクタンスを減少させることによって実現可能な利点を示している。
【0044】
同時に、先行技術に係る従来の冷却法では、共通の冷却板を介した冷却を可能にするために、横方向においてチップを互いに隣合うように設ける。積層されたチップは、両面冷却または共通のインターポーザを介した冷却を必要とする。多層DBCを介した冷却では、DBC層の熱抵抗が高いほど効率が低下する。
【0045】
しかしながら、上述のようなパワー半導体モジュールの構成によると、良好な耐熱性を実現可能である。MOSFETなどのトランジスタの熱抵抗は、先行技術に係る標準的なDBC系基板の熱抵抗に等しい。ダイオードの熱抵抗は、DBC層など追加的な層が存在する可能性があるために、わずかに低くなり得る。しかしながら、スイッチング損失がトランジスタまたはスイッチにおいてそれぞれほぼ排他的に蓄積するため、これはスイッチングの速い半導体モジュールにとっては許容できるものであり、深刻な冷却問題を引き起こすことはない。したがって、ダイオードは冷却装置に直接隣接しないように配置可能であるが、上述のようなパワー半導体モジュールの熱挙動は大幅に悪化しない。
【0046】
ここで述べられたようなパワー半導体モジュールの熱抵抗は、先行技術に係る従来の多層パワーモジュールと比較して大幅に低くなる。さらに、フリップチップが厳密に必要とされるわけではないため、全てのチップはそれらの裏面を通じた最大限の伝熱面積で冷却可能である。
【0047】
加えて、ダイオードは追加的にパワー端子を通じて冷却され、これによって、パワー半導体モジュールの熱挙動をさらに改善することが可能である。
【0048】
上述したものとは別に、モジュールレイアウト自体は、本発明のパワーエレクトロニクスモジュールと両立する。特に、電気端子をパワーモジュールの上部に設けることも依然として可能である。さらに、モジュールを、接地可能な共通のベースプレートを通じて従来のように冷却可能である。
【0049】
したがって、上述のようなパワー半導体モジュールを、たとえば上部接続のためのワイヤボンド接続など、従来の組立技術および標準的な実装技術を使用して組み立てることが可能である。
【0050】
ある実施形態によると、多層基板の代わりに、上部にアイランドとして追加された他の層を有する2層基板を使用すれば十分であり得る。したがって、組み立てが容易になり得る。
【0051】
そのようなパワー半導体モジュールはさらに、端子配列および冷却に関して、既存のパワーエレクトロニクス実装配置と互換性を有する。上述のように、状況によってはチップのフリッピングはパワー半導体モジュールにおいて有利になり得るが、チップまたはトランジスタをそれぞれフリップするための要件は示されていない。
【0052】
ほとんどの実用的なパワーエレクトロニクスコンバータの接続形態において、スイッチは損失のほとんどを被らなければならない。既に最先端のSiCまたはGaNショットキーダイオードの場合、ダイオードにおける逆方向のリカバリー損失は大幅に減少され、その結果、損失の分布の不均衡が大きくなる。
【0053】
要約すると、上述のようなパワー半導体モジュールによって、多層基板から3D実装構造を用いて、良好な熱特性を有する低誘導パワーモジュールが可能になる。
【0054】
ある実施形態によると、第1の基板が冷却装置に接続され、そのため、同装置に熱接触する。本実施形態によると、パワー半導体モジュールの熱挙動を特に効果的に高め得る。詳細には、トランジスタまたはスイッチはそれぞれ第1の基板またはその基板金属被覆上に設けられているため、冷却効果は、強度の冷却を必要とするそのようなパワー半導体デバイスにとって特に効果的である。パワー半導体トランジスタとは対照的に、半導体ダイオード上の損失密度が小さいと、低い冷却能力で動作可能であり、ダイオードと冷却装置との間に他の層を設けることが不利益でなくなる。
【0055】
冷却装置に関して、後者は、たとえば従来のベースプレートであり得る。しかしながら、冷却装置が上述のような例に限定されないのは当然である。さらに、ベースプレートなどの冷却装置は、基板の底面側において設けられている金属被覆またはそのセラミック主要層にそれぞれ固定可能であるのに対し、当該技術で一般に知られているように、トランジスタは上側金属被覆に設けられる。当業者が上記の説明から明確に認識するように、基板が、たとえばメタリック板で形成されている場合、同じことが同様に当てはまり得る。
【0056】
別の実施形態によると、パワー半導体デバイスはPセルとNセルとのうちの少なくとも一方を形成する。したがって、本実施形態によると、PセルとNセルとのうちの少なくとも一方がパワー半導体モジュールに設けられる。PセルまたはNセルはそれ自体パワー半導体モジュールに基づいて電気デバイスを形成するための基本的な動作ブロックであり得るため、これには特に有利であり得る。いくつかの用途では、たとえば一方向のエネルギーの流れを有するDC/DCコンバータでは、PセルまたはNセルのみが必要であり、例示的に、完全なハーフブリッジモジュールの必要性はない。
【0057】
したがって、特にパワー半導体デバイスがPセルとNセルとのうちの少なくとも一方を形成する場合、幅広い応用範囲が可能になり、本発明に係るパワー半導体モジュールを多くの用途で使用することができる。
【0058】
別の実施形態によると、パワー半導体デバイスはPセルとNセルとの双方を形成する。Pセルのパワー半導体デバイスは導電性構造上に配置され、Nセルのパワー半導体デバイスは導電性構造上に設けられる。Pセルの導電性構造は、Nセルの導電性構造と分離されている。言い換えると、PセルとNセルとは、金属被覆などの異なる導電性構造を用いて配置されている。したがって、パワー半導体デバイスを担うために用いられるPセルとNセルとのそれぞれの導電性構造は、それぞれ異なるセルの導電性構造から分離されており、それぞれ異なるセルの構造自体は機械的接触を有していない。PセルとNセルとは接続されてハーフブリッジモジュールを形成可能であるため、間接的な電気的接点が存在し得る。しかしながら、構造自体は分離されているため、互いに電気的に絶縁され、空間的に分離されている。
【0059】
Pセルのパワー半導体デバイスは少なくとも1つの基板上にまたは複数の基板上に配置することが可能である。Pセルの少なくとも1つの基板または複数の基板は、Nセルのパワー半導体デバイスを位置決めするために使用される少なくとも1つの基板または複数の基板から分離されている。PセルおよびNセルの基板は、これによって同様に形成し得る、または、互いに異なり得る。同様に、PセルおよびNセルの各々はトランジスタのための基板およびダイオードのための基板を含み得る、または以下で詳細に説明するように、トランジスタのための基板もしくはダイオードのための異なる支持体を設け得る。
【0060】
PセルおよびNセルの分離を示す本実施形態によって、とりわけ容易にハーフブリッジモジュールを形成可能である。詳細には、ハーフブリッジモジュールを、PセルとNセルとの各々を並列に組み合わせることによって、コンバータなどのパワーエレクトロニクスのためのスイッチと逆平行ダイオードとの組合せによって形成可能である。
【0061】
この方法によると、整流路においてパッケージ外部の配線の必要性を減らすことによって、コンバータの実現において浮遊インダクタンスが大幅に減少する。
【0062】
上述のようなPセルとNセルとの分離の別の利点は、トランジスタまたはスイッチのそれぞれを常にそれぞれの第1の基板上に配置可能であるということであり、上述のように、パワー半導体モジュールの冷却、したがって熱挙動が改善される。
【0063】
別の利点としては、基板ごとに1つのゲート制御信号しか必要としない。これによって、簡単でよりフレキシブルな基板およびモジュール設計が可能になり、容易に基板を平行に並べることが可能になる。
【0064】
これによって、上述の利点は、モジュールの性能を損なうことなく実現可能である。
本発明によると、少なくとも第1の基板はダイレクトボンド銅基板(DBC基板)を基材としている。ダイレクトボンド銅基板は、たとえば通常アルミナから形成されるセラミックタイル、または他の上述の基板材料を主成分として構成され、片面または両面に銅シートが高温酸化プロセスによって接着されている。セラミックタイルは基板主要層として機能し、銅は基板金属被覆として機能する。銅をPCB技術を用いてエッチングして電気回路を形成可能である。そのような基板は、形成がとりわけ容易であり、さらに、モジュールの熱挙動について利点を有する。これとは別に、特にDBC基板は広い応用範囲およびモジュールの形成に関する設計の応用について利点を示している。詳細には、DBC基板を所望の適用範囲に容易に応用可能である。したがって、上述のようなパワー半導体モジュールをきわめて容易に形成および応用可能である。
【0065】
2つのダイレクトボンド銅基板、すなわち、第1の基板および第2の基板は、相互に積層可能である。この意味で、第1の基板の隣に、ダイオードを担うための第2の基板が設けられ、第1の基板の上に位置している。この点に関して、第1および第2の基板は双方ともきわめて容易に形成可能であり、DBC基板に関して説明したような利点をもたらし得る。これら2つのダイレクトボンド銅基板によると、2つのセラミック基板または基板主要層をそれぞれ設けることが可能であり、3つのメタリック層または金属被覆層を、各基板上方に、基板間に、および基板下方にそれぞれ設けることが可能である。基板間のメタリック層は2つの副層によって形成可能であり、副層の各々は、積層された基板の上部または下部金属被覆から始まっている。
【0066】
下部金属被覆を、たとえばベースプレートに対して熱伝導性接続をもたらすために設けることができる。さらに、ベースプレートに対して容易に固定可能である。これによって、ダイオードを担うための上部DBC基板は、たとえば下部基板または第1の基板のそれぞれの上に設けられているアイランド形状のように、第1の基板と比較して小さな延在範囲を有し得る。これにより、空間要件が低くなり得、それぞれのパワー半導体デバイスの位置決めおよび接続が容易になり得る。たとえば、トランジスタを上部基板の隣に配置可能である。追加的なDBC層を、たとえば半田付け、焼結、またはろう付けによって接着可能である。したがって、上部DBC層がその上部側および下部側の双方に金属被覆を含むことは、有利であり得る。
【0067】
本発明によると、第1の基板はトランジスタを担うためのダイレクトボンド銅基板であり、この第1の基板上に、ダイオードを担いまたは支持するためにプリント回路基板(PCB)の層が設けられる。同様に、これは上述のようなパワー半導体モジュールを形成するためのきわめて簡単な実施形態である。実際、PCB技術は深刻な問題を生じることなく、モジュールを形成するためのそれぞれの手順に統合可能である。PCB層も同様に設けることが可能なため、第1の基板と比較して小さな寸法を有し、同様に第1の基板上にアイランド状に形成可能である。追加的なPCB層を低温半田付けもしくは焼結によって接着可能である、または、特に導電性接着剤を用いて接着可能である。当該技術で一般に知られているように、PCB層はエポキシ材料から形成されているような非導電性基板を含み、その上に、銅構造などの導電性構造が位置し得る。金属被覆を非導電性基板の上面および下面上に形成することが可能である。上部支持体の金属被覆はチップを支持し、それらに電気的に接続する。下部の金属被覆は、たとえば第1の基板の上部金属被覆上でのろう付け、焼結、接着のために使用される。一般に、絶縁材料ではなくメタリック材料を特に熱的に接続することが容易になり得る。特にこの場合、導電性接着剤は有利になり得る。
【0068】
本発明によると、上述のPCB層の代替として、第1の基板はトランジスタを担うためのダイレクトボンド銅基板であり、この第1の基板上に、ダイオードを担いまたは支持するためにホイルが設けられる。ホイルは、電気絶縁本体とダイオードを担うためにその上に設けられた導電性構造とを含む。ホイルは、たとえば半田付けまたは焼結によって接着可能である。同様に、ダイオードのための第2のキャリアをきわめて容易に形成可能であり、この形成は、深刻な問題を生じることなくプロセスに統合可能である。本実施形態に係るホイルは、ポリエステル、またはデュポン(DuPont)によってカプトン(Kapton)(登録商標)という名称で市販されているようなポリイミドなどの電気絶縁材料から形成されているプラスチック本体を含み得る。本体は、裏面金属被覆または底面側金属被覆によって下側基板に良好に固定するために、さらに、表面側金属被覆または上面側金属被覆によってダイオードを電気的に接続するために、上側および場合によっては底面側に、銅から形成されているような1つ以上の金属被覆を含み得る。
【0069】
別の実施形態によると、トランジスタをワイドバンドギャップ半導体を基材として形成する。特にワイドバンドギャップ半導体に関して、良好なスイッチング挙動を維持するために、浮遊インダクタンスを減らすべきである。したがって、上述のようなパワー半導体モジュールは、パワー半導体トランジスタに存在しているそのようなワイドバンドギャップ半導体にとって特に有利である。そのような半導体デバイスは、たとえば炭化ケイ素(SiC)または窒化ガリウム(GaN)系である。「ワイド」バンドギャップ半導体は少なくとも3eVのバンドギャップを有する材料を指すことが典型的であるが、これは一例であり、これに限定されるわけではない。そのようなバンドギャップは、通常用いられている半導体のバンドギャップ、たとえばシリコンのバンドギャップ(1.1eV)またはヒ化ガリウムのバンドギャップ(1.4eV)などよりも著しく大きい。
【0070】
別の実施形態によると、パワー半導体モジュールは、少なくとも1つのインターポーザを備える。インターポーザは、特に、たとえばモリブデンなどの、冷却機能を有するメタリックブロックで形成可能な冷却器である。インターポーザを設ける場合、それぞれのパワー半導体デバイスを担う基板は、インターポーザの複数の側に、したがって、例示的にインターポーザの下側および上側に配置可能であり、インターポーザはそれぞれの基板平面に対して垂直方向において2つの基板間に位置する。本実施形態に関して、特にトランジスタおよびダイオードを上述のように異なる平面に位置させることによって、上述の利点がインターポーザの使用によって著しく強化され得る。
【0071】
それとは別に、特に上述のようなP/Nセル分離を有するモジュールは、たとえば自動車用途などの、インターポーザを有するパッケージにきわめて有益である。なぜなら、P/Nセル分離によって、浮遊インダクタンスがインターポーザの厚さおよび素材に依存しなくなるからである。したがって、浮遊インダクタンスが減少するという上述の利点を、インターポーザと効果的に組み合わせることが可能であり、したがって、非常にフレキシブルで容易なモジュール設計には利点がある。
【0072】
さらに、基板がたとえばインターポーザの使用によって互いに離して設けられている場合、特にP/Nセル分離が設けられている上述のような実施形態、本実施形態は非常に有利であり得る。なぜなら、1つのゲート制御信号のみをインターポーザの下側に経由させればよいからである。したがって、モジュール設計を大幅に簡略化できる。
【0073】
本発明の主題の追加的な特徴、特性、および利点が、下位クレーム、図面、ならびに以下のそれぞれの図面および例の説明で開示され、それらは、本発明に係る半導体モジュールの実施形態および例を、例示的な態様で示す。