特許第6739455号(P6739455)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6739455
(24)【登録日】2020年7月27日
(45)【発行日】2020年8月12日
(54)【発明の名称】無水生体適合性複合材料
(51)【国際特許分類】
   A61L 27/18 20060101AFI20200730BHJP
   A61L 27/58 20060101ALI20200730BHJP
   A61L 27/40 20060101ALI20200730BHJP
   A61L 27/12 20060101ALI20200730BHJP
   C08G 63/664 20060101ALI20200730BHJP
   C08G 81/00 20060101ALI20200730BHJP
   C08L 67/04 20060101ALI20200730BHJP
   C08L 87/00 20060101ALI20200730BHJP
   C08K 3/32 20060101ALI20200730BHJP
【FI】
   A61L27/18
   A61L27/58
   A61L27/40
   A61L27/12
   C08G63/664
   C08G81/00
   C08L67/04
   C08L87/00
   C08K3/32
【請求項の数】12
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2017-566602(P2017-566602)
(86)(22)【出願日】2016年3月14日
(65)【公表番号】特表2018-512983(P2018-512983A)
(43)【公表日】2018年5月24日
(86)【国際出願番号】NL2016050182
(87)【国際公開番号】WO2016144182
(87)【国際公開日】20160915
【審査請求日】2018年8月16日
(31)【優先権主張番号】2014446
(32)【優先日】2015年3月12日
(33)【優先権主張国】NL
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】516017271
【氏名又は名称】クロス・バイオサイエンシズ・ベー・フェー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】フローレンス・デ・フロート−バレール
(72)【発明者】
【氏名】ダヴィデ・バルビエリ
(72)【発明者】
【氏名】ディルク・ウィベ・グレイプマ
(72)【発明者】
【氏名】ヨースト・デ・ブラン
【審査官】 菊池 美香
(56)【参考文献】
【文献】 特表2011−520557(JP,A)
【文献】 特表2007−513252(JP,A)
【文献】 KATO M; ET AL,ECTOPIC BONE FORMATION IN MICE ASSOCIATED WITH A LACTIC ACID/DIOXANONE/ETHYLENE GLYCOL 以下備考,BIOMATERIALS,英国,ELSEVIER SCIENCE PUBLISHERS BV.,2006年 7月 1日,VOL:27, NR:21,PAGE(S):3927 - 3933,COPOLYMER-TRICALCIUM PHOSPHATE COMPOSITE WITH ADDED RECOMBINANT HUMAN BONE MORPHOGENETIC PROTEIN-2,URL,https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0142961206002432
【文献】 nature biotechnology, 2001, Volume 19, p.332-335
【文献】 Advanced Drug Delivery Reviews, 2002, Vol.54, p.99-134
【文献】 Journal of Biomaterials Science, 2012, Vol.23, p.1687-1700
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 27/18
A61L 27/12
A61L 27/40
A61L 27/58
C08G 63/664
C08G 81/00
C08K 3/32
C08L 67/04
C08L 87/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生分解性ポリマー材料及び粒状合成材料を含む無水生体適合性複合材料であって、ポリマー材料は少なくとも1つのブロックコポリマーから本質的になり、少なくとも1つのブロックコポリマーは式(I)
Xn-Bq-Ap-Bq-Xm-[Bq-Ap-Bq]l (I)
(式中;
A及びBは、独立して、エチレンオキシド又はプロピレンオキシドであり;
Xは、乳酸であり;
lは、0又は1、好ましくは0であり;
mは、1〜25であり;
nは、m又は0であり;
pは、2〜150であり;
qは、0〜100であり;
l+nは、0超である)
によるポリマーであり、粒状合成材料は、骨伝導性、好ましくは骨誘導性である、無水生体適合性複合材料。
【請求項2】
lは0であり、nはmである、請求項1に記載の無水生体適合性複合材料。
【請求項3】
lは1であり、nは0である、請求項1に記載の無水生体適合性複合材料。
【請求項4】
mは2〜10、好ましくは3〜7であり;pは6〜100、好ましくは40〜50であり;及び/又はqは0〜50、好ましくは0〜19である、請求項1から3のいずれか一項に記載の無水生体適合性複合材料。
【請求項5】
粒状合成材料はリン酸カルシウムを含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の無水生体適合性複合材料。
【請求項6】
1H NMRによって決定される、(n+m)の(p+q)に対する実際の比は、0.36未満であり、好ましくは0.30未満であり、より好ましくは0.01〜0.25の間であり、なおより好ましくは0.05〜0.15の間であり、最も好ましくは約0.10である、請求項1から5のいずれか一項に記載の無水生体適合性複合材料。
【請求項7】
ポリマー材料は、好ましくは請求項1に規定した式による、2つ以上のブロックコポリマーのブレンドから本質的になり、より好ましくは式中のmはnであり;l及びqは0である、請求項1から6のいずれか一項に記載の無水生体適合性複合材料。
【請求項8】
15〜40℃の典型的な温度でその形状を保持する、注射可能、展性及び/又は混練性の非粘着性パテである、請求項1から7のいずれか一項に記載の無水生体適合性複合材料。
【請求項9】
γ線又は電子ビームによって滅菌される、請求項8に記載の無水生体適合性複合材料。
【請求項10】
医薬としての使用のための、好ましくは組織工学のための、特に結合組織及び/又は骨の減少化又は欠損の処置のための、請求項1から9のいずれか一項に記載の無水生体適合性複合材料。
【請求項11】
少なくとも1つの親水性ブロック及び少なくとも1つの疎水性ブロックを含む1つ又は複数のブロックコポリマーから本質的になる、生分解性ポリマー材料の滅菌のための方法であって、生分解性ポリマー材料が、γ線又は電子ビームによって照射され、1つ又は複数のブロックコポリマーは、式(I)
Xn-Bq-Ap-Bq-Xm-[Bq-Ap-Bq]l (I)
(式中;
A及びBは、独立して、エチレンオキシド又はプロピレンオキシドであり;
Xは、乳酸であり;
lは、0又は1、好ましくは0であり;
mは、1〜25であり;
nは、m又は0であり;
pは、2〜150であり;
qは、0〜100であり;
l+nは、0超である)
によるポリマーである方法。
【請求項12】
請求項1から10のいずれか一項に記載の無水生体適合性複合材料を含む、所望の形状に無水生体適合性複合材料を成形し、それを骨の減少化又は欠損の部位に配置することによって、骨の減少化又は欠損を処置するための組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組織再生等の医療用途のための生体適合性複合材料を対象にする。特に、本発明は、骨の喪失又は骨の欠損の処置に使用されうる生体適合性複合材料を対象にする。
【背景技術】
【0002】
組織再生の方法は、自家移植及び同種移植のドナー組織、すなわち、天然のドナー組織に主として依存している。自家移植に基づく骨再生方法では、患者自身からの骨が、骨の減少化又は欠損の部位に配置される。この技術の不都合は、置き換える骨の除去部位での著しいドナー部位の病的状態及び/又は疼痛である。更に、利用可能な自家移植骨の量は、制限される。自家移植に対する生物学的な代替物には、同種移植物(ドナー対象又は動物から採取された骨、すなわち、異種移植片)、脱塩骨基質(DBM)、成長因子(例えば、骨形成タンパク質、BMP)、又は細胞ベース産物が含まれる。骨に由来する方法の欠点は、病気がうつること及び/又は免疫応答のリスク並びにDBM及びBMPを用いる高コストである。
【0003】
代替法が台頭してきており、天然の骨移植片に依存する上記の方法が置き換えられている。これらの代替法は、リン酸カルシウム(CaP)セラミックスを含む等の、粒状合成材料(例えば、バイオガラス、セラミックス、ポリマー)を一般的に利用する。これらの粒状合成材料は、一般に生体活性である。これは、それらが、新しい組織のために必須な材料供給を含み且つそれを提供する及び/又は新しい組織の形成を更に刺激する、支持を提供し、フレームワークをガイドすることによって新しく形成された組織を支持することを意味する。骨修復の分野では、この生理活性は、骨伝導(osteoconduction)及び特定の場合、骨誘導(osteoinduction)とも呼ばれる。
【0004】
骨伝導性である粒状合成材料とは、新しく形成された骨が、骨成長のための足場として作用する粒状合成材料によってガイドされることを意味する。骨伝導を生じさせるために、骨芽細胞は、新しい骨を成長させて、形成させるフレームワークとして合成材料を使用する。
【0005】
骨誘導性である粒状合成材料とは、粒状合成材料が、骨芽細胞を提供するための天然の骨が存在しない場所であっても、新しい骨形成を刺激することを意味する。骨誘導は、前骨芽細胞(osteoprogenitor cell)の骨芽細胞への分化に関与する。これらの骨芽細胞は、次に、上記で説明されているように骨成長のためのフレームワークとして粒状合成材料を用いることによって新しい骨を形成しうる。
【0006】
これらの粒状合成材料の用途に関して、これらが骨の減少化又は欠損の部位に配置される及び骨が粒状合成材料中で成長する場所に残ることが重要である。これは、粒状合成材料の担体としてポリマー材料を用いることによって一般的に達成される。担体は、バインダーとも呼ばれる。粒状合成材料の再構築特性を保持するため、ポリマー材料が適用部位で急速に分解されることが重要である。したがって、ポリマー材料は、好ましくは生分解性ポリマー材料である。
【0007】
粒状合成材料の骨再構築特性は、おそらく合成材料の表面のミクロン及びサブミクロン構造に起因することが一般に承認される。特異的なミクロン及びサブミクロン表面構造を有する粒状合成材料を含む特定のCaPが、骨誘導特性も有することが知られている。更に、長期の水性条件が材料の表面のミクロン及びサブミクロン構造に影響しうること及び粒状合成材料の再構築特性が喪失されうることが知られている。それ故、粒状合成材料の再建特性は重要であるため、その表面構造は材料の貯蔵等の間に無傷のまま残されている。したがって、粒状合成材料の組成物及び生分解性ポリマー材料は、無水であることが好ましい。生分解性ポリマー材料が無水である場合、生分解性ポリマー材料の組成物及び粒状合成材料の組成物は、粒状合成材料の有効性を失うことなくより長期間一緒に保管しうる。
【0008】
EP-A-0714666は、ポリマー担体が、モノマーε-カプロラクトン及びグリコリドからのコポリマー(すなわち、1つのタイプを超えるモノマーに基づくポリマー)である、合成材料の組成物及びポリマー担体を記載している。これらのコポリマーの欠点は、これらが所望の速度の分解を示さないことである。したがって、担体は、骨誘導等に関して適切度が低い。更に、これらのタイプのポリマーは、ガンマ又は電子ビーム照射以外の方法によってのみ滅菌されうる、その理由は、照射に際してコポリマーが分解されてコポリマー材料を担体として不適切にするからである。このことは、特に、類似するコポリマーが実際に照射によって自発的に分解する、EP-A-0050215から明らかとなっている。
【0009】
WO2011/009635は、ポリオキサマー(polyoxamer)及び多糖等の生分解性ホモポリマー(すなわち、1つのタイプのモノマーに基づくポリマー)を含む、合成材料の組成物及び担体を記載している。しかしながら、これらのホモポリマーも、照射性滅菌条件に耐えない。例えば、ポリエチレングリコールに関して、ガンマ線での照射がポリマーの架橋結合をもたらし、これにより材料の特性に影響し、それが担体として作用することを不適切にすることが知られている。更にまた、多糖、例えば、カルボキシメチルセルロースが、照射によって酸化され、修飾された材料特性をもたらすことが知られている。
【0010】
Katoら、Biomaterials 27(2006)3927〜3999頁は、ランダムに挿入したp-ジオキサノン(dioxanone)(DX)及びポリ(エチレングリコール)(PEG)を有するポリ(乳酸)(PLA)のブロックコポリマーとベータ-リン酸三カルシウム(β-TCP)粉末及びrhBMP-2の組合せのパテを開示する。しかしながら、これらの複合材料の欠点は、このブロックコポリマーが、それらの元の質量の>90%を10日まで保持することが知られていることである(例えば、Saitoら、Nature Biotechnology 19(2001) 332〜335頁を参照されたい)。
【0011】
Hoshinoら、Journal Orthopaedic Research(2770)1042〜1051頁は、PLA及びPEGのブロックコポリマーとβ-TCP及びrhBMP-2のパテを開示する。しかしながら、使用されたブロックコポリマーは、所望の速度の生分解を有しておらず、取扱性質がさほど都合のよいものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】EP-A-0714666
【特許文献2】EP-A-0050215
【特許文献3】WO2011/009635
【特許文献4】WO2015/009154
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Katoら、Biomaterials 27(2006)3927〜3999頁
【非特許文献2】Saitoら、Nature Biotechnology 19(2001)332〜335頁
【非特許文献3】Hoshinoら、Journal Orthopaedic Research(2770)1042〜1051頁
【非特許文献4】Rahamanら、Acta Biomateralia 2011(6)2355〜2373頁
【非特許文献5】Davison N.L.ら、(Acta Biomaterialia、2012年7月;8(7):2759〜2769頁)
【非特許文献6】Barbieri Dら、(Acta Biomaterialia、2011年5月;7(5):2007〜2014頁)
【非特許文献7】M.H. Gold、Clin. Interv. Aging 2007年9月;2(3):369〜376頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
無水条件下で粒状合成材料の担体として作用し、ガンマ照射に耐性であり、所望の機械的な特性及び生分解の速度を示す生分解性ポリマー材料を有することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、驚くべきことにこれらの必要性を満たす生分解性ポリマー材料を見出した。
【0016】
本発明は、生分解性ポリマー材料及び粒状合成材料を含む無水生体適合性複合材料であって、ポリマー材料は少なくとも1つのブロックコポリマーから本質的になり、少なくとも1つのブロックコポリマーは式(I)
Xn-Bq-Ap-Bq-Xm-[Bq-Ap-Bq]l (I)
(式中;
A及びBは、独立して、メチレンオキシド、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、ジオキサノン又はフェニルオキシド、好ましくは、エチレンオキシド又はプロピレンオキシドであり;
Xは、ポリアミド、ポリエステル、ポリウレタン、ポリカーボネート又はポリエステル単位、好ましくは、ポリエステル単位、より好ましくはヒドロキシブチレート、乳酸、グリコリド、γ-ブチロラクトン、δ-バレロラクトン又はε-カプロラクトン、最も好ましくは乳酸であり;
lは、0又は1、好ましくは0であり;
mは、1〜25であり;
nは、m又は0であり;
pは、2〜150であり;
qは、0〜100であり;
l+nは、0超である)
によるポリマーである。
【0017】
式(I)の表記において、Ap及びBqは親水性ブロックであり並びにXn及びXmは疎水性ブロックである。したがって、本発明のブロックコポリマーは、少なくとも1つの親水性ブロック及び少なくとも1つの疎水性ブロックを含む。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】PBS中の未滅菌試料についての溶解試験の結果を示している。
図2】PBS中の未滅菌試料についての溶解試験のさらなる結果を示している。
図3】流体取り込み、質量減少化及び平均寸法変化について結果を示している。
図4】LPGLベースのパテに関する結果を示している。
図5】未滅菌のもの(図1)と類似しているように見える、選択したパテの溶解行動を説明している。
図6図6Aは、滅菌パテの初期形状及びサイズを示している。全ては、滅菌後に顆粒を保持し、形状を維持した。しかしながら、Table 15(表15)に報告されているように、それらは異なる取扱特性を有していた。図6Bは、PBS中での32分後のパテを示している。PEGに基づくバインダーを有するそれらパテは、崩壊が開始されたことから、バインダー溶解を急速に引き起こすことを示している。図6Cは、1時間後の複合材料を示し:全てのPEGベースのパテは、ほとんどの顆粒を放出した(中央ブロックはなおも耐えていることが観察される:それは次の1時間の間に消失する)。
図7】イヌ2の各複合材料及び組織学的な分析についての詳細な顕微鏡写真を示している。
図8】パテの溶解試験の主なエンドポイントを示している。
図9】コポリマー物理的特性におけるL/EO比の効果を評価した結果を示している。
図10】ラクチド含有量に応じた処方物の物理的な外観を示している。
図11】ラクチドの含有量を変動させることにより、異なる物理的な性質を有するブレンドがもたらされたことを示している。
【発明を実施するための形態】
【0019】
用語「から本質的になる」は、ポリマー材料が、一般的に少なくとも90wt%、より好ましくは少なくとも95wt%、最も好ましくは少なくとも99wt%の1つ又は複数の前記ブロックコポリマーからなることを意味する。
【0020】
簡潔さのために、無水生体適合性複合材料は、本明細書では、複合材料とも呼ばれる。粒状合成材料は、本明細書では、顆粒とも呼ばれる。
【0021】
粒状合成材料
本発明による無水生体適合性複合材料は、組織修復の分野等における医薬として適用可能である。複合材料は、結合組織及び/又は骨の減少化又は欠損の処置に特に適用しうる。
【0022】
好ましくは、粒状合成材料は、骨伝導性である。発明者らは、驚くべきことに、ポリマー材料が骨伝導性の粒状合成材料と組み合わされることが特に適切であることを見出し、その理由は、ポリマー材料が特にその生分解特性によるものであり、骨再生及び骨誘導を阻害しないからである。
【0023】
さらなる好ましい実施形態では、無水生体適合性複合材料は、骨誘導性である。これは、無水生体適合性複合材料が、骨誘導性である1つ又は複数の材料を含むことを意味する。無水生体適合性複合材料の骨誘導特性は、例えば、骨形成タンパク質(BMP)及び/又は他の成長因子の添加によって達成されうる。なおさらなる好ましい実施形態では、粒状合成材料は、本質的に骨誘導性である。これは、粒状合成材料自体が骨芽細胞の形成を刺激し、したがって、非骨環境(例えば、骨誘導性セラミックス、脱塩骨基質-DBM)においてさえも新しい骨の形成を刺激することを意味する。
【0024】
全体が本明細書に組み込まれる、WO2015/009154は、骨誘導性であるリン酸カルシウムCaPに基づく粒状合成材料を記載している。特に本発明の生分解性ポリマー材料が、WO2015/009154に記載されるように粒状合成材料の骨誘導特性を維持するため適切であることが見出された。
【0025】
本発明による粒状合成材料は、リン酸カルシウム、生体活性ガラス等を含んでもよい。Rahamanら、Acta Biomateralia 2011(6)2355〜2373頁は、本発明に適切である組織工学のための種々の合成材料を論評している。粒状合成材料は、粒状セラミック材料であってもよい。好ましくは、粒状合成材料は、リン酸カルシウムを含む。このような粒状合成材料は、組織再生に特に適切であることが証明されている。
【0026】
特定の粒状合成材料の骨誘導特性は、一般にそれらの特異的なミクロン及びサブミクロン表面構造に起因する。水は、この構造に影響し得、それによって、粒状合成材料の骨誘導特性に影響しうる。また、粒状合成材料の他の特性は、水の存在によって影響されうる、その理由は、合成材料が、例えば、水によって部分的に溶解されるからである。更に、水が他の因子、すなわち、BMPs及びDBMの骨誘導性ポテンシャルにも影響しうることが知られている。したがって、生体適合性複合材料は、骨伝導及び骨誘導特性等の低下を防止又は制限するために無水である。したがって、本発明における無水は、環境の粒状合成材料が、生体適合性複合材料が有効なままで残り、したがって適用可能であるように、粒状合成材料の生物活性の低下を制限する化学的な及び構造上の特性を十分に保持するため粒状合成材料に関して十分に無水であることを意味する。これは、例えば、本発明のポリマー材料で形成することもできるヒドロゲルと対照的である。
【0027】
生分解性ポリマー材料
本発明による生分解性ポリマー材料は、好ましくは48時間未満の生理的条件下で分解される。Davison N.L.ら(Acta Biomaterialia、2012年7月; 8(7): 2759〜2769頁)及びBarbieri Dら(Acta Biomaterialia、2011年5月;7(5): 2007〜2014頁)から、生分解性ポリマー材料が48時間内に分解される場合、粒状合成材料の骨誘導特性が喪失されないことが知られている。また、骨伝導について、ポリマー材料が48時間内に分解されることが好ましい。複合材料について、生分解性ポリマー材料は、粒状合成材料の間の隙間及び材料のミクロン及びサブミクロン構造の結果として生ずる顆粒内の隙間は一般的に充填される。骨再生の目的のため、例えば、骨再生に必要とされる、骨芽細胞及び前骨芽細胞のみならず血液細胞及び他の細胞も、前記隙間に浸透して新しい骨構造を形成できることが必須である。分解が1時間内に生ずる場合、一般的に湿った環境である処置の部位で無水生体適合性複合材料を適用する十分な時間がないであろう。したがって、より好ましくは、ポリマー材料は、10分間超、最も好ましくは1/4時間と48時間の間の時間で分解される。
【0028】
ポリマー材料の生分解は、ポリマー材料が、粒状合成材料の有効性を阻止しないような様式で、適用部位で分解する、崩壊する、再吸収する及び/又は溶解することを意味する。細菌、細胞及び/又は酵素が関与するかどうか等の、生分解の正確な機構は、無関係である。生分解は、例えば、水の存在のみにおいて単純に生じうる。分解に必要とされる時間は、本発明による複合材料が、リン酸緩衝食塩水(PBS)又は別の均等な等張液中で約37℃の温度で振盪せずに浸漬される、試験によって決定されうる。複合材料の生分解は、目視検査によってモニターされてもよい。
【0029】
本発明による無水生体適合性複合材料は、好ましくは、15〜40℃の典型的な温度でその形状を保持する、注射可能、展性及び/又は混練性の非粘着性パテである。このようなパテは、複合材料が、骨修復に使用される場合に特に有利である。複合材料の物理的特性は、盲検試験に複合材料を供することによって決定され得、これにはTable 1(表1)に設定されるパラメータに従った複合材料のスコアリングが関与しうる。盲検試験は、三者以上の当業者によって一般的に実施され、各者に関して、最終的なスコア(FS)はFS=M+R+H+S+O+RGとして計算される。好ましくは、最終的なスコアは、15を超える、より好ましくは20を超える、最も好ましくは22を超える。一者を超えて試験が実施される場合、全ての最終的なスコアの平均が、計算され、パテを評価するため使用される。それ故、一者を超える当業者が盲検試験を実施する場合、全ての最終的なスコアの平均における最終的なスコアであることが理解される。
【0030】
【表1】
【0031】
本発明の別の実施形態では、複合材料は、結合組織、例えば、皮膚を処置するために使用されうる。結合組織の加齢に際して、典型的には、顕著なたるみ、しわ及び/又は微細な筋を示し始める。本出願の無水生体適合性複合材料は、結合組織の加齢の症候を処置する又は防止するため使用しうる真皮フィラーであってもよい。真皮フィラーの物理的特性は、注射可能、展性及び/又は混練性の非粘着性パテと比較して、同じであっても異なっていてもよい。生分解性ポリマーの他に、真皮フィラーは、結合組織の処置に一般的に使用される他の成分を更に含んでもよい。これらの例は、コラーゲン、ヒアルロン酸フィラー並びにRestylane(登録商標)、Sculptra(登録商標)及びRediesse(登録商標)(M.H. Gold、Clin. Interv. Aging 2007年9月; 2(3): 369〜376頁)等の公知の真皮フィラー中に見出される他の成分である。
【0032】
驚くべきことに、少なくとも1つの親水性ブロック及び少なくとも1つの疎水性ブロックを含む1つ又は複数のブロックコポリマーから本質的になる生分解性ポリマー材料が、滅菌目的のためのγ照射及び電子ビーム照射に対して特に耐性であることが見出された。これは、複合材料の取扱特性(例えば、Table 1(表1)の盲検試験によって決定されるような)が、照射後に有意に変化しなかったことを特に意味する。これは、WO2011/009635に開示されているもの等、ブロックコポリマーに基づいていない他のポリマー材料と強調して対比される。ポリ(エチレングリコール)(PEG)はγ照射に際して架橋結合するが、例えば、ポリ乳酸(PLA)及びカルボキシメチルセルロース(CMC)はγ照射に際して崩壊することが知られている。PEGとPLAのブレンドも、γ照射に際して安定な架橋ではない。架橋結合及び崩壊は、物理的特性、例えば、脆性(例えば、PLAベース又はPEGベースのホモポリマーに関して)、軟化又は更に材料の液化(例えば、CMCベースのホモポリマーに関して)の容認できない変化を一般的にもたらす。驚くべきことに、両方のポリマーのブロックコポリマーは、γ照射及び/又は電子ビーム照射による滅菌に抵抗できる。これは、代替の滅菌法が蒸気処置であるので、無水複合材料に特に有利である。本出願に基づく複合材料の滅菌についての蒸気処置は好ましくない、その理由は、ポリマー材料が、蒸気によって(部分的に)分解しうるからである。更に、粒状合成材料は、蒸気に耐えることができない、その理由は、それらの特定の構造が崩壊して、本明細書の上記で説明されているような生理活性の減少化に至るからである。したがって、粒状合成材料は、別々の滅菌手順を経る必要があるであろう。
【0033】
本発明のさらなる態様は、少なくとも1つの親水性ブロック及び少なくとも1つの疎水性ブロックを含む1つ又は複数のブロックコポリマーから本質的になる生分解性ポリマー材料の滅菌のための方法であって、生分解性ポリマー材料が、医学的な装置に関しての標準用量、すなわち、10〜50kGyのγ線及び/又は電子ビーム、より好ましくは25〜45kGyを用いるγ線及び/又は電子ビームによって照射される方法である。
【0034】
別の実施形態では、全体として無水複合材料は、γ線及び/又は電子ビームによる照射によって滅菌される。
【0035】
本発明による親水性ブロックは、ポリエーテル、好ましくは、ポリオキシメチレン、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(プロピレングリコール)、ポリテトラヒドロフラン、ポリジオキサノン(polydioxanone)、ポリフェニルエーテル、ポロキサマー又はそれらの組合せを一般的に含む。より好ましくは、親水性ブロックは、ポリ(エチレングリコール)又はポロキサマーを含む。
【0036】
ブロックは親水性であると言われる場合、これは、溶解によって適用部位から排除しうるようにブロックが水に可溶性でありうることを意味する。親水性ブロックが、例えば、ポリ(プロピレングリコール)、ポリテトラヒドロフラン、ポリジオキサノン及び/又はポリフェニルエーテルを含む場合、親水性ブロックは、ポリオキシメチレン及び/又はポリ(エチレングリコール)も一般的に含めて、ブロックを親水性、すなわち、水に可溶性にする。ポロキサマー(すなわち、ポリ(エチレングリコール)及びポリ(プロピレングリコール)を含むポリエーテル)は、このような実施形態の例である。標準実験技術を用いることによって、当業者は、本発明に従って親水性ブロックが水に可溶性であるかどうかを容易に決定しうる。
【0037】
本発明による疎水性ブロックは、ポリアミド、ポリエステル、ポリウレタン、ポリカーボネート又はそれらの組合せ、好ましくは、ポリグリコリド又はポリ乳酸を一般的に含む。
【0038】
本発明者らは、短い疎水性ブロックがより良好な物理的特性のポリマー材料をもたらすことを見出した。このような増加した物理的特性の例は、より高い融点(一般的には40℃を超える)であり、これは貯蔵目的、蝋様物との組合せ、成型性、粘着性性質、並びに15分間を超える及び48時間未満の生分解性に有益である。
【0039】
特に良好な結果が好ましい実施形態について得られ、ここで、本発明によるブロックコポリマーは、上記のような式(I)で表されるポリマーであってもよく、式中、mは2〜10、好ましくは3〜7であり;pは6〜100、好ましくは40〜50であり;及び/又はqは0〜50、好ましくは0〜19である。
【0040】
式(I)から、ブロックコポリマーの末端が、親水性ブロック(すなわち、lは1であり、nは0である)又は疎水性ブロック(すなわち、lは0であり、nはmである)であってもよいことが理解されうる。好ましくは、ポリマー末端は、疎水性である。このような実施形態において、ブロックコポリマーは、親水性ポリマーBq-Ap-Bqを提供し、これを次に疎水性ブロックXn及びXmを形成するモノマーとの重合反応において反応させることによって一般的に得られる。環状エステルの場合、この反応は、一般的に開環重合反応である。ポリエーテル ポリ(エチレングリコール)及びポリ(プロピレングリコール)は、それぞれモノマーエチレンオキシド(EO)及びプロピレンオキシド(PO)から一般的に作出される。本発明の文脈では、エチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシドに基づくポリマーは、それぞれエチレングリコール及び/又はプロピレングリコールに基づくポリマーと同じである。
【0041】
単純化及び簡潔さのために、A、B及びXは、ブロックが作られるモノマーによって及びその名をとって本明細書中で規定される。
【0042】
ラクチドが使用される場合、任意の異性体(すなわち、L-ラクチド、D-ラクチド及びmeso-ラクチド)が使用されてもよい。好ましくは、ラクチドは、実質的に1つの異性体であり、より好ましくは実質的にD-又はL-ラクチド及び最も好ましくは実質的にL-ラクチドである。実質的は、ここで、ブロックが、一般的に使用される異性体の90wt%超、好ましくは95wt%超、なおより好ましくは99wt%超からなることを意味する。
【0043】
Apがポリ(プロピレングリコール)でありBqがポリ(エチレングリコール)である特定の実施形態では、ブロックコポリマーの合成は、市販されているポリオキサマーによって開始されてもよい。プルロニック(登録商標)として知られているポリオキサマーが、特に使用されうる。多種多様なプルロニック(登録商標)タイプのポリマー、例えば、P65、F127は、市販されている。プルロニック(登録商標)P65は、例えば、式EO11PO16EO11で表されうる、一方、プルロニック(登録商標)F127は、EO100PO65EO100である。
【0044】
ポリマー化学の場合に典型的であるように、所与のモノマー単位の数は、ポリマーの合成が実施されるモノマーの量に基づくモノマーの数の平均数である。多分散指標(PDI)は、所与のポリマー試料における分子量の分布の尺度(及び、したがって、同様にモノマーの数の分布の尺度)として一般的に使用される。
【0045】
特定の特性、特にTable 1(表1)の盲検試験による取扱特性及び生分解特性は、疎水性ブロックにおいて含有されるモノマーの親水性ブロックにおいて含有されるモノマーに対するモル比によって影響されうることが見出された。ブロックコポリマーが式Iで表される場合、この比は、(n+m)を(p+q)で除算することによって理論的に計算することができる。パラメータn、m、p及びqが重合反応を開始させる材料の量によって決定される場合、理論的な比が計算される。パラメータn、m、p及びqが1H NMR分光学等によって経験的に決定される場合、実際の比が計算されうる。
【0046】
図11では、実際のL/EO比(すなわち、乳酸モノマー(疎水性ブロック)対エチレンオキシドモノマー(親水性ブロック)の比)、融点範囲(Tm)、PEG長及びパテの硬さの間の関係性が描かれている。この図は、実際の比がパテの物理的特性に影響することを示している。
【0047】
特にqが0且つAがエチレンオキシドである場合、実際の比は、好ましくは0.36未満、好ましくは0.30未満、より好ましくは0.01〜0.25の間、なおより好ましくは0.05〜0.15の間、なおより好ましくは0.08〜0.12の間、最も好ましくは約0.10であることが見出された。式Iで表され得ないが、本発明の範囲内に該当するブロックコポリマーに関して、モル比(理論及び実際の比の両方)が、類似する様式で計算されうることが理解される。
【0048】
ラクチド及び乳酸は、ポリ乳酸又はポリ(乳酸)ブロックのモノマー又は構築用ブロックを記載するため本明細書に交換可能に使用される、というのも、これらのブロックは構造的に同じであるからである。しかしながら、乳酸モノマーのみが、ブロック及び/又はコポリマー中に存在するモノマーの比(例えば、L/EO)或いはモノマーの数(例えば、式I中のXn及びXm)を計算するため使用される。
【0049】
本発明のさらなる実施形態では、生分解性ポリマー材料は、2つ以上のブロックコポリマーを含み、各々は、少なくとも1つの親水性ブロック及び少なくとも1つの疎水性ブロックを含む。それ故、ブロックコポリマーのブレンドが、使用されてもよい。ブロックコポリマーのブレンドが使用される場合、本発明による2つ以上の異なるタイプのブロックコポリマーが使用されることを意味する。これらのブロックコポリマーは、質量、モノマーのモル比及び/又はモノマーのタイプ等が異なっていてもよい。
【0050】
ブロックコポリマーのブレンドを用いることにより、多大な合成上の努力を行うことなく、生分解性ポリマー材料の所望の特性を正確に至適化することが可能である。ブロックコポリマーのブレンドが使用された場合、疎水性ブロックにおいて含有されるモノマーの親水性ブロックにおいて含有されるモノマーに対する総モル比を使用して生分解性ポリマー材料の特性に影響しうることも見出された。この場合、総モル比は、1H NMRによって決定されるような個々のブロックコポリマーの実際の比を用いて計算されうる。
【0051】
2つ以上のブロックコポリマーのブレンド、特に2つのブロックコポリマーのブレンドから本質的になる生分解性ポリマー材料が、好ましい。これは、ポリマー末端が親水性である、及び/又は親水性ブロックがポリ(エチレングリコール)からなる場合に特に当てはまる。例えば、mはnであり;l及びqは0である式(I)によるポリマーに関して、2つのブロックコポリマーのブレンドを使用することが好ましい。
【0052】
本発明の別の実施形態では、無水生分解性複合材料は、1つ又は複数の薬物、例えば、抗生物質、抗炎症薬等を更に含む。このような薬物は、組織再生処置に有益でありうる。薬物は、ポリマー材料中に粒状合成材料と一緒に組み込まれうる。ポリマー材料が分解されたら、薬物が放出される。
【0053】
本発明による複合材料は、骨誘導のため特に適切である。それ故、本発明のさらなる態様は、所望の形状に本発明による無水生体適合性複合材料を成形する工程及びそれを骨の減少化又は欠損の部位に配置する工程によって、骨の減少化又は欠損を処置する方法である。
【0054】
単純化及び簡潔な説明のために、特長は、同じ又は別々の実施形態の一部として本明細書に記載される、しかしながら、本発明の範囲は、記載される特長の全ての又はいくつかの組合せを有する実施形態を含みうることが理解される。
【0055】
本発明は、下記の実施例及び実験結果により説明されうる。
【実施例1】
【0056】
この実施例では、本発明による特定のポリマー材料の合成及び特徴が、記載される。
【0057】
1.1.ポリ(L-ラクチド)-co-ポリ(エチレンオキシド)-co-ポリ(L-ラクチド)トリブロックブロックコポリマー(すなわち、LEOL)の合成
LEOLブロックコポリマーを、開始剤としてポリ(エチレンオキシド)及び触媒として第一錫オクトエート(SnOct2)の存在下でのL-ラクチドモノマーの開環重合により合成した。全ての反応を、アルゴン飽和雰囲気下で実施した。ポリ(エチレンオキシド)(EO)及びL-ラクチドモノマーを、三つ口フラスコ中でブレンドし、アルゴン雰囲気下で穏やかに撹拌下130℃に徐々に温めた。その後、4〜5滴(約160〜170μL)の触媒を加え、混合物を130℃の温度及び50rpmの撹拌速度で24時間反応させた。Table 2(表2)は、合成したブロックコポリマーを示している。
【0058】
【表2】
【0059】
1.2.ポリ(エチレングリコール)ベースのブロックコポリマー(LEOL)の特徴
1.2.1.物理的(全体的)外観
ブロックコポリマーを実体顕微鏡で分析して任意の望ましくない不均質性物を検出した。その後、ブロックコポリマーを、鋼工具で加圧すること及び引き続き手で成形することによってそれらの硬さを最初に特徴付けた。Table 3(表3)は、その観察を要約している。
【0060】
【表3】
【0061】
これらの観察に基づいて、より短いEOブロックが、より柔軟な集合体(例えば、LL対ML対HL)をもたらすとの傾向があるように思われる。
【0062】
1.2.2.融点:目視での推定
おおよそ1mLの容量の各ブロックコポリマーを、冷水浴に浸漬したガラスバイアルに入れて、穏やかな温度ランプによって温めた。ブロックコポリマーの温度を連続的にモニターし、融点範囲を記録した:最低温度はポリマーが視覚的に状態を変化させ始める温度であり、一方、最高温度はポリマーが完全に融解したときに取得された。Table 4(表4)は、結果を示している。
【0063】
【表4】
【0064】
結果は、LEOLブロックコポリマーが、EOブロックサイズの増加に伴って増加する融解温度範囲を有しているが、ラクチドブロックサイズが増加すると減少することを示している。したがって、以下の少数の結論が得られうる:
1)EOブロックが短いと、融点は低い(例えば、LL対ML対HL);
2)L-ラクチドブロックが長いと、融点は低い(例えば、LL対LH及びML対MH)。
【0065】
1.2.3.組成:1H-NMR
コポリマーを重水素化クロロホルム(すなわち、CDCl3、任意の濃度)に溶解し、スペクトル(NMR-スペクトル1、下記参照)をプロトン核磁気共鳴(1H-NMR、400MHz)によって得て各コポリマーの分子組成を決定した。ピーク統合を生のスペクトル(すなわち、いかなる加工もしない)で実施し、EOブロックピーク(AEO)の総領域及び2つのL-ラクチドブロックピーク(XL)の総領域を記録した。最終的なブロック組成を次に分子式XnEOpXn(式中、p∈{23,46,91}、及びp:AEO=2n:XLを用いて)に基づいて計算した。
【0066】
Table 5(表5)は、測定値と理論的なものから計算される組成を比較し、1H-NMRにより組成から計算されうる実際のL/EO分子比を報告している:より高いラクチド量でのコポリマーの完全合成はより困難であり、理論的なものより低いL/EO分子比が導かれた。
【0067】
【化1】
【0068】
NMR-スペクトル-1。ポリ(エチレングリコール)ベースのブロックコポリマー(LEOL)に関する1H-NMRスペクトル。(a)LL、(b)ML、(c)HL、(d)LH、(e)MH及び(f)HH。矢印で示しているのは、EOブロック(δEO=3.55-3.80ppm)に関するバンドであり、一方、星印は、L-ラクチドブロックの化学シフト(δL1=5.10-5.30ppm、δL2=1.40-1.70ppm)を示す。
【0069】
【表5】
【0070】
ここで、実際のL/EOモル比は、乳酸モノマー対エチレンオキシドモノマーに関して上記の本明細書に記載される1H NMRによって決定されるような実際の比である。
【0071】
1.3.ポリ(エチレングリコール)ベースのブロックコポリマー(LEOL)のブレンドの調製
各ブロックコポリマーを、シリンジによって所望の割合に別のものと混合した。Table 6(表6)は、1H-NMRデータ(Table 5(表5))から得られたものに基づく計算されたL/EOモル比を含む、調製されたブレンドを示している。ブレンドのものは、L/EO分子比を厳密に言うことができないが、それを最終的なブレンド中のL-乳酸量についてのインジケーターとして使用できることに留意されたい。
【0072】
【表6】
【0073】
より長いEOブロックが、より短いEOブロックでの別のものに対して、より硬いものをもたらすように思われ、生じるバインダーは、より硬いブレンドになると思われる。更に、より高いL-乳酸/EOブロック分子比でブロックコポリマーを含有するブレンドは、非常に硬い。もたらされるブレンドの融点は、より長いEOブロックでの成分のものとそれほどは異なっていない。
【実施例2】
【0074】
ブロックコポリマー及びそのブレンドの滅菌
実施例1及び以下に列挙されるブロックコポリマー及びブレンドを、γ照射及びe-ビームの2つの異なる方法で滅菌した。
- コポリマー:LL、ML、HL
- ブレンド:25LL75HL、25ML75HL、50ML50HL
【0075】
材料を、全体的な外観を基準としてそれらの未滅菌対応物に対して比較した(Table 7(表7))。
【0076】
【表7】
【実施例3】
【0077】
LEOLコポリマーバインダーと粒子をパテに処方するin vitroベンチテスト
3.1.パテの調製
ポジティブな取扱評価に基づいて、実施例1のブロックコポリマーブレンドのサブセットを、潜在的なパテバインダーとして選択した。様々なパテを、CaPセラミック顆粒(サイズ0.5〜1mm)及び1つのバインダーでバインダー/CaP容量比0.8で調製した。したがって、ポリマー成分を、融解し、CaP顆粒と混合した。顆粒を保持できた(未滅菌)パテのみが、更に考慮された。
【0078】
3.2.未滅菌パテの特徴
3.2.1.盲検試験
盲検試験はパテの取扱性能を評価する第三者によって実行され、上記の本明細書及びTable 1(表1)に記載されるガイドラインに従ってスコアをつけた。各材料の最終的なスコア(FS)を計算し、最低の性能を5及び最良の性能を30とスコアをつけた。結果は、Table 8(表8)に要約されている。
【0079】
3.2.2.溶解試験
溶解試験を、おおよそ11mLのリン酸緩衝溶液(すなわち、PBS)中の1mLの各パテを37℃で振盪せずに浸漬することによって実施した。1、2、4、8、16及び>16分間の時点で写真を撮った。図1及び図2は時間経過の間の溶解の画像を示し、一方、Table 8(表8)は結果を示している。
【0080】
図1は、PBS中の未滅菌試料についての溶解試験の結果を示している。
【0081】
全ての未滅菌LEOLバインダーは、溶解の急速な開始(すなわち30〜60分以内)を有し、対応するパテに顆粒を放出させる。しかしながら、それらは異なる溶解速度を有し、その理由は、25ML75HL、50ML50HL、25LL75HL、50LL50HL、50LH50HH及び25LH75MHを含有するパテ中にかさばった塊が32分後に存在していたからである(図2を参照されたい)。
【0082】
図2は、PBS中の未滅菌試料についての溶解試験のさらなる結果を示している。材料の凡例の標識:(A)25ML75HL;(B)50ML50HL;(C)50LL50ML;(E)25LL75ML;(F)25LL75HL;(G)50LL50HL;(H)50LH50HH;(I)25LH75MH;(J)50LH50MH。
【0083】
【表8】
【実施例4】
【0084】
PEGと異なる中央ブロックでのコポリマー合成
L-ラクチド含有コポリマーの2つのファミリーを、一方はポリ(プロピレングリコール)(すなわち、LPGL)で及び他方はプルロニック(登録商標)(LPUL)で、それらの中央ブロックのタイプが異なるように調製した。中央ブロックは、異なる分子量又は異なる種類のプルロニック(登録商標)を有してもよいであろう。同じ中央ブロックを考慮した場合、異なる乳酸/中央ブロックモル比も考慮した。
【0085】
4.1.合成
全てのブロックコポリマーを、開始剤としてポリ(プロピレンオキシド)又はプルロニック(登録商標)P65及び触媒として第一錫オクトエート(すなわち、SnOct2)の存在下でのL-ラクチドモノマーの開環重合により合成した。全ての反応を、アルゴン飽和雰囲気下、130℃及び50rpmの撹拌速度で24時間実施した。Table 9(表9)は、合成したブロックコポリマーを示している。
【0086】
【表9】
【0087】
ここで、理論的なL/PGモル比は、乳酸モノマー対エチレンオキシド及びプロピレンオキシドモノマーに関して上記の本明細書に記載されるような理論的な比である。
【0088】
4.2.コポリマーの特徴
4.2.1.LPGL及びLPULコポリマーの物理的(全体的)外観
コポリマーを実体顕微鏡で観察して任意の望ましくない不均質性物の任意の存在を検出した。その後、それらを、最初に鋼工具で及び次に手で加圧することによって、それらの硬さの点で特徴付けた。Table 10(表10)はLPGLコポリマーにおける観察を要約しており、Table 11(表11)はLPULコポリマーを指している。
【0089】
【表10】
【0090】
全体の観察に基づくと、材料は、L-ラクチドブロックサイズにおける増加に伴って硬化すると言える(例えば、PG4L対PG4M対PG4H)。
【0091】
【表11】
【0092】
4.2.2.LPGLコポリマーの溶解試験
慎重に秤量したPG4M及びPG4Hブロックコポリマーの集合体(m0)を、1週37±1℃で100mLの蒸留水に配置し、穏やかに振盪した。3つの時点(すなわち、1、4及び7日;1つの時点当たり1反復)を考慮し、試料を採集したら、過剰な水を拭きとり、それらの湿質量(mw)を測定した。次に、各試料を、写真に撮り、次に37±1℃でそれらの質量が安定化するまで真空乾燥した。したがって、乾燥質量(md)を取得した。流体取り込み(FU)及び質量減少化(ML)変化(%)を、以下のように、各時点で各試料について計算することができた
FU=100*(mw-md)/md
ML=100*(m0-md)/m0
【0093】
寸法変化は、時間経過の間の平均直径(%)の変動によって決定され、ここで、平均直径は、異なる方向に沿って測定した直径の平均により与えられる。Table 12(表12)は、流体取り込み、質量減少化及び平均寸法変化について結果を示している(図3)。
【0094】
【表12】
【0095】
LPGLコポリマーは、PBSと接触すると、時間経過の間に変化すると思われるが、それらはそれらのかさばった集合体を保持する。
【0096】
4.3.LPGL及びLPULベースのパテの調製及び溶解特性
パテを、CaPセラミック顆粒(サイズ0.5〜1mm)及び1つのバインダーでバインダー/CaP容量比0.8で調製した。各パテは溶解試験を受けた(手順について実施例3.2.2を参照されたい):Table 13(表13)及び図4はLPGLベースのパテに関する結果を示している。
【0097】
【表13】
【0098】
図4は、PG4Lベースのパテが、顆粒を急速に放出し、小さいポリマー球を形成することを示している。分解する媒体を除去するとすぐに、ポリマー球は形状を喪失した。対照的に、PG4M及びPG4Hベースのパテは、実験の全持続時間(すなわち、1週)に形状を維持した。
【0099】
全てのLPULベースのパテは、水に溶解能があり、セラミック顆粒を放出できた(Table 14(表14))。ポリ乳酸をより少なく有するバインダーは、より高い溶解速度を有していたことが認められうる。
【0100】
【表14】
【実施例5】
【0101】
滅菌パテ
5.1 LEOLパテの滅菌
実施例3.1の特定のLEOLパテを、γ照射(25〜40kGy)で滅菌し、それらの顆粒を保持する能力について評価し、成形した。サブグループを、次に取扱結果に基づいて選択し、溶解試験に供した。図5は、未滅菌のもの(図1)と類似しているように見える、選択したパテの溶解行動を説明している。
【0102】
時間T=0分での図から、どのパテが顆粒をなおも保持でき、また滅菌後に成形できたかを見ることができる(すなわち、LL、75LL25HL、50LL50HL、25LL75HL及びHLでのパテ)。
【0103】
実施例3.1の特定の他のパテを、γ照射で滅菌し、全体的に成形可能とする特性を基準としてそれらの未滅菌対応物に対して比較した(Table 15(表15))、一方、PBS中37℃でのそれらの溶解速度も同様に評価した(図6)。
【0104】
特定のパテ(例えば、パテML)は、滅菌後に更にわずかに改善された取扱性質を示した。
【0105】
図6Aは、滅菌パテの初期形状及びサイズを示している。全ては、滅菌後に顆粒を保持し、形状を維持した。しかしながら、Table 15(表15)に報告されているように、それらは異なる取扱特性を有していた。図6Bは、PBS中での32分後のパテを示している。PEGに基づくバインダーを有するそれらパテは、崩壊が開始されたことから、バインダー溶解を急速に引き起こすことを示している。図6Cは、1時間後の複合材料を示し:全てのPEGベースのパテは、ほとんどの顆粒を放出した(中央ブロックはなおも耐えていることが観察される:それは次の1時間の間に消失する)。プルロニック及びポリ(プロピレングリコール)ベースのパテは、全く崩壊せず、また1時間後にいかなる顆粒も放出しなかった。それらは、2日後に同じ形状を維持する。
【0106】
【表15】
【0107】
5.2 LPGLベースのパテの滅菌
実施例4の2つの好ましいLPGLベースのパテを、γ照射(25〜40kGy)で滅菌した。Table 16(表16)は、観察を示している。
【0108】
【表16】
【実施例6】
【0109】
骨誘導モデルにおける選択したLEOLパテのin vivoでの生物学的性能
実施例3.1の4つのLEOLパテ(Table 17(表17))を、5匹のイヌの背中の筋肉に8週間移植してリン酸カルシウムセラミック顆粒(サイズ0.5〜1mm)の骨誘導ポテンシャルにおける4つの異なるLEOLバインダーの効果を評価した。採集及び組織学的処理後、それらをメチレンブルー/塩基性フクシンで染色し、切片とした。
【0110】
【表17】
【0111】
4つの複合材料の中で大した差は認められず、組織学的な観察は互いに同等である。
【0112】
全ての複合材料に関して、全体の移植片領域にわたって主にスポットとして散らばった骨形成が観察された。その境界表面を裏打ちする骨芽細胞の継ぎ目を伴って、類骨が、存在していたことから、活発な骨形成を示している。CaPセラミック細片が、小さい粒子の形態(何十ミクロンオーダーの寸法)で軟部組織マトリックス中に分散して時折観察された。貪食されたCaPセラミックナノ粒子を有する多くの多核巨細胞が、セラミック顆粒の表面に存在した。骨が観察されなかった場合(すなわち、1つのB、1つのF及び1つのMH)、非常に限定的な量の細胞が認められ、軟部組織は線維性であるように見えた。炎症症候は任意の外植片において観察されず、線維性カプセルは形成されなかった。
【0113】
視覚的にパテ試料を比較すると、それほど差は観察できなかったことから、全ての4つのゲルは、同様に振る舞ったことが示される。パテをCaPセラミックス単独と比較すると、少し低い骨形成が認められたことから、ゲルの軽微な骨妨害効果(bone-hindering effect)の可能性を示しているように思われた。しかしながら、類骨及び骨芽細胞は、8週移植後に骨形成が、なおも進行し、後期段階でより大きな骨容積を導きうることを示す。軟部組織マトリックス中に分散する多核巨細胞の及びセラミック残留物の存在、並びに任意の炎症症候の同時の非存在は、セラミック顆粒の細胞駆動性再吸収(cell-driven resorption)が活性であることを示す。
【0114】
図7は、イヌ2の各複合材料及び組織学的な分析についての詳細な顕微鏡写真を示している。(a)はパテAの概観であり、(b)はパテbの概観であり、(c)はパテFの概観であり、(d)はパテMHの概観である。(a)中のスケールバーは、全ての概観に適用される。より大きな拡大率(×10)で撮った詳細な画像は、パテAに関して(e)、パテBに関して(f)、パテFに関して(g)、及びパテMHに関して(h)に示される。(e)、(f)、(g)及び(h)中の丸は、軟部組織マトリックス中に分散するセラミック細片を示す。(e)、(f)、(g)及び(h)中のボックスは、画像のどこが更に大きな拡大率(×20)で撮られたかを示し、(i)はパテAであり、(m)はパテBであり、(n)はパテFであり、(o)はパテMHである。文字Mは材料(すなわち、CaPセラミック顆粒)を表し、黒色星印は類骨を示し、黒色矢印は骨芽細胞の継ぎ目を示し、灰色矢印は顆粒の表面において貪食している多核巨細胞を示す。
【実施例7】
【0115】
適切なバインダー処方の選択
この実施例では、L-ラクチド/EOブロックコポリマーの追加のブレンドを、調製し、分析した。コポリマー及びブレンドの合成を、実施例1.1と同じように実施した。以下のコポリマーのブレンドを調製した。
【0116】
【表18】
【0117】
ここで、実際のL/EOモル比は、乳酸モノマー対エチレンオキシドモノマーに関して上記の本明細書に記載される1H NMRによって決定されるような実際の比である。
【0118】
7.1.ブレンドの特徴
融点を実施例1(1.2.2.)に記載されるように決定し、固有粘度をUbbelohde粘度計で測定(25℃、0.33g/dL.)した。物理的な観察を、前の実施例に記載されるように行った。
【0119】
ブレンド特徴の結果は、Table 19(表19)に報告されている。
【0120】
【表19】
【0121】
7.2.パテのためのブレンドの適合性
パテを、実施例3.1.に記載されるように、異なるコポリマーとリン酸カルシウムセラミック顆粒(1〜2mm)を混合することによって調製した。乾燥空気中での盲検取扱試験を、以下の得られたパテで行った:
・ ブレンドA:硬いパテ、これは柔軟性を得る及び成形可能であるために何分間か手で温められることが必要である;
・ ブレンドC:展性パテ、温められる必要がない;
・ ブレンドW:展性パテ、ブレンドCで調製されたものに非常に類似する;
・ ブレンドZ:弱い材料、これは成形されしだい容易に壊れる。
【0122】
4つのパテの展性が、湿性条件においても評価され、すなわち、それらは、水において成形された:ブレンドA及びブレンドZは急速に崩壊し、それらの展性を失い、セラミック顆粒を保持することができなかった。逆に、ブレンドC及びブレンドWは、成形されている間にセラミック顆粒を保持し、より長時間にわたり成形することができた。
【0123】
パテは、ある期間にわたる溶解試験においても評価された。パテを、ディスクに細断し、スライドガラスの一端に配置した。これらのスライドを、次に、50mL PBSを充填したチューブ中に配置し、これを45°傾斜させて37℃で維持した。図8は、パテの溶解試験の主なエンドポイントを示している。全てのパテは、許容される様式で溶解した。ブレンドC及びブレンドWは、ブレンドA(より高い分子量を有するPEG)及びブレンドZ(疎水性のポリ(プロピレングリコール)を、その構造中に提示する、プルロニックP85の存在)と比較して、より急速にパテ崩壊が導かれる、より速い溶解性を有していた。
【実施例8】
【0124】
L/EO比の効果(すなわち、処方におけるラクチド含有量の役割)
コポリマー物理的特性におけるL/EO比の効果を評価した。ブレンドCに基づく、3つの処方を、Table 20(表20)に要約されるように異なるラクチド含有量で調製した。3つの材料の融解温度は、25〜65℃範囲で温度上昇速度10℃/分での示差走査熱量測定(DSC)で決定された。結果はTable 20(表20)及び図9に示され、後者は3つの処方に関するDSC曲線を示し:ラクチド含有量の増加に伴って融解温度の減少が明確に目視される。図10は、ラクチド含有量に応じた処方物の物理的な外観を示している。
【0125】
【表20】
【0126】
ラクチドの含有量を変動させることにより、異なる物理的な性質を有するブレンドがもたらされた。この実施例は、図11に描かれているように、実際のL/EO比(すなわち、乳酸単位(疎水性ブロック)対エチレンオキシド単位(親水性ブロック)の比)、融点(Tm)、PEG長及びパテの硬さの間の関係性を実証している。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11